「今日の返事を聞きたいねえ、宝玄仙……」
いつものように、金角が言った。
石化された身体の中では、肛門にずっと挿入されている張形が相変わらず宝玄仙を苦しめている。
金角は、最初に媚薬入りの水を宝玄仙に飲ませる。
そして、石化した状態で数日も続けて肛門を責め続けられている宝玄仙に、『真言の誓約』を使った『隷属の誓い』をしろと迫るのだ。
「きょ、今日で何日目だい……?」
「九日目だね」
「あいつらは、げ、元気だろうねえ……?」
「まあ、生きてはいるさ。それで、返事は?」
いつもと同じ会話……。
まあ、儀式のようなものだ。
ただの約束事だ。
宝玄仙は、半ば朦朧とした気持ちで“考える”と応じる。
金角は、その返事に満足して宝玄仙に快楽を与える……。
必要以上に宝玄仙を苦しめることはないし、与えるのは宝玄仙をさらに苦しめることになる程度の快感でしかない。
それでも快感は快感だし、金角は一応は、宝玄仙に誠意は示しているのかもしれない。
金角は、最初に『浄瓶』の水で、尻の割れ目に沿って指で撫でて、その部分を撫ぜて生身にする。
それだけでは、宝玄仙は石化の間に溜まった快楽を発散できない。
溜まった快楽を発散するには、前の膣の石化を解いてもらわなければならないのだ。
それをしてもらえなければ、宝玄仙は絶対にいけない。
もしも、膣の解放を条件に『隷属の誓い』を要求されれば、宝玄仙は、とっくに応じていただろう。
そんな官能責めに、宝玄仙はもう耐えられない。
しかし、金角はそこまでのことを要求しない。
宝玄仙の考えるという答えで満足するのだ。
肛門を生身にした後、金角は宝玄仙の膣の石化を解く。
溜まりきった快楽の苦痛が、震えるような甘美感となって発散していく。
しかし、宝玄仙が一度発散すれば、金角はまた、石化をして、宝玄仙の快楽を封鎖する。
そして、数刻――。
場合によっては、一日以上、尻穴に張形の刺激を受けた状態で放置される。
その官能の拷問を宝玄仙は、受け続けなければならない。
だが、それは、必ず解放させてもらえる機会がある。
奇妙な信頼関係だった。
金角は、絶対にこのことで宝玄仙を裏切らない――。
「口惜しいだろうねえ、宝玄仙……。自分よりも、魔力が遥かに劣るこの金角に、こうやって、何日も責め続けられる気持ちはどうだい?」
「さ、最悪だよ……」
宝玄仙は言った。
尻の解放をされた直後の絶頂では、淫具ごと石化している状態の数倍もの快楽が宝玄仙を襲う。
だが、これだけでは、宝玄仙の閉じ込められた快楽は外に出ていかない。
発狂しそうな快楽を外に出すには、金角の慈悲に頼るしかないのだ。
もしも、金角が、宝玄仙に、「慈悲」の代償を要求すれば、このときに、宝玄仙は『隷属の誓い』――、つまり、“奴隷契約”に応じていただろう。
宝玄仙の中にいる、もうひとりの宝玄仙が、簡単にそれに応じたに違いないのだ。
なにもできない――。
なにもできないのだから仕方がない――。
もうひとりの宝玄仙が、それを主張する。
本来の宝玄仙には、それを拒絶する力が残っていない。
そう――。
金角は、とっくの昔に宝玄仙を堕とせたのだ。
だが、金角は、それをしなかった。
金角が、宝玄仙の尻を解放し、宝玄仙の膣孔を解放させる間にすることは、宝玄仙とただ語ることだけだ。
「性奴隷の二年の月日は、長かったかい、宝玄仙?」
金角は宝玄仙の前に座り、じっと宝玄仙を見ている。
いまの宝玄仙の生身の部分は、口と肛門――。
それだけだ。
前から見える宝玄仙は、ただの人形だろう。
だが、その人形を通して、金角は、宝玄仙の心に触れようとしている。
いや、もう触れている。
金角は、とっくに宝玄仙の弱点を掴み、切り札を握っている。
だが、それを使わない。
「お、お前は……どうだい、金角? 十……年は、長かったかい……?」
お互いに、罠に嵌って、望まない「調教」を受け続けた経験を持っている。
宝玄仙は二年……。
金角は十年……。
それだけの時間の後に、ふたりとも自分を陥れた男たちへの復讐を果たした。
それも同じだ。
「十年に必要だったのは、自分を保つことだったよ――。十年間、あたしは、ただの一度も本当の奴隷契約には応じなかった……。拒否し続けることで、いつか誰かが殺してくれることを願っていた。自分では死ぬことは禁止されていたからね……。お前は、宝玄仙?」
「わたしかい……?」
宝玄仙は呟くよう言った。
なんで、自分はこんなことを語っているのだろう。
あの二年間のことは、供の三人にもほとんど語らなかったことだ。
二年間、宝玄仙と同じ八仙の地位にあった三人が、宝玄仙を罠に嵌めて「調教」した。
連中が知っているのはそれだけだ。
その三人にも言わなかったことを宝玄仙は、自分を苛むだけの雌妖に喋ろうとしている。
「……わ、わたしは屈したよ……。三箇月でね……」
「屈した?」
金角の声に不審の響きが混じった。
「三箇月で……、ひとり目と真言の誓約で奴隷契約をした……。屈服……したのさ……。八仙同士の……道術を通した“隷属”……。どんな“誓約”よりも強力な……誓いだよ。ひとり目と……結んだ後は、二人目……、三人目と……同じことをするのに躊躇は……、なかった……。わ、わたしは……、そうやって……、三人の奴隷になったんだ……」
「だけど、あんたは、その三人を殺したんだろう?」
金角が訝しむ言葉を発した。
それは、そうだろう。
いったん結べば、奴隷の誓約は絶対だ。
二年後であろうと、宝玄仙が彼らの殺害に成功したこととは、辻褄が合わないのだ。
「“奴隷の誓約”を……したのは……、わたしが生み出した……もうひとりのわたし……。わたしを……護るために……作りだした……もうひとりの……わたし……。わたしは……、それを表に出すことで……、そ、そして、か、彼女の人格を……強化することで……わたしを護った……」
「別の人格? そんなことができるのかい?」
「……できる……。できなければ……いまの……わたしはない……」
「お前の中に、もうひとりのお前がいるということ?」
「そう……。いつもは、眠っている……。でも、時折……存在感を示す。本来の……わたしを……消そうと……」
「こうやって、恥辱の中にいるときは、お前のもうひとりの人格が強くなっていくんだね、宝玄仙?」
「……そう……かも……。あああっ――。そ、そろそろ、限界よ……、金角……」
宝玄仙は悲鳴をあげた。
もう、耐えられない。
これ以上は、正気を保てない。
ここで『隷属』を要求されれば、絶対に断れない。
しかも、いま、宝玄仙の中に、もうひとりの別人格が眠っていることさえ喋ってしまった。
金角は、いまの宝玄仙ではなく、その宝玄仙に要求すればいい。
その瞬間に別人格の宝玄仙が、いまの宝玄仙を乗っ取るだろう――。
宝玄仙を護るために――。
そして、宝玄仙は、また、眠らされる――。
すると、宝玄仙の中のもうひとりの人格――、
宝玄仙は、慌てて自分を保つ。
「今は、この辺にしようか、宝玄仙……。膣の石化を解くよ。思う存分に発散したら、また、石化して封鎖する……。尻に張形を挿したままね」
やっぱり、金角は“奴隷契約”を要求しなかった。
その理由はわからない。
宝玄仙の頭の中で、宝玉が残念そうな顔をしている。
「わ、わかったよ、金角……」
宝玄仙は言った。
「この続きの話は、また、今日の夜にでもやろう」
「ああ……、夜だね。それまでに、さっきの話は考えておく――」
宝玄仙は言った。
そのとき、扉が叩かれた音がして、勢いよく開かれた音がした。
誰かが入ってきた感じがしたが、宝玄仙の背中側なので、その侵入者の姿を見ることができない。
「どうしたんだい、銀角?」
金角が言った。
どうやら入ってきたのは銀角のようだ。
「金角姉さん――。これが……」
銀角の声だ。
「ちょうどよかった、銀角。もうすぐ、その『紅ひさご』を使おうと思っていたから……」
もの凄い風が吹き抜けた感覚があった。
眼の前の金角が石化している。
宝玄仙は呆気にとられた。
どたどたと複数の人間の入っている足音……。
すぐに扉が閉じられる。
眼の前を孫空女と沙那が通り過ぎた。
宝玄仙は眼を丸くした。
そして、金角の侍女がいる部屋に飛び込んだ。
束の間の喧騒――。
あっという間に静かになり、ふたりが出てくる。
朱姫が『浄瓶』を手に取った。
宝玄仙の頭から『浄瓶』の水を直接注ぐ。
石化している宝玄仙の全身が戻っていく。
「ああっ、ああ……ああぁ……」
石化から解除されて、生身になった宝玄仙はがっくりと跪いた。
全身が震えた。
沙那が崩れ落ちた宝玄仙を前から抱きかかえる。
「ご主人様――、ご無事ですか――?」
「い、いくうううっ」
宝玄仙は、沙那に裸身で掴みかかった。
そして、全身を震わせながら叫んで、沙那に身体を預ける。
宝玄仙は達した。
絶頂しながら涙を流した。
助かったのか?
いや、助かったに違いない。
だから、こいつらがここにいて、宝玄仙は石化から解放されたのだと思う。
沙那が驚愕した様子で宝玄仙を抱きしめてきた。
宝玄仙は、さらに力一杯沙那を抱きしめる。
誰かに支えてもらわなければ、いまの宝玄仙を保つことができそうにない。
心地いい……。
沙那に抱き締められる心地の、なんと甘美なこと……。
それと同時に、もの凄い勢いで宝玄仙の身体に霊気がみなぎる。
宝玄仙の人格が完璧に戻る。
あのもうひとつの人格――。
被虐を求めるあの宝玄仙……。
宝玄仙が意図的に作り……、強化し……、はっきりとした人格となりかけていた別の宝玄仙が、再び深い眠りにつく。
「あ、あのう……ご主人様……?」
沙那が、宝玄仙を抱いたまま、狼狽したような声を出した。
だが、宝玄仙は、沙那を抱きしまたまましばらく離さなかった。
「だ、大丈夫だ……」
やがて、宝玄仙は言った。
肛門を苛んでいた張形を身体の外に出す。
十日近くも宝玄仙を悩まし続けた金角の淫具がやっと身体の外に出た。
次に、みなぎった霊気で沙那の身体を探った。
股間に妖魔の気が充満している。
おびただしい数の妖魔の精を受けたのだろう。
膣内もかなり傷んでいる。
宝玄仙は、それを全力で癒した。
腕の中の沙那が震える。
『治療術』の道術を受けているからだ。
あっという間に、沙那の身体から妖魔の気は消滅した。
股間もきれいなものになった。
宝玄仙は沙那を離した。
「みんな無事かい……?」
宝玄仙は、顔をあげて、全員を確認した。
三人の供の全員がいる。
もうひとりは、確か、
「朱姫、銀角はどうした?」
宝玄仙は言った。
朱姫は宝玄仙とともに浚われて、金角に引き取られた宝玄仙に対し、朱姫は銀角に連れられていった。
その朱姫は、裸体に銀角のものらしい上着を羽織っている。
「金角と同じです、ご主人様」
「固まっているということかい」
宝玄仙は微笑んだ。
「朱姫がやったんだよ。あたしらが飛び込んだときには、もう、石になっていた」
孫空女だ。
宝玄仙は、改めて、沙那と孫空女のふたりを見た。
孫空女も、眼の前の沙那も、黒革の袖のない上着と短い下袴だけを身に着けている。
そして、孫空女は鼻に奇妙なものをしている。
宝玄仙は噴き出した。
「なんだい、その鼻の素敵な飾りは、孫空女?」
「あの明月と清風にされたんだ」
孫空女が怒ったように言った。
「明月と清風?」
「ここにいるんです、ご主人様。わたしと孫空女は、ここにいる間、ずっと、そのふたりによって、何百匹もの妖魔の性処理の相手をさせられていました。この孫空女は、さらに手酷い拷問も……」
沙那が言った。
それで、やっと気がついた。
孫空女は手酷い怪我をしている。
「来てごらん、孫空女」
宝玄仙は、孫空女を呼び寄せた。
「こりゃあ、酷いねえ……」
道術で探るまでもない。
孫空女は酷い状態だ。
宝玄仙は、孫空女を沙那の横に座らせて、『治療術』を施す。
拷問の影響か、あるいは、妖魔との性交の影響か、膣も肛門もかなり損傷している。
とりあえず、それを治す。
そして、指だ――。
十本の指がぐしゃぐしゃにされ、ほったらかしにされたせいで奇妙な具合に繋がりかけている。
わざと、変形するように繋げられていているのだ。
爪も全部ない。
普通なら、もう使いものにならない。
だが、宝玄仙の治療術なら問題ない。
『治療術』を施すついでに、ちょっと悪戯もする。
孫空女の身体に、激しい快楽を同時に送ったのだ。
「ひゃああああ――」
孫空女は、自分の胸を抱きしめながら身体を折った。
がくがくと震えている。
気をやってしまったのだ。
この強い女が、少女のような声をあげて、達する姿を見るのはいつもながら最高だ。
「強い『治療術』を送ったからね。だけど、そんなもので、達したのかい? 妖魔どもに犯されすぎて、淫乱に拍車がかかったかい?」
本当は快楽の大波を送り込んだのだが、『治療術』だけと思い込んでいる孫空女は、ばつの悪そうな表情をした。
「ところで、どれどれ……」
孫空女についている鼻輪を手に取り、ぐいと引っ張った。
「ひぎいいいっ、痛い、痛い――。痛いってばあ、ご主人様」
しかめっ面を膨らませて孫空女は抗議した。
構わず、ぐいぐいと引っ張り、孫空女の顔を宝玄仙のすぐ前まで寄せる。
「こりゃあ、駄目だね。さすがのわたしの道術でも外せやしないよ、孫空女。この鼻輪は、一生そのままでいな」
「う、嘘だよ――。手があっという間に治ったのに、明月と清風程度の霊具が外せないわけがないじゃないか――」
孫空女は叫んだ。
宝玄仙は笑って、鼻輪を引っ張ったまま、孫空女の口を自分の口に寄せた。
孫空女の口の中を吸う。
宝玄仙は孫空女に奉仕をするように、丁寧に孫空女の口を吸った。
しばらく、孫空女を堪能した後、孫空女の唇から唇を離す。
孫空女が眼を白黒している。
そして、孫空女から鼻輪を外した。
鼻の穴の中に強引に作られた穴も治療する。
「あ、ありがとう……」
孫空女が鼻をさすりながら言った。
「お前もおいで、朱姫」
朱姫が孫空女と入れ替わって、宝玄仙の前に座る。
こっちは問題なさそうだ。
茶色の革紐は、まだ朱姫の首にある。
ならば、毎日、尻の発作で苦しんだだろう。
「ああっ、ご主人様……」
宝玄仙は、朱姫の肛門に指を入れた。
朱姫は抵抗しない。
「ああっ」
あっという間に宝玄仙の指で達し、宝玄仙の胸に倒れ込んだ。
部屋の隅では、日値が、どこに視線を移していいかわからないという感じで、おろおろしている。
「それで、いまは、どういう状況なんだい?」
宝玄仙は、崩れ込んできた朱姫を起こしながら言った。
沙那が、これまでのいきさつと、いまの状況を簡単に説明した。
さらにそれを日値が補足した。
「つまり、金角と銀角は、それぞれ石化したが、わたしらが、妖魔軍の真ん中にいるという状況は変わらないというわけだね?」
「そういうことです、ご主人様」
「とにかく、石化している銀角が、こいつらの部下の妖魔兵に見つかったら面倒だ。銀角をここに持っておいで」
銀角の部屋は、すぐそこらしい。
四人が駆けていった。
金角と銀角の部屋がある一帯は、この洞府の中でも、このふたりの個人的な空間だ。
滅多なことでは、妖魔兵はやってこないし、入ってくるのは身の回りの世話をする小妖と、金角軍の中でも最高幹部に当たるものだけのようだから、まだ、ここに異変は気がついていないはずだ。
だが、時間の問題だろう。
銀角が運ばれるのを待つあいだ、宝玄仙は『移動術』の結界を刻む。
行き先は、最初に金角軍に襲撃をされたあの場所だ。
あと数日すれば、向こう側の道術紋も霧散していたと思うが、まだ辛うじて、移動術を繋げることができそうだ。
とにかく、あそこに荷が置いているし、都合がいい。
「戻りました」
沙那だ。四人で銀角を運んできたのだ。
「こりゃあ、まあ、はしたない恰好で固まったものだねえ」
宝玄仙は、固まった銀角を見て笑った。
上着をはだけ、乳房を露わにして、裸の下半身は大きく股を開いている。
宝玄仙は、手元にあった金角の張形を手に取った。
「わたしの使い古しだけど、よかったら使っておくれ、銀角」
宝玄仙は、そう言うと、その張形を道術で石化した銀角の膣の中に送り込んだ。
そして、激しく暴れさせる。
もっとも、外見上じゃあ、まったくわからない。
今頃、石化した銀角は、霊具によって与えられる快楽に恐れおののいているはずだ。
石化しても、一緒に石化した霊具による快感は生身のときと同じように感じる。
しかも、溜まった快楽を外に出せないので恐ろしく苦しいのだ。
「移動の準備はできたかい? とりあえず、洞府の外に出るよ」
宝玄仙は言った。
孫空女と沙那は、部屋にあった自分の武器をすでに取り戻している。
宝玄仙を含めた五人と、石化した金角と銀角、そして、『紅ひさご』と『浄瓶』が、『移動術』の結界に乗った。
宝玄仙は、移動術を発動した――。