※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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806 羞恥遊戯

「そ、素蛾、いい加減にしなさい。お、お前、馬鹿じゃないの……」

 

 朱姫は喚いた。

 摩雲(まうん)城の中庭だ。

 かなり多くの亜人兵がうろうろしている。

 

 そこを朱姫は、首輪についた鎖を素蛾に引かれて、全裸に真っ赤な短い下袍だけを身に着けた姿で四つん這いになって歩かされていた。

 剥き出しになった乳房はもちろん、下袍の下の股間についても、四つん這いになることで完全に後ろからは露出している状態だ。

 まったくの全裸で這っているのと同じだ。

 

 一方で素蛾もまともな恰好ではない。

 自ら首に犬の首輪を装着し、全裸に前開きの薄物一枚を羽織っただけという格好である。

 なによりも、股間には革性の模擬男根がそそり勃っていて、それを革紐で裸の股間に括り付けているのだ。

 

 そばを通る亜人兵たちは、そんな破廉恥な姿の朱姫と素蛾に奇異の視線や卑猥な表情を向けてくる。

 ただ、九霊聖女(くれいせいじょ)により、素蛾と朱姫には構うなと厳しく触れを出されているので、声をかけたり手を出したりする者はいない。

 もちろん、九霊聖女がそんな指示を摩雲城に流したのは素蛾の手配だ。

 素蛾は、朱姫の操り術を遣い、主要な者に『服従の鎖』という操り霊具を装着して、素蛾を「主人」と刻むことで、摩雲城を支配してしまっているのだ。

 ただ、あまりの露骨な眼差しに、朱姫は耐えられなくなってきた。

 

「ふふふ……。この前は、全裸で恥ずかしかったと言っていたから、今度はちゃんと服を着させてあげたじゃないですか、朱姫姉さん。その赤い下袍似合っていますよ。可愛いです」

 

 素蛾が中庭のど真ん中で止まった。

 遠巻きに亜人兵がこちらに注目しているのが見える。

 

「ふ、服って、ほとんど全裸じゃないのよ。も、もう、やめて──。部屋に戻しなさい──」

 

「駄目です。もう少し外の風に当たりましょうよ。部屋の中にばかりいては、身体に悪いですよ。素蛾と愉しいことをしましょうよ、朱姫姉さん……。そして、後でわたくしに罰を与えてください。素蛾のことを乱暴に犯してもいいですよ。素蛾はこんなに悪いことをしているのですから、うんときつい罰を与えてくださいね」

 

 素蛾はくすくすと笑った。

 

「わ、わかったわ──。罰を与える──。その代わり、すぐに部屋に戻るのよ──」

 

「嫌です。罰は後です──。もっともっと朱姫姉さんに酷いことをしないと……。嗜虐を与えるときは、相手が嫌だと言っても徹底的にする──。そうですよね? 嫌だというのは“ごっこ”の一環であり、嗜虐側になったときは、相手が嫌だと言ってもやめてはならない──。朱姫姉さんがいつもそう言っているじゃないですか……」

 

「あ、あんたねえ……」

 

「とにかく、しばらくは、朱姫姉さんは素蛾の犬です。ここで恥ずかしい遊びをたくさんやってから、また代わってあげます。そのときに、うんと素蛾をいじめてください。もちろん、朱姫姉さんはどんな道術も禁止ですよ。絶対です。命令ですからね」

 

 素蛾がまた心から愉しそうに笑った。

 だめだ、これは……。

 朱姫は歯噛みした。

 

 おかしな操りで理性をなくされ、まるで人が違ったようだが、ある意味でこの素蛾も本当の素蛾なのだろう。

 嗜虐癖と被虐癖は真反対の性癖のようだが、実は、同じ同じ性癖の裏と表だ。

 素蛾のような強い被虐癖は、その奥には強い嗜虐癖もあるのだ。

 逆も同じだ。

 そして、素蛾に「操って支配する」という行為をさせるために、あのお蘭の影法師は、その素蛾の隠れていた支配の性質を最大限に引き出したに違いない。

 

 第一、嗜虐するときには、相手がやめてと言っても途中でやめてはならない──というのは、素蛾をけしかけて宝玄仙や沙那などを責めさせるときに、朱姫などが素蛾にいつも言い聞かせていた言葉だ。

 素蛾は、それをしっかりと心に刻んでいるのだ。

 

 朱姫もなんとか、素蛾を出し抜いて、『服従の鎖』の操りから逃れようとしたり、九霊聖女たちの「支配」をやめさせようとするのだが、素蛾というのは実は案外に用心深くて、頭もいいようだ。

 その隙もない。

 

 いずれにしても、朱姫は限界だった。

 四つん這いで二刻(約二時間)以上も、多くの亜人兵の好奇の視線を浴びながら歩かされている。

 羞恥で神経がおかしくなりそうだし、身体を支え続けている腕も疲労のために、こうやってじっとしているだけでも、全身から汗が滴り落ちるようにもなっていた。

 

「じゃあ、もうひと回りしましょうよ、朱姫お姉さん」

 

 ほとんど全裸の素蛾が朱姫の首輪を鎖でぐいと引っ張った。

 足首に装着された『服従の鎖』という霊具により、主人が「素蛾」だと刻まれてしまっている朱姫は、一切の素蛾の言葉に逆らうことができなくなっている。

 部屋を出てくる前に、「素蛾の犬になれ」と命令をされたので、首輪を引っ張られれば、嫌でも朱姫の身体は四つん這い歩行を始めてしまう。

 

 だが、もう体力的につらい。

 それだけでなく、別の苦痛まで朱姫を襲い始めていた。

 しかも、それはもう我慢のできないものになっている。

 

「ま、待って、素蛾……。お、おしっこ……。あ、あたし、おしっこしたいの……。も、もう戻して……」

 

 朱姫は四つん這いで歩きながら訴えた。

 部屋を出る前に素蛾から、大量の水を「命令」で飲まされていた。

 それがもう限界だった。

 素蛾がにっこりと笑った。

 そして、そばにあった一本の立ち木まで朱姫を連れて行くと、その幹に朱姫の首輪に繋がった鎖を結んでしまった。

 

「な、なによ?」

 

 まだ、中庭の真ん中だ。

 声をかけるなという九霊聖女の命令を受けているので、朱姫と素蛾に構う者はいないが、かなりの亜人兵がこっちを見ている。

 

「ここで嗜虐ごっこの“羞恥遊戯”です。わたくしのこれを舐めて気持ちよくしてください。気持ちよくなったら、人のいないところで、おしっこをさせてあげます。でも、気持ちよくすることができなかったら、ここで漏らすんです」

 

 素蛾が服をはだけて、裸の股間に革紐で装着させた人工男根を朱姫の顔に向けた。

 朱姫は驚いてしまった。

 

 素蛾が股間に括り付けているのは、模擬男根の刺激を身体に伝えてくれるような霊具ではない。

 宝玄仙はそんな霊具の淫具も持っているし、それを朱姫たち供に装着させて愛し合わせることもあるが、素蛾がしているのはそれとは違う。

 ただの革の塊りだ。朱姫がどんなに舌を使っても、素蛾に刺激が伝わることはありえない。

 

「なにやっているんです。早くしないと漏れてしまいますよ……。命令です。これを舐めて、素蛾を気持ちよく昇天させてください。でも、直接に肌を舐めたり、張形を無意味に動かして、素蛾のお股に刺激したりする“ずる”は駄目です。さあ、始めてください」

 

 朱姫は小さな声をあげてしまった。

 強い被虐癖だとばかり思い込んでいた素蛾だが、実はとんでもない嗜虐癖ではないかと思えてきた。

 この数日の素蛾の振る舞いに接して、本当にそう感じる。

 

 本当に素蛾は容赦なく朱姫を追い込んでくる。

 昨日も、浣腸と掻痒剤で苦しめられながら、全裸で城中を歩かされた。

 しかも、大勢の亜人兵のいる広場で素蛾のことを犯すように強要されたのだ。

 大便こそ人前でやるのは免れたが、それでも、いつ人が来るかわからない廊下の真ん中で排便もさせられた。

 

 そして、今日は尿意に耐えて、模擬男根を舐めろという。

 朱姫は羞恥と恥辱と屈辱の混ぜこぜの複雑な心境に陥りながら口を開いた。

 そして、素蛾の股間にある革の男根を口で咥える。

 遠巻きにしている亜人兵からどよめきのような声も聞こえた。

 

「ふふふ……、朱姫お姉さん、なんかくすぐったいような気分もしますよ。本当の男根じゃないけど、素蛾は感じそうです」

 

 素蛾が愛おしそうに朱姫の髪を撫ぜてきた。

 だが、朱姫はそれどころじゃない。

 懸命に舐めてはいるが、所詮は神経の通っていない革の男根だ。

 こんなものをいくら舐めても素蛾を達しさせることができるわけがない。

 しかも、すでに尿意が限界だ。

 

 舐めているあいだに、全身が苦痛で震え始めた。

 それでも、しばらく続けた。

 続けるしかない。

 

 模擬男根への奉仕は「命令」でもあるのだ。

 結局、素蛾は、なんと半刻(約三十分)も朱姫に奉仕をさせた。

 

「駄目ですね……。さすがの朱姫姉さんでも、偽物の男根じゃ歯が立たなかったですか……」

 

 素蛾がやっと朱姫が男根から口を離すのを許可して笑った。

 そして、立ち木の幹から鎖を外すと、再び歩き出す。

 

「あ、当たり前よ──。ひ、ひどいわよ、素蛾……。そ、それよりも、お、おしっこを……」

 

 朱姫は歯を食い縛りながら、なんとかそれだけを言った。

 もう数瞬ももたない。

 

「わかっていますよ。だから、人目の少ない場所を探しているんですよ。それまで漏らさずに、ついて来てくださいね。命令です」

 

 素蛾は朱姫の首輪の鎖を引きながら愉快そうに言った。

 この中庭には、素蛾と朱姫の狂態を見物している亜人兵がかなり立ち止まっている。

 確かに、ここには人目のない場所などない。

 しかし、素蛾は逆に、遠巻きにしていた亜人兵がいる方向に向かって、朱姫を導いている気もする。

 しかし、朱姫は「命令」のために、素蛾が鎖を引く方向に四つん這いでついていくことを絶対にやめられない。

 やがて、目の前に十数人の亜人兵がいる場所にやってきた。

 

「だ、駄目──。も、もう、もたない──。そ、素蛾──。だめえっ──」

 

 朱姫は悲鳴をあげた。

 あと一歩で漏れる──。

 朱姫の身体は立ち止まっていた。

 「命令」を与えられてはいるものの、本当にこれ以上“漏らさずに歩く”ことが不可能だったのだ。

 

「立ってください、朱姫姉さん」

 

 そのとき、素蛾が大声で怒鳴った。

 朱姫が立ちあがるのと、股間からゆばりが迸るのはほとんど同時だった。

 しかも、素蛾はさっと手を伸ばして、朱姫の腰から下袍を剥ぎ取ってしまった。

 朱姫がはかされていた下袍は、横から引っ張れば、簡単に脱げるようになっていたのだ。

 

「おおっ」

 

「うわっ」

 

「ほお……」

 

 周囲の亜人兵たちが驚愕と好奇の声をあげた。

 しかし、一度出始めた尿は、もう朱姫の意思ではどうにもならない。

 激しい奔流となって、全裸の股間の下から地面に降り注いでいる。

 唖然としたような亜人兵たちの眼差しの前で、朱姫は途方もなく激しい羞恥の一方で、強い解放感を味わっていた。

 

「さあ、朱姫姉さん、また跪いてください。素蛾が綺麗にしてあげます。お尻を高くあげて……」

 

 やっと放尿が終わったところで、素蛾が朱姫の尿で汚れた場所を避けて数歩動かし、朱姫を再び四つん這いにさせた。

 だが、野次馬の亜人兵が取り囲む中心だ。

 朱姫は当惑した。

 しかし、朱姫の身体は素蛾の言葉に従って、また四つん這いになった。

 

「お尻を高くしてください……。動いちゃだめですよ、朱姫姉さん」

 

 すぐに朱姫の身体は、頭をさげて尻を高く掲げる体勢になった。

 身体が硬直したように動かなくなる。

 

「ふふふ……、じゃあ、お舐めします」

 

 素蛾が笑いながら、尿で汚れた朱姫の股間に背後から舌を這わせてきた。

 

「うはあっ」

 

 朱姫は我慢できずに、身体をびくりと動かして悲鳴をあげた。

 周囲で卑猥な響きのあるどよめきが起きた。

 朱姫は慌てて歯を食い縛った。

 だが、素蛾の唾液は強力な媚薬効果がある。

 素蛾に舌で舐められることにより、鋭い性感が朱姫の身体を走り抜けだした。

 

「くっ、ううっ、も、もういい……。そ、素蛾……、もういいから……」

 

 朱姫は何度も声をかけた。

 だが、素蛾は執拗な股間への舌舐めをやめようとしない。

 素蛾の舌の掃除はかなり長く続いた。

 身体の震えがとまらなくなってきた。

 引きつったようになっている太腿につっと愛液が垂れるのがわかった。

 

「だ、だめ……ほ、本当に……だめ……。も、もういく……」

 

 朱姫は息も絶え絶えに言った。

 本当にあとほんの少しの刺激で絶頂しそうなくらいに追い詰められた。

 すると、素蛾が朱姫の股間を舐めていた舌を離した。

 

「だったら素蛾がここで犯して差しあげますね……。朱姫姉さんを素蛾が……。だって、朱姫姉さんは素蛾のものですから……」

 

 後ろで素蛾が立ちあがるのがわかった。

 そして、あの革性の模擬男根の先端が朱姫の女陰が当たった。

 亜人兵たちの輪が縮まるのを感じる。

 

 素蛾は本当にここで朱姫を犯すだろう。

 朱姫の鼓動は激しく動いていた。

 素蛾の羞恥心は他人とは違う。

 裸身を晒しても堂々とできる性質だ。

 愛しい者と愛し合う行為だって、素蛾の心には「よいもの」として刷り込みもされている。

 素蛾としては、他人の前でそれをすることを避ける意味は、逆にわからないだろう。

 

 そのとき、突然に拍手の音が鳴った。

 まさに朱姫を貫こうとしていた素蛾の模擬男根がすっと離れたのがわかった。

 朱姫は拍手の鳴った方向を見た。

 

 そこには、身体全体を真っ黒い外套ですっぽりと覆った男がいた。

 ただ、顔も外套についたフードで隠しているので、はっきりと男ということはわからない。

 ふと気がつくと、周りにいた亜人兵たちが、まるで操られたような目付きで朱姫たちから離れていく。

 いつの間にか、周囲は、朱姫と素蛾とその黒い服の人物の三人だけになっていた。

 

「面白かったわ……。なかなかの女王様ぶりだったわね、素蛾。あんた、素質があるかもよ……」

 

 黒い人物が笑った。

 口調は女だったが、声は男だった。

 いずれにしても、少なくとも朱姫の知っている人物ではない。

 

「だ、誰よ、お前?」

 

 朱姫は声をあげた。

 ただ、素蛾の「命令」により、高尻でうずくまった状態で動くことができない。

 

「お蘭さんですか……?」

 

 すると、素蛾が首を捻りながら訊ねた。

 

 お蘭──?

 

 朱姫は訝しんだ。

 少なくとも、目の前の人物は男だ。

 お蘭などではありえない。

 だが、その男から感心したような声があがった。

 

「驚いたわね……。あたしの影法師を一発で見抜いたのは、お前が初めてじゃないかしら? 宝玄仙の供にはなかなか面白い者が揃っているのね……。確かに、お前とはお蘭としてしか会ってないわね」

 

 黒い男が笑った。

 

「……み、御影……?」

 

 朱姫は唖然とした。

 こいつは御影の影法師なのか?

 

 素蛾は目の前の黒い男と、お蘭だった人物が同一であることがわかったのだと思う。どうして、素蛾に見抜けたのかわからないが、素蛾に備わる不思議な直感が働いたのだろう。

 御影とは、宝玄仙をずっと付け狙っている男であり、今回も宝玄仙の妹のお蘭の姿で接触して罠を仕掛けてきた。

 お蘭の正体が御影の影法師だったことは、沙那から通信球で知らされている。

 しかし、朱姫も御影の話は何度も聞いているが、御影の姿で会ったことはなかった。

 顔を覆ったフードの下には、誰もいないかのような影しか感じない。

 

「確かに御影よ……。その影法師だけどね。誰の姿も映していないときは、影法師はこんな感じなのよ……。あることで霊気があがったので、この摩雲城と再び接触を維持できたというわけよ。影法師も送り込むことができたし、この摩雲城全体をあたしの新しい『縛心』の道術で支配することもできたわ。城全体をあたしの結界で包むことによってね……。残りはお前たちくらいなものよ……」

 

「ああっ? どういうこと──」

 

「それにしても、宝玄仙の霊気を帯びているお前たちは、どうも全体道術にはかはかかりにくいのよね……。まあ、支配霊具があれば、どうということもないけど……。それよりも、交代するわ、素蛾──。朱姫に御影の命令に逆らうなと命じて、そこをどきなさい。あたしが朱姫を犯すから……」

 

 御影が言った。

 朱姫は恐怖に包まれた。

 御影に『服従の鎖』で支配されて道具にされる──。

 熱かった身体から一瞬で冷や汗のようなものが流れるのを感じた。

 

「嫌です──。朱姫姉さんは素蛾のものです。誰にも渡しません──」

 

 素蛾がきっぱりと言った。

 

「な、なんですって──。いいから、命令するのよ、素蛾──。あたしを見なさい──。よく見るのよ──」

 

 御影の影法師が苛ついたように怒鳴った。

 

「なんと言われても嫌です。朱姫姉さんはわたくしのものです。だから、この摩雲城を乗っ取ったんです。朱姫姉さんから離れなくて済みようにです。わたくしは朱姫姉さんを渡しません──。ご主人様にも、沙那様にも、孫様にも……。もちろん、お蘭さんにも……」

 

「あたしはお蘭じゃないわ。御影よ──。それに、お前はあたしに命じられて、それをやったのよ──。お前はすでにあたしの支配下にあるはずよ。命令に従いなさい──。朱姫に命じなさい。御影の命令に従えとね──」

 

「嫌です──」

 

 素蛾が朱姫を守るように後ろからぴったりと朱姫の腰を抱くようにした。

 影法師から盛大な舌打ちがした。

 

「くっ……。完全な操り状態になったかと思っていたのに、心はそれなりに頑ななのね。本質のところまでは支配されないというわけか……。まあいいわ」

 

 影法師がつぶやいた。

 

「うっ」

 

 次の瞬間、突然に素蛾の身体が直立不動になった。

 両手は身体の真横に動いて、身体全体が硬直したように動かなくなってしまったようだ。

 

「そ、素蛾──」

 

 朱姫は怒鳴った。

 

「ここはあたしの結界で包んだと言ってるでしょう──。逆らえると思うの、小娘──? まあいいわ……。宝玄仙の供たちは、どいつもこいつも全員を捕えてやる。お前も、後でゆっくりと料理してやるわ。ただ、いまはこれで遊んでなさい」

 

 御影は素蛾の身体にかかっていた薄物を剥がすとともに、腰に巻いていた模擬男根に指を伸ばした。

 霊気が走ったのがわかった。

 素蛾の腰についていた模擬男根の革紐が外れて下に落ちる。

 それを影法師が拾いあげた。

 

 しばらく、影法師はそれを持ったままでいたが、やがて、それがぶるぶると振動を始めた。

 朱姫は眼を見張った。

 霊気など備わっていないただの模擬男根をあっという間に霊具にした。

 まるで宝玄仙の道術のようだ。

 

 朱姫もある程度は同じことはできるが、注がれた霊気が桁違いだ。

 あれはただ振動するだけじゃないだろう。

 ほかにもさまざまな責めを女体にできるような気がする。

 影法師は、男根から装着用の革紐を外して張形の部分だけにすると、その先端をぴたりと閉じている素蛾の股間に当てた。

 

「んぐううう──」

 

 ぴたりと締まっている素蛾の口から激しい呻き声が起きた。

 眼は大きく見開かれている。

 素蛾の股間にさっきの男根が、勝手にうねうねとうねりながら、素蛾の股間に進み埋もろうとしている。

 しかし、素蛾の股間は、ほとんど濡れてはいないはずだ。

 そこにいきなり張形が挿してくるのだから、素蛾の苦痛は並大抵のものではないだろう。

 

「そ、素蛾──。や、やめてよ、御影──」

 

 朱姫は大声をあげた。

 だだ、そのときには、張形は素蛾の股間に完全に埋まっていた。

 影法師が素蛾を蹴り飛ばす。

 

 素蛾は真っ直ぐに身体を伸ばしたまま、受け身も取ることもできずに、二度三度と転がりながら地面に叩きつけられた。

 朱姫は急いで、転がった先の素蛾に視線を移した。

 素蛾は顔を地面にまともに打ったらしく、鼻から血を流している。

 

「大人しく『縛心術』の操り状態になっていれば、痛い目に遭わなくて済むものを……。まあいい。後できっちり拷問して、服従の霊具を受け入れさせてやるわ……。まあ、この摩雲城を支配下にしたことで、小娘の仕事としは上出来だしね……。おかげで抵抗なくあたしの『縛心術』をほぼ全員が受け入れたわ……。お前に渡した操り霊具には、あたしの全体道術を受け入れやすくする効果もあったのよ」

 

 影法師が酷薄そうな笑い声をあげた。

 そして、朱姫の後ろに回って腰をしっかりと両手で持った。

 

 はっとした。

 犯すのだ……。

 そう思った。

 だが、影法師の手はまるでなにも存在していないかのように実態を感じない。

 

「実をいうと、宝玄仙とも長い付き合いだけど、その供を犯すのはお前が最初よ。孫空女のときは、白痴妖魔をけしかけただけで犯さなかったしね」

 

 影法師が笑った。

 そのとき、突然に影法師が掴む手が実体のあるものに変化したのを感じた。

 朱姫は首を捻って後ろを見た。

 そこにいたのは、さっきまでの黒い外套に全身を包んだ影法師ではなく、端正な顔立ちの髪の長い男だった。

 

「み、御影?」

 

 本物──?

 いま、瞬間的に入れ替わったのか……?

 だが考える余裕はなかった。

 

 御影の怒張が朱姫の女陰に押し入り、そのまま一気に進んできた。そして、一番奥まであっという間に到達してきた。

 

「ああっ」

 

 出したくはなかったが、朱姫は深い吐息とともに甲高い声をあげていた。

 朱姫の身体は、素蛾の唾液の影響が残っていて、性感が限界まで高められていたのだ。

 素蛾の唾液に濡れていた朱姫の身体は、御影の怒張の貫きに耐えることができなかった。

 ただのひと突きで、朱姫の快感は弾けそうになった。

 そして、朱姫は御影による更なる数回の突きだけでたちまちに絶頂していた。

 

「宝玄仙の供だけあって淫乱な身体なのね……」

 

 御影が背後で嘲笑った。

 抽送は続く。

 すぐに二度目の絶頂もやってきた。

 

 一度目よりも強大な快感のうねりだった。

 朱姫は声をあげて、吠えるような声をあげて身体を震わせた。

 

 御影が朱姫に精を放ったのは、朱姫の三度目の絶頂と同時だった。

 快感の余韻に震える朱姫の股間から御影が男根を抜くのがわかった。

 それと同時に、朱姫は後ろから尻を蹴り飛ばされた。

 素蛾の「命令」がかけられたままの朱姫の身体が、尻を揚げた状態のまま横倒しになった。

 

 その朱姫の腕が強引に背中に回されて手錠がかけられた。

 『道術封じの枷』だ──。

 朱姫にはそれがわかった。

 

 ふと顔をあげると、朱姫の手錠を嵌めた人物は、御影本体ではなく、また黒い外套で身体を覆った影法師に戻っていた。

 

「……ふふふ、宝玄仙を捕まえる餌になってもらうわ。今度こそ、宝玄仙を逃がさない……」

 

 影法師が言った。

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