「あなたを思い切り愉しませてみせます。あなたは千人切りの最後のひとりなのですから。それくらいをしなければ、私の気持ちが収まらないのです」
「もう、すっかりと愉しんだよ、寇員外……。だから、拘束を解きな。それよりも、わたしが娼婦にでもなったつもりで、お前に尽くしてやるよ」
宝玄仙は手首と足首に繋がった鎖を揺すりながら言った。
しかし、鎖の張りは緩いが、しっかりと寝台の前後に繋がっている。簡単には外れそうにない。
「いえいえ、それには及びませんよ、宝玄仙殿。それに、私はあなたの美しい身体をとことん味わいたいのですよ。あなたはなにもしなくていいのです。そうやって、手足を拡げていてください。あとは私がやりますから」
「わかったよ……。命令に従うよ、ご主人様」
宝玄仙は苦笑しながら言った。
もっとも、時間をかけて無理をすれば、枷を霊具にする霊気を刻むことで外すことはできると思う。
霊具作りは宝玄仙のもっとも得意な術だ。
だが、もう宝玄仙は寇員外に従う気持ちになっている。
寇員外の責めを受けるつもりだ。
それに、寇員外の言う通りかもしれない。
拘束されてなにもできない状態になると、確かに、宝玄仙は全身に妖しい疼きに包まれる。
どうしようもない絶望感が宝玄仙の身体を恐ろしく敏感にするのだ。
そういえば、幼いころ、まったくいまと同じ状態に拘束されて、母親の調教を受け続けた。
あの母親は、まだ幼かった宝玄仙に性愛の愉しさを教え込もうとして、嫌がる宝玄仙の手足をこうやって寝台に拘束し、局部を弄ったり、妖しい媚薬を塗ったりしたのだ。
なぜかその記憶がふと蘇った。
「ご主人様はあなたですよ、宝玄仙殿……。私はあなたの下僕です」
寇員外がそういうと、顔を宝玄仙の足に寄せて、足の指を舐め始めた。
「うっ」
宝玄仙は思わず呻いた。
さざ波のような官能の波が足の指から全身に広がったのだ。
寇員外は宝玄仙の身悶えを愉しむかのように、足の指から足の裏にかけての部位に丁寧な舌の愛撫を加えてくる。
「んんっ、ははあっ……。く、くすぐったいよ……」
宝玄仙は訴えたが、寇員外は執拗だった。
「そんなはずはありませんね……。あなたの肌からは、しっかりと欲情を感じますよ」
寇員外が宝玄仙の足を舐めながら言った。
「くっ……」
宝玄仙は歯を喰い縛った。
寇員外は、一本の足の指に時間をかけて、ねっとりとしゃぶりつくしてくる。
たかが足の指だとは思うが、こんなに感じる場所だったのかと宝玄仙自身も驚くほどに、寇員外の舌で快感が掘り起こされていく。
十本の足の指が終わったころには、宝玄仙の全身はすっかりと欲情を取り戻して、強い淫情に覆われてしまっていた。
「はあ、はあ、はあ……」
しかし、寇員外はなかなか局部まであがっては来ない。
足の指を舐め終わったら、次は片側の脚のふくらはぎから膝にかけての部分に舌を這わせてきた。
そして、寇員外が膝小僧の周りを舐め回し、皿のところを急に強く唇で強く吸いあげた。
「はああっ」
宝玄仙は身体をびくりと震わせてしまった。
そして、驚いてしまった。
膝を少しばかり口で吸われただけで、こんなに感じるとは思わなかったのだ。
それにしても、唖然とするような舌の技だ。
宝玄仙は、男でこれほどの舌遣いの上手な相手はこれが初めてだった。
「素晴らしい脚ですね……。本当に敏感な性感帯の宝庫ですよ。一晩中こうやって、舌で奉仕しても飽きない脚です。ところで、こんなところも感じるのではないですか?」
寇員外が太腿の裏あたりを口で強く吸いあげた。
「ひううっ」
宝玄仙は声をあげた。
唐突な快感が走り、それが大波となって全身に強い疼きが迸ったのだ。
寇員外がさらに付け根の部分に舌を近づけ、舌や歯や唇で刺激を繰り返していく。
「い、いい……、き、気持ちいいよ、寇員外……ああっ……はっ……はっ……」
堪らない刺激に、宝玄仙は拘束された身体を弓なりにさせた。
足の先から頭のてっぺんまで快感のうねりが押し寄せる。
このまま脚を舐められるだけで達してしまいそうだ。
宝玄仙もさすがにこんな経験は初めてだった。
だが、寇員外は舌が局部に近づいたところで、さっと身体を起こした。
今度は宝玄仙の頭側に移動して、宝玄仙の頭の先に胡坐になった。
そして、両手を伸ばして、宝玄仙の乳房を揉みだす。
「ところで、あなたの乳房は異常なほどの感度なのですね? あなたを抱いていてそれに気がついたのですが、なにか特殊なことをされたのですか?」
寇員外が軟らかい手つきで全体を捏ねるようになぞりまわしてから、ゆっくりと宝玄仙の乳房を揉み始めた。
「はああっ」
宝玄仙は身体を跳ねあげた。
以前、乳房の感度をあげる施術を何度か強制されたことがある。
一時期は乳房自体が肉芽並の感度があったときもあった。
それを長い時間をかけて、少しずつ道術で正常な状態に戻してきたのだが、こうやって一度火が付くと、それが戻ってくる。
寇員外の手はあっという間に、宝玄仙の乳房の感度を怖ろしい状態の感度に戻してしまった。
「だ、だめえ、そこはだめ、いく、いく、いくよ──」
宝玄仙は全身を震わせて悲鳴をあげた。
乳房だけでいくなど、宝玄仙としたことが恥もいいところだが、もう、これは我慢できない。
「いぐうう──」
手のひらに力を込めて揉みほぐす寇員外の手管に宝玄仙はついに追い詰められた。
全身を溶かすような快感が襲ってきたのだ。宝玄仙は絶叫した。
「大丈夫ですよ。まだまだ、いかせませんから……。胸だけで昇天させるような失礼はいたしません。どうぞ、私と一緒に達してくださいね」
しかし、絶妙の瞬間に、寇員外はさっと手を乳房から離してしまった。
「はうう……」
宝玄仙は脱力しながら息を吐いた。
絶頂寸前の状態から快感を戻されて、身体にただれるようなもどかしさが襲う。
しかし、寇員外は
すぐに乳房への愛撫を再開した。
勃起した乳首を指で挟み、また乳房を揉みあげてくる。
そして、快感の広がりに宝玄仙が耐えられなくなり、絶頂の兆しを示すと、さっとぎりぎりで離してしまう。
それは、まるで道術のようだった。
どうして、昇天する直前がわかるのだろうと思うくらいに、巧みに刺激を中断してしまう。
だが、それを繰り返されることで、宝玄仙の身体は焦らし抜かれて極限の状態になってしまった。
「も、もう、堪忍しておくれよ──。欲しいんだよ。来ておくれよ」
ついに宝玄仙は哀訴した。
「つらいのはわかりました……。でも、まだまだ、これからですよ。その代わり、最後には最高の快楽をお約束しますから……」
寇員外は笑いながら、再び自分の身体を宝玄仙の股のあいだに移動させた。
そして、顔を宝玄仙の身体に伸ばすと、今度は脇腹から腰の横にかけての部分に舌を這わせてきた。
「はああっ」
喉の底から声が出た。
寇員外の精錬された巧妙な舌技だ。
ただ舐めているだけじゃなく、宝玄仙の反応に合わせて、舌で擦る力を加減している。
はじめはくすぐったいくらいに軽いのだが、宝玄仙がくすぐったさに身を捩ると少し強めに舌を押すのた。
それでくすぐったさが快感に変化する。
すると、そこを唇で押し、さらに指でなぞってくる。
同じ場所を繰り返して異なる感触が襲われる。それが身体のあちこちで繰り返される。
宝玄仙は激しく身悶えた。
鮮烈な快感が宝玄仙を襲っている。
せりあがった甘美感は限度を失ってあがり続ける。
身体には絶頂するのに十分な快感が充満していた。
しかし、最後のひと押しだけが与えられないので、溜まった快楽は行き場のないまま全身を渦巻く。
そして、そこにまた、発散しない快感が加えられていく。
寇員外はなかなか股間を責めてはくれない。
腰の横をしばらく舐めていたかと思うと、再び舌を上に移動させて、脇腹から脇にかけてを刺激し始める。
そして、二の腕まで舐めあげると、再び腰の横まで舐め戻ってくる。
それが執拗に繰り返された。
ゆっくり、ゆっくりと……。
焦らし抜かれて、宝玄仙はもう狂ってしまいそうだ。
宝玄仙は、もうこれ以上快感を溜められたくなくて、身体を捻って、寇員外の愛撫から逃げようとした。
しかし、寇員外はそんな宝玄仙の動きも計算に入れるように舌を這わせてくる。
宝玄仙が身体を捩ると、そこに舌が置かれて、急にくすぐったい感触が襲いかかるのだ。
身をよじればくすぐり──。
そのままじっとしていれば耐えられないような快感──。
宝玄仙はすっかりと寇員外に翻弄されてしまった。
寇員外がやっと股間に舌を動かしたのは、拘束されて愛撫を受け始めてからかなりの時間が経ってからだった。
おそらく、二刻(約二時間)は経っている。
宝玄仙は、男との性愛で、これだけの長時間にわたって前戯を続けられた経験はない。
よくも自制できるものだと思う。
女を愛撫しているあいだは、寇員外も欲情しっぱなしの状態のはずだ。
それを二刻(約二時間)も我慢して、女を愛撫し続けられるというのは凄いと思う。
寇員外の舌が宝玄仙の股間を動き出した。
「うわあっ、あああっ──」
焦らし抜かれた局部への舌の愛撫は強烈すぎた。
峻烈な快感に宝玄仙は絶叫した。
「ふふふ……。素晴らしい反応ですね。美しいですよ、宝玄仙殿」
寇員外はくすくすと笑って身体を移動させた。
また、股間から離れて、膝の裏付近を舐め始める。
「あっ」
宝玄仙はびっくりした。
この期に及んで、局部から愛撫が離れるとは思わなかったし、たった一度だけ、刺激を与えられるだけで放っておかれるというのは、この状況では残酷ともいえる仕打ちだ。
宝玄仙は切なさに身体を悶えさせた。
だが、寇員外の唇が膝周辺を舐め始めると、身体に電撃が加わったような錯覚になり、大きな震えが全身に走った。
寇員外は、再び、徐々に舌を足首側に移動させていきながら、巧みで変化に富んだ舌と唇の刺激を脚に加えていった。
そして、また足の指を舐め始める。
最初のときとは比べものにならないくらいの快感がそこから起こった。
これほどまでに足の指が敏感だったのかと思うほどに、宝玄仙は一本一本の指に舌が這うたびに全身を跳ねて咆哮した。
さらに足の裏までしっかりと舐めあげられた。
片方が終わると、もう一本の足の指──。
反対の脚の足首からふくらはぎ──。
また、這いあがる舌──。
やっと、太腿に舌が近づく──。
「はがあああ──」
宝玄仙は絶叫した。
寇員外の舌が股間をぺろぺろと舐め始めたのだ。
「はぐっ、はがっ、はああ──」
身体が弓なりになった。
溜まりに溜まった快感が全身に迸る……。
しかし、やはり、寇員外はどこまでも執拗だった。
またもや、ぎりぎりのところで宝玄仙の股間から舌を離して、反対の脚の太腿に逃げていく。
宝玄仙はついに泣きじゃくってしまった。
だが、寇員外はそれで許すことなく、またもや脚に舌を滑らせながら脚を舐めていく。
どこまで続くのか──?
宝玄仙は哀願を繰り返しながら、ひたすら泣き声をあげた。
そして、片側の脚が舐められ、足の指と足の裏を余すことなくしゃぶられてから、やっともう一方の脚になる。
それが繰り返される。
今度は太腿の付け根までいくと舌が腰の横に移動した。
腰から脇にかけて丹念に舐め、乳房を唇で吸い始める。
だが、絶対に絶頂まではさせない。
必ず、寸前で刺激をとめるのだ。
宝玄仙は悶え狂った。
片側の乳房が終わると、もう一方──。
逆側の脇から腰──。
あまりもの執拗で長い舌責めに宝玄仙は、もう自分がどうなっているかもわからなかった。
頭も朦朧として、視界も霞んでいる。
すると、不意に腰が持ちあげられた。
なにが起きているかわからなかったが、いつの間にか寇員外の怒張が宝玄仙の股間に突きつけられていた。
寇員外は怒張の先を宝玄仙の股間になすりつけるように動かすと、先端を女陰に喰い込ませてきた。
「はあああ──」
宝玄仙は呼吸もできなかった。
寇員外の怒張が一気に最深部まで到達した。
これだけの長時間にわたって焦らし抜かれた身体に、やっと押し入ってきた寇員外の男根は途方もなく峻烈で甘美だ。
そして、律動が始まった。
「うはああ──」
宝玄仙は身体をがくがくと震わせて快感を弾けさせた。
あっという間に達してしまうと思った。
「おっと……」
すると、寇員外がぴたりと静止した。
絶頂が寸前で逃げていく。
宝玄仙は歯噛みした。
寇員外が律動を再開したときには、絶頂の感覚は逃げていっていたが、激しい突きあげを受ければすぐにでも達してしまいそうだった。
だが、寇員外は性急ではなかった。
ゆっくりと腰を引いた寇員外は、浅いところで十回くらい緩い律動を行い、そして、遅い速度で幹を進めてきた。
それはあまりにもゆっくりだった。
まるで、貴重品でも扱っているかのような慎重さだ。
でも、もう宝玄仙には耐えられなかった。
自分から腰を振って寇員外の男根を擦ろうと思った。
だが、宝玄仙がそれをしようとすると、寇員外の男根が逃げて行ってしまった。
「駄目ですよ、宝玄仙殿……。なにもせずに、横になっていてください。この寇員外がとことんあなたに尽くしますから……」
寇員外がにこにこと微笑んだ。
「だ、だって、も、もう、限界だよ──」
宝玄仙は声をあげたが、寇員外は取り合わなかった。
そして、宝玄仙が少し落ち着くのを待って、律動を再開する。
浅い部分を十回──。
ゆっくりと奥まで一回──。
また、これが繰り返す……。
「も、もう、いやあ──。お願い──」
やがて、宝玄仙は泣きながら哀願していた。
もう恥も外聞もどうでもいい──。
これ以上、耐えられない──。
「そ、そうですね──。さすがに私も自制の限界です」
寇員外も苦しそうに言った。
乳房がぎゅっと握りしめられ、強い力で揉みしだかれだした。
「はううっ」
すべての感覚が股間に集中していて、胸はまったくの無防備だった。
乳房から肉を溶かすような愉悦が迸る。
そして、股間の律動も激しくなった。
今度は激しい突きあげで膣の最奥を叩いてくる。
「ほおおお──」
宝玄仙は咆哮した。
達したのだ。
この世にこれほどの悦びがあったのかと思うような強烈な快感だった。
「はあ、ああっ、ああっ、ああっ──」
しかし、快感は終わらない。
寇員外の律動が続いている。
すぐに次の絶頂が襲う。
ずん、ずんと身体の奥を突かれて、全身に響き渡るような法悦が全身をうねる。
そのあいだも敏感な乳房を揉まれ続けている。
「うぐうううう──」
二度目の絶頂がやってきた。
これほどの短い間隔の絶頂は初めてだ。
そして、すぐに、三度目がやってくる。
「うううっ」
寇員外が呻いたのがわかった。
膣の奥に寇員外の精が迸るのを感じた。
「はあああ──」
それは、宝玄仙が三度目の絶頂に陥ったのとほぼ同時だった。