「……わかった。もうよい……」
そして、天井を仰いで溜息をついた。
西方帝国で囚われとなっている
夕べのことだ。
素蛾は、すでに九霊聖女の勢力地の外に逃亡を果たしており、おそらく、新たに旧金角の勢力地を支配することになった
それが手の者たちの報告だった。
別に追手の指揮を命じていた部下からも報告があがっており、その内容とも合致する。
おそらく、事実なのだろう……。
素蛾は逃げた──。
それを受け入れるしかない。
「陛下、あたしの責任です。いかような処分も甘んじて受けます──」
末席にいる
「いや、お前の責ではない、寓天──。牢番どもの管理はお前の役目ではあるまい。牢番たちが野放図に囚人を扱うのを許していた監督者の官吏には、それなりの責を問うが、お前に命じたのは素蛾を拷問して屈伏させることだ。しかし、素蛾を含めた連環城の囚人たちを獄に繋いでおくのは、その命令の外だ──。もっと言えば、お前が拷問中だった素蛾を逃がしてしまったのは、わたし自身の牢番どもの監督が甘かったのだ。許せ」
九霊聖女は静かに言った。
「い、いえ……」
寓天が神妙な表情でもう一度頭を下げた。
連環城の九霊聖女の執務室に近い広間だ。
そこに九霊聖女の重鎮中の重鎮ともいえる五人ほどの部下が集まっている。
この五人は、九霊聖女のすべての武官、文官、そして、官吏、支配地域内で生きている亜人を支配している者たちであり、この五人を通じて、九霊聖女がもともと南山大王の支配であった領域と魔王城を支配しているのだ。
ただし、五人のうちの四人は、本来は南山大王の部下であり、南山の支配道術を受け入れていた。
純粋に九霊聖女の支配だけを受け入れているのは、寓天だけだ。
それが九霊聖女の支配の不安定さを示しているといえた。
九霊聖女の支配を完全なものにするためには、南山大王を完全に抹殺し、旧部下たちにかかっていた支配術の影響を消去して、新たに九霊聖女の支配道術を受け入れさせるべきなのだが、いまは、その態勢がとれない。
それについても、九霊聖女の甘さが原因に違いない。
九霊聖女は今更ながら、歯噛みする思いだ。
「牢番につけていた者たちは、亜人兵の一員でありながら、どの将軍の隊にも所属せず、あいまいな立場でした。それが連中の監督が不行き届きになった原因でしょう。ほかにも連環城の警備をしている衛兵そのものも、部署ごとに武将ではない官吏の支配となっており、管轄の存在がお互いの警備の齟齬を発生させたといえます──。この際、連環城の警備のあり方を改革し、連環城を管理する牢番兵を含めた衛兵は近衛団の管轄として指揮を一本化すべきでしょう」
宰相であり、各大臣を束ねる男だ。
政事に関することのすべてを事実上仕切っている。
やはり、もともと南山大王の部下のひとりだ。
「うむ……。それはやれ、周倫完──。ただ、問題は、それを一本化して預かることになる近衛隊長の人事だな……」
九霊聖女は言った。
最後の言葉は、部下たちに向ける言葉ではなく、自分自身に告げたものだ。
現在の近衛隊長は西方帝国で囚われとなっている黄獅姫だ。
南山大王を封印してこの連環城を乗っ取った九霊聖女が最初にやったのは、南山大王の近衛隊長を解任して、新たに黄獅姫を近衛隊長にすることだった。
近衛隊というのは、魔王である九霊聖女が直接に指揮をする軍であり、通常は九霊聖女の身辺警護などを司る。
魔王の近くに存在し、その命を守る者であるから、指揮官にもっとも信頼ができる者をつけるのは当然である。
万が一にも、九霊聖女に背く可能性のある者は絶対にその任にはあてられない。
だから、九霊聖女は近衛隊長に黄獅姫を任命したのだ。
黄獅姫は九霊聖女を裏切る可能性はない。
だが、今回の人間族の西方帝国を乗っ取り工作のために、その黄獅姫を近衛隊長の役割から一時的に解いて女闘士として帝国に送っていた。
そのあいだは、近衛隊長の職務は副隊長にやらせたのだ。
副隊長は旧南山大王の部下なので九霊聖女としては不安なのだが、実際としては、九霊聖女自身も西方帝国の帝都に人間族の童女にやつして潜入していたのだから問題はなかった。
しかし、いまは九霊聖女は連環城に戻ってきており、しかも、本来の近衛隊長の黄獅姫は囚われているという状態だ。
すると、いまの九霊聖女の身辺警護をするのが、旧南山大王派の副隊長ということになる。それは九霊聖女には都合の悪いことなのだ。
「寓天──」
九霊聖女は声をかけた。
「はっ」
「お前を近衛副隊長に任じる。現在の副隊長と交代だ。そして、黄獅姫の不在間の近衛隊の指揮をとれ」
「わ、わかりました、陛下」
寓天が言った。
寓天のいまの立場からすれば、近衛副隊長に任じられるのは出世だ。
素蛾逃亡の責任の一端があると思っていた寓天からすれば、責任を問われることがなかっただけでなく、さらに重要な役割を与えられるというのは意外だったのだろう。
しかし、九霊聖女としては仕方のない人事だ。
南山大王の支配道術を受けたままの南山大王派の部下が、大勢を占める現状において、九霊聖女の支配道術を受け入れている部下の存在は貴重だ。
特に、黄獅姫が宝玄仙の手に渡っているいま、できるかぎり九霊聖女の周りを純粋な九霊聖女の部下で固める必要がある。
そのとき、部屋に伝令がやってきた。
「なんだ?」
伝令は西方帝国から
九霊聖女はびっくりした。
大角は、西方帝国に潜入して黄獅姫奪回の工作をするように数日前に命じて送り出したばかりの男だし、軍鶏猫は
大角には、軍鶏猫と力獅子を黄獅姫奪回の手駒として使うように命じていた。
黄獅姫を連れ戻すまで戻ってくるなと命じた大角が、もう戻ってきたとはどういうことだろう──?
黄獅姫は部屋にいる五人の重鎮に視線を向けた。
周倫完をはじめとして、五人も首を傾げている。
「とりあえず、そいつらをここに通せ──」
九霊聖女は伝令に言った。
伝令が外に出ていくとともに、すぐに大角と軍鶏猫のふたりが入ってきた。
ふたりは九霊聖女の座っている椅子の前までやってきて、揃って片膝をついた。
「堅苦しい挨拶はよい──。お前たちがここにいるということは、なんらかの吉報を持ってきたのであろうな? 黄獅姫の救出に成功したのか、大角?」
九霊聖女は言った。
自分の口調には少し苛ついた響きがあった。
もちろん、黄獅姫がまだ救出されていないことは知っている。
もしも、救出されていれば、その時点で報告がある。それは届いていない。
「いえ、救出そのものには成功しておりませんが、皇子の
大角は言った。
「お、お前たちは、人間族どもの宮廷と交渉をしたのか?」
九霊聖女は驚いて声をあげた。
確かに大角には、どんな手を使ってもいいから、黄獅姫を奪回しろ命令した。
ただ、それはなんらかの工作をして、おそらく牢に囚われているであろう黄獅姫を処刑前に強引に脱走させろという意味だった。
大角に、こちら側の使者として人間族の宮廷に赴き、黄獅姫の釈放を要求しろと言ったつもりはない。
そんなことをしても、こちらには交渉の弾もないし、無駄だと思っていた。
それに、皇帝襲撃を企てた魔王の部下がのこのこと連中の前に出ていくことは危険だ。
そんなことをすれば、間違いなく黄獅姫とともに捕らわれるか、あるいは、その場で殺されるだけだと信じていた。
西方帝国側が九霊聖女側と交渉をしなければならない理由はないはずだ。
だが、こいつらは、向こうの宮廷となんらかの交渉をしてきた気配だ。
「正直に申せば、望んで交渉したというよりは、帝都に潜入したところをあっさりと、宝玄仙に見つかって、三人揃って強引に宮廷に連れて行かれたのです……。しかし、俺たちは、釘鈀皇子の要求を伝えるために、魔域に戻ることを許されたというわけでして……」
大角がばつが悪そうに言った。
そういうことかと思った。
相手は宝玄仙だ。
その気になれば、帝都に隠れている亜人を炙りだすくらい簡単なのかもしれない。
だが、向こうの要求とはなんだろうか?
九霊聖女としては、黄獅姫の身柄だけはなんとしても確保しなければならない。
大抵の要求には応じてもいいと思っている。
「……まあいい──。それで向こうの要求はなんだ──?」
「人質交換です。黄獅姫殿と素蛾の身柄を交換すると言っております。時期はできるだけ早く。場所は向こうの西方帝国における帝都郊外の軍の演習場です。周囲にはなにもない原野があるだけの場所です」
「あ、あの奴隷娘と黄獅姫の一対一交換に応じるというのか──?」
九霊聖女はびっくりして声をあげた。
あの童女が連中にとってそれほど大切な存在だとは思わなかった。
そして、あの素蛾は、奴隷とはいえ、宝玄仙の供だということを改めて思い出した。
迂闊だった……。
また、西方帝国側が宝玄仙の奴隷娘の身柄と黄獅姫の身柄の交換を申し出たということは、宝玄仙が西方帝国の宮廷そのものに、深く関わっているということでもあるだろう。
宝玄仙が帝国にとっての重要人物でなければ、そんな交渉が提示されるわけもないのだ。
そう考えたとき、九霊聖女は、いま大角が向こう側の相手として、釘鈀皇子の名を出したことを思い出した。
第二皇子の釘鈀は、西方帝国の宮廷の実権は握ってはいなかったはずだ。
「ところで、お前たちの交渉相手は、皇帝ではなく、釘鈀なのか?」
「あっ──。西方帝国において、いま現在宮廷を取り仕切っているのは釘鈀皇子なのです。皇帝は瀕死の負傷を負い静養中ですし、第一皇子の
大角が言った。
「そういうことか……」
九霊聖女は納得した。
そういうことであれば、もちろん九霊聖女にとって不満はない。
奴隷娘を返すだけで大切な黄獅姫が戻ってくるなら、これほどにこちらに優位な条件はない。
捕らわれて宮廷に連れていかれたにしろ、向こうから要求されたその条件を大角が九霊聖女に伝えることを約束して戻ってきたのは理解できる。
しかし……。
その肝心な素蛾がいない……。
素蛾は、ここに連れてきたその日のうちに同じ軍牢に監禁していた日値という金角の元部下とともに逃亡してしまっている……。
素蛾を監禁しようとした牢には、実は約三箇月前に捕縛させた金角の部下だった
どういう方法なのかわからないが、その倚海龍と日値が素蛾と接触することに成功して三人で逃亡した。
その経緯が不明なのは、軍牢を見張っていた牢番の全員が殺されていたからだ。
わかっているのは、三人の脱出の発端は、牢番の一部が素蛾を犯そうとしたことから始まったということと、封じていたはずの倚海龍と日値の道術が復活したということだ。
それで三人は逃げた。
倚海龍については、追跡隊が途中で捕捉して惨殺したが、日値と素蛾については、結局逃げられてしまったのだ。
「……どうかしましたか、陛下? 我々のうちの少なくともひとりは、返答を持ってすぐに帰られねばならんのです。俺はこちらとしては問題のない条件だと思いますが……」
おそらく九霊聖女は不機嫌な顔になっていたと思う。
だから、大角は心配になったに違いない。
「い、いや、すまん──。苦労だった──。お前たちは戻って向こうに承知したと伝えよ。素蛾の身代わりについてはなんとか準備する」
九霊聖女は言った。
素蛾は逃亡してしまったが、それは隠し通すしかないだろう。
『変身術』のできる者に素蛾の身代わりをさせるしかない。
しかし、通常の『変身術』は変身する対象の体液や身体の一部を必要とする。
だが、すでに素蛾はいないのだから、単純な記憶だけで『変身術』が遣える者が必要だ。
素蛾の姿を見たことがある者で、記憶のみの『変身術』が扱える人物──。
その条件に合致するのは、九霊聖女はひとりしか知らない。
九霊聖女自身だ──。
まあいい──。
黄獅姫さえ戻れば、なんとかなる。
身柄交換の後で素蛾に化けていた九霊聖女自身が逃亡することは容易だろう。
場合によっては、宝玄仙の抹殺をする機会もあるかもしれない。
魔王たる九霊聖女自身が、素蛾に化けるのは危険ではあるが仕方がない……。
「あ、あのう……。準備するとはどういうことでしょうか、陛下? 素蛾はここにはいないのですか?」
大角の横で黙って跪いたままだった軍鶏猫が怪訝な表情をした。
「……実は、素蛾は逃亡した。もうすでにここにはおらん」
九霊聖女は苦々しく言った。
素蛾が逃亡したことは、連環城では周知の事実だ。
交渉役のこいつらが知る必要のない事実だが、すでに隠すだけ無駄だ。
「ええ──?」
軍鶏猫が大きな声をあげた。
いつも冷笑的な軍鶏猫としては珍しく大きく感情を動かしたような表情だ。
「だが、向こうに悟られるな──。素蛾の代役は準備する。だから、人間族が素蛾の逃亡に気がつく前に、交換の実行を終わらせてしまうぞ──。人間族の条件をのむ。お前たちはそう伝えよ──」
九霊聖女は言った。
ふたりが同時に当惑した様子になった。
「どうかしたのか?」
九霊聖女は言った。
「い、いえ──。あ、あのさしつかえなければ、素蛾はどこに逃亡したのか教えてもらうわけにはいきませんか?」
軍鶏猫が言った。
「北の旧金角域だ──。日値という植物族の小妖と一緒に逃げたのだ。しかも旧金角域にいる金角軍の残党どものところの合流に成功したようだ──。それよりも、お前たちは行け──。いいか──。できるだけ早く人質交換を成立させるのだぞ」
九霊聖女はふたりに退がるように言った。
しかし、そのとき、ふたりが再び顔を見合わせた。
そして、困ったような表情をしている。
退がれと命じたにも関わらず、立ちあがらないというのは、まだ、報告すべきことが残っているのだろうか……?
「どうかしたのか……? なぜ、退がらん?」
九霊聖女は強い口調で言った。
しかし、ふたりはもじもじと身体を動かして、お互いを牽制し合うような仕草をしている。
やはり、まだなにか伝えるべきことがなにかあるようだ。
「大角──、言いべきことが残っているなら、早く言え──。ないなら、退がれ──」
九霊聖女は怒鳴った。
「そ、そのう……。実は宝玄仙から渡せと言われたものがありまして……。申し訳ありません。ちょっと、ここでは出しそびれておりました。できれば、九霊聖女様だけの方がよろしいかと……」
「宝玄仙から──? なぜ、それを最初に出さん──? 早く、ここで出せ」
九霊聖女はびっくりした。
「あ、あの──。で、ですから、ほかの方々の前では出しにくいというか……。で、でも、これを陛下に見せることも、宝玄仙の指示でありまして……」
大角が汗をかきながら言った。
九霊聖女は、椅子の手摺りを思い切り叩いた。
大角と軍鶏猫がびくりとしたように顔をあげた。
「なにを訳のわからぬことを言っておるか──。宝玄仙の伝言ということであれば、内容を含めて、ここにいる全員で検討せねばならんわ──。わたしが知って、ここにいる者に告げれば同じことだ。この部屋の中の者は重鎮中の重鎮だ──。秘密にする必要はない。いいから、その伝言を出せ」
九霊聖女は怒鳴った
「あっ……。伝言というわけでは……。どちららかといえば、悪戯に類するものかと……」
「悪戯……? 危険なものか?」
九霊聖女は呆気にとられた。
大角が慌てたように首を横に振った。
「いえ、いえ──。危険はありません。それは断言します」
「だったら、もったいぶらずに出せ──」
九霊聖女は、大角たちの煮え切らない態度に苛々してきた。
「わ、わかりました──。出します──。でも、俺たちに怒らないでくださいよ……。俺たちは、こんなもの持っていったら、怒らせるだけだと反対したんですよ……」
大角が懐から紙の包みのようなものを出して、九霊聖女に拡げて差し出した。
「なんだ、これは?」
拡がった紙の上にあったのは黄金色の短い毛だ。
それなりの量がある。
それが折りたたんだ紙の中に包んでいたのだ。
「そ、そのう……。宝玄仙の言うには、九霊聖女様が見たことがあるものだと……。だから、見ればわかると……」
大角が紙の上の毛を両手で差し出しながら言った。
「見ればわかる……?」
九霊聖女は首を傾げた。
見ればわかると言われても……。
黄金色の髪の毛……?
縮れている。
いや……。髪の毛という感じではない……。
これは……。
あれ……?
「こ、これは──」
九霊聖女はこの毛がなんであるかわかって激怒して立ちあがった。
これは黄獅姫の陰毛だ──。
宝玄仙は、交渉役の大角と軍鶏猫に黄獅姫の陰毛を渡して持っていかせたのだ。
つまりは、これで黄獅姫がどんな目に遭っているか察しろという意味だ。
「じゃ、じゃあ、俺たちは退がります。交渉については、ご指示に従います」
大角が慌てたように言った。
そして、片膝をついたままだったふたりが立ちあがった。
「待て、大角──」
九霊聖女はそのまま出て行こうとした大角を呼びとめた。
「はっ?」
振り返った大角の睾丸を下袴の上から九霊聖女は鷲掴みした。
「ひゃ、ひゃあ──」
大角が悲鳴をあげた。
「なんだ、お前は──? 女みたいな悲鳴をあげおって──。言っておくぞ──。絶対に交渉は成功させろ。もしも、交渉が成立しなかったら、この前、言った通り、お前の睾丸を引き抜いてやるからな──。だから、死ぬ気で交渉しろ──」
九霊聖女は軽く大角の睾丸を揉みながら言った。
「は、は、はい……。は、はい──」
大角が柄にもなく真っ赤な顔をして、恥ずかしそうに身体を悶えさせた。
(第114話『妖魔城の虜囚』終わり、第115話『好色皇帝』に続く)
【西遊記:89・90回、
(「729 闘奴受諾の条件」の後書きの続きになります。)
三王子に貸した自分たちの得物を盗まれてしまった孫悟空たちは、それを取り戻すことにします。
孫悟空は、普通の人間には、孫悟空たちの武器を扱えるわけがないので、おそらく近傍に巣くう妖魔の仕業だろうと見当をつけます。
孫悟空が妖魔のことを訊ねると、三王子は近くにある豹頭山に
孫悟空が黄獅の洞府(住み処)に乗り込むと、果たしてそこに孫悟空たちの武器がありました。武器を盗んだのが黄獅だと悟った孫悟空は、武器を取り戻すとともに、黄獅の洞府を部下ごと焼き払ってしまいます。
居城を焼き払われた黄獅は、祖父の
九霊元聖は、一族を率いて人間たちの国に攻め込んできます。
人間族と妖魔軍の戦争です。
孫悟空たち三人の玄奘の供は、三王子の率いる軍に加わり、妖魔軍を迎え撃ちます。
一日目の戦いでは、猪八戒が敵の捕虜になります。
逆に、孫悟空は、妖魔軍の
二日目の戦いにおいて孫悟空は、やはり九霊元聖の孫である
また、九霊元聖の孫のひとりである
一方で、この二日目の戦いの最中において、九霊元聖が孫悟空たちの裏をかき、人間族の王城に潜入してきます。九霊元聖は、人間族の国王、三王子、玄奘を捕らえて連れていってしまいます。
二日目の戦いからも取った孫悟空は、国王や玄奘たちがさらわれたことを知ります。
孫悟空は、嘆き悲しむ城郭の者たちを叱咤するとともに、こっちにも九霊元聖の孫を人質にしているのだから、向こうも人質を殺さないだろうと慰めます。
また、九霊元聖軍は、国王、三王子、玄奘を連れたまま、妖魔軍を退却させます。
孫悟空と沙悟浄は、ふたりだけで退却していった妖魔軍を追いかけます。
しかし、九霊元聖の居城であり「連環城」の前で九霊元聖に捕らわれてしまいます。
拘束されて連環城に連れ込まれた孫悟空は、九霊元聖の命令により、彼の部下の
孫悟空に散々に拷問をした青面たちは、疲れて眠ってしまします。
すかさず縄抜けをした孫悟空は、青面、突飛腹黒、腹黒突飛を殺して、同じ場所にいた沙悟浄と猪八戒を助けようとします。
しかし、ふたりの拘束を解く前に猪八戒が大声を発して、その声で九霊元聖の兵が殺到してきます。
仕方なく、孫悟空は単身で連環城から脱走します。
連環城を脱出した孫悟空は、そのまま天界にむかい援軍を仰ぎます。
天界において、孫悟空は、九霊元聖の正体が、
その天獣が逃亡したのは、三日前です。
天界の一日は、下界の一年にあたるため、その天獣は九霊元聖となって三年間暴れていたというわけです。
太乙救苦天尊は、孫悟空とともに下界におりて、天獣である九霊元聖を捕らえて天界に連れ帰ります。
九霊元聖に捕らわれていた国王や玄奘たちも救出します。
連環城は完全に破壊されて、九霊元聖の孫や部下は全員が処刑されます。
玄奘たちは、三王子たちに武芸を伝授してから、雷音寺に向かって出発します。
(※)「
本エピソードに限らず、『西遊記』は、中国に古来から根付いている「道教」と、インドから伝わってきた「仏教」が融合された世界観で描かれています。