沙那たちがやってきたのは、
夜だったが月明かりで明るい。
沙那たち五人は、温泉に設置された脱衣所で素裸になり、寇員外とともに湯に浸かった。
さすがに寇員外も、五人もの裸女に囲まれて裸になるのは気後れした感じのようだったが、機嫌のいい宝玄仙に、取りあげられるように下帯を剥がされ、恥ずかしそうにしているのが少し面白かった。
「最高だよ、寇員外。これは気持ちいいよ」
湯の中の宝玄仙が本当に満足したような表情で言った。
確かに気持ちいい湯だ。
湯は適度に温かく白く濁っている。
おそらく、薬用の成分もあるのだと思う。
湯が肌に絡みつくようで快適だ。
そのなめらかな湯の感触が、旅の疲れをなんともいえない優しい心地で癒してくれる。
これから、孫空女とふたりで目の前の寇員外に性奉仕する……。
それが宝玄仙の命令なのだが、沙那はもう諦めているし、覚悟もしている。
よく考えると、出会ったばかりの男に身体を提供しろという宝玄仙の命令は、ひどく理不尽なような気もするが、まあ、いまさら守らなければならない貞操があるわけでもない。
それに、この寇員外はとても善良そうな感じだ。
寇員外とここで性行為をすることに、別段の不満は沙那にはない。
そういう風に感じるようになってしまったというのは、すっかりと宝玄仙に染まってしまったのだと思わなくもないが……。
「さあ、約束だよ、寇員外──。お前の三つ目の玉を見せておくれ」
しばらく温まったところで、宝玄仙がそう言って、寇員外を湯の縁の岩に座らせた。
食事のときに、この寇員外が自分には睾丸が三個あるから精力が強いと話し、宝玄仙がそれは珍しいのでよく見せろと求めたのだ。
「なんか照れますなあ」
膝から下だけを湯に浸からせて湯舟の縁に座った寇員外が、苦笑して大きく股を開いた。
五人で湯の側から寇員外の脚のあいだに集まるようにして、寇員外の性器を見物する。
確かに、普通はふたつしかない睾丸が三つあるように思える。
しかし、沙那はそれよりも、玉袋の大きさにびっくりした。
男根の大きさは普通だと思うが袋は異常に大きい。
なんだか圧倒されている気分になり、少しのあいだ茫然としていたが、すぐに我に返った。
いったい自分はなにをしているのだろう。
他人の性器をしげしげと眺めるなど、そんな恥ずかしいことをどうして堂々と……。
とりあえず、沙那は視線を外した。
「お、お前、これって……。お前は道術遣いかい──?」
だが、寇員外の股のあいだの正面にいる宝玄仙がびっくりした声をあげた。
「どうしたのさ、ご主人様?」
宝玄仙の横にいる孫空女が宝玄仙に顔を向けている。
沙那も宝玄仙の驚きようが大きいので不思議に思った。
「ご主人様、もしかしたら、これって……」
朱姫も目を丸くしているようだ。
「そうだよ。まったく、気がつかなかったけど、これは『魂の欠片』だよ。こいつの真ん中の玉は間違いなく魂の欠片だ……。これは驚いたねえ……。お前は、自分の魂の欠片をふぐりの中に入れているのかい、寇員外?」
宝玄仙が寇員外の睾丸を凝視しながら言った。
「た、魂の欠片ですと……? なんですか、それは?」
しかし、寇員外は不思議そうな顔をしている。
「ご主人様、魂の欠片とはなんでしょうか?」
好奇心の強い素蛾が訊ねた。
「魂の欠片というのは、道術遣いが自分の魂の一部を分離したものよ。そうすると、本来の魂が失われて死んでも、その欠片から魂を復活できるのよ。でも、復活の術そのものは、誰でもできるような施術ではないわ。ご主人様のような力のある道術遣いでないと……」
朱姫が素蛾に言った。
「私の睾丸が、その魂の欠片という大それたものだというのですか? まさか……」
寇員外は笑い出した。
「笑い事じゃないさ。本当のことだよ。だけど、確かに妙だねえ。魂の欠片というのは、道術遣い特有のものであり、霊気を帯びない人間には、そもそも魂の分離するという施術そのものができないはずなんだがねえ……。寇員外からはなんの霊気も感じないね……。朱姫、お前の半妖の目でなにかを感じるかい?」
「なにも感じません、ご主人様。この人は道術遣いではないと思います。でも、あたしにも、寇員外さんの真ん中の睾丸が魂の欠片であることはわかります。こんなことってあるんでしょうか……?」
朱姫も首を傾げている。
「私は道術遣いでもないし、それにさっきから、なにかの施術と言っていますが、これは生まれつきのものですぞ。寇家の嫡男は全員が睾丸が三個あるのです。実は、私の息子の寇棟も三個の睾丸を持っておりますな……。ところで、もう、浸かってよいですかな」
寇員外は湯の中に戻った。
「生まれつきかい……。そんなこともあるのかねえ……? もしかしたら、先祖に大きな力を持った道術遣いがいて、自分の子供にそうなるように道術をかけて血に残したのかねえ……」
宝玄仙が首を傾げながら、独り言のように言った。
「ああ、それは耳にしたことはあります。寇家の祖先は、この国の歴史にも出てくるほどに有名な道術遣いです。でも、一代限りですね。代々の
寇員外が言った。
「でも、その血には道術遣いの血がしっかりと受け継がれてはいるということかねえ……。だけど、魂の欠片の隠し場所を自分の身体にするなんて無意味だろう。魂の欠片というものは、確かに、命のあるものの中に保管しなければならないのだけれど、包んでいる容器の生命が滅びれば、すぐに欠片も死んでしまうよ。自分の身体そのものに包んでしまったら、肉体の死と本体の魂と魂の欠片が同時に滅んでしまって、なんにもならないじゃないか」
「だから、そんな大層なものじゃありませんよ。ただの玉です。私の精力を無尽蔵に高めてくれる意外に役は立ちません」
寇員外が笑った。
「まあいいか……。じゃあ、沙那、孫空女……。寇員外の前に行きな。じゃあ、さっそく始めるんだ」
宝玄仙に促されて、沙那は孫空女と一度目を見合わせてから、湯の中を寇員外に向かって進んだ。
「よ、よろしくお願いします……」
「よろしくね……」
沙那と孫空女は頭を下げた。
「おお、これは、こちらこそ……」
寇員外は笑った。
「沙那様、孫様、勉強させていただきます」
素蛾が正面に移動してきて、大きな声で言った。
いつも健気でまじめな童女だがこんなときは迷惑だ。
あんな風にしげしげと凝視される態勢だと少しやりにくい。
そもそも、よく考えれば、こんなこと人前でするものじゃないはずだ。
「素蛾、沙那姉さんや孫姉さんじゃあ、性奉仕の勉強にはならないわよ。おふたりはそんなことはできないわ。ただ、感じやすくてよがりまくるだけよ」
朱姫が茶化すように口を挟んだ。
「う、うるさいわねえ」
沙那は怒鳴った。
しかし、宝玄仙が横で笑いながら、口を挟んだ。
「確かに、そうだね。ねえ、寇員外、悪いがこいつらふたりは、積極的に奉仕をするのは苦手なんだ。だから、お前の方から導いておくれ。その代わり、なんでも応じると思うから……。こいつらふたりは、これでもふたりいれば、百人でも二百人でも相手にできる女戦士なんだ。それでいて、とても淫乱な身体をしているのさ。とにかく、たっぷりと愉しんでやっておくれ」
「これは、これは……。でも、確かに鍛えられた逞しい身体をしておりますね。それでいて、とても女らしい丸い線もしている……。素晴らしい身体ですよ……。では失礼して……」
寇員外が沙那の身体の顔を寄せて、唇で乳房を吸い始めた。
「あはあっ──」
沙那は上体を逸らせて、悲鳴に近い声をあげていた。
「ふふふ……。ほらね、素蛾……。沙那姉さんって、感じやすいでしょう? だって、ただ、乳首をちょっと吸われただけで、あんなに声をあげたりして……」
横で朱姫がからかいの言葉を口にした。
沙那は一瞬だけ我に返り、朱姫に向かって声をあげた。
「……お、お前だって、お尻が弱いくせに──。ちょっと、お尻に刺激をもらうだけで、あっという間に達するじゃないのよ──」
「そ、そんなこと、いま関係ないじゃないですか──」
朱姫が真っ赤な顔になった。
「ほら、朱姫、口を挟むんじゃないよ、沙那の気が散るだろう──。すまないねえ、寇員外。もう一度やっておくれ」
宝玄仙だ。
寇員外は沙那が朱姫に声を荒げたときに、乳首を咥えた唇を一度離していたのだ。
「いえ……。皆様、仲がよさそうだ。きっと、よいお仲間なのでしょうね……。ところで、沙那殿は少し被虐の癖があるようですね。沙那殿と……もしかしたら、孫空女殿もそうなのですかな? 積極的に奉仕するのが苦手というのは、そういう意味なのですね」
寇員外が笑った。
沙那はびっくりした。
「これは、驚いたねえ……。ちょっと、肌に触れて、ほんの少し反応を見ただけで、もう沙那の性癖を見抜いたのかい。確かに、こいつは強い被虐癖だよ──。特に、縛られたりすると、異常なくらいに興奮するよ。このわたしがそう仕込んだからねえ」
宝玄仙が驚嘆の声をあげた。
「な、なに言ってるんです、ご主人様──。わ、わたし、そんなんじゃないですよ──」
沙那は抗議した。
「沙那姉さんこそ、なにを言っているんです。自覚ないんですか……?」
朱姫が横で笑った。
「では、こうしましょう。沙那殿、後ろに両手首を回してください……。まあ、戯れ事ですよ。遊びです。性行為など男女の戯れ事ですからな。お互いの性癖を曝け出し合って愉しまねば──」
寇員外は岩に置いてあった手拭いの束から一本を取り出して紐のようにした。
「わ、わたし、被虐癖なんかじゃあ……」
沙那はぶつぶつとまだ文句を言ったが、宝玄仙や朱姫だけじゃなく、寇員外にまでせせら笑われた。
仕方なく、沙那は両手は背中に回す。
寇員外はその手首を軽く手拭いで縛った。
「さあ、孫空女殿も……」
「うん……」
横の孫空女も沙那と同じように手拭いで両手首を背中で縛られている。
「さて、じゃあ、おふたりには、これもしましょう」
寇員外は、さらに手拭いを取り出すと、さっと沙那に目隠しをする。
「あっ」
沙那は悲鳴のような声をあげてしまった。