「おはようございます、ご主人様」
宝玄仙が一階にある居間にあがっていくと、すでに起きていた朱姫が頭をさげた。
服の上に前掛けをしている。
家事の真似事でもしていたのだろう。
幼い頃に両親を失ってから、あちらこちらで奉公のようなことをしていたらしい朱姫は、沙那や孫空女よりも、余程器用になんでもこなす。
この部屋は、厨房に接した場所にあるのだが、奥から、料理のいい匂いも漂ってきたいる。
「食事は、そこに準備をしてあります。すぐに召し上がられますか?」
「もらうよ」
「では、すぐに」
朱姫が一度引っ込み、すぐに盆に載せてきた食事を持ってきた。
おいしそうな朝食が卓の上に並ぶ。
温かい汁もある。
「……ところで、地下の家畜の様子はどうですか、ご主人様?」
朱姫が給仕のために横に立ったまま言った。
「踊っていたよ、朱姫。お前も残酷なことを考えるねえ」
「ご主人様程じゃないですよ」
そして、なんとなくふたりで笑い合った。
宝玄仙は、地下にあった白骨の寝室を使って休んでいたのだが、ここに来るには、白骨を閉じ込めてある「調教部屋」を通らなければならなくてはならず、丁度いいので様子を覗いた。
そこには、両手を束ねて天井から宙吊りで放置されている
彼女は、裸身を狂ったように空中で踊らせていた。
なにしろ、あの白骨の優美な裸身には、百匹ほどの『
『魔蛭』は、この施設に調教用として管理されていたもののようであり、それを見つけた朱姫が嬉々として、一日目の「調教」が終わって、ぐったりとしている白骨の身体にくっつけたのだ。
あの魔虫に身体を刺されると、怖ろしい痒みとともに、激しい淫情に襲われる。
たった一匹でも発狂するような『魔蛭』の毒液を白骨は、百匹も身体に受け続けていた。
そのまま、一晩中放置されていたのだ。
床には、おびただしい汗と白骨の股間から垂れ落ちている愛液が大きな水分の溜まりを作っていた。
何匹かは振り落とせたらしく、足元に魔蛭が落ちていたものの、大部分はいまだに白骨の身体にくっついて、白骨に発狂するほどの痒みを与えているに違いない。
喚き続けている悲鳴はもう弱々しかったが、なにを喋っているのかまったくわからなかった。
白骨にとって、人生でもっとも長い一晩だったと思う。
「だけど、ちょっと見ただけだから、生きていたのを確認しただけで、元気かどうか知らないよ。頭の線の十本や二十本は切れててもおかしくはないだろうし」
宝玄仙は朝食を口にしながら言った。
「狂ったら狂ったでいいですけど、そんな簡単には人間は狂えませんよ」
「確かにね」
宝玄仙は相づちしながら、汁をすすった。
出汁は魚だろう。よく味が染み込んでいる。おそらく、料理は三人の供の中では一番だと思う。
孫空女もそこそこ料理はするが、山賊料理であり、朱姫のような繊細な味は出せない。
沙那はまるで駄目だ。本人は認めたがらないが、沙那には料理の才能は皆無だ。
「ところで、沙那姉さんと孫姉さんは、昨夜は戻りませんでしたね、ご主人様」
朱姫が宝玄仙の手元の杯に果実水を足した。
「ああ、あいつらなら、数日は戻らないよ。
黄袍魔のことにについては、国王との面会の成り行きによっては、沙那たちをそのまま数日借り受けたいと、青蔡から事前に伝えられていた。
好きにしていいと言ったが、昨夜三人が戻って来なかったとことを考えると、向こうの状況については、青蔡の思惑の通りに進んでいるのだろう。
もっとも、青蔡がなにを考えているのかということについて、宝玄仙は知らない。
青蔡が説明しようとしたが、面倒なので宝玄仙が拒否したのだ。
なにが可笑しいのか、青蔡はそのとき、宝玄仙の反応に愉しそうに笑ったが……。
とにかく、黄袍魔のことなどどうでもいい。
宝玄仙の関心は、いまや白骨のことだ。
この朱姫が優れた嗜虐者だというのは、嬉しい誤算だ。
それこそ、徹底的に残酷なことを思いついて、嬉々としてそれを実行する。
宝玄仙自ら責めるよりもずっと、朱姫が白骨を追い詰める様子を見学するのが愉しい。
今日も、どんなことを朱姫が白骨にさせるのだろうか考えると、本当にわくわくする。
「黄袍魔といえば、沙那姉さんが、一度捕まったあの妖魔王じゃないですか。大丈夫なんですか?」
朱貴が言った。
そう言えば、朱姫には、詳しいことは伝えていなかったかもしれない。
「まあ、青蔡がいるんだ。心配はないだろうさ。隠棲していたとはいっても、そこそこの術遣いだからね、あの男も。まあ、一流の部類に入るだろうね」
「ご主人様とどっちが上ですか?」
「わたしは、一流の道術遣いの中には入らないね。それより上だ。別格さ」
宝玄仙は笑った。
「いずれにしても、じゃあ、まだ、何日も時間があるんですね」
「そういうことだよ、朱姫。孫空女はともかく、沙那は妙に真面目だからね。なんだかんだいっても残酷なことはできないから、なにかと邪魔をするしね。そう言いながら、剣を持たせれば、相手の喉笛でも腕でも、容赦なくぶった斬るくせにねえ。わたしは、血を見るのは嫌だねえ……。ねえ、朱姫、お前は、わたしと沙那とどっちが残酷だと思う?」
「冗談じゃないですよ。比べものになりません。文句なくご主人様です。沙那姉さんは、優しいです」
朱姫は言った。
「でも、人を殺すだろう?」
「沙那さんが人を殺めるときは、ご主人様やあたしたちを護るときです。やはり、お優しいです」
「じゃあ、孫空女は?」
「孫姉さんは、残酷とはほど遠い性格です。からっとして、陰湿さはありません」
「それなら、わたしとお前ならどうなんだよ?」
「あたしは、ご主人様の方が、陰湿で残酷だと思うんですが」
「そうかい? じゃあ、白骨は、あのままでいいのかい? あれは、もうす頭の線が切れちまうよ。もう、そうなっているかもしれないけど」
「あたしは、ご主人様が助けてくれなければ、あの白骨に獣に変えられていたんです。だったら、同じ目に合わせてやります。沙那姉さんが戻るまでは、死んだ方がましな目に合わせ続けます」
朱姫はきっぱりと言った。
やっぱり、残酷で陰湿な娘だと思った。
まあ、今回、沙那がこの場にいないのは、白骨の不幸というものだろう。
朱姫ではないが、沙那たちが戻ってくるまで、たっぷりと遊んでやろうと宝玄仙は思っている。
「ところで、ご主人様、面白いものがありましたよ」
食事が終わると、朱姫が卓の上のものをさげながら言った。
「面白いもの?」
「少しお待ちください」
朱姫は、食器を厨房に片づけにいった。
戻ってきたときには、同じ形の三本の茶色の小瓶を盆に乗せてきた。
「これです」
朱姫は、それを卓の上に置いた。
「これはなんだい、朱姫? 開けても大丈夫かい?」
「開けても構いませんが、中の液体には触らないでください。大変なことになりますよ」
「大変なこと?」
宝玄仙は、蓋を開けた。中には透明の液体が入っている。少し甘い蜜のような香りがする。
「発情した雌妖の分泌液です。魔力で合成したもののようですが、これをかけると、雄妖が襲ってきますよ」
朱姫が妖しく微笑んだ。
「ほう、どうするんだい。これを?」
「妖魔の檻に放り込んでいるふたりのどちらかに使おうかと……。でも、ご主人様が、それは、残酷すぎるからやめろと言うならやめますが……」
朱姫はそう言って、意味ありげな視線を宝玄仙に送ってきた。
「そりゃあ、残酷だね。これ以上、ないくらいにね――。さすがのこのわたしも、そんなことは思いもつかないよ」
宝玄仙は言った。
そして、立ちあがった。
やっぱり、朱姫はいい。
こんなこと、宝玄仙には思いもつかなかった。
「だから、すぐやるよ。男をいたぶるのは趣味じゃないけど、お前を酷い目に合わせた酬いだ」
すると、朱姫が嬉しそうに微笑んだ。
*
ふたりで、一階の最奥の部屋に向かった。
そこには、ここにいた白骨たちが集めた雄の妖魔三匹が檻に入れられていた。
だから、常に欲情させていて、いつでも射精ができるように飼育しているところだったようだ。
部屋に入った。
十ほどある檻の中に、三匹の妖魔が別々に閉じ込められている。
そして、残りの空いた檻に全裸にした千鬼と十全を別々に入れている。
壁に拡がっている檻の右端が十全で、左端が千鬼だ。
宝玄仙たちがやってくると三匹の妖魔が咆哮した。
この妖魔は、人間でも雌妖でも、近くに寄れば狂ったように発情する。
そういう風に調教されているらしい。
その喧騒の中で、檻の中の十全と千鬼がこっちに苦しそうな表情を向けた。
ふたりとも、鎖で繋がった鉄輪を足首に嵌められている。
そして、腕はやはり鉄の手錠を後手に嵌めている。
ふたりの股間には、根元を霊具の革紐で締めつけていて、ふたりの男根は、みっともなく勃起していた。
なにしろ、その檻の中には、内部の妖魔を激しく発情させる淫霧が常に充満されているのだ。
別に、宝玄仙と朱姫がそうしたわけではなく、最初からそういう仕掛けになっていた。
そのまま、このふたりを、全裸にして拘束してから、放りこんだだけだ。
「は、白骨様は……?」
檻の中の十全が虚ろな眼をしながら言った。
宝玄仙は、朱姫とともに十全のいる檻に歩み寄った。
「お前が心配することじゃないよ、十全。それよりも、あたしのあげた食事がまだ、残っているじゃない。次に様子を見に来るまでに、皿を空にしておけと言ったはずよ」
朱姫が言った。
見ると、檻の中に餌用の皿があり、その中に悪臭のするどろどろのなにかが乗っている。
宝玄仙には、それが食べ物のようには思えなかった。
動物の吐いた嘔吐物と言われた方が納得できる。
それでも、半分くらいは、十全は食べたようだ。
口の周りには、その「食物」のかすがついている。
「さっさと、食べるのよ、十全」
朱姫が、檻の格子を思い切り蹴飛ばした。
十全が怯えたような顔になり、泣きそうな顔で皿に口をつけた。
「なんだい、あれは?」
宝玄仙は、悪臭に鼻を押さえながら言った。
「妖魔用の餌です。ここにいるときには、あたしも食べさせられました。もっとも、寄生虫を身体に植え付けられた後でしたけど……」
朱姫は反対側の端の千鬼に向かって歩いていく。
千鬼は、十全ほどは屈服しきっていないようだ。
朱姫がそばによると、不貞腐れたような顔を朱姫に向けた。
「お前は、食事にまったく手を付けていないね、犬」
朱姫が言った。
どうやら、朱姫は、千鬼については“犬”と呼んでいるようだ。
「ふ、ふざけるな。妖魔の餌じゃねえか。こんなものが食えるか」
全裸で怒張を勃起させられている十全が喚いた。
服を着ているときには老人に見えた千鬼は、裸に剥いてみれば、意外に若い身体をしていた。
実際には、まだそれほどの老境ではないのだろう。
相手を油断させるために、わざと老人に見せかけているに違いない。
「よくも、あたしに、そんな口をきけたわね、犬」
朱姫は、腰に提げていた鍵束で千鬼の入っている檻の扉を開けた。
千鬼がすぐさま動こうとするが、朱姫がぱちんと指を鳴らすと、急に動かなくなった。どうやら、縛心術による暗示を事前にかけていたようだ。
そして、ずかずかと入っていくと、胡坐をかいて壁にもたれていた姿勢で動かなくなっている千鬼の男根を足でいきなり踏みつけた。
「がぐああああぁぁぁ──」
千鬼が絶叫した。
それにも構わず朱姫は、ぐりぐりと千鬼の男根を床に踏み潰している。
千鬼はもがいているが、朱姫は容赦なく力を入れているので、男根を足の下から取り出すことができないでいる。
凄いことをするものだと、さすがの宝玄仙も驚いた。
「汚れたわ。舐めな、犬」
やっと足をどけた朱姫は、草履の裏を、横に倒れている千鬼の顔につきつけた。
朱姫の草履の裏には、千鬼の男根の先から漏れ出ている精液がついている。
「ふ、ふざけるな、小娘──。調子に乗りやがると容赦しねえぞ」
千鬼が怒りの表情を朱姫に向けた。
「躾けてあげるわ、犬。とにかく、こっちに出ておいで。この檻の空気はこのあたしもおかしくなりそうだから」
朱姫は、持っていた腰袋から、なにかを出して、千鬼の男根の先端に差した。
「あがあぁぁっ──」
千鬼が絶叫した。
朱姫は、千鬼の男根の先端の尿道口に太い釘のようなものを差し込んでいたのだ。
霊具だ。放出している霊気でわかる。
どうやら、霊具を突き差した千鬼の尿道の中で、その釘の先端が拡がったようだ。
これで、もう朱姫が霊気を注がなければ、その釘が千鬼の男根から外れない。
その釘の男根から飛び出している部分には、丸い小さな輪があり、朱姫はそこに細い鎖を繋げた。
「おいで、犬……。もう動けるはずよ」
朱姫は、その鎖を引っ張って千鬼を檻から引っ張り出した。
千鬼が悲鳴をあげながら出てくる。
「跪くのよ、犬」
朱姫は、持っていく鎖を思い切り床に向かって引いた。
「ひぎいぃ――。や、やめてくれえ――」
さっきまでの威勢の良さはなくなり、千鬼は情けない泣き声をあげた。ふと見ると、十全が、上気した顔をこちらに向けて震えている。
宝玄仙と視線が合うと、慌てて顔を皿に戻した。
「すみません、ご主人様。あたしは、こうやって押さえていますから、例の液体をこの犬のお尻にかけてもらえますか?」
「これかい?」
妖魔の淫欲液とかいう液体の入った瓶は、この部屋の入口にあった台に置いていた。
宝玄仙は、瓶を持ってくると、ひと瓶全部、千鬼の尻にぶちまけた。
その途端、匂いを嗅いだ檻の中の妖魔たちが興奮して騒ぎ始めた。
「あら、ご主人様、ほんの少しでいいんですよ。そんなにかけたら、半日は、匂いが取れずに、妖魔に犯され続けることになっちゃいます」
朱姫は言った。
「おや、そうかい。まあ、知らなかったんだよ。でも、かけてしまったものは、仕方ないじゃないね。あの妖魔たちに半日も尻を掘られれば、肛門は裂けてしまうと思うけど、そのときは、わたしが『治療術』で直してやるさ。そのくらいの情けはあるよ。お前と違ってね、朱姫」
「酷いですよ、ご主人様。それに、妖魔は三匹もいるんです。沙那姉さんたちが、戻るまで数日はあるでしょうから、少しずつ使わないと……」
朱姫は、事もなげに言った。
「や、やめてくれ―――。た、頼む」
やっとこれからなにをさせられるかわかり、千鬼は絶叫した。
だが、この小さな嗜虐者は容赦ない。
再び、腰の袋に手を入れると、小さな壷を出して、蓋を開けてから、千鬼の後手に渡した。
「あたしにも情けはあるわ、千鬼。それは、お前たちの調教部屋にあったものよ。多分、お尻の穴の滑りをよくする潤滑剤でしょう? それを身体の敏感な場所に塗ると、猛烈な痒みが生まれるのよね。少しだけ、待ってあげるわ。自分のお尻に擦りこみなさい。少しは、ましになると思うから」
「そ、そんなこと……。ほ、本当にこのまま、妖魔の檻に放り込むつもりか、朱姫? か、勘弁してくれ」
「塗らないなら、そのまま入れるわ。あたしには、そうしたでしょう」
朱姫は、千鬼の男根に繋がっている鎖を引っ張った。
「ひいっ――。待ってくれ。塗る。塗るから――」
「早くしなさい。歩きながらでも塗れるでしょう?」
朱姫は、千鬼を手近な妖魔の檻に引っぱっていく。
千鬼は、泣き顔で後手で懸命に自分の肛門に潤滑剤を塗りたくっている。
朱貴と千鬼が近づくと、淫欲液の匂いが強くなったのか、もの凄い声で妖魔が咆哮した。
「ご主人様、申し訳ありませんが、少しの間、妖魔を抑えていただけますか?」
「おやすい御用さ」
この建物内は、白骨の結界から、宝玄仙の結界に置き換わっている。
いくらでも宝玄仙は魔力を自由に操れる。
檻の中の妖魔が、宝玄仙の道術により壁側に貼り付けられた。
朱姫が檻を開き、男根に繋がった鎖の端だけを格子に通した。
そして、格子から檻の外側方向に出ている端末をこちら側に出して引っ張る。
「ひいっ、や、やめくれえっ、助けてくれ──」
さすがに千鬼が泣きわめく。
構わずに、朱姫は格子から出ている鎖をどんどんと外に引く。
自然に千鬼の身体が檻の中に引き込まれ、さらに男根を格子の外に出して、妖魔に背中を向ける態勢になった。
朱姫は、千鬼の淫茎の先に繋いだ鎖を檻の格子に巻きつけて結んで、千鬼が格子に密着した状態から逃げられないようにした。
「また、昼ごろ覗きに来るわ。それまで愉しむのね。あんたにはさんざんにお尻を犯されたものね──。この朱姫様の仕返しの恐ろしさを思い知るといいわ、犬」
朱姫が、檻の鍵をしてから眼で合図をした。
宝玄仙は、妖魔を抑えていた道術を消滅させる。
「アギャギャギャギャギャ」
「ぎゃあああ―――」
妖魔が千鬼の尻に飛びかかった。
千鬼は悲鳴をあげて仰け反る――。
朱姫は、もう千鬼を見てもいなかった。
今度は、十全に向かって歩いて行く。
十全の皿は空になっている。
「さて、次は、お前よ、十全」
朱姫は檻の外から十全を睨んだ。
十全は恐怖の色を顔に浮かべている。
「お前には、自分の運命を選ばせてあげるわ。あそこで泣き叫んでいる犬と同じ目に遭うか、それとも、地下にぶら下げている雌を壊すのに協力するかよ。どっちでもいいわ」
十全が考えていたのはほんの少しだった。
「め、雌を壊すのに協力します……」
十全は言った。
妖魔の狂ったような雄叫びに混じった千鬼が泣きじゃくる声は、この部屋中に響いている。
同じ目に遭いたいとは考えないだろう。
もちろん、雌というのが、白骨のことだというのは理解しているに違いない。
白骨を裏切る決心をしたということだ。
「いいわ。枷を外してあげる。そして、股間の霊具もね。あの雌を妖魔専用の繁殖用の雌にしたいの。できる?」
「できます。地下の道具を使えば、人間の女に妖魔の子が産めるよう身体を作りかえることはできます。子宮や膣内に特殊な寄生虫を植え付ける必要がありますけど……」
十全は、今度ははっきりと言った。
「じゃあ、やってちょうだい。それほど時間がないの。三日くらいしかないと思うだけど、そこにいる妖魔の精を受胎させるまでできる?」
「寄生虫により、受胎可能日を調整できますが、さすがに三日では受胎を確認することは不可能です。確実に妊娠させるには、二箇月は必要です」
十全は言った。
「それでもいいわ。じゃあ、早速初めて――。そのたぎったものは、地下の雌を使って癒してきて構わないわ」
白骨に妖魔の子を妊娠させるという発想に、宝玄仙はさすがにぞっとして、朱姫の横顔を眺めた。