目の前でふたりの美女が服を脱いでいく。
それにしても、趙俊が思い違いをしていたことがもうひとつあったようだ。
趙俊は最初に性行為を要求したとき、ふたりのうちのどちらかが相手をしてくれればいいというつもりで喋っていた。
趙俊の常識では、性行為というものは男と女が一対一で行うものであり、女を複数相手にした経験はまったくない。
もちろん、世の中にはそういう性行為もあることは知っているが、まさか、自分がそんなことができることがあるとは思わなかった。
ましてやこんな美女ふたりに……。
だが、このふたりはふたりががりで、趙俊への奉仕をしてくれるようだ。
そんな特別なことをしてもらっていいのだろうかとためらったが、せっかくかのでやってもらうことにした。
いまさら、どちらかひとりでいいという意味だったと発言して、興を削ぐとこはない。
すでにふたりともやる気満々みたいだ。
沙那と孫空女と名乗ったふたりの美女がそれぞれに腰の下着を脱ぎ、目の前に美しいふたりの裸身が現われる。
鍛えあげられたしっかりと身体の締まったきれいな身体だと思った。
「じゃ、じゃあ、ご奉仕します……」
「とりあえず、なにかして欲しいことがあれば言ってね」
裸身になった沙那と孫空女がやってきた。
ふたりの身体が趙俊にふわりと被さって、趙俊の前に跪いた。
「で、どうするの、沙那?」
孫空女が沙那を見た。
「ど、どうするって……? まずは服を脱いでもらうんじゃないの?」
沙那が当惑した様子で言った。
「でも、よく考えたら、先に手を縛ったら、脱いでもらい難いよね。最初に脱いで貰ってから、縛らせてもらえればよかった? まあ、いいや……。とにかく、なにすればいいか指示してよ、沙那」
「わ、わたしに言わないでよ、孫女──。あ、あんたが指示してよ。わたしだって、こういうときにどうしたらいいかなんて知らないわよ」
「あ、あたしが──? む、無理だよ……。なんでもするから、いいから沙那が命令してってば──。いつも、沙那がなんでも指示しているじゃないか」
「変なこと言わないでよ。わたしがいつ性行為の最中に指示をしたっていうのよ?」
「性行為の最中じゃないけど、旅の指図は沙那の役目じゃないか──。ご主人様だって、沙那の言うことはきいているし」
「それとこれとは違うわよ──。とにかく、あんたが指示して──」
「いやだよ。困るよ……。沙那が命令してよ──」
「え、ええ? い、いや無理……。ああ、こんなときこそ、役に立ってくれればいいのに、あの嗜虐娘。ご主人様と一緒に倒れちゃって……」
沙那が首を激しく横に振った。
いきなり、趙俊の眼の前で言い争いを始めた沙那と孫空女の様子に、趙俊は吹き出してしまった。
「あっ、申し訳ありません──。勝手なこと話してしまって……」
「ご、ごめん……」
沙那と孫空女は我に返ったように顔を赤らめた。
趙俊はなんだか、愉しい気分になってきた。
後ろ手に縛らせて自分たちに主導権をくれとか、女ふたりと男ひとりの性を当たり前のように始め出す態度とか、てっきり性に熟達した痴女のようなふたりなのかと受け止め始めていた。
しかし、このふたりは、そういうものでもなさそうだ。
性に対する抵抗そのものはないようだが、基本的には受け身の性しかやっことはないらしい。
そんな様子も、少し初々しくていい……。
「孫空女は下袴と下着を脱がせるんだ。沙那は俺の上衣をはだけ──。そして、それぞれ、上と下にわかれて奉仕しろ」
試しに言ってみた。
趙俊の想像が当たっていれば、このふたりには、趙俊の方から強く命令してやった方が気が楽そうだ。
「は、はい……」
「うん」
すぐにふたりが動き出した。
しかも、ふたりともほっとしたような表情をしている。
趙俊は自分の想像が正しいようだと思った。
沙那は、趙俊の言葉に従い上衣のぼたんを外して、裸の胸を剝き出しにしていく。
また、孫空女は下袴と下着を足首までおろして抜き取った。
こうやって、美女ふたりに命令して自分の服を脱がさせるというのは、なんだか王様にでもなったような気分だ。
「沙那は口だ──。孫空女は俺の怒張に奉仕しろ」
趙俊は言った。
すると、沙那が趙俊の首に両手を回して、趙俊の唇に自分の唇を重ねてきた。
趙俊は口の中に入り込んできた沙那の舌をむさぼる。
すると、沙那が趙俊と口づけを交わしながら、すぐに切なそうな甘い息を始めた。
男との口づけに興奮しているというよりは、単純に舌が敏感で刺激を受けると感じてしまうようだ。
趙俊はさらに舌を動かして、趙俊の舌を沙那の口の中に侵入させ、上口や舌の下側など思うままに舐めてみた。
「あっ、んはっ、はああ……」
沙那はあっという間に小さな喘ぎ声を出すとともに、自分の身体を趙俊の体重を少し預けるようにしてくる。
沙那の胸の膨らみが趙俊の上半身に押しつけられる。
「な、舐めるね」
一方、開いている趙俊の股のあいだに跪いている孫空女は、一度、すっかりと勃起している趙俊の男根の先端に口づけをした。
当たり前のようにやった孫空女のその行為にびっくりした。
孫空女は続いて、怒張に舌をねちっこく舌を絡ませてくる。
ねっとりと絡みつくような孫空女の舌による奉仕は、絶品だった。
趙俊はその舌の刺激に全身に電撃を帯びたような衝撃を受けた。
沙那の口づけと、孫空女の趙俊の性器への奉仕は、本当に素晴らしく、まるで身体の芯から快感を吸い取られるようだ。
性に不慣れなのか、慣熟しているのかわからないふたりだが、性技そのものは趙俊が知っているどの商売女よりも上手だし丁寧だ。
趙俊は孫空女の下半身への奉仕を受けながら、沙那の口をむさぼった。
沙那は口の中の性感が疼くのか、ときどき、「うう……」とか「ああ……」という声をあげて、やや顔を仰け反らせたような仕草をする。
それがなんとも色っぽくて、趙俊は沙那の身体を思うままに愛撫しまくりたい衝動に襲われ始めていた。
なんとなく、ふたりが最初に趙俊の両手を縛った理由がわかった気もした。
もしも、手を縛られてなかったら、ふたりから施される愛撫などやめさせて、徹底的な愛撫による蹂躙を沙那や孫空女に加えただろう。
それをされると、ふたりは本当に弱いのかもしれない。
だから、手心が欲しくて、趙俊に縛られることを求めたに違いない。
「口はいい……。ふたりで下を奉仕しろ」
趙俊は沙那の口を離して命じた。
さらに股を開いて、孫空女の隣に沙那が並んで跪く空間を作った。
孫空女と沙那が左右から趙俊の股間に舌を這わせて交互にしゃぶりだす。
「おお……」
あまりの衝撃に趙俊は小さな声をあげた。
趙俊の甲斐性では、ありつけないような美女ふたりだ。
それが技巧を駆使した性技で趙俊への奉仕をしているのだ。
たちまちに趙俊は追い込まれてきた。
「ま、待て、もういい……」
趙俊は言った。
このまま刺激を続けられたら、あっという間に放出しそうだ。
ふたりが一瞬止まった。
しかし、なぜか目を交わして、今度は沙那がすっぽりと怒張の先端を咥えて口全体で擦り出す。
一方で孫空女ははだけた上半身に顔を移動させて、乳首の回りをぺろぺろと舐め始めた。
「うわっ、まずい……。出そうだ……。口に出してしまうぞ」
趙俊は顔をしかめながら言った。いくらなんでも、口の中に放出してしまうのは申し訳ない。
だが、離してもらわなければ、本当に出してしまうそうだ。
「遠慮しなくていいよ……。正直にいえば、あたしらもここで出してくれた方がいいんだ……。精を口で受けることは嫌じゃないし、そっちの方が本番も早く満足してくれると思うし……」
孫空女が趙俊の胸に舌を動かしながら言った。
いずれにしても、だんだんと淫らな表情になるこのふたりは、それに応じて、どんどんと綺麗に輝き出す気がした。
趙俊は耐えるのをやめた。
力を抜き、ふたりの成すままに任せる。
沙那がさらに口腔の抽送を速めた。
怒張が暴発を目前にして膨れあがるのがわかった。自分の腰がぶるりと震えた。
「で、出る──。顔を──」
趙俊は警告したつもりだった。
だが、意外にも沙那は、さらに顔を鎮めて、趙俊のものを深々と咥えこんだ。
先端だけではなく、幹全体に沙那の口の肉の刺激を受けるかたちになった趙俊の怒張は、沙那の喉の奥めがけて精の塊りを迸らせた。
*
「お前は気配を殺すことがうまい……。この宿屋の他の部屋の様子を見て来い──」
たまたま逃げ込んだ宿屋の空き室だ。
外の通りから見て、この宿屋の二階部分にはほとんど客がいないということはわかった。
部屋があれば灯っているはずの明かりがほとんどなかったのだ。
だから、衛兵に追われて逃げ場をなくしていた王小二は、とっさにほかの部下を連れて、大通りから直接二階に忍びこんで隠れた。
そして、やはり、空き部屋だった。
とにかく、王小二は、逃げ込むと同時にしっかりと部屋に自分の結界を刻んだ。
これで部屋の外からは、王小二たちが忍び込んだことはわからないはずだ。
王小二の周りには、いま報告をしてきた部下を含めて七人の部下がいる。
傷を負っている者もいるが致命傷ではない。
とにかく、王小二は、しばらく、ここで隠れることにすると全員に告げた。
すると、怪我をしている者は互いに治療し合い、水筒を持っている者は回し飲みを始めた。
ただし、王小二については、水は断わった。
喉は乾いているが、霊気があるので、ある程度は大丈夫なのだ。
それよりも、道術が遣えない部下が水を潤すべきだ。
「七人か……。ほかの五人はどうしたかな……? 誰か連中がどうなったか、見た者はいるか?」
王小二は訊ねた。
「三人は死にました。衛兵に斬られました」
ひとりが言った。その三人の名を告げる。
「小鉄の野郎も死にました。剣で腹を刺されて血しぶきの中に倒れるのをこの目で見ました」
ほかのひとりが言った。
これで死んだとわかったのは、五人のうちの四人だ。
「春坊は?」
名が出なかったひとりの名を言った。
そいつを見た者はいなかった。
殺されるのはいい……。
しかし、捕えられるのはまずい……。
捕らえられれば、そいつは衛兵から拷問を受け、城郭の外にある隠れ処のことを喋らされるだろう。
そうすれば、ほかにもいる部下が軍の討伐を受けるに違いない。
まあ、いずれにしても、隠れ処の部下のことを気にするのは、王小二自身がなんとか生き残ってからだ。
このままでは、王小二たちを探しているであろう衛兵に捕まって終わりだ。
なんとかやり過ごして逃亡に成功しなければ……。
王小二は、なにが起きたかを改めて考えるために腕組みをして眼を閉じた……。
王小二は道術遣いであり、この道術禁止のお触れのある滅法国の国都を専門に荒らしている盗賊団の頭領だ。
一味の中の道術遣いは王小二ひとりであるが、この国都は道術そのものが厳しく禁止されているから、あちこちに張り巡らされてある道術探知を出し抜く方法さえしっかりと整えておけば、却って仕事はやりやすい。
道術を駆使した盗賊除けの警戒がないからだ。
王小二は、それをいいことに、国都の城郭内の貴族や分限者の屋敷などにさんざんに入り込んで金品を強奪していた。
だが、今夜に限っては失敗した。
盗みのために潜入した屋敷に、なぜか衛兵が待ち構えていたのだ。
そして、金品を盗む前に、待ち伏せをしていた衛兵に襲撃された。
さっきの話によれば、そのときの襲撃で四人が死んだようだ。
とにかく、なんとか逃亡して、七人だけはここに隠れることができたが……。
しかし、王小二の盗賊団といえば、この城郭では最高の賞金がかけられている手配犯たちだ。
衛兵たちは、まだ血眼になって王小二たちの行方を探しているだろう。
だが。逃げ道はある……。
あらかじめ『移動術』の結界を城壁の近くに刻んであるのだ。
そこまで辿り着けば城壁の外に逃げられる。城壁の外にさえ逃げれば、あとはどうにでもなる。
しかし……。
「春坊の行方を知っている者はいないんだな?」
王小二はもう一度訊ねた。
やはり、いない。
そうなると、春坊が一味を裏切っていた可能性がある。
あの待ち伏せは、どう考えても忍び込む屋敷についての情報が漏れていたとしか考えられない。
そうだとすれば、全員に教えている『移動術』の結界は遣えない。
おそらく、そこでも待ち伏せをしているはずだ。
「夜明けまで待て──。準備していた場所とは違う結界が出現するように細工をしている場所がある。そこから逃亡する」
王小二は全員に言った。
道術探知の厳しいこの城郭内では、長い時間、霊気を帯びた霊具を備付けたままにしておくことは難しい。
だから、時限付きの仕掛けをして、ある特定の時間だけ、『移動術』の結界を産み出すようにしている場所を幾つか作っている。
それは王小二しか知らないから、そこなら待ち伏せされている可能性はない。
ただ、結界の発動する夜明けまで待たなければならない……。
「頭領……」
そのとき、廊下の扉が音もなく開き、宿屋の様子を探りに行かせた部下が戻ってきた。
「ふたつ向こうの部屋に客がいます。ふたりの女です。二階にいる客はそのふたりだけです……。ただし、横になっていて動けないでいるようです。意識はあるようなんですがね……」
「動けない?」
「へえ……。もしかしたら、国王が新しく始めた“衛生水”を飲んだんじゃないでしょうか……。そんな感じなんで」
部下が言った。
衛生水というのは実は建前であり、道術遣いが飲めば昏倒しまうという本来は「魔女殺し」と称される薬液だ。
魔女殺しというが、道術を遣える者が飲めば男でも女でも昏倒してしまう。
道術嫌いの国王が、新しい仕掛けとして、城郭にやってくる余所者に必ず飲ませるようにしたものだ。
それを飲めば、すっかりと出回っている霊気隠しの丸薬を飲んでも、道術遣いであることが発覚してしまう。
それで取り入れられたようだ。
ただ、まだ新しい取り組みであり、薬剤が効いて昏倒の状態になるまでに個人差があり、すぐには影響が出てこない道術遣いもいるらしい。
だから、こういう宿屋には、突然、倒れてしまう客がいたら、必ず役人に報告するようにという触れも出されているはずだ。
部下が報告してきた女というのは、その魔女殺しの影響で倒れてしまった道術遣いの可能性が高い。
「まずいな……」
王小二は呟いた。
道術遣いというのは、同じように霊気を帯びた存在を探知する。
そのふたりが道術遣いだとすれば、いま結界を刻んでしまっている王小二の存在にすでに気がついている可能性が高いのだ。
魔女殺しで昏倒していると言っても、まだ夜は長い。
それまでに道術が復活することもあるだろう。
自分たち自身が城郭では御法度の道術遣いだから、役人に知らされる可能性は低いが、用心深い王小二としては、手だけは打っておきたい。
「……それから、頭領、その女たちの連れと思われる女がもうふたりいます。そいつらなんですけどね……」
すると、部下が突然にくすくすと笑った。
「なんだ?」
王小二は呆気にとられた。
「一階で、この店の主人を相手に、ふたりがかりで行為の途中というわけで……。その五人でこの店にいるのは全部です」
部下が笑いながら言った。
「行為?」
王小二は声をあげた。
「男女の営みですよ。男ひとりと女ふたりでね……。なかなかに、いい女のようですよ。とても美味しそうだ……。それで、ちょっと耳を澄ませたら、どうやら、上のふたりのことを黙っている代わりに、この宿屋の主人に身体を提供しているようですぜ、頭領」
部下がくすくすと笑った。
「なるほど……。だが、連れのふたりが倒れて、そいつらが元気だということは、そのふたりは道術遣いではないんだろうな……。まあ、いずれにしても、この店には朝まで隠れてないとならないんだ。いい退屈凌ぎになりそうだな」
王小二が言うと、ほかの部下もくすくすと笑う。
とにかく、二階には寝込んで動けない道術遣いがふたり……。
一階には、店の主人がひとりと、その店の主人を相手に性行為に及んでいる連れの女がふたりということが……。
つまりは、四人組みの女と、店の主人がひとり……。
「とにかく、一階の連中は後だな。二階の女から手をつけるか……」
王小二は立ちあがった。
「ほかの者はこのまま待機だ──。お前は俺を案内しろ」
王小二は、宿屋を探らせていた部下を促した。
「わかりましたが、どうするんで、頭領?」
その部下が立ちあがった。
「可哀そうだが、横になっている女ふたりには毒を飲んでもらう。どうにも、道術遣いというのは面倒だからな」
王小二は言った。