「あがああ──。や、やめないか……。や、やめっ──」
お宝は惨めな悲鳴をあげていた。
しかし、魔凛の乗馬鞭が容赦なくお宝の尻たぶを思い切り引っ叩いた。
「うぐうっ、ひいっ」
お宝は無意識のうちに、身体を捻った。
その瞬間に、指錠を根元に喰い込まされて吊られている親指に激痛が走る。
すでに指の感覚はない。最初の頃こそ、手で鎖を握って指に体重がかかるのを防いでいたのだが、いまはその力もない。
ただお宝の身体はだらりと親指でぶら下がっているだけだ。
「鞭打ちを選んだのは自分だろう、お宝──。だったら、少しは我慢してみせないか」
今度は鳴智が前側から左の太腿の内側を乗馬鞭で叩いた。
「あ、あがああっ──。な、なにが……自分でえ、選んだだよ……。く、くそっ」
「まだ、そんな生意気な口がきけるのかい、お宝」
魔凛の鞭が尻に当たる。お宝は呻き声をあげた。
もう前後に立っている鳴智とお宝から受けている乗馬鞭による鞭打ちは数十発にもなっているだろう。
唯一身に着けていた腰の下着はとっくの昔にぼろ布となって、足元に落ちていた。
また、心神鞭を腰に差したままの鳴智は、いまはお宝を叩く道具を魔凛と同じように乗馬鞭に持ち替えていた。
ずっといたぶられていたくすぐり責めだったが、息もできなくなるほどに苦しめられ、そのとき、このふたりから、このままくすぐりを続けるか、それとも鞭打ちに変えるかを選べと強要された。
果てしないくすぐり責めに音をあげていたお宝は鞭を選んだ。
そして、始まったのが、前後に分かれたふたりがかりのこの鞭打ちだ。
お宝はもう見栄を張る力もなく、悲鳴をあげ続けている。
「思い出すねえ……。随分と昔になるけど、本物の宝玄仙をこうやって毎日苛めてやったものさ。偽者はやっぱり泣きべそかくのが早いんじゃないかい。本物はもう少し我慢強かったよ」
“偽者”という言葉がお宝の神経を突き刺した。その言葉がお宝が一番嫌うのを知っていて、鳴智はそれを連発しているのだ。
そして、今度は鳴智の鞭はお宝の乳房の横を叩いた。
「ひぎゃあああ」
朦朧となりかけた頭がいまの一撃で一気に覚醒する。
「わたしもこんな日がくるなんて、思いもよらなかったね──。自殺したいと何度も思ったものだったけど、生きていてよかったよ」
そして、魔凛の乗馬鞭が尻たぶの下の腿を打つ。
「ひいっ」
お宝は不自由な身体をうち震わせた。
ふたりの叩き方は、ごく軽い感じのようなのだが、一発一発が耐えがたい激痛を発生する。
それが果てしなく続いているのだ。
打たれるたびにお宝は裸身を前に後ろにと身体を反応させ、そのたびに指に激痛が加わり、悲鳴をあげなければならなかった。
たったいままで、さんざんにいたぶっていた女奴隷たちに鞭で打擲される……。
こんな屈辱があるだろうか──。
お宝はあまりの口惜しさに歯を食い縛った。
「おや、ついに泣き出したのかい?」
そのとき、鞭を振りあげた格好で手を止めた鳴智がわざとらしく声をあげた。
「あらあら、本当だわ。泣き出したわ」
前に回り込んできた魔凛が嬉しそうに声をあげた。
そんなはずはない──。
お宝は叫ぼうとしたが、魔凛がお宝の顔に手を伸ばして、すっと目の下から涙をすくったことで、本当に涙を流してしまったのだと思った。
「……じゃあ、そろそろ調教を始めようか、お宝……。覚悟はいいね?」
鳴智が鞭の先でお宝の顔を無理矢理にあげさせて言った。
「は、始める?」
お宝は思わず言った。
指吊りにくすぐり、そして、鞭打ちとずっと激しい調教を受けている。そろそろ始めるというのはどういう嫌がらせだろう……?
「なんだい、お宝──。まさかとは思うけど、もう調教が始まっていると思っているんじゃないだろうねえ? 調教というのは心を潰す行為だよ。こんな鞭はただの挨拶だ……。これから十日間、御影様が戻るまでにみっちりと躾けてやるよ、お宝。その頃には、お前はすっかりと従順なわたしたちの雌犬に成りさがっていて、御影様になにかを告げ口しようという気はなくなっているさ。それが心を潰すということだよ」
鳴智が笑い声をあげた。
そして、魔凛が鉄格子の向こうに一度消えていった。
鉄格子には鉄の格子の出入口があるのだが、そこは開け放たれていた。
廊下には、お宝をいたぶるための道具をいろいろと準備している気配だ。
すぐにその魔凛が小さな車輪のついた台車を牢内に運んできた。
はっとした。
魔凛が牢の中に持ち込んだのは、大きな容器に山盛りになった山芋のようだった。
それが全部するおろされて“とろろ”になっている。
「わたしと鳴智で準備してやったものだよ、お宝。さっきわたしに挿入させた張形に塗った掻痒剤も混ぜてやったよ。すっかりととろろと解け合わさって、こうやって匂いをかくだけで、身体が痒くなりそうさ」
魔凛が台の上から薄地の手袋をとって手にはめた。鳴智も同じようにしている。
「まあ、あんたもわたしたちに何度も使ったから、痒み責めの効果はよくわかっているだろう。それとも、自分で受けるのは初めてかい?」
鳴智がさっそくとろろを手袋をはめた手ですくって、お宝の乳房に塗りたくり始めた。
「まあ、古典的といえば古典的だけど、効果があるから古い拷問手段になるのよね」
魔凛もお宝の股間に手をやって、掻痒剤入りのとろろを花唇と菊座に詰め込み始める。
「な、なにをするんだい──。ああっ、うぐうっ──や、やめないか──」
お宝はとろろを身体に塗られる異様な感覚に悲鳴をあげた。
しかし、指の痛みが酷くて身体を捩じることさえできない。
そのあいだにも、鳴智とお宝は次々にとろろをすくっては乳房や股間にまんべんなくすり込んでくる。
特に乳首や股間、そして、肛門には何度も重ね塗りされた。
もちろん、肉芽についても、表皮を剥いてすりつけてくる。
「さあ、終わりだよ、お宝……。どのくらい我慢できるかね。女主人として矜持を守りたいなら必死で耐えてみな。だけど、我慢できなくなったら、わたしたちに対して、雌犬として躾けてくれと口にするんだ。そうしたら、痒みを癒してやるよ」
鳴智が宙吊りにされているお宝の前に立って言った。
「め、雌犬──?」
「そうよ、お宝。立派な雌犬に仕上げてやるわよ。とにかく、お前がわたしたちの雌犬だと宣言する──。それが調教の開始よ」
魔凛も心の底からのような笑い声をあげた。
「だ、誰が、お前たちに……」
お宝はぎりぎりと歯を噛み鳴らした。
だが、早くも敏感な場所に浸み込んだ薬剤入りのとろろの成分が、お宝の身体に強い掻痒感を呼び起こしていた。
「う、ううっ……あ、あがあ……か、痒い……く、くそう……か、痒い……お、お前たち……ふ、ふざけたことを……」
両親指の激痛も忘れて、お宝は髪を振り乱して顔と身体を振り乱した。
意識してしまうと、痒みはもう収まらない。
一瞬ごとに、どんどん痒みは増長していく。
「雌犬の誓いだよ、お宝──。そうしたら、痒い場所を掻いてやるよ」
鳴智が嘲笑の声をあげた。
*
「痒い……痒い……」
指の痛さを忘れて、お宝は身体を強く揺すっていた。いや、指の痛さが激しいだけ痒みを少し忘れることができた。
その間、鳴智と魔凛は牢の外から持ち込んだ小さな卓を牢の隅に置いて、そこで食事を始めていた。
口にしているのは小さな鍋で煮た雑炊のようなものだ。
それを椀にとって匙ですくって口にしている。
呻き声をあげているお宝は完全に無視している。
完全に音をあげるまで放置すると決めている感じだ。
お宝の痒みは、時間がすぎるにつれて痛みのようにもなってきた。
いくら経っても、痒みに慣れるということはない。
それどころか、どんどんと我慢できないものになる。
「お、お前ら、こ、こんなの狡いよ……。ああ、か、痒い……」
お宝は脂汗を全身から垂れ流しながら呻いた。
いくら我慢しても防ぐことなどできない猛烈な痒みだ。
「わ、わかった……。胸を……胸を揉んで……お、おくれ……」
お宝はついに言った。
こんな奴隷女に屈服するなど、それだけでも耐えがたい苦痛だ。
「なにか聞こえた、鳴智?」
魔凛がお宝を振り返ることなく言った。
「さあね……。少なくとも、雌犬になる誓いは聞こえなかったわね。それ以外の言葉をお宝がわたしたちにかけるわけがないから、空耳じゃないかい」
鳴智も匙で雑炊を口に入れながら言った。
お宝は腹立たしさにぐっと口を噛んだ。
そのあいだも胸の膨らみが乳首を中心に焼けるように疼いている。それは股間も同じだ。
「な、なる……。お前らの雌犬になる……。だ、だから、胸を……」
ついにお宝は吐き出すように言った。
この痒みには耐えられない。
御影が来てくれるまでの辛抱だ。
最悪でも、御影がやってくれさえすれば、お宝とこのふたりの立場はあるべきものに戻る……。
いま、屈伏の言葉を使うのは一時凌ぎの方便だ……。
それに、あと数刻もあれば、なんとか道術封じの枷を自力で外せるはずだ。
いくら道術封じを嵌められたところで、お宝は並の道術遣いではない。
本来はとても道術を発揮できないような微量の霊気を集めて、枷の自分の霊具として操れるように霊気を注ぎ込むことができるのだ。
そうなれば、拘束を外せる。
御影が戻るという十日を待たずして、このふたりをお仕置きすることもできる……。
とにかく、いまだけは……。
お宝は自分に言い聞かせた。
「胸を揉んで欲しいのね、お宝?」
魔凛が立ちあがって、お宝の前にある台からまた手袋をした。
そして、再びたっぷりと掻痒剤入りのとろろをすくってから背後に回った。
お宝の左右の乳房をぬるぬると握りしめてくる。
「うあああっ──はあああっ──」
なにもかも忘れさせてくれるような快感がお宝の乳房を襲った。
「こんな感じでよかった、お宝?」
魔凛がしばらく新しいとろろを塗り足すように動いていた両手を乳房から離して笑った。
しかし、愛撫がなくなった瞬間に、新たにとろろを塗られた乳房はさらに強い焦燥感に襲われていた。
「も、もっとよ──」
「こう?」
魔凛がからかうように柔らかい手管で乳房を揉んでくる。
だが、その指は少しも乳房に喰い込むことがないような軽いものであり、ほとんど表面をそっと撫ぜるくらいでしかにない。
わざとらしい嫌がらせに腹が煮え返りそうになったが、それに屈服しなければならない切実な痒みの苦しみがお宝を襲っている。
「も、もっと強く揉んでよ──。お、お願いよ──」
お宝は泣き叫んでいた。
もう恥も外聞もない──。
躊躇ってもいられない。
「こうね?」
魔凛の指が少しずつ強く乳房に喰い込んでくる。
「ふうううっ」
痒みがほんの少し消える。脳が溶けるかと思うような愉悦が拡がる。
だが、魔凛がまた手を緩める。
そして、また擦るだけような手管に戻る。
「も、もっと、ちゃんと揉むのよ──」
「雌犬らしい言葉が使えたら、力いっぱいに揉んであげるよ、雌犬」
魔凛がまた手袋にとろろを足しながら嘲笑した。
そして、触れるか触れないかの力で乳房の表面をなぞってくる。
「うぐううう──」
お宝は呻いた。
もう、限界だった。
「も、もっと強く揉んで……ください……」
お宝は言った。
自分の中の大事なものががらがらと音を立てて崩れた気がした。
「……魔凛様でしょう?」
「……魔凛様」
もう逆らう気も起きない。
お宝はすぐに言っていた。
すると、魔凛が指をいっぱいに開いて乳房全体を潰すかの勢いでぎゅうぎゅう揉んできた。
「ああっ、いっ、いぎいいっ、おおおおっ──」
お宝は獣のような声をあげていた。
痒みの癒える気持ちよさに盛大な溜息を吐いた。
全身を打ち砕く快感のうねりだ。
お宝は甲高い嬌声を牢内に響き渡らせた。
「ああっ、あっ、ああっ、ああっ……」
お宝は指だけで吊られている痛みも忘れた。
それくらいに快感の奔流が激しいのだ。
しかし、一方で胸の痒みがなくなることで、さらなる苦しみをお宝は感じなければならなかった。
胸以上に、股間と肛門が狂うような掻痒感に追い詰められている。
胸の痒みが癒えることで、掻痒感が消えたのは最初の一瞬だけだった。
魔凛が胸を強く揉んで乳房の痒みが消えていくと、今度は股間が激しく痒みを主張し始めていた。
しかも、放置されていた分だけ、その苦悩は深刻なものにもなっている。
「な、鳴智──。お、お前はいつまで食事をしているんだよ──。こ、股間を擦って──。擦ってよ──」
あまりの痒みに逆上したお宝は、ずっと卓で食事をしたままの鳴智に叫んだ。
すると、鳴智がすっと立ちあがった。
手に竹の水筒を持っていた。
「随分と汗をかいて喉が渇いたでしょう、お宝? あんたにはしっかりと十日間の調教を受けてもらわないとならないから、飢えと渇きで弱らせたくはないのよ。水を飲みなさい──」
鳴智が水筒の口をお宝の口に強引に捻じ込んだ。
嫌な予感がしたが無理矢理に水を飲まされる。
その瞬間、全身の霊気が一度に消失するのを感じた。
道術封じの枷を自分の霊具にするために注ぎ込んでいた霊気も同じだ。
一度にそれが零になる。さらに、全身の筋肉までも弛緩したのがわかった。
「な、なにを……?」
なにを飲ませたんだと言おうとしたが、舌までもつれてうまく喋れない。
「……魔凛、よく覚えておきなさい。こいつは並の霊気じゃないのよ。いくら道術封じをしても、それだけじゃ完璧じゃないわ。一日以上も同じ枷をつけっぱなしにすると、いつの間にか道術封じを外してしまうことがあるわ。だけど、半日に一度、この水に溶かした薬剤を飲ませれば大丈夫。それで、もう霊気は消失するのよ」
「へえ、さすがに鳴智ね」
魔凛がお宝の胸を揉むのをやめて、感心したように言った。
畜生──。
お宝は泣きそうになった。
しばらくすれば、枷が外せると思って、それで気力を振るい起こして、この仕打ちに耐えていたのだ。
だが、鳴智はわかっていたのだ。どこから持ち出してきたのかわからないが、しっかりと霊気を消失させる薬剤まで準備していたのだ。
お宝は歯噛みした。
「さあ、お宝──。股を掻いてあげるわよ。わたしにも、雌犬の挨拶をしてごらん?」
水筒を離した鳴智が、手袋をしながらお宝に言った。
「ま、股を掻いてください……、鳴智様……」
お宝は口惜しさのあまり歯ぎしりしながら言った。
そのため、なんと言っているのかわからないような発音になったと思う。
「聞こえないわね、雌犬」
鳴智はお宝の前で腕組みをして言った。
「そうね。あまりにも小さな声だったわね」
魔凛も鳴智の横に立って笑っている。
「くっ」
お宝は股間を弛緩した腿で擦り合わせるようにしながら歯を食い縛った。
この鳴智にだけは屈伏するのが嫌なのだ。
それだけは……。
だが、耐えることができたのは数瞬だけだ。
「……も、もう許して……股を掻いてください、鳴智様……」
お宝はたまらずに言った。
「聞こえないね」
しかし、お宝の血を吐くような屈辱の言葉をあっさりと鳴智は一蹴した。
仕方なくお宝は同じ言葉を絶叫した。
本当に頭が狂ってしまう。
「まあいいわ」
三回ほど繰り返させてから、鳴智は卓にあるとろろの横の布を外した。
そこには、皮を剥いた山芋が数本あった。鳴智はその中の一本を取った。
「あっ、な、なんだい、それ──?」
お宝は驚愕して叫んだ。
しかし、鳴智は容赦なくその山芋をお宝の股間に触れさせると、一気に女陰に貫かせた。
「おううっ」
お宝は下肢が溶けるような愉悦に我を忘れた声をあげた。
痒みが癒される快感と安堵感──。
それは新たな痒みの追加との引き換えであることはわかってはいるが、いま、この瞬間、お宝は痺れるような甘美感にすっかりと包まれている。
「ああっ、うううっ、いいいっ」
鳴智の持つ山芋が緩やかに抽送を開始した。
あまりの気持ちよさに、お宝はすすり泣きのような声さえ出していた。
「山芋はまだあるよ、お宝? また、おねだりができれば、これで尻穴をほじってあげるわよ」
魔凛が喜悦に震えるお宝の顔の前に、新たな山芋を見せながら言った。
「お尻もして──。お願い、魔凛様──」
お宝はそう口にしていた。
もう、愉悦と掻痒感でまともに考えられるような状態ではなかったのだ。
おねだりをすれば、痒みを癒してもらえる……。
それだけしか考えられなかった。
すぐに魔凛がただれそうに痒い菊座にねじ入れるように山芋を押し当てた。
前からは鳴智──。
後ろからは魔凛──。
女奴隷のように思っていたふたりに、それぞれの穴を山芋で犯されて、お宝は気が狂うかと思うような快感に全身をわななかせた。