※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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7   百合調教の洗礼

 孫空女は、沙那ととともに、まるで連行されるように、街道を外れて林の中に入った。

 この辺りは、立ち木が茂っている場所であり、空が葉で隠れて木陰になっている。草も短くて平らな地面が出ていた。

 

「ほら、その樹でいいから、背中をつけて立っていな、孫空女」

 

 孫空女は宝玄仙によって、一本の樹木にどんと押された。

 

「ふ、ふざけるなよ。て、手を外せよ」

 

 孫空女は懸命に内腿を激しく擦り合わせながら声をあげた。

 得体の知れない薬剤を塗られた股間の痒みは、のっぴきならないものになっていた。自制など不可能の痒みが襲い続けている。

 痛みにも似た苛酷な掻痒感により、孫空女はなにも考えられなくなっていた。

 

「うるさいねえ。言われたとおりにしな。そうしたら手を外してやるよ」

 

 宝玄仙がせせら笑った。

 その横では、沙那が両手で裸体を隠すようにしながら、心配そうにこっちを見ている。

 仕方なく、孫空女は後ろの樹木に背中をつけた。幹の太さは、ちょうど孫空女の身体と同じくらいのものだ。

 

「お前は背が高いからね。ちょっと屈みな」

 

「うわっ」

 

 宝玄仙の言葉が終わるとともに、擦り合わせていた両脚がいきなり大きく開いて、今度は閉じられなくなった。

 

「ちょっと腰をさげるんだよ。手を外して欲しくないのかい?」

 

 宝玄仙が笑いながら言った。

 こんな鬼畜女の言葉に従うのは、はらわたが煮えかえるほどの屈辱なのだが、この股間の痒みにはどうしようもない。

 これ以上、痒みを放置されたら、孫空女は狂ってしまう。

 それくらいの強烈な痒みなのだ。

 孫空女は腰をぐっとさげて、中腰の恰好になる。

 自然に脚はがに股になり、開いている膝を曲げるかたちになる。

 

「それくらいでいいだろうね」

 

 宝玄仙が言った。

 すると、樹木に接しているお尻に、なにかの粘性の物質が発生して、樹木の幹とくっついた。孫空女は、お尻を中途半端な高さで固定されて、動けなくされてしまった。

 

「いい格好じゃないか、孫空女。髪の毛が赤いと、下の毛も真っ赤なんだねえ。ただ、いずれにしても、わたしの供にはいらないものさ。そのうちに、全部剃ってやるよ。愉しみにしてな」

 

 宝玄仙が近づいてきて、孫空女の股間をすっと触った。

 

「ううっ、さ、触るなよ」

 

 孫空女は思わずぶるりと身体を悶えさせてしまった。

 

「可愛らしくよがるじゃないか。調教が愉しみだよ。沙那同様に、しっかりと感じる身体にしてやるよ。性技だって、ひと揃い仕込んでやる」

 

「な、なにが調教だよ。ふざけるな」

 

 孫空女は怒鳴った。

 

「ご、ご主人様、もう孫空女は許してあげてください。可哀想です」

 

 すると、沙那が声をかけてきた。

 

「なにが可哀想なものかい。まだ、随喜油(ずいきゆ)を塗って、二刻(※)も経っていないじゃないか。お前のときなんて、昼間塗って、気絶するまで夜まで放置し、さらに塗り足し、朝まで放っておいたろう。それに比べりゃあ、まだまだ我慢できるさ」

 

 宝玄仙が沙那を向いて笑った。

 これを塗ったまま、朝まで放置……?

 孫空女はぞっとした。

 

「そ、孫空女、ご主人様に許してくれと、お願いして──。そうすれば、ご主人様も慈悲をくださるわ」

 

 沙那が今度は孫空女に声をかけてきた。

 確かに、沙那の言う通りなのだろう。

 しかし、孫空女は、どうしても、この鬼畜女に憐れみを乞う気にはなれないのだ。

 

「お前は黙ってな、沙那。もうちょっと、孫空女をからかってから、本物の内丹印(ないたんいん)を刻んでやるから、そこに毛布を敷いてうつ伏せになってるんだ」

 

 宝玄仙が怒鳴った。

 沙那は、孫空女に心配そうに視線を送りながらも、背負っていた荷や装具をおろして、毛布を出し、そこに寝そべって待つ態勢になる。

 

「さてと、じゃあ、孫空女、腕を外して欲しいかい?」

 

 正面に立っている宝玄仙が孫空女の苦しそうな顔を覗き込みながら言った。

 だが、すぐに、用心深く離れた。

 その距離は、ちょうど孫空女が足を延ばしても届かないくらいだ。もっとも、足は緊箍具のために、開いた状態で固定されており、動かすこともできないのだが……。

 

 畜生……。

 思い切りぶん殴ってやりたい……。

 それが叶えば、殺されたっていい……。

 孫空女はそんな気持ちにさえなっている。

 

「は、外してよ」

 

 孫空女は叫んだ。

 とにかく、この痒みだ。

 もはや、一刻の猶予もない。

 

「外して、どうするんだい? まさか、気の強いお前が、ここで自慰をしてみせてくれるんじゃないだろうねえ?」

 

「う、うるさい、変態」

 

 孫空女は喚いた。

 次の瞬間、木の幹と身体のあいだに挟まれていた両手首が音を立てて外れた。

 孫空女は、一瞬だけ躊躇ったが、すぐに自由になった手で股間に指を喰い込ませた。

 

「あらあら、大してもたなかったね。もう自慰を始めたかい? まだ本格的な調教にはほど遠い、洗礼程度だよ。こりゃあ、落ちるのも、手間はかからなそうだね」

 

 宝玄仙が笑った。

 

「や、やかましい。お、お前にこの苦しみがわかるか──」

 

 孫空女はかっとなって叫んだが、股間を擦る指の動きをやめることはできなかった。

 痒みが消えていく快感は、なにものにも代えがたい。

 

「腰まで使い始めたかい? 思ったよりも、淫乱なんだねえ」

 

「う、ううっ、はああっ、あああっ」

 

 もう、孫空女には、宝玄仙のからかいの言葉はどうでもよくなりつつあった。

 自制することもできずに、孫空女は指を使い続けた。

 

 しかし、一方で孫空女は、この状況について、不思議な高揚感に陥りかけてもいた。

 目の前の宝玄仙の術中に嵌まって、昼間から自慰をするなど、屈辱以外のなんでもない。

 だが、その屈辱感が、なぜか孫空女を不思議な酔いのような心地に誘う気もするのだ。

 孫空女は、自分の身体と心の反応に戸惑った。

 

 その刹那だった。

 いきなり、両手が、見えない力により思い切り左右に引っ張られて身体から離された。

 

「ああ、そ、そんなあ」

 

 孫空女は声を張りあげた。

 両手は左右に分かれて後ろに引かれ、そのまま樹木の幹の後ろで、再びぴたりと手首の輪が密着して離れなくなったのだ。

 孫空女は、樹の幹を後ろ手で抱くような体勢に固定された。

 

「これでも咥えてな。随喜油がたっぷりと表面に塗ってある『痒み棒』だ。締めつけていれば、振動で痒みは癒える……。ただし、振動しているあいだは、新しい随喜油をまき散らし続けるけどね」

 

 宝玄仙が手の中に、道術で男根を思わせる張形を出現させた。

 その表面には、ねちゃねちゃとした物質が糸を引いて浮かんでいる。

 宝玄仙がそれを抵抗することのできない孫空女の股間に思い切り突っ込んだ。

 

「ううっ、おおっ、あああっ」

 

 孫空女はほとんど無意識にそれを締めつけた。

 途端に、ぶるぶるという振動が開始し、発狂しそうな痒みがちょっとだけ癒えた。

 

 だが、ちょっとだけだ。

 振動はあまりにも弱々しく、孫空女の股間の掻痒感を完全に消滅させてくれるほどの刺激ではない。

 だが、それでも、孫空女は、その些細な癒しのために、懸命に股間に挿入された張形を締めつけずにはいられなかった。

 同時に、新たな油剤が張形の表面から、どんどんと膣全体に散りまかれるのを感じる。

 

 孫空女の股間の掻痒感は、振動で与えられるちょっとの痒みの癒しと引き替えに、さらに新しい股間の痒みを産みだしていた。

 しかし、締めつけをやめるわけにはいかない。

 振動がとまれば、地獄の焦燥に見舞われるのだ。

 

「しばらく、遊んでな」

 

 宝玄仙が笑いながら離れていった。

 もう、なにかを言い返す気力もない。

 孫空女は、ひたすらに張形を股間で締めつけ、ただれるような痒みが、ほんの少し癒える快感に、悦びの声をあげ続けた。

 

 

 *

 

 

 沙那は、孫空女が宝玄仙によって、残酷にいたぶられる声をじっと耳にしていた。

 

 可哀想な孫空女……。

 

 しかし、沙那の心には、孫空女に対する奇妙な連帯感が生まれるのを感じていた。

 宝玄仙との地獄のような旅の生活……。

 それは、沙那に死を望ませるほどに、屈辱と恥辱にまみれたものだったが、それを同じことを孫空女がされているのだとも思うと、なぜか心が休まるのだ。

 

 ひとりでは耐えられないかもしれないが、ふたりなら耐えられる……。

 そんな気持ちが沙那の中に芽生えようとしている……。

 他人の不幸を望ましいものに感じるなど、自分を嫌悪したくなるが、どうしても孫空女の存在は、沙那にとっては、地獄の生活の光明のように思えてならなかった。

 

「待たせたね、沙那」

 

 宝玄仙がやって来た。

 いつになく、上機嫌だ。

 孫空女という新しい「玩具」を手に入れて、愉しくて仕方ないのだろう。

 どうやら、この鬼畜巫女は、嗜虐心が満足されて、かなり機嫌のいい状態になっているようだ。

 

「すぐに終わるからね……。ただ、簡易的な内丹印と異なり、本格的なものは刻むときに身体の痛みを伴うよ。どうしても、それは避けられないんだ」

 

 宝玄仙が言った。

 すぐに背中を中心に熱い刺激が襲った。

 

 いや、熱い……?

 あるいは、疼き……?

 

 そのどちらなのかわからなかったが、やがて、熱さそのものに変化した。

 背中だけでなく、身体全体が炎で炙られているような衝撃になる。

 

「ひぎいいっ」

 

 沙那は身体をのたうちかけた。

 

「動くんじゃない──」

 

 宝玄仙が怒鳴った。

 しかし、静止していることなど不可能だ。

 沙那は、絶叫しながら全身を弓なりにした。

 

 だが、その直後、あれだけの激痛が嘘のように収まる。

 その代わり、股間にむずむずとした疼きが襲ってきた。

 

「終わったよ……。もう、起きていいよ、沙那……」

 

 宝玄仙の声に沙那は身体を起こした。

 身体の変化を確かめるために、自分の裸体を見る。

 朝、孫空女を見たときにあったのと同じ紋様が、沙那の身体に刻まれていた。

 ただ、朝には、真っ赤な紋様があった孫空女の身体には、もうなんの線も見えない。すでに孫空女の内丹印は肌に同化しているようだ。

 ならば、沙那の紋様も、半日足らずで、すっかりと肌と同じ色に変化するのだろう……。

 

「すぐに、紋様はわからなくなる。その頃には、完全に、お前と孫空女の内丹印は効果を発揮するだろうさ……。ところで、どこか、身体の異常はあるかい?」

 

 宝玄仙が言った。

 

「か、身体の異常というか……。ま、股の付近がちょっと変な感じで……」

 

 沙那は正直に言った。

 さっきから、だんだんと股間がむず痒くなる気がした。

 それが一瞬ごとに、少しずつ大きくなるような……。

 

「そうだろうねえ。ちゃんと、お前らの内丹印が機能している証拠だよ……。まあいい。じゃあ、麓の村に行ってきな。金子も好きなだけ持って行っていい。お前たちの服をひと揃い手に入れておいで。ついでに、食料も手に入れてくるんだ」

 

 全部で四個ある葛籠(つづら)については、背負子で運ぶ以外に、勝手に開くことは許されていないが、路銀の管理は沙那の役割なので、それが入っている葛籠は、沙那は自由に開けることができる。その中から、一緒に背負い袋も取り出して準備した。村で手に入れた衣類や食料を持って来るためだ。

 それらを準備していると、大きな布と、真っ白い下袴(かこ)が放り投げられた。

 

「それをはいていっていい。さっさと行きな。裸でいろと言った命令は解除する」

 

 沙那はやっと着るものを与えられて安堵した。

 とにかく、全裸で歩かなくて済むのだ。

 沙那は立ちあがって、下袴をはこうとした。

 

「ひいいっ」

 

 しかし、次の瞬間、驚愕して下袴を放り投げてしまった。

 下袴の股間の内側の部分のちょうど沙那の女陰が当たる部分に、親指の先ほどの長さの触手が無数にうごめいていたのだ。

 

「な、なによ、これ?」

 

 沙那は思わず怒鳴って、すぐにはっとした。

 仮にも、宝玄仙の霊具だ。

 それを粗末に扱ったことで、宝玄仙が機嫌を悪くしないかと思ったのだ。

 だが、宝玄仙は嬉しそうに高笑いした。

 

「わたしの道術を込めた霊具だと言ってあったろう。いいから、はきな。新しい衣類を手に入れても、着替えるんじゃないよ。命令だ。それをはいて村に行くんだ。実験中の触手下袴だ。歩いているあいだずっと、その触手は媚薬をまき散らしながら、お前の股をいじくってくれるよ」

 

「い、いやです。こ、この大きな布だけでいいです。これだけ巻いて行ってきます」

 

 沙那は懸命に言ったが、宝玄仙が許すはずもなく、「さっさとはけ」ともう一度、首輪の力で命令されてしまった。

 

「はあ、ああっ、んん」

 

 下袴をぴったりとはき終わると、さっそく股間に接している触手が活動を開始した。

 

 気持ち悪い───。

 

 おぞましい触手に股間を這い回られる感触は嫌悪感でしかなかった。

 だが、沙那の股間に接触している触手の全部がざわざわと活発に動きだし、沙那の陰部と肛門に入り込むように先端がうごめきはじめた。

 しかも、触手の長さも自在に変化するのか、股間や肛門の中に潜り込んだものが、だんだんと奥に奥にと進み込んでも来る。

 

「ううっ」

 

 沙那は思わず腰を落とした。

 すると、宝玄仙の声が降ってきた。

 

「その触手は開発中のものなのさ……。女の愛液が餌だから、餌を与えると、どんどんと激しく動くよ。それがいやなら、愛液を垂れ流すのを我慢することだね」

 

 宝玄仙が笑った。

 

「そ、そんな───。ひゃあっ」

 

 しかし、そんなことできるわけがない。

 触手は女陰といい、陰核といい、さらに肛門など、とにかく、ありとあらゆる場所に淫らな刺激を加えてくる。

 しかも、だんだんと激しくなり……。

 

「あっ、ああっ、だ、だめえっ、だめええっ」

 

 『女淫輪(じょいんりん)』の嵌まっている陰核の内側にまで、無数の触手が伸びてきた。

 巧みに陰核の皮までめくりあげて、くすぐり動く触手の洗礼に、沙那は堪らず腰を落とした。

 

「ひうううっ」

 

 だが、その沙那の動きさえ邪魔するように、下袴の内側の触手がさらに動きを増す。

 これ以上、快感を制御できない……。

 沙那は気功術で『女淫輪』の疼きを防ぐのを諦めた。

 たちまち、我慢できない快感が全身を席巻する。

 沙那は、耐えられずに、大きな絶頂の渦に身体が引き込まれるのに任せた。

 

「あ、あああっ……。……えっ……?」

 

 しかし、まさに絶頂しようとしていた刹那だった。

 不意に触手が動きをやめて、ぴたりと静止したのだ。

 絶頂寸前で快感を突如として中断された沙那は、呆気にとられてしまった。

 呆然としている沙那に、宝玄仙が大笑いした。

 

「なんて顔をしているんだい。寸止め喰らったのが、そんなに残念だったかい?」

 

 宝玄仙が笑いながら言った。

 

「い、いえ……」

 

 沙那は顔が赤らむのを感じながら、首を横に振った。

 そして、はしたないことを考えた自分を恥じた。

 

「一応、絶頂寸前で触手は活動を静止するように調整してあるよ。安心して行ってきな。他人の前でいき狂いの恥をかかなくて済むということさ。それから、どんなに物足りなくなっても、自慰なんてするんじゃないよ。そんなことをすれば、触手が怒って、お前の股に電撃を浴びせ続けるからね。じゃあ、戻ってくるまで、脱ぐんじゃないよ。命令だ」

 

 なにが“安心しろ”だ……。

 

 沙那は心の中で悪態をついた。

 仕方なく、もうひとつ与えられた布で乳房などを隠して、立ちあがった。

 金子を入れた袋も背負う。

 

「うっ」

 

 すぐに触手が活動を再開した。

 ただ、今度はまだ動きが控えめだ。

 おそらく、まだかなりの火照りが沙那の身体にあるので、それに応じて、刺激を弱めているのだろう。

 本当に、意地の悪い霊具だ。

 

 とにかく、早く行って戻ろうと、沙那は林から街道に戻る方向に脚を進めた。

 

 

*

 

 

 

 孫空女は、樹木を背にがに股で立たされたまま、股間に挿入された張形を力一杯に股間で締めつけていた。

 締めつけている限り、ほんの少しだが張形は振動を続けていて、少しだが痒みは癒える。その代わりに、新しい痒み剤を膣の中でまき散らすので、ますます痒みは大きくなる。

 さらに苦しくなるのがわかっていながらも、孫空女は張形を締めつけずにはいられなかった。

 なんという意地の悪い淫具だろうと思った。

 

 とにかく、痒みの苦しさの限界は遥かに超えた。

 もう、視界は朦朧として、なにをしているのかという意識もない。

 ただ、必死になって、張形を締めつけるだけだ。

 しかし、いきなり、その張形が引き抜かれた。

 

「ああ、な、なにすんだよ」

 

 孫空女は思わず言った。

 だが、目の前には宝玄仙が立っていて、大きな声で笑った。

 

「なにをしようが勝手だろう。これは、わたしの持ち物だから返してもらうのさ。だけど、随喜油が気に入ったなら、塗り足してやるよ」

 

 宝玄仙はさっきまで孫空女の股間に挿入されていた『痒み棒』とかいう張形を地面に放り投げると、今度は、小壺を取り出した。朝、出発前に、宝玄仙の命令で沙那が孫空女に塗ったものだ。

 それを乳房にまで塗り始める。

 

「や、やめろ」

 

 孫空女は叫んだ。

 しかし、宝玄仙は愉しそうに、孫空女の大きな乳房に随喜油を塗っていく。しかも、乳首にはまるで油剤の膜ができあがるくらいにたっぷりと塗られた。

 宝玄仙の指は、信じられなくらいに、しっとりとして滑らかであり、しかも、指遣いが恐ろしくいやらしくて気持ちいい。

 孫空女は喘ぎ声をあげさせられてしまった。

 

「身体はかなり、淫乱にできているんだねえ。気の強い心に、淫乱な身体……。沙那と同じだね。こりゃあ、毎日の調教が愉しみでしょうがないよ」

 

 宝玄仙が大笑いした。

 そして、痒みに狂っている股間にもたっぷりと油剤を塗り足した。ご丁寧にも、密着している尻の狭間にまで擦り込む。

 

「後は、お前が音をあげるまで、待つだけさ。沙那が戻るまで、かなり時間はかかるだろうからね……。さあ、孫空女、わたしのことを“ご主人様”と呼びな。そうしたら、痒みを癒してやるよ。随喜油はわたしの霊気に反応するように調合してあるからね。わたしの精液をたっぷりと女陰に注ぎ込まれれば、嘘のように痒みは癒えるよ。それ以外に、痒みをとめる方法はないからね」

 

 宝玄仙が言った。

 

「せ、精液?」

 

 孫空女は樹木を背負わされるように拘束された身体を左右に捩るようにしながら、顔をあげた。

 精液を注ぐと言っても、宝玄仙は女だ。

 すると、宝玄仙がその場で真っ黒い法師の装束を脱ぎ始めた。

 呆気にとられる孫空女の前で、宝玄仙は内衣から下袍まで外し、さらに股間の股布まで取り去った。

 生まれたままの恰好になった宝玄仙の股間には、紛れもない男の性器がそそり勃っている。

 

 ふたなり……?

 

 びっくりしたが、孫空女の手下たちだった男たちを相手にさせたときの昨夜の乱交のときには、完全な女の股だったので、これは道術で生やしているのだろうと思った。

 

「これが欲しいかい、孫空女? 痒みから解放されるよ」

 

 宝玄仙が意地の悪そうな笑みを浮かべながら、亀頭の先で孫空女の女陰をとんと突いた。

 孫空女の腰の高さは、ちょうど宝玄仙の股間に高さに合うように、がに股で調整されてあったのだ。

 

「はうっ」

 

 孫空女がたったそれだけの刺激で腰が抜けそうになった。

 とにかく、痒いのだ。

 なんとかしてもらわなければ、発狂してしまう。

 しかし、こんな変態巫女に屈服するなど、孫空女の自尊心が許さない。

 

「早く、わたしに哀願しな……。別にいつまでも待ってもいいんだけどね。沙那が戻っても、続けてもいいし、今夜はここに野宿してもいい。お前が屈服するまで待ってやるよ」

 

 女の身体に怒張を勃起させた宝玄仙が愉しそうに言った。

 

「そ、そんなこと……」

 

 孫空女は歯を食い縛ったが、狂おしい痒みは、もう一分(※)だって耐えられそうにない。

 しかし、宝玄仙はにやにやしながら、ただ孫空女を見つめるだけだ。

 確かに、宝玄仙はいくらでも孫空女が屈服するのを待つことができる。

 それに比べて、孫空女には、もうほんの少しも我慢する猶予はない。

 この戦いは、孫空女に分がなさすぎる。

 

「お、お願いだよ……。精を注いで……」

 

 結局、ついに孫空女は赤い髪を打ち振って哀願した。

 汗と涙で宝玄仙の姿はぼんやりとしか見えないくらいになっている。

 

「ご主人様はどうしたんだい、孫空女? 内丹印を使って、痒みが倍に感じるようにしてやろうか」

 

 宝玄仙が言い終わるととともに、突如として痒みが倍化した感覚が襲った。

 孫空女はなにも考えられずに、絶叫した。

 

「か、痒い、ああ、あああっ、た、助けて、助けてよ──」

 

 孫空女は少しでも痒みを忘れようと、苦悶の声をあげながら、身体をくねらせた。だが、お尻の上で樹木に密着させられているし、後ろ手でしっかりと幹を抱いて拘束されているので、そんなには動くことはできない。

 痒みを癒す足しにもならない。

 それに、絶対的に痒い胸と股間を擦る手段はなにもないのだ。

 全身を蝕む痒みに、孫空女は嗚咽のような悲鳴をあげるしかなかった。

 

 畜生──。

 こんな女を絶対に、“ご主人様”などとは呼ぶものか──。

 その意地の一心だけで、孫空女はこの苦痛を耐え続けていた。

 

「本当にしぶとい女だねえ。ここまで待っても、“ご主人様”くらい言えないかい」

 

 やがて、宝玄仙が根負けしたように呆れ声をあげた。

 そして、指で乳首の片側をちょんと触った。

 ばしんと音がして、小さな電撃のようなものが乳首に加わる。

 

「ふううっ」

 

 眼が覚めたようになり、孫空女は身体を反らして声をあげた。

 宝玄仙が電撃の道術を遣ったようだが、いまの孫空女には痛みよりも、痒みを忘れさせてくれるありがたい刺激だ。

 

「も、もっと──」

 

 孫空女はそう叫ばずにはいられなかった。

 

「もっとかい?」

 

 宝玄仙が反対側の乳房に指をくぼませる。

 再びばちんと音がして、痛みで一瞬痒みが飛ぶ。

 

「も、もっと打って、もっとだよ」

 

 孫空女は声をあげながら、いつの間にか宝玄仙の電撃を期待するように、自分が胸を大きくせり出していることに気がついた。

 

「内丹印を刻んだということは、お前の身体は、もうわたしの一部のようなものになったということだよ。すでに、お前のものじゃないんだ。わたしのものをどうしようが、わたしの勝手だろう? そう思わないかい?」

 

 宝玄仙は今度は脇腹に電撃を打ち込んだ。

 

「ううっ」

 

 痒みの場所に直接ではなかったが、それでも痒みを忘れさせてくるのに十分な痛さだった。

 だが、残念なのは、痛みが一瞬で消え去り、すぐに痒みの苦悶が襲いかかってくることだ。

 だから、繰り返し電撃を浴びなければならない。

 

「はううっ」

 

 今度は腰の横だ。

 孫空女は脂汗まみれの裸身を仰け反らせた。

 

 しかし、なんという気持ちよさなのだろう……。

 衝撃と同時に、身体が甘く痺れて、頭の隅々にまで甘美感が響き渡るようだ。

 

「どうやら、お前はかなりのまぞっ子のようだね。でも、自分がそんな性癖だとは知らかったろう?」

 

 宝玄仙が再び乳首に直接に電撃を放った。

 

「はああっ」

 

 孫空女は声をあげた。

 “まぞ”という言葉の意味はよくわからなかった。

 だが、痛めつけられることで、甘い衝撃が四肢全体に流れ渡る。

 また、孫空女は、自分が出す声が、明らかに欲情した女の声であることにも気がついていた。

 なんで、そんな声が出るのか、自分でも理解できないが、とにかく、電撃を浴びるたびに、震えるような気持ちよさが孫空女を襲う。

 

「さあて、今度はもっと苦しいよ。一度、痒みを癒される快感を覚えてしまったら、人間というものは、それを受ける前の自制心を保持なんかできるもんじゃないのさ」

 

 宝玄仙が笑いながら離れていった。

 孫空女は愕然とした。

 これでまた、放置されれば、今度こそ発狂する。

 

 それに、あの気持ちよさ……。

 

「ま、待ってよ、ご主人様、もっと打ってよ──」

 

 孫空女はほとんど無意識に絶叫していた。

 すると、宝玄仙がにやりと笑った。

 

 ご主人様……?

 

 孫空女は自分でも驚いたが、確かに、宝玄仙のことをそう呼んだ。

 絶対に、そう呼んでやるものかと、あれだけ固く心に誓っていただけに、孫空女は唖然とする思いだった。

 

「ふふふ……。やっぱり、お前はまぞ女だよ……。しっかりと味わいな」

 

 宝玄仙が近づいてきて、女の身体にそびえ勃つ男根を孫空女の股間に突き入れた。

 

「んふううっ」

 

 我慢など不可能の快感が弾け飛ぶ。

 随喜油の痒みで爛れるようになっていた身体は、押し込まれるままに、宝玄仙の怒張を甘美な衝撃とともに受け入れていく。

 

「ほら、感じるかい、孫空女? 少しくらい、正直になりな。気持ちいなら、気持ちいと言うんだ」

 

 宝玄仙が孫空女の乳房に舌を使いながら、腰を前後させて怒張を出し入れする。

 

「うう、ああっ……い、いい、き、気持ちいい……く、口惜しいけど……気持ちいい……ああっ」

 

 孫空女はそう言わざるを得なかった。

 掻痒感が消滅する気持ちよさだけでなく、身体の性感という性感が沸騰するくらいに熱くなるのだ。

 

「もっと、よがり泣きな、淫乱な女頭領。これがいいかい……。それとも、これかい?」

 

 宝玄仙がからかうような口調で声をかけながら、深々と怒張を突き入れたかと思えば、浅く入り口部を擦るだけにしたり、そうかと思えば、いきなり限界まで貫いて、円を描くように入り口部を押し入れたりする。

 とにかく、孫空女は翻弄されて、甘い声をあげ続けた。

 

「はあ、はううっ、あふううっ」

 

 巧みな宝玄仙の抽送に責めあげられ、孫空女の脚はがに股のまま、がくがくと激しい震えをするようになった。

 突かれては声をあげ、引かれては声をあげる。

 孫空女はひたすらに快感を貪られる。

 こんなに気持ちのいい性交は初めてだ。

 

「いきそうかい、孫空女?」

 

 宝玄仙が突きながら訊ねた。

 

「ひいっ、ううっ、い、いく……。う、うん、いきそうだよ、ご主人様……」

 

 孫空女はいまにも昇りつめそうな夢心地の中で言った。

 また、“ご主人様”と呼んだか……?

 そう思ったが、さっきほど心に抵抗はない。

 

 それよりも、気持ちがいい。

 とにかく、気持ちがいい……。

 

「だったら、いきな」

 

 宝玄仙がにわかに抽送の速度をあげた。

 一気に快感が上昇する。

 強烈で芳烈なうねりに襲われ、孫空女は大きく腰を揺らした。

 

「ふわああっ、いくうっ、いくよお、ご主人様」

 

 孫空女は悲鳴のような声を放って、絶頂に昇りつめた。

 宝玄仙が怒張を抜いて、すっと孫空女から離れていった。

 孫空女は絶頂の余韻に浸りかけたが、それはほんの少しでしかなかった。

 

 再び、あの随喜油の痒みが襲いかかって来たのだ。

 

「ああ、か、痒い、痒いよお──。ご、ご主人様、痒みが消えない」

 

 孫空女は身体は激しく揺すりながら叫んだ。

 すると、宝玄仙が大笑いした。

 

「当り前だろう。精をもらわないと、痒みは消えないと言っただろう。お前は達したけど、わたしは精を放っていないんだ。だから、痒みが消えるわけないじゃないか」

 

 宝玄仙は笑い続ける。

 孫空女は歯噛みした。

 だが、哀願するしかない。

 孫空女は、もう一度犯してくれと、宝玄仙に訴えた。

 

 そのときだった……。

 得体の知れない違和感──。

 

「上──」

 

 孫空女ははっとして、声をあげた。




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