「痛いいい──痛いいい──」
大股開きで逆さ吊りされた素蛾が泣き喚いた。
しかし、人間族の童女の泣き声というのは、
寓天はまったく素蛾の泣き声など気にすることなく、手にしている火のついた太い蝋燭をまだ幼い素蛾の膣に捻じ込んでいる。
蝋燭の太さは、この少女の手首よりも太いだろう。
それが濡れてもいない膣に挿入されるのだ。
その激痛に素蛾が身をよじらせていた。
そのため、蝋燭の蝋が飛び散り、蝋燭を握っている寓天の手に落ちる。
「くっ」
さすがに灼熱の熱さを感じるように特別に加工された蝋燭だ。寓天でさえも顔をしかめるほどに熱い。
しかし、この蝋燭から落ちる蝋は信じられないほどに熱いのだが、人間族の肌を火傷はさせないのだ。
そういう加工をされた拷問専用の蝋燭だ。
「ひいい──痛い──痛いい──」
寓天の持つ蝋燭はやっと指一本分挿さった。
素蛾は拘束された身体を暴れさせて、悲鳴をあげ続けている。
だが、両脚を天井の鎖に吊られ、両手首を縄で床に繋げられている素蛾には身じろぎさえも大してできない。
その素蛾の股間に、寓天は強引に力で蝋燭を捻じ込んでいく。
素蛾は引きつったような声をあげて泣きじゃくった。
そのあいだにも、素蛾の真下に置いている香は、知性と抵抗力を素蛾から奪い去っていっているはずだ。
いまは、股間を襲う苦痛に顔を歪めているので、どのくらいの香の効果が素蛾に及ぼしているのかはわからない。
だが、かなりの強力な薬香だ。
すでに、素蛾の心からは仲間のことや、奴隷の刻印を受け入れればどうなるかということは吹き飛んでいると思う。
そのうちに、苦痛を取り除くことしか考えられなくなる。
そうなれば、この頑固そうな童女も、ほとんど意識することなく刻印の受け入れに応じるだろう。
寓天は、長さの三分の一ほどの長さを捻じ込んだところで、手に蝋燭を持ったまま、素蛾の顔を見おろした。
素蛾は嗚咽をしながら懸命に自分の唾を飲むような仕草を続けていた。
「素蛾、奴隷の刻印を受け入れるね? そうすれば、こんな苦痛は終わるよ」
そして、寓天はさらに蝋燭を捻じ込んだ。
「ひぐうう……ぐうう……痛いい……ぐううう……」
「痛いだろうねえ……。潤滑油もなにもなしに、こんな太いものを捻じ込んでいるんだからねえ……。痛かったら、奴隷の刻印を受け入れると言いな……」
寓天は言った。
だが、寓天は強引な蝋燭の挿入を続けながら、思ったよりも抵抗が少ないことを意外に思った。
最初は大きな抵抗があったものの、深くまで押し込んでいくと、少しずつ素蛾の膣がほぐれるように蝋燭を奥に受け入れていくのだ。
「あぐうっ──痛い──痛いです──。い、痛いけど……」
素蛾が身体の捩じりながら叫んだ。
けど……?
寓天は怪訝に思った。
そして、寓天は素蛾の声が少し高くなってきたことに気がついた。
そのことで、なぜ蝋燭の挿入が少し楽になったかを悟った。
蝋燭を捻じ込んでいる股間が潤いを持ち出しているのだ……。
寓天は少し驚いた。
この童女はこんな風に股間に太い蝋燭を捻じ込まれて感じているようだ。
寓天は、まだ幼ささえ残るこの少女に、そんな嗜虐性の性癖がしっかりと存在することに少しだけ当惑した。
「……これくらいでいいだろう。さあ、泣き叫ぶがいい」
とにかく、寓天は太い蝋燭から手を離した。
蝋燭は結局、長さの半分くらいが童女の膣に挿さった。
もうどんなに暴れても絶対に抜け落ちることはない。そして、一度火がつけば、この蝋燭の炎は道術でなければ消えることもない。素蛾が熱さから逃れるには、もう奴隷の刻印に応じるしかないのだ。
「だ、だめ……だめよ……だめ……。ど、奴隷に応じてはだめ……」
素蛾は嗚咽しながら、小さな声で呟き出した。
いよいよ、煙が素蛾の思考力を奪いかけているのだろうか。素蛾はそれに気がついたから、一生懸命に自分に刻印を受け入れてはならないと言いきかせているのだと思う。
これなれば、もう時間の問題だろう。
この香の煙は精神力などで抵抗できるものではない。
それでも素蛾は、ひとり言をささやきながら、唾を飲み込む仕草を続けている。
そのとき、素蛾の白い肉体の股間に貫かれた蝋燭がその側面を伝って、熱い蝋が素蛾の翳りのない恥丘に流れ落ちた。
「ひいいい──熱いいい──、あ、あそこがああ──」
素蛾は絶叫して身体を跳ねさせた。
そのため、さらに蝋燭の蝋が素蛾の股間に周りに飛び散った。
それから絶え間のない素蛾の苦悶に悲鳴が始まった。
灼熱の蝋は素蛾の激しい身悶えで童女の股間全体に飛び散る一方で、蝋燭の側面に沿って膣そのものにも流れ落ちている。
おそらく、蝋は秘肉の亀裂の内側そのものも襲っていると思う。
「早く、奴隷の刻印を受け入れるというのよ、素蛾──。熱いのを終わらせたいでしょう──?」
寓天は怒鳴った。
「ひぎゃああ──熱いいい──。奴隷はだめ……。ぐううう──刻印は……あがああ──だめ……。しゅ、朱姫姉さん……熱いいい──ご主人様……沙那様……孫様……刻印はだめ……。ぎゃああ──朱姫……姉さん……朱姫姉さん……助けて……。ああああ──ご主人様……助けて……。熱いいい──。奴隷はだめ……だめ……。朱姫姉さん……ああああ──」
素蛾は悲鳴の合間に必死で仲間の名を呼び続けはじめた。
寓天には、それがこの童女の最後の抵抗に思えた。
もうすぐ、堕ちる……。
寓天は確信した。
部屋の隅から椅子を持ってきて、逆さ吊りの童女の前に座った。
それにしても、かなりの頑迷さを持った童女だと思う。
素蛾に嗅がせている煙は、かなりの強力のものであり、抵抗力の弱い人間族であれば、普通はもうすでに堕ちていてもいいはずだ。
ましてや、目の前にいるのは、まだ成長の途中にすぎない子供だ。
しかし、最初の鞭打ちで確信したが、この素蛾は強靭な亜人戦士並の拷問への耐性を持っている。
それは本当に意外だ。
さすがは宝玄仙の供だと思った。
寓天は、宝玄仙という人間族の魔女には直接の面識はないが、関わるのは二度目だ。
最初の関わりは、この連環城に来る前であり、獅駝嶺を支配する青獅子魔王に仕えていたときだ。
その部下の
あの女も強靭だった。
孫空女を相手することになった寓天は、切断した鞭状の腕で拘束してやり、滅茶苦茶に腕の鞭で打ちつけてやったのだが、孫空女はなかなか屈服の言葉を吐かなかった。
それと同じくらいの拷問に対する強さをこの人間族の童女は持っている。
だが、見たところ、孫空女とは異なり、この童女にはなんの武芸の心得えもないようだ。
それなのに、かなりの時間を耐え続けていることに寓天は感心していた。
寓天は素蛾の股間で揺らめく蝋燭の炎に視線を向けた。
この蝋燭は普通の蝋燭とは違って拷問用なので、短い時間で溶け落ちるようになっている。
すでにかなり蝋は短くなり、じりじりと股間そのものに近づいていた。
素蛾の声はもう悲鳴に近く、すでに仲間の名を呼ぶことはなくなった。
ただ、息を吸うように、唾を飲む仕草を続けている。
「早く屈伏しな、素蛾──。股が焼けてしまうよ──。言葉がしゃべれなければ、首を縦に振れ──。刻印を受け入れると言えば、この苦痛は終わる──。その気になれば、ただ首を縦に振るんだ──」
寓天は怒鳴った。
もしかしたら、屈伏の言葉が言いたくても、言えない状況ではないかと思ったのだ。
いくらなんでも、時間がかかりすぎる。
あの香を吸い続けて、こんなに心の抵抗が続くわけはないのだ。
だが、寓天の言葉に、素蛾は悲鳴をあげながらも首を横に振った。
「ちっ」
寓天は舌打ちした。
まだ、心で抵抗している……。
この人間族の童女には、あの香が効かないのか?
寓天は首を傾げた。
だが、そんなはずはない。
これは魔域で開発されたばかりの特殊な魔香だ。
人間族の童女がこの香に特別な耐性を体内に育てることは不可能のはずだ。
「聞いてんのかい──」
寓天は腕の鞭を素蛾の股間に向かって軽く二発放った。
すでに股間には剥き出しの肌の部分が消えるほどに蝋がこびりついている。これでは、熱さの苦しみが半減だ。
それを鞭で払ったのだ。
「ぎゃあああ──ひぎゃあああ──」
素蛾は断末魔のような悲鳴をあげた。
蝋の覆いのなくなった股間に、すぐに新しい蝋が落ちだした。
素蛾の悲鳴がさらに大きくなった。
そして、あげる声が意味のわからない絶叫だけに変化した。
いよいよ、燃えている蝋燭の長さがなくなり、炎が素蛾の敏感な粘膜を焼き出したのだ。
蝋燭の蝋は火傷を防止する働きはあるが、炎は本物だ。
素蛾の肉体を拷問が続けられないほどに痛めつけてしまっては、回復させるまで拷問を中止するしかない。
寓天は焦った。
これでも堕ちないのか……?
寓天は唖然となった。
「ひぎいいいい──あぎゃあああ──た、助け──だれか、助けてえっ──」
部屋に素蛾の大きな泣き声が響き渡っている。
さらに、肉の焦げる匂いが漂い始めた。
素蛾はものすごい形相をしている。
だが、首を横に振っている。
まだ、拒否しているのだ。
「は、早く、奴隷の刻印を受け入れると叫ぶのよ、素蛾──」
寓天は立ちあがって叫んだ。
すでに素蛾の股間の肉は焼けている。
それでも、素蛾は必死で首を横に振っている。
「はがあああああ──」
ひと際高い素蛾の叫び声が響き渡った。
蝋燭が完全に膣の外になくなり、道術のために消えることのない蝋燭の炎が素蛾の女陰の中で燃えている状態になった。
膣の中を火で炙られた素蛾は最後の悲鳴をあげ終わると、がっくりと脱力した。
完全に気絶したようだ。
寓天は、まずは最初の拷問で自分が敗北したことを知った。
霊気のこもった治療薬で快復させるとしても、拷問を再開できるようになるまでに、丸一日はかかるだろう。
腹立ちまぎれに、寓天は素蛾の頭の下の香炉を腕の鞭で粉々に砕いた。
*
牢は薄暗かった。
ずっと高い位置に明かり取りの小さな窓があり、光はそこから射し込んでいたが十分な明るさとはいえなかった。
おそらく、あの窓がある部分が地上なのだと思う。
拷問室で寓天から股間を蝋燭の炎で焼かれて気を失った素蛾は、拘束を解かれて股間に膏薬を塗られ、その上から布おむつのようなものを腰全体に巻かれた。
さらに、布に道術をかけられて素蛾が布を勝手に取ることができないようにもされた。
おむつを外せないようしたのは、それが治療の効果を速めるという理由と、牢番たちから素蛾が凌辱されるのを防ぐためのようだ。
素蛾を裸身に布おむつを巻いただけの姿にすると、寓天はやってきた亜人兵二名に素蛾を引き渡した。
動くことができなかった素蛾は、両肩をその亜人兵に抱えられて拷問室のあった部屋を引き摺り出され、一度中庭におりて、この地下牢のある牢舎に連れてこられた。
牢舎の一階部分は五名ほどの牢番のいる詰所だった。
そこで牢番に引き渡された。
そこからは、素蛾の肩を支える者がふたりの牢番に変わった。
地下におりる階段におりる階段は詰所の先だった。
さらに、螺旋状に潜っている階段をおりていくと、三個ほど並んでいる石牢があり、素蛾は一番手前の牢に入れられたのだ。
つまりは、この牢から脱走しようとして地上にあがる階段をあがっても、牢番のいる詰所があるということだ。
たとえこの牢を脱走できることがあるとしても、素蛾には詰所にいる牢番を倒す方法などない。
脱走は難しそうだ。
いずれにしても、そのときには、素蛾はまだ火傷をした膣の痛みで自分では動くことはできなかった。
素蛾を長椅子に寝かせたふたりの牢番は、腰袋から出した蛭のような生き物を素蛾の首の横にくっつけた。
しかし、その蛭は素蛾の肌に密着することなく、その場に落ちた。
「この娘は、道術遣いじゃなさそうだな……」
ひとりがそう言って、床に落ちた蛭を回収した。
そして、ふたりは出ていき、外から鍵が閉められた。
「腰に道術で封印した布を巻いていたな……。犯すことはできそうにないぜ……」
「なあに、口でさせればいいさ……。まだ、起きることはできないだろうけど、明日の朝には身体を起こせるくらいにはなるはずだ。そうしたら、口で奉仕させようぜ……。まだ子供だが、そういうのもまたいいのさ」
外でふたりの牢番がそう話したのが聞こえた。
やがて、その牢番たちが外の廊下からも立ち去る気配があった。
ひとりきりになった素蛾は、暗さに慣れようと目を凝らした。
しばらくすると、素蛾の眼にもなんとか、この部屋にある低い卓に置かれている水差しを見ることができるようになった。
その横の床には粗末な毛布もある。
素蛾がまずやったことは、股間を包まれている布の中で放尿をすることだ。
素蛾の尿には、唾液と同様に「癒し」の効果があるのだ。
布の中で拡がった素蛾の小尿が火傷をした膣に広がって股間の痛みが消えてきた。
それでなんとか動くことができるようになった。
素蛾は横たわっていた身体を起こすと長椅子に座り直した。
さて、どうすべきか……?
素蛾は考えた。
寓天に吸わされ続けた香の影響で、まだ、頭のどこかが欠けてしまったようにぼんやりとしている。
しかし、まだなんとか、まともにものはものを考えることはできる。
あの香を吸わされながら、素蛾は懸命に自分の唾液を身体に送り続けた。
素蛾の唾液は「癒し」の唾液だ。
それがあの香に対する毒消しの効果となって、なんとか最後まで思考を維持することができたのだ。
だが、寓天は素蛾の回復を待って、また拷問を再開するつもりのようだったし、いずれは、素蛾の唾液が毒消しの効果を持っていて、それで素蛾があの香の効果を免れたということに気がつくだろう。
そうすると、今度は唾液を口にすることができない処置をしてから、また、あの香を嗅がせると思う。
そうなれば、今度こそ抵抗できない。
素蛾は、奴隷の刻印を受け入れてしまうに違いない。
それを防ぐにはどうすればいいか……?
そのとき、壁の後ろ側から壁を削るような小さな音がしていることに気がついた。
素蛾は驚いて、長椅子から立ちあがった。そして、音が始まった石の壁を観察する態勢になった。
すでに股間の痛みはほとんどない。
鞭打たれた身体が痺れるような疲労感に包まれているだけだ。
そのとき、突然に音がやんで壁の一部がせり出し始めた。
石のひとつが床に落ちるのを、素蛾は慌てて手を出して受け取った。
その石が外れた壁の部分に、拳一個分ほどの穴がぽっかりと開いた。
素派は驚いた。
どうやら、隣の牢の囚人が壁の石を押し出して、小さな窓を作ったようだ。
おそらく、これはあらかじめ作ってあったのだろう。
「だ、誰ですか……?」
素蛾はささやいた。
その穴から向こう側を覗き込もうとしたが、向こうはこっちよりも暗くてよくわからなかった。
ただ、確かに向こう側に誰かがいるということだけはわかる。
「ああ、やっぱり、そっちに誰かいるんだね? 横になって休んでいたら、この地下牢の廊下に誰か新しい囚人が連れてこられるのがわかったからね……。答えておくれ。どうやら女の声のように思えるけど、誰なの?」
声は男の声だったが口調は若かった。
ただ、ひどく声に力がない。
随分と身体が弱っている気配だ。
「わ、わたくしは素蛾という者です……」
素蛾はささやくように言った。
「ひとり……?」
「は、はい……」
「……声にも名にも聞き覚えがないね。君も新しく捕らわれた金角様の元部下のひとりなの?」
「いえ……。わたくしは人間族です……。あ、あのう……。金角というのは魔域に勢力地を持つ女魔王の名ですよね……? わたくしは、その方の部下ではありません」
素蛾はそう言ったが、壁の向こうの男は、いま“君も金角様の元部下か──”という物言いをした。
……ということは、男は金角の部下なのだろうか?
金角といえば、宝玄仙たちが向かっている魔域の女魔王だ。
金角はかつて、宝玄仙を戦ったことがあったのだが、そのとき和解して金角は、宝玄仙を自分の主人として認め、その宝玄仙に安住の地を与えることを約束したのだそうだ。
だから、宝玄仙一行は、その金角の勢力地を目指して、ひたすらに旅を続けているのだ。
素蛾もそれは教えられて知っている。
だが、自分が宝玄仙の供であることを壁の向こうの男に告げてもいいだろうか……?
素蛾は迷った。
とにかく、名を聞こうと思った。
「ちょ、ちょっと待って──。そっちには太陽に光があるんだね──? お、お願いだよ──。光を──、光に当たらせて──。こっちには太陽の光が当たらないようにされているんだ──。お、俺を弱らせるために、ここの牢番の連中が意地悪をしてね……」
素蛾の返事を待つことなく、小さな壁の穴から指が突き出てきた。
素蛾はびっくりした。指一本分だけ出てきた指は、枯れた草のようなかさかさの皮膚をしていた。
どうやら人間族ではないようだ。
しかも、非人間種の亜人だと思う。
「……ああ、弱い光だけど、少しだけど生き返るよ……。俺は植物性の亜人……、つまり、妖魔なんだ……。俺の食事は太陽の光だ。それなのに、何箇月も光を遮られた生活を強いられて、もう力が尽きようとしていたところさ……。これでもう少し生きられる……。ああ、嬉しい……」
妖魔……?
やはりそうかと思った。
壁から突き出た指の肌ひとつを見ても、すでに人間族とかけ離れている。
それにしても、王宮時代に与えられた素蛾の知識でも、植物性の亜人というのは耳に仕方ことがない。
珍しいと思った。
「……ああ、そうだ。まだ、俺の名を名乗ってなかったね……。俺の名は
日値と名乗った壁の向こうの男が、壁から突き出した指でわずかな光を浴びながらほっとしたような声で言った。
ふと見ると、その日値の指はだんだんと緑がかってきている。
かすかな光だが、本当に日の光を浴びることで、生命力を取り戻してきたような感じだ。
それにしても、素蛾は日値の言った言葉に驚いてしまった。
「ええっ──。金角様が死んだというのはどういう意味なのですか──? わたくしは、そこに向かっているところだったのです──。あっ、いえ、わたくしが向かっているというよりは、わたくしのご主人様の旅の目的がそこだったのです」
素蛾は思わず言ってしまった。
「君のご主人様──? それは誰?」
日値の口調に怪訝そうな響きが混じった。
素蛾はもう言っていいだろうと思った。
どうやら、本当に壁の向こうは金角の部下の気配だ。
「わたくしの主人は、宝玄仙様です……。ほかに一緒に旅をしているのは、朱姫、沙那、孫空女というお名前のお三人で、そして……」
「ほ、宝玄仙様だって──?」
しかし、素蛾の言葉を途中で遮って、日値が声をあげた。
そのとき、壁の向こうから、日値の声ではない別の男の苦しそうな呻き声が聞こえてきた。