※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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86  石尻なぶり

「宝玄仙、聞こえているよね? お前たちの供は全員、捕えられたようよ……。いずれ、順番に引き合わせてやるよ……。変わり果てた姿でね……」

 

 金角は言った。

 ここは、金角が魔域から率いてきた妖魔軍が根城としている岩山の砦だ。

 人間族の作った小国と小国の緩衝地帯であるらしく、この辺り一帯を「平頂山(へいちょうざん)」と呼ぶらしい。

 この中で、金角たちが地下砦を築いた場所は、「蓮華洞(れんかどう)」という地名だそうだ。

 金角は、その蓮華洞をそのまま、自分達の地下砦の名とした。

 

 そして、宝玄仙を立たせているのは、その砦にある金角の私室だ。

 声をかければすぐに、世話をする雌妖もやってくるが、いまは、部屋にいるのは金角ひとりである。

 いや、金角ひとりと、人形のように動けなくなった石像の宝玄仙だ。

 宝玄仙は、目の前でまったく身動きができないでいる。

 確かに、身体は石化している。

 だが、意識はあるのだ。

 眼の前にあるものを見ることもできるはずだ。

 それは、辛うじて動いている宝玄仙の身体の中の「魔力」の動きでわかる。

 魔族は、「魔力」と呼び、人間族なら「霊気」と呼ぶはずだが、要は同じものだ。

 宝玄仙は生きているし、すべてを知覚している。

 

 しかし、目の前の宝玄仙は、動けないのだ。

 一切の反応も示すことはできない。

 思考することができながら、まったく動けないというのは、さぞやつらいだろう。

 もちろん、自慢の魔術……、いや、人間族は、道術というのか……。その道術は遣えない。石像のままでは、術の源である力、人間族が「霊気」といい、金角たちのような魔族が「魔力」がまったく集められないからだ。

 つまりは、金角が宝玄仙の石化を解かない限り、宝玄仙は一切なにもできない。

 その苦しみは想像して余りある。

 

 だが、金角はこの宝玄仙に会いたかった。

 天教という集団が、この宝玄仙を敵視する理由を聞き、俄然興味を抱いた。

 なにしろ、この宝玄仙は、魔族であれば魔力と呼ぶ「道術」に長けていて、ひとりで数百人もの天教の襲撃を追い散らせるほどの女傑なのだそうだ。

 それにも関わらず、そいつは騙されて二年もの間、徹底的な性的虐待を受け続けたのだそうだ。

 その宝玄仙という人間族の女のことを知って、金角は大して得をすることもない鎮元とやらの依頼を引き受けることにした。

 ただただ、宝玄仙という二年間、嗜虐されていた人間族の女に会うために……。

 そして、手に入れるために……。

 

 そもそも、遥かな東世界のことでありながら、こっちの妖魔を通じて、それなりに宝玄仙のことは有名だった。

 その神がかり的な魔力の強さも、それなりに噂が伝わっている。

 東世界では、「妖魔」と呼ばれている「魔族」に対して、珍しくも偏見を持っていない者というのも、耳にしたことがある。

 だから、宝玄仙を得られるかもしれないという機会に、金角は応じたのだ。

 

「つらいだろうねえ、宝玄仙……。意識があるのに、石になって動けないというのは、本当に苦しいと思うよ。だけど、あたしは会いたかったのさ。お前という女にね……」

 

 金角はくすくすと笑った。

 もちろん返事はない。

 それにしても、美しい女だと思った。

 金角も雌妖としては美しいと評価されているようだが、大柄の雄妖魔ほどに身体が大きく、自分では女らしい部分などないと思っている。

 それに比べれば、宝玄仙は本当に美しい女の身体だ。

 まだ、服ごと石にしたので見えないが、きっと肌もきれいなのだろう。

 金角は、大勢の男たちが面白おかしく刻んだ魔力紋で、刺青だらけの身体になっているので、美しい女の身体というものは、眺めるだけで満足なのだ。

 本当にうらやましい。

 

「さて、宝玄仙、そろそろ、調教の時間さ。うちの銀角は、あんたのところの朱姫という半妖の娘に興味を抱いたみたいだけど、あたしの望みはあんただよ。あのお喋りの鎮元がこの話を持ってきたとき、あたしはあんたに興味を抱いた。あんたが欲しくなったのさ」

 

 金角は宝物の並んでいる棚から、一個の青磁の水差しを取った。

 その中の水を宝玄仙の横の台の上にある平らな器に注ぐ。

 かなり勢いよく水が注ぎ落ちているが、いくら注いでも、水差しの中の水がなくなることはない。

 

 これは、銀角に武器として手渡した『紅ひさご』という石化の霊具とは一組のものであり、石化を解く効果がある。

 鎮元という男から、預かって以降、何回か部下で実験したので、このひと組の霊具の能力は十分にわかっている。

 あの鎮元という人間族の男は、媚びを売る体を装いながらも、傲慢で妖魔を見下しているのが明け透けで、気に入らなかったが、この宝具は本物だ。

 この宝具が得られるということと、あの男が話した宝玄仙の過去の話がなければ、こんな馬鹿げた依頼には乗らなかったし、あのいけすかない人間族の男は四肢をばらばらにして、魔獣の餌にでもしてやったと思う。

 

「ところで、宝玄仙、これは『浄瓶(じょうびん)』という霊具さ。鎮元が、『紅ひさご』と一緒に持ってきたんだ。ふたつでひと組の宝具の霊具だそうだ」

 

 金角は、浄瓶から器に注いだ水に布を一度浸して、固く絞った。

 それで宝玄仙の胴体の服の部分を拭く。

 すると、湿った布が触った表面だけが、石から普通の巫女服に戻った。

 

 金角がやろうとしているのは、こうやって、少しずつ、宝玄仙の服の部分だけを『浄瓶』の水で布に戻し、宝玄仙自体は石像のままで、衣服だけを取り去るという作業だ。

 銀角は、衣服を身につけさせたまま、宝玄仙を石化したので、当然に、その姿のまま、宝玄仙は石になっている。

 だから、まずはこうやって、裸の石像に変えていくのだ。

 金角の目的は、宝玄仙という興味ある人間族の女を手に入れることだが、そのためには調教して屈服させるという過程を踏まなければ、宝玄仙は素直にはならない気がする。

 

 金角は、彫像の表面を覆う膜を剥ぐかのように、布で表面を濡らしては、注意深く服を剥ぎとり続けた。

 裸にされていく過程の中で、わずかだが布の湿り気が宝玄仙の皮膚の部分にも触る。

 すると、そこだけが生身になる。

 宝玄仙の身体の中に、その生身になった部分を通じて、魔力、つまり霊気が吸収されていっていくのがわかる。

 なんという道術師だ。

 たったこれだけ石化を戻しただけで、自ら石化を解除しそうな感じだ。

 必要な魔力量が集まるには、まだまだ時間がかかるだろうから問題ないが、あまり石化を解除した部分が増えると、一気に必要量を集めそうな気配だ。

 

 それにしても、まったく、なんというやつだ。

 本来、魔力の多い種族である魔族よりも、遥かに魔力も魔術力も高い人間族など……。

 おそらく、石化の霊具などで罠にかけることなく、まともにやり合えば、間違いなく、金角は宝玄仙にかなわない。

 それだけでなく、おそらく魔力だけなら、宝玄仙は、魔域における、もっとも強力な魔王よりも魔力が強いと思う。

 石化して無力化してるとはいえ、宝玄仙を目の当たりにして、金角にはそれがわかった。

 

 金角は、長い時間をかけて、注意深く、衣服に当たる部分のみだけ石化を解除し、切り破いては服だけを取り除くというやり方を。繰り返した

 そして、最後の下着まで剥ぎ取り、やっと宝玄仙を全裸の状態にした。

 そのあいだ、『浄瓶』の水はほどんど、肌には当たらなかった。

 まだ、溜まった魔力は零に近いようだ。

 すると、部屋の扉が外から叩かれ、誰かが部屋に入ってきた。

 

「おう、姉さん、いい感じになったじゃないか」

 

 銀角だ。

 赤い棒と細剣を持っている。特に棒は重いらしく、銀角は棒を重そうに両手で持っていた。

 そのふたつの武器を宝玄仙の石像の視界方向に置く。

 また、腰には「紅ひさご」という瓢箪(ひょうたん)のかたちの宝具をぶらさげている。

 この宝具で銀角は見事に、宝玄仙を生け捕りにしてきたのだ。

 

「なんだい、その武器は?」

 

 金角は訊ねた。

 

「沙那と孫空女の武器さ。連中を捕らえた証拠に、宝玄仙にも見せてやろうと思ってね」

 

「なるほど……。ところで、そのふたりはどうしているんだい?」

 

「妖魔兵の相手をさせているよ、姉御。一匹一回ずつで、とりあえず、千回だ。千発分の精子をぶちこめさせている」

 

 銀角は笑った。

 金角は思わず、顔をしかめてしまった。

 

「馬鹿な――。ふたりを殺すつもりかい? 丁重に扱えとは言わないけど、殺しちゃならないと言ったはずさ」

 

 金角が考えているのは、最終的には、宝玄仙を隷属支配して、手下にすることだ。

 供の連中も、その宝玄仙の一部だろう。

 すると銀角が笑い出した。

 

「わかってるよ。冗談だよ、姉さん。そんなに、できるわけない。今日は、百匹だけだ。明日からは五十匹。必要によって、魔力で最低限の回復だけはさせる。その程度だったらいいだろう?」

 

 金角は嘆息した。

 もともと酷薄な性格をしている銀角だ。

 妹とはいえ、長く離れていたから、完全に一心同体というほどの間柄ではない。

 妖魔軍を束ねさせてはいるから、銀角が金角に背けば、面倒なことにはなる。

 あまり抑え込んでも、暴発してしまうかもしれない。

 まあ、多少の拷問は許容範囲だ。

 それに、銀角には、宝玄仙を手に入れたいという金角の考えは、まだ伝えていない。

 だから、銀角は宝玄仙にしても、その供たちについても、最後には殺すか、それとも、鎮元という天教の法師だという男に、宝物と引き換えに手渡すとしか思っていないはずだ。

 最後には処分するのだから、それほどには大切には扱う気もないと思う。

 まあいい……。

 

「やりすぎないようにしな。殺さないなら、なにをしてもいい」

 

 金角は頷いた。

 

「鎮元もここに来るまでだね。それまで、ここでゆっくり過ごすよ。それとも、ここに定住するのも悪くないね。西から残りの兵を呼びよせるかねえ」

 

 金角は言った。

 無味乾燥して、ほとんど植物も生えないような魔域の土地に比べれば、本当にこちら側は土が肥えていて、山の実りも豊かだ。

 魔王同士の争いの絶えない魔域に比べれば、ここは随分と平和にも感じる。

 人間族との戦わないですむなら、ここを魔族の生息地にするのは悪くない気もする。

 

「そうかい、金角姉さん。だったら、すぐにでも、残兵を率いてる倚海龍(いかいりゅう)に連絡しようか?」

 

「いや、まだいい……。鎮元が刻んだ魔域とここを結ぶ『移動術』の結界も、安定させることもできた。呼び寄せるのはいつでもできる。それよりも、近隣の人間族がどういう反応をするのか、もう少し見極めたい。天教とやらも、わたしら魔族が新しくここに勢力を築くのを傍観するのか不明だし」

 

「まあ、考えるのは姉さんに任せるよ。あたいにできるのは、暴れることくらいだ……。ところで、あたいも触っていいかい、姉さん?」

 

 銀角が『浄瓶』の水が注がれた容器に自分の手を浸した。

 そして、その濡れた指で、宝玄仙の片方の乳首の部分に触れた。

 すると、触られた宝玄仙の右乳首だけが生身になった。

 

「ほらほら、姉さん、反応してるさ。乳首が勃起しやがった。こいつ、結構、いたぶられて感じるなのかもね」

 

 銀角が指で濡れているほんの少しだけ生身になった片側の乳首をいじりながら笑った。

 確かに、宝玄仙は感じているようだ。

 銀角の言葉のとおりに、びんとそこだけ勃ってきた。

 

「多分、宝玄仙は“まぞ”というやつさ。嗜虐されると欲情するのさ。どれ、声を出させてみようかね」

 

 鎮元が嘲笑しながら語った言葉によれば、宝玄仙は二年ものあいだ、嗜虐的な調教により、考えられるあらゆる恥辱と屈辱を味わわされ続けたそうだ。

 宝玄仙の本当の性癖がなんであれ、性癖を心の底からの“まぞ”に作り替えられるには十分な期間だ。

 金角にはわかる。

 

 金角は、小さな杯を取り出すと、一個の杯に『浄瓶』から水を注ぎ、さらに紅い丸薬を器に入れた。

 その杯を持った手を振って、石像の宝玄仙の視界に映るように水に薬を溶かす。

 さらに、銀角がやっているのと同じように、指先だけ浄瓶の水に浸すと、その指で宝玄仙の唇に触れた。

 宝玄仙の口が生身に戻る。

 

「もう、口が開くだろう、宝玄仙。口を開けな。これを飲むと、喋れるようになる。もっとも、さっきの丸薬も一緒に飲むことになるけどね。この丸薬は生意気な雌を、あたしたちが、調教するときに使う薬だよ。飲めば、その固まった身体でも、怖ろしいほどに火照りきる。石でなければのたうち狂うほどにね」

 

 金角は杯を宝玄仙の口に杯を近づけた。

 宝玄仙の逡巡を感じた。

 媚薬とわかっていて飲みたくはないだろうが、生身の部分が多ければ、魔力を蓄えるのが早くなると思っていると思う。

 無理矢理に飲ませる手段はいくらでもあったが、宝玄仙は結局すぐに生身に戻された唇と静かに開く。

 金角は、その宝玄仙の口の中に、杯の水が注いでいく。

 石そのものだった口の石化が解け、舌も動くようになったみたいだ。

 水が喉の奥に入り、その場所の石化もなくなっていってるのがわかった。

 

「あっ、はああっ、ああっ……」

 

 声が出せるようになった途端に、宝玄仙は口から甘い声を出した。

 ずっと、銀角により乳首を刺激され続けていたのだ。

 大した愛撫ではないが、宝玄仙の反応は大きい。

 かなり感じてしまってるようだ。

 やはり、嗜虐に対する耐性はかなり弱いみたいだ。

 

「二年間、人間族の下衆の慰み者にされていたらしいからね。そんな風に躾られたのさ」

 

 金角にはわかる。

 嬲られて感じたくないのに、どうしようもなく疼くようにされてしまった身体……。

 宝玄仙は、かなり性格のきつい女だというが、もしかしたら、それも心と離れている感じやすい肉体がもたらす跳ね返りなのだろうか……。

 

「くっ」

 

 宝玄仙が口惜しそうに喉で音を鳴らすのが聞こえた。

 宝玄仙の唇が固く閉じられる。

 どうやら、声を出すのが屈辱のようだ。

 可愛いものだ。

 金角は、宝玄仙の反応に微笑みを浮かべた。

 

「随分、いい声で泣くじゃないか。供たちも随分と淫乱に仕上がっているしねえ」

 

 銀角が乳首を握る指に力を入れたのがわかった。

 

「痛いっ」

 

 唇の部分だけが生身の宝玄仙の口が動いて、悲鳴をあげる。

 金角はくすりと笑った。

 

「へえ、痛いかい、宝玄仙。じゃあ、これはどうだい?」

 

 一転して、銀角が柔らかく触りはじめる。

 

「あっ、くっ、はうっ」

 

 今度は甘い声を出した。

 すでに、浄水とともに飲ませた媚薬が効いているのだろう。

 生身になっている乳首の周囲と、脇からの部分から汗が一斉に滲みだしている。

 これは、かなり効いているようだ。

 

「こりゃあ、いい声で泣く玩具だねえ。面白いよ。こんなに綺麗だし、手放すには惜しいねえ。魔域に生き人形として、持ち帰りたいさ」

 

 銀角は浄瓶の水を溜めてある器に指先を濡らし直して、宝玄仙の反対の乳首に触れた。

 またしても、柔らかく擦りだす。

 宝玄仙の口から、口惜しそうな喘ぎ声が迸った。

 

「こいつは鎮元には渡さないよ。あたしの人形にするのさ」

 

 金角は言った。

 

「人形に? 鎮元はどうすんのさ、姉さん? こいつを引き渡す約束で、『紅ひさご』と『浄瓶』を借りたんだろう?」

 

「借りたつもりはないね。これは貰ったのさ。いや、やっぱり借りたことにするか。ただし、返すのは二千年くらい経ってからだ」

 

 金角は微笑んだ。

 

「そりゃあ、いいよ。あたいから、鎮元には伝えておくよ」

 

 銀角が大笑いした。

 そのあいだも、銀角は、金角と話しながらも、執拗な攻撃を宝玄仙の乳首に加えてくる。

 

「うう、はっ、くっ、ああっ、お、お前ら、いいかげんに……。はあっ」

 

 宝玄仙は震えるような声を出し続けている。

 無抵抗の状態でいたぶられる口惜しさに、宝玄仙が屈辱を噛みしめているのを金角ははっきりと感じた。

 

「あの男の怒る顔が目に浮かぶよ。もともと、気に入らない男だった。姉さんが話を受け入れたりしなければ、あたいは、多分、あいつをその場で殺していたと思うよ……。さて、そろそろ、股間も触ってやろうかな……。姉さん、いいかい?」

 

 銀角のくすぐるような巧みな愛撫に、宝玄仙はすでにかなり息を荒くしている。

 石化している間は、本来は呼吸の必要はない。

 だから、宝玄仙の口から出るのは、絞り出された官能の息だ。

 

「ほんの少しだけだ。生身にしすぎると、こいつは魔力を身体に集めて、自分で石化を解いてしまう。それほどの女なんだよ。こいつは」

 

「ほんの少しで十分さ」

 

 銀角が部屋の隅に行き、小さな絵筆を持ってきた。

 筆先を浄瓶のに浸けて、宝玄仙の股間を穂先でくすぐりだす。

 宝玄仙の股は、陰毛まで石化しているが、筆で濡れて柔らかさを取り戻した。銀角は肉芽の部分をすっすっと、筆で水に濡らす。

 

「や、やめないか──」

 

 宝玄仙は、生身になっている部分で、戦慄めいた身震いを示した。

 筆の穂先でくすぐられる肉の豆が小さく尖る。

 宝玄仙は切なそうな喘ぎ声を出し始めた。

 

「ねえ、宝玄仙、さっきも言ったけど、お前さえ承知すれば、教団には引き渡さないでおいてやるよ。お前の供も殺さない……。ただし、このあたしと『真言の誓約』を結んでもらう。隷属支配の契約をね」

 

 金角は、だんだんと声が昂ぶりだしている宝玄仙に言った。

 真言の誓約を使った「主従の誓い」にはいろいろとあるが、宝玄仙に結ばせようと思っているのは、限りなく、奴隷の誓いに近いものだ。

 この宝玄仙は、実際には魔力の力で、遥かに金角を上回っているのだ。

 それくらいしておかないと危険だ。

 

「じょ、冗談、言うんじゃないよ――。くあっ……」

 

 宝玄仙が喋り出すのを待っていたかのように、銀角が筆の動きを早くする。

 

「んああっ――」

 

 宝玄仙はたちまちに声をあげる。

 

「奴隷くらい誓っちまいな。そうしたら、お前の供の待遇も少しは考えてやるよ」

 

 銀角が宝玄仙の股間で筆を操る。

 

「ああっ、あああ──」

 

 宝玄仙がなんともいえない悲鳴をあげ、生身の局部と乳首をぶるぶると痙攣させた。

 その震える宝玄仙の局部を銀角は、遮二無二筆で愛撫を続ける。

 

「もう、やめてえ――」

 

 宝玄仙が吠えるように叫んだ。

 

「どうしたのさ、宝玄仙? ちょっと、筆でくすぐられたくらいでさあ」

 

 銀角が一度筆責めをやめて、宝玄仙の顔を覗き込みながら言った。

 そうしないと、顔を動かせない宝玄仙は、目の前の相手の顔を見ることはできない。瞳だって固定されているので、宝玄仙の視界は真っ直ぐ前だけなのだ。

 

「その感じなら、あたしと『隷属の誓い』を結んでくれそうだね?」

 

 金角は言った。

 本当は、支配関係はあるが主人側にも対価を求める『主従の誓い』でもいいかと思ったが、どうせなら『隷属の誓い』がいい。

 なにせ、相手は宝玄仙だ。

 通常の主従の誓いでは、こいつはいつの間にか、高い魔術力で強引に破棄し、逆に金角を乗っ取ってしまいかねない。

 それくらいの女のはずだ。

 下手に妥協せずに、しっかりと隷属した方がまだ安心だ。

 

「お、お前ら、ふ、ふざけるんじゃ……。ひいいっ――」

 

 宝玄仙が火のように昂ぶった悲鳴をあげた。

 後ろに回った銀角が今度は宝玄仙のお尻に筆を向けたのだ。

 すると、股間をくすぐったときとは比べものにはならないくらいに、激しく宝玄仙が反応した。

 

「うわっ、びっくりした」

 

 銀角が驚いている。

 金角も、まさかちょっと触っただけで宝玄仙があんなに悲鳴をあげるとは思ってもいなかった。

 銀角の筆はまだ宝玄仙のお尻を本格的に悪戯をしていない。

 まだ、その部分を生身に変えるために、少し濡らしただけだ。

 それなのに、宝玄仙はこれまでで最大の反応をした。

 

「どうやら、ここが宝玄仙の弱点のようだね、銀角。徹底的に責めるよ。それでこいつは堕ちる……」

 

 金角は、浄水に指を濡らして、宝玄仙の肛門の中に指を挿し入れた。

 排泄器官とは思えないくらいに、宝玄仙のお尻の中は柔らかくて、熱くて、いとも簡単に金角の指を根元まで受け入れた。

 こんなの金角でなくても、たっぷりと調教されたことがある尻の穴だということがわかる。

 金角は挿さっている指を尻穴の中で鈎状に曲げた。

 指先で粘膜を掻くように動かす。

 

「ひ、ひいいっ、んんっ――」

 

 宝玄仙が激しく反応した。

 

「ここがいいんだね、宝玄仙?」

 

「ち、違うっ――」

 

 宝玄仙は懸命に歯を食いしばって声を耐える仕草をした。

 どうやら、自分の弱点を隠したいみたいだ。

 金角は噴き出してしまった。

 

「なにが違うんだい、宝玄仙?」

 

 銀角だ。

 金角がお尻を責め出すと、銀角は筆責めの場所を再び股間に戻している。

 局部と尻穴を同時に責められて、宝玄仙は明らかに絶頂に向かう反応を示しだした。

 

「ひぎいっ―――」

 

 しかし、突然に宝玄仙が悲鳴をあげた。

 銀角が一転して肉芽を軽く捻ったのだ。

 頂点に達しそうだった宝玄仙の官能の波は、一気に冷めたはずだ。

 

「勝手にいくんじゃないよ、宝玄仙。いくのは、金角姉さんと“隷属”を結んでからさ」

 

 銀角が宝玄仙の肉芽を強くつねったまま、上下左右に振る。

 

「ひぎいっ、あぎいいっ、やめえっ、やめないか──。あがあああ」

 

 さすがに宝玄仙が悶絶するような悲鳴をあげる。

 だが、そろそろ終わりだ。

 金角はだんだんと蓄積していっている宝玄仙の中の魔力量に意識を向けた。

 わずか、これくらいの肌の部分だけで、しかも、この短時間のみで、これだけ魔力を集めるなど、本当に規格外の人間族だ。

 本当に魔族ではないのか?

 正直に、金角も息を呑む思いになった。

 

「今日はこれで終わりさ。明日の調教の時間まで、しばらく、これで遊んでおくれ、宝玄仙。隷属の誓いをするかどうかの返事はそのときに聞くよ」

 

 金角の指を肛門から抜き、尻穴用の淫具を出した。

 その表面にたっぷりと媚薬の油剤を塗りたくる。

 錯乱するほどに淫情に疼くだけじゃなく、かなりの痒みも発生させる媚薬だ。

 宝玄仙は発狂するほどの掻痒感に襲われるだろう。

 だが、石化すれば狂うことも、気絶もできない。

 受け入ていた感覚ごと石化するので、苦しみも永遠だ。

 これに耐えられるわけがない。

 金角は、宝玄仙の肛門にその油剤付きの張形を挿し込んでいった。

 

「うはあああっ―――。そ、それは……、あああっ、ああああっ」

 

 はやり反応は激しい。

 すっかりと張形が挿入されてしまうと、金角は張形に魔力を注いだ。

 張形がぶるぶると蠕動運動を開始する。

 

「ああっ、あああっ、いやあああ。だめえ、だめだようう」

 

 宝玄仙が甲高い嬌声をあげた。

 すぐにでも絶頂しそうな感じだ。

 本当に尻の穴が弱いのだと思った。

 

「簡単には昇天させないよ。ほら、こうだ──」

 

 銀角が肉芽をまた激しく抓った。

 だが、今度は、それさえも宝玄仙を追いつめる材料に変わってるみたいだ。

 ほとんど石化しているので、明確には判断できないが、おそらく、すぐにでも宝玄仙は快感を極めてしまうと思う。

 

 金角は銀角に視線を向けた。

 銀角が頷いて、宝玄仙の前に立った。

 小筆を戻して、腰の紅ひさごを手に取る。

 先端を宝玄仙の目の先に向ける。

 

「宝玄仙、こっちを見な」

 

 銀角がにやりと笑った。

 その手に持っている『紅ひさご』の口と視線を合わせると術が結ばれるのだ。

 だが、動けない宝玄仙には、真っ直ぐ前からそれを向けられれば、それを見る以外のことはできない。

 眼を閉じることさえできないのだ。

 すぐに、強い風が吹き抜けた。

 宝玄仙の身体で生身になっていた一部が石に戻った。

 もちろん、尻穴の淫具も一緒にだ。

 石になった以上、振動はしていないが、その刺激の感覚と達しそうだった快感のせり上がりについては、そのまま固まったと思う。

 その感覚は、次に一部を生身にして開放するまで、石像になった宝玄仙を襲い続ける。

 また、宝玄仙の中で溜まりかけていた魔力がまったく消滅したのもわかった。

 魔力については、完全に消失してしまう仕組みでもあるのだ。

 

「なかなかに哀れな顔だよ」

 

 銀角は笑った。

 宝玄仙が口を開いていたため、そのままの形で再び石化したのだ。

 確かに、物欲しそうで切なそうな情感たっぷりの艶っぽい表情をしている。

 

「ところで、さっきの尻穴の淫具はどうなっちゃたのさ、姉さん?」

 

「張形ごと、石化しちまったから、今頃は尻で欲情しまくっているよ。だけど、石になってしまったから、絶頂に達するどころか、一切の欲情が発散できない。激しい痒みも消えることなく味わい続けるしかない……。そのまま溜まるだけだ。次に、石化を解いたときには、いかせてくれと泣くんじゃないかい」

 

 金角は笑った。

 

「そりゃあ、いいよ。絶対に、一緒に見せておくれよ。こんな強そうな術遣いが泣くなんて、滅多に見れるもんじゃない。勝手に身体を開かないでおくれよ、姉さん」

 

「お前は、朱姫を気に入ったんだろう。それで、我慢するのよ」

 

 金角は苦笑した。

 

「そんなあ――。あの娘もいいけど、こいつもいいよ。気が強そうだけど、その分苛め甲斐もあるし……」

 

「いいから、それよりも、沙那と孫空女の様子を見ておいで。妖魔兵たちが調子に乗っている可能性もあるし、あの雇った人間族のふたりも、放っておくと毀しそうだ。まだ毀すんじゃないよ。壊れる寸前まではいいけど、その後は回復させる。やっていいのはそこまでだ」

 

 金角は釘を刺した。

 

「わかっているよ」

 

 銀角が腰に紅ひさごをぶらさげ直しながら出ていった。

 もちろん、石像の宝玄仙には反応はない。

 ただ、この世のものとは思えないほどの情欲の苦しみが襲いかかっているはずだ。

 金角は大きな布を取りだして、宝玄仙の頭から全身を包み、宝玄仙の視界を完全に閉ざしてしまった。

 

「なあ、宝玄仙──。もう、供の助けも期待できない。さっきはもしかしたら、魔力、いや霊気が溜まり直して、自力で石化を排除できるんじゃないかと思ったんじゃないかい? まあ、そういう希望というものは、下手な絶望よりも、余程に自分を追い詰めるよね……。とにかく、たっぷりと絶望しておくれ」

 

 一切の希望を失う絶望を金角はよく知っている。

 希望があるから絶望するのだ。

 与えられては消される絶望……。

 それは、人から助かりたいという心を完全に奪い去ってしまう……。

 ふと、身体に刻まれている消えない紋様を手で触れた。

 

 

 

 

 金角は、希望を与えられて、それを失っていく絶望をよく知っていた。

 調教する相手の心を折ろうとする者は、そうやって調教する相手の心を潰していくものだということも……。




「宝玄仙、聞こえているよね? お前たちの供は全員、捕えられたようよ……。いずれ、順番に引き合わせてやるよ……。変わり果てた姿でね……」

 目の前の金角が言った。
 もっとも、宝玄仙には返事をすることもできないし、視線を避けることもできない、逆に、同じ部屋にいる金角を見れるのも、金角が静止している宝玄仙の視界にいどうしてくれてきたときだけだ。
 とにかく、一切動くことができない。
 いまの宝玄仙は完全に石化された状態なのだ。

「つらいだろうねえ、宝玄仙……。意識があるのに、石になって動けないというのは、本当に苦しいと思うよ。だけど、あたしは会いたかったのさ。お前という女にね……」

 なんでこうなったのか……。
 とにかく、あの銀角と名乗った雌妖に、おかしな霊具を向けられ、それに意識を向けた瞬間に、強い風を感じて、気がつくと完全に石化をしてしまっていた。
 霊気だって消滅した。
 だが、死んだわけじゃない。
 こうやって、思考もできるのだ。
 つまりは、生きたまま人形にされてしまったというわけだ。
 なんてことだ……。

 それにしても、やはり、どう考えても、宝玄仙を石化するほどのあの霊具は、帝都にいるはずのいまの帝仙の曹国仙(そうこくせん)の宝具に間違いないと思う。
 『紅ひさご』だ。
 銀角の語ったことによれば、銀角もこの金角も、西域からやってきたらしい妖魔集団のようだ。
 しかも、あれだけの数の妖魔兵を率いてきた軍団長なのだから、おそらく、金角は「魔王」と呼ばれる存在のひとりに違いないと思う。
 つまりは、あの天教と西域の魔王のひとりである金角が結びつき、宝玄仙を襲撃したというわけだ。
 また、遥かに遠い西域から、ここまで金角たちを連れてきたのは、鎮元仙士(ちんげんせんし)だろう。
 あいつの移動術なら、それが可能なのだ。
 だが、天教が忌み嫌っている妖魔、つまりは魔族と、人間を蔑んでいるはずの西域の魔族の女王のひとりが結びつくなど、一体全体なんの冗談だ。
 そこまでして、天教は宝玄仙を討伐しようとしているのか……。

 いずれにせよ、ここは宝玄仙を捕えた妖魔軍が根城としている岩山の地下砦のようだ。
 そして、宝玄仙が立っているのは、その砦と妖魔軍を支配する金角という雌妖の私室らしい。
 豪華な調度品とさまざまな魔具が部屋には並んでいて、その部屋の中心付近に、宝玄仙は、まるで置物のように置かれていた。
 横には侍女の待機する部屋に通じる扉もあるようだが、金角もあまり呼ばないので滅多には来ない。

 朱姫も捕えられて、宝玄仙とともにここに連れ込まれた。
 宝玄仙は石化した状態でそれをずっと見ていた。
 朱姫は、銀角という妖魔軍の指揮官に捕まり、大勢の兵の前で服を破かれ、銀角の操る白蛇に凌辱されながら運ばれたのだ。
 それから朱姫がどうなったかはわからない。
 銀角というこの金角の妹が、自分の部屋に連れていった気配だったが、細部は不明だ。
 いずれにせよ、朱姫を助ける手段も朱姫の無事を確認する手段もない。
 沙那と孫空女については、もっとわからない。
 襲撃のときに、あのふたりだけは逃亡させたので、無事でいてくれればいいと思う。
 助けがあるとすれば、あのふたりしかない。

「さて、宝玄仙、そろそろ、調教の時間さ。うちの銀角は、あんたのところの朱姫という半妖の娘に興味を抱いたみたいだけど、あたしの望みはあんただよ。あのお喋りの鎮元がこの話を持ってきたとき、あたしはあんたに興味を抱いた。あんたが欲しくなったのさ」

 金角が宝玄仙に語りかけながら、視界の外から一個の青磁の水差しを取ってきた。
 はっとした。
 あれは、『紅ひさご』と一対の宝具である石化解除用の『浄瓶』だ。
 浄瓶は一個の水差しであり、傾けると注ぎ口から無限の水が出て、それで身体を濡らすると、あっという間に石化が解除されるのだ。
 金角は、その浄瓶の水を宝玄仙の横の台の上に持ってきたある平らな器に注いだ。

「ところで、宝玄仙、これは『浄瓶(じょうびん)』という霊具さ。鎮元が、『紅ひさご』と一緒に持ってきたんだ。ふたつでひと組の宝具の霊具だそうだ」

 宝玄仙の心中に応じるかのように金角がそう言った。
 そして、金角は、布を水に一度浸して固く絞った。
 それで宝玄仙の胴体の部分を拭く。
 すると、湿った布が触った表面が石から普通の巫女服に戻った。
 その布になった部分を金角が引き破る。
 宝玄仙は、やっとなにを金角がやろうとしているのかわかった。
 石化した宝玄仙の服の部分だけを『浄瓶』の水で、元に戻して服を取り去ろうとしているのだ。
 それを宝玄仙自身には、水が触れないように注意しながらやろうとしているらしい。

 しかし、宝玄仙はしめたと思った。
 金角は布だけを濡らしたいようだが、服の石化が解けると、どうしても肌の部分に微かに水が染みて、肌の一部が生身に変わったからだ。
 これは、反撃の機会だ。
 なにしろ、少しでも石化した肌が戻れば、そこから霊気を吸収できる。

 少しずつでもいい……。
 しっかりと、身体に貯めていけば、いつかは石化を自分で戻せるだけの霊気が集まるはずだ。

 金角は彫像の表面を覆う膜を剥ぐかのように、布で表面を濡らしては注意深く服を剥ぎとり続ける。
 裸にされていく過程の中で、わずかずつだが、布の湿り気が宝玄仙の皮膚の部分にも触る。
 すると、そこだけが生身になる。
 宝玄仙は、懸命にその生身になった肌を通して霊気を集めた。
 あまりにもわずかな霊気しか吸収できないので、かなりの時間はかかりそうだが、これで希望は生まれた。

 一方で金角は美しい顔立ちをしている雌妖だ。
 だが、身体は大きい。
 おそらく、妖魔としても巨漢女であり、逞しい筋肉をしている。
 また、肌も露わな薄物を身に着けており、そこから肌がよく見えていた。
 金角の肌には、たくさんの刺青があり、おそらく、それらは金角の身体を他人が操るための魔術紋だと思う。
 呪術のようだから、通常の術では消滅させることができないのだとは思うが、魔王ほどの存在でありながら、なんでわざわざ他人が自分を弄ぶための手段のような魔術紋を身体に刻ませているのか……。
 宝玄仙は首を傾げたくなった。

 長い時間をかけて、宝玄仙は全裸の状態にされた。
 見かけによらず、この金角は繊細な仕事をやった。
 宝玄仙の肌には残念ながら、ほとんど『浄瓶』の水は当たらなかった。
 まだ、溜まった霊気は石化術を解除するにはかなり少ない。
 すると、部屋の扉が外から叩かれ、誰かが部屋に入ってきた。

「おう、姉さん、いい感じになったじゃないか」

 銀角の声だ。
 その銀角が、宝玄仙の前に回り込んで、裸身の彫像になった宝玄仙を眺めまわした。

「なんだい、その武器は?」

 金角は訊ねた。
 一方で、宝玄仙は目を見張った。
 銀角が持っているのが、沙那の剣と孫空女の『如意棒』だとわかったからだ。

「沙那と孫空女の武器さ。連中を捕らえた証拠に、宝玄仙にも見せてやろうと思ってね」

 銀角が笑い声をあげながら、ふたつの武器を宝玄仙の視界に入るように壁に立てかける。
 宝玄仙は、内心で歯噛みした。
 あいつらまで捕らわれたのは、間違いなさそうだ。
 先に捕まった宝玄仙と朱姫を救出しようとして、逆に拿捕されたのかもしれない。

「なるほど……。ところで、そのふたりはどうしているんだい?」

「妖魔兵の相手をさせているよ、姉御。一匹一回ずつで、とりあえず、千回だ。千発分の精子をぶちこめさせている」

 銀角が事も無げに言った。
 宝玄仙はびっくりした。
 そんなに大勢を相手にできるわけがない。
 さすがの沙那と孫空女も、身心ともに毀されてしまうだろう。

「馬鹿な――。ふたりを殺すつもりかい? 丁重に扱えとは言わないけど、殺しちゃならないと言ったはずさ」

 金角が顔をしかめた。
 すると、銀角が笑い出した。

「わかってるよ。冗談だよ、姉さん。そんなに、できるわけない。今日は、百匹だけだ。明日からは五十匹。必要によって、魔力で最低限の回復だけはさせる。その程度だったらいいだろう?」

 宝玄仙は少しだけほっとした。
 だが、百匹を相手にするということさえ、あのふたりには限界を超えるかもしれない。
 明日からは五十匹だと言っているが、一日の五十人の性の相手をさせるということだろう。
 回復はさせると言っているが……。

「やりすぎないようにしな。殺さないなら、なにをしてもいい」

 金角は諦めたように言った。
 なぜか、金角はふたりを酷く痛めつけるのは乗り気ではないようだ。
 しかし、銀角がやろうとしている拷問のような責め苦を積極的にやめさせる気もない気配だ。
 まあ、命までは奪わないということのようだが……。

「鎮元もここに来るまでだね。それまで、ここでゆっくり過ごすよ。それとも、ここに定住するのも悪くないね。西から残りの兵を呼びよせるかねえ」

 金角は言った。
 その言葉で、やはり鎮元戦士が絡んでいることが宝玄仙の中で確定した。
 ならば、あの霊具は、帝仙である曹国仙の宝物に間違いない。

「そうかい、金角姉さん。だったら、すぐにでも、残兵を率いてる倚海龍(いかいりゅう)に連絡しようか?」

「いや、まだいい……。鎮元が刻んだ魔域とここを結ぶ『移動術』の結界も、安定させることもできた。呼び寄せるのはいつでもできる。それよりも、近隣の人間族がどういう反応をするのか、もう少し見極めたい。天教とやらも、わたしら魔族が新しくここに勢力を築くのを傍観するのか不明だし」

 ここに妖魔の領域を築く?
 天教や人間族の影響の及ばない西域とは異なり、ここは人間族の国とは離れている緩衝地帯とはいえ、ここに大勢の魔族、つまり、妖魔が棲みつくなど、天教が許すわけがない。
 それがわかれば、大規模な戦争になるのは間違いない。
 天教も、宝玄仙を捕えるのに利用したことなど忘れたように、手のひらを返して、妖魔討伐の檄を発するに決まっている。
 こいつら馬鹿か──。

「まあ、考えるのは姉さんに任せるよ。あたいにできるのは、暴れることくらいだ……。ところで、あたいも触っていいかい、姉さん?」

 銀角が『浄瓶』の水が注がれた容器に自分の手を浸した。
 そして、その濡れた指で、宝玄仙の片方の乳首の部分に触れる。
 触られた宝玄仙の右乳首だけが生身になる。
 その生身の乳首から甘い衝撃が全身に伝わった。
 ほかの部分が石化している分、たったひとつだけ生身にされた場所に全身の神経が集中している感じだ。

「ほらほら、姉さん、反応してるさ。乳首が勃起しやがった。こいつ、結構、いたぶられて感じるなのかもね」

 宝玄仙を嘲笑する銀角の指が乳首から離れようとしない。
 宝玄仙は、たちまちに、そこから身体に流れ出す官能に翻弄されはじめた。
 石化されていなければ、とっくに宝玄仙は屈辱的な声をあげていただろう。
 それくらい、銀角の指使いは巧みだった。

「多分、宝玄仙は“まぞ”というやつさ。嗜虐されると欲情するのさ。どれ、声を出させてみようかね」

 一方、金角は小さな杯を取り出すと、『浄瓶』から水を注いで、さらに、紅い丸薬を器に入れた。
 その杯を持った手を振って、水に薬を溶かしている。
 次いで、金角は指先を浄瓶の水で濡らしてから、その指で宝玄仙の唇に触れた。
 宝玄仙の口が生身に戻った。

「口が開くだろう、宝玄仙。口を開けな。これを飲むと、喋れるようになる。もっとも、さっきの丸薬も一緒に飲むことになるけどね。この丸薬は、生意気な雌を、あたしたちが、「調教」するときに使う薬だよ。飲めば、その固まった身体でも、怖ろしいほどに火照りきるはずさ」

 金角は、そう言って宝玄仙の口に杯を近づけた。
 媚薬とわかっていて飲みたくはない。
 だが、生身の部分が多ければ、霊気を蓄えるのが早くなる。
 喉が生身になれば、口で息もできる。
 集められる霊気も桁違いになるはずだ。
 ここは、飲んでおく方がいい。
 宝玄仙は口を開いた。
 その宝玄仙の口の中に、杯の水が注がれる。

「あっ、はああっ、ああっ……」

 声が出せるようになった途端に、口から嬌声が洩れ出てしまった。
 ずっと、銀角により乳首を刺激され続けていたのだ。
 もう、右の乳首は蕩けるように熱くなっている。

「二年間、人間族の下衆の慰み者にされていたらしいからね。そんな風に躾られたのさ」

 金角の口元が蔑むように笑ったように見えた。
 宝玄仙は口惜しかった。
 そんなことを金角が知っているのは、あの鎮元仙士がべらべらと宝玄仙の恥を風潮しているのだろう。
 天教にしても、鎮元仙士にしても、どこまでも宝玄仙を愚弄する。

「くっ」

 宝玄仙はまたもや、声をあげてしまった。
 銀角の乳首への刺激が強くなったのだ。
 これ以上、醜態をさらすのが嫌で、宝玄仙は懸命に口をつぐんだ。

「随分、いい声で泣くじゃないか。供たちも随分と淫乱に仕上がっているしねえ」

 銀角が乳首を握る指に力を入れた。

「痛いっ」

「へえ、痛いかい、宝玄仙。じゃあ、これはどうだい?」

 一転して、銀角が柔らかく触りはじめる。
 また、乳首から全身を震わすような快感が拡がる。
 宝玄仙の口から、すぐにくぐもった悲鳴が漏れてしまった。

「こりゃあ、いい声で泣く玩具だねえ。面白いよ。こんなに綺麗だし、手放すには惜しいねえ。魔域に生き人形として、持ち帰りたいさ」

 銀角が指に浄瓶の水を漬け直して、反対の乳首への刺激を始めた。

「ああっ」

 宝玄仙は耐えられずに、声を張りあげてしまった。

「こいつは鎮元には渡さないよ。あたしの人形にするのさ」

「人形に? 鎮元はどうすんのさ、姉さん? こいつを引き渡す約束で、『紅ひさご』と『浄瓶』を借りたんだろう?」

「借りたつもりはないね。これは貰ったのさ。いや、やっぱり借りたことにするか。ただし、返すのは二千年くらい経ってからだ」

 金角は微笑んだ。
 すると、銀角が大笑いした。

「そりゃあ、いいよ。あたいから、鎮元には伝えておくよ」

 その銀角のくすぐるような巧みな愛撫に、宝玄仙はだんだんと息を荒くした。
 石化しているあいだは、必ずしも呼吸の必要もないようだ。
 だから、宝玄仙の口から出るのは、絞り出された官能の息なのだ。

「うう、はっ、くっ、ああっ、お、お前ら、いいかげんに……。はあっ」

 宝玄仙は震えるような声を出した。
 無抵抗の状態でいたぶられる口惜しさに、宝玄仙は屈辱を噛みしめた。

「あの男の怒る顔が目に浮かぶよ。もともと、気に入らない男だった。姉さんが話を受け入れたりしなければ、あたいは、多分、あいつをその場で殺していたと思うよ……。さて、そろそろ、股間も触ってやろうかな……。姉さん、いいかい?」

 銀角が一度宝玄仙から離れる。
 戻って来たときには、小さな絵筆を手に持っていた。
 銀角が小筆を浄瓶の水に浸けて、宝玄仙の股間に持ってくる。
 そして、その筆が股間でくすぐるように動かされる。
 
「や、やめないか──」

 宝玄仙は悲鳴をあげた。
 筆の穂先でくすぐられた生身になり、その肉の豆が小さく勃起したのがわかる。
 自分の意思を裏切って、身体が燃えたちだしたことを宝玄仙は意識した。

「ねえ、宝玄仙、さっきも言ったけど、お前さえ承知すれば、教団には引き渡さないでおいてやるよ。お前の供も殺さない……。ただし、このあたしと『真言の誓約』を結んでもらう。隷属支配の契約をね」

「じょ、冗談、言うんじゃないよ――。くあっ……」

 宝玄仙が喋り出すのを待っていたかのように、銀角が筆の動きを早くする。
 口から大きな嬌声が迸る。

「んああっ――」

 せめて、口を閉ざそうとする。
 だが、銀角の筆がそれをさせない。
 口からは声が出続ける。
 筆の愛撫と呼応して、じんじんとする陶酔が身体の内側から込みあげる。
 
「奴隷くらい誓っちまいな。そうしたら、お前の供の待遇も少しは考えてやるよ」

 銀角が宝玄仙の股間で筆を操る。

「ああっ、あああ──。もう、やめてえ――」

 宝玄仙は自分でも情けない声を出した。
 石化された身体の一部だけを生身に戻されて、そこに愛撫をされてよがらせられる屈辱──。
 その汚辱が宝玄仙に、息もとまらせるような快感を送り込む。

「どうしたのさ、宝玄仙? ちょっと、筆でくすぐられたくらいでさあ」

「その感じなら、あたしと『隷属の誓い』を結んでくれそうだね?」

 ふたりが宝玄仙を嘲笑するように会話をする。
 口惜しい──。
 だが、この屈辱が宝玄仙をさらに追い詰める。

 そのときだった。
 宝玄仙の背後に回った銀角が、濡らし直した筆で宝玄仙の肛門に当てたのだ。
 宝玄仙はまるで火で炙られたかのような熱さを感じてしまい、これまでで一番大きな声を迸らせた。

「お前ら、ふ、ふざけるんじゃ……。ひいいっ――」

「うわっ、びっくりした」

 一瞬、筆を離した銀角がきょとんとした口調で言った。
 宝玄仙は激しい反応を示してしまった自分に羞恥した。

「どうやら、ここが宝玄仙の弱点のようだね、銀角。徹底的に責めるよ。それでこいつは堕ちる……」

 金角が宝玄仙に見えるように、にやりと微笑みかけた。
 冗談じゃない――。
 宝玄仙は否定しようとした。
 しかし、金角が宝玄仙の尻の穴に指を入れて、鈎状に曲げて内側を刺激する。
 宝玄仙はこれに弱い。
 この尻で受ける快楽が宝玄仙は嫌いだ。
 感じたくない肛門を身体のどこよりも感じる場所に変えさせられたあの恥辱の日々を思い出すからだ。
 だが、それがいい。
 この屈辱こそが、宝玄仙に震えるほどの愉悦をもたらすのもたしかだ。

「ひ、ひいいっ、んんっ――」

 宝玄仙が激しく反応した。

「ここがいいんだね、宝玄仙?」

「ち、違うっ――」

 宝玄仙は叫んだ。
 そんな場所は、宝玄仙の弱点じゃない――。
 そう自分に言い聞かせる。
 この荒れ狂うような欲情は、金角が浄瓶の水とともに飲ませた薬のせいだ。
 だが、もうひとりの宝玄仙がもっと触って欲しいと、宝玄仙の心の中で主張している。
 あいつは、この恥辱の快感を求め欲している。

「ああっ、あああっ、ああああっ、いやだ──。いやなんだ──。もういじめられるのは嫌だよお──。いやあああ、あああっ」

 宝玄仙は声をあげた。
 こんな妖魔に翻弄されることが悔しい。
 だが、その恥辱が宝玄仙の中で拡がると、なぜかそれが宝玄仙を興奮させる。
 股間が疼くのだ。
 石化しているはずの全身に妖しい快感が生まれ出る。

 宝玄仙の中に焦りが拡がる。
 いつもそうだ――。
 認めたくはない。
 だが、あの二年間、三人の八仙に刻まれた被虐の種子が宝玄仙から消え去ってくれない。
 供を激しく責めたときは、そこから感じることのできる心からの嗜虐の愉悦で宝玄仙は、あの恥辱を忘れ去ることができる。

 だから、宝玄仙は三人の供を苛めなければならない。
 あれがあることで、宝玄仙は宝玄仙でいられる。
 三人の供の存在は、宝玄仙を宝玄仙でいさせてくれるために大事なものだ。
 だが、ひとたび被虐を受け入れると、もうどうしようもなくなるのだ。
 不本意にも恥辱を求めてしまう別の自分が生まれてくる。

 そして、その別の自分――宝玄仙ではない、もうひとりの宝玄仙に身体を乗っ取られそうになる。

 いや、その宝玄仙は、ずっと存在していたのだ。
 二年間の嗜虐に耐え、それを受け入れることで、宝玄仙を護ってきた宝玄仙の別の人格――。
 その人格を自分の中に作ることで、宝玄仙は本来の人格を闘勝仙たちから護りきった。
 あの嗜虐の日々にも耐え、復讐の努力を続けさせ、そして、それを果たした。
 宝玄仙の作りあげた人格は、完全に闘勝仙らに被虐を覚え込まされて、屈服し調教された。
 だが、本来の人格は、お陰で無傷だったのだ。
 宝玄仙は勝ったのだ。

 だが、使命の終わったその人格は、いつまでも消滅しなかった。
 本来の宝玄仙の人格と融合もせず、厳として存在し続けた。
 宝玄仙は、その人格を眠らせるしかなかった。

 だが、じわりと再び存在を示し始めたもうひとりの宝玄仙の人格――。

 それは、恐怖でしかない。
 自分が別の自分に変わるのだ。
 狂おしく震えるほどの被虐の快楽の向こうにあるもうひとりの宝玄仙──。
 それが姿を見せ始める。
 その人格が、いまの宝玄仙を消し去ろうとするのではないか……。

「なにが違うんだい、宝玄仙?」

 銀角が筆責めの場所を再び股間に戻した。
 局部と尻穴を同時に責められて、宝玄仙はいよいよ宝玄仙は追い詰められた。

 だめだ──。
 いきそう──。
 こんな雌妖たちの前で──。

 宝玄仙は歯を喰い縛ろうとしたが、快感に翻弄されてそれができない。
 この雌妖たちめ――。
 調子に乗りやがって……。
 腹が煮え返るが、なにもできない。
 なにもできないことが、別の宝玄仙をさらに表に押し出してくる。

 銀角の筆が肉芽をくすぐり、こすり、弾く。
 金角の指は、肛門を抉って、内側の粘膜を柔らかく掻き続ける。

 込みあがる―――。
 いよいよ、あがってくる―――。
 絶頂がやってくる。
 被虐の絶頂だ。
 嫌だ―――。
 これは被虐の絶頂だ。

 闘勝仙たちはいない。
 御影もいない──。
 みんな殺した──。
 皆殺しにした。

 しかし、連中は、殺してもなお、宝玄仙を苦しめる亡霊だ。
 その亡霊だけは、宝玄仙から消えてくれない。
 宝玄仙が眠らせていた別の人格さえも、こうやって石化されていたぶられることで、起きあがり出している。

 全身に愉悦が走る。
 金角と銀角から与えられる快楽で達しそうだ。

 しかし、いきなり股間を抓られて、激痛が身体を貫いた。
 
「ひぎいっ―――」


「勝手にいくんじゃないよ、宝玄仙。いくのは、金角姉さんと“隷属”を結んでからさ」

 銀角が宝玄仙の肉芽を強くつねったまま、上下左右に振る。

「ひぎいっ、あぎいいっ、やめえっ、やめないか──。あがあああ」

 激痛に宝玄仙は悲鳴をあげた。
 頂点に達しそうだった宝玄仙の官能の波は一気に冷める。

「今日はこれで終わりさ。明日の調教の時間まで、しばらく、これで遊んでおくれ、宝玄仙。隷属の誓いをするかどうかの返事はそのときに聞くよ」

 金角の指が肛門から抜かれた。
 ほっとしたのも束の間、なにか細い棒のようなものが、宝玄仙の肛門に差し込まれ始めた。
 それを防ぐ手段は宝玄仙にはない。

「うはあああっ―――。そ、それは……、あああっ、ああああっ」

 肛門の中の棒は、宝玄仙のお尻の中で膨れあがるように、強い存在感を示す。
 それが、いきなり宝玄仙のお尻の中で暴れだした。

「ああっ、あああっ、いやあああ。だめえ、だめだようう」

 宝玄仙が甲高い嬌声をあげた。
 あっという間に、再び宝玄仙は達しそうになった。

「簡単には昇天させないよ。ほら、こうだ──」

 銀角がまた肉芽を激しくつねった。
 だが、今度は、それさえも宝玄仙を追いつめる材料に変わる。
 嗜虐の火がだんだんと拡がっていく。

 嫌だ――。
 このままでは――。

 しかし、もう少しでもある――。
 そろそろ、霊気もそれなりに溜まる。
 まだ、十分ではないが、このまま屈辱に耐えてさえいれば……。

「宝玄仙、こっちを見な」

 銀角がにやりとしている。
 その手には『紅ひさご』があった。
 その霊具の口と視線を合わせると術が結ばれる。
 それはわかっている。
 だが、動けない宝玄仙には、真っ直ぐ前からそれを向けられれば、それを見る以外のことはできない。
 眼を閉じることさえできないのだ。
 強い風が吹き抜けた。
 溜まりかけていた霊気が体内からまったく消滅した。

 しかも、口を開いていたため、そのままの形で再び石化している。
 だが、唯一、肛門に挿し込まれている魔具だけが暴れ回っている。
 いや、実際には動いていないのかもしれないが、宝玄仙はそれをしっかりと知覚している。
 それに痒い──。
 お尻が痒くて狂いそうだ。
 さらに、この絶頂寸前の追い詰められている快感のせりあがり──。
 それさえも、そのまま凍結して宝玄仙に襲いかかり続けている。

 消えない──。
 それらが逃げていかない──。
 助けて──。
 こんなもの耐えられるはずがない。

 石化した宝玄仙の中で圧倒的な淫情が爆発する。
 だが、どこにも出ることのない官能の嵐だ。
 宝玄仙の内部のみで沸き起こり、どんどんと膨れあがる。

「なかなかに哀れな顔だよ……。ところで、さっきの尻穴の淫具はどうなっちゃたのさ、姉さん?」

 銀角が金角に訊ねている。

「張形ごと、石化しちまったから、今頃は尻で欲情しまくっているよ。だけど、石になってしまったから、絶頂に達するどころか、一切の欲情が発散できない。激しい痒みも消えることなく味わい続けるしかない……。そのまま溜まるだけだ。次に、石化を解いたときには、いかせてくれと泣くんじゃないかい」

「そりゃあ、いいよ。絶対に、一緒に見せておくれよ。こんな強そうな術遣いが泣くなんて、滅多に見れるもんじゃない。勝手に身体を開かないでおくれよ、姉さん」

「お前は、朱姫を気に入ったんだろう。それで、我慢するのよ」

「そんなあ――。あの娘もいいけど、こいつもいいよ。気が強そうだけど、その分苛め買いもあるし……」

「いいから、それよりも、沙那と孫空女の様子を見ておいで。妖魔兵たちが調子に乗っている可能性もあるし、あの雇った人間族のふたりも、放っておくと毀しそうだ。まだ毀すんじゃないよ。壊れる寸前まではいいけど、その後は回復させる。やっていいのはそこまでだ」

「わかっているよ」

 銀角は出ていった。
 だが、いまの宝玄仙には、沙那や孫空女のことを心配する余裕はない。
 逃れられない荒れ狂う淫情の暴風と、少しずつ存在感を示し始めたもうひとりの宝玄仙と戦っていた。

「なあ、宝玄仙──。もう、供の助けも期待できない。さっきはもしかしたら、魔力、いや霊気が溜まり直して、自力で石化を排除できるんじゃないかと思ったんじゃないかい? まあ、そういう希望というものは、下手な絶望よりも、余程に自分を追い詰めるよね……。とにかく、たっぷりと絶望しておくれ」

 その宝玄仙を大きな布が包み、目の前が真っ暗になった。
 宝玄仙を深い絶望が襲いかかったのがわかった。
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