「し、死んだ……?」
卓の上に突っ伏している
「呆気ないものね……。魔域の覇王ほどの者が、側女ひとりによって殺されるんだからね……。孫女、よくやったわ」
「あなたの長いあいだの知恵と努力が勝ったのよ……」
美小淋は言った。
御影はこの瞬間を作るために何年も費やした。
それがついに実ったということだ。
雷音に取り入り、色好きの雷音大王に女を提供する女衒だと陰口を言われながら、後宮に籠る雷音大王に近づく唯一の男として認められるほどの信用を作り、孫女という女暗殺者を雷音大王に侍らせることにも成功した。
さらに、雷音大王に取って代わるのに邪魔な牛魔王を、それが可能な唯一の宝玄仙という人間の魔女に殺させた。
この男ひとりの数年ががりの策謀だ。
そして、すべての準備が整うと、御影はまるで熟れた実を樹木からもぐように、呆気なく雷音大王を殺害した。
後宮にずっとひきこもっていた雷音大王は、護衛のひとりも近くに置いてはなかった。
その必要さえも感じていなかったであろう。
美小淋は素裸で汗まみれの御影のために棚から大きな布を出してやった。
御影はそれを衣服のように巻きつけ、布の端を折り込んで裸身を覆う。
影女の身体だった御影は、もう完全な男の身体に変わっている。
つまり、影女は御影の女体としての姿なのだ。
御影は男として女と媾合い、女の影女として男と媾合いをするのだ。
そして、性愛を交わした相手の能力を持つ影法師を作ることができる。
御影の横に雷音大王の身体が出現した。
さっき精を受けたことにより、御影は雷音大王の影法師を作ることができるようになったのだ。
精を受けたときの姿で復元するので、雷音大王の影法師は下袴を膝までおろしたままだったが、雷音大王の姿の影法師は自ら服装を整えた。
そして、その影法師が卓の下に両膝をついて座っている孫女に近づいていく。
孫女は口移しで雷音に霊気の弛緩剤を飲ませた。
孫女自体は道術遣いではないが霊気は身体にあるらしく、雷音大王に口移しで弛緩剤を飲ませたとき、それが自分の身体にも入ってしまったので、それで力が抜けてしまったのだ。
美小淋は最後の力を振り絞るようにして雷音大王の首を折った孫女が、その直後、崩れ落ちるように床にしゃがみこんだのを見ていた。
「孫女、ご苦労さん……。お前の役目は終わりよ」
雷音大王の影法師が言った。
「んぐっ」
孫女が白目を剥いた。
美小淋も悲鳴をあげてしまった。
孫女の胸には、影法師が懐から抜いた短剣がしっかり突き刺されていた。
「……雷音大王が入れ替わったなどということを知っているのは、あたしと美小淋……。それだけでいい……。ほかの者が知る必要はないわ」
喋ったのは美小淋の横にいる御影だ。
御影が雷音大王の影法師を使って用済みになった孫女を殺したのだ。
美小淋は息をのんだ。
「美小淋、まずは孫女の屍体を隠して」
御影が短く言った。
「う、うん……」
美小淋は慌てて道術で孫女の屍体を血飛沫とともに床の下に沈めた。
孫女の身体は、そのまま地中深く潜っていき、いつまでも沈み続ける。
まず、遺体が発見されることはない。
御影の身体がまた分裂して、ひとりの裸の女が出現した。
美小淋はその影法師を知っている。
お蘭という名の宝玄仙の妹らしい。
彼女は魔域でも滅多に遣える者がいない『魂の術』を操るという女ということだ。
もちろん、これは影法師だが、本物のお蘭と同じ能力を持つ影法師は、その『魂の術』を遣うことはできる。
そのお蘭の影法師が卓の上の雷音の屍体に手を伸ばした。
「大丈夫? 取り出せる?」
美小淋はつぶやいた。
「多分ね……。生きている者の道術石を取り外すのは極めて難しいけど、死んでいれば、逆に死んだ魂にくっついていた道術石は分離しようとするのよ。簡単に外せるわ……。いずれにしても、生命のないところに放っておけば、道術石は力を失くしてしまうから、死んだ身体からは、すぐに抜き出さないとならないわ。道術石……、即ち、魂の欠片は、生きている者の体内か、それに準じた環境でしか保存できないのものなのよ」
応じたのはお蘭の影法師だ。
そして、その言葉が終わるときには、雷音から取り出された道術石がお蘭の手に移っていた。
お蘭がその道術石を本体である御影の胸に向ける。
ここで感じるだけでも、途方もない霊気を帯びた道術石だ。
それが御影の胸に吸い込まれていく。
逆に道術石を抜かれた雷音の遺骸は、これが魔域の覇王だった屍体かと戸惑うくらいの小さな霊気を帯びたものでしかなくなった。
これが雷音大王の本来の霊気であり、実は抜かれた道術石だけで魔域の覇王を気取っていたのだということがわかる。
美小淋は改めてそれを自覚し、なんだか騙されたような気分になった。
やがて、その本来の雷音の霊気も、死とともすぐに霊気が消滅して、間もなく完全な肉の塊りになるのだろう。
御影が巻いていた布をはだけて、胸を露出する。
影法師のお蘭が御影の胸に、雷音大王から抜いた道術石を入れた。
「ふふふ……力が……力が漲るわ……。こ、これが宝玄仙の道術石の力……。素晴らしい……。素晴らしいわ、美小淋……」
御影が笑い出した。
「おめでとう……。これであなたは雷音大王よ……。魔域の覇王……」
美小淋は言った。
「お前のおかげよ……。そして、もうひとつの道術石も手に入ると思うわ。すでに手は打ってあるしね……。牛魔王の道術石を素蛾という宝玄仙の四番目の供が運んできてくれるでしょう……。これなら大丈夫……。離れている素蛾の心にあたしの心を繋げられるわ……。なんという力なの……。さすがは宝玄仙の道術石……。見える……。素蛾を通じて、摩雲城も見えるわ……。ほかにも新しい道術が遣えるわ……。信じられない力……。まさに覇王に相応しい力よ、美小淋」
御影が打ち震えていた。
目の前の御影は本当に大きな霊気を発散している。
雷音大王が醸しだしていた霊気に匹敵するものを御影も発するようになっている。
美小淋も嬉しかった。
御影が卓の上にあった雷音の屍体を床に突き落とした。
ふと見ると、役割を終えたお蘭の影法師はすでに消えている。
「これはもう不要よ。これも隠してくれる、美小淋」
美小淋は道術でさっきの孫女の屍体と同じように雷音大王……いや、そうだったものを床下に沈めた。
この屍体もずっと地面の奥にいつまでも沈み続けるだろう。
「……ところで、魔王様、明日の朝、朝議があります。牛魔王の死への対応について話し合いをいたします。慣例を解いて、それには参加を賜りたく存じます」
美小淋は雷音大王の影法師に向かって恭しく片膝をついた。
「わかった、美小淋……。そして、これからも余に忠誠を尽くしてくれ。小宰相もな」
新しい雷音大王が威厳のある声でそう言ってから、大きな笑い声をあげた。
御影が同時に笑い、美小淋もつられるように声をあげて笑った。
「ところで、美小淋、朝議は明日の朝で、それまでは特になにもないのだな?」
そして、ひとしきり笑ってから、雷音大王……いや、それに変身している御影の影法師が言った。
しかし、どこからどう見ても、雷音大王そのものだ。道術石を抜いたので、あのすさまじい霊気の漏洩はないが、醸し出す霊気は雷音独特のものだ。
姿だけではなく、能力や思考までうり二つになるというのだから、やはり、不思議な術だと思った。
「はい」
とりあえず、美小淋は頷いた。
「そうか……」
すると、目の前の雷音が不敵に微笑んだ気がした。
次の瞬間、すさまじい暴風に吹きつけられた。
「がはっ、な、なにを……」
全身が脱力して、美小淋は片膝の身体をさらに床に倒れ込ませてしまった。
なにが起きたのかわからなかったが、一瞬にして全身の霊気を抜かれてしまったのだと悟った。
だから、身体が弛緩したような感覚が襲ったのだ。
実際には、抜かれたのは霊気だけだ。
身体は動く。
「ふふふ……、美小淋、腕を後ろに回しなさい。あんたの望みは雷音大王の妃だったわね。あんたが裏切らない限り、望み通りにしてあげるわ……。一番奴隷という名の正妃にね……」
御影だ。
後ろ側から両腕をねじ曲げられて縄を掛けられる。
一方で、前からは雷音だ。
御影に協力して、美小淋の両腕を上体に固定してしまう。
道術石を体内に入れた御影と雷音大王のふたりがかりの仕打ちに、さすがに美小淋も抵抗できない。
抵抗する気もないが……。
「明日の朝議には間に合うように帰してやる。それまでは、余たちの調教を受けていけ。奴隷として躾けてやろう」
「あたしとふたり掛かりのね」
雷音に次いで御影が言った。
そして、背後から御影に腰から下の下袍を引き破られた。
「きゃあああ」
美小淋は思わず悲鳴をあげてしまった。
しかし、続いて前側から雷音に下着を掴まれて引き破られる。
あっという間に、腰の括れから下に身につけているものがなくなる。
「台の上に乗せてちょうだい、雷音大王様。まずは、あたしがもらうわ」
「わかりました」
御影の命令で、雷音が美小淋をさっきまで影女が乗っていた台にあげる。
すぐに御影の上にあがってきた。
「この後宮の媚香が効いているようね。前戯は不要ね」
下袴を下着ごと脱いだ御影が仰向けになった美小淋の両腿に手をかけ、胸に押しつけるようにする。
赤黒く勃起している男根が美小淋の亀裂に触れた。
確かに、すでに美小淋の股間はかなり濡れていた。
御影の言葉の通りに、この後宮中に充満している媚香のせいだ。
一気に怒張を膣深くに突きたてられた。
「あうううっ、ほおおおお」
思わず声が出た。
抽挿が始まる。
たちまちに女の快感が襲ってきた。
また、御影はかなりの性技の持ち主でもある。
美小淋もそれは知っている。
この御影の性愛の虜にならなければ、ここまで人間族の男に美小淋も墜ちなかった。
その御影の容赦のない責めに、美小淋の肉体は絶頂に向かって一気に快感を駆けあがらせていく。
こうなってしまったら、熟しきった美小淋の身体は、もう御影には逆らえない。
「み、見てないで……、さ、参加しなさい、大王」
そして、御影が腰を動かしながら横にいる雷音に言った。
前に聞いたことがあるが、御影が作る影法師は、すべて御影であるので、本体の御影の意思で自由に動かせるのだが、完全に分離しているため、やはり、声をかけて指示した方がうまく動かせるらしい、
よくわからないが、そういうものなのだろう。
挿入したまま御影に身体を抱えあげられる。
「んはあああ」
それだけで美小淋は達してしまった。
後ろから寝台にあがってきた雷音に、服の上から乳房を揉まれ始める。
考えてみれば、前から御影──。後ろから雷音大王のふたり掛かりで愛されるのだ。
女として最高の状況だろう。
もう、ふたりの奴隷でまったく構わないという気になった。
「ああ、またいぐうう」
ふたりに挟まれて責められ、美小淋は二度目の絶頂に追いあげられた。
快感が次々に襲う。
「ふふふ、雷音大王、あたしはとてもいい気分よ。あんたには、この女宰相の尻をあげるわ」
御影が言った。
「ありがとうございます」
すると、雷音が指を美小淋のお尻に触れた。
道術なのか、粘性体が尻穴にまぶされた。
その尻穴に大きな男根の先端が当たるのがわかった。
「くくく、いつも思ってたんだけど、やっぱり身体が大きいだけあって、大王の一物は大きいわねえ。もしかしたら、この美小淋の尻が裂けるかもしれないわ」
御影が抱えている美小淋を犯しながら言った。
美小淋はぞっとした。
「あっ、やめてええ」
美小淋は叫んだ。
しかし、御影に挿入されたまま、御影の上に被さるように身体を倒され、その上から雷音がのしかかり、巨根がずぶずぶと貫いてきたのだ。
身体の芯に突き抜けるような衝撃に、美小淋は雄叫びのような悲鳴をあげてしまった。
だが、前からの御影の肉棒の抽挿と、その薄い隔壁ごしに、肉塊の感触をなぞるような雷音の巨根の挿入を受け、それによる大きな快感と苦痛によって、美小淋はなにも考えられなくなってしまった。