「いぐうううっ」
朱姫は絶叫した。
徹底的な焦らし責めと、繰り返し舐められた素蛾の唾液の媚薬効果により、朱姫の頭は肉の悦びを求め狂ってほとんど朦朧とした状態だったのだ。
そこで与えられた三度連続の絶頂は朱姫を悶絶させるのに十分だ。
寝台の上でたったいままで朱姫を責めたてていた張形を手にしている素蛾が、そんな朱姫を満足そうに眺めながらくすくすと笑った。
「さあ、朱姫姉さん、動いていいですよ。動くなという命令を解除します。次は朱姫姉さんの番です。素蛾に罰を与えてください……」
素蛾がごろりと寝台に寝そべり、朱姫に向かって大きく股を開く。
そこにはすっかりと欲情している童女の裸身があった。
きっとお蘭の縛心術ですっかりと欲望を解放されたような状態になっているのだろう。
素蛾に責められるあいだ、自由を失っていた朱姫の身体はやっと自由を取り戻した。
ただ、素蛾に装着された『服従の鎖』によって支配されていることに変わりない。
まだ、朱姫の息は荒い。
絶頂の余韻が朱姫を包んでいる。
素蛾の手にしていた張形が、朱姫の蜜まみれのまま、朱姫側に寝台の上をころころと転がってきた。
だが朱姫はそれを一瞥しただけで無視した。
すると、それを認識した素蛾の顔が失望を浮かべた気がした。
この部屋で朱姫と素蛾は素裸になって寝台にいる。
ここで朱姫は、素蛾の「命令」によりこの摩雲城の主要な者のすべてに『縛心術』をかけ、『服従の鎖』の装着を終わった「ご褒美」をもらっていたところだ。
素蛾と朱姫で、この摩雲城に残っていた主立つ者に服従の鎖を付け終わるのに二刻(約二時間)もかからなかった。
ある程度は準備もしていて、しかも周到に計画されていたようだ。
操られている状態とはいえ、素蛾の意外な手際のよさの一面を垣間見た気がした。残念だが、さすがは元王女だ。やることに隙はない。
とにかく、これで摩雲城は完全に素蛾の支配に陥った。
ただ、それに気がついている兵などまだいない。
支配された者たちだって、お互いにそれについて語ることや、相手に悟られる行動を禁じられたので、自分自身以外の誰が素蛾に服従の鎖を装着されたのかはわからないはずなのだ。
いや、むしろ、彼女たちを陥れて、自分たちに操り霊具を装着したと思っている「犯人」は朱姫だ。
朱姫が素蛾に支配されてやったことであり、誰でもなく朱姫が縛心術で服従の鎖を装着させ、その受け入れを口にさせたのだ。
素蛾など一緒についてきただけの体裁であり、その素蛾こそが「反乱」の首謀者などを考えるわけもない。
また、素蛾は服従の鎖を装着するときに、普段は衣類の影になって見えない場所にそれぞれ装着させていた。
ほぼ全員が素蛾の支配に陥っていることを明確に知っているのは、多分朱姫だけだと思う。
なんとか隙を見つけて、素蛾を出し抜こうとしたが、服従の鎖という霊具で支配されていては、それはまったく困難だった。
「はあ、はあ、はあ……。ね、ねえ、素蛾、こっちを見なさい……。お前は縛心術をかけられているのよ。支配されているの──。それを自覚しなさい──。それに、さっきの沙那姉さんからの通信球を聞いたでしょう。お蘭は影法師だったのよ。あたしたちの敵だったのだわ。お前はそれに操られているんだってば──」
朱姫は、なんとか息を整えながら一生懸命に言った。
同じ言葉を何度繰り返しただろう。
だが余程に強力な暗示らしく、素蛾は正気に戻る片鱗すら示すことはない。
いまもそうだ。
素蛾が摩雲城を支配するために動き回っていた途中で、沙那から緊急連絡として摩雲城の首脳陣に連絡があり、戦場で牛魔王を殺したことと、お蘭が御影の影法師だったことの報せが入ってきた。
詳しいことは本隊がこの摩雲城に戻ってからということだったが、戻るのは明日以降だ。
無論、こちらの異変を宝玄仙たちに伝える方法はなかった。
朱姫は、その通信球が素蛾の暗示を解くきっかけになるかもしれないと期待したが、素蛾はただけらけらと笑うだけだ。
影法師だったらしいお蘭は死んだようだが、素蛾の暗示が解ける様子はない。
まあ、後縛心の暗示は術者が死んでも有効だ。
それは朱姫も知っている。
暗示のもとになっている霊気は、すでに素蛾自身の心に刻まれてしまっているのだ。
「ふふふ、朱姫姉さんも意地悪ですね。やっぱり命令しないと素蛾を苛めてくれないのですか? でも、素蛾はこんなに悪いことをしたんですよ……。だから、素蛾のことをうんと罰してください。素蛾は朱姫姉さんに罰を与えて欲しいのです」
素蛾が寝台で微笑んだ。
朱姫は嘆息した。
服従の鎖のために道術を封じられている朱姫だが、朱姫は道術なしでも縛心術をある程度なら扱える。
特に、素蛾のように人間族の場合は、むしろ道術なしの縛心術でなければ、本来は効果がないのだ。
だが何度も試したが駄目だった。
どうしても素蛾を正気に戻せない。
あのお蘭が素蛾にかけた暗示が強すぎるのだが、や、むしろ、正気になってはならないという素蛾の潜在意識が強すぎるとでも言おうか……。
「ねえ、まともになってよ、素蛾──。お前はそうしようとすればできるのよ。いつもの素蛾に戻りなさい。そう欲するだけで暗示の効果は半減する──。そうすれば、あとは簡単にあたしがお前に刻まれた縛心術など解いてあげるから──」
朱姫は言った。
「駄目です。そんなことをしたら、わたくしは皆さんに捨てられてしまいます。朱姫姉さんと別れなければならなくなります。それに、わたくしは何者にも操られておりません。これはわたくしの意思です。わたくしは朱姫姉さんに捨てられたくないのです」
「これ以上、正気に戻る努力をしないのなら、本当に嫌いになるわよ──」
朱姫は怒鳴った。
すると、素蛾が一瞬硬直した。
だが、すぐに顔が険しくなった。
「だったら、無理矢理にでも朱姫姉さんを奪います。朱姫姉さんだけをどこかに連れて行きます。あとはご主人様をなんとかすれば、朱姫姉さんは完全にわたくしだけのものです」
素蛾は言った。
朱姫はまた嘆息した。
さっきからずっと同じやり取りをしている。
いまだに、素蛾の暗示を解く糸口は見つけられない。
素蛾に与えている暗示は、素蛾の隠れている欲望と隠れていた劣等感に結びつくように与えられている。
だから、素蛾の潜在意識がこの暗示を解いてはならないと強く働いているのだ。
従って、それを打ち破るようなきっかけがない限り、素蛾の縛心術は解けない。
しかし、逆に言えば、素蛾がいまの状況が不満と考えるようななにかがあれば、暗示を解くこともできるということだ。
つまりは、素蛾の潜在意識の意思によるのだ。
もっとも、いまのところ、素蛾の意思の強さが暗示を解くことを邪魔している。
いまだに、素蛾の潜在意識を暗示を解く方向に傾けることができない。
つまり、こうやって摩雲城を乗っ取るという行為は、素蛾が朱姫を独占したいという欲望に繋げられているのだ。
また、素蛾はそうしなければ、いつかは自分は朱姫たち四人から離れなければならないという脅迫観念を抱いてしまうようにされているのだと思う。
さらに、おそらく元々の素蛾の心の潜在意識に、ほかの四人に比べて自分があまり役に立たないという劣等感があったみたいだ。
それが、この乗っ取りの動機づけとされている。
即ち──。
自分は五人の中で大して役に立たない……。
事実、今回の迎撃作戦でも、ひとりだけ、なにもすることなく留守番になった……。
この戦いが終わった後、役に立たなくなった素蛾は、故郷の王国に送り返される可能性がある。
それは、素蛾がいなくても、宝玄仙や朱姫は問題がないからだ……。
それを防ぐためには、この摩雲城を乗っ取り、宝玄仙たちを監禁する手筈を整え、追いかけてこられないようにしてから、朱姫を奪えばいい……。
脈絡のない論理だが、これを繰り返し暗示されて、心に刷り込まれているのだ。
だから、その手段の第一として摩雲城を乗っ取った。
やっとそこまではわかった。
しかし、まだなにかを企てようとしている気配だ。
だが、そのためにどういうことをやろうと考えているということまではわからない。
素蛾に与えられている強い暗示の奥にまだ隠されているのだと思う。
「ねえ、そんなことよりも、素蛾を罰してくれないのですか、朱姫姉さん? 素蛾はこんなに悪いことをしたんですよ」
素蛾が未成熟の股を大きく開いた。
朱姫はまたもや嘆息した。
素蛾が朱姫が説得しようとすればするほど、頑なに、悪いことをしたから罰してくれという言葉を繰り返す。
おそらく、これも暗示によるものだろう。
素蛾の被虐癖を活用して、悪意に関する気持ちを極端に弱められている。
それが素蛾の心の中の仲間への裏切り行為への抵抗を消失させているのだと思う。
「お蘭は死んだわ……。ご主人様たちから連絡が入った。死んだのよ……。お前がなにを考えていたかわからないけど、死んだの──。だから、もう無駄なのよ。ねえ、この足首の鎖を外して? そうだ。愛してあげる。これを外してくれたら、いっぱい、いっぱい愛してあげるから」
朱姫は怒鳴った。
すると、素蛾は少しだけ寂しそうな表情になった。
「まだ、そんなことを言うのですか、朱姫姉さん……。きっと、それは素蛾がまだ悪いことをし足りないのですね。じゃあ、こうしてあげます。じっとしてください、朱姫姉さん。命令です」
素蛾の「命令」という言葉で、一瞬にして朱姫の裸身は凍りついた。
「ひいっ──。なに──?」
朱姫は寝そべっている素蛾の足元に座っていたが、まったく動けなくなった。
素蛾は寝台を降りて荷物置き場に向かい、なにかを始めた。
だが、それは朱姫の視線の後ろであり、動くなという命令を与えられた朱姫には見えない。
やがて、素蛾が戻ってきた。
素蛾が持ってきたのは双頭の張形だった。
半分を女の股に挿すと、女の股間に男性器が生えたようになり、それで女同士で愉しむという淫具だ。
動けなくなった朱姫の股間にゆっくりと素蛾がそれを挿入し始めた。
「うっ、くっ」
朱姫は挿入とともにやってくる甘美感に思わず身体をのけぞらせた。
達したばかりで敏感になっていた身体に、再び強い快感が襲う。
そのとき、朱姫には素蛾が反対の手に小壺を持っているのが見えた。
素蛾が朱姫の女陰に挿入している側にはその小瓶からすくった粘性の薬剤がたっぷりと塗られている感じだ。
「な、なにを塗ったの……?」
はっとして朱姫は声をあげた。
そして、すぐに始まった異様な感触に歯を食い縛った。
ぞわぞわとした痒みが股間から拡がる。
「か、痒い……」
朱姫は悲鳴をあげた。
「つまらないことばかり喋る朱姫姉さんにはこうしてあげます。痒くて死にそうになるご主人様の薬です。それをたっぷりと塗ってあげました。さあ、命令です。朱姫姉さんはそれを許可なく抜いてはいけません」
素蛾が愉しそうに笑いながら、さらに双頭の張形が貫いている朱姫の股間の周りに薬剤を塗り込んでいく。
しっかりと肉芽にも何度も重ね塗りをされた。
朱姫はおぞましさと、すぐに襲ってきた強烈な痒みに顔をしかめた。
だが、動くなという命令で身体は動かない。
そして、素蛾が今度は朱姫の背後に回った。
なにかがお尻に当たったと思った。
すぐに冷たいものがお尻の中に注ぎ込まれる感触が襲った。
「ひうっ」
それはあっという間のことだったが、かなりの量の液体が流れ込んだ気がする。
「な、なにを入れたのよ──?」
朱姫は驚いて怒鳴った。
素蛾はいつの間にか、長細い革状の袋を持っていたのだ。
「ご主人様の浣腸剤です。浣腸袋の霊具で注入しました。薬剤は薄めずに使いましたから、すぐに効いてきます……。じゃあ、行きましょうか……」
朱姫から離れた素蛾が口元を押さえてくすくすと笑った。
そして、朱姫の首に首輪を巻いた。
その首輪には鎖がついていて、その先を素蛾が持っている。
「い、行くって、どこによ──?」
驚いて叫んだ。
「廊下に行くんです。部屋の外に行きますよ、朱姫姉さん……。このくらい悪いことをすれば、朱姫姉さんも素蛾のことを罰してくれますよね」
素蛾が笑った。
そして、鎖を引っ張られる。
愕然として抵抗しようとしたが、ついてこいという「命令」を与えられてしまい、朱姫は素蛾に引かれて歩かざるを得なくなる。
「ま、待って、裸で──? は、恥ずかしいわよ──。しかも、こんなもの挿入して──」
朱姫の裸身には股間から勃起した男性器の張形がそそり勃っている。
「わたくしは、ちっとも恥ずかしくはありません。朱姫姉さんと一緒ですし……」
「あたしが恥ずかしいのよ──」
朱姫は言った。
しかも、歩くと股間に挿入されている張形が擦れる。
さらに、強い便意も襲ってきた。
さらに、張形に塗られている薬剤が朱姫に本格的な痒みまでもたらしてくる。
張形の疼き──。
股間の痒み──。
強い便意──。
首輪で引かれる屈辱──。
そして、裸身をさらけ出す羞恥──。
五重苦に朱姫は泣き声をあげた。
だが、素蛾は容赦なく扉を開いて部屋の外に朱姫を出してしまった。