いまが、何日目なのか、正確には、よくわからなくなっていた。
八日目か、九日目というところのはずだ。
だが、沙那には、まるで数箇月もここにいるような気がする。
陽の光がないので、一日の時間の流れがよくわからないのだ。
ただ、妖魔兵の性奉仕をさせるために、
それで、一日が始まったのだとわかるだけだ。
妖魔兵の相手は、一日つきふたりで百匹。
場所は、牢に連接した調教部屋と呼ばれる部屋だ。
沙那と孫空女は、銀角に捕らえられてから、この牢と調教部屋を往復する日々しか送っていない。
宝玄仙と朱姫が、どうしているのかわからない――。
ふたりに、彼女たちのことを教えようとする妖魔はいない。
牢には窓はない。
廊下から漏れ入る蝋燭の光だけが唯一の光だ。
地面が土で壁が岩の小さな石牢だ。
孫空女と並んで横になれば、それでいっぱいだ。
糞尿は部屋の隅にある桶にして、石壁の下の小さな溝を流れている水に流す。
洗うのもその水だ。
凌辱された股間を洗うのもその水だ。
身体もそれで洗う。
そして、飲み水もそれで補う――。
ただ、ここで糞尿をするのは沙那だけだ。
孫空女はなにも言わないが、妖魔の相手が終わった後に孫空女だけが受ける拷問で、明月と清風の前で、糞尿をさせられている気配がある。
そして、その就寝前の拷問で、尊厳という尊厳を全て破壊されるような惨めな拷問をされているようだ。
一度だけ、連れていかれて、孫空女や明月たちの尿を舐めさせられるということがあったが、そのときに見せられた光景は凄まじいものだった。
孫空女は、全部で二十個の手足の爪を剥がされ、治療術で復活しては、また剥がすということをされていた。
沙那はもちろん舐めたが、孫空女はそれで許されず、拷問がほかのものに変わっただけだった。
その後の拷問は沙那が牢に戻されたので、わからない。
その日の深夜だったが、孫空女がなにかに怯えたようにすすり泣いていたのが忘れられない。
あんな泣き方をする孫空女は初めてで、沙那は思わず抱き締めにいった。
できることなら、明月たちの拷問も変わってやりたいが、連中の狙いは孫空女ひとりなのだ。
いまは、孫空女と一緒に、拷問を受けられないのがつらい。
いずれにしても、その溝から脱出するのは不可能だ。
水が流れる穴は、せいぜい拳ひとつ分くらいのものだ。
それに、沙那は前手錠だが、孫空女はずっと後ろ手錠を嵌められている。
ふたりの足首にも、短い鎖で繋がれた足枷が嵌められている。
このまま脱出することは不可能なのだ。
一日が終わってこの石牢に戻されれば、明月と清風がやってくるまで、沙那も孫空女も、この牢で死んだように寝る。
外に繋がる扉は鉄だ。
鉄扉が、思い切り外から叩かれるのが合図だ――。
沙那たちふたりが日課として強要されている丸一日の性奉仕の始まりである。
性奉仕をする場所は、牢から連行される先であり、調教部屋というところだ。
そこで沙那と孫空女は仰向けになり、脚を曲げ開く格好で固定される。
そして、大抵は股間にたっぷりと薬を塗られる。
妖魔から受ける可能性がある感染病を防ぐ目的らしいが、媚薬としての効果もある。
媚薬により、すっかり身体の受け入れ態勢ができた頃に、妖魔たちがやってくる。
後は、ひたすら一日中犯されるだけだ。
そして、牢に連れていかれて孫空女が戻るのを待つ。
やがて、ぼろぼろになった孫空女が明月と清風に連れられて戻ってくる。
朝と同じ手順で沙那は鉄の扉に拘束され、その間に孫空女は壁に繋がれる。
日に日に元気のなくなる孫空女に食事をさせ、自分も食べるとそのまま寝る。
やがて、また、朝が来る――。
この繰り返しだ。
「時間だ――。準備しろ――」
そして、今日も鉄の扉が蹴られた。
沙那は、まだ苦しそうに呼吸をして、寝ている孫空女をそのままに、鉄の扉に近づく。
この石牢の中であれば、自由に動ける沙那だったが、孫空女は違う。
孫空女は、初日、この牢に入れられる前に、調教部屋で拷問を受けて、指を全部折られた。
次の日は、鼻の穴の間に穴を開けられて、鼻輪をつけて戻ってきた。
その鼻輪は、横の石壁に埋まっている金具に、短い鎖で繋げられている。
だから、沙那は横にはなれるが、孫空女は座ったままでしか休むことができない。
それに、沙那は、妖魔五十匹の性の相手をすれば、それで終わりだが、孫空女は、連日、妖魔兵を相手にした後に、さらに調教部屋で明月と清風の拷問を受けている。
そして、ぼろぼろになった身体を、横になって休むことも許されずに、壁の金具に鼻輪を繋がれるのだ。
横になって休めないことで、体力をほとんど回復できない。
だから、孫空女の衰弱は激しい。
一日一度の食事は、凌辱の後に与えられるのだが、孫空女がそれを口にできるのは、明月と清風の拷問の後だ。
拷問の後は、鼻輪を壁に繋がれてしまうから、孫空女の口に食べ物を運ぶのは沙那がやっている。
食べ物で弱らせるつもりはないらしく、肉や穀物の量は十分なものが与えられる。
だが、孫空女は、それを口にするのが億劫そうだ。
しかし、体力を少しでも戻さないと回復など及びもしないので、沙那は無理矢理にでも孫空女の口に入れる。
空の木の杯も食事の時に与えられるので、壁の溝から掬った水も汲んで飲ませる。水だけは孫空女はよく飲む。
もう、沙那とも口をきくことがなくなった。
この部屋にいるときは、いつも、死んだように眠っている。
「早くしろ――、沙那」
また、鉄扉が外から蹴られた。
沙那は、鉄扉に下側にある小さな穴に、手錠のままの両手を差し出し、手首から先を外に出す。
扉の向こうで、沙那の手首に木の板を嵌められる。
これで、沙那は扉の穴から手を戻せなくなる。
鉄の扉の鍵が開錠されて扉が開く。
扉に繋がれている沙那は、扉に引っ張られて身体を移動させる。
その背後を明月と清風のふたりが通り抜けていく。
「孫女……孫空女は弱ってるわ。乱暴にしないでよ。今日は休ませてあげて」
無駄だとわかっている哀願を沙那はふたりにした。
しかし、完璧に無視される。
このふたりは、とにかく孫空女をいためつけていじめ抜くことに悦になっている。
そのため、沙那などあまり危害を加えないし、最低限の接触しかしない。
「まだ、寝てんのかい――。まったく、手間かけさせんなよ」
孫空女の鼻輪の鎖を壁の金具から外して、ふたりが、孫空女を引っ張り出す。
今日は、孫空女を引っ張っていくのは明月のようだ。
その明月が、孫空女の鼻輪を容赦なく引っ張っていく。
「ひぎいいっ――。や、やめておくれよ。ちゃんと、毎日、言うこと、きいているじゃないかあ」
孫空女が叫んでいる。
その孫空女の悲鳴を気にせず、明月は足首を拘束されている孫空女が歩けない程度の速度で調教部屋に連れていっている。
鼻輪を引っ張られる孫空女の苦痛の喚き声が、調教部屋に去っていく。
気の強い孫空女らしくない、心からの哀願の泣き声だ。
沙那はつらくて、耳を塞ぎたいが、拘束されているためにそれもできない。
調教部屋に運ばれる孫空女の声がだんだんと遠くなる。
清風は、沙那とともに残っている。
次に沙那に首輪をするはずだ。
その首輪に鎖を繋ぎ、それを鉄の扉の金具に結ぶ。
扉の向こう側の板が外されるのはその後だ。
そして、手錠を付けたままの手首を扉のこちら側に戻す。
次に、今度は首輪に手錠を装着される。
それでやっと、首輪が扉から外されて調教部屋まで引っ張って行かれるのだ。
だが、この日はなぜか、いつもと手順が違った。
いきなり扉の向こう側の板が外されたのだ。
首輪は、まだしていない。
しかも、手錠まで外されている。
沙那は、呆気にとられた。
「……俺です。
清風の顔がそう言った。
「日値ですって?」
沙那は眼を見開いた。
眼の前の男の姿は清風だ。
だが、その清風が沙那の足枷に屈んで枷を外した。
沙那は、ここにやってきて以来、初めて手足が自由になった。
「すぐに助けるつもりでした……。でも、機会がなくて……。あのとき、騙して罠にかけてすみません。でも、朱姫を助けたくて……」
そもそも、沙那と孫空女が捕らわれたのは、日値に騙されて、この妖魔軍の洞府である
それで、すぐに武装解除されて、妖魔兵に毎日犯される身になったのだ。
「それよりも、どうやって清風になっているの? 本物の清風は?」
沙那は手首をさすりながら言った。
「『
よく見れば、目の前の清風は、指に見覚えのある指輪をしている。確かに、宝玄仙の『変化の指輪』だ。
清風の身体から、その指輪が外されると、日値の姿になった。
「よく使い方がわかったわね」
『変化の指輪』は、変化をしたい相手の唾液か精液を使用して、その姿と声を指輪に刻む。
指輪をした状態で、自分の身体の中に、変身したい相手の唾液か精液を入れるのだ。
一度、刻めば、あとは別の人間が使っても、その刻んだ人間に変化できる。
「清風が知っていたんですよ。聞き出したんです――」
「聞き出した?」
「本物の清風は、自分の寝室で、俺の『草縛り』で拘束されています。油断したところを術にかけたんです――。とにかく、これを……」
日値が、いつの間にか、清風のものらしい服を差し出した。
全裸の沙那はそれを身に着ける。
そして、素早く、日値から受け取った『変化の指輪』を指に嵌める。
身体が変わった。
顔は見えないが、沙那は清風の姿かたちになったはずだ。
「とりあえず、あのとき、沙那さんが持っていた雑嚢は持ってきました」
日値が沙那の雑嚢を差し出した。
この蓮花洞に忍び込むつもりで、役に立ちそうな霊具などをそこに入れていた。
中を確かめると、ほとんど、そのときのまま中に揃っている。
「ありがとう、日値。でも、どうやって清風に近づいたの?」
「三日間、あいつの部屋に通いました」
日値は苦しそうに言った。
「三日間?」
「あいつは、女には欲情しないけど、男ならできるんです。俺は、三日、あいつの部屋に抱かれにいきました……」
「抱かれるって……」
沙那は、思わず日値の顔に見入った。
「そんな目で見ないでください。俺だって、男に抱かれたいわけじゃありません。でも、それ以外に、あいつらに近づく方法を思いつけなくて――。朱姫には、言わないでくれませんか」
日値は、小さな声で言った。
「……苦労かけたわね。いいわ、わたしたちを騙したことは、帳消しにしましょう」
清風の男色がいつからなのか知らない。
宝玄仙が結界で拷問したことがきっかけだったのか、もっと前からの性癖だったのか――。
とにかく、日値は、同じ男色家のふりをして、清風の寝室に通ったのだろう。
そこで、信用もされ、『変化の指輪』の使い方も知った。
沙那が清風の唾液を使って、変化をしたことがあるので、清風は、宝玄仙の作ったこの霊具の使い方を知っている。
それに、清風に抱かれたのなら、唾液も精液も集め放題だ。
「待って。隠れて、日値――」
調教部屋から明月がやってきた。
沙那がやってこないので、不審に思ったのだろう。
日値が、沙那たちがいた牢の中に隠れた。
「おい、どうしたんだ、清風?」
明月がこっちに近づきながら言う。
「いや、ちょっと、沙那がな……。それよりも、孫空女は?」
清風の姿の沙那は言った。
「準備は終わっている。沙那が我が儘言っているのか? なら、今夜から、夜の躾に沙那も参加させるか。あれも、それを望んでたしな」
明月が沙那のすぐそばまで来た。
まったく、警戒をしていない明月の股間を沙那は、力一杯蹴りあげた。
明月は、たった一言、呻き声をあげると、そのまま口から泡を吹いて気を失った。
「うわあ、怖ろしいことしますねえ。死んだんですか?」
牢から顔を出した日値が言った。
「死んじゃいないわ。やってもらうことがあるからね」
沙那は倒れている清風の腰に、雑嚢から出した別の『変化の指輪』を嵌めると、自分の唾液を清風の口に注ぎこんだ。
すると、明月が沙那に変わる。
服を剥ぎ取って全裸にする。
自分の裸を自分で見るというのは嫌な感じだ。
「日値、清風は、完全に拘束しているの?」
さっき沙那から外したばかりの手枷と足枷を、沙那の姿の明月に装着しながら言った。
「大丈夫です」
「じゃあ、調教部屋に連れて来れる? あまり、時間がないわ」
「すぐに」
日値が駆け出した。
清風の姿の沙那は、沙那になった明月を肩に担ぐ。
しばらくは、起きあがることはないだろう。
そのまま、調教部屋に進む。
沙那と孫空女が、妖魔兵を相手にするための部屋でもあるそこは、ちょっとした仕切りが作られている小部屋がある。
そこに沙那と孫空女は、股を開いて仰向けで拘束されるのだ。
沙那は、いつも自分が拘束される側の仕切りの中に、明月を運び入れた。
そして、いつも自分がされていたように、股を開いて拘束する。
性器を剝き出しにした自分の姿は、さすがに恥ずかしい。
だが、仕方がない――。
調教部屋でもあるここには、女を調教するための道具がいくらでもある。
沙那は、沙那の姿の明月に頑丈な革製の口枷を嵌める。
まあ、沙那の姿の明月が、なにを喋ろうとも妖魔兵が相手にするとは思えないが、念のためだ。
そして、壁にかかっている鍵束を手にして、孫空女がいるはずの仕切りに入った。
孫空女が虚ろな視線をこちらに向けた。
しかし、すぐに視線を逸らす。
沙那は、その孫空女に驚いた。
いつも強気で挑戦的な孫空女が明月を怖がったのだ。
それは、孫空女の仕草でわかる。
「孫女、つらいだろうけど、ここからが正念場よ。頑張ってもらうわよ」
沙那は、孫空女の前にしゃがみこんだ。
「か、勝手にすれば……。な、なにすんだよ――」
沙那が、孫空女につけられている鼻輪に触ったとき、孫空女の顔に恐怖の色が映った。
なにかをされると思ったのだろう。
毎夜、凌辱が終わった後で、どういうことをされていたのか、孫空女は教えてくれなかった。
だが、これほどに孫空女を追いつめるだけのことを孫空女はされていたのだ。
可哀そうに……。
「落ち着いて、孫女。わたしよ……。沙那よ」
「沙那?」
孫空女の眼が見開いている。
やっぱり、鼻輪は簡単には外れそうにない。
清風も明月も大した術遣いではないが、霊具が扱えるほどの道術の能力は持っている。
この鼻輪も霊具だ。
「駄目ね、これは……。ご主人様を救出してから、道術で外してもらうしかないわね」
沙那は、鼻輪を外すことを諦めて、孫空女につけられている拘束を次々に外した。
「本当に……本当に、沙那なんだね……」
孫空女が呟くように言った。
ずっと後手だった孫空女が手を前にやりながら言った。
孫空女の指は、まだ使いものになりそうもない。
折られた指は、まだ蒼く、そして、おかしな具合に曲がりまくっている。
「連れてきました、沙那さん」
日値だ。
肩に清風を担いでいる。
布で口を塞がれているので喋ることはできないが、懸命に草の縄を解こうともがいている。
「ちくしょう、お前」
自由になった孫空女が、日値に詰め寄る。
「待って、孫空女。わたしたちを助けてくれたのは、日値よ」
沙那は、孫空女と日値のあいだに入った。
「だって、こいつが罠に嵌めなければ、こんなことには――」
孫空女が睨みつけた。
その気迫に、日値が数歩退く。
「いいから、孫女。いまは喧嘩をしている暇はないわ。こいつとあんたと、ふたりとも『変化の指輪』をして、唾液を交換してちょうだい」
「どうするのさ?」
清風を孫空女が拘束されていた台に繋げようとするのだが、暴れ回って抵抗する。
面倒くさいので、清風の股間を掴むと思い切り握り絞めた。
清風は白目を剥いて動かなくなった。
「この手じゃなければ、あたしがやりたかったよ、沙那」
孫空女がにやりと笑うと、ぐしゃぐしゃにされた指をみせた。
「ご主人様さえ助ければ、あっという間に治してくれるわよ」
動かなくなった清風を全裸にすると、台に拘束してから『変化の指輪』をする。
そのあいだに、孫空女は、たったいま脱がせた清風の革の服を身につけている。
指が満足に動かなくてうまく着られないようだ。
日値が、孫空女を手伝い、服を着させてから『変化の指輪』を嵌めていている。
折れている指に指輪をするのは、本当につらそうだ。
でも、やってもらうしかない。
沙那が清風の猿ぐつわを外すと、孫空女は、屈んで清風と唾液を交換した。
お互いの姿が入れ替わる。
すべてが終わったところで、明月と同じように口枷を嵌める。
「自分の姿の人間が、股ぐらを全開にしているのも、気持ちのいいもんじゃないね」
孫空女が、自分の姿の清風をしげしげと見ながら言う。
「わたしもそう思ったわ、孫女……。とにかく、ご主人様のところに行きましょう。日置、居場所はわかる?」
「朱姫も、宝玄仙さんも、ほとんど同じ場所です。それぞれ、銀角様と金角様の部屋です。案内します」
沙那は頷いた。
そして、三人揃って調教部屋の外に出る扉に向かった。
扉を開けると、今日、沙那と孫空女を犯す権利を持っている妖魔兵が行列を作っている。
「今日は、ひとり、何回でもいいぞ――。許可を貰っている。ほかの妖魔兵にも声をかけてくれ。今日は無制限だとな」
横を通り抜けるとき、清風の姿の孫空女が言った。
並んでいる妖魔兵から歓声があがり、そして、調教部屋に殺到していった。
*
今日で九日目……。
銀角は、数日前から、やっと朱姫に油断のようなものを向けるようになってきた。
朱姫は、それに気がついている。
「舐めな、朱姫……」
その銀角の足の指が朱姫の前に投げ出された。
「ご奉仕します。銀角お姉さま、嬉しいです。今日こそ、お姉さまを泣かしてさしあげますからね」
「やれるものなら、やってみるさ」
銀角が声をあげて笑った。
朱姫はその足の指に飛びついて口に含む。
舌で銀角の足の指と指の間をこすりあげる。
朱姫は必死だ。
この舌遣いに満足してもらえるかどうかで、朱姫の運命は変わる。
ちょっとでも機嫌を損ねると、発狂するような強力な媚薬を与えられ、徹底的な焦らし責めをされる。
逆に、銀角を満足させられる性の技を見せれば、朱姫は苦しいことを強要されることがない。
いま、朱姫を拘束しているのは、首にされている鉄の鎖だけだ。
それは、銀角の寝台に繋がれている。
しかし、鎖の長さもかなりあるので、この部屋の中なら、ほとんど自由に動ける。
ここに連れて来られてから、朱姫は一歩もこの部屋の外に出ていない。
宝玄仙や沙那や孫空女がどうなっているかわからない。
だが、銀角の話すことを総合すれば、三人とも、この洞府に監禁されているらしい。
沙那と孫空女など、三層目の調教部屋で、連日、それぞれ五十匹もの妖魔の性の相手をさせられているようだ。
それに比べれば、銀角の相手だけをしていればいい朱姫は幸せだと何度も銀角に言われた。
銀角は、少女好きだ。
朱姫が銀角に気に入られたのは、朱姫の外観が銀角の性癖そのものだったからしい。
しかし、銀角は単なる少女好きではない。
捕まえた少女を徹底的にいじめ抜いて、最後には毀してしまうという、とんでもない雌妖なのだ。
だから、銀角が与える責めも、途方もなく残酷なものだ。
果てしなく連続絶頂をさせられたかと思うと、媚薬風呂に漬けられて、一転して、数日間も焦らし責めにかけられたりする。
魔術をかけて、いきにくい身体にされたうえで、させられる銀角の性の相手は、地獄そのものだ。
とにかく、銀角の機嫌を損ねないこと――。
何日目からか、朱姫はそれに徹底することにした。
いきにくい身体になっていることについては、変化はないが、手が使えることで自慰ができる。
だから、このところは、火照った身体は自分で尻を慰めている。
だが、いつまた、銀角の気まぐれで、手を拘束されるのかわからない。
そうなったら、また、あのお尻での性の飢餓地獄が待っている。
「いいねえ、お前の舌遣いから、愛情を感じるようになってきたよ。そんなに、あたいの足を舐めたいかい?」
銀角の言葉に、朱姫は銀角の足の指をくわえたまま頷く。
「本当に可愛いねえ……。お前は、あたいがこれまで飼った猫の中で一番だよ。もう、決して手放しやしないよ」
銀角は嬉しそうに、朱姫の裸身を抱き寄せた。
朱姫の口に顔を近づける。
口づけをしろということだ。
朱姫は、さんざんに脚を舐めた口を自分の手のひらで拭くと、銀角の口に朱姫の舌を這わせた。
銀角の口の中を舌で舐めあげる。
舌の表から裏まで、すべてを舐めるかのように朱姫の舌を動かす。
そのあいだ、銀角の唾液を懸命に自分の中に入れる。
舌が終われば、歯だ。
歯の裏から表。歯茎――。
とにかく、口の中のすべてを舐め尽くすのだ。
銀角の身体から力が抜けていくのがわかる。
銀角もまた、朱姫の技に感じているのだ。
「胸を……、胸を頂いてもいいですか、銀角お姉さま……」
「あ、ああ…。いい……よ」
銀角の眼がうっとりとなっている。
朱姫は、銀角の上衣の紐を解いて、胸を剝き出しにした。
銀角の褐色の肌に朱姫の舌を這わせる。
意外だが、銀角は乳首への攻撃が弱い。
だが、いきなり乳首を吸うようなことはしない。
わざと焦らすように、それでいて、ぎりぎりのところを攻撃するのだ。
「あっ、ああ……。いいよ、朱姫……。ああ……」
銀角の声に甘いものが混ざりはじめる。
肌からもじっとりと汗が噴き出してきた。
その汗の滴のひとつひとつを舌で舐めとる。
あの地獄の焦らし責めから解放された後、朱姫は、次の機会に、一転して、銀角を朱姫の知っている技のすべてで責め立てた。
銀角は、いつもと勝手の違う性交に戸惑っていたが、面白がって、朱姫の攻撃を受けた。
そして、翻弄された。
銀角は朱姫に満足して、何度も果てた。
それから、朱姫の拘束は首輪の鎖だけの最小限度のものになった。
次第に、性交に限り、朱姫と銀角の関係は、逆転しつつある。
銀角もまた、一方的に少女を嗜虐するのではなく、逆に相手に責められるという、これまで感じたことのない世界に入り込むことを望んでいる。
「……朱姫、そろそろ……」
銀角の声が震えた。
「はい、お姉さま……」
朱姫は、銀角の乳首を口に含んだ。
銀角が、おこりが起ったように震えはじめた。
しかし、さっと、朱姫は口を離す。
銀角から悔しがるような嬌声がこぼれる。
朱姫の手が、銀角の股間に伸びる。
服の上からでも、熱くなっているのがわかる。
「……いいよ。お前はすごいよ……。い、いままで、こんなに……あたいを満足させてくれる……猫はいなかった……」
朱姫は、銀角の
銀角は怒らなかった。
それどころか、朱姫の動きを期待しているように、腰をあげる。
いままで朱姫に翻弄されながらも、絶対に身に着けているものに朱姫が触ることを許さなかった銀角が、夕べくらいから朱姫に気を許すようになってきた。
朱姫は、一気に腰から、下着ごと、下袴を銀角の脚から抜く。
銀角の股を開かせ、そこに口づけをする。
「うはああっ」
銀角が吠える。
朱姫が銀角の肉芽を吸ったのだ。
銀角の股間から溢れるような愛液が迸りはじめる。
そのあいだ、朱姫の片手は、さっき脱がせた銀角の下袴の腰紐を探っている。
銀角は、下袴の腰紐に、あの『紅ひさご』を装着しているのだ。
それを忘れているのか、朱姫が銀角の霊具を手で探すのに気がついていない。
銀角の身体の震えが大きくなる。
このところの数日の銀角との性交で、銀角の性感のなにもかも知り尽くした。
朱姫の舌ひとつで、自在にいかせたり、焦らしたりできる。
さらに陰核を這う舌の動きを早くした。
絶頂のぎりぎりのところで、銀角の快感を保持する。
「あくううっ」
銀角が腰を浮かした。
「気持ちいいですか、銀角お姉さま?」
銀角の股間から口を離した朱姫は、銀角の顔の前に自分の顔を寄せた。
「ああ、最高だよ……お前は……」
銀角が喘いだ。
「もう一度、口の中をご奉仕させてください。そして、やり直します。口の次は、胸……。そして、おへそ……。その次は、また、お股をご奉仕します……。終わったら、身体中を舐めます。今日は、朱姫の技をすべて受けてください、銀角お姉さま。最後は足の指で昇天させてあげます」
「……足の指? 愉しみだよ」
銀角がうっとりしたように微笑んだ。
しかし、朱姫の手には、すでにあの『紅ひさご』が握られている。
朱姫は銀角の口を吸った。
口の中を愛撫しながら、銀角の視界を朱姫の顔で隠す。
銀角がうっとりと眼を閉じる。
朱姫は、自分の背中の後で『紅ひさご』の栓を抜いた。
「銀角お姉さま――。眼を開けてください――」
朱姫は、銀角の口から舌を出すと言った。
銀角は言われるがままに、虚ろな視線を朱姫に見せる。
次の瞬間、銀角の顔が恐怖の色に染まった。
眼の前に、『紅ひさご』の口が向いているのだ。
その銀角に凄まじい風が吹きつけた。
「ざまあみろ、朱姫様を舐めるな――」
朱姫はそう呟くと、事前に脱がせた銀角の下袴から、朱姫の首輪の鍵を探した。
それは、すぐに見つかった。
首輪を外す。
しかし、それで困った。
銀角を石化したのはいいが、これからどうすればいいのだろう?
この状態を見られたら、非力な朱姫では『紅ひさご』を取りあげられて終わりだ。
そこに扉を叩く音がした。
朱姫は緊張した。
「俺たちです。明月と清風です。沙那と孫空女が大変なことになりまして……」
なにが起こったのだろう――。
だが、困った。
銀角は、あられもない恰好で寝台の上で石になっている。
朱姫は、『紅ひさご』を握りしめて、扉の影に隠れた。
いざとなったら『紅ひさご』ひとつで乗り切るしかない。
だが、『紅ひさご』で石化できるのは、ひとりずつのはずだ。
鎮元仙士を洞府の看板立てにしたときに、後で銀角が自慢げに、『紅ひさご』の使い方を説明したのだ。
だから、複数の妖魔兵に一斉に襲われては、どうしようもない。
そして、扉の外には、明月と清風のふたり……。
なんとか、ひとりずつにする方法はないか……。
返事はしてないのに、勝手に扉が開いた。
入ってきたのは三人だ。明月と清風――。
そして、日値までいる。
どうしたらいいのだ――?
とにかく、朱姫は、三人に向かって『紅ひさご』を向けた。
三人の視線が、最初に寝台の上の石化した銀角、そして、朱姫の持つ『紅ひさご』に向けられた。
「動くと、石にするわよ――。静かに、扉を閉じて中に入りなさい」
朱姫は言った。
三人のぎょっとした表情がそこにある。
作動させてしまえば、ひとりずつしか効果がないのがばれてしまう。
このまま、脅迫で乗り切るしかない。
だが、その三人の顔が綻んだ。扉が閉じられる。
朱姫は呆気にとられていた。
様子がおかしい。
「お手柄よ、朱姫」
明月と清風が指に触りさって、姿が変わった。
そこに沙那と孫空女の姿があった。
どうやら、ふたりとも『変化の指輪』で、明月と清風に化けていたようだ。
「沙那姉さん――。孫姉さん――」
朱姫は、ふたりの胸に飛び込んだ。
「待って――」
それを沙那が制する。
「あんたの口の横についているのは、こいつの淫液ね?」
沙那が言った。
「淫液? 顔に? まあ、そ、そうかもしれませんけど……」
さっきまで、銀角の股間を舐めていた。
そんなこともあるかもしれない。
朱姫は、手でそれを拭こうとした。
その手を沙那が抑えた。
「さらに、お手柄よ――、朱姫」
沙那がそう言って、『変化の指輪』を嵌め直した。