「簡単にはいかないねえ。どうしても身体を攻撃しようと思うと、闘気を発散しちゃうんで、それで位置を当てられてしまうようだね。それに比べれば、ただ裸にしようとするだけなら、闘気は出さなくて済むから、位置を探られないで済むね……」
「はあ?」
沙那は左手で剥き出しにされた股間を隠し、右手で軍鶏猫の身体に剣を向けながら声をあげた。
だが、返事の代わりに戻ってきたのは、笛のような鞭が奏でる耳障りな音だ。
なぜか、耳に入るはずの観客たちのからかいと野次の叫びがだんだんと小さくなり、ほとんど聞こえなくなっていく。
逆に軍鶏猫の鞭笛の音がどんどん大きく感じる。
沙那は、やっとからくりがわかってきた。
やはり、これは幻術だろう。
だが、道術を遣っているのではなく、耳障りな鞭笛と軍鶏猫の服の渦巻き模様を活用したなんらかの手段により、沙那が幻覚されているのではないか……?
つまりは、朱姫の遣う『縛心術』のようなものだ。
朱姫は、霊気を遣わずに、『縛心術』をかけることもできる。
この軍鶏猫は、その朱姫と同じ技を使っているに違いない。
渦巻き模様の服を着て舞いのような動きをしたり、鞭笛を鳴らすことにより、沙那の五感が狂わされ、それで、いつのまにか『縛心術』にかけられたのだと思う。
軍鶏猫の技の正体はわかったが、問題はどうやってそれを解くかだ……。
さっきから、沙那の攻撃は空を切り続けている。
つまりは、沙那はすでに軍鶏猫の『縛心術』にかかっている状態に違いない。
「へえ、なにかわかったみたいだね。でも、もう、遅いよ。君は俺の技にすっかりとかかっているからね」
軍鶏猫が笑った。
「ほざきなさい……」
沙那は軍鶏猫に飛び込んだ。
だが、その軍鶏猫の身体が揺れるようになって消えた。
目の前は幻影……。
だったら、正体は……?
沙那は心を研ぎ澄ませた。
気を読むのだ……。
「わっ」
だが、次の瞬間、沙那の身体が沈んだ。
脚を開いた状態で、沙那の膝から下が地面に飲み込まれて動けなくなったのだ。
「な、なによ──?」
これも幻覚に決まっている──。
沙那は脚を必死で振りほどこうとした。
そのとき、両脇に軍鶏猫が出現した。
そして、沙那の両腕をしっかりと抱えた。
沙那は身動きできなくなった。
沙那は愕然とした。
「じゃあ、始めようか……。君は闘気を発散すると、その気配を探れるという技があるみたいだね。だから、しばらくは遊んであげるよ。まずは、闘気なんか読めないくらいに弱らせてから、それから攻撃してあげるね」
軍鶏猫の声がした。
だが、どこから語りかけられているかわからない。
少なくとも両端で沙那の腕を抱えている軍鶏猫の幻影からではないし、かといって、前から話しかけられているのかも、後ろから話しかけられているかもわからない。
とにかく、鞭笛が頭の中でも鳴り響いている。それが沙那の感覚を破壊している気がする。
すると、不意に胸に衝撃が走った。
「あはっ、あっ、はっ──な、なにすんのよ──」
乳首が舌で舐められるような感覚が襲いかかってきたのだ。
しかし、目の前に誰かいるという感覚はない。
それなのに巧みに舌で沙那の乳首を転がしたり、吸いあげたりと、思うさまに責めてくる感覚だけが襲いかかった。
「くううっ、はああ……」
とにかく姿が見えなくても舐められる感覚があるということは本体が身体の正面にいるに違いない。
沙那は必死で身体をくねらせて、掴まれている両腕を振りほどこうとするが、すごい力で押さえられて腕が抜けない。
もっとも、これも『縛心術』による幻術なのだろうから、それをなんとかしないと沙那の身体は動かないという気はする。
「あっ、いやあ……ああ……」
そのあいだにも、ちゅぱちゅぱと音を立てて乳頭を吸いあげられ、舌で弾かれるようにされる。身体の力がどんどんと抜けていくのを沙那は知覚した。
身体があっという間に熱くなり、沙那の息が荒くなってしまう。
「へえ、自分と感じやすいんだね……。だっから、二、三回いっとく? そうすると、女の身体って、すっかりと脱力してしまって動けなくなるんだよね? それから攻撃すれば、もう抵抗できないよね」
軍鶏猫の笑う声がしたと思った。
「ふああっ」
すると、股間の後ろから手が伸びる感覚がした。
その指がすっと肉芽に伸びて、尻側から股間を弄び始めた。
「ひ、卑怯よ……ああっ、はあっ、はっ、はあっ──」
一方で、沙那の乳首には相変わらず前側から舌で舐められる感覚が継続している。
前後から身体を責められている感覚があるということは、つまりはどちらかは幻覚なのだろう。
あるいは、両方とも幻覚であり、本体は離れて見ているのか……。
しかし、沙那はそれ以上は考えられなくなった。
いよいよ正体不明の手段による乳首や股間への責めが激しくなってきたのだ。
肉芽が摘まむように擦りあげられ、一気に快感が脳天に達する。
「あはあ、はあ、はあ、あああんっ」
沙那の身体はがくがくと震えた。
そして、さらに刺激が追加された。
今度はさらに股間を前からだ──。
怒張を感じさせるものが女陰に挿し入れられてきた。
それが少しだけ挿さり、沙那の膣の入り口の上部分を強く擦り始める。
「そ、それはだめええ──うふうううう──」
沙那はあっさりと達してしまった。
「これは、本当に感じやすい身体なんだね……。本当に愉しくなってきたよ……。もう少し達しておく?」
鞭笛に混じって軍鶏猫のくすくす笑いが沙那の耳に聞こえてくる。
やはり、声の方向は不明だ。むしろ、頭の中から響いている気さえする。
「ひゃああ──」
沙那は悲鳴をあげた。
片方だけだった乳首への舌責めに、さらにもうひとつ舌が追加されて、両方の乳首から舐められる感覚が襲ったのだ。
しかも、肉芽を責める指と膣の入り口を抉る男根の幻に加えて、肛門にも指のようなものが挿し入れられた。
沙那は半狂乱になった。
「だめ、だめ、だめ、いく、いく、いくっ──はぐうう──」
沙那は泣き声をあげた。
そして、また達してしまった。
すると、さらに脚が地面の中にめり込んだ。
沙那の身体はぐいと地面に潜り込み、腿の半分から下が完全に地面に埋まった。
「ははは、本当に敏感だね……。あまりにも呆気なくて、こっちまでびっくりしてしまうほどだよ」
軍鶏猫の声──。
全身の性感帯が同時に刺激され続ける。
沙那はもうわけがわからなかった。
どうしようもない痺れと疼きが全身を駆けまわる。
快感に身体が包まれる。
上下左右前後のすべてに軍鶏猫の気配を感じ、その軍鶏猫が沙那を激しく責めたてる。
もう、一切の景色は消えている。
ここが闘技場であることはほとんど認識できないし、観客たちの声のすべてが遮断されている。
聞こえるのは軍鶏猫の声とあの鞭笛だけだ。
「だ、だめえええ──」
沙那は絶叫した。
一番深い絶頂だ──。
沙那は断末魔のような声をあげて、全身を弓なりにした。
身体が揺れる──。
意識が白い光に包まれる。
頭の中でなにかが弾ける──。
股間から潮のようなものが吹き出したのがわかった。
そのとき、入口をまさぐっていただけの怒張の幻が一度なくなり、今度はぐいと深い部分まで挿し込まれた。
絶頂の余韻に浸る間も与えられずに、今度は子宮をぐんと突きあげられた。
沙那は一気に失神寸前の大きな快感まで再び押しあげられた。
「いぐううう──」
沙那は絶叫した。
だが、快感は終わらない。
子宮まで達した怒張が激しく律動を開始し、沙那はさらに快感を飛翔させた。
*
「あぐうう──」
孫空女は吹き飛んだ。
下腹部に凄まじい蹴りを入れられた。
二回三回と後ろに転がり、蹴られた股間を両手で押さえて孫空女はうずくまってしまった。
「どうした? 元気がなくなったか?」
肉饅頭のような巨漢の
もう、そばにいる──?
はっとしたときには、孫空女は下から腹を蹴りあげられて、身体が宙に浮いていた。
「ふぐうう──」
地面に背中を打ち付けた。
しばらく動けなかったが、地面にみっともなく脚を拡げたままであることに気がつき、孫空女は慌てて両脚を閉じた。
「ほう、一応の慎みはあるのか? ははは──」
だが、片方の膝に力獅子の足が乗った。そのまま膝を地面に押しつけられて、孫空女の脚は無理矢理に大きく開脚させられた。
その股間に力獅子のもう一方の足が蹴りを加えようとしたのが見えた──。
「ひいいっ」
孫空女は目をつぶって歯を食いしばった。
全身が痺れていて、すぐに動くことができなかったのだ。
孫空女はただ覚悟しただけだ。
だが、蹴りが来ない──。
目を開けると、力獅子の足は孫空女の股間の寸前で停止していた。
「ここを壊すと、犯すことができなくなるからな」
力獅子が笑いながら言った。
そして、膝に乗っていた足がどけられて、孫空女の髪がむんずと掴まれた。
そのまま、髪の毛をもって宙にあげられる。
「痛いいい──、は、離せよおお──」
頭の皮を剥がされるのかと思うような激痛が走る。
孫空女は宙に吊りあげられたまま、自由になる手足で夢中になって目の前の力獅子を殴り蹴った。
「ははは、さすがにこの状態じゃあ、痒みすらも感じんぞ──。なら、おろしてやろう──。いくらでも打て──。すっかりと諦めがつくまでな」
力獅子が孫空女を放り捨てた。
また、地面に叩きつけられる。
「く、くそおお……」
孫空女は全身の痛みに耐えて、なんとか裸身を起きあがらせた。
力獅子はこれ見よがしに、再び仁王立ちになって孫空女に挑戦的な視線を向けた。
しかし、もう、孫空女には、こちらから責めるとしても、どこをどう攻撃していいかわからない。
どんなに打擲しても、あの身体には孫空女の攻撃は効かないことは明らかだ。
孫空女は両手で乳房と股間を隠したまま、ただ立ったままでいた。
「来ないのか? じゃあ、寝技でもやって遊ぶか?」
力獅子が突進してきた。
孫空女はその機会を逃さなかった。
力獅子に掴まえられる瞬間に身体を沈めて、股間と首を掴むと力獅子の身体を両手で高々と持ちあげた。
「おおおおお──」
どよめきのような声が観客席から起きた。
細い女の身体の孫空女が巨大な力獅子を持ちあげたことに対して、闘技場の観客が興奮したように一斉に声をあげた。
「うわああっ──」
力獅子も予想外だったのか、孫空女の両手で宙にあげられて、手足をばたつかせている。
「くらえ──」
孫空女は力獅子の脳天を下にして、反動をつけて力獅子の頭を地面に叩きつけた。
力獅子自身の体重も重なり、地響きが起きるような衝撃とともに、力獅子の頭が地面に激突した。
「思い知ったか、くそったれええ──」
孫空女は声をあげた。
だが、地面に倒れた力獅子はなにごともなかったかのように、のそりと起きあがった。
「お前、すごいのう──。この俺を持ちあげるのか? なんという怪力だ──」
立ちあがった力獅子はにこにこしている。
孫空女は呆然とした。
その孫空女に力獅子が飛びかかった。
「しまった──」
叫んだときには、孫空女の裸体は力獅子にねじ伏せられていた。
力獅子の巨漢がまともに孫空女の上になった。
身体が押しつぶされるような苦痛が走る。
「んぐう……がっ……くう……」
孫空女はもがいた。
だが、完全に孫空女の身体は力獅子の下敷きだ。もうどうしようもない。
「さあ、そろそろ、引導を渡してやるか……」
力獅子が腰をもじもじとさせだした。
孫空女はぎょっとした。
力獅子は唯一身に着けている腰布を外そうとしているのだ。
孫空女は恐怖に包まれた。
力獅子の腰布は長い布を腰に巻きつけていただけのようだ。
孫空女を押しつぶしたまま、力獅子は器用に布を外してしまった。
押し潰されている腰の部分に布から出た力獅子の勃起した性器の感触が襲った。
「い、いやだ──。や、やめろ──」
孫空女は暴れてなんとか両手の自由を得た。
まだ、攻撃していない場所……。
嫌だったが、孫空女は力獅子の眼を指で思い切り突き刺した。
「ぐっ──」
しかし、まともに当たったはずの力獅子の眼球はまるで鉄の板のようだった。
逆に孫空女の指に痛みが返ってくる。
「俺の眼は特異体質でな──。身体の中で一番硬いのが眼球だ──。悪く思うな──」
力獅子がもそもそと動き出した。
そのまま怒張を孫空女の股間にすり寄せるようにしてくる。
このまま、犯す気だ──。
孫空女は確信した。
もう手段を選んでいる場合じゃない……。
孫空女は、右手をなんとか上に乗っている力獅子の腰の後ろに持ってきた。
「ほ、本当に、この手は使いたくなかったんだけど……」
孫空女は二本指を力獅子の肛門めがけて突き刺した。
「はぐううう──」
力獅子が絶叫して飛びあがって、孫空女の身体の上から横に転がった。
孫空女の手は、一気に手首まで力獅子の肛門を貫いていたのだ。
力獅子が暴れて手が抜けたが、力獅子は腰を浮きあがらせるような体勢でうつ伏せになり、半ば気絶状態だ。
いくらなんでも、この力獅子だって肛門だけは鍛えようもなかったようだ。
孫空女は力獅子の身体に飛びかかり、肛門の中にまた拳を突っ込んだ。
「うがあああ──」
力獅子が吠えた。
そして、激痛に悲鳴をあげながら大きな身体をがくがくと痙攣させた。
孫空女は力獅子の尻の中を深く抉っている拳を滅茶苦茶に動かした。
力獅子の身体から力が抜けて横倒しになった。
力獅子が完全に気を失ったのは明らかだ。
孫空女は拳を抜いて、その場に立ちあがった。
ふと見ると、まだ勃起している力獅子の肉棒の先端から大量の精液が飛び出している。
場内がわっと盛りあがった。
だが、情けない勝利に孫空女は泣きそうになった。
審判の旗があがった。
孫空女の勝利だ。
地下の控室に転送される前に、脱がされた服を回収しようと、孫空女は急いで服と『如意棒』を拾い集めた。
そのとき、隣の会場で試合をしている沙那の姿が目に入った。
どういう状況なのかわからないが、沙那は地面に膝をつき両腕を垂らしたままでいるだけで、なぜかほとんど動かない。
その沙那から少し離れた位置で腕組みをしている対戦相手がただ鞭をくるくると回している。
だが、それによって、沙那は激しい喘ぎ声のようなものをあげて悶えているように思える。
また、膝を開いている沙那の股間の下には、沙那の出した潮の痕のようなものまである。
その沙那に対戦相手が突然に襲いかかり、股間を出して勃起した性器を沙那の股に突きあげた。
孫空女は驚いた。
沙那は完全に犯され、しかも、律動を開始した対戦相手の性の責めに、気持ちよさそうな反応を示しだしたのだ。
場内の一角で始まった公開凌辱に、そっちを見ている観客たちは大喜びだ。
また、奇妙なことに、沙那を闘技の最中に犯した相手は、沙那の股間に怒張を沈めながらも、片手だけは鞭を回転させている。
かすかではあるが、ここまで笛のような音も聞こえる。
「沙那──」
いずれにしても、明らかに沙那の様子はおかしい。孫空女は沙那の名を叫んだ。
だが、孫空女の身体に『移動術』の感覚が襲いかかり、そして、闘技場の景色と歓声のすべてが消失した。
*
「あはああっ──」
沙那は激しく悶えながらも、股間を突きあげる怒張を力の限り膣で締めあげた。
「わっ、わっ、わっ……」
目の前から軍鶏猫の当惑した声が聞こえてきた。
だが、相変わらず沙那には、軍鶏猫の姿を認識することができないでいた。
しかし、いま軍鶏猫は沙那を犯していることだけは確かな気がする。
さっきまで沙那の膣の入口部分を抉っていた男根の感覚と、いま沙那の子宮を突いている感覚は違う。
とにかく、沙那は逃がさないようにとだけ思って、股間で軍鶏猫の男根の根元を締めけ続けた。
「い、痛い、痛い──。ぬ、抜けない──。なんで──?」
軍鶏猫の狼狽えた声が前からした。
「この手だけは使いたくなかったんだけど……」
沙那はとにかく膣を締めあげた。
すると、軍鶏猫の悲鳴が大きくなる。
それをめがけて、沙那は思い切り頭突きを食らわせた。
「ひぎいっ」
鼻が潰れる感触と血の匂いがした──。
突然に腕を掴んでいた軍鶏猫の感覚が消滅して両手が自由になった。
また、闘技場の景色と歓声も戻ってきた。
目の前に鼻から血を流して苦痛に顔を歪めた軍鶏猫がいる。
地面に跪いて脚を開いている沙那の正面で、やはり同じように跪いて沙那の股間を犯している。
沙那は、目の前の軍鶏猫と膝立ちで抱き合うようにして犯されている最中だったのだ。
「そ、その鞭が幻覚の手段ひとつね……」
沙那は軍鶏猫が地面に落とした鞭を手で払って遠くにやった。
「そ、そして、これもでしょう──」
沙那は両手で軍鶏猫の渦巻き模様の服を掴んで両手で引き破った。
軍鶏猫の白い肌が露わになる。
観客席から大歓声があがった。
「死ねええ──」
沙那は両手で軍鶏猫の首を掴んだ。
まだ、沙那は股間で怒張を締めつけたままでいる。
一度離すと、この男はどんな幻覚術をまた遣うかわからない。
それに朱姫の術のことから類推すると、一度『縛心術』にかけられると、今度は些細なきっかけで『縛心術』にかかりやすくなるのだ。
次におかしな技にかけられたら、もう逃げられない。
このまま決着をつけるつもりだ。
「あ、ああ……あっ、く、苦しい……で、でも、気持ちいいかも……」
すると、軍鶏猫の美形の顔が歪んだ。
そして、沙那の中に入ったままの男根の太さが増した気がした。
「えっ、えっ、ええっ──?」
沙那は軍鶏猫の首を絞めたまま、悲鳴をあげてしまった。
股間で締めたままでいる軍鶏猫の怒張がぶるぶると震えて射精をしたのだ。
沙那は飛びのいてしまった。
「こ、降参……。も、もう、降参……。で、でも、素敵だったよ……」
軍鶏猫が気味の悪い薄ら笑いを浮かべて言った。
沙那は気持ち悪くなった。
軍鶏猫の股間からは精を放ったばかりの勃起した性器が隆々と天を向いていた。
*
「はあ、はあ、はあ……」
もう、なにも考えられない。
気持ちいい……。
だが、苦しい……。
全身が綿のようになって力が入らない。
考えることができるのは、股間を擦ることによって得られるはずの快楽のことだけだ。
しかし、それは手に入らない地獄の快楽だ。
奴隷の刻印の影響により、陳嬌はどんなに自慰をしても、絶頂の直前にそれをとめてしまうように命令を与えられている。
陳嬌は狂ったように媚薬を塗られた股間を擦って自慰をし、達しそうになっては絶頂の寸前でやめるということをひたすら繰り返していた。
いま、陳嬌にあるのは、達することのできなかった激しいもどかしさだ。
それが、全身を引き千切れるくらいに陳嬌を苦しめている。
陳嬌はいつの間にか泣いている自分に気がついていた。
悲しくて泣くというよりは、もう自分で自分の感情が制御できなくなっているのだ。
「……こらっ、聞こえないのかい、陳嬌──。いつまでやってんだい──。戻る支度をしないかい──」
下袍の下で股間を弄っていた手が、突然に誰かの手により強引に引き抜かれた。
陳嬌はぼんやりと顔をあげた。
黒髪の美女が苦笑して、陳嬌を見おろしている。
「ほ、宝玄仙殿……?」
陳嬌は、やっといまがどういう状況か、ぼんやりと知覚することができた。
ここは天下一闘技会で行われいている闘技場の観客席であり、陳嬌は貴賓席で、この宝玄仙と一緒に第一日目の試合を見ているところだったのだ。
陳嬌はそこで宝玄仙の意地の悪い仕打ちを受け、媚薬漬けにされておかしくされたうえに、快感を発散できない寸止め自慰を延々とやらされていたのだ。
激しい羞恥が陳嬌に襲いかかった。
「ほら、行くよ──。沙那と孫空女と素蛾を地下の控室に迎えに行くんだ。しゃきっとしないかい──」
宝玄仙が笑った。
陳嬌は我に返った。
「は、はい、お待ちください──」
陳嬌は立とうとした。
だが、腰が抜けてまったく立てない。
陳嬌は愕然とした。
「仕方がないねえ……」
宝玄仙が笑いながら、なにかの道術を陳嬌にかけたのがわかった。すると、陳嬌の身体が少し回復して、なんとか立ちあがることができた。
ふと見ると、陳嬌が座っていた場所が、まるで尿を漏らしたような水溜りができている。
だが、これは汗でも尿でもない。
すべてが陳嬌の愛液だ。
その量には陳嬌自身も唖然とするほどだ。
「あ、あのう……。試合はどうなったんでしょうか……?」
陳嬌は言った。
釘鈀の闘奴隷ということになっている孫空女と沙那は、明日の決勝に残ったのだろうか──?
決勝に残りさえすれば、なんとか釘鈀の面目も立つはずなのだ。
「ふたりとも残りましたよ、陳嬌さん」
そのとき、不意に朱姫が陳嬌の下袍の下に後ろから手を入れて、陳嬌の肛門を悪戯してきた。
「あ、ああっ、お、おやめ……おやめください……」
陳嬌は身をよじった。
「ふふふ……一日ですっかりと従順になりましたね。じゃあ、早く帰って、沙那姉さんたちに遊んでもらいましょうね。やっといけるんですよ。よかったですね」
朱姫がしばらく尻の穴に指を入れたままなぶってから、さっと指を抜いた。
またもや、陳嬌の身体にはもどかしさの疼きだけが残った。
陳嬌は恨めしくなった。
「いやらしい雌犬の顔をしてますよ、陳嬌さん……。ねえ、ご主人様、これなら、今夜は愉しめそうですよ」
朱姫がそう言うと、宝玄仙が大きな声で笑った。
しかし、陳嬌はそれを呆然と聞くだけだ。
もう、身体と心の疲労でまともに思考することもできなくなっていた。
陳嬌はそのとき初めて、闘士のいなくなった闘技場の上空に道術で浮かべられた掲示板があることに気がついた、
そこには、二日目の決勝に残る十六名の名があった。
沙那 (
孫空女 (釘鈀皇子招待選手)
とにかく、闘技会の第一日目が終わったのだ。
陳嬌は重い身体を引き摺るようにして、貴賓席側の出口に向かって足を進めた。
(第111話『天下一武闘会の姦計』終わり、第112話に続く)