※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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 第107話 恋の妙薬【張須駝(ちょうすだ)Ⅱ】
712 雨の日に恋をして


 急に雨が降ってきた。

 宝玄仙の使いで、ひとりで宿町の外れにあった薬屋に掻痒剤の材料を買いに行くことになり、その帰りだった。

 孫空女は慌てて近くの軒先に逃れた。

 

 おそらく、夕立だろう。

 一刻(約一時間)もすれば雨はあがるはずだ。

 孫空女はぼんやりと雨空を見て思った。

 

 しかし、考えてみれば、馬鹿にした話だと思う。

 金子を渡された孫空女が買いに行かされた掻痒剤は、これから宝玄仙と朱姫から、孫空女たちが嗜虐されるために使われるのだ。

 自分を苦しめることがわかっている薬剤をわざわざ自分で購ってくる──。

 本当に意地の悪い仕打ちだと思うが、逆らうわけにもいかない。

 孫空女は嘆息した。

 

 痒み責めは、嗜虐の責めの中で一番苦しい責めだと思う。

 身体を拘束されて、局部や乳首に痒みに狂う薬剤を塗られて放置されるのだ。

 あるいは、さらに痒みが助長するように筆や刷毛でくすぐられるかだ。

 

 いすれにしても、女の自尊心も尊厳もなにもかも捨てて、痒みを癒してもらうために泣き喚くことになる。

 今夜はその責めが待っている。

 そのための責めの材料は、いま孫空女が代金の釣りとともに、包みにして胸に持っている。

 それを確かめて、孫空女はまた暗い気持ちになり嘆息した。

 

 やって来た西方帝国の東沿いにある華光(かこう)という名の大きな宿町だ。

 寇員外(ていいんがい)という分限者の屋敷を出発してから二日が経っている。

 あの地霊(じれい)の町から二日かけて山街道を越え、主街道にぶつかり、そこに、この華光の宿町があった。

 今日はここで宿を取ることになった。

 

 いつものように、沙那はこれから越えようとしている先の地域に関する情報を集めるために宿から出て行った。

 西方帝国は基本的に移動は自由だというが、主街道に関が幾つかあるらしい。

 だから、どんなことを調べたりするのかを聞き込みに行ったのだ。

 

 沙那がいなくなると、すぐに宝玄仙と朱姫が、孫空女と素蛾に悪戯をしようとした。

 だが、責め具に使う痒み剤がなくなっていることに気がついた宝玄仙が、確か町外れに薬屋があるから、孫空女に買いに行けと命令したのだ。

 使いなら自分が行くと素蛾が申し出たのだが、宝玄仙は笑って、媚薬だから素蛾には売らないだろうと意地の悪そうな笑みを浮かべた。

 

 自分を責める薬剤を自分で買いに行くというのは腹もたつが、抵抗は無意味だということを孫空女も知っている。

 だから、大人しく外に出てきた。

 そして、言われたものを購って宿に戻るところだった。

 もちろん、そこは平凡なの薬屋なので、掻痒剤というかたちで薬剤が売っているわけではない。

 しかし、宝玄仙が、孫空女が購ったものを混ぜながら霊気を注ぎ込むと、調合されたものが強力な掻痒剤になるのだ。

 

 だが、その帰りに雨に降られた。

 ずぶ濡れになるのを我慢すれば、宿に辿り着けないことはないが、そこまで一生懸命に早く戻る必要はないだろう。

 孫空女は、雨があがるまでここにいることを決めた。

 

「うわあ、大変──」

 

 すると、そこに八歳くらいの女の子を伴った若い母親が、孫空女が立っている軒先に走ってきた。

 

「ちょっと、ここでしばらく待っていようね、繭(まゆ)」

 

 母親が女の子にそう話しかけ、そして、孫空女に軽く会釈をした。

 孫空女も小さくお辞儀を返す。

 

 しばらくそうしていたが、雨足はなかなか弱くはならず、孫空女は、その母子とともに黙って雨の降る通りを見ていた。

 

「旅の方ですか? この辺りではお見かけしない方ですね」

 

 なんとなくという感じで母親が話しかけてきた。

 

「うん、北に向かって帝都の方に向かおうと思って」

 

 実際には、目的地は、その帝都を通り抜け、さらに北にある魔域との境界を越えた向こうなのだが、まあ、そんなことはいいだろう。

 

「そうですか……。いいですね、旅というのは……。あたしなんて、この町で生まれて、十里(十キロ)も離れたことはありません。せいぜい隣町の生母のところに遊びに行くくらいで……。今日も、その帰りなんですよ……。ご出身はどちらなんですか?」

 

 人懐っこそうな笑みだった。

 笑うとすごく美人になる。

 繭という名らしい童女がにこにこと孫空女を見ている。

 その童女も可愛らしい顔立ちをしていた。

 

「いや、ずっと遠い場所にある別の国から来たんだ。まあ、どこに向かうのかわからないような旅でね。仲間と一緒なんだよ」

 

 孫空女は言った。

 

「別の国ですか?」

 

「ずっと、ずっと遠い東の果てなんだ。東方帝国だよ」

 

「まあ──」

 

 孫空女が東方帝国の名を出すと、若い母親が驚いた表情になった。

 

「わあ、お姉ちゃん、そんな遠くから来たの? すごい──」

 

 すると、女の子が目を丸くして声をあげた。

 田舎育ちのようだが、東方帝国の存在は知っていたようだ。

 そうやってしばらく他愛のない話した。

 

「ねえ、お母さん、お婆ちゃんからもらったお菓子食べたいな」

 

 やがて、女の子がそう言った。

 

「そうね。ちょっとだけ、摘まもうか?」

 

 母親はにっこりと笑うと、荷から布で包んだ菓子を取り出して、女の子に渡した。

 赤ん坊の拳ほどの丸い蒸し菓子だ。

 女の子はすぐにそれを口に入れ始めた。

 母親は自分も袋から一個取り出すと、さらに孫空女にひとつ差し出した。

 

「……母の手作りなんですけど、よろしければ……」

 

「あ、ありがとう……」

 

 断るのも悪いと思い、孫空女はそれを受け取った。

 

「おばあちゃんのお菓子は、とってもおいしいのよ、お姉ちゃん。食べてみて」

 

 女の子が口いっぱいに菓子を頬張りながら、天真爛漫としかいいようのない笑みを浮かべてそう言った。

 

「うん」

 

 孫空女は菓子を口に入れた。

 菓子はすごく甘かった。

 

「おいしいでしょう?」

 

 女の子はそう訊ねたが、正直にいえば、顔をしかめるくらいに甘かった。

 だが、そう答えれば、女の子が悲しい顔をする気がして、孫空女はとりあえず、おいしいと返事をした。

 

 しかし、その甘味に隠されているかすかな苦みに気がついたのは、菓子の欠片を喉に飲み込んでしまってからだった。

 毒の苦味だ。

 孫空女は確信したが、すでに菓子は腹の中だ。

 

「ちょ、ちょっと待って、これ──?」

 

 孫空女は驚いて声をあげた

 強い甘味で、味を見分け難くされていたため、舌が特別敏感な孫空女でも口の中にあるときにわからなかったが、この菓子には毒のようなものが混ざっている……。

 

 なぜ──?

 

 孫空女は母親に問い質そうと思ったが、母親が急に顔色を変えて、女の子の手を掴むと、孫空女から離れて雨の通りに飛び出した。

 

「ま、待って、あんたら──」

 

 わけがわからず、孫空女は引きとめようとしたが、脚の力が急になくなり、孫空女はその場に跪いてしまった。

 そのあいだに、あの母子は消えていなくなった。

 

 昏睡剤……?

 

 さっきの菓子に毒が混ざっていたのは間違いないが、この身体の異変からすれば、死ぬような毒ではなくて、一時的に気を失わせるような薬物と思う。

 

 それにしても、なんであんな母子が……?

 

 いつもだったら、もらった食べ物をいきなり飲み込んだりはしないのだが、あの母子がなにかを企んでいるとは夢にも考えなかったので、うっかり食べてしまった。

 しかも、余程強力な昏睡剤なのだろう。

 いまや、脚だけではなく、身体全体から力が抜けようとしている。

 

 そして、だんだんと意識も遠くなる……。

 孫空女は両膝をついたまま、がっくりと身体を脱力させていた。

 

「やな、雨だな、孫空女」

 

 軒先の前に誰かがやってきたのがわかった。

 しかし、もう頭がぼんやりとしてよくわからない。

 

「だ、誰……?」

 

 孫空女は懸命に顔をあげた。

 そこにいたのは、さっきの母子だった。

 

 そして、もうひとりいた。

 母子はいつの間にか傘を持っていて、女の子は傘をひとりで持っていたが、母親はもうひとつの傘を男にかざしていた。

 孫空女に声をかけたのは、その男だった。

 

「俺のことを忘れたか、孫空女? 命を助けてくれた恩は忘れてねえぞ……。あのときのお礼に、お前と沙那をさらってやろうと思ってな」

 

 男が喉の奥で笑うような声をあげた。

 

「張須陀(ちょうすだ)……?」

 

 その名が浮かんだ。

 しかし、孫空女の意識は真っ暗な闇の中に、急速に包み込まれていった。

 

 

 *

 

 

「起きて、孫空女さん……」

 

 鼻につんと刺激臭を感じた。

 孫空女は眼を覚ました。

 

「久しぶりだな、孫空女……。お前たちがこの西方帝国にやってきていると、教えてくれた者がいてな……。それで、取るものも取らずに駆けつけて来たんだ……」

 

「な、なに……?」

 

 男の声がした。

 しかし、まだ頭がぼんやりとして、言葉が入ってこない。

 とにかく、孫空女は声の方向に顔を向けた。

 

「……だが、案外にすぐに見つけることができた。地霊の町から北に進めば、必ず、この華光の宿町に辿り着く。ここで網を張っていたら、目立つ美女の一行がやってきたというわけだ。それにしても、いつの間にか、知らねえ少女も連れにしたんだな。やっぱり、あの少女も宝玄仙の性奴隷か?」

 

 向かい合うように座っている男が笑いながら言った。

 はっとした。

 

 孫空女は椅子に縛られていた。

 両手を手摺に縛られ、両脚も椅子の脚に繋がれていた。

 また、さらに胴体にも縄で椅子の背もたれにしっかりと拘束されている。

 

 服は脱がされていない。

 どこかの廃屋のようだと思った。

 

 窓の外には、まだ雨の音が聞こえる。

 意識を失ってからそれほどは時間が経っていないと思った。

 おそらく、毒で気絶した孫空女を近くの廃屋に連れ込んで、こうやって椅子に縛りつけたに違いない。

 孫空女は椅子ごと暴れようかと思ったが、椅子はなにかの手段で床に接続してあって、孫空女の力でもびくともしなかった。

 

「ちょ、張須陀か……?」

 

 孫空女の頭にその名が浮かびあがった。

 

 張須陀──。

 

 沙那に縁のある男であり、確か、まだ沙那が東方帝国の故郷の町にいたころに、沙那にちょっかいを出そうとして、逆に酷い目に遭った男のはずだ。

 沙那に言わせても、どうしようもない卑劣男だということであり、その男と、以前に旅の途中で、遠い外縁地帯でばったり出会った。

 ところが、こいつはかつて沙那にやられたことを逆恨みしていて、偶然に再会した沙那をさらって監禁したのだ。

 結局、沙那は十日ほどで、この張須陀から自力で脱走したのだが、とにかくとんでもない男だった。

 

 そのとき、孫空女は、すでに沙那が逃亡した後だった監禁場所で、沙那に両手首を切断されて死にそうになっている張須陀を見つけた。

 孫空女はそのまま野垂れ死にさせるつもりだったが、宝玄仙は気紛れの慈悲を示して、張須陀の治療をして追い払ったのだ。

 

 その張須陀がそこにいる。

 しかし、あのとき切断された手はちゃんとあった。

 だが、よく見れば、霊気のこめられた義手のようだ。

 その張須陀は、孫空女に向かい合う椅子に座った脚を大きく開いていて、その股間で小さな女の子の頭が動いていた。

 それは、さっき孫空女に毒入りの菓子を食べさせた女の子に間違いない。

 

 そして、ぎょっとした。

 その年端もいかない女の子がなにをしているのかわかったからだ。

 その女の子は一心不乱に張須陀の股間に奉仕をしていたのだ。

 

「お、お前、こんなところで、その子になにをさせてるんだよ──。そ、それに、あたしをどうするつもりだい──?」

 

 孫空女は怒鳴った。

 だが、張須陀は余裕たっぷりにせせら笑った。

 

「よし、もういいぞ、繭……。だいぶうまくなったな。でも、この続きは、あのお姉ちゃんにやってもらうつもりなんだ。だから、繭は後でな。じゃあ、お母さんと一緒に隣の部屋で待っていてくれ? お父さんは、いまからあのお姉ちゃんを犯さなければならないんだ」

 

 張須陀がそう言うと、繭と呼ばれた女の子が顔をあげた。

 

「だったら、また、ご褒美に繭のことを犯してくれる、お父さん? 繭は言われた通りに、このお姉ちゃんを捕まえるために頑張ったよ」

 

「ああ、もちろんやってあげるよ。お母さんと一緒がいいか? それとも、ひとりで抱いて欲しいか?」

 

 張須陀が言った。

 

「ううん……。ひとりがいいかな? あと、繭はお尻がいいかも。お股はまだ少し痛いの……。でも、お尻は気持ちいいから。だから、またお尻を犯して、お父さん」

 

「わかったよ……。だったら、ちゃんとお尻をきれいにしておくんだよ。お母さんに浣腸のやり方をちゃんと習うんだ。いいね」

「うん、わかった」

 

 繭は元気に返事をした。

 孫空女は唖然としてそれを見守っていた。

 

「でも、今日は、このお姉ちゃんと用事があるから、あさってにもな」

 

「うん」

 

 繭が嬉しそうに立ちあがった。

 

「こら、繭──。お父さんの股のものが出たままよ」

 

 苦笑混じりの口を開いたのは、孫空女の背後に立っている女だ。

 さっきの若い母親だ。

 どうやら、この母子は張須陀とぐるだったようだ。

 張須陀に命じられて、孫空女に近づき、昏睡剤のたっぷりと入った菓子を食べさせたのだと思う。

 

 孫空女は自分の迂闊さに歯噛みした。

 それにしても、この三人は親子なのか?

 そして、張須陀は自分の娘に性奉仕をさせているのか?

 孫空女は混乱した。

 

「いや、いいんだ、歌艶(かえん)……。いまから、この孫空女にこの股を奉仕させようと思っている……。それよりも、繭を連れて、隣の部屋で待っていてくれ」

 

 張須陀が言った。

 

「わかりました、あなた……。繭、おいで……。お父さんはお仕事よ」

 

 歌艶という母親と繭が部屋を出て行った。

 

「さて、孫空女、待たせたな……」

 

 張須陀が笑いながら、椅子を持ちあげて、孫空女が縛られている椅子の目の前に移動してきた。

 下袴の前から、まだ勃起したままの張須陀の一物がぶらぶらと揺れている。

 

「そ、そんなものしまいなよ──。ふざけるなよ、お前──」

 

 孫空女の前に、股間の一物を出したまま座った張須陀に孫空女は吠えた。

 もう一度、拘束が解けないかともがいたが、やっぱりしっかりと縄で結んである。椅子もびくともしない。

 

「無駄だ、孫空女……。お前の縄も椅子も道術の力で拘束している。ついでに、この廃屋全体も結界で包んでいる。逃げられはせんぞ」

 

 張須陀が言った。

 孫空女は驚いた。

 そして、言われてみれば、この部屋全体に霊気が立ち込めていることに気がついた。

 

「結界の道術? な、なんで?」

 

 孫空女の記憶では、確か張須陀は道術遣いだったとは思うが、せいぜい霊具を操ることができるくらいで、大した道術は遣えなかったはずだ。

 結界を作るような道術力はなかったはずだ。

 

「さっきの女だよ。一応は俺の妻ということになっている。結婚してくれというから、夫になることを承知してやっただけだがな……。歌艶だけじゃなくて、子の繭も道術遣いだぞ。それも一流のな。あの母子は俺の奴隷だ。表向きは妻と子ということにはなっているし、あいつらはそのつもりだとは思うが、内心では俺は奴隷と見なしている」

 

 張須陀は低い声で笑った。

 

「じゃあ、さっきの繭もお前の子じゃないのかい?」

 

「歌艶の連れ子だよ。別に童女趣味はねえんだが、歌艶に子供を抱かせないと別れると脅したら、娘を俺に提供したよ。いまでは、あの繭もすっかりと俺のとりこだ。しかも、尻姦がお気に入りでな。さっきも、そう言ってただろう」

 

 張須陀が笑った。

 

「お、お前……」

 

「しかも、あの歳でしっかりと、母親に嫉妬心があるんだぜ。最初は母親と一緒に抱いていたんだが、いまじゃあ、ふたりきりで抱かれるのを望むんだ。面白いだろう?」

 

「お、お前、ふざけるなよ──。あんな小さな子供を……。しかも、母子を一緒にだって? なんてことしてるんだい──」

 

 孫空女は怒鳴った。

 

「おいおい、そんなこと、お前の知ったことじゃねえだろう。あの母子は俺に進んで尻を振って言い寄っているんだ──。あの母親の歌艶も、娘の繭もだ──。まあ、もちろん、仕掛けはあるがな」

 

「仕掛け?」

 

「いずれにしても、あのふたりは女として、俺にぞっこんということだ。命令に逆らえば、容赦なく捨てられるとわかっているから、どんなことでも言うこともきくし、母子で俺の寵を競い合ってくる。可愛いものさ。母親の歌艶なんて、あれでも少し前までは、西方帝国の宮廷魔道師だぞ。夫もいた。だが、俺と一緒になるために、母子で夫を捨てて俺についてきた。俺に惚れたためにな」

 

 張須陀は笑った。

 孫空女は呆気にとられた。

 

「さて、時間もねえしな。おしゃべりは終わりだ……。お前にも、俺に惚れてもらうぞ、孫空女……。あの歌艶と同じようにな」

 

 張須陀は懐から小さな瓶を出した。

 孫空女はぎょっとした。

 

「な、なんだい、それ──?」

 

 孫空女は声をあげた。

 

「苦労して手に入れた惚れ薬という仙薬だ──。これを手に入れたとき、お前たちのせいの俺の惨めな放浪は終わった……。とにかく、効き目はあるぞ。なにせ、宮廷魔道師の歌艶が、自ら道を誤らせるくらいに、ただの行きずりの男の俺にのぼせあがるんだからな」

 

「ほ、惚れ薬――?」

 

 孫空女は仰天した。

 

「そうだ。惚れ薬のためだと理性じゃわかっていても、惚れてしまえば、もう、その心には抵抗できなくなる。あんな小さな子供の繭にも効果があった。お前にも間違いなく効くだろう。さあ、孫空女、お前も俺に惚れてしまえ──。俺の復讐の第一弾だ──」

 

「ひっ、や、やめろうう」

 

 張須陀が小瓶を持って迫ってきた。

 孫空女はぞっとした。

 

「これを飲めば、最初に見た異性にどうしようもなく惚れてしまうという究極の惚れ薬だ」

 

 張須陀が孫空女の鼻を掴んで、強引に口を開かせる。

 

「な、なん──があ──ぐう──や、やめ──あ、あがあ──」

 

 孫空女は必死で抵抗したが、小瓶を口の中に捻じ込まれた。

 そして、中の液体をすべて無理矢理に飲まされる。

 

「げほっ、えほっ、ごほっ……な、なんてことを……」

 

 孫空女は咳き込んだ。

 そして、張須陀を睨んだ。

 

「あ、あれっ……?」

 

 しかし、なんか張須陀を見ていると、急に怒りが消滅した。

 それだけではなく、身体が熱くなり心臓が激しい鼓動を始める。

 こんなこと初めてだった。

 まるで、なにかに操られているようだった。

 

 張須陀が愛おしくて仕方がなくなったのだ。

 いや、これは確かに操りだ。

 惚れ薬の影響に間違いないのだ。

 

 それは、わかっているのだが、そんなことはどうでもいい。

 それよりも、ものすごく張須陀が恋しい……。

 

 そばにいるというだけで、すごく恥ずかしいような気持ちになる。

 だけど、離れたくない。

 

 張須陀が好きで好きで堪らない……。

 そばにいたくて狂いそうだ。

 

「どうだ、孫空女? これを舐めたくなったか?」

 

 張須陀が笑いながら、腰の前の一物をぶるぶると振った。

 悲鳴をあげそうになった。

 あまりにも強い動悸が孫空女に襲ったのだ。

 

「な、舐めていいのかい?」

 

 孫空女は、張須陀の性器をうっとりと見ながら、おずおずと言った。

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