※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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740 第三皇子の陰謀

「明日の決勝の直前、皇帝がお前たちの前に声をかけに来る。そういう手筈になっているのだ。闘技場におりてきて、お前たちの目の前までやってきて、ひとりずつ声をかけるのだ。そのときだけは、警護兵も最小限となり、まったく無防備になる……。その機会を逃さず、お前たち十四名は一斉に皇帝に襲いかかって人質にしろ──」

 

「人質?」

 

 黄獅姫は呆気にとられた。

 

「闘技場には皇帝を守る部分結界も張ってあるが、これは俺の力で直前に消滅させる──。溥儀雷(ふぎらい)帝もまた武芸の達人だが、俺を含めて十三名もいるのだ。人質にすることなど容易だろう……。絶対に失敗するな。お前以外の闘士たちには、お前の命令に従うように、すでに命令を刻んだ──。明日の朝、お前が細部の手筈を整えて、連中に命令を与えるのだ。わかったな、黄獅姫」

 

 皇帝を人質にするのが今回の目的──?

 黄獅姫は口で降妖君の舌を舐めながら顔をあげた。

 降妖君がにやりと笑った。

 その降妖君が黄獅姫の口から性器を抜いた。

 自分で服装を整えだす。

 

「……金箍(きんか)をどうするかは明日の朝に改めて指示を与える。いま、金箍皇子を避寒子と避暑子が性の技でたぶらかしを企てている……。性狂いの術にかけていき狂いの状態にして、正常な判断力を失わせて、俺を主人とする『奴隷の刻印』を金箍に刻もうとしているのだ……。それが成功すれば、金箍はそのまま生かしておく──。それができなければ、皇帝を人質にする場で殺す……。両方に対応できる策を考えておけ」

 

 降妖君が言った。

 黄獅姫は、やっと今回の降妖君の考えていることが見えてきた。

 つまりは、これは皇位乗っ取りの叛乱なのだ。

 

 降妖君は第三皇子ではあるが、この人間族の帝国では皇位継承権は、第一皇子の金箍と第二皇子の釘鈀(ていは)にしかなく、第三皇子の降妖君に皇位が移ることはない──。

 

 だから、降妖君は、皇帝と人質にとって、溥儀雷帝から強引な退位と降妖君への譲位を迫るつもりだろう。

 そのための天下一闘技会だったのだ。

 皇帝を人質にとるといっても、それは普段ではとてもじゃないが不可能だ。

 皇帝はしっかりと防護された宮廷に存在し、屈強な近衛団に守られている。

 その皇帝を人質に奪う隙などない。

 

 だが、武術好きの溥儀雷帝であれば、帝国で一番の闘士を選ぶ天下一闘技会を必ず天覧をしようとする。

 それを利用して、降妖君は、皇帝が闘士の目の前に近寄ってくるという状況を作為したのだ。

 もちろん、闘技場の中でも、皇帝を守る道術の防護は整っているが、闘技会を主催している降妖君であれば、それを無効にすることなど容易いことだ。

 

 だが、そのためには第一日目に勝利して決勝に残る闘士を降妖君の手の者で固めねばならない。

 その目的のために、九霊聖女から黄獅姫たちが貸し出されたのだ。

 やっと黄獅姫は、今回の降妖君の陰謀の全容が理解できた。

 しかし、この計画にはまだ粗がある。黄獅姫はそれを質問した。

 

「釘鈀皇子はどうするのです?」

 

 皇帝を人質して、金箍を奴隷の刻印を刻むか、殺すかする──。

 しかし、それだけでは、まだ、皇位継承権のある第二皇子の釘鈀が残る。

 場合によっては、その釘鈀が、謀反人の降妖君を捕えようと、降妖君に刃向う勢力を糾合するかもしれない。

 

「あの腑抜けになにができる──。自分では戦闘もできない軟弱者だぞ──。あれについていく者などない──。俺が皇位を奪えば、釘鈀もそれに従うだけだろう。あんなのは問題にせずともよい──」

 

 降妖君は満足そうな表情で部屋を出て行った。

 部屋には黄獅姫と軍鶏猫と力獅子……。

 そして、股間から血を流して横になっている天嬌の四人だけが残った。

 

「ふう……。やっと行ったね……。おめでたい男だねえ……。よくも、あんた詰めの甘い策で皇帝になろうとするものだよ──。まあ、なんだかんだと言っても、宮廷育ちの苦労知らずのお坊ちゃんだしね──。なんでも自分の都合のいいように、物事が運ぶと信じ切っているんだろうねえ」

 

 天嬌が起きあがりながら言った。

 ぎょっとした。

 この半月のあいだの天嬌の喋り方とはまったく違っている。

 外見と声は確かに十歳の童女の天嬌だが、まるで年齢を重ねた熟年の女性が乗り移ったかのようだった。

 黄獅姫は目を丸くしてしまった。

 

「て、天嬌……じゃないのね……。誰、あんた──?」

 

 黄獅姫は声をあげた。

 そこにいるのは、間違いなく十歳の人間族の童女などではない。

 それ以外の誰かだ──。

 

 その誰かが、人間族の童女の姿を借りているだけだ──。

 黄獅姫は確信した。

 

「おやおや、このわたしがわからないのかい、黄獅? まあ、いずれにしても、苦労をかけたねえ……。許しておくれ──。あの降妖君を調子に乗らせて、最後まで走らせる必要があったものだからね。なにしろ、人間族の皇帝を闘技場で闘士の前まで来させることや、皇帝が闘士の前にやってくる機会に合わせて、皇帝を守る道術の防壁を消滅させることは、降妖君にしかできなからね……」

 

 天嬌が大人びた笑みを顔に浮かべながら身体を起こした。その天嬌が手を股間にかざす。

 流れ続けていた血が止まった。

 それだけじゃなくて、床や天嬌の身体を汚していた血の塊りそのものが消滅した。

 

 『治療術』の道術だ──。

 

 しかも、黄獅姫のことを“黄獅”と呼んだ──。

 

 黄獅姫を“黄獅”と呼ぶのは、黄獅の知る限りこの世では一人しかいない……。

 

「く、九霊(きゅうれい)様? 九霊聖女様なのですか──?」

 

 黄獅姫は大声で叫びそうになり、慌てて声を低くした。

 

「えっ、九霊聖女様?」

 

「九霊様?」

 

 軍鶏猫と力獅子も驚いて声をあげた。

 

「ああ、そうだよ……。わたしだよ──。人間族の帝国を乗っ取るためとはいえ、あんな下衆男にかわいい子飼いの部下たちを託すわけにはいかないからね。天嬌という童女の姿で降妖君の屋敷に忍び込んでいたのさ……。少し操り術を遣ってね……。あいつは天嬌を以前から使用している従女だと思い込んでいるけど、実際にはこの屋敷にやってきたのは、お前たちと一緒さ」

 

「ええっ、えええ?」

 

 黄獅姫葉思わず声をあげた。

 

「それにしても、本当にやりたい放題で虫唾が走っただろう? 操りでなんとかしてやりたかったけど、あいつの欲望を無理に押さえ込むような操りだと、強い道術をかけてしまうことになり、天嬌が人間でないことに気がつかれるんでできなかったのさ。そのために、お前たち……、特に、黄獅姫には苦労をさせたね。本当に許しておくれ──」

 

 天嬌が言った。

 次の瞬間、天嬌の姿が九霊聖女という美貌の女王の姿になった。

 黄獅姫は呆然とした。

 

「て、天嬌は、九霊様……?」

 

 黄獅姫は、まだ混乱している。

 とにかく、目の前に九霊聖女がいる。

 そのことだけで、ほっとして涙が出てきた。

 

「ずっと、そばにいてくださったんですね……。ありがとうございます……」

 

 黄獅姫は九霊聖女の前に跪いた。

 その頭を九霊聖女がそっと抱いた。

 

「わたしが、そばにいることをどうしても教えるわけにはいかなかったのさ……。なにしろ、お前たちの身体には降妖君の刻印があるからね……。もしも、あいつがなにかを感づいて、正直なことを告げるようにと、お前たちに命じれば、お前たちはわたしのことを話すしかないからね──。だから、仕方なく、天嬌のふりをしていたのさ。まあ、正直、天嬌の姿で黄獅を調教したのは、新鮮な愉しさだったよ」

 

 九霊聖女が笑った。

 

「九霊様……」

 

 黄獅姫は自分の顔が赤らむのを感じた。

 

「……だけど、これ以上耐えられなくてね。もう、決行の日は明日なんだ……。もうばれる気遣いは不要だろう。あんなお坊ちゃん、どうせ、なにひとつ気がつかないさ。なにもかも自分の思うとおりに事が運ぶと信じ切っている間抜けだからね」

 

 九霊聖女がにやりと笑った。

 だが、だんだんと頭が回りだしてきたら、急にひとつの疑問が湧いた。

 九霊聖女は降妖君の黄獅姫に対する欲望を抑えるまでの操りをすることは、あえてしなかったようだが、それでも少しは操ってはいたようだ。

 だったら、さっきの天嬌の姿の九霊聖女に対する酷い破瓜はなんだったのだろう。

 あれは、黄獅姫を犯していた降妖君が、まるで操られていたように、急に強姦の対象を黄獅姫から天嬌に変更した。

 

「もしかしたら、さっき、降妖君が天嬌の姿の九霊聖女様を犯したのは、九霊聖女様がそうさせたのですか?」

 

 黄獅姫は言った。

 そうとしか思えなかったからだ。

 

「さっきわざと犯されたのは、わたしのせめてもの罪滅ぼしだよ。それで勘弁しておくれ、黄獅──。それにしても、中身はわたしでも、身体は人間族の童女だからね。さすがにあの未成熟の膣を突き破られたのは痛かったよ」

 

 九霊聖女が苦笑した。

 

「そ、そんな──もったいないことを──」

 

 九霊聖女が黄獅姫の苦しみを分かち合うために、あえて降妖君を操って天嬌に変身している九霊聖女を襲わせた……。

 そんなことをしてくれたのだと思っただけで、黄獅姫はこの半月の惨めな仕打ちに耐えたことが報われた気がした。

 九霊聖女はむせび泣く黄獅姫をしばらく抱きしめてくれた。

 だが、しばらくしてから、九霊聖女は黄獅姫の身体をそっと離した。

 

「……お前たち、これから言うことをよく聞くんだ」

 

 九霊聖女が真剣な口調で言った。

 黄獅姫は涙を吹いて、顔を九霊聖女に向けた。

 もう九霊聖女は顔に微笑みを浮かべてはいなかった。

 

「……とにかく、わたしの目的は、あの世間知らずの降妖君というお坊ちゃんを利用して、この人間族の帝国を乗っ取ることだ。そのために、もう少し辛抱しておくれ。そのために、明日の決勝の日まで、お前たちの奴隷の刻印はそのままにしておくしかない。それまで耐えるんだ。いいね──」

 

 九霊聖女が真顔で言った。

 黄獅姫はただうなずいた。

 

「……とにかく、これからわたしが言うことを聞くんだ、黄獅。それが本当の策だ。いまは、降妖君の刻印が効果を及ぼしているから、命令に応じることはできないだろうけど、言葉はわかるだろう……。明日、降妖君の命令の呪縛から解放されたら、わたしがこれから告げることを思い出すんだ」

 

 九霊聖女は、黄獅姫たちに、明日の闘技場における皇帝声掛けのときに、やるべきことを語った。

 黄獅姫はそれを一言洩らさずに頭に刻み込んだ。

 

「お、俺たちはどうなります……?」

 

「とにかく、すぐにこの格好から解放させてもらえませんか──?」

 

 軍鶏猫と力獅子が言った。

 ふたりは降妖君の「命令」で女装のままでいる。自分ではそれを解けないのだ。

 九霊聖女が噴き出した。

 

「まあ、仕方がないさ──。闘技場に行かないお前たちには別に命じることがあるけど、その女装を解くには、降妖君が命令を取り消すしかないから、いまは、どうしようもないさ──。お前たちはその腹の刻印が消えるまで、その姿で待ちな」

 

 九霊聖女が大笑いした。

 

「そんなあ……」

 

「ぐうう……」

 

 ふたりががっかりした呻き声をあげた。

 

「……だけど、その代わり、わたしと黄獅がお前たちにいいことをしてやるよ。だけど、ほかの者には黙っているんだよ。女王のわたしが、部下のお前たちと遊んだなんて、連中にしめしがつかないからね……。ところで、その性器は強引に勃起させられて、しかも根元の金具で射精を止められているんだろう? それくらいは外してやれるよ」

 

 九霊聖女がくすくすと笑いながら、力獅子の股間に近づいて口に咥えた。

 同時に指を鳴らした。

 力獅子と軍鶏猫の股間の根元の金具が外れて下に落ちた。

 

「おおお──も、もったいない──。じょ、女王様にこんなこと──おおお──」

 

 力獅子が悲鳴のような声で吠えた。

 

「馬鹿垂れ──。静かにしないかい──。いいから、本当に内緒にするんだよ。今夜のことは、この四人の秘密だ──。いいね?」

 

 一度、力獅子の股間から口を離した九霊聖女が苦笑して言った。そして、再び力獅子の性器を咥え直す。

 黄獅姫は九霊聖女に促されて、軍鶏猫の勃起した性器を咥えた。

 

「おお、黄獅姫様までも……」

 

 軍鶏猫も感極まった声をあげた。

 

「おお、ちゅ、忠誠を尽くします──。お、おおおお──。もしも、死ぬような任があれば、どうか俺を使ってください。ど、どうか……お、おおおおっ」

 

 力獅子が切羽詰ったような声をあげながら、ぶるぶると腰を震わせた。

 もう、力獅子は精を発したようだ。

 随分と速いが、それだけ我慢させられていたのだろう。

 それに、女王が自分の股間を奉仕してくれるという異状な状況に、力獅子は感極まったのかもしれない。

 

 ほとんど同時に、軍鶏猫も黄獅姫の口の中に射精をするような仕草になった。

 どうしようかと思ったが、隣の九霊聖女がなんの躊躇いもなく、部下の力獅子の精を飲んでいるので、黄獅姫もそうすることにした。

 そして、軍鶏猫の精が黄獅姫の口の中で弾けた。

 黄獅姫は、それを懸命に喉に飲み込んでいった。

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