「これを告白した以上は、もう帝都には戻らないという言葉は許さないわ、宝玄仙。なにがなんでも、一緒に帝都に戻ってもらうわよ」
「へえ、許さないのかい……」
宝玄仙は藍蔡仙の両方の頬に両手をすっと伸ばした。
すると、藍蔡仙がぎょっとした顔になる。
構わず、宝玄仙はそのまま藍蔡仙の両方の頬をねじりあげた。
「い、痛い、痛い、痛い──。な、なにするのよ、宝玄仙──」
藍蔡仙が喚いて、手で宝玄仙の両手を払い除けようとした。
しかし、宝玄仙はそのまま、童女に変身している藍蔡仙の顔をねじりあげ続けた。
「そんな偉そうなことを喋れる立場だと思ってんのかい──? 許さないだと──。それはわたしの台詞だよ。この童女ばばあ──。わたしが闘勝仙の罠にかかって連中の奴隷にされていたとき、お前はなにしてたんだい──?」
「ちょ、ちょっと、ひゃめれええ――、いがいいい――」
「しかも、西方巡礼の行く先々に工作して、わたしを暗殺しようとした曹国仙に加担もしたんだろうが──。その片割れのお前が、わたしを許さないだと──。こうしてやる。こうしてやる──」
宝玄仙は力一杯に藍蔡仙の頬をねじり続けてやった。
「ひい、痛い、痛がいってばあ、宝玄仙──」
藍蔡仙が悲鳴をあげている。
「ご、ご主人様、もうやめましょうよ──。ねっ、気持ちはわかりますけど……」
沙那が身体を入れて、宝玄仙と藍蔡仙に割って入った。
宝玄仙は藍蔡仙の顔を離してやった。
「いまさら、天教に戻るなど、ご免だね。わたしが帰るわけないだろう。さっさと帝都に戻りな、藍蔡仙──。お前が天教改革をするのはいいことだ。やりな。だけど、天教と名がつくものは、二度とわたしに関らわせるんじゃないよ──」
「くうっ──。やっぱり、絶対にそう言うと思ったのよ──。だ、だから、『縛心術』で無理矢理に帝都に連れ戻そうとしたんだけど……。でも、わたしだって、闘勝仙に玩具にされてたんだよ」
「ああっ? お前もだと?」
「そ、そうだよ――。あいつ、どこから聞きつけたか知らないけど、わたしが半妖であることを世間に公表すると言って脅したんだよ。そして、連中に身体を要求されたんだ。裸踊りなんてさせられたりして……。これだって、誰にも言わなかったけど……」
「なにが裸踊りだい──。わたしがどんな目に遭ったか知ってるんだろう──。それに、だから、なんなんだい──。お前がわたしのために、なにかやってくれたのかい──? 黙って、闘勝仙や曹国仙のやることを知らぬふりをしていただけだろう──?」
「まあ……。闘勝仙の捩じれた欲望がお前に向かってくれたお陰で、わたしは助かったということは事実だけどね……。まあでも、それは水に流して……」
藍蔡仙が言った。
「ああ、わかった──。水に流してやる。だから、帰れ──。二度と近づくんじゃない」
宝玄仙ははっきりと言った。
「どうあっても、駄目かい、宝玄仙?」
「断る──」
宝玄仙は言い放った。
藍蔡仙は見るからに、意気消沈したような顔になった。
「まあ、無駄だと思うよ、藍蔡仙さん……。こんな風に頑なになったときは、あたしらの言うことだって聞いてくれないんだ。改革というのは、なんか立派そうだったけど、縁がなかったということでさあ……」
孫空女が口を挟んだ。
「そうですね……。それに、わたし個人としても、今更、天教のことを許す気分にはなれません。あなたがそれに関わっていないとしてもです。わたしは、天教の教えで育ったごく普通の市民でしたが、いまのわたしは天教には失望しています。悪しからず」
沙那も言った。
「とにかく、この話は終わりだよ、藍蔡仙──。それよりも、服を脱ぎな」
宝玄仙はそう言って、自分の服を脱ぎ始めた。
沙那がびっくりしたような顔になって、それをとめた。
「服? なにするんだい、沙那?」
宝玄仙は言った。
「それは、わたしも質問したいです。なにをするつもりですか、ご主人様?」
沙那が不審そうに目を細めている。
一方で、宝玄仙は上衣を脱いで、すでに上半身は胸当てだけの姿になっていたのだ。
「なにって、こいつと遊ぶんだよ。藍蔡仙とは長い付き合いだったけど、百合の趣味があるなんて知らなかった。ちょっと、手合わせしようじゃないか、藍蔡仙」
宝玄仙は藍蔡仙に白い歯を見せた。
「な、なんでそうなるんですか……?」
沙那が呆れた声をあげた。
「手あわせをしたら、さっきの話を考えてくれるかい、宝玄仙?」
藍蔡仙もにやりと笑った。
「ああ、考えるだけなら考えてやるよ。考えるだけなら、ただだからね。考えた挙句に、結論は同じかもしれないけど……」
宝玄仙は応じた。
「……無駄ですよ、藍蔡仙殿。ご主人様がこんな顔のときは、約束なんて簡単に反故にします。結局断ると思いますよ」
「余計なことを言うんじゃないよ、沙那──。藍蔡仙、迷惑料だ。わたしの相手をしてもらうよ……」
宝玄仙は言った。
「まあいいさ……。損得抜きで抱き合うかい……。だったら、覚悟しなよ、宝玄仙……。息もできないくらいに、たじたじにしてやるからね」
藍蔡仙も微笑ながら服を脱ぎ始めた。
「へえ、返り討ちにしてやるよ、藍蔡仙……」
「うわっ──。じゃ、じゃあ、わかりました──。では、おふたりの時間ということにさせてもらいます。わたしたちは出ていきますね。でも、物騒なことはしないと約束してください」
沙那が口を挟んだ。
「ああいいよ、沙那とやら……。じゃあ、宝玄仙、道術契約といこうじゃないか。お互いにこの部屋を出ていくまでは、道術を遣わないこと。それでどうだい?」
藍蔡仙が言った。
「まあ、それもそうだねえ……。じゃあ、契約しようか、藍蔡仙?」
宝玄仙は応じた。
「なら、誓いの儀式だよ……。わたし、藍蔡仙はこの部屋を出るまで道術を遣わないことを誓う……」
「同じく、わたし、宝玄仙も誓う……」
その瞬間、宝玄仙と藍蔡仙のあいだに道術契約がかわされたのがわかった。
「じゃあ、出ています。朱姫が昨夜寝た隣の部屋にいますから、なにか用事があれば壁を叩いてください」
沙那が言った。
そして、孫空女とともに部屋を出ていった。
藍蔡仙とふたりきりになった。
宝玄仙はにっこりと笑って、脱衣を再開する。
すると、藍蔡仙も笑い返してきた。
藍蔡仙も服を脱ぎ出す。
生まれたままの姿になった宝玄仙は寝台にあがった。
「どうしても、帝都に戻るというのは駄目なのかい?」
すでに服を脱ぎ終わっている藍蔡仙が言った。
藍蔡仙は、十歳の童女に大人の陰毛があるという奇妙な裸体姿になっていた。
「ははは、本当にわたしを性で屈服させてくれたら考えてやるよ」
宝玄仙はうそぶいた。
もっとも、そうはいっても、藍蔡仙に性愛の勝負で負けるわけがない。
なんだかんだで、帝都時代の藍蔡仙は浮いた話のひとつもなかった。
闘勝仙に凌辱されたとか言っていたから、それが関わっているのかわからないが、藍蔡仙は性愛のようなことが嫌いで逃げ回っているという印象だった。
どんな姿でもいられるくせいに、わざと性愛の営みの外である十歳くらいの童女姿でいるのはそのためだと思っている。
百戦錬磨の宝玄仙が性の勝負で負けるわけがない。
「その言葉、忘れないでおくれよ……」
藍蔡仙の小さな身体が宝玄仙を押し倒した。
宝玄仙の両手が掴まれて、頭の上に伸ばされた。
藍蔡仙の舌が宝玄仙の脇を舐め始める。
「くっ……。くすぐったいよ、藍蔡仙……」
「ふふふ、我慢、我慢……」
藍蔡仙がくすくすと笑いながら舌を片側の脇から二の腕に這わせる。
一方の手は、反対の宝玄仙の腕を撫でさすり、二の腕から肘、さらに手首に向かって指先を這わせるように動く……。
「じゃあ、わたしも責めさせてもらうよ、藍蔡仙……。今度はわたしの番だ……」
宝玄仙は体勢を変えようとした。
そのとき、不意に藍蔡仙が擦っていた宝玄仙の手首になにかが絡まるのを感じた。
「なんだい?」
眼をやってびっくりした。
手首に革紐が巻き付いている。
手首に引っ掛けて、簡単に絞れるようにあらかじめ仕掛けてあったらしい。
革紐の反対側は寝台の敷布団の下の寝台の柱に結ばれているようだ。
動けない──。
「あっ、藍蔡仙──」
宝玄仙は慌てて、手を解こうとした。
「もう、遅いよ──」
藍蔡仙は宝玄仙のもう一方の手も両手で抑え込んだ。
こっちにもあらかじめ準備してあったらしい革紐を手首に巻かれた。
「な、なにすんだい──?」
宝玄仙は声をあげた。
両手を寝台の上方に伸ばしたまま動けなくされた。
「お前の番なんてなしさ、宝玄仙……。一方的にお前はわたしにやられるのよ。わたしはそういうのが好きなのよ」
藍蔡仙は笑いながら、自分の脱いだ服からさらに革紐を取りだした。
それを使って足首も拘束しようとする。
「お、お前、狡いよ──。わ、わたしだって、実はそういうのが好きなんだ──。やらせてやってもいいけど、交替交替だよ」
宝玄仙は抗議した。
しかし、藍蔡仙は童女の姿のくせにやっぱり力は強い。
宝玄仙の脚を片方ずつ押さえて足首を縛り、寝台の隅に結びつけていく。
あっという間に、宝玄仙の四肢は寝台の四隅に結び付けられてしまった。
「こ、こらっ、藍蔡仙──。交替交替だよ──。わかったのかい──?」
宝玄仙は四肢を拘束されたまま叫んだ。
しかし、藍蔡仙は寝台をおりていく。
なにをするかと思ったら、宝玄仙の荷の中から責め具の類いを物色しているようだ。
「ほう……。たくさんあるねえ……。これは愉しめそうだよ」
藍蔡仙ががさごそと荷を漁りながら言った。
「藍蔡仙、聞いているのかかい──?」
宝玄仙はもう一度言った。
「ああ、聞いているよ……。交替のことだろう? 考えるだけなら考えてやるよ。考えるだけなら、ただだからね──。考えた挙句に、結論は同じかもしれないけどね……」
戻ってきた藍蔡仙がうそぶいた。
宝玄仙はぎょっとした。
痒み剤の入った小壺と刷毛を持っている。
「う、うわっ、そ、それを使うつもりかい──? そ、それの適量とかわかっているんだろうねえ──。ちょっとでいいんだよ……。い、いや、交替交替なのにそんなものを使うのはちょっと──」
「誰が交替に応じたのよ。勝手にお前が喚いているだけじゃないかい……。もちろん、適量なんて知らないわよ。だけど、匂いでなんに使うものかはわかるわ。たっぷりとひと瓶塗りたくってあげるわよ……。まずは、肉芽あたりかなあ……。それにしても毛がないから、目標を絞りやすいわね」
藍蔡仙がくすくとと笑った。
蓋が開かれたらしく、痒み剤特有の刺激臭が鼻を襲ってくる。
「だ、だいたい、こんな革紐なんて、いつ仕込んだんだい──?」
「さっき、話をしているときに、寝転んだり、ひっくり返ったりしているときよ。お前の性格だと、なんとなくこういうことをしたがるんじゃないかと思ったからね」
薬剤を乗せた藍蔡仙の指が宝玄仙の無防備な股間に伸びて、肉芽に痒み剤をたっぷりと塗ったのがわかった。
「はあああっ──」
宝玄仙は腰を浮きあがらせて声をあげた。
「可愛らしい声で泣くじゃないのさ、宝玄仙……。じゃあ、お掃除しましょうねえ……」
藍蔡仙がおどけた口調でそう言いながら、股間を刷毛で掃き始めた。
宝玄仙は悲鳴をあげながら、反射的に腰を左右に振って刷毛から逃げようとした。
だが、藍蔡仙の刷毛は容赦なく宝玄仙の腰の動きに合わせてついてくる。
宝玄仙はのたうった。
「そんなに気持ちいいの、宝お姉ちゃん?」
藍蔡仙は鳥の羽根で肉芽の周辺を上に下に、右に左にと幾度もさすっていく。
そして、からかうような口調で宝玄仙に声をかけてくる。
「ああっ、ああっ……」
半開きになった宝玄仙の口からは、たちまちに悩ましい声が迸り出した。
鳥の羽根で与えられる刺激はあまりにもささやかすぎて、宝玄仙を悶え苦しませた。
あっという間に身体は昂ぶったが、あとはとろ火でじわじわと追い詰められていくような感じだ。
五体がじんと痺れるような疼きが股間から全身に這い回っていく。
「……いい感じに身体が真っ赤になったじゃないの、宝お姉ちゃん? じゃあ、乳首にもお薬を塗りましょうねえ」
藍蔡仙が今度は乳首に薬剤を塗りだした。
「はううううっ──」
突然に乳首から快感が暴発するような刺激が吹き出して宝玄仙は仰け反った。
道術を遣わないと契約してしまったことを忘れていた。
普段はほとんど刺激を感じないくらいに道術で抑えているのだが、乳房は蝦蟇婆たちによって、徹底的に開発された場所だ。
道術による快感の抑えがなければ、官能の暴走がとまらなくなる。
「そ、そこはやめてえ──」
宝玄仙は滅茶苦茶に暴れて、乳房への薬剤の塗り込みを防ごうとした。
「凄い反応ねえ、宝玄仙? そんなに嫌なの? それに、反応が異常だけど、なにかあるの……?」
藍蔡仙がさすがに手を引いた。
「はあ、はあ、はあ……。ち、乳房と……乳首はだめ……。それだけは頼むよ。洒落にならないんだよ……。そこは……はあ……はあ……」
道術による抑えがなければ、これほどの凄まじいことになることをすっかりと忘れていた。
宝玄仙は荒い息をしながら言った。
「ねえ、理由を教えてくれたら、責めに手加減をするのを考えてあげてもいいわよ」
「い、以前、亜人の王に……妖魔王に捕らえられたときに、そこを弄られたんだよ。徹底的に感度を毀されてしまって……。と、とにかく、乳房だけは……」
宝玄仙は思わず弱音を吐いた。
「わかったわよ。じゃあ、思う存分、責めてあげるわね」
藍蔡仙が爆笑して、薬剤の塗布を再開した。
「ふわあああっ──。こ、この嘘つき──」
宝玄仙は全身を激しくくねらせながら絶叫した。
薬剤を乗せた藍蔡仙の手の平が、宝玄仙の乳房を這い回る。
宝玄仙は、凄まじい速度で悦楽の境地に昇らされていく。
「……ははは……、考えると言っただけよ。考えるとね──。考えたわ。こんな愉しいことをやめられないわよ」
藍蔡仙が哄笑しながら乳房を撫ぜ擦っていく。
そして、すぐに責め手を刷毛に変えた。
また、乳房の上を掃くように刺激していく。
「ああっ」
宝玄仙はうなじを大きく仰け反らせて、歯をかちかちと鳴らした。
乳房の表面を刷毛が這い、乳首の上を柔らかい繊毛が通過するたびに、宝玄仙は悲鳴をあげて縛りつけられている裸身をうねり舞わせる。
藍蔡仙は飽きることを知らないのか、かなりの長い時間乳房を刷毛だけで責め続けた。
宝玄仙はたじたじとなった。
刷毛の責めは微弱なので、ほとんど痒みを癒してくれないし、溜まり続けている快感を発散もさせてくれない。
苦しい疼きを溜めこませるだけなのだ。
しかも、責める場所が乳房に集中され始めると、股間に塗られた薬剤が本領をを発揮し始めて、宝玄仙に刃物で刺すような痒みを湧き起こす。
「も、もっと強く揉んでおくれよ──。そ、そして、ま、股もお願いだよ──」
宝玄仙は胸が締めつけらるような苦しみに襲われて悲鳴をあげた。
「ああ、股? これでいいの?」
藍蔡仙は刷毛の責めを肉芽に変える。
「ふぐううっ」
宝玄仙は全身を仰け反らせてがくがくと震わせた。
しかし、それは新しい苦しみを股間に持ってきただけだ。
宝玄仙は泣き狂った。
そして、すぐに刺激のなくなった乳房から痛みのような痒さが襲いかかる。
「はああ──。痒いいいいっ。た、助けて──助けて──」
宝玄仙はわけがわからなくなって喚いた。
「そうそう、女陰にも薬剤を塗り込めないとねえ……」
藍蔡仙は愉しそうに笑って刷毛を置いて、今度は宝玄仙の股間に二本の指で薬剤を塗り埋めていく」
「ひいいっ」
宝玄仙は全身を引きつらせた。
「……でもよく考えたら、刷毛じゃあ、穴の中は刺激できないねえ……。仕方ない──。宝玄仙、その股間はそのままよ。思う存分、痒みに狂っていてよ──」
藍蔡仙は刷毛を持つと、今度は痒み剤を塗った場所ではない脛や下肢、そして、太腿の周辺を徐々にくすぐりだした。
そのため、却って痒みが暴走したようになる。
宝玄仙はすすり泣きのような小さな悲鳴を繰り返すとともに、全身を懸命に動かして身悶えをした。
だが、襲いかかる痒みは拡大するばかりだ。
宝玄仙はついに、喉の奥から込みあがった嗚咽を洩らすようになってしまった。
それくらいに苦しいのだ。
「さあ、宝玄仙、痒みをなんとかして欲しければ、帝都に一緒に戻ると、道術契約で誓うのよ──。わたしたちは道術は遣わないと誓っているけど、道術契約は道術を遣ううちには入らないから有効だしね──。さあ、誓わないと、いつまでもそのままよ──。真言の契いをするのよ──」
藍蔡仙が言った。
「ふ、ふざけるな──。そんなことするわけないだろう──」
「あっ、そう……。じゃあ、もう少し、遊びましょうね、宝ちゃん」
藍蔡仙がにっこりと笑って、宝玄仙の身体のあちこちを刷毛でくすぐりだした。
ひいっと悲鳴をあげて、宝玄仙は全身を痙攣させるように震わせた。
全身をばらばらにするような痒みはくすぐったさと相まって、限界を遥かに越えた苦しみとして宝玄仙に襲いかかる。
あまりにもつらくて、痒みとくすぐったさが宝玄仙の思考力を消滅させてしまいそうだ。
「……真言の契いをするわね、宝玄仙?」
藍蔡仙がささやくように言いながら、今度は再び乳首の上を刷毛で擽りだした。
「や、やめて──。気が……気が狂う──」
宝玄仙は首を激しく振って叫んだ。
「道術契約よ──」
藍蔡仙が耳元でまた言った。
「そ、それは……」
刷毛が乳房を襲う。
じわじわとせりあがっていた悦びの戦慄がついに一線を越えてくれた。
乳首の微かな刺激で絶頂するだけの快感を溜めた宝玄仙の身体ががくがくと震え出す。
「おっと、そうはいかないわよ、宝玄仙──。お前が達することができるのは、道術契約の後だけよ──」
藍蔡仙が笑いながら刷毛を引いた。
ふつふつととろ火のまま残された宝玄仙は泣き声をあげた。
「か、痒い……痒い──」
宝玄仙はのたうち回るしかなかった。
「契約をするのよ、宝玄仙──」
今度は藍蔡仙が耳元で大きな声をあげた。
「そ、それは……」
宝玄仙は全身を揺さぶりながら呻いた。
「契約するわね?」
藍蔡仙がもう一度言った。
「し、しない……」
宝玄仙は首を横に振った。
だが、自分の声はあまりにも弱々しかった。
もしかしたら、もう一度訊ねられたら、自分は応諾してしまうのではないか……。
そんな恐怖も宝玄仙を襲う。
「だったら、いつまでも痒いままよ、宝玄仙──。道術契約に応じるわね──?」
藍蔡仙が畳みかけるようにささやいて、刷毛をあやつった。