※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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643 足で描いた「温泉」

「へえ……、そんなことがあったのかい……。そりゃあ、惜しいことをしたねえ……。わたしも、あの藍蔡仙(あいさいせん)が自分で張形を掴んで浅ましく尻で自慰をする床を見たかったねえ……。すっかりと気を失ってしまってしまったからね」

 

 宝玄仙は、朱姫と沙那の説明に上機嫌だった。

 

「藍蔡仙が出ていく前に、ご主人様を起こそうかと思ったんですけど、とにかく、本当に逃げるように宿を出て行ってしまったんです。申し訳ありません」

 

 沙那が頭をさげている。

 

「いや、いいよ──。いまさら、あいつに用事なんてないしね。別れの言葉も交わしたかったとも思ってないさ。いずれにしても、これで天教とも完全に縁切りだ。藍蔡仙も、それだけの目に遭えば、もうちょっかい出さないだろうさ」

 

「ああ、それは請け合います。藍蔡仙さんとは、あたしと道術契約を結んでもらいました。二度と、あたしたちには手を出さないと誓わせました」

 

「そうかい。よくやったよ……。今回は最後には、お前たちに助けられたね。礼をいうよ──」

 

 宝玄仙が寝台に腰掛けたまま頭をさげた。

 そろそろ夕方になる。

 沙那に言われて、藍蔡仙を懲らしめるという仕事を喜々として朱姫はした。

 

 八仙といえども、道術を遣えない相手は怖くはない。

 久しぶりに、沙那のお墨付きの嗜虐をやったのだ。朱姫の嗜虐癖は大いに満足している。

 逆さ吊りにして、痒み剤のたっぷり入った薬液を肛門に注ぎ込み、肛門栓をして痒み剤がしっかりと尻の中を侵すまでそのままにさせた。

 

 そのあいだに、ついでに藍蔡仙の陰毛をすっかりと剃りあげてもやった。

 そして、藍蔡仙の股間が、外見の姿のままに童女らしくなった頃には、藍蔡仙は痒みに苦しみもがいてしまうようになっていた。

 

 それから、とりあえず、藍蔡仙を逆さ吊りから解放して、木桶に排泄をさせてから、やっと手を自由にして張形を手渡してやった。

 肛門に物を入れたことはないと言っていたが、あの痒みに耐えられるわけもなく、脂汗を流しながら藍蔡仙は、渡された張形を必死になって肛門に自ら入れていた。

 あれはちょっとした面白い見世物だった。

 

 その後、やっと狂ったように張形で自分の尻を犯すのをやめた藍蔡仙は、完全に自我を喪失したようになってしまい、二度と自分たち四人に手を出さないということをと道術契約で誓えと迫ると、あっさりと、それを道術契約を朱姫と交わしたのだ。

 藍蔡仙は二度と宝玄仙たち四人に手を出さず、朱姫は藍蔡仙に手を出さない。

 道術契約は相互契約なので、その体裁が必要なのでそうなった。

 

 そして、解放された藍蔡仙は、あっという間に、白女真(はくじょしん)と愛麗(あいれい)を連れて、宿を立ち去ってしまった。

 電撃責めをやり損ねたのは残念だったが、そろそろ解放しようと沙那が口を挟んだのだ。

 すると、藍蔡仙はもう夕方だというのに、宿を払って出て行ってしまったのだ。

 

 孫空女との交合に疲れて寝ていた宝玄仙を起こす間もないことだったので、いま、沙那が改めて宝玄仙を起こして、経緯を説明しているところだ。

 どんな責めをしたかを宝玄仙に披露した後は、もう朱姫は興味がなくなった。

 朱姫は、孫空女とともに、沙那が宝玄仙に語るのをぼんやりと聞いていた。

 

 沙那は、藍蔡仙を解放する前に、鎮元仙士がどうやって解放されたのかとか、いまの八仙がどういう人間がついているかとかを細かく藍蔡仙に喋らせたのだ。

 それを宝玄仙に説明している。

 

 そのうちに、だんだんと眠たくなっていた……。

 

 朱姫は眠気に任せて寝台に上半身を倒した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……じゃあ、そういうことでいいね、朱姫──」

 

 宝玄仙の大きな声がした。

 はっとした。

 朱姫は微睡から目を覚ました。

 

「あっ、すみません、眠っていました」

 

 朱姫は顔をあげた。

 

「今夜の部屋割りのことよ、朱姫──。あんたは、今夜はわたしと一緒よ──。だって、昨夜は、ご主人様の道術で、あんたに『縛心術』をかけてもらって、あんたに仕返しをしていいって話だったのに、藍蔡仙のお陰で流れちゃっじゃないの──。今夜は、続きをやるわよ──」

 

 沙那がにやにやと笑いながら言った。

 

「え、えええ──。あれ、続いているんですか──。だって、今回はあたしが殊勲賞じゃないですか──。あたしの道術で藍蔡仙さんを懲らしめたんだし、道術契約だって──」

 

「なにが、殊勲賞よ──。あんたがうっかりと藍蔡仙の道術にかかってしまって、その術で、わたしを『縛心術』にかけようとしていたのを忘れたの──? あれが成功していたら、三人揃って藍蔡仙の言いなりになり、ご主人様を三人がかりで襲っていたところよ──」

 

 沙那がむっとして声をあげた。

 

「だ、だって──」

 

 朱姫も口を尖らせる。

 

「まあまあ、朱姫──。その代わり、沙那がお前を温泉に連れて行ってくれるそうだよ。そこでみんなで入ろうということになっているのさ」

 

 宝玄仙が笑いながら言った。

 

「温泉ですか?」

 

 温泉というのは、地から湧き出た湯が溜めてある大きな湯桶のようなものだ。

 朱姫も好きだが、誰よりも宝玄仙が大好きだ。そんなものがこの宿町にあるとは知らなかった。

 

 その瞬間、なぜだか急に頭がぼうっとした気がした。

 すぐに戻ったが……。

 

「じゃあ、早速、わたしと一緒に行きましょうか、朱姫」

 

 沙那が立ちあがった。

 

「えっ、沙那姉さんと……?」

 

「そうよ。ふたりで先に行きましょう……。これ持って」

 

 沙那が一枚の布を放った。

 

「手拭い……ですか?」

 

 沙那が朱姫に渡したのは、胸から股間くらいまでの長さの薄い布一枚だ。

 身体を拭くための布ということだろう。

 

「せめてもの情けよ……」

 

 沙那がにやりと微笑んだ気がした。

 

「えっ?」

 

 朱姫は意味がわからずに問い返しそうになったが、なぜか言葉にする前に、その気持ちが消滅した。

 また、なぜ、四人で一緒に行かないのだろうと疑念が湧いたが、それはすぐに、沙那と先に温泉に行きたいという気持ちに置き換わった。

 

「どこにあるんですか? 町外れですか?」

 

 朱姫は立ちあがっていた。

 

「結構、宿町の真ん中よ。むしろ、中心部ね──」

 

 沙那が含んだような言い方をした。

 それから沙那と一緒に宿を出て、宿町を歩いていく。

 そろそろと陽が暮れかけている。

 宿町では一番賑やかな時間だ。

 ここは竜飛国との国境にある関所に一番近い宿町だ。

 山越えをして関を通過してきた旅人と、明日一番に竜飛国我側に入るために関を抜けるためにここで宿を取ろうとしている者でごった返している。

 

「着いたわ」

 

 宿町の広場にやってきた。

 旅人目当ての酒や食事を売る屋台が並んでいて、多くの人間がいた。

 だが、見たところ、温泉などはない。

 

「ねえ、沙那姉さん……?」

 

 不思議に思って、沙那に訊ねようとすると、なぜか沙那が足で地面に大きな丸を描いている。

 

「ここが温泉よ、朱姫」

 

 沙那が言った。

 確かに、そこに温泉があった。

 温かそうな湯もある。

 

「入りなさいよ。服を脱いでね……」

 

 沙那がにやりと笑った気がした。

 

「沙那姉さんは入らないのですか?」

 

 朱姫は服を脱ぎながら訊ねた。

 

「わたしはいいのよ……。あなたの服を宿まで運ばないとならないしね」

 

 沙那が意味ありげに笑った。

 朱姫は首を傾げた。

 

 周りがなぜか騒然となっている。

 朱姫はなにか違和感を覚えながら、とにかく服を脱ぐと丸い線の中に湧いている湯に浸かった。

 湯は気持ちよかった。

 

「いい湯でしょう、朱姫?」

 

 朱姫の服を抱えている沙那が言った。なぜか、大勢の人だかりが朱姫の周りにできている。

 しかし、朱姫には、それがどういう意味があるのか認識できないでいた。

 

「ここに砂時計を置いていくわね。砂が落ち切ったら正気になるのよ。それと、さっきの手ぬぐいをしっかりと持っていてね……。さっきも言ったけど、それはわたしの情けよ……」

 

 沙那がそう言って、人だかりの外に消えた。

 朱姫の周りは、大勢の見知らぬ男たちばかりになった。

 

 それにしても、いい湯だ……。

 どうして、沙那は入らずに、朱姫をそのまま置いていったのだろう……?

 そんなことを湯に浸かりながらぼんやりと考えていた。

 

 やがて、沙那が置いていった砂時計の砂がすべて落ち切った……。

 

「ひいいっ、な、なに──? なにこれ──?」

 

 その瞬間、朱姫は絶叫した。

 朱姫は大勢の人だかりの真ん中で、しかも、広場のど真ん中で全裸で座っている。

 

 やられた──。

 

 その瞬間、朱姫はなにが起きたのかわかった。

 宝玄仙の道術で、沙那の言葉の暗示にかかるように術をかけられてしまっていたのだ。

 それで、沙那にこのあいだの仕返しに、宿町のど真ん中で素っ裸にされて置き去りにされたのだ。

 朱姫は慌てて、持っていた手拭いで身体の前を隠した。

 

「ど、どいてええ──」

 

 朱姫は悲鳴をあげて立ちあがると、小さな布一枚で身体の前を隠したまま、宿に向かって駆け始めた。

 

 

 

 

 

(第96話『童女の紡ぐ操りの罠』終わり)






 *


【西遊記:81~83回、地湧(ちゆう)夫人】

 貧婆(ひんば)国に近い陥空山(かんくうざん)という難所に、地湧(ちゆう)夫人という女妖魔がいます。彼女は、高名な玄奘三蔵が旅でここにやって来ると耳にして、一度、情を結んで、力を得たいと考えます。

 地湧夫人は、陥空山からさらに進んだ黒松林(こくしょうりん)という場所で自らを縛って樹にぶら下げ、玄奘たちが訪れるのを待ち受けます。
 すると、果たして、玄奘一行がやって来ます。

 地湧夫人は、盗賊にさらわれて、金品を奪われたあげく、こうやって縛られたと訴え、玄奘に助けを求めます。
 しかし、女が妖魔であることを見抜いた孫悟空は、女に妖魔の気配があり、構うなと忠告します。
 玄奘は、それを受け入れて、一行は地湧夫人をそのままして立ち去ります。
 地湧夫人は呆気にとられます。

 通りすぎた玄奘に対して、地湧夫人は術を使って、「ひとりの女を救えない者に、万人が救えるのか?」とささやきます。
 意思を翻した玄奘は、孫悟空にさっきの女を助けよと命じます。
 孫悟空はしぶしぶ女を連れてきます。玄奘は安全な場所まで、地湧夫人が同行することを許します。

 しばらくすると、大きな寺院があり、一行はそこに宿を得ます。しかし、玄奘の具合が悪くなり、しばらく逗留することになります。

 玄奘が倒れたのは、地湧夫人のしわざです。地湧夫人は、三人の供が玄奘から離れる隙を探りつつ、夜になると若い寺男を寝室に連れ込み、情を結んだ後で喰い殺すということを続けます。

 寺男が毎晩変死するという事件に際して、孫悟空が寺の者から相談を受けます。
 孫悟空が地湧夫人を問い詰めると、彼女はあっさりと自分がやったことだと認めて、孫悟空を寝屋に誘います。
 地湧夫人の誘いをはね除け、孫悟空は地湧夫人を捕らえようとします。

 戦いとなり、孫悟空の助っ人の沙悟浄と猪八戒も加わります。逃亡しようとした地湧夫人は、たまたまひとりでいる玄奘と出くわし、そのまま、無天洞という場所にさらってしまいます。

 地湧夫人は玄奘を無理矢理に犯そうとしますが、玄奘を連れ戻そうとした孫悟空たちと再び戦いになります。
 一進一退の末、地湧夫人は、玄奘を迷路のような洞府(隠れ家)に連れ込んで隠れてしまいます。

 洞府の捜索の途中で、孫悟空は、地湧夫人が、天界にいる「李天王(りてんおう)」と「哪吒太子(なたたいし)」を父と兄として祀っていることを知ります。

 孫悟空は天界に赴き、李天王に「お前の極悪の娘をなんとかしろ」と怒鳴ります。そんな娘などいないと李天王は怒り、孫悟空と喧嘩になりかけますが、後からやってきた哪吒太子は、かつて助けた雌妖から「これからは、李天王を父として、哪吒太子を兄として敬います」と告げられたことがあると言います。

 李天王と哪吒太子は、下界におります。
 ふたりの姿に接した地湧夫人は、玄奘を解放して、あっさりと降伏します。
 玄奘は助け出されて、再び旅が始まります。
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