それはそうだろう……。
ふたりがはいている下袴の内側の股間には、女陰と肉芽を当時に刺激できる張形が深々と埋まっている。
そんなものを挿入されて、宿町でも人通りの多い道を歩かされるのはつらいはずだ。
「はあ、はあ、はあ……」
「さ、沙那……だ、大丈夫……」
「う、うん……」
沙那が時折つらそうに脚をよろけさせるたびに、横の孫空女が心配そうに声をかけている。
その孫空女もつらそうだが、沙那はとりわけ刺激には弱いようだ。
荒い息はほとんど嬌声にまがうほどだ。
そして、すっかりと上気した表情で、しかも艶めかしい仕草をしながら甘い声をあげながら歩く姿は、そばを歩いている張須陀まで気恥ずかしくなるほどである。
三人で向かっているのはこの
そこには、もともと誰も住んでおらず、今回の工作のために借賃を払って持ち主から借りていた。
そこまで行けば、このふたりの女主人の宝玄仙も、いなくなった沙那と孫空女の居場所を簡単には探し当てることはできないはずだ。
だから、宝玄仙は沙那たちを追ってはこれないはずだ。
いずれにしても、沙那も孫空女も、惚れ薬の影響で、なんで張須陀の言葉に逆らえないのか、よくわからない状態のはずだ。
しかし、張須陀に淫靡な行為を命じられれば、どうしても逆らうことができなくなってしまう。
相手に完全に欲情し、性的興奮が異常活性して、惚れ薬で刻まれた相手の性的命令に逆らえなくなる……。
それが惚れ薬の効果だ。
この惚れ薬の効果は、一度の服用で明日の昼くらいまで続く。
それまでにはすっかりと片がついているはずだ。
手筈はすでに整っているのだ。
ふたりを宿町の外に連れ出すのは、この宝玄仙一行が近くまでやってきていると情報を教えくれた
いまは、
張須陀が、孫空女と沙那という女戦士を捕えれば、残りの人間をあの二人の工作で捕えることになっている。
阿難と迦葉のふたりは、一行の中でとりわけ宝玄仙に恨みを抱くとともに、沙那と孫空女の武辺を怖れている。
だから、宝玄仙に罠を仕掛ける前に、ふたりの女戦士を張須陀によって、引き離してもらいたがったのだ。
逆に張須陀は、宝玄仙には恨みなどないが、両手を切断して死ぬ目に遭わせた沙那には一応の恨みがある。
とにかく、張須陀がふたりを宿町から連れ出すのは、宝玄仙たちが宿泊している宿を阿難たちが襲撃したときに、万が一にも孫空女と沙那が邪魔をしないためだ。
もっとも、張須陀が今回、これをするのは、阿難と迦葉のふたりに、沙那と孫空女に対する事前工作を頼まれたからというのが一番だ。
阿難と迦葉には恩義もあるし、沙那たちに仕返しをすることで、その恩を返せるなら、それに不満があるわけがない。
名月と清風、すなわち、阿難と迦葉は余程に、宝玄仙たち一行に恨み真髄でいるらしく、盗賊のくせに、この国の兵を動かして一行を捕縛させて、そのまま処刑させようと目論んでいる気配だ。
しかし、張須陀はそれらの工作には深くは関わってはいない。
張須陀が請け負ったのは、このふたりをひと晩、宝玄仙から引き離すことであり、それ以上は関与しないつもりだ。
惚れ薬を使って、前を歩いているふたりをいたぶるのも、今夜ひと晩のことであり、明日には親子三人でまた逃げるつもりだ。
ひと晩もいたぶれば、張須陀の溜飲もさがるし、それ以上の関わりは絶対に危ない。
阿難と迦葉がどうなろうと知ったことではないから、あのふたりが宝玄仙そのものに手を出すのを止める気はないのだが、張須陀たちが巻き込まれることはないようにしようと思っている。
だから、張須陀は、やるだけの嫌がらせをしたら、明日の朝には逃亡を決め込むつもりだ。
名月と清風と知り合ったのは偶然のことだ。
そのときは、ふたりはすでに阿難と迦葉という盗賊団の頭領であり、たまたま酒場に主立った子分とともに酒を飲みに来ていたのだ。
その酒場で偶然にひとりで放浪していた張須陀は彼らと会った。
そのとき、張須陀の腕はまだ義手はなかったが、そのおかげか、幾らか霊気があがり、身の回りのことくらいは霊気で不自由なくやれるくらいになっていた。
その道術に目をつけたふたりが、張須陀を次の悪事に誘ったのが縁だ。
三人とも宝玄仙たちに酷い目に遭ったことがあるという共通の経験があることを知ったのは、その後のことだ。
それからしばらく盗賊団の仕事を手伝い、張須陀はまとまった礼金をもらって盗賊団とは別れた。
ただ、いつでも連絡が取り合えるような霊具の通信具は交換していた。
その後は、張須陀は順風満帆だった。
礼金によって、本物の手と同じように動く霊具の義手も手に入れ、さらに、この帝国の古い占い屋の婆から、偶然にも『惚れ薬』の調合法の書かれた古文書を手に入れた。占い屋の婆は、その価値がわからなくて、二束三文でそれを張須陀に渡したのだ。
張須陀はそれに書かれていた調合法で『惚れ薬』を作った。
調合法そのものは簡単だったが、その材料は高価なものが多く、それを手に入れるのが大変だった。
そうやってできた惚れ薬を試しに帝国の女道術師のひとりだった歌艶に試してみたのだ。
能力のある美人道術師と名高かった歌艶だが、歌艶を選んだのは身分の高い道術師である歌艶が、かなり庶民的であり、帝都の住民が普通に行くような食堂によくやってきていて、惚れ薬を仕込みやすかったからだ。
惚れ薬を飲ませた後は、最初に顔を見せる異性でなければならない。
だから、一緒に食事をしたり、なにかを飲んだりできるような場所と状況が必要だったのだ。
昼食を食べにやってきた歌艶とうまく食堂で同席になることができた張須陀は、歌艶の食事にこっそりと惚れ薬の液剤を混ぜた。
それを口にして、張須陀の顔を見てしまった歌艶は、初対面の張須陀のとりこになってしまった。
張須陀は、その日のうちに歌艶を抱き、薬剤の効果が切れる前に次の薬を飲ませ続けた。
そうやって、十日間で完全に歌艶をものにしたのだ。
その後、歌艶を使って、帝都で荒稼ぎした挙げ句に、歌媛には家族を捨てて張須陀の旅に着いてくるように命じた。
だが、歌艶は最初は拒否した。
夫を捨てることは問題はないが、娘の
惚れ薬は操り術とは少し異なる。
あくまでも相手に惚れることで言いなりになるのであり、命令に従う人形になるわけではない。
張須陀は、娘に惚れ薬を飲ませることを条件に娘の同行を許した。
今度は、歌媛は拒否しなかった。
むしろ、娘の繭とともに、張須陀と旅ができることに大いに悦んだ。
そうやって、三人の旅が始まった。
張須陀が、わずか八歳の繭に、歌媛と同じように十日間惚れ薬を飲ませて張須陀の心に刻ませたのは、張須陀に馴れない繭を手っ取り早く手懐けたかったためだが、ついでに気紛れで性奴隷に仕立てたのは思いのほか愉快な体験だった。
歌艶も娘が性調教を受けることそのものは文句は言わなかった。
彼女がこだわったのは繭と離れないことであり、それ以外のことは大抵のことは受け入れた。
もちろん、薬剤の影響で張須陀と別れられない歌艶にとっては、張須陀に嫌われないために、娘の身くらい差し出すのは当然のことだったのかもしれない。
安定してしまった惚れ薬の効果は完全なものだ。
風のうわさに、歌艶の夫が家族の失踪を嘆き悲しんでいるということを聞いたので、ふたりに教えたがなんの心も動かした形跡はなかった。
そして、いま。
同じ惚れ薬で孫空女と沙那をとりこにした。
まだ、一日目だから、これは明日の昼くらいまで効果が継続するが、それがすぎれば、いまの状態が嘘のようにふたりはまともに戻る。
このまま飲ませ続けて、完全に惚れ薬の影響を安定させてしまうのも面白いとは思うが、この女たちに関わり続けるというのは危険だということはわかっている。
阿難と迦葉は、宝玄仙そのものへの復讐を企てているが、正直、張須陀は、あの能力の高い魔女の宝玄仙が怖い。
張須陀の復讐はひと晩で終わらせるつもりだ。
「手を繋いで歩けよ、沙那、孫空女。女同士の恋人らしくな」
張須陀はふたりに後ろから声をかけた。
ふたりがお互いの手を握った。
それを確かめると、張須陀はふたりの股間に挿入してある霊具の淫具を振動させた。
「あっ……」
「ふくうっ」
同時に声をあげたふたりだが、がっくりと座り込んでしまったのは沙那だ。
沙那がすがるような視線を張須陀に向けてきた。
張須陀はにやにやと笑いながら、いったん張形の振動を止めてから沙那を立たせた。
「どうしたんだ、お前? 胸が苦しいのか? だったら、ちょっと胸を解放しろよ。そんなに締めつけているから苦しいんだろう」
そして、張須陀はわざとらしく大きな声で言いながら近づくと、沙那の上衣の留め具を上から外しだした。
「ちょ、ちょっと、待って」
沙那がびっくりして声をあげた。
夕方で薄暗いとはいえ、街道そのものである宿町の大通りは、かなりの人間でにぎわっている。
沙那たちがいるのは、その真ん中であり、沙那はそこで胸を露わにされそうになっているのだ。
だが、まだ片手を孫空女と繋いだままだ。
「……こういう場所で恥ずかしいことをされるのが好きだろう、沙那……。逆らうんじゃない。逆らうと、ここで捨てるぞ。それでもいいのか?」
「そ、そんな……」
捨てるという言葉を使うと、急に沙那の抵抗が弱くなり、張須陀のやることに逆らわなくなった。
それをいいことに、張須陀は道のど真ん中で沙那の上衣の留め具を下ひとつを残して全部外してしまった。
しかも、服の中に小刀を差し入れて、胸当てを切断して取り去る。
取り去った胸当てをわざとらしく足元に捨てる。
沙那が、張須陀に慈悲を訴えるような視線を向けてきた。
あの気丈な沙那にこんな顔をさせることができただけでも、張須陀は満足した気持ちになった。
「だ、駄目よ、張須陀様……。み、見られる……。見られます……」
沙那が真っ赤な顔で小さな声をあげた。
「見られてもいいさ。沙那は俺のものなんだろう……? だったら、命令には逆らえないはずさ」
張須陀は胸当てのなくなった上衣を開いて、乳首のぎりぎりのところまで開襟させてしまう。
「こ、ここでは、いやです……。ど、どこか、誰もいないところで……。お願いします……」
沙那は下を俯いて消え入るような声で言った。
「もちろん、どこかでお前たちを抱く。だが、恥ずかしいことが大好きなお前らにとっては、これは前戯のようなものだろう? 恥ずかしいと濡れる変態女のくせに、一人前のことを言うんじゃねえよ」
張須陀は周りに聞こえるように大きな声で言った。
周囲には突然に始まった美女の痴態に足を止めて見物を決め込む男まで出てきた。
「沙那、もしも、勝手に服を直したら、お前はもう用無しだ。ここで捨てていくからそう思え」
張須陀が強く言うと、沙那の「そんな」という呟きが聞こえた。
「……ついでに、お前もだ。抵抗するな」
張須陀は孫空女の上衣も寛がせた。
「あ、あたしも?」
じっと黙って横で見ていた孫空女が当惑して声をあげた。
それでも抵抗はしない。
孫空女の胸当ても地面に捨てる。
美女ふたりが、乳首ぎりぎりまで乳房を露出しているという破廉恥姿ができあがった。
「よし、歩くぞ。ただし、また、立ち止まったら、だんだんと服を脱がせていくぞ……。そうだな、次に立ち止まったら、小刀でお前らの下袴の横を全部切断する。もちろん、下着も取り去ってしまうからな。それが嫌なら、立ち止まらずに歩くんだ」
張須陀はせせら笑った。
そして、手を繋いでいるふたりの手首を準備していた手錠で繋げた。
さらに、ふたりの外側の手首にも細い紐を巻いて、それを側面の腰紐に結びつけてやった。これで、ふたりとも身体を隠すこともできなくなるということだ。
もっとも、惚れ薬の影響を受けているふたりには、張須陀の性的な命令には逆らうことはできない。
どんなに慎み深い女でも、破廉恥な命令に逆らえないのだ。
それは歌艶で実験済みだ。
歌艶は貞節な妻として、帝都でも有名だった。
それを帝都の酒場の卓で大勢の酔客の前で犯してやったこともある。
歌艶は口では抗ったが、結局は抵抗しなかった。
繭を連れて帝都から出奔する前夜のことであり、それまで秘密にしていた歌艶と張須陀のことを公にした夜でもあった。
あのことで、歌艶がさらわれたのでもなく、脅されているわけでもなく、自分の意思で間男と駆け落ちをしたのだという結論が帝都で後で定着したのだ。
そのことでも、歌艶の夫は打ちのめされたはずだ。
孫空女と沙那が歩き出した。
ふたりがびくびくとしているのが後ろからでもわかる。
股間の張形をいつ動かされるのかと怖がっているのだ。
張須陀は期待に応えて、ふたりの張形をいきなり最大限で動かしてやった。
「うぐうっ」
「あはあ」
まったく同時にふたりがその場にしゃがみ込んだ。
「いやあああっ、ああっ、ああっ、はあ……」
「ぐうっ、ふうっ、はあっ、はあっ」
しゃがんでしまったふたりが寄り添うようにしながら、太腿を激しく擦っている。
ふたりとも歯を食いしばっているが、耐えることのできない嬌声がふたりの口から漏れ続ける。
張須陀は笑いながら振動をとめた。
「また、とまったな。さあ、罰だぞ。立つんだ」
張須陀は強い命令でふたりを立たせる。
ふたりが腰をよろけさせながら立ちあがった。
「あっ、む、胸が……」
すると沙那が小さな悲鳴をあげた。
勢いよくしゃがんだために、ぎりぎり乳首に引っ掛かっただけの片側の上衣から乳房がこぼれ出ている。
しかし、手を拘束されている沙那にはそれを直すことができないのだ。
「そのままで歩くんだな。もっと恥ずかしい恰好をしたくなければ我慢することだ」
張須陀はせせら笑った。
そして、ふたりの下袴の裾の左右を足首から腰まで真っ直ぐに切断して、小刀を差し入れてふたりから下着をはぎ取った。
切り取って脱がせた下着は、やはりその場に捨てる。
ふたりは下袴をはくというよりは、腰から下の前後に縦長の二枚ずつの布を垂らしているだけの姿になった。
しかも、ふたりが下着を身に着けていないのは、横からはっきりと肌が覗き見えているので丸わかりだ。
ふたりが羞恥に身も世もないように悶えている。
だが一方で、ふたりが路上での羞恥責めに、かなりの欲情を示し始めたのもわかる。
ふたりの上気した表情や身悶えの仕草でそれがわかるのだ。
この女傑ふたりが恥辱的な羞恥に弱いというのは愉しい発見だ。
この頃には、かなり見物人が集まっていることはわかっていた。
ふたりが羞恥に身体を震わせている。
「さあ、歩け。目的地は遠いぞ。今度からは、連帯責任はやめだ。立ち止まった側の服を少しずつ切断するからな」
張須陀は大笑いした。
そして、次第に増える見物人を引き連れてしばらく歩いたところで、一方の張形を静かに振動させた。
*
「くああっ、そ、そんなああ」
股間から駆けあがった峻烈な快感に耐えられずに、沙那はその場にがっくりと膝を折ってしまった。
はっとしたがもう遅かった。
立ち止まったら少しずつ服を切断するという言いつけだったが、沙那は突然にやってきた股間からの峻烈な刺激に耐えられずに、思わず両脚をとめてしまったのだ。
股間の張形の振動が止められて、張須陀がにやにやしながら近づいてきた。
「じゃあ、まずは、その垂れている下袴の残骸を切断してやろう。恥ずかしいことをされるのが大好きな沙那には堪らないだろう?」
そして、横を切断した下袴の前後を太腿の半分くらいの位置で真横に切断していく。
もはや、下袴とか、下袍とかいうものではなく、ただの布切れだ。
それが股間の前を覆っているだけだ。
沙那はすがるような視線を向けたが、張須陀は容赦なく、さらに後ろ側も同じように切断してしまった。
すでに多くの通行人の視線が沙那や孫空女に集まっていることには気がついている。
ほとんどが男であり、彼らの奇異の視線が集まる。
沙那はあまりの羞恥に手足が痺れるような戦慄に見舞われた。
見ないで……。
そう願うのだが、ここは羞恥の姿を隠しようもない道のど真ん中だ。
しかも、右手は孫空女の左手首を手錠で繋がれ、左手は細紐で腰の腰紐にしっかりと結びつけられている。
隠したくても手は使えない。
いや、強引に引き千切れば腰紐に結わえている細紐くらいは外せるとは思うが、そんなことをすれば、張須陀は怒って沙那を捨てるだろう。
それには耐えられない。
「さあ、行くぞ。次はどこを切ってしまうかな……」
張須陀が笑いながら、また後ろにさがっていった。
「い、行こうよ、沙那……」
孫空女の心配するような声がした。
「う、うん……」
沙那はうなづいたが、あまりの恥ずかしさで気が狂いそうだった。
多くの通行人の歩く街道で、乳房の片側を出し、下着を身に着けていない下半身の前後を小さな布で覆っただけの格好にされているのだ。
しかも、女陰には深々と張形が貫いており、歩くたびに膣の中を刺激するだけではなく、小さな小枝のような突起が肉芽を抉り動く。
泣きそうな気分だ。
隠すことのできない愛液が気持ちの悪いくらいに内腿を伝い落ちている。
とてもじゃないが顔をあげていられなくて、懸命に沙那は顔を俯かせた。
その目まいさえするような羞恥に、沙那の肌は普通以上の敏感さを感じていた。
沙那の研ぎ澄まされた感覚は、周りの見知らぬたくさんの男たちの視線の気配をしっかりと感じている。
こんなときは、沙那は自分の鋭敏な感覚が恨めしく思った。
そのとき、また股間の張形が激しく振動をした。
「はううっ、そんなわたしばっかり」
沙那は甘い声をあげて、再び両膝をがくりと曲げた。
「まったく、どうしようもない淫乱女だなあ。こんなんじゃあ、俺の女である資格はないな。ここで解放してやるよ。どっかに行っちまいな」
張須陀が呆れたような声をあげた。
「そ、そんな。す、捨てないでください。なんでもしますから」
沙那はびっくりして声をあげた。
すると、張須陀が嗜虐的な笑みを浮かべた。
「これを見ろ、沙那……。義手だ。高価な霊具の義手で大抵のことはできるようになったが、元はと言えば、お前が切断した両手だ。このことを忘れてはいないか? 生半可なことじゃあ、お前を許す気にならないとは思わないか? お前など、ここで弄んだ挙句にお払い箱だ」
「あ、謝ります……。さ、最初に謝ったじゃないですか」
沙那は声をあげた。
以前、張須陀と対立して張須陀に剣をふるったことは記憶している。
いまにして思えば、なんであんなことをしたのかわからないが、久しぶりに再会したとき、張形を股間に挿入して着いてくるように命じられ、そのとき、最初に謝罪したのだ。
「普通のことじゃあ許す気にならないと言っているんだ。死ぬような恥ずかしいことをしろ。そうしなければ、許す気にはなれんのだ。よし。じゃあ、手を自由にしてやる。その代わり、胸を剥き出しにして、自分でもみながら着いてこい」
「い、いやです……。み、見られます」
沙那は驚愕した。
大勢の人の目をはっきりと感じるのだ。
そんな場所で自分の胸を揉むなどという、はしたないことができるわけがない。
「だったら、ここでお別れだ。じゃあな、沙那」
張須陀は沙那と孫空女の手首を縛っていた紐を解き、ふたりの手首を繋いでいた手錠を外した。
「さあ、孫空女、腕を組んで歩いてやろう。その代わり、沙那と同じような恰好になるんだ」
張須陀が孫空女の下袴の切れ端を腿の位置で切断し始めた。
あっという間に、沙那と同じように腰の前後に短い布をつけただけのような格好になる。
後ろから見ると、しっかりと張形を咥え込んだ股倉がかすかに覗き見れる。
自分もあんな恰好をしているのかと思うと、改めて恥ずかしさが襲ってきた。
「いくぞ、孫空女」
張須陀が孫空女の肘をとって腕を組んだ。
そして、ぐいと引き寄せるようにした。
「あ、ありがとう……。う、嬉しい……」
孫空女がはにかむような声でうっとりと張須陀を見た。
そして、ぴったりと身体を寄せるようにしている。
沙那の身体にかっと嫉妬の火がついた。
沙那だって、張須陀が好きなのだ。
それなのに……。
ふたりが歩き出した。
張須陀は、もう沙那に声すらかけなかった。
沙那は決心した。
その場でほとんど乳房が露出している上衣を脱ぎ捨てた。
完全に上半身が素裸になる。
「い、言われたとおりにします……。しますから……」
沙那は声をあげてから追いかけた。
さらに、乳房をしっかりとつかんで自分で揉み始めた。
すると、ほんの微妙な振動を股間の張形が加えだした。
「あっ」
沙那は悲鳴をあげたが、嬉しかった。
張形を刺激されたのは、張須陀がまだ沙那を捨てないという意思表示だろう。
周囲の視線が奇異と驚きから、軽蔑と嘲笑に変化しているのはわかっていたが、いまはどんなに蔑まれてもいい。
笑われてもいいから、張須陀に捨てられたくない。
「う、うう……」
ふと顔をあげると、孫空女の股間の張形も振動をさせられたのだろう。
艶めかしく腰を揺らしながら、孫空女は張須陀の腕にしがみつくようにして歩いている。
「ね、ねえ……。め、命令したようにしています」
沙那は当て付けのような張須陀の無視に耐えられなくなって、張須陀に声をかけた。
「おっ、まだ、いたのか、お前? もう、行っていいと言っただろう」
振り返った張須陀が意地悪く沙那に言った。
「そ、そんな……。だ、だって……」
沙那は胸を揉みながら、すがりような気持ちで張須陀を見た。
火の出るような羞恥に耐えて命令に従っているのだ。
張須陀に捨てられたくない一心で……。
それをわかって欲しい……。
「じゃあ、お前の本気がどの程度か試験をしてやろう。そこで立ったまま自慰をしろ。自分で股間の張形をまさぐって絶頂するんだ。そうしたら、お前の服従心が本物であることを認めてやる」
孫空女と腕を組んだ張須陀が立ち止まって、沙那に正面を向けて言った。
沙那は自分の耳を疑った。
「そ、そんなこと……」
そんなことできるわけがない。
いまは、かなりの男たちが三人の周囲を取り囲むようにまでなってきた。
夕刻における卑猥な露出女の出現に、あきらかに性的な興奮を示している者もいる。
「できないのか? そうだろうな。俺の手を切断したくらいに、俺が嫌いなお前だしな。じゃあ、達者でな。俺は孫空女といい思いをしてくるよ……」
張須陀が歩き出す気配を示した。
「ま、待って。します」
沙那は決心した。
もう、なにも考えない。
沙那は股間に手を伸ばした。
張形は沙那の股間がしっかりと締め支えていたが、それを緩めて少し外に出す。
根元を掴んだ。
股間を開いて抽送を開始した。
「み、見てください──」
沙那は張須陀に言った。
そして、張形の抽送を開始した。
「おお」
周りの男たちからどよめきが起きた。
いまや、沙那たちの周りは完全な人の輪になっていた。
おそらく、三十人くらいはいるだろう。
沙那はその男たちの視線にさらされながら張形を動かした。
「はああっ」
強い歓喜が襲ってきた。
こんなにも感じるものかと自分でも呆れるくらいの快感だ。
他人に羞恥の姿をさらしながら快感をむさぼるのは、興奮も歓喜も欲情も桁違いだ。
羞恥など吹き飛ばすような随喜の欲情が沙那を包む。
「うう、あうっ、ああっ」
沙那は耐えられずに大きな声をあげた。
「もう、そんな布切れもいらんだろう。捨ててしまえ」
張須陀の嘲笑の声がした。張須陀の声はまるで縛心術のようだった。
沙那は空いている片手で、もはや布切れにすぎない股間の前後の布を足元に落とした。
周りから悲鳴のような歓声が起きた。
その声がさらに沙那の欲情を拡大させた。
手足の先の先まで快感に震える。
身体中の性感が灼き尽くされていくかのようだ。
沙那の理性は完全に狂い、もうなにも考えられない。
そして、絶頂に通じる快感がやってきた。
「ふうう──。い、、いきます──。いきます──」
気の狂うような羞恥の中、沙那は凄まじい快感に襲われて叫んだ。
体内に溜まっていたものが一気に喜悦の雪崩になって拡がる。
「あはああっ」
沙那は立ったまま裸身をのけ反らせた。
がくがくと身体を震わせて、ついに快感の頂点を極めた。
野次のような歓声が浴びせかけられる。
「……よし、張形をその場に捨てろ。がに股になって、小便をしろ。これだけの見物人に珍しいものを見せてやりな。美女のがに股小便姿だ」
張須陀に言われたことを頭で考えることはできなかった。
それよりも身体が反応していた。
沙那は絶頂の快感に貫かれながら、張形を抜き捨て、その場で中腰になりさらに脚を開いた。
「うわああ」
「おおぅ」
「すげえ、この女、本当に小便をしたぞ」
周囲の男たちが声をあげた。
沙那の股間からはじょろじょろと尿が流れている。
尿道を刺激することで、さらに快感が追加され、沙那はますます身体を震わせた。
「はあ、はあ、はあ……。や、やりました……。で、ですから……」
尿がやっと止まった。
沙那はすがるような視線を張須陀に向けた。
これだけの恥を晒したのだ。
これで満足してくれただろか……?
「ああ、約束だ。抱いてやろう。だが、ちょっとばかり、大きな騒ぎになちまったな。ここから先は道術で移動だ」
張須陀が懐から『道術紙』を出した。
『道術紙』というのは、霊気はあるが道術を遣えない道術遣いが、特定の道術を一時的に遣うための霊具だ。
あらかじめ定められた道術の術式が刻んであり、それを使って本来は遣えない道術を遣うのだ。『道術紙』は基本的には使い捨てだ。
「こっちに来い、沙那」
張須陀が言った。
孫空女と組んでいない側の腕を差し出している。
沙那は心からの悦びとともに、素っ裸でその腕にしがみついた。
次の瞬間、『移動術』特有の身体がねじれる感覚が襲ってきた。