「相変わらず、いい股の締まりだ。気持ちいいぞ、沙那」
沙那はその張須陀に股がって、喘ぎ声をあげながら身体を振っている。
騎乗位で張須陀の怒張を股倉で咥え、身体を躍らせているのだ。
「ああっ、あっ、ううっ……、う、嬉しい……嬉しい……ああっ、ああっ」
沙那が白い喉をのけ反らせながら歓喜の声をあげた。
そして、感極まりかけたのか、がくがくと汗まみれの身体を震わせる。
ここは、
もともと、誰も住んでいない家なのだが、今回の工作のために数日間のみ、余分な借賃を支払って借りている。
たったひと晩だけのことなのだから、黙って使ってもいいのだが、
歌艶が高い道術を生かして小金を十分に稼いでくれるのだ。
金子がいつでも手に入るのであれば、なにも悪事を働く必要はない。
また、懐が充実すれば、心に余裕もできるから、不思議なものだ。
この一軒家に沙那と孫空女を連れ込んで三人で性交に耽っていた。
正常位、後背位、立位、座位……。
さまざまな体位で、沙那と孫空女のふたりを代わる代わる抱いている。
いまは騎乗位だ。
もう、かなりの時間がすぎているが、さすがに沙那も孫空女も体力がある。
昇天しているのはふたりばかりであり、張須陀はふたりに一度ずつ射精をしただけなのだが、もう限界に近い。
それに比べれば、沙那も孫空女も、疲れ知らずのように、ますます淫らによがり続ける。
そろろそ、夜半すぎだ。
「ああん、あん、あん、あん」
沙那が甘い声をあげながら、張須陀の股間を締めつけて踊り狂っている。
そして、またもや絶頂の兆候を示し始めた。
「いぐううう」
そして、達した。
呆気ないものだ。
張須陀は笑ってしまった。
あんなに憎かった沙那のはずだったが、これほどまでに張須陀の肉棒に酔いしれてよがり狂われると可愛らしくなる。
しかも、あっという間に果ててしまうのだ。
男しては堪らない嬉しさだ。
「よし、交代だ」
張須陀は沙那の尻たぶに軽くぱちんと平手を与えた。
「あんっ。あ、ありがとうございました……」
沙那が溜息をつきながら、股間から張須陀の怒張を抜いた。
「じゃ、じゃあ、あたしね……」
待ちかねたように、すかさず孫空女が寄ってくる。
沙那の股間から出たばかりの張須陀の怒張を中腰になった股で咥え始めた。
「ああ、いいっ」
すぐに、孫空女が腰を上下させて抽送を開始した。
孫空女の全身が真っ赤になり、喘ぎ声を発しだす。
「ひいっ、ひっ、ひいっ」
孫空女が声をあげだした。
もう、孫空女は何度も絶頂している。
孫空女だけでなく、沙那も何度も絶頂を繰り返しており、これ以上ないというほどに全身の感度があがりきっているようだ。
また、疲労困憊でもある。
「いぐううう」
しばらくすると、孫空女もまた、張須陀の腰の上で果てた。
「じゃ、じゃあ、わたしですね」
また、沙那があがってくる。
これは、まさに桃源郷だろう。
美女ふたりが争うように、張須陀の身体にむさぼってくるのだ。
しかも、かつては自分を殺しかけた女たちがだ。
張須陀の溜飲は完全にさがっていた。
「よし、上になるのはいい。沙那が下になるんだ。俺の精を注いでやろう。俺の精が欲しいか、沙那?」
「ほ、欲しいです。く、ください」
沙那が目を大きく開いて嬉しさを表した。
張須陀は笑いそうになった。
明日の昼に、惚れ薬の影響がなくなって我に返ったときの反応が見ものというものだ。
自分のやったことを思い出して、嫌悪感にもだえ苦しむことだろう。
いずれにしても、これで復讐は終わりにしよう。
それ以上の関わりは身の破滅だ。
張須陀はそう決めた。
“足るを知る”──。
昔、まだ張須陀が真面目に武術を極めようとしていた頃に、師匠に教わった言葉だが、あのときにはなにも思わなかったが、いまこそ、この言葉の通りにすべきだと思った。
沙那の身体を横たえて沙那の脚を抱えると、張須陀は沙那の股間に深々と怒張を突き挿した。
「ああ、ああっ、あああっ、あああ──」
抽送を開始すると、沙那の股間が淫らな水音をたてはじめる。
さらに激しく肉棒を律動させる。
だが、張須陀の怒張もかなりの時間、沙那と孫空女から交代で刺激され続けている。
あまり長くもちそうにない。
「孫空女、俺の尻を舐めろ」
張須陀は沙那を犯しながら言った。
「う、うん」
横の孫空女が嬉しそうな声を出して、張須陀の背後にやってきた。
すぐに尻穴に孫空女の舌の刺激を感じた。
凄まじい快感が襲ってきた。
「ううっ、で、出るぞ。沙那、俺の精だ。これが俺の復讐の精だ」
「ああ、もう、言わないで。す、すごい……素敵素敵ですああ、沙那もまたいきますいぐう」
さっき達したばかりだというのに、沙那はまた感極まった声をあげて、身体を震わせた。
「くらえ──、くらえ──。孕んでしまえ──」
張須陀は吠えた。
そして、ありったけの精を沙那の膣に注ぎ込んだ。
*
「準備は終わった。行くぞ」
張須陀はやってきた
夜明け前に、ここにやってくるようにふたりには指示していた。
もうすぐ夜明けだ。
窓の外の闇が薄っすらと白みだしている。
「お父さん、お仕事終わり?」
繭が張須陀にしがみついてくる。
「ああ……。終わりだ、繭……」
他人の子だが、これだけ親しんでくれれば嬉しい。
張須陀は思わず笑みを漏らした。
「あなた、いつでも『移動術』で出発できます。とりあえず、南の国境までは一気に跳躍できます。合図をしてくれればいつでも……。でも、そのふたりはいいのですか? よければ、道術で完全に拘束してしまってもいいですよ」
歌艶が部屋の真ん中で眠っている沙那と孫空女のふたりに視線を向けながら言った。
沙那と孫空女のふたりは、素裸で後ろ手に手錠をかけて、その手錠を鎖で柱に繋げている。
度重なる絶頂の末に疲労で寝てしまったふたりを張須陀がそうやって拘束したのだ。
「いや、いい。お前の道術が残ると、それを辿って宝玄仙という魔女が追ってくる可能性がある。ここには道術の痕跡は残すな。そのために、こいつらの脱出を許すことになっても、それでいい。俺の復讐は終わりだ。あとは三人で逃げることを考えよう」
張須陀は言った。
「じゃあ、よろしいですね。『移動術』で跳躍します、あなた」
「ああ。どこか、遠いところに行こう。こいつらが正気になれば、俺は間違いなく殺されるだろうな。だから、できるだけ遠くに行きたい……。そうだな……。もう帝国も脱してしまおう。できれば東諸王国群よりも遠くがいい。どこか、三人で落ち着けるところを探すか」
張須陀は苦笑しながら言った。
「嬉しいですわ、あなた……。それと、あなたを誰にも殺させはしません。安心してください」
歌艶がにっこりと笑って、張須陀の腕をとった。
すぐに、『移動術』の跳躍を感じた。
*
「孫女、孫女」
沙那の声がした。
孫空女は目が覚めた。
「さ、沙那……?」
泣きそうな顔の沙那が孫空女を覗き込んでいる。
はっとした。
両手に後手で手錠をかけられて、それが鎖で家の柱に繋げられている。沙那も同じだ。
しかも、素っ裸だ。
そして、孫空女は昨日の痴態を思い出した。
「あれっ? うわあああああっ」
そして、孫空女は絶叫した。
張須陀に惚れ薬というおかしな薬剤を飲まされて、ずっとおかしくなっていたことがわかったのだ。
どうやら、やっと薬の影響がなくなったようだ。
昨日のことを思い出して、張須陀にいいように操られたことに対する怒りが噴きあがる。
「ど、どうしよう、孫女……。張須陀さんがいないわ……」
拘束されている沙那が狼狽えた声をあげた。
しかし、まだ、沙那は惚れ薬の影響から抜けていないようだ。
「しっかりしなよ、沙那。あたしらは、張須陀に操られたんだよ。惚れ薬を飲まされたんだよ」
孫空女は言ったが、沙那は張須陀がいないということに悲しそうな顔をしている。
確かに、張須陀はいない。
置いてきぼりにされたのだろう。
孫空女の薬の影響がなくなったということは、あの惚れ薬の影響は時間とともに消えるという性質のものだったのだろうか。
沙那が惚れ薬を飲んだのは、孫空女よりもかなり後だ。
だから、まだ、影響が消えないのかもしれない。
「ねえ、張須陀さんが……。ねえ、追いかけようよ、孫女……」
沙那はまだおろおろと言っている。
「冗談じゃないよ、沙那。張須陀なんか、もうどうでもいいさ。それよりも、ご主人様だよ。あたしら、ひと晩も無断で離れちゃったんだよ。きっと、怒っているよ」
「ご、ご主人様もそうだけど……。でも、張須陀さんが……」
沙那はまだ言っている。
これは、薬の影響が消えるまで、なにを言っても無駄だろう。
孫空女は嘆息した。
そのとき、大勢の人の気配を感じた。
「あれっ?」
沙那も気がついたようだ。急に険しい表情に変わり、外に意識を向ける仕草をした。
そのとき、勢いよく、家の扉が開いた。
この国の兵が、大勢雪崩れ込んできた。
あっという間に十数人の武器を持った兵に取り囲まれた。
しかも、まだ、外に兵がいる気配もある。
「沙那、孫空女。寇員外殺しで捕縛する。大人しくしろ」
指揮官らしき将校が、沙那と孫空女に怒鳴った。
*
「沙那、あたしの耳から『如意棒』出して……」
孫空女はささやいた。
部屋の中には武装兵が二十人というところだ。
外にはもっといると思うが、蹴散らすしかない。
孫空女の得物は耳の中に隠している。
だが、後ろ手の状態では届かない。
しかし、後手の手錠は余裕のある鎖で柱に繋げられているだけだ。
沙那なら届く。
沙那の行動も素早かった。
孫空女の言葉が終わると同時に、後手の腕を曲げて、孫空女の耳からまだ小さい『如意棒』を落とした。
惚れ薬の影響が残っているとはいえ、それ以外の感覚に問題はない。
沙那もすでに戦士の表情になっている。
孫空女は、耳から落ちてくる『如意棒』を後手で受け取った。
手錠と手錠の小さな鎖のあいだに、まだ刺繍針程度の『如意棒』を射し込んで噛ませる。
「伸びろ──」
孫空女が叫ぶと、『如意棒』が大きくなる。
手錠のあいだの鎖の小さな輪に入れたまま拡大したので、うまい具合に太さと長さが増した『如意棒』が手錠の鎖を引き千切った。
「こいつ──。抵抗するぞ、押さえよ──」
隊長らしき者が悲鳴のような命令を与えた。
後手に拘束されている素裸の女が抵抗するとは、夢にも考えていなかったようだ。
正面の五、六人の兵が殺到した。
彼らは捕物用の棒を持っている。
それが襲いかかる。
「邪魔すんじゃないわよ──」
すかさず、沙那が棒を足で蹴飛ばす。
さらに、ひとりの兵の脚を払って、倒れ込んできたその兵を両脚で抱えて盾代わりにした。
「うわっ」
沙那の脚に胴体を挟まれた兵が声をあげる。
「な、なんだ?」
「こいつら──」
兵たちが当惑の声をあげた。
そのときには、孫空女の両手は、手錠からも柱に繋がっていた鎖からも自由になっている。
「沙那、腕出して──」
孫空女はそう叫びながら、まずは『如意棒』を一閃させて、部屋の中にいた兵のひと塊を叩きのめす
少し兵たちと距離が開いた。
沙那が脚に挟んでいた兵を前に蹴飛ばして立ちあがる。
広くはない部屋だ。
沙那に蹴り倒された兵が、ほかの兵が襲いかかってくるのを阻む。
沙那が身体を屈めて、後手の手錠を上にあげた。
孫空女は『如意棒』を振り下ろす。
沙那の両手も自由になった。
孫空女はなにかを叫ぼうとした将校らしき男の喉を『如意棒』で突く。
その将校が動かなくなる。
さらに『如意棒』を二閃、三閃させた。
それで、部屋の中で動いている兵はいなくなった。
ほんの一瞬のことにすぎない。
「沙那、出るよ──。宿町に戻ろう。ご主人様のところに行こう──」
孫空女は扉に張りついた。
外にはまだ数十人の兵がいた。
家の前庭のような場所に大勢の兵がいる。
その向こうに街道があるのだが、街道に辿り着くためには、その兵のすべてを蹴散らさなければならないだろう。
しかし、まだ、部屋の中の異変には気がついていないようだ。
これなら蹴散らせる──。
「……ちょっと、待って──」
沙那は気絶している兵から上着を剥がして身に着けようとしていた。
すでに剣は奪っている。
「そ、そんな暇はないよ、沙那──」
孫空女は怒鳴った。
「あんたみたいに、心臓は強くないのよ。素っ裸じゃあ、外に出れないの──」
沙那は裸身に兵の上衣だけを身に着けて立った。
兵たちが着ていたのぼたんで前を留める白色の上衣だ。辛うじて股間が隠れる程度だ。
ただ、動けば尻も股も露わになるだろう。
しかし、確かに素裸よりもましかもしれない。
沙那がもう一枚の上衣を投げた。
孫空女も外に気を配りながら、それを着込んだ。
「とにかく、外に出て張須陀さんを追いましょう。きっと、街道を南に戻ったのだと思うわ」
「まだ、そんなことを言っているのかい──。張須陀なんてどうでもいいと言っているじゃないか──」
「でも……」
沙那が泣きそうな顔になった。
孫空女は嘆息した。
「多分、その張須陀もご主人様のところだよ……。あたしらをここに拘束して、恨みを晴らすために、ご主人様を襲いに行ったに違いないよ……」
孫空女は言った。
「そ、それもそうね……。じゃあ、ご主人様のところに……」
すると沙那も納得したようにうなずいた。
とりあえず、孫空女はほっとした。
惚れ薬で操られている沙那を引きずって、宝玄仙のいる宿屋まで戻るのは骨の折れそうな仕事だと思っていたからだ。
ただ、孫空女には、張須陀が宝玄仙のところに向かったとは、なんとなく思えなかった。
張須陀が恨みを抱いていたのは沙那だ。
沙那はその辺りの詳しい事情は、あの場にいなかったので気に留めていないかもしれないが、張須陀の恨みの対象は沙那だけのはずであり、宝玄仙への恨みなどないはずだ。
あのとき、張須陀の両手を切断したのは沙那であり、宝玄仙はそれで瀕死の状態にある張須陀を助けたほどだった。
「おい、お前──。まだ、手こずっているのか──?」
外から大きな声がした。
扉の隙間から外をうかがっている孫空女には、丈も幅も常人の二倍はありそうな巨漢をそこに認めた。
同じような体格の大男が隣にもいる。
服装からして、その男ふたりが、この一隊の全体の指揮をしているのは間違いない。
部屋で倒れている将兵たちは、あの大男に指示されて、孫空女たちを捕らえにきたのだろう。
それにしても、この帝国の地方軍の一隊は、なんで、孫空女たちを捕えにきたのだろうか?
部屋の中にいた将校らしき男は、「寇員外殺し」とか言っていたが……。
どういうことだろう……?
沙那はまだ頭が回っていないようであり、それを気にしている様子はない。
まあいい──。
とにかく、この場を脱出することだ。
宝玄仙のところに連れて行きさえすれば、沙那も正気に戻るに違いない。
「出るよ、沙那──」
孫空女は扉を飛び出した。
沙那が後ろを追っているのはわかっている。
「お、女が出てきたぞ──」
「武器を持っている──」
「家に入った連中はどうした──?」
兵たちが騒然としている。
棒は持っていたが、彼らは構えもしていなかった。
慌てて棒を構えたり、あるいは腰の剣を抜いたりしている。
その兵の集団に向かって、孫空女は跳躍した。
兵たちの頭を越える。
周りの兵が呆気にとられている。
おり立ったときには五名くらいが『如意棒』に打たれて悶絶している。
さらに一閃──。
それでかなりの数の兵がいなくなる。
少し後ろでも、大きな喧噪が起きている。
沙那だろう。
二閃──。
三閃──。
『如意棒』を振り回すたびに、まとまった兵が吹っ飛んでいった。
だんだんと立っている兵の数が減っていく──。
数を恃んでいた周辺の兵がひるみ始めた。
「お前ら、除け──」
すると、正面からさっきの巨漢のふたりがにやにやと笑いながら歩いてきた。
周囲にいた兵が波が引くように左右に散った。
「お前ら、女のくせに強いな……。女ふたりを捕えるなど、面白くもない仕事だと思っていたが、これは面白そうだ。ちょっとばかり遊んでやるよ。一騎討ちといくか、女──」
向かって左の大男が言った。その男が腰に提げていた剣帯を剣ごと外す。
孫空女の正面に立ちはだかったのがその男だ。
右側のもうひとりの巨漢は、沙那の前にいる。
そいつはまるで丸太のような大きな棒を持っている。
剣は最初から持っていない。
「へえ、遊んでくれるのかい? だったら、その一騎討ちとやらで、あたしらが勝ったら、あたしらを逃がしな」
孫空女は、注意深く身構えながら、『如意棒』を小さくして耳に戻した。
すると、周囲から一斉に笑い声があがった。
「おいおい、あの赤毛の女、
周囲の兵がどっと笑った。
【作者注】
張須陀は、このエピソードを境に再登場の予定はありません。
本作品では珍しくも、逃げおおせた悪人となっています。
まさに、「足るを知る」です。