「お帰りなさいませ、宝玄仙様」
「お帰りなさいませ」
「お疲れ様でした」
「ご苦労様でした」
「お帰りなさい、宝玄仙様」
宝玄仙が屋敷に戻ると、執事の
いずれも術遣いだということはわかった。おそらく、闘勝仙の飼っている小者だろう。
つまりは、闘勝仙の息のかかった者たちだ。
「闘勝仙の息のかかった者」と宝玄仙が知覚した相手に対しては、宝玄仙は術を発揮することができない。そういう真言の誓約で、宝玄仙は心を縛られている。
だから、彼らよりも遥かに高い道術の力を持つ宝玄仙ではあるが、彼らには通じない。
「紹介します。宝玄仙様、この者たちは、今日から、この屋敷において、宝玄仙様の世話をする者たちです」
わざとらしい慇懃な態度で桃源は言った。
この屋敷で宝玄仙の身の回り一切を取り仕切る老執事だ。
宝玄仙は信頼していたが、実は、教団の新しい帝仙である闘勝仙の手の者と知ったのは数日前のことだ。
その闘勝仙と桃源、そして、鳴智の罠にかかり、宝玄仙は、闘勝仙の「呪い」、屈辱的な「真言の誓約」、さらに身体を苛む「仙薬」という手段により、闘勝仙たちの慰み者という立場にされた。
帝国において強大な権力を誇る天教教団の最高神官である八仙の称号を持つ女奴隷というのが宝玄仙の新しい立場だ。
表では、霊具作りの才女にして、美貌の八仙として人々の崇拝と羨望を受ける女法師。
そして、裏では、この桃源をはじめとして、彼の連れてきた四人の下級僧侶にも逆らえない女奴隷……。
なんということになってしまったのだろう……。
「この者たちの本当の名を宝玄仙様が知る必要はありません。ただ、“目”、“鼻”、“耳”、“舌”とお呼びください。それとも、“一”から“四”までの番号でも。誰をなんと呼ぼうがお好きになさって結構です。“あなた”でも、“お前”でも、“ご主人様”でもなんでも結構です。どうせ、本当のこの者たちの名ではありませんし、この四人を宝玄仙様が区別をなさる必要はないでしょう。この屋敷においては、この者たちの全員が、同じように宝玄仙様のお世話をし、そして、同じように支配します。この者たちには絶対服従するようにと、闘勝仙様から宝玄仙様へのご伝言です」
「わかったよ」
宝玄仙は言った。
闘勝仙と闘勝仙の示す者には、道術も遣えず、絶対服従──。
それが闘勝仙との命令だ。あらゆる道術的な手段で重ね掛けされて、魂に強要されている。
だから、宝玄仙は逆らえない。
「それでは、早速ですが、ここで着ているもののすべてをお脱ぎください」
四人組のひとりが言った。
「ここで?」
宝玄仙は問い返した。
ここは屋敷の玄関だ。最高神官としての勤めが終わって屋敷に戻った直後、桃源と四人組に囲まれたのだ。
「これからの毎日の日常です。お勤めからお戻りになられたら、この場で服を脱いで頂きます。屋敷におけるお召し物は、すべて、私らが示したものに限定させていただきます」
「お前たちが示したもの以外を身に着けるなということかい。それで、どうしたらいいんだい。わたしは素っ裸ですごせばいいということ?」
宝玄仙が吹きあがる憤怒に耐えながら、精一杯の冷静さを保ちながらそう答えた。
「もちろん、毎日、趣向を凝らせていただきます。私どもは、宝玄仙様に手を出すことは許されておりませんので、それくらいしか愉しみがないのです。今日のお召し物は、これです」
そう言って両手で差し出したのは、ただの一本の赤い布だ。
「なんだい、それ?」
宝玄仙は思わず言った。
すると、四人組が、一斉に噴き出した。
宝玄仙は歯噛みしながら、仕方なく屋敷の玄関で巫女服を脱ぎ始めた。
脱いだものが一枚一枚その場で四人組から取りあげられる。
やがて、宝玄仙は、ついにその裸身を露わにして、頭の先から脚の先まで、まさに一糸まとわぬ素裸になった。
宝玄仙の手は、乳房と股間を隠すように置かれている。
「胸はそのままお隠しになって構いませんが、股間の手はどけていただけますか。それと脚を少し開いてください」
恥ずかしがる仕草は、却ってこの連中を悦ばせるだけだとわかっている宝玄仙は、言われた通りに、両手で胸を覆い、脚を開いて股間を曝け出した。
四人組のうちのふたりが、宝玄仙の前後に回った。
そして、赤い布を捩じって紐のようにしたものを前後に渡す。
「それにしても、宝玄仙様、この股間の毛は、伸ばし放題に伸ばしておられるようですが、これからは、きちんとお手入れをなさった方がよろしいかと思われますよ」
「もちろん、私どもがきちんと管理いたしますので、宝玄仙様はなんのご心配することもありませんが」
「のちほど、お股の穴の大きさや距離も正確な記録を取らせていただきます」
「それと締めつけの強さなども」
「そうそう、これも大事なことでした。糞尿については、勝手になさいませんように」
「もっとも、宝玄仙様には開くことのできないように、屋敷内の厠にはすべて鍵を付けさせていただきましたから、勝手にしようと思ってもできないとは思いますが……」
「いやいや、庭でできる。それから、お部屋にある壺も危ない。その中にするかしれん」
「ならば、壺なども隠さねばならんな。なにせ、眼の前でしていただかなければ、我らとしても、宝玄仙様の健康の管理ができないからな」
「だが、闘勝仙様によれば、堪え性のない雌犬だというしな。早めに躾けねば、そこら辺に垂れ流すかもしれない。どうやって調教するか考えねば」
「確かに、確かに」
桃源や四人組たちが、口々にそんなことを言いながら笑う。
宝玄仙は、唇を強く噛みしめて、この仕打ちに耐えた。
「では、いきますよ」
宝玄仙の股間に通されている布は、すでに一本の紐になっている。
その後ろ側の紐が宝玄仙の細い腰にひと巻きした。それが縦になっている紐と宝玄仙の臀部の上側で結ばれる。そして、今度は、腰に横巻きにした紐の下になっている前側の縦紐が、横紐から返り、宝玄仙の股間にぐいと食い込んだ。
股間に食い込んだ布が、宝玄仙の臀部の上の結び目と結ばれた。しかも、いま気がついたが、股間の敏感な部分に当たる場所は大小の結び瘤がわざわざ作られていた。それがぐいぐいと食い込む。
「くっ」
その結び目が股間の敏感な場所に喰い込む刺激に、宝玄仙は思わず甘い声をあげて膝を崩しそうになった。
だが、動くとそれだけで、結び目の瘤が淫らな刺激を与えてきたため、慌てて身体を伸ばす。
宝玄仙のみっともない動きに、桃源をはじめとする五人が一斉に笑い声をあげた。
屈辱にぐっと耐える。
「これが宝玄仙様のお召し物でございます。いかがですか?」
後ろ側の男が、宝玄仙の生尻をぴしゃりと叩いた。
宝玄仙はあまりの恥辱で一瞬眼がくらんだ。
「帝国の東側の島嶼国家に伝わる“
四人組のひとりが言った。
なにが「衣装」だ――、と宝玄仙は思った。
ただ、全裸の股間に紐状の布を締めただけだ。
その布は、宝玄仙の股間に食い込んでいるだけで、羞恥の部分をほとんど隠してはいない。
「それでは、この屋敷の新しい女主人に挨拶に行って頂きます。これも、これからは毎日の日課になりますので、よろしくお願いいたします、宝玄仙様」
じっと四人組の行為と宝玄仙の恥辱を見守っていた桃源が言った。
「女主人? こ、この屋敷の女主人はわたしのはずだよ」
そう言うと、四人組が大笑いした。
宝玄仙は、悔しさに乳房を手で覆ったまま身体を震わせた。
「表向きにはそうですが、実体としてはそうではありません。闘勝仙様が決めたのです。そのような恰好をするのも、それを自覚して頂くためだと思って下さい……。あなたは奴隷なんだです……。いや、家畜かな?」
四人組のひとりが笑いを堪えながら言った。
宝玄仙は黙っていた。
口を開いたら、感情が爆発しそうな気がした。
「それでは、行きましょうか」
宝玄仙の白い首になにかが伸びた。
思わず、宝玄仙は、それを手で払い除けた。
「なにをするんです―――」
宝玄仙の抵抗に、明らかな怒りを顔に示した四人組のひとりがそう言った。
その手には、宝玄仙に嵌めようとようと紐付きの首輪があった。
「ご、ごめんなさい。もう、抵抗しないよ」
抵抗は無意味だ。
道術を使えない以上、宝玄仙は無力な女に過ぎないし、いずれにせよ「命令」という形の言葉にされれば、それで隷属の術が発動するだろう。
「ならば、首輪を嵌めますから、髪をどけてもらえますか」
ひとりが言った。
宝玄仙は胸を隠していた手をどかして、長い髪をたくし上げ、彼らに首を差し出した。
がちゃりと首輪が嵌まる。
宝玄仙はぎりぎりと歯を噛みしめた。
「さあ、歩いてください」
背中をどんと押されて、首輪に繋がった紐を強めに引っ張られる。
「ああっ、ちょ、ちょっと」
宝玄仙はすぐに狂ったように首を振り、その場に身を沈めそうになった。
歩きだした瞬間に、淫らな刺激が股間に沸き起こったのだ。
だが、首輪の縄がそれを阻む。
「おや、どうしたのですか、宝玄仙様。なにか問題でもありましたか?」
わざとらしく左右の男が宝玄仙の顔を覗き込むようにした。
「ふ、ふざけんじゃないよ……。わ、わかっているだろう」
宝玄仙は両手で股間を押さえながら言った。
だが、その手を左右から強く払われる。
「勝手に股間に触るな──。両手は頭の上だ──」
桃源に怒鳴られた。
宝玄仙は恨みのこもる視線を向けながら、言われるままに両手を頭の後ろに置く。
そして、首輪を引っ張られる。
宝玄仙は一歩一歩と床を踏みしめるように歩く。
桃源と男たちは、真っ赤になっていると思う顔を横に伏せるように歩く宝玄仙の周りを囲んで、愉しそうに進んでいく。
やがて、階段だ。
階段を歩くときには、さらに股間に刺激が強く走り、宝玄仙はみっともないへっぴり腰の姿勢でのぼるしかなくなった。
なによりもつらいのは、女陰以上に淫らな疼き沸き起こるお尻だ。
数日前に、幾日も連続で漢離仙を中心として徹底的な尻穴調教を受けた。
それにより、宝玄仙は早くも前側よりも、お尻で感じてしまう浅ましい身体に作り変えられた気がする。
このことが、この連中の罠にかかってしまった自分の立場を思い起こさせて、腹が煮えくり返りそうになる。
やがて、やっとのこと、宝玄仙は這うような思いで、二階の奥の部屋に辿り着いた。
「いい格好じゃない、宝玄仙」
部屋で待っていたのは鳴智だ。
数日前まで宝玄仙のものだった私物の服を身に着けている。
その鳴智が、四人組に首輪を引っぱられながらやってきた宝玄仙を見て大笑いした。
ここは、宝玄仙がこの前まで使っていた部屋だ。
今日からは、ここが鳴智の部屋だということになったのだろう。
「改めて、わたしに服従すると誓ってごらん、宝玄仙」
椅子に座ったままの鳴智が言った。
その鳴智の前に、腰に布を食い込ませただけの姿の宝玄仙は立たされていた。
四人組のひとりが持っていた宝玄仙の首につながれたロープを鳴智が受け取る。
宝玄仙の両手は頭の後ろのままだ。
拘束はされていないが、なんとなく動かしてはいけないような気がした。
「お前に服従するつもりはないよ、鳴智。わたしは誰にも服従しない。闘勝仙にもね……。術師同士の契約で道術をお前には遣えないけど、お前に屈服する誓いをした覚えはないさ」
宝玄仙の精一杯の強がりだ。
実際には、宝玄仙は、闘勝仙の言いなりにならなければならない理由がある。
闘勝仙の「呪い」、真言の誓い、縛心術──。
幾重にも隷属支配が宝玄仙の魂には刻まれている。
その隷属の力により、鳴智や桃源を始め、闘勝仙に仕える小者にも逆らえないように命令を受けている。
だから、宝玄仙は、この三人に服従しなければならない。
そういう幾重の処置により、宝玄仙は、鳴智たちには本当は逆らえない。
「そんな態度でいいのかしら、宝玄仙? 闘勝仙様からこれを預かっているわ。漢離仙様と呂洞仙様はともかく、闘勝仙様がお前に次に会えるのは、半月後だそうよ」
鳴智は、小さな瓶に入った液体を揺すった。
「半月後?」
宝玄仙はびっくりした。
この屋敷に闘勝仙が乗りこんできたとき、宝玄仙は、仙薬作りの天才である呂洞仙のある薬を無理矢理に飲まされたのだ。
定期的に解毒剤を飲まなければ、数日間も続くいき狂いになる仙薬の毒だ。
すなわち、十日に一度、呂洞仙と漢離仙からは精液を──。
闘勝仙からは小便──。
それを定期的に貰って飲まなければ、一日中いき続ける「いき狂い」の発作が発生するというわけだ。
闘勝仙は、数日前にこの屋敷に乗りこんだ後、三日に渡って、漢離仙と呂洞仙と、この鳴智に宝玄仙を徹底的に調教させた。
調教の場所は宝玄仙の肛門だ。
肛門に媚薬入りの浣腸をし、排便させ、媚薬を塗り、霊具や男根を抜き差しして宝玄仙に気をやらせる。
そして、また媚薬入りの浣腸をして放置して、しばらくして、また犯し……。
そういうことを三日間、寝ることも許されずに宝玄仙はやられたのだ。
最後に、三日間の仕上げとして、「発作」を受けさせられた。
三日間の尻穴調教の後、数刻のみ宝玄仙は寝ることを許された。
そして、眼が覚めると、この屋敷の一階の客間の床に宝玄仙は闘勝仙の術により仰向けに貼りつけられていた。
そして、発作が始まった。
次々にせりあがっては頂点に達する快感──。
宝玄仙は、自分を陥れた人間の前で、ひたすら術の力によりいき続けた。
最初は、十数える間に一回だといって、宝玄仙の周りで数をかぞえていた彼らも、やがて飽きて宝玄仙の周りに卓と椅子で囲って、談笑しながら見守るだけになった。
それでも宝玄仙は絶頂し続けた。
絶頂した瞬間に、待っていた次の波が襲ってくる。
呼吸もできないような連続絶頂の地獄に、宝玄仙は吠え続けた。
そして、ついには声も枯れ、嬌声を発することもできなくなった。
淫液はもちろん、汗とともに小便も鼻水も涎も、ありとあらゆる体液を撒き散らした。
糞便も垂れ流した。
胃液さえも吐いた。
絶頂の連続で、酸欠状態の宝玄仙は、意識の混濁した状態ですべてのものを吐き続けた。
体内の内臓そのものを吐き出すような感覚だ。
失神したい。
だが、それは術で封じられているらしく、気を失うこともできない。
狂うこともできなかった。
ひたすらにいき続けた。
いき続ける身体の掃除をされながら、体液を撒き散らせる。
そして、絶頂する──。
地獄だ。
地獄そのものだった。
闘勝仙たちは、床に張りつけられていき続ける宝玄仙を囲んで食事をし、そして、帰った。宝玄仙は、この鳴智や桃源の前でさらにいき続けた。
ついには、その鳴智さえもいなくなり、誰もいなくなった部屋で宝玄仙は快楽の地獄に浸かり続けた。
翌朝、宝玄仙の口の中になにかが入れられて、発作が止まった。
口に中に入れられたのは、あらかじめ準備してあった精液と尿を混ぜたものだったらしい。それを宝玄仙の口に注いだのは鳴智だ。
宝玄仙は、それで、自分が発作を続けていた時間が、まだ半日に過ぎないことを知った。あの地獄はもう味わいたくない。
「発作」の恐怖は宝玄仙の骨の髄まで刻み込まれた。
「ま、待っておくれよ。半月って……」
唖然とした。
半月後では、その間に、「解毒剤」が切れる十日が経ってしまう。
だが、すぐに鳴智が持っているのが、闘勝仙の尿が入った小瓶だとわかった。
つまり、闘勝仙は、十日に一度、闘勝仙の尿を飲まなければならない宝玄仙のために、その尿を鳴智に渡したのだろう。
「闘勝仙様は、もう帝都にはいないわ。急務ができて東部地方に向かったそうよ。さっき、使者がきて、これを置いていったの。でも、宝玄仙が素直にならないなら捨てちゃおうかなあ―――」
鳴智は、小瓶の蓋を開けて、床に中身を捨てる仕草をした。
「ま、待って」
宝玄仙は慌てて叫んだ。
「じゃあ、服従の言葉を言いなさい、宝玄仙」
鳴智は言った。
宝玄仙は歯噛みした。
呂洞仙の毒の発作の恐ろしさは、身を持って味わわされた。
あれは嫌だ。
怖ろしい。
「な、鳴智様の……奴隷になります……」
宝玄仙がそう言うと、背後の四人組が歓声をあげた。
宝玄仙は、懸命に涙を堪えた。
「じゃあ、挨拶代りに、おしっこをしてもらうわ。そして、明日の朝まで、おしっこで汚れた布をしたまま過ごすのよ、宝玄仙」
「な、なんだって?」
宝玄仙は、閉じ合せている内腿をさらに密着させた。
「お前たち、この奴隷の両手をその首輪に結んでしまいなさい」
鳴智は言った。宝玄仙の身体に四人組が群がり、あっという間に宝玄仙は手首に手錠をかけられて、それを首輪の後ろ側の金具に接続された。
宝玄仙は、物理的にも両手を頭の後ろから動かせなくなった。
「足を開きな、宝玄仙。本当に捨てるよ、これ?」
鳴智が小瓶をまた手に取った。
仕方なく、宝玄仙は足を肩幅に開く。
「もっとだよ」
鳴智が声をあげた。
宝玄仙はさらに脚を拡げる。
「もっと」
宝玄仙の脚はこれ以上開かないという限界まで開いた。
「いいよ。じゃあ、そのままやりなさい」
宝玄仙の全快に開いた下肢の真ん中に、鳴智は木桶を置いた。
宝玄仙は、顔をあげて、鳴智を睨みつけた。
「このまま立ったままやれというのかい?」
宝玄仙は鳴智を睨んだ。
「そうだよ、宝玄仙。お前も、わたしに、さんざんにやらせただろう。お前もどんな気分か試しにやってみな。わたしは片脚をあげて犬のように小便をさせられたよ。お前の家人の前でね。忘れたとは言わせないよ──」
鳴智が怒鳴った。
宝玄仙は自分の顔から血の気が失せる気がした。
「わかったよ……。わたしには、厠で排便をする自由もないということだね。さっき、こいつらにも言われたよ」
宝玄仙は、悔しさに耐えきれずに言った。
「そうだね。今日からは、お前は、この屋敷では犬猫同然の存在だ。そうやって扱ってやる。外では貞節な美人八仙。一歩屋敷に戻れば、家人に奴隷として調教され、同じ八仙の精液をすすり、小便を飲み歩く哀れな捕らわれ女……。とにかく、小便しな」
宝玄仙は諦めて目をつぶって、股間の力を抜いた。
「眼を開けるんだ、宝玄仙。わたしから、眼を逸らすな」
鳴智の大きな声──。
宝玄仙は鳴智を睨んだ。
そして、尿をとめていた股の力を完全に緩めた。
布に当たる尿の音は、小さいが確実に宝玄仙の耳にも聞こえてくる。宝玄仙は、その音と股間に感じる尿の気持ち悪さを感じながら、込みあげる悔しさと戦っていた。
「どう、宝玄仙、さっぱりした?」
鳴智は言った。
宝玄仙は黙っていた。
目の眩むような恥辱は、ひとたび口を開けば、もう腰が砕けそうだ。
「さっぱりしたかと訊いているのよ、宝玄仙?」
鳴智が苛々したような口調で言った。
それでも宝玄仙は口をつぐんだままでいた。
「そうかい。口を開かないつもり? いいよ。じゃあ、どれだけ、黙っていられるか頑張ってみな、宝玄仙」
両側に回った四人組たちが、宝玄仙の大きく開いた足の周りの床に白い線を描いた。 宝玄仙は、思わずはっとした。簡単な結界術を込めた霊具だが、これで宝玄仙の脚は大きく開いたまま、それぞれの丸く描いた線から出せなくなった。
本来であれば、四人組程度の下級の術使いの弱い術など宝玄仙には通じない。
しかし、闘勝仙との契約術により宝玄仙は、闘勝仙の魔術に逆らえない。
この四人組が使ったのは、闘勝仙の霊具だ。
だから、宝玄仙は逆らえない。
だが、せめてもの抵抗として、宝玄仙は、大きく足を開いて両手を頭の後ろに回した姿勢で、口をしっかりとつぐんで鳴智を睨み返す。
その鳴智が、四人組に目配せをした。
四人組が、さっと宝玄仙の股間を巻いている布に手を伸ばす。
「あっ――。な、なに、するのさっ」
思わず宝玄仙は声をあげた。
しかし、あっという間に宝玄仙の下半身からは布が外された。
尿で濡れた股間にひんやりとした外気が伝わる。
「心配しなくても、あとで、小便まみれの布は絞め直してやるよ。だけど、まずは調教だ。じっとしてな」
鳴智が宝玄仙の頬を張った。
宝玄仙は抵抗を諦めた。
「しかし、こうやって大股拡げてすべてを曝け出している姿をしていても、さすがは、帝都は無論、地方都市にまで評判の届く宝玄仙様ですな。白い肌、見事に張りのある乳房、柔らかい桃の実のような尻、なんともおいしそうな女です」
「でも味わうのは駄目よ、“口”。わたしたちに許されているのは、この女をこれ以上ないという程に辱めることまでなんだから」
鳴智が言った。
「出しはしませんよ、鳴智殿。しかし、宝玄仙殿のお身体を管理するのは俺たちの役割。女といえば、やはり、ここの出来が大事だから、毎日点検をせねば」
口と呼ばれた男は、大きく左右に広げられ、隠すすべもない宝玄仙の股間にある女の谷に指を伸ばした。
長い時間をかけて丹念に女の道具を隅々まで調べられるのに宝玄仙は耐えていた。
だが、次第に身体が燃えあがらされて、つぐんだ口から少しずつ息が漏れるのを防ぐことができない。
「しかし、宝玄仙殿の弱い場所は、さっきの場所ではなく、もうひとつの穴の方だと伺いましたよ」
別の男が、背後から宝玄仙の双臀に手を伸ばして割れ目を左右に抉じ開けた。
「や、やめて――。そ、そこだけは」
宝玄仙の悲鳴が部屋に響いた。
「見てみろ、みんな。なかなかの尻穴だぞ」
ほかの三人も、宝玄仙の背後にまわりしゃがみこんで覗き込み始めた。
「後ろの穴は、花の風情を伺わせますなあ。おちょぼ口で、恥かしげにぴくぴくと動いておりますよ」
「ひいいっ」
ひとりの指が菊花をくすぐると、宝玄仙は頭をのけぞらせて悲鳴をあげてしまった。
その指がゆっくりと指を深く突き刺さって左右に動き始める。
「ひっ――。ひいいっ」
宝玄仙は大きく声をあげて、尻肉をふるわせた。
「喰い締め方もなかなか――。そんなによがる程、気持ちがいいですか、宝玄仙様?」
「よ、よがってなど、いないよ」
宝玄仙は、快感を振り払おうと、左右に首を振りながら、悔し紛れに言った。
「恥かしがるその風情もなんともいいですな」
四人組がはやし立てた。
やがて、やっと尻穴から指が抜かれると、再び四人が宝玄仙の周りを囲った。
いつの間にか、手に鳥の刷毛を二本ずつ持っている。
「さて、宝玄仙様の検査を始めるぞ。どこが性感帯かを徹底的に調べるのだ。少しでも反応を示した場所があれば、誰でもいいから申し出よ。そこを中心に調べるぞ。今夜は、宝玄仙様の身体の地図を作りあげる」
ひとり二本、合計八本の鳥の羽根が、宝玄仙の両脇や横腹、口腿の内側、そして、膝の後ろに一斉にくすぐりはじめた。
「わあはっははははっ――。や、やめておくれ――。はははっ、わはははははは――」
あまりのくすぐったさに、宝玄仙は狂ったように身体を捩じらせて笑った。
「ほら、宝玄仙、少しは我慢しないかい」
鳴智の馬鹿にしたような声が聞こえた。
その言葉に凍るような恥辱を感じながら、宝玄仙は、這いまわる男たちのくすぐりに耐えられず、いつまでも笑い続けた。
「まったく、うるさいねえ」
しばらくしてから、鳴智が呆れたように言った。そのあいだも男たちの持つ鳥の羽根は宝玄仙の裸体のあちこちをまさぐり続ける。
すると、桃源が床に捨てた布を拾って、尿が染みている布を宝玄仙の口に寄せた。
「この布で猿ぐつわをさせよう、鳴智。少しは静かになる」
「それはいいわ、桃源様」
鳴智が手を叩いて笑った。
「あははは、んくふふふ、あっははは、や、やめないか、あ、いいっ、んぐっ、んぐうううっ」
宝玄仙は抵抗しようとしたが、あっという間に濡れた布を口に押し込まれて頭の後ろでぎゅっと結ばれる。
そして、全身を這う羽根の刺激に狂ったように裸体を悶えさせ続けた。
(第12話『【前日談】女法師への罠』終わり)