「おおおっ──」
お宝は、床に膝を立てて高く尻だけをあげた格好のまま声を張りあげた。
その尻を
顔を床につけ、両手は頭の上にある。
拘束は解かれていた。
手首には道術封じの枷はあるが、右手と左手の枷を繋げていた鎖も外されていた。
しかし、長い時間吊られていた身体は満足に動かすことはできなかった。
それに命じられた体勢を勝手に解くと、容赦のない打擲が鳴智と魔凛から飛んでくる。
道術を封じられてしまっては、お宝にはふたりに逆らいようもなく、仕方なくふたりの命令に従って身動きしないでいた。
魔凛が責める肛門から沸き起こる悦楽にお宝は打ち震えた。
「腕を頭の後ろからおろすなと言っただろう──。今度、手を離したら、また、指吊りからやり直しさせるよ──」
頭につけていた手の甲に勢いよく
どうやら、快感のあまり、お宝は頭につけていろと言われていた指示を忘れて、手を離したようだ。
慌てて両手をしっかりと両手を頭の後ろに密着させる。
「ふうううっ」
そして、お宝は床の上で背中を反らしながら声を放った。
もう息をかけられても達するかと思うくらいに追い詰められている。
たが、魔凛はそれを推し量ったかのように、菊座を責める張形の速度をさらに緩やかにした。
こうやって、魔凛と鳴智から交代で張形によって、とろろの痒みに疼く股間と肛門を責められているのだが、信じられないことに、いまだに一度もお宝は達していないのだ。
しかし、それでも、今度こそいくと思うような強い快感がやって来た。
お宝は獣のような声をあげていた。
「……三十だ……。交代だよ、鳴智」
しかし、またもや、ぎりぎりのところで責めをやめられる。
いまは、なによりもそれがつらい。
魔凛が張形を鳴智に渡して、最後にぴしゃりとお宝の尻たぶを平手で叩いた。
お宝はもう抗議の声をあげる気力もなかった。
「じゃあ、今度はどんな格好でさせようかねえ……。そうだね。じゃあ、雌犬らしく手も使って完全に四つん這いになりな、お宝。そして、犬が小便するときのように片脚をあげるんだ。三十回が終わる前に脚をおろしたら、本当に指吊りからやり直しだよ。いいね──」
鳴智が怒鳴った。
お宝はあまりの恥辱に呻き声のようなものをあげながら、床につけていた頭を起こして完全な四つん這いになった。
そして、鳴智に尻を向ける。
「なにを不機嫌そうにやってるんだい、お宝──。命令されたら、返事しないかい──」
魔凛の持つ乗馬鞭が背中に食い込んだ。
「いぎっ」
お宝は悲鳴をあげた。
「泣き声をあげる暇があれば、雌犬の返事をしな」
また、鞭で叩かれた。
「は、はいっ」
お宝は腹が煮え返るのに耐えて、声をあげた。
しかし、後ろから鳴智に尻を蹴られて、その場に崩れてしまった。
「犬が人の言葉を喋るんじゃないよ、お宝──。今度、人間の言葉を喋ってごらん。折檻するからね」
鳴智が倒れたお宝を冷酷な表情で見下ろしながら言った。
お宝は歯噛みした。
絶対に後でふたりもと殺してやろうと決めた。
御影がなんと言おうと殺してやる。
いや、鳴智については、まずあの二歳の娘からだ。
鳴智の目の前で、あの幼女を白痴の牡妖魔に犯させてやる。
そして、内蔵に牡妖魔の精液を破裂するまで充満させて、残酷に殺してやる。
お宝は心に決めた。
「犬の声だよ、お宝」
起きあがろうとしたところを鳴智に、また蹴り倒された。
いまだけの辛抱だ……。
お宝は自分に言いきかせた。
「わん」
お宝は大声で言った。
「片脚をあげな。ぐずぐずしないんだよ」
魔凛の鞭が肩に食い込む。
お宝は悲鳴をあげそうになるのを歯を喰い縛って耐えて、わんと声をあげた。
血が凍るような屈辱に耐えて、片脚をあげる。
すると、いきなり張形を深くまで貫かせた鳴智が激しく抽送を開始した。
これまでのような制御した動きではない。
はっきりとお宝を最後まで絶頂させる動きだ。
それが続く。
頭が白くなるほどの快感が押し寄せる。
なにも考えられない。
「はがあああああっ」
お宝は、あっという間に自分でも驚くほどの速度で昇天していた。
しかも、これほどの悦びは、これまでに経験もしたことがなかった。
惨めに侮辱されながら、人生最大の快感を覚えるということに、お宝に残る微かな理性が危険なものを感じていた。
だが、次々に寄せる快楽の波がそれらを洗い流す。
そして、甘美な汚辱の嵐がお宝を真っ白な世界に連れていった。
「脚をおろしたね、お宝──」
魔凛の大声ではっとした。
いつの間にか、お宝は完全に脚をおろしてしまうどころか、身体さえも倒していた。
もしかしたら、一瞬、気を失ったかもしれない。
お宝には自分が倒れたという自覚が全くなかった。
「このうっ」
魔凛が鞭を振りあげるのがわかった。
お宝は襲ってくるだろう激痛を覚悟した。
「待ちなよ、魔凛。いくら折檻しても犬になりきらないのは、多分、犬にちっとも似てないからじゃないかな? だから、この雌犬に尻尾をつけてやろうじゃないか。しかも、立派な房毛付きのね」
「房毛付き?」
魔凛がきょとんとしているような声をあげた。
とにかく、お宝は身体を起こして四つん這いの姿勢に戻った。
しかし、やはり鞭は来なかった。
鳴智と魔凛はお宝を挟んで、上でなにかをひそひそと話している。
だが、お宝はもう諦めの気持ちだ。
好きにすればいい……。
道術を封じられているいまは、さすがにこいつらにはかなわない。
ただ、道術が戻り、首輪の刻みを復活させたときには、こいつらにしっかりと奴隷であるということを思い出させるだけだ。
そのとき、魔凛が突然に爆笑した。
どうしたのだろう?
だが、ふたりを確認する余裕もなく、魔凛がいきなりお宝を倒して背中に乗った。
しかも、両手を背中に捻って、お宝が身動きできないように身体を固定する。
「い、痛い──。痛いよ。は、離さないか──」
お宝は人間の言葉を使うなと言われたのも忘れて叫んだ。
そのお宝の髪をむんずと掴んで、鳴智がお宝の顔をあげさせる。
なにをするんだと怒鳴りそうになったが、次の瞬間、お宝は鳴智が右手で持っているものに驚いた。
鋏だ──。
その鋏が、反対の手で鳴智が掴んでいるお宝の髪に近づいてきた……。
「ちょっと、尻尾にする房毛の材料を採集させてもらうよ、お宝」
鳴智が笑いながら、お宝の黒髪を根元からざくざくと切り始めた。
お宝は絶叫した。
*
「犬、しっかりと歩くんだよ──。少しでも休むと、また尻尾を掴んで尻の穴に電撃を送り込むよ──」
四つん這いのお宝の背中に乗っている鳴智が、乗馬鞭でぴしゃりとお宝の尻たぶを打った。
「んおっ」
お宝は革紐付きの球体を咥えさせれた口で悲鳴を放っていた。
鳴智はさらに、お宝の乳首に繋がった足乗せに力を入れてきた。鳴智が両足を乗せている“あぶみ”は、床に向かって垂れているお宝の乳首の根元に喰い込む金具と繋がっている。
そのため、お宝の乳首はまるで火でも当てられたような激痛が走った。
お宝は手足を折り曲げて布でぐるぐる巻きにして作られた「肢」で前に進み始めた。
四肢は膝と肘でしっかりと折り曲げられて、それが伸ばせないようにしっかりと布で固定されている。
だから、お宝はもう二本の脚で立つことができないようになっている。
そして、膝と肘の下部分に模擬の肢をつけられた。
つまり、四つ足で進む「犬」ということだ。
さらに、口には穴あきの球体を咥えさせられて顔の後ろで固定されている。
そのために、声も出せない。
頭は、昨日、鳴智に挟みで根元から切られてすっかりと丸坊主だ。
その髪の毛はお宝の尻穴に挿入されている張形の末端に紐でつけられている。
房毛ということのようだ。
しかも、その尻尾代わりの張形は霊具であり、根元を握ると電撃が流れるようになっているのだ。
そうやって、お宝は「犬」にされた。
それが昨日の夜だ。
すでに朝を迎えて、そろそろ午
この地下では昼夜の間隔はわからないが、鳴智と魔凛がそう言っているし、夕と朝の食事で時間の流れを感じる。
食事は犬食いだ。しかも、鳴智とお宝の口の中で咀嚼したものを口にさせられた。
拒否すれば、このふたりによって指で宙吊りにされて鞭で打たれる。
お宝は従うしかなかった。
ふたりからの「調教」が始まってから休めたのは二度だけだ。
あの霊気を喪失させる薬液を飲まされて、身体が弛緩している数刻は身体を横にすることを許された。
そのあいだは、折り曲げて固定された手足も伸ばすことができた。
ただ、身体の弛緩が快復する頃には、いまのように布で手足を曲げて模擬の肢で「犬の肢」の状態にされる。
そして、二度目の休息が終わったとき、乳首の根元にあぶみを繋げられて、鳴智たちを乗せて歩けと命令されたのだ。
「遅いよ、お宝」
鳴智の手が「尻尾」に伸びたのがわかった。
「んぐううっ」
お宝は鳴智を乗せた背中を反り返らせていた。
まるで焼け杭でも肛門に挿されたのかと錯覚するような衝撃だ。
電撃の強さは最小限になっているようだし、時間も一瞬だけだったが、お宝には十分以上の痛みだった。
しかし、それを身体で示すことは許されない。
お宝は鳴智を乗せた身体を維持するように努力した。
「廊下の端まで歩くんだよ」
鳴智があぶみぐいと押して、乳首を引っ張った。
「んぐううっ」
お宝はすでに痺れを感じている手足を前に進め始めた。
腕や脚、そして、腰に凄まじい重圧が襲いかかってくる。
こうやって、地下牢のある地下の廊下を端から端まで鳴智を乗せて往復し、待っている魔凛に交代する。
それが終われば、また鳴智が乗る。
それをやっていた。
いまは、まだ三往復目だったが、お宝の身体の疲労は限界に達していた。
それでも、お宝は必死に進んだ。
鼻孔は膨れ、苦痛の息が涎とともに滴り始める。
「もっと、早く歩けるだろう、お宝? 休もうなんて考えるんじゃないよ」
鳴智が背中の上で、お宝の髪で房毛を作った張形をぴしゃりと叩いた。
鞭打ちの痛みに加えて、力を加えられたことによる電撃が走り、お宝は吠えるような悲鳴をあげた。
しかし、その痛みに反応している余裕はない。
少しでも体勢を崩せば、その瞬間に身体は崩れ落ちると思った。
そして、やっとのことで廊下の端に到着した。
「回れ右だ、お宝。全部で十往復だよ。そうしたら、終わりにしてやろう。また、休憩させてやるよ」
鳴智がまた尻たぶを乗馬鞭で打った。
お宝はなんとか身体を反転させる。
そして、進む。
魔凛がいる廊下の端が遥かに遠くに感じる。
これを全部で十往復──。
絶対に不可能だと思った。
だが、這うしかない。
お宝は汗と涎を滴らせながら、反対側の端まで進んだ。
魔凛が乗馬鞭を持って待っていた。
「さあ、次だよ、お宝。今度はわたしだ」
鳴智がおりたお宝の背に魔凛が跨ってくる。
そのとき、お宝は一階に繋がる階段から人がおりてくる気配を感じた。
一度、背中に乗った魔凛も、お宝からおりて、階段からおりてくる人物を鳴智とともに待ち受けるような態勢になっている。
やってきたのは御影だった。
女宰相の
「んごおおおお──」
お宝は球体を噛まされた口で雄叫びをあげた。
これで助かる──。
すぐに解放される。
そして、こいつらに仕返しを……。
お宝は歓喜の涙をあげていた。
しかし、片腕を美小淋に預けて腕を組んでいる御影は、お宝の姿に笑みを浮かべたのだ。
横の美小淋に至っては声をあげて笑い出した。
「あらあら、それなりのことにはなっていると予想はしていたけど、これは酷いわねえ……。髪の毛を尻尾にするために、全部切っちゃったのね? まあ、あんたらって、随分とお宝に恨みを抱いていたのね」
御影が苦笑した。
お宝は訝しんだ。
御影の態度はお宝が期待していたものでも、予想していたものでもなかった。
「み、御影様……。ここには、来ないのではなかったのですか?」
鳴智が言った。
「その予定だったんだけど、美小淋がどうしてもお宝を処分したのを確かめたいというんでね……。どう、安心した、美小淋? ちゃんと、処分したでしょう? でも、殺すには惜しいわ。服従の首輪を嵌めさせれば、まだまだ、霊具を作る道具として使えるわ。こいつの作る操り霊具は大したものなのよ」
御影が笑いながら言った。
お宝は目の前で起きていることが信じられなかった。
これはどういうことだろう?
御影はいま、なにを喋ったのだ?
知っていた?
御影が裏切った?
いや、見捨てられた?
鳴智と魔凛は、御影を裏切って反乱のようなことをしたのではなく、御影の指示の範疇だった──?
お宝は周りの世界ががらがらと音を立てて崩れていく錯覚を覚えた。
いや、錯覚ではない……。
確かに崩れている。
視界が回転する……。
怖ろしく息苦しい……。
耐えられない……。
なにが起きているのか……?
すべてわからなくなった。
「口のものを外しなさい」
御影が鳴智にそう指示してから懐から首輪を出した。
服従の首輪だ。
お宝自身が作って御影に渡していたものだ。
「さあ、お宝、あたしの奴隷になることを誓いなさい……。さもないと、鳴智と魔凛をさらにけしかけるわよ。首輪を受け入れれば、牢の中で暮らすことを許してやるわ」
御影がお宝の首に手を伸ばして首輪を嵌めた。
「だ、騙した……の……です……か……? だ、騙した……。わ、わたしは……あ、あなたの……妻で……、それで……わたしを……愛していると……。だ、だから……」
やっとのことお宝は口を開いたが、なぜか舌がもつれて動ないことに困惑した。
疲労で喋れないという感じではない。
お宝の身体の中でなにかが毀れている。
しかも、ものすごい勢いでだ。
視界の回転はさらに激しくなった。
大きな音が鳴った。
それは倒れたお宝が床に激突した音だった。
「妻ですって? お前はやっぱり作り物ね。なんで、あたしが自分が作った人形を妻にするのよ。そんなことを口にして遊んでいただけよ。お前はただの人形よ。このあたしが命のようなものを与えただけの道具なのよ……。自分で作り上げた人工物に、人に対するような感情を持つことなどないわ」
御影が大きな声で笑った。
お宝はますます息が苦しくなった。
完全な絶望がお宝を襲った。
もう、終わりだ……。
そう自覚すると、急に闇を感じた。
いや、闇がお宝を包み込もうとしている。
なにか、おかしい……。
まるで、お宝自身が存在をやめようとしているような感じだ。お宝の意識は心の深い場所に引きずり込まれていっている。
「そんなことよりも、早く、首輪を受けれると言いなさい。あたしも美小淋も忙しいのよ。牛魔王が死んで、あちこちの魔王が反乱を起こしそうな気配なのよ。それへの対応を準備しないとならないしね……。鳴智、お宝の身体を起こしなさい。こいつに、首輪を受け入れると言わせるのよ──」
御影が怒鳴った。
しかし、もうそれは、どこか遠くで喋っているような声にしか聞こえない。
お宝の身体は完全に力を失い、意識も保つのが難しくなった。
落ちる……。
どこまでも落ちる。
お宝はどんどんと闇そのものに向かって落下し続けていた。
「……御影様、お宝の様子が変です……。お宝──? お宝、あんた、大丈夫──?」
鳴智が叫んだ。
しかし、その声がお宝が知覚できた最後の言葉になった。
お宝の意識は完全な闇の中に閉ざされた。
とてつもなく厚い無意識の壁の中に……。
(第121話『覇王暗殺』終わり、第122話『裏切りの