「ふううっ──」
素蛾は思わず二本の板に乗って立ちすくんだ。
板の下から這い出してきた十本以上の触手が素蛾の内腿を這い、粘性の液体をなすりつけながら股間に迫る。
そして、素蛾の感じる場所に絡みつき、気持ちのいい快感を与えてくる。
「ああっ……」
素蛾は局部が擦られることで拡がる妖しい感覚に首をのけ反らせた。
ぬるぬるの油のようなものを塗られながら局部を刺激される感触は気持ちよかった。
しかし、少しでもよがって脚を動かせば、たちまちに板から落ちてしまう。
だから、脚を拡げたまま触手の責めを受け入れるしかない。
そのため、無防備な股間を触手になぶられることになり、どんどんと身体の力が抜けていくようになる。
でも、その拘束感がいい……。
どうしようもなく無抵抗になって与えられる快感は大きな愉悦だ。
気持ちがいい。
これは、朱姫や宝玄仙に教えてもらった快感なのだ……。
だから、どんどんとあがっていく快感に身を委ねていたい……。
そんな気持ちにもなる。
だが、これは競技なのだ。
性奴隷として認められるための試練なのだ。
素蛾は快感に耐え、触手に股間をいじられながら一歩一歩と前に出た。
触手は前に出る歩みそのものは邪魔しなかった。
ただ、淫靡に股間を刺激するだけだ。
半分ほど進んだところで、触手がつるりと股間とお尻に挿入してきた。
素蛾はその衝撃でまた板の上でとまってしまった。
しかも、あやうく、その場でしゃがみ込んで脚を踏み外しそうにもなった。
でも、なんとか持ち堪えた……。
少しでも頑張って、宝玄仙や朱姫に誉められたい……。
素蛾はその一心で、触手の責めに耐えながら、少しずつ歩みを進めた。
やがて、やっとのこと反対側の台に到着した。
大歓声が起こるとともに、腹が捻れるような感覚が素蛾を襲った。
*
素蛾は地面の上に立っていた。
周りを灰色の壁に包まれていて、部屋は長細い通路のようなかたちだった。
「わっ」
素蛾は思わず声をあげた。
背中側で手首を縛っているだけだった縄代わりの触手がうごめいて、素蛾の両手を背中で曲げさせて高手縛りに変えたのだ。
素蛾は両手を背中で組むようなかたちに拘束され直した。
胸の前後にも触手の縄が食い込んで、両手は背中に密着された。
「おお、この関門の最初の障害を一番で抜けたのは最年少のお嬢ちゃんかい? 頑張れよ。応援しているからな」
そこにいた進行係の男が言った。
「は、はい、頑張ります」
素蛾は応援してもらったのが嬉しくて、自分でも驚くくらいの大声をあげていた。
男がたじろいだ顔をしたが、すぐにくすりと笑って手を軽くあげた。
不意にわっという歓声が起きた。
灰色だった壁が一転して透明になり、壁の周りに大勢の見物客がいたのだ。しかも、密着するように群がっている。
その中で特に見物人が集中しているのは、長い部屋の奥側の壁だ。
そこには、透明の壁に小さな円の線が並んでいた。上下に二列あり、上の列は赤い丸、下の列は青い丸だ。
そして、背後に振動音が聞こえた。
振り返ると、背後の足元には二列になって植物のように生えた短い触手が二十本並んでいる。
触手の色はほぼ透明であり、まるで水が張形の形に固まっているかのようだ。
触手の長さはまちまちだが、長くても三分の二尺(約二十センチ)を超えるものはなく、また、三分の一尺(約十センチ)よりも短いものはない。
ただし、素蛾側から見て前の列の触手の根元には青線が、手前の触手の根元は赤線で囲んである。
「青い線の触手は女の股に入れて、向こう側の青線の丸に一本ずつ入れる。赤い線の触手は同じように尻に入れて、やはり、向こう側の赤い丸に入れる。全部入れ終わればこの障害は終わりだ。ただし、触手の張形はそれぞれ根元まで食い込ませなければだめだ。根元まで食い込めば、子宮と腸の奥でそれぞれに白濁液が出るようになる。それを穴の中で自分で搾り取るんだ。そうすれば、触手張形は外に出せるようになる。その後、向こうの壁に股や尻を張りつけて踏ん張るんだ──。簡単だろう? もう一度、説明するか?」
男が片方だけの頬をあげて笑った。
「いえ、わかりました──。教えて頂いて、ありがとうございます」
素蛾は拘束された身体を大きく曲げて、男に心を込めたお礼を言った。
顔をあげると、男は意表を突かれたような表情をしていた。
とにかく、女の股やお尻に入れた張形を外に出す練習は、このあいだから始めたところだ。
三人の先輩たちのようにうまくはできないが少しはできる。
練習させてもらえてよかったし、その成果を試すときだと思った。
素蛾は気合を入れた。
「あ、ああ……。まあ、頑張りな……。それから、白濁液は強いものじゃないが媚薬効果がある。作業が進めば進むほどいきやすくなるぞ。達してしまえば、最初の関門の手前まで戻される……。それも、気をつけな」
また、男が笑った。
「ああ、なるほど、そういう仕掛けになっているのですね。重ね重ね、教えて頂いてありがとうございます」
素蛾はまた頭を下げた。
やっぱり、簡単には触手張形を運べないということだろう。
うまくできた仕掛けだと思った。
「……なんだか調子狂うなあ……。俺は意地悪を言ったつもりなんだけどな……」
すると、男が苦笑した。
「い、意地悪なんて、そんな……。とにかく、頑張ります……」
素蛾はとりあえず、青い触手から取り掛かることにした。
青い触手は女陰だ。
赤い触手から始めなかったのは、まだ、
そのとき、強い便意を感じた。
だから、そっちを後にした方がいいと思ったのだ。
便意を堪えて女陰で張形を絞るのは、おそらく、素蛾にはまだできないと思う。
素蛾は厠で粗相をする要領で大きく股を割って腰を下げ始めた。
「……待て。随分といい子のようだから、とっておきの秘密を教えてやろう。本当はこれは、何度も失敗する奴隷にしか教えないことになっているんだが、実は白濁液は口で先に搾ってもいいんだ。口に咥えられる長さの触手張形なら、それは股や尻に食い込ませるよりも前に口で包んで白濁液を搾れる。白濁液の媚薬は股間などで受けるよりも飲んでしまった方が楽だ。だから、そうやれば、比較的楽に作業を終えられる」
男が小さな声で言った。
素蛾は破顔した。
「あ、ありがとうございます」
素蛾は言った。
なんて、いい人なんだろうと思った。
素蛾は地面に這いつくばり、まずは口で触手張形から白濁液を吸い取る作業に着手した。
*
孫空女は三度目の板渡りに挑戦していた。
とにかく慎重に進む……。
触手を怖がるな。
自分に言いきかせる。
ゆっくりと進めば、こんな橋を渡るなどなんでもないはずだ……。
触手は歩みそのものは邪魔はしない。
ただ、快感を与えてくるだけだ……。
それは、いままでの試みでわかってきた。
孫空女は進みだした。
「ひいっ──」
しかし、少し進んだところで、さっそく板の下から触手が這い出してきた。
孫空女の身体に恐怖が走る。
触手が孫空女の無防備な股間を舐めるように動き出してきた。
「くっ」
思わず竦みそうになった身体に力を入れて、孫空女はその場所で踏ん張った。
しかし、触手に股間を縦横無尽に這いまわられると、全身の力が抜けていくようだ。
気持ち悪さで全身が粟立つ。
どうも、触手は苦手だ。
いや、苦手というか、怖いのだ……。
もしかしたら、あの女人国の如意仙女のときの恐怖が心に焼きついてしまったのかもしれない。
触手が身体に近づいただけで、心の底からのおぞましさが沸き立ってくる。
全身が竦み、身体の震えがとまらなくなる。
こんな経験はいままでになかったから、孫空女は自分の反応に戸惑っていた。
喩えるなら、蛇に睨まれた蛙のような気分だ。
蛙にはなったことはないが、蛙になって蛇に睨まれれば、いまの孫空女のような気分になるのではないだろうか。
蛇は怖くないが、触手は怖い……。
「うはあっ……はああっ……」
さっそく、触手が肉芽や肛門や秘肉に触手の先が刺激を送り込んできたのだ。
だが、甘い痺れよりも気持ち悪さが先立つ。
孫空女は自分を叱咤するようにして、それでも一歩ずつ前に出る。
しかし、半分を超えたときだ……。
これまで舐めるようにしか動いていなかった触手が、急に女陰と肛門の中に入り込み始めた。
「うわああ──。そ、それはだめだよ──」
思わず叫んで、孫空女は身体をほとんど無意識に捻った。
我に返ったときには遅かった。
孫空女は足を踏み外して、再び板の下に落下しようとしていた。
身体が道術に包まれた──。
「うわああっ──ひいい──」
気がつくと、全身を触手にまとわりつかれていた。
無数の触手が孫空女の裸身に絡みつく。
また、出発点の触手の池に戻ったのだ。急いで出ようと思うのだが、腰の力が抜けて出れない。
触手の池に戻ってしばらくすると、拘束されていた両手も自由になるのだが、孫空女は触手に絡まれると力が全く入らなくなり、どうしても逃げられないのだ。
孫空女は悲鳴をあげた。
その身体をぐいを引っ張られた。
沙那だ。
「しっかりして──。大丈夫、孫女?」
疲れた様子の沙那が触手の池から身体を脱出させた孫空女に声をかけてきた。
「は、半分行ったら中に入ってくるんだよ──。ひ、ひどいよ──」
孫空女は声をあげた。
「そんな泣きそうな顔をしないでよ……。とにかく、終わらせないと、前には進めないらしいわ……。それと、さっき関門の男が教えてくれたんだけど、十回続けて失敗すれば、もうその競技者については、触手は邪魔しないらしいわ。希望を持ちましょう……」
「じょ、冗談じゃないよ。十回も耐えられないよ──」
孫空女は叫んだ。
*
「ううっ……」
素蛾は地面に雪隠の要領で踏ん張り、お尻の中で白濁液を搾り取ろうとしていた。
とりあえず、青い線で囲まれた触手張形を前の壁に入れるのは終わった。
いまは、お尻を使って、赤い線で囲まれた張形を運ぼうとしているところだ。
お尻で運ぶべき触手張形は全部で十本だが、いまは九本目だ。
親切な進行係の男の助言に従って、まずは口で液を搾って、それからお尻で運ぶことにしたのだが、最後の二本は長すぎて素蛾の口では根元まで飲み込めなかったのだ。
いずれにしても、進行係の助言は素晴らしい助けになった。
素蛾の性感を掻き立てるように振動を続ける触手張形を女陰はお尻で根元まで飲み込んで快感を耐えるのはつらい作業だ。
だが、先に張形から液を搾ってしまえば、女陰や肛門に挿入する時間が短くて済むのだ。
それは素蛾にはありがたかった。
「はああっ」
素蛾は思わず、股を開いてしゃがみ込んだ姿勢でのけ反った。