「
なにしろ、
だが、理由もなく陳嬌がそんな無礼をすることはないから、余程のことがあったのだろうと推測した。
「……殿下、お人払いを……」
陳嬌が短く言った。
とにかく、ほかならない陳嬌の言葉だ。
それなりの重大事なのだと判断した。
釘鈀は、向かい合って座っていた近衛団長の劉旺に視線を向ける。
「申し訳ありませんが、ちょっと立て込んできたようです。とりあえず、
劉旺に言った。
「この恩は忘れませぬ……。どうか、お頼み申しあげます」
劉旺が頭をさげた。
そして、横の籠の中で布に包まれて眠っている劉姫に声をかけてから、『移動術』で消滅した。
釘鈀は、劉旺が去ったのを確かめてから、さらに劉姫についても、別室に『移動術』で移動させた。
そこには、劉姫の面倒を看るように指示している侍女たちを待機させている。
「さあ、これでいいですか、陳嬌? それに、その後ろの女性の方々は何者です?」
「こ、この方々たちは……そのう……、沙那様と孫様の連れの方です、殿下」
すると、陳嬌が言った。
「沙那様と孫様……?」
陳嬌があのふたりを“様”付けで呼ぶなど、おかしな呼び掛けの言葉に釘鈀は首を傾げた。
そして、陳嬌の様子がおかしいということにやっと気がついた。
姿と声は陳嬌に違いないのだが、それ以外の挙動は陳嬌であって陳嬌ではない。
「あっ」
あれは別人だ。
それがわかった。
そういえば、陳嬌には、突然に訪問してきた細蔡君の相手を頼んでいたはずだ。
確か、その
やって来たのは陳嬌を含めて三人の女性だ。
つまり、上で異変があったのだろう。
「ちっ」
慌てて、道術通信で不審者を報せる伝言を発信しようとした。
だが、いつの間にか道術の結界がかかって遮断されている。
それだけではなくて、たったいままで自由に遣えた『移動術』の道術が封鎖されている。
釘鈀自身も逃亡できなくなってしまったということだ。
釘鈀は嘆息した。
「……どうやら、俺はあなた方に閉じ込められたようですね……」
釘鈀はそれだけを言った。
この部屋には最初から家臣を人払いさせていたので、釘鈀はやってきた三人の女と、ひとりだけで対面するかたちになってしまった。
「この部屋は完全に封鎖したよ。観念しな。ついでに教えておいてやるよ。この部屋の外には、お前の部下が殺到しているよ。お前を助けようとしてね。だけど、話の邪魔なんで、このわたしがこの部屋全体を結界に包んで固めている。ここを出入りできるのは、わたしが認めた者だけということだ」
黒髪の女が進み出てきた。
びっくりするような美女だが、釘鈀はこの女がとてつもない量の霊気を発散していることがわかった。
この部屋を密室状態にしているのは、どうやらこの女のようだ。
「どちら様ですか? 俺はこの国の第二皇子の釘鈀です。この屋敷を案内もなしに歩くなど、それだけで大罪というのはご存知ですか? 陳嬌と細蔡君はどうしたのです?」
釘鈀は言った。
「へえ、いい度胸じゃないかい、悪党のくせに……。陳嬌とかいう小生意気な女と、細蔡君の坊やは上で乳繰り合っているよ──。沙那と孫空女を返しな。ふたりは無事でいるんだろうねえ?」
その黒髪の女が言った。
三人は椅子に腰かけている釘鈀の前に立ちはだかるような位置に移動してきた。
「もういいよ、素蛾……。どうやら、この皇子はお前が偽者であることはわかったようだよ。まあ、ここまでやって来れれば十分さ。後はこの皇子を拷問して、沙那と孫空女の居場所を吐かせるだけだからね」
黒髪の女が言った。
左側にいた陳嬌の姿が可愛らしい童女の姿に変化する。
「わたしは宝玄仙という通りすがりの道術遣いだよ。こっちは朱姫、わたしの霊具で陳嬌に変身していたのが素蛾だ。このふたりはわたしの旅の供だけど、お前が誘拐した沙那と孫空女もわたしの供さ……。そのお前の糞度胸に免じて、ふたりを戻せば、命だけは取らないでやるよ。ふたりを戻しな、悪党──。ふたりは無事かい?」
宝玄仙と名乗った黒髪の女が言った。
「悪党とは心外ですね。あのふたりは死刑囚だったのでしょう? それを陳嬌が助けてあげたのですよ。だったら、少しはその恩を返してもらってもいいでしょう? あのふたりは俺の闘奴隷として、明後日からこの帝都で開催される天下一闘技会に出場してもらわなければなりません」
「天下一闘技会?」
宝玄仙が怪訝な表情になる。
釘鈀は大きく頷いた。
「ええ、命のやり取りなどない健全な闘技会ですよ。あなたたちが、ふたりの連れなのであれば、沙那を説得してくれませんか? どうにも頑固でしてね……。どうしても俺の闘奴隷として、奴隷の刻印をするのを嫌がるのですよ。闘技会が終われば、礼金とともに解放すると言っているのに……」
釘鈀は語りだした。
だが、宝玄仙がそれを手で制する。
「もういい──。それ以上、べらべらと訊ねないことを喋るんじゃないよ、皇子──。わたしが訊ねているのは、沙那と孫空女が無事かどうかだよ」
宝玄仙がさっきまで劉旺が腰かけていた長椅子に座った。
朱姫と素蛾のふたりがその後ろに立つ。
「孫空女は元気ですよ。奴隷の刻印を受け入れたのでね。ただ、沙那は弱っています。拷問をしています。奴隷の刻印を受け入れろと迫っているところです。まあ、大した精神力ですが、さすがにそろそろ堕ちるでしょうね。なにせ、昨日からずっと寸止め責めを続けていますから」
「寸止め責め?」
宝玄仙が目を丸くした。
そして、噴き出した。
「拷問というのは寸止め責めかい──? お前、なかなか、面白いじゃないかい。そりゃあ、沙那も可哀想に──」
すると、宝玄仙が笑い出した。
その無邪気そうな笑いに、釘鈀は思わず釣り込まれて笑みを漏らした。
この女性は悪人ではない。
そう釘鈀の勘が告げていた。
これでも、人を見る目だけはあるつもりだ。
それがなければ、あの難しい
溥儀雷帝が不義密通だとして廃后した劉姫を匿って、兄の劉旺に引き渡すなど、それだけで処断は免れない皇帝への裏切りだ。
だが、釘鈀はそれと同じようなことをもう幾度もやっている。
あの皇帝は気紛れ屋だ。その気ままの犠牲になって処刑されそうになった女や男をこの奴隷宮という隠れ蓑に連れ込んで、こっそりと救ってやった数は二十や三十じゃあ終わらない。
「しかし、不思議だねえ……。お前は、なんでもっと怖がらないんだい? わたしがお前に危害を加えないと思っているんじゃないだろうねえ、皇子?」
「そんなことは考えていませんけどね……。まあ、慌てふためいても、事態には変化はないということはわかっていますのでね」
もしかしたら、さっき宝玄仙が言った通りに、警備兵もこの部屋の外の廊下にすでに来ているのかもしれない。
そうであれば、彼らは、懸命に扉をぶち破ってでも、なんとか部屋に押し入ろうともしているはずだ。
だが、こちらには、その騒音でさえも聞こえてこない。
完璧な結界だ。
突然に、道術の暴風が釘鈀の身体を突き抜けた。
「おっ?」
釘鈀は椅子に縫いつけられたように動けなくなった。
驚いた──。
凄まじい霊気だ。
宝玄仙の霊気のようだ。
釘鈀も長くこの帝都で多くの道術師と接したが、この宝玄仙ほどの力のある道術師と遭ったことはない。
これでは陳嬌もひとたまりもなかっただろう。
「その糞生意気な態度が気に入らないね──。素蛾、こいつの肉棒をしゃぶってやりな。続けざまに三発ほど抜いてやるんだ。そうしたら、いまみたいな生意気な態度は取れなくなるだろうさ」
宝玄仙が釘鈀を睨みながら言った。
素蛾という童女が近寄ってきた。
「すみません、殿下……。ご主人様の言いつけなので、三発分の精を抜かせていただきます」
素蛾が金縛りで動けなくなった釘鈀の股のあいだにしゃがみ込んだ。
「この俺を相手に、この童女が精を抜くんですか? これでも帝都一の女たらしと有名でしてね……。申し訳ありませんが、こんな童女の舌技に屈するようなことはありません。まあ、こういう幼さの残る童女に奉仕されるというのは悪い気はないから、一発くらいは抜いてもらってもいいですけどね」
釘鈀は笑った。
「その大口は素蛾の唾液を味わってからしな。お前が本当に、わたしの性奴隷の素蛾の舌を味わっても、精を出さなかったら、沙那と孫空女を闘技会に参加させることを考えてやるよ」
宝玄仙が不敵に笑った。
「その言葉に嘘はないですね、宝玄仙殿」
釘鈀はにやりと笑い返す。
「ああ……。その代わりに、呆気なく三発抜かれたら、沙那と孫空女を無条件に返すんだ」
「いいですよ。その賭けに乗りましょう」
釘鈀は言った。
「じゃあ、失礼します」
素蛾が釘鈀の下袴の前の部分の留め具を外して、さらに中で下着をめくって釘鈀の肉棒を外に出した。
一応はもがいてみたが、釘鈀の身体は椅子に張り付いたように動かない。
釘鈀は無駄な足掻きは諦めた。
素蛾が下袴の前から露出させた釘鈀の一物を両手で捧げ持つような仕草をした。
まだ、釘鈀の一物は軟らかいままだ。
「せめて勃起くらいはしてあげてもよかったけど、いま聞いた通り、お前の主人と賭けをしたんだ……。悪いが精はあげられない。だけど、お前が魅力的じゃないということは言っておくよ。君は本当に可愛らしい性奴隷だよ」
釘鈀は目の前の幼い性奴隷に声をかけた。
宝玄仙があれだけ言うのだから、多少は性奴隷として舌技も鍛えらていると思うが、釘鈀はいくらでも精を出したり、耐えたりということを自分で統制できる。
こんな少女の手管に負けて、呆気なく精を出すということなどあり得ない。
「失礼します」
素蛾が釘鈀の肉棒を咥えた。
「うわあっ」
次の瞬間、釘鈀は思わず声をあげた。
肉棒が素蛾の唾液に包まれた途端に、妖しげな感覚が込みあがったのだ。
その凄まじさは、耐えられるというような限界を越えていた。
快感が無理矢理に引き出される。
釘鈀は唸り声をあげた。
「どうしたい、色男……? さっきまでの余裕はどうしたんだい?」
宝玄仙がせせら笑った。
しかし、釘鈀はすでに自失寸前の状態だ。
肉棒は、あっという間に硬く勃起しただけでなく、さっそく最後の状態にまで追い込まれている。
こんなことはありえない──。
釘鈀は焦った。
「くああっ」
背筋に戦慄するような快感が駆けのぼった。
釘鈀は大きく息を洩らすと、素蛾の小さな口の中に精をぶちまけてしまった。
「さっそく一発かい──。じゃあ、二発目も搾り出しな、素蛾」
宝玄仙が笑いながら言った。
釘鈀の出した精を懸命に喉に押し込んだ素蛾が釘鈀の一物を咥え直した。精を放つことで力を失った男根が、すぐに勃起を取り戻す。
「ふううっ」
全身が震えるような快感が走る。
そして、結局、大して時間もかけずに二発目も射精させられた。
「よし、素蛾、三発目は尻だ──。そのすまし顔をぐうの音の出ないほどに潰してやりな。お前の唾液でこいつの尻穴を舐めまくるんだ」
「はい、ご主人様……」
宝玄仙の笑いながら命令に、素蛾は嫌がる素振りも見せずに返事をした。
朱姫もやってきて、釘鈀の身体を椅子からおろして反転させ、上半身を椅子にもたれさせるようにした。
宝玄仙の道術で金縛りになった身体はまったく自分の力では動かない。
もう釘鈀はなるように任せた。
「さあ、素蛾やってあげて……」
朱姫がくすくすと笑いながら、椅子に向かって膝立ちをしている釘鈀の下袴を膝まで下着ごとおろした。
「では、また失礼します、殿下」
素蛾の舌が釘鈀の尻穴を這いだした。
「うおおお──こ、これはなんだ──?」
釘鈀は激しく狼狽して叫んだ。
たまらない情感が素蛾が舐める尻穴に込みあがる。
釘鈀はつんざくような悲鳴をあげて腰を震わせた。
股間の一物は、短い時間で二度も精を出したというのに、新しく加えられる未知の刺激に、またもや逞しく勃起している。
釘鈀は自分の身体に起きていることが信じられなかった。
またもや、精の迸りがやってきた。
素蛾の舌が尻穴を抉るように喰い込んでくる。
釘鈀は全身を震わせた。
「ううっ」
釘鈀は声をあげた。
そして、呆気なく、三度目の精も床にぶちまけてしまった。