※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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 第97話  波乱万丈の一夜【王小二(おうしょうじ)】~滅法(めっぽう)国
644 道術嫌いの国


「あふうう──。も、もう堪忍してよ、ご主人様……。しゅ、朱姫、い、いい加減にしなよ──」

 

 孫空女は息も絶え絶えに抗議した。

 

「なに言ってんだい。お前の体力なら、こんなの一晩でも問題ないだろう」

 

「そうですよ。それに、とっても色っぽくて、素敵ですよ、孫姉さん」

 

 しかし、宝玄仙と朱姫のふたりは、野次のような、からかいの声をあげるだけだ。

 孫空女がやらされているのは、膝よりも少し高い位置で左右に揺れ動く縄を脚をあげては跳んで避けるという運動であり、つまりは縄跳びだ。

 

 跳ばされている縄は、隣り合った樹木の幹に結んで渡してあるものであり、宝玄仙の道術で勝手に動いている。

 いやらしいのは、その縄に少しでも触れると強い電撃が走るようになっていることである。

 だから、孫空女は左右に動いてくる縄が脚に接触して全身に電撃が走る恐怖に苛まれながら、延々と跳躍運動を継続しなければならないのだ。

 

 ただし、左右に動く縄の速度は比較的ゆっくりではある。

 だから、そんなに一生懸命に跳ばなくてもいいし、連続の縄跳び運動くらいなら、孫空女の体力ならどうということはない。

 これを開始されたのは、沙那が峠の下の滅法(めっぽつ)国の国都に偵察にいってすぐだから、もう三刻(約三時間)前にはなるが、確かに、ただ縄を跳び続けるだけだったら、孫空女の体力なら問題はないとは思う。

 ただ縄を跳び続けるだけだったらならばだ――。

 

 しかし、もちろん、ただ縄を跳び続けるだけだったらではない。

 孫空女の股間には、局部を苛む刺激物のある下着がしっかりと喰い込んでいる。

 

 それだけの時間、股に刺激を受け続けたのまま、ずっと強制的な縄跳び運動を続けさせられている孫空女は、さすがに疲労困憊だ。

 孫空女は全身に滝のように流れる汗をかいていた。

 

 この縄の上から逃げたくても、孫空女の両手は後手縛りに拘束され、その縄尻を頭上の木の枝に結ばれている。

 左右に動く縄の上以外に移動することはできない。

 また、孫空女の下半身は素肌だ。

 宝玄仙に無理矢理に脱がされた孫空女の下袴(かこ)はそばの木の枝に掛けられている。

 

「いい恰好ですよ、孫姉さん──。孫姉さんの股あげ踊りは、なかなかに色っぽいです」

 

 宝玄仙と一緒に見物している朱姫がまたもや、囃し立てる。

 

「お、お前、一緒になって……」

 

 孫空女は朱姫の意地の悪い言葉に顔が真っ赤になるのを感じたが、同時に自分がいかに滑稽な仕草で縄を跨いでいるかということを自覚しないわけにはいかなかった。

 孫空女は縄がやってくるたびに、片脚を腰よりも上の高さまであげ、縄が通過すると同時にすぐに脚をおろして反対の脚を高くあげるという激しい脚あげ動作をしていた。

 もちろん、それが、かなり恥ずかしい動作だということは知っている。

 このふたりによる、さらに意地の悪い仕掛けのせいだ。

 

 つまり、孫空女がはかされている下着には、股間の下から膝くらいまでの長さの尻尾のような触手が伸びていて、その触手に縄が触れても電撃が走るようになっているのだ。

 しかも、股間への直接の電撃だ。

 だから、孫空女は、その触手の先を揺れ動く縄に触れさせないように、必死になって、異常なくらいに高く脚をあげているというわけだ。

 

 もう何度も喰らったが、その恐怖には、とてもじゃないが慣れることはできない。

 それが孫空女に必要以上の大股開きの脚あげを強要している。

 

「ね、ねえ、も、もうだめだよ。脚があがんないんだ。ちょ、ちょっと休ませてよ」

 

 孫空女はさっきから懸命に哀願をしているが、このふたりの嗜虐者は知らん顔だ。

 それどころか、孫空女が音をあげて弱音を吐くたびに、嗜虐心を満足させたような顔になって囃し立てる。

 

 ここは、滅法国という小さな国の国都に入る手前の山中だ。

 いま三人がいる峠をおりてしまえば、すぐに滅法国の国都の城門になる。

 

 だが、その国都には奇妙な掟があるということを耳にして、沙那がひとりで事前に偵察に向かっているのだ。

 その沙那が戻ってくるまで、街道から外れたこの山中で待っているということになったのだが、このふたりは沙那がいなくなった途端に、退屈凌ぎだといって強引に孫空女から下半身の下袴と下着をはぎとり、奇妙な尻尾付きの下着を無理矢理に施し、いまの縄跳び運動をさせだしたのだ。

 

「なに言ってるんですか、孫姉さん。休憩しているじゃないですか。その股の触手は動いてないですよね。それが休憩ですよ……。じゃあ、そろそろ休憩も終わりでいいですね」

 

 宝玄仙とともに毛布を敷いた上に座って、孫空女の痴態を見物している朱姫が、さっと操作盤を出して孫空女に向けた。

 

「そ、それはもういい──。だ、だめだって──」

 

 孫空女は悲鳴をあげた。

 だが、朱姫は容赦なく操作盤を作動させて、信号を孫空女がはいている下着に送った。

 

「はうううっ──」

 

 孫空女は歯を喰いしばった。

 実は孫空女がはかされた下着には、外に垂れている長い触手だけじゃなく、内側にも短い繊毛のような触手がある。

 それが朱姫が送った信号で再びうようよと動き出したのだ。

 

 肉芽から女陰の外襞、そして、蟻の門渡りの部分から肛門の外側にかけて、一斉に触手の舐めるような刺激が再開された。

 

「ひいっ、ひいいっ、た、だめえええ」

 

 孫空女の脚ががくがくと震え出す。

 大した刺激ではないということはわかっている。

 

 触手の動きを激しいものにすると、刺激の弱い孫空女には立っていることも容易ではなくなるので、ちゃんと孫空女が耐えられるぎりぎりのところで刺激を調整しているようだ。

 それでも、孫空女には全身を打ち抜くような喜悦を感じていた。

 孫空女の身体がぐらりと揺れた。

 

「はぐううっ、はぎゃああああっ」

 

 脚に電撃を帯びた。

 孫空女は絶叫した。

 股間の刺激が再開されたことで、体勢を崩して縄に脚を触れさせてしまった……。

 

 しかし、その激痛や衝撃に身体を停めることは許されない。すぐに動かなければ、縄はすぐに戻ってくる。

 孫空女は懸命に体勢を整えて、脚あげ運動を続けた。

 だが、それを邪魔するように下着の触手が孫空女の股間を苛む。

 噛んでも口には力が入らず身体も脱力していく……。

 内腿の震えがとまらない。

 

「も、もうだめ……。本当にだめ──。ね、ねえ、ご主人様──」

 

 孫空女は叫んだ。

 

「それよりも、お前、もっと感じるのを我慢しないと、脚あげじゃあ外の触手を縄から避けられなくなるよ」

 

 宝玄仙が笑いながら言った。

 宝玄仙が言及したのは、下着の股下からだらりと落ちている長い外側の触手のことだ。

 縄に当たることで電撃が流れるこの尻尾のような触手は、最初はこの触手の先端は最初は孫空女の膝よりもずっと上にあった。

 だが、これは孫空女が下着の内側の触手の刺激で女陰から蜜を沁みださせると、それに応じて成長して長くなるという仕掛けになっているらしい。

 だから、いまでは膝よりも下くらいまで成長している。

 その分、孫空女は高い脚あげをしなければならなくなっていた。

 

 宝玄仙がからかったとおり、これ以上長くなれば、孫空女がどうやっても、触手の先端が縄に当たるようになってしまい、一回ごと電撃の洗礼を股間に浴び続けなければならなくなる。

 孫空女は泣き声をあげた。

 

「な、な、な、なにやってんですか──」

 

 そのときだった。

 沙那の怒声が響き渡った。

 

「さ、沙那──。た、助けて──。ご、ご主人様たちが……

」

 孫空女は希望の声を聞いたような気がした。

 

「あらあら、戻ってきちゃったよ、沙那が……」

 

「じゃあ、終わりですね」

 

 宝玄仙と朱姫が悪びれた様子もなく笑った。

 その様子には、さすがに腹がたつ。

 とにかく、やっと、左右に動いていた縄が停止するとともに、股間の触手の動きも停止した。

 ほっとした孫空女は、後手縛りの縄に体重を預けてがっくりと脱力した。

 

「だ、大丈夫、孫女?」

 

 沙那が駆け寄ってきて、後手の縄を解いてくれた。

 

「あ、ありがとう、沙那……。お、思ったよりも、早く戻って来てくれてありがとう」

 

 腕が自由になった孫空女はほっとして、思わず沙那に抱きついた。

 

「可哀そうね、孫女……。本当に酷い人たちよねえ……」

 

 沙那がおどけた口調で孫空女の頭を撫でた。

 

「な、なんですか、沙那姉さん。あたしたち悪者みたいじゃないですか」

 

「そうだよ、沙那。これは、孫空女も同意の上の新しい霊具の試しだったんだよ」

 

 朱姫と宝玄仙が言った。

 

「な、なにが同意だよ──。同意もなにも、ご主人様が道術で脅して無理矢理にやらせたんじゃないか──」

 

 孫空女は抗議した。

 

「わかっているわよ。よしよし──」

 

 沙那が孫空女をなだめるように笑いながら、もう一度、孫空女をぎゅっと抱きしめてから手を離した。

 

「とにかく、孫空女はそれを脱いで下袴をはいて──。それから、ご主人様、これが新作の霊具かなんか知らないけど、それはここで処分します」

 

 沙那はきっぱりと言った。

 

「処分?」

 

「そうです、ご主人様……。これだけじゃなくて、霊具の類いは持っていけません……。この国の国都が道術全面禁止というのは本当です。霊気を帯びたものは、人間でも道具でも、一切国都に浸入はできません──」

 

「全面禁止?」

 

 朱姫が驚きの声をあげた。

 

「荷は細かく城門で検められますし、人間も走査されます。霊気を帯びたものを探知されたら、たちまちに衛兵に捕まって牢に入れられます」

 

「牢だって? 穏やかじゃないねえ」

 

 宝玄仙がおどけたような口調で言った。

 

「牢じゃすみませんよ、ご主人様。道術遣いだとわかれば、次の日には処刑して首が晒されます。わたしも、実際に道術遣いの首が城郭の広場で晒されているのを見ました。城郭のあちこちに道術を探知する道具が張り巡らされているようです。霊気を帯びた者が国都をうろうろするのはまず難しいですね」

 

 沙那が言った。

 孫空女はべとべとに汚れた股間を樹の陰で拭きながら、沙那の話を聞いていた。

 

「道術遣いが御法度の国かい……。困ったものだねえ……。噂は本当だったんだね。だけど、ここを通過しないと、先には向かえないんだろう? どうするんだい、沙那? わたしと朱姫は道術遣いだよ。霊気を帯びた存在ということでは孫空女もそうだ。霊気をほとんど発しないようにはわたしは制御できるけど、朱姫はそういう道術は無理だろう……。孫空女に至っては、自分で霊気なんか制御できないしね」

 

 宝玄仙が言った。

 着替えの終わった孫空女も三人の輪の中に入った。

 

「道術遣いは、全面立ち入り禁止ということかい……? だったら、諦めて、貧婆国まで逆戻りして、船で海を進むしかないのかなあ?」

 

 孫空女は口を挟んだ。

 

「いやよ──。もう、わたしは船は絶対にいや──」

 

 沙那がきっぱりと言った。

 そういえば、かつて祭賽(さいさい)国から朱紫(しゅし)国に進むときに船旅をした。

 孫空女も船酔いに悩まされたけど、沙那の苦しみようは酷かった。

 

「じゃあ、どうするんだい、沙那? 国都を通過しないように迂回して先に進むのは無理なんだろう?」

 

 宝玄仙だ。

 この滅法国が、基本的には道術遣いは立ち入り禁止の国だというのは、貧婆国から滅法国に入る国境の関を越えて時点で承知をしていた。

 しかし、国境の付近では、それは名目的なものであり、宝玄仙のような道術遣いも咎められることなく関を通過できたし、地方の城郭では霊気を帯びた霊具が店先で扱われたりもしていた。

 だが、国王が直接支配する国都だけは、そうはいかないという専らの話だったので、ひとりだけまったく霊気とは無縁の沙那が偵察に行っていたのだ。

 

「手はあります。はい、これを飲んでいただきます」

 

 沙那が懐から紙包みを取り出した。

 中には黒い丸薬が十粒ほど入っている。

 

「これは?」

 

 宝玄仙が丸薬を摘まみながら言った。

 

「城郭郊外の闇屋で購ったものです。どんなに厳しい法でも、必ず抜け道はあるということですね……。なんだかんだと言っても、道術遣いだって、国都に入ったり、通り抜けたりすることは必要です。大抵は、この霊気を一時的に停止してしまう効果のある丸薬を飲んで凌ぐそうです」

 

「霊気を封じる丸薬だって?」

 

「はい。一粒飲めば翌朝までの霊気が停止するそうです。国都に滞在しているあいだ毎朝飲めば、道術遣いであることはばれなくて済みます。そのあいだは道術は遣えませんが、一日、二日だけのことですから……」

 

「そのあいだは、術が遣えなくなるのかい」

 

「そうでさ。でも、国都で次の国に向かう手続きをしなければ、国境抜けの関を通過できません。折角なので正規に手続きをしたいと思います。おそらく半日で終ると思います。それが終われば、夕方多少遅くなっても、反対側の城門から向こうに抜けたいと思います」

 

 沙那が説明した。

 

「ふうん……。飲めばいいんですか、沙那姉さん」

 

 朱姫も丸薬を手に取った。

 

「そうよ。悪いけど朱姫から飲んで……。そして、一刻(約一時間)ほど様子を見てから、ほかのふたりが飲むようにした方がいいと思うの。身体に異変があれば、ご主人様の『治療術』で治せるから」

 

「わかりました」

 

 朱姫が丸薬を口に含んだ。

 孫空女の眼には、朱姫の身体から薄っすらと放出されていた霊気がまったく消滅したのがわかった。

 

「話はわかったよ、沙那。それにしても、なんで国王は道術遣いが嫌いなんだい?」

 

 宝玄仙が訊ねた。

 

「それは判然としませんが、昔からの国王家の掟のようですね。とにかく、滅法国では、国王家以外の道術遣いは御法度。特に、国都では絶対です。国都に入り込んだ道術遣いがいれば、見つけ次第に処刑だそうです。これは厳しく守られているようですね。いま国都に存在する道術遣いは唯一ひとりのみです」

 

「誰だい?」

 

「国王自身です。いまの国都では国王だけが霊気を帯びる存在のようです。少なくとも表向きは……。いずれにしても、霊気を帯びる者を探知する霊具を張り巡らせているのも国王の力らしいです」

 

「自分が道術遣いのくせに、道術遣いを目の敵にするのかい? 能力を独占したいということかねえ……。まあいいよ……。とにかく、そんな物騒な国は早く通り抜けるさ」

 

 宝玄仙が肩を竦めた。

 

「……ところで、沙那姉さん、さっき、霊具を全部処分すると言っていたような気がしましたけど……?」

 

 朱姫だ。

 

「ええ、すぐにかかるわ。霊具もまた道術探知に引っ掛かるみたいなの……。この丸薬を購った闇屋で厳しく注意されたわ……。というわけで、申し訳ありませんが、ここで全部の霊具は処分します、ご主人様」

 

「それは構わないよ、沙那。処分したものは、また作ればいいだけだしね」

 

 宝玄仙はあっけらかんと言った。

 

「ええっ? もったいないですよ。沙那姉さんや孫姉さんを苛める淫具がたくさんあるのに」

 

 朱姫が声をあげた。

 

「はいはい……。全部、処分してもらうからね、朱姫」

 

 沙那が勝ち誇ったような顔を朱姫にした。

 

「だったら、あたしや孫姉さんが身体に異変を起こさないようにしている首輪はどうするんですか? それも外すんですか? 孫姉さんの『如意棒』はどうなんです?」

 

「ああ、そういう身体に身に着けているものは大丈夫よ。さっき、お前が飲んだ丸薬は、身体に装着している霊具くらいだったら、一緒に霊気の放出をとめてくれて、探知しないようにしてくれるらしいから」

 

「だったら、淫具類は孫姉さんが装着していけば持って入れますよ。沙那姉さんも、触手下着くらいをはいてもらって、丸薬を飲めば……」

 

「首絞めるわよ、朱姫──。全部、捨てるのよ──。特に、淫具は全部ね──」

 

 沙那が怒鳴った。

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