「二組目の罰奴隷の決定です――」
司会が叫んだのが聞こえた。
罰奴隷――。
あのひと組目の罰奴隷の怖ろしい姿が沙那の頭によみがえる。
だが、司会が罰奴隷と指を差したのは沙那ではなかった。
さっき、肛門に張形が挿すと説明があったとき、ひとりだけ悲痛な声をあげた奴隷だ。
どうやら、沙那よりもその女奴隷の方が間一髪だが、放尿が早かったようだ。
沙那はほっとした。
また、ほとんどの奴隷が一斉に我慢していた放尿を出したのもわかった。
沙那の身体をたくさんの手が一斉にくすぐりだした。
「いやああああ――はははははは――た、たすけてええ――あははははは――」
沙那は全身を揺さぶって笑い悶えた。
二の腕から無謀な脇、横腹から腰、乳房や乳首にも手が動き回る。
股間には愛撫ともくすぐりともつかない刺激が襲いかかる。
開いた内腿や片脚をあげさせられている足の裏にも指が這う。
耳の中まで指がくすぐる。
とにかく、考えられるあらゆる場所を同時にくすぐられるのだ。
沙那は笑い狂った。
そのとき、頭上で沙那の両手を押さえていた「手」がなくなった。
沙那はほとんど無意識に、手をおろして脇や身体をくすぐりから守った。
すると、目の前の砂時計の上側の砂が目に見えて増えた。
沙那はびっくりした。
「さあ、そろそろ始まりました――。地獄の無限くすぐり地獄――。さあ、今回の一抜けは、どの奴隷でしょうか? 奴隷の手首を押さえている拘束は、一定時間をすぎると解除されます。しかし、それで手を動かしてしまうと、砂時計の時間が追加されることになってしまいます。つまりは、耐えられなくて身体を動かせば動かすほど、くすぐられる時間が増加することになります。一組目は半刻(約三十分)続けた奴隷がおりましたが、今回はどうでしょうか――?」
司会が陽気な声をあげた。
沙那は耳を疑った。
ただ、五分を耐えるわけじゃないのだ。
こんなにくすぐったいのに、自ら身動きせずに耐えなければならないのだ。
なんという陰湿な仕掛けだろう――。
沙那に絶望が襲いかかる。
そして、一度おろしていた沙那の手を背後の柱から伸びた手が掴んだ。
再び頭上に掲げる体勢に戻され、全身のくすぐりに加えて、腋の下のくすぐりも再開される。
「いやあああ――ひ、ひいいいい――そ、そこはだめええ――」
沙那は再びくすぐりの苦しさにのたうった。
「さあ、各奴隷たちに、砂時計の砂が加算されていきます――。おおっ? この赤毛の奴隷はまだ、くすぐりが始まってないようです」
司会が絶叫した。
孫空女のことだと思った。
しかし、それ以上は孫空女のことも、素蛾のことも考えることはできなかった。
そして、襲ってくる無数の手から与えられるくすぐりの苦しみに、ひたすら激しく悶えて絶叫することしかできない。
やがて、再び手首の圧迫感がなくなった。
苦しいのはこれからだ。
自分の意思だけで、くすぐりを我慢して、身体を静止しなければはらないのだ。
「いやあああ――。いひひひひっ、あははははっ――く、くるしいいっ」
沙那は顔を左右に振って叫びながらも、腕だけは動かさないようにと思った。
しかし、無数の手は、沙那の気力を根底から奪い去っていくように全身を苛む。
それでも、なんとか砂時計の砂は三分の一にまでなった。
沙那が考えたのは、ここで動いたら終わりだということだ。とにかく、腕だけは下ろさないこと……。
それだけを思った。
そのとき、指のかたちだった柱の「手」のすべてが変形した気がした。
「いやああっ」
沙那は絶叫して身体を竦めた。
全身に襲いかかっていた指が、一斉に柔らかな穂先の筆に変化したのだ。
しかも、くすぐりから一転して、股間や乳首などの敏感な場所を下に上にと淫靡に擦ってきた。
沙那は堪らずに、全身を痙攣させてひきつったような声で泣き喚いた。
「あっ」
沙那は叫んだ。
いつの間にか沙那の腕は軽く下がっていたのだ。
目の前の砂時計が最初のときよりもずっと多い量まで上の砂を増した。
そして、またもや、「腕」が伸びて、沙那の手首を掴んで、強引に両手を上にあげさせられる。
すぐに、無数の手が襲いかかってくる。
「もういやあああっ、んくううう、あはははははは、ひいいいいっ、くははひっ、はほははは、ひゃはははは」
無理矢理に笑わされる。
苦しい――。
息ができない。
助けて――。
沙那は、なにも考えられずに、ひたすらに笑い続けた。
*
「さあ、各奴隷たちに、砂時計の砂が加算されていきます――。おおっ? この赤毛の奴隷はまだ、くすぐりが始まってないようです」
司会が絶叫した。
それが自分のことだというのは、孫空女にはわかった。
道術でとめられていた排尿を解放されても、すぐには尿を出さずに耐えていたからだ。
司会が排尿と同時に全身に迫っている柱の「手」が全身をくすぐると言っていたので、司会が言っていた五分を耐えれば、それだけで解放されるとも思った。
この状況でさらに尿意を耐えるのは簡単ではなかったが、つまりは股間の筋肉を締めつければいいのだ。
「あはあっ」
孫空女は叫んだ。
尻に挿さっていた柱の男根が、いよいよ孫空女の尻穴を抉りだしたのだ。
尿意の苦しみに全身が芯まで痺れきっている孫空女には張形による本格的な尻責めは堪えた。
思わず尿を出しそうになり、慌てて股間を締め直す。
なんとか尿は出さずに済んだ。
孫空女はほっとした。
周囲の女奴隷たちの砂時計の砂がどんどんと加算されているのもわかった。
くすぐりをしている女の腕を離して、動かしたら時間を増やすというのはなんといういやらしい仕掛けだろうと思った。
横目で見ていると、沙那などすぐに腕も下ろしてしまって、何度も砂時計の砂を加算されている。
しかも、加算されるときには、下に落ちていた砂が上に戻ってやり直しになるだけでなく、確実に砂の量が増えている。
つまり、何度もやり直しにをすると、それだけ静止していなければならない時間が増えるということだ。
だが、まだくすぐりの始まっていない孫空女はまだ、手首は拘束されてままであり、腕をおろすことで時間を加算されることはない。
このままいけば……。
孫空女の前の砂時計は目に見えて残り少なくなっている。
「おお? あちこちの女奴隷が苦労している中、これは奮闘です。この赤毛の奴隷は尿を五分間耐えそうです。しかし、ここからが正念場です。最後まで耐えられなければ、そこからくすぐり時間が再計測になりますからね……。ともかく、最後の一分になった奴隷が登場しましたので、“お邪魔ちゃん”を登場させます」
司会が孫空女の前に寄ってきて叫んだ。
お邪魔ちゃん?
それがなにかわからなかったが、観客たちはが、一斉に拍手をして歓声をあげた。
そして、頑張れとか、負けるなとか叫びだす。
観客はなにが始まるのかわかっているようだ。
すると、舞台の横から誰かが走ってきた。
子供だ――。
しかも、男の子と女の子のふたりであり、年齢は五歳くらいだろう。
ほとんど裸だったが、首に奴隷の象徴の首輪があり、蝶を思わせる大きな羽根のついた衣装をつけていた。
ただ、ふたりとも股間は剥き出しだ。
孫空女の前にやってきたふたりの童子が観客に手を振った。
「おじゃま一ごう――」
「おじゃま二ごう――。どれいのがまんをじゃまするぞう――」
童子たちが叫んだ。
「さあ、最後の一分は、奴隷調教師として育成されている奴隷童子ふたりとも戦ってもらいます。この赤毛奴隷がお邪魔ちゃんとの戦いに入ります――?」
司会が声をあげる。
すると、女の子が羽根のところからなにかを出した。
筆だ。
孫空女はぎょっとした。
男でもない道具だが、いまの孫空女には恐ろしい凶器だ。
「これでくらえ」
女の子が筆の先で孫空女の肉芽を触れさせた。
「あ、ああ、そ、そんなの酷いよ――」
孫空女は絶叫した。
尿意の限界にあるところに直接の筆による刺激だ。
孫空女は神経が錯乱しそうになり左右に身体を振った。
童女の操る筆が敏感な股間の突起を微妙に撫で擦ると、腰が砕けるような疼きが全身に走った。
その筆が肉芽に加えて、尿の出口に部分を擦りまくる。
しかも、後ろの穴は完全に張形が入って振動さえ始めている。
孫空女は狂乱した。
この状況でこれはつらい……。
それでも孫空女は最後の力を振り絞って股間に力を入れた。
「お邪魔ちゃんたちは、残り一分になった奴隷が最後まで耐えるのをあの手この手で阻止します。この赤毛の奴隷のお邪魔ちゃんへの最初の挑戦は成功するでしょうか?」
司会が元気に叫ぶ。
冗談じゃない。
ここまで我慢したのに、出してたまるものか……。
孫空女は必死で女の子の筆責めを耐えた。
「しぶといなあ。これでもか――」
女の子が筆を離して、今度は手で尿道を思い切り押し開くように動かした。
「ひぎいいっ――」
孫空女は叫んだ。懸命に尿道口を筋肉で締め返す。
「どいて――。まだ、がまんするのか? これでもくらえ」
すると、今度は男の子が女の子を押し退けて、肉芽に噛みついてきた。
「いぎいいいっ」
そんなに強い力ではなかったが、予想もしない痛みに動転した孫空女は悲鳴をあげて男の子の顔を腰で跳ね飛ばしていた。
気がついたときには遅かった。
「わっ、しまった」
一瞬だけ、完全に股から力を抜いていた……。
音を立てて、尿が股ぐらから飛び出す。
迸り始めた激しい放尿が股間に噛みついていた男の子の顔にまともに当たりだす。
「ぶあっ、汚いなあ――」
男の子はわざとらしく、孫空女の顔に尿を浴びながら悲鳴をあげたが顔は笑っていた。
「おじゃま、せいこう」
「せいこう――」
童子たちが拍手を浴びながら舞台をおりていく。
「う、うわあっ――。や、やめてえっ――─ひいいいいっ」
孫空女は排尿を続けながら絶叫した。
裸身の寸前でとまっていた無数の手が孫空女の肌をくすぐり出したのだ。
「残念でした――。もう少しでした。赤毛の奴隷は“我慢”のやり直しです。赤毛奴隷に賭けていた皆さんは残念でした――。さあ、次にお邪魔ちゃんの挑戦権を獲得するのは誰でしょうか? この中で最も我慢強い奴隷は誰か――?」
司会が言った。
ふと見ると、孫空女の砂がすっかりと上に戻っている。
孫空女はくすぐったさにのたうちながら、それを恨めしく眺めた。