恥ずかしい小便芸によって集まってしまった群衆の中からやっとのこと脱出した。
沙那が逃げるように駆けていくと、大きな看板が掲示してある場所があった。
そこに、人だかりがある。
大きな白い幕が空中に浮かんでいて文字がそこにあるのだ。
よく見ると、沙那や孫空女の名があった。
その横に数字が書かれていた。
「まあ、孫空女、あれは、奴隷品評会の本戦に出場している女奴隷たちの名が書いてあるわ。なにかの得点のようよ」
沙那は横についてきていた孫空女を振り返って言った。
すぐに、宝玄仙たちも追いついてきた。
「あれは一回戦の得点表ですね。行ってみましょう
紫音が言った。
みんなで文字が確認できるところまで進んだ。
近づくと狂ったような女の声が聞こえてきた。
一回戦で罰を受けることになったふたりの女奴隷が一本の柱を背にして、手首と足首の先を埋められて立っていた。
その柱から無数の手が出て、ふたりの女奴隷をくすぐり続けている。
ふたりの女の足元にはおびただしい汗た尿らしきものが迸っていて、ふたりは発狂したように笑い声と悲鳴をあげていた。
さらに、それぞれの女たちの周りには、たくさんの子供たちが集まって、女奴隷の性器や乳房などを興味本位に触ったりもしている。
そのあまりもの哀れな光景に沙那は鼻白んだが、とにかく、そっちを意識しないようにした。
沙那は意識を空中の掲示板に集中した。
「……得点によれば、いまのところ、孫空女さんが暫定一位ですね。三位が素蛾さん。沙那さんもいいところに着けていますよ。十八人中十位ですから……」
紫音が宙を見ながら言った。
「あたしが一位? だって、素蛾の方が一抜けだったのに?」
字が読めない孫空女が不思議そうな顔をした。
「順位はおそらく“基礎点”というのに反映されたんでしょうね。ほかにも“技術点”というのと、“芸術点”というのがあるのよ。あなたは、その技術点が飛び抜けているわ」
沙那は言った。
そして、孫空女に三人の得点を得点の内訳を教えてやった。
すなわち──。
基礎 技術 芸術 計 順位
孫空女 9 12 8 29 1 ……
……
素 蛾 10 8 7 25 3 ……
……
……
沙 那 2 5 10 17 10 ……
……
……
「へえ……。でも、基礎点が順位なら、技術点と芸術点というのはなにさ?」
得点の内訳を聞いた孫空女が言った。
「わたしもよくは知らされてはおりませんが、技術点というのは性技や性器の出来のよさだと言われています。芸術点は女としてよがるときのその美しさですね」
紫音が言った。
「あたし、三位なんですね──。う、嬉しいです。次も頑張ります──」
素蛾が悲鳴のような歓声をあげた。
見ると、眼に嬉し涙のようなものを浮かべている。
沙那は嘆息した。
「競技そのものが不甲斐ないわりには、沙那もいいところに着けているじゃないか。きっと小便しながらよがりまくる姿に審査員がいい得点をつけたのさ」
宝玄仙がからかうような口調で言った。
「ほっといてください……」
沙那は言った。
だが、心の中ではほっとしていた。
このままいけば、うまい具合に適当なところで、決勝に行かないで済む。
あと二種目だけ我慢すればいい。
そう思って、孫空女を見ると複雑な表情をしていた。
少なくとも、一位で嬉しそうな表情ではない。
「あれ? 順位の横にも数字が書いてありますよ」
朱姫が言った。
「あっ、ほんとだわ」
沙那も言った。
文字の色が少し薄くなっていたのでわからなかったが、各性奴隷の順位の横に、さらに数字が続いている。
その数字の欄には、“乳房”、“肉芽”、“女陰”、“肛門”と文字があり、その文字の下に、各選手の数字が書いてある。
沙那はその数字に目を凝らした。
沙那は、宙に浮かぶ看板に並ぶ文字と数字を孫空女のために口に出して読んでやった。
乳房 肉芽 女陰 肛門
孫空女 400 710 530 650
……
素 蛾 180 500 120 300
……
沙 那 510 950 600 800
……
「でも、なに、これ?」
沙那は思わず声をあげた。
「ああ、あれは、各奴隷の性感帯の敏感さを数値で表したもののはずです。一回戦のときに計測されていたのです。快感に敏感であることは優れた性奴隷の目安でもありますので、ああやって掲示されているのですのよ。皆さんはいい数字ですよ。特に、沙那さんは素晴らしいですね」
紫音が言った。
「あ、あれは、わたしたちの性感帯の数字? じょ、冗談じゃないわよ。あ、あんなの恥ずかしいわ──」
沙那は叫んだ。
「さすがに沙那だね。掲示されている奴隷女十八人の中で、どの数字も図抜けているじゃないかい。さすがはわたしの一番供だよ。孫空女もそこそこだね。鼻が高いよ。いいことさ。素蛾はふたりに比べれば、遥かに劣るけど、ほかの女奴隷に比べれば遜色ないし、ついこのあいだから性調教を受け始めたばかりであることを考えれば、いい数字さ」
宝玄仙が笑った。
「でも、まだまだ、おふたりにはかなわないのですね……。改めて数字で見せられると、沙那様や孫様の素晴らしさがわかります。わたくしが頑張らなければならないところも……。やっぱり胸がまだまだなのですね。もっと感じる胸にしたいのですが、これでは……」
素蛾がちょっと盛りあがっているだけの自分の胸を見て悲しそうな声をあげた。
「素蛾、おっぱいは他人に揉んでもらえば、揉んでもらうほど大きくなるらしいわよ。でも、あたしよりも大きくなっちゃだめよ……」
すると、朱姫が素蛾の背後から素蛾の胸をがばりと掴んで揉み始めた。
「ひゃあっ、ひゃっ──。しゅ、朱姫姉さん、そ、そんな……。あ、ありがとうございます。で、でも、あはあっ……」
素蛾が悲鳴をあげて、小さな身体をうねり舞いさせだした。
朱姫の手管だけでなく、胸をなにかで覆うようなことをすると、身体を包んでいる霊気で淫靡な振動を感じるようになっているのだ。
二重の責めを受けることになった素蛾は、あっという間に脂汗さえ滲ませて、歯を噛み鳴らしだした。
「しゅ、朱姫、やめるのよ。素蛾もわたしたちも、まだ競技が残ってるのよ。さっさと終わったあんたは大人しくしてなさいよ──」
沙那は叫んだ。
朱姫の気楽さが、まだくだらない競技をしなければならない自分の気の重さと重なり、忌々しくなったのだ。
すると、朱姫が少しだけ気を悪くしたように、頬を膨らませながら、素蛾から手を離した。
「はあ、はあ、はあ……。しゅ、朱姫姉さん、き、気を遣って頂いてありがとうございます。か、感じる胸になるために、また調教をお願いします……。そ、それと、沙那様、朱姫姉さんは、わたくしのことを思って胸を揉んでくれたのです。そ、そんなに怒らないでください」
素蛾が快感の余韻が残っている様子で言った。
「なに言ってんのよ、素蛾。この朱姫はなんにも考えてないわよ。ただ面白がっているだけよ」
沙那は言った。
「ひ、酷いですよ、沙那姉さん……。あたしだって、いろいろと考えてますよ」
「嘘おっしゃい」
沙那はぴしゃりと言った。
「それから、あの数字は実は二回戦にも関係があるという話です……。あまり詳しいことは知らないのですが、第二競技は身体が敏感だと不利になる競技と聞いています。それで、あの性感帯の値数が高いと、それに応じて点が最初から加算されるはずです。つまり“優遇処置”ですね。沙那さんと孫空女さんはその分は有利ですよ」
紫音が口を挟んだ。
「なるほどねえ……。じゃあ、淫乱女の沙那の挽回の機会ということかい。だけど、感じやすいと不利ということであれば、多少の優遇処置じゃ足りないだろうね。なにせ、こいつの淫乱さは群は群を抜けているからね。あの数字が証拠だよ」
宝玄仙が大笑いした。
「な、なに言ってるんですか、ご主人様──。だいたい、あ、あんなの違ってます──。わたしが孫女に比べてずっと敏感だなんて……。それにほかの女たちともあんなに差があるはずなど……。あ、あんなの絶対に間違いです──」
沙那は赤面して言った。
並んでいる十八人の中でどこかの性感帯の数字が五百を超えているのは、沙那と孫空女だけだ。
ほかの女は、どんなに高くてもだいたい肉芽の数字が五百に近いくらいだ。
それなのに、沙那など五百以下の数字が存在しないのだ。
いくらなんでも、あんなに数字が違うということはないはずだ。
それは確かに、沙那はほかの女に比べれば、少しは敏感かもしれないが……。
だが、それは少しの違いだけのはずだ。
あれでは、まるで沙那が希代の淫乱女ではないか……。
沙那は内心で憤慨した。
「だ、だいたい、数字の根拠はなんですか──? なんに対して、五百だったり、三百だったりするというんですか──? あんなの出鱈目です」
沙那はきっぱりと言った。
「一応は最大を九百九十九として、過去に存在した性奴隷との感度の比較で数字が作ってあるはずですよ」
紫音が言った。
「だ、だって、あんなにほかの人と数字が違うわけないじゃないですか。ほかの人とは倍くらい違うんですよ。わたしはあんなに淫乱じゃありません」
沙那は声をあげた。
「お前、いまだに自覚がないのかい? お前は珍しいくらいに淫乱な身体をしているよ」
宝玄仙が呆れた声をあげた。
「そうですよ、沙那姉さん。沙那姉さんくらい面白い玩具はありませんよ」
朱姫が笑いながら、ぱちりと指を鳴らした。
ぎょとしたが、なにをしたのかすぐにわかった。
沙那の股間に、いきなり朱姫の『影手』の黒い影が次々に浮かびだしたのだ。
すると、股間を隠したということになり、沙那の股から激しい淫情が迸りだした。
「いやあ──」
沙那は悲鳴をあげて、その場にしゃがみ込んだ。
悦楽が身体を支配していく。
しかし、影手は手で払いのけることはできない。
なにしろ、影なのだ。
「いや、いや、いや、はあ、や、やめえっ、あああっ」
沙那は力が抜けてしまった身体を悶えさせるばかりだった。
「へえ? 朱姫、凄いじゃないかい。沙那の道術陣をそこまで操れるのかい? 霊気を帯びていなくて、本来は道術をかけられない沙那なのに、そんなのまるで関係なく霊気を沙那に注ぎ込めているじゃないか」
宝玄仙が感嘆の声をあげた。
「ご主人様があたしに沙那姉さんたちの道術陣の波を教えてくれたおかげです」
朱姫が嬉しそうに言った。
しかし、そのあいだにも沙那に襲いかかる道術の刺激は継続している。
沙那の身体は内側から沸き起こる刺激に、切れ切れの喘ぎ声をあげて身体を震わせるほどになっていた。
「ひいっ、ひいっ、も、もうやめなさい、朱姫──。はひいっ、だ、誰か助けて──」
沙那は絶叫した。
だんだんと周りに見物人が集まるのを感じたが、朱姫はいたずらをやめる様子がない。
それどころか、ただ影を作っていただけの影手がもそもそと動き出した。
しかも、しゃがんでいる後ろ側の双臀にまで影手が張りついた感触があった。
沙那は回りに大勢の人が見ていることはわかっていたが、影手の指が二本、三本と肛門に入り込んできて、肛門の内側と外側を同時にくすぐられる状態になるに及んで、昂る声を力の限り張りあげてしまった。
「さ、沙那、こ、声が大きいよ……」
横に立っている孫空女のたしなめる声がした。
だが、いくらそう言われても、自分ではどうにもならないのだ。
「くはああっ、あふううっ」
もう、力が抜け切って腰もあげられず、ただ朱姫の道術に翻弄されるままだった。
「ああああっ」
やがて、悦びの戦慄が襲いかかり、沙那は全身を引きつらせて、声をあげながら、がくがくと身体を震わせた。
達したのだ。
沙那は両手を地面につけて息を整えた。
すると、絶頂すると同時に、沙那の身体から影手の感触が消滅した。
「はあ、はあ、はあ……」
くそう……。
朱姫め……。
沙那は朱姫を睨みつけた。
だが、朱姫は素知らぬ顔だ。
その表情に、かっと血がのぼる。
しかし、なぜか、囲んでいた見物人が拍手を始めた。
一方で、宝玄仙はけらけらと笑い続けている。
ますます、腹が煮え返る。
「しゅ、朱姫いい──」
沙那は、まだ力の入らない身体を無理矢理に立ちあがらせると、朱姫に詰め寄った。
頬の一発でも張ってやろうと思った。
股間からはべっとりと淫液の迸りが内腿を汚していて、しかも、身体を隠せない沙那には、それを周りの視界から阻むことはできない。
だが、この瞬間は、そういう羞恥よりも朱姫への怒りが勝った。
「お、お前は……」
沙那は朱姫に掴みかかろうとした。
とにかく、一発でも喰らわさないと気が済まない。
「待って、沙那姉さん──」
朱姫が沙那の腹を指差して怒鳴った。
「あっ?」
沙那は声をあげて、動くのをやめた。
自分の腹に影手がひとつ張りついているのだ。
しかも、ゆっくりと下腹部に移動している。
「あたしになにかしたら、影手を下腹部に移動させてしまいますよ、沙那姉さん……。いいんですか……?」
朱姫がいやらしい笑い方をした。
「ひ、卑怯よ、あんた──」
沙那は叫んだ。
「ず、狡いです、朱姫姉さん。沙那姉さんばっかり──。わたくしにも調教をやってください」
素蛾が言った。
「わたしは朱姫なんかの調教を受けるつもりはないわよ──」
沙那は思わず、素蛾に怒鳴った。
素蛾が、沙那の大声にびっくりしたようにひいっと息を飲む。
すると、宝玄仙がなだめるように、笑いながら沙那と朱姫のあいだに入ってきた。
「まあまあ、あんまり怒るんじゃないよ、沙那……。でも、確かにいまのは、沙那が可哀想だね……。代わりにわたしが朱姫を凝らしめてやるさ……。紫音、朝渡した小さな鈴があったろう。出しな」
宝玄仙が言うと、朱姫がぎょっとした顔になった。
紫音が宝玄仙にいくつかの鈴を渡した。
沙那は宝玄仙の手の中を見た。
そこに鈴が三個あったが、そのすべてに短い糸がついている。
そして、沙那の見ている前でその三個が消えた。
チロリン……。
すると、どこからか鈴の音が鳴った。
「きゃああっ──。お尻が──」
朱姫が悲鳴をあげた、
また、チロリンと鈴が鳴る。さらに大きな朱姫の悲鳴があがった。
沙那は朱姫を見た。
朱姫のぼろぼろの衣類の下の二つの乳首と肉芽に一個ずつ鈴がぶら下がっている。
どうやら、宝玄仙の道術のようだが、朱姫は、鈴が鳴る度にお尻に刺激を感じるように道術をかけられたようだ。
「ほら、朱姫、ついでに沙那たちと同じ道術をかけてやったよ。身体を隠していると、身体に気味の悪い虫酸が走るよ。身体を隠したりしようとすると、刺激が増大するからね。いつまでもそのぼろをまとっていると、大変なことになるよ、朱姫」
宝玄仙が笑った。
「ひいっ、な、なんですか、これ?── ご主人様、許して──」
朱姫はたちまちに泣きべそをかきながら服を身体から取ろうとした。
だが、鈴を鳴らさずに服を取るのは不可能なので、動く度にお尻に淫情を覚えてのたうっている。
沙那はその様子にすっかりと溜飲が下がってしまって、何度か朱姫の身体を押したりして、わざと鈴を鳴らして意地悪をした。
そのたびに、朱姫は与えられる快感にのたうち回った。
とりあえずの溜飲がさがったところで、沙那は朱姫を許してやることにした。
朱姫の身体から衣類の切れ端を取るのを手伝ってやる。
沙那が朱姫の脱衣を手伝い始めると、おろおろしていた素蛾もぱっと寄ってきて、朱姫から服を取り去るのを手伝いだした。
そのあいだも、鈴が鳴り続け、その都度、朱姫はあられもない姿でよがり続けた。
「大人しくしなさいよ、朱姫」
「だ、だって……んふううっ」
おかげでなかなか服を脱がせられない。
やっと素っ裸にさせることに成功したときには、朱姫はついに座り込んでしまった。
「ひいいっ」
だが、座るとさっきのおかしな気味の悪さが襲うのか、慌てて立ちあがった。
しかし、その動きで、また鈴が鳴って朱姫は腰を砕けさせた。
そのときは、辛うじて踏みとどまり、なんとか腰を落とすのは防いだ。
「こ、こんなの酷いですよ、ご主人様……」
朱姫が中腰のまま、苦しそうな声で言った。
どんな感触なのかわかりないが、余程、気持ちの悪い感触なのだろう。
すっかりと、朱姫は追い詰められた表情になった。
「お前はその状態で三人を応援だよ、朱姫。日没と同時にすべての道術が消えるから、それまで頑張るんだ」
宝玄仙が意地悪そうに笑った。