「ほう、
金箍はほくそ笑んだ。
闘士として戦うときには、頭の血が沸騰するようにたぎる。
血が昇りすぎて相手が見えなくなるほどにもなるのだ。
だから、それを鎮めるために、金箍は闘いの直前に精を抜くことを習慣としていた。
だが、試合前にゆっくり女を抱くわけにもいかないので、とにかく速く精を出してしまう必要がある。
だから女ならどれでもいいというわけにもいかず、それなりの女を事前に準備して連れてくることが多かった。
しかし、今回の天下一闘技会では、主催している降妖君が金箍のために特別な女を準備するということだった。
それが、この避寒子と避暑子のようだ。
確かに特別な女だ。
これほどの美貌と妖艶さと併せ持つ女は、高級娼婦にもないだろう。
ふたりを部屋まで連れてきた降妖君は、金箍の試合はまだ先だからゆっくりしていいと、意味ありげに言って去っていった。
金箍の控室はほかの者の三倍はある。
寛ぐための椅子があり、卓があり、複数の女を同時に抱くための大き目の寝台もある。
部屋奥には、道術で湧き出している湯舟もあるのだ。
金箍はその広い控室に、ふたりの美女のとの三人だけで残されたということだ。
「よろしくおねがいします、殿下」
ふたりが頭をさげた。
顔が似ている。
「お前たちは姉妹か?」
金箍が訊ねた。
「わたしが姉の避寒子です」
「わたしは妹の避暑子です」
それぞれが言ったが、双子かと思うほどによく似ている。乳首に宝石の装飾具と鈴をつけており、避寒子と名乗った方は赤い宝石で、避暑子は青い宝石だ。
それで見分けるしかなさそうだ。
「下を脱げ。上はそのままでいい」
金箍は言った。
ふたりは下は腿の半分ほどの丈の短い下袍で、上は乳房を剥き出しにした薄物だった。
ふたりが下袍を脱ぎ、横の椅子の背にかけた。
驚いたことに、髪はふたりとも黒のくせに、陰毛はそれぞれ宝石と同じ赤色と青色だった。
「まずは技巧を見せよ。寝台にあがれ」
金箍は柔らかい寛ぎ用の椅子に背もたれたまま言った。
まだ、精を出すのは早い。
午前中の最初の試合も始まっておらず、金箍の試合までは、二刻(約二時間)ほどあるはずだ。
ふたりはすぐに寝台にあがったが、寝台にあがってこようとしない金箍に当惑の表情を見せだした。
「どうした? 早く技巧を見せんか──。これは試験だと思え。夜の愉しみのための女ならいざ知らず、闘士が闘技場で抱く女は、男の精を速く抜く技巧を持っておらねばならんわ。ただ、見た目がいいだけでは務まらんぞ。早く性の技を見せよ」
金箍は座ったまま言った。
「は、はい……」
「で、でも……」
ふたりが顔を見合わせている。
技巧を見せよと言われても、金箍が寝台にあがってこないからだろう。
しかし、すぐに、寝台をおりる素振りを示した。
「勝手におりるな──。性の技を見せよと言っているのだ」
金箍は怒鳴った。
ふたりがびくりと身体を竦ませたが、困惑もしている。
「あ、あのう……。旦那様はこっちにやってきては頂けないのですか?」
避寒子が言った。
「技巧を見せて、俺が合格だと判断しなければ抱かんと申しておるだろうが──。世話のかかる女たちだ。そのままではできんのか? ならば、待て──」
金箍は道術で手元に淫具を取り寄せた。
双頭の張形という淫具だ。張形の両端が男根を模したかたちになっていて、女同士で愉しむための性具だ。
ふたりの女が同時に挿入感を味わえる仕掛けになっている。
金箍はふたりの真ん中にその淫具を放った。
「わ、わたしたちに
避寒子が目を丸くした。
避暑子もびっくりしている。
「姉妹なのがどうした? さっさとやらんと酷い目に遭わせるぞ──」
金箍が大きな声をあげると、ふたりが諦めたように顔を見合わせた。
「股をこっちに向けろ。膝を曲げて股を左右に開くんだ。そして、お互いの股に手を持っていけ。それぞれに相手の股を弄ってやれ」
「ああ、そんな……。姉妹なのに……」
「避寒お姉さん……」
それでもふたりは大きく開いている相手の股に手を伸ばすと指を使い始めた。
「ああ、こんな……」
「変な気持ち……。はああ……」
しかし、すぐに避寒子と避暑子が甘い声をあげ始めた。そして、すぐに陶酔したような官能の表情を見せる。
ふたりが甘い声を出しながら悶えはじめる。
だが、妖艶なふたりの姉妹が抱き合う姿は、金箍もぞっとするほどの美しさだった。
やらせた金箍も、思わず生唾を飲んでしまった。
やがて、避寒子と避暑子は、すっかりと快感に包まれたようになり、ふたりの股の淫液が相手の指にまとわりつき始めた。
「いいだろう……。妹が張形をつけろ。姉の股に挿して犯せ」
金箍は面白い見世物でも眺める気持ちになって言った。
確かに、それは愉快な余興だった。
なにしろ絶世の美女姉妹が、双頭の張形を挟んでお互いに媾合いをするのだ。
もうふたりは逆らう様子は見せなかった。
避暑子はすでに濡れている自分の女陰に張形の半分を挿入すると、姉の避寒子を寝台に横たえて脚を開かせた。
姉妹で媾合いをさせられるのは屈辱であるようなことを仄めかしながらも、一方でちゃんと結合部分が金箍に見えるように計算して身体を置いている。
もしかしたら、さっきの嫌がる素振りそのものが、金箍の嗜虐心を刺激するための演技なのかもしれない。
そうであるとすれば大したものだ。
「お姉さん……」
股に双頭の張形を挿した避暑子が避寒子の身体に覆いかぶさった。
避寒子はかなり大き目に股を開いている。
やはり、金箍に見せつけるためだろう。
「ふううっ、はああ……」
「はああ……」
ふたりが同時に息を吐いた。
避暑子の張形は見事に避寒子の膣を根元まで貫いたのだ。
ふたりの腰が艶めかしく動き出した。どちらが責めているとか、責められているとかいうものはない。
ふたりが上下から上体を反らして相手の膣にできるだけ深く張形を潜り込ませようと抉り動いている。
金箍はその淫靡さと、淫靡の中の美しさに息を飲んだ。
「ああ、いいわ、避暑……はああ……」
「素敵よ、避寒お姉さん……ああ……」
ふたりが淫らな声をあげながらむさぼるように股を擦り合う。
また、ふたりの乳房も接し合って、乳首と乳首を軽く擦るように動かしている。
ふたりの乳首についている小さな鈴がちりんちりんと音を立て、それが腰の揺れと重なり、まるでなにかの音楽のようだ。
金箍はだんだんとふたりに惹き込まれている自分を感じていた。
しばらくすると、ふたりが激しい女の反応を示して、大きな声をあげた。
「ああ、いくうううっ」
「わ、わたしもいくううう──」
そして、互いの裸身を抱き合い、ぶるぶると身体を震わせると見事に同時に昇天した。
ふたりの美人姉妹がもつれ合うあまりもの淫靡な光景に、金箍は最初の予定を忘れた。
気がつくと、興奮で金箍自身も寝台にあがっていた。
「だ、旦那様……嬉しゅうございます。やっぱり、旦那様の精が欲しいです」
「わたしも……」
ふたりがあっという間に相当の張形を外し、金箍の身体を奪い合うように抱きついてきた。
女たちから両側から奪われるように、金箍は服が脱がされた。
全裸になった金箍の一物はすでにそそり勃っていた。
「わたしを先に……」
「いえ、わたくしこそ……」
すっかりと欲情したふたりが両側から金箍に抱きついてきた。
いつの間にか金箍はふたりの美女に押し倒されていた。
先に上に乗ってきたのは姉の避寒子だった。
避寒子が騎乗位の姿勢で金箍の怒張を深々と股で咥えた。
「ううっ」
金箍は呻いた。
膣がまるで生き物のように下から金箍の一物を揉みあげるのだ。すぐに金箍は精を出す寸前に追い込まれた。
「ああ、旦那様……」
一方で妹の避暑子がうっとりとした表情で金箍の胸に舌を這わせ出した。
「ほおおっ」
金箍は精を放っていた。
こんなにもあっさりと精を放ったのは、これが初めてではなかったか。
快感に包まれながら金箍は思った。
「次はわたしにも精をください。お姉さんだけというのは狡いです」
避暑子が拗ねたような口調で言った。
避寒子が金箍の身体からどき、間髪いれずに、避暑子がまだ硬度を保っている金箍の性器を股で咥えてきた。
「こ、これはなんだ──?」
またもや金箍は声をあげた。
避暑子の股の中は、まるでたくさんの触手でも生えているかのようだった。
それらがうねうねと動き、金箍の一物を無数の小さな触手の先端のようなもので揉み始めたのだ。
避暑子の中で逞しさをすぐに取り戻した金箍の一物は、早くも二発目の精の迸りに襲われた。
「ううっ」
そして、金箍は果てた。
快感という生易しいものではなかった。男根が避暑子の股に溶けていくような感覚だ。金箍はすでに夢心地だった。
「さあ、次はわたしでございます。もう一度、わたしに精を……」
すかさず、避暑子が金箍からおりて、避寒子が再び、金箍の性器を咥え直した。
信じられないことだが、金箍の性器はあっという間に元気になり、またもや絶頂の予兆に包まれ始めていた。
「うおおおおお」
あまりの快感に、金箍は吠えるような声をあげた。
(第110話『闘技場の奉仕女』終わり、第111話に続く)
【西遊記:91・92回、避寒・避暑・避塵大王】
玄奘一行は、天竺国の金平府という城郭にやってきます。
そこでは、三日間続く祭りの真っ最中でした。玄奘も祭りの灯火を見物をして愉しみます。
そして、祭りの最後には、仏が降臨して献上をした油を持っていくのだと説明を受けて興味を抱きます。
やがて、祭りも佳境を迎えます。
灯火が消滅して、何者かがやってくる気配が近づきます。
一方で、人々が祭典を訪れる仏だと思い込んでいたのは、実は、
彼らは、仏のふりをして、自分たちが大好きな油を献上させていたのです。
三人は、祭りの見物人の中から玄奘を見つけて、玄奘ひとりを油とともにさらってしまいます。
洞府(隠れ処)に玄奘を連れ帰った三人は、彼を裸にして、何者なのかと訊問をします。
玄奘は震えながら、自分が唐からやってきた高僧であり、孫悟空、猪八戒、沙悟浄という供を連れていることを言います。
三人の大王は、かつて天界にいた頃の孫悟空の暴れぶりを知っていて、その名にびっくりしてしまいます。
そこに玄奘を追いかけてきた孫悟空が単身でやってきます。
三人の大王と孫悟空の対決となりました。
しかし、なかなか決着がつかず、さらに三大王の部下の総掛かりの攻撃を受けて、孫悟空はやむなく、玄奘を残したまま一時退却します。
孫悟空は、今度は、猪八戒と沙悟浄を連れてきますが、そのふたりは大王たちに逆に捕らわれてしまいます。
三大王の意外な強さに驚いた孫悟空は、天界に援軍を仰ぎます。
天界の四将(
三大王は、部下を置いて、西海まで逃亡します。
孫悟空は、さらに追撃をして、西海を守っていた二将軍(
そのとき、避寒大王については、天界の一将に噛み殺されてしまいます。
孫悟空は、捕らえた避暑・避塵大王を連れ帰りますが、そのふたりについても、猪八戒が首を斬ってしまいます。
孫悟空は、府の役人たちに、長年にわたって油を献上していた相手は、妖魔だったことを説明し、今後は油を献上する必要はないことを伝えます。
府の役人とともに、毎年、油を納めていた者たちは大喜びします。
一行は、大勢の分限者のお礼の宴に毎日呼ばれることになりましたが、一箇月がすぎたところで、玄奘がぶち切れて、旅を再開することになります。