最初に、異変に気がついたのは孫空女だった。
孫空女は耳がいい。
だから、沙那よりも先に気がついたのだ。
三人の供のうち、誰が宝玄仙の犠牲、すなわち、夜の伽を命じられても、基本的には、耳を塞ぎ、眼も閉じ、気にしないことにする。
それは三人の暗黙の了解だ。
どんなに悲鳴をあげようと、快楽の拷問にのたうち回ろうとも、知らないふりをする。
そして、万が一、宝玄仙に責め側に参加するように命じられれば、それは許される。
恨みっこなし――。
だから、なんの酔狂なのかはわからないが、自分から進んで宝玄仙の夜の相手をすることを申し出た朱姫の悲鳴は受け付けない――。
そう決めていた。
だから、洗い物と翌朝の風呂の支度をふたりでしていたときに、悲鳴は宝玄仙のものだけだと、孫空女が言ったときには、多少は驚きもした。
「まあ、そういうこともあるんじゃない。朱姫が責めているとか。わたしたちもやったじゃない。流沙の宿町で……」
沙那は言った。
ここは、湯桶のある教団幹部用の宿棟の裏だ。
ふたりで闇の中、月夜を頼りに薪の準備をしていたところだった。
「ああ、ご主人様も、このところ、ちょっと大人しかったものね。金角の一件以来。少しだけね」
孫空女が短い丸太の横の一点を『
丸太が十数本に砕ける。
沙那はそれを取り、手斧で大きさを整えて、薪のかたちにする。
「そうね。ちょっと心配ね」
沙那は、新たに作った薪を置き場に積みあげていく。
もう、かなりの量になった。
薪はほとんど残っていなかったのだが、薪になる前の丸太はたくさんあった。
それを孫空女の技で、木端微塵にしてかたちを整えていくと、あっという間に必要な量が積みあがる。
「心配なら、またやるかい、沙那? あのときは、お陰さまで、ご主人様は、あっという間に復活したよね……。まあ、あの仕返しはつらかったけど……」
流沙という宿町で、孫空女と企んで、動けなくした宝玄仙を責めたのは、もう半年以上前になる。
あのときは、お蘭の里を出てから、余りにも大人しくなった宝玄仙が心配で、ふたりして責めたのだ。
だが、その翌日、宝玄仙により、淫夢を使った責めによる仕返しを受けた沙那と孫空女は、文字通り、寝ても覚めても責め苛まれるという恥獄を味わうことになった。
宝玄仙の嗜虐癖は復活し、気力も回復したが、しばらくは、普通に寝るのが怖かったものだ。
「でも、金角の言ったことも気になるし……」
沙那は、宝玄仙を責めて、元気を取り戻してもらおうかと提案した孫空女に言った。
金角は、宝玄仙の中に、“
それは、帝都で宝玄仙が二年間の凌辱に耐えるために、故意に作り出した別人格だというのだ。
彼女は被虐を愉悦として悦び、仙薬と道術、そして、真言の誓約で抵抗できなくなった宝玄仙に対する嗜虐者たちの性の拷問と恥辱を一身に引き受けた。
彼らの精液をすすり、尿を飲み、奴隷のように彼らの言いなりになった。
彼らに絶対に逆らわないという支配術も受け入れた。
その一方で、その盟約に縛られない宝玄仙の本来の人格は、二年という時間を使って、八仙という強力な道術遣いでも逆らえない、『服従の首輪』という支配魔具を作りあげた。
盟約に縛られているはずの宝玄仙が、逆らうと思っていない闘勝仙という悪党は、本来の人格の宝玄仙により、その『服従の首輪』を嵌められて、共謀していたふたりの八仙を殺し、自殺させられた……。
そういう話だった。
だが、それは本当だろうか。
故意に別人格を作り、それにより支配術の攻撃を防ぐということが可能なのだろうか。
「まあ、朱姫が責めているならそれで問題ないか……。ご主人様は、朱姫に仕返しをするだろうし、それで心の張りを取り戻す。矛先はあたしたちには来ない。朱姫には悪いけど、万々歳だ。朱姫が解放されたら、まあ、優しくしてやるさ」
孫空女が突いた丸太が、また木端微塵になった。
本当にこの技は凄い。
力で砕いているのではなく、術で砕いているのだ。
「でも、ご主人様の悲鳴って……。どうやっているの、朱姫は?」
「どうやっているのかって……? さあ?」
流沙の宿町では、沙那と孫空女は、お蘭から貰った宝玄仙が道術を遣えなくする『道術封じの首輪』をして、宝玄仙の道術を封じた。
しかし、あれは、その後、それは宝玄仙に取りあげられて隠されから、もう持っていない。
従って、朱姫が宝玄仙の術を封じる手段はないはずだ。
だが、宝玄仙が遊びで朱姫の攻撃を受け入れたとしても、悲鳴をあげるほどの仕打ちに耐えるとは思えない。
宝玄仙の道術の能力は、朱姫の道術とは比べものにはならないのだ。
朱姫が道術でなにをしようとも、あっという間にはね返すだろう。
つまりは、宝玄仙は、朱姫から悲鳴をあげるほどの責め苦を受けているのに、我慢しているということになる。
でも、あの宝玄仙に限って、そんな可愛げのあることはしないと思うが……。
「……じゃあ、使っているのかなあ? 『道術封じの首輪』を……」
孫空女が『如意棒』を縮めて、耳の中に隠した。
「行くの、孫空女? 怖いもの見たさ?」
「沙那も行く気じゃないか」
孫空女がにんまりと笑う。
沙那ももう、手斧と薪を片づけていた。
「まあ、ちょっとだけ……」
「そうだね。ちょっとだけ……」
ふたりで、寝所にしている宿棟に向かって歩いて行く。
「朱姫って、どちらかというと“受け”じゃなくて、“責め”だよね」
歩きながら、孫空女がそんなことを言った。
「まあ、そうね……。朱姫を相手にするときには、いつも翻弄されるわね。結構、ご主人様に劣らず、残酷な責めをすることもあるし」
沙那は言った。
宝玄仙に命じられて、お互いを愛する行為をさせられるのは日常茶飯事だ。
そんなとき、朱姫は積極的だ。
いつの間にか、あの半妖の少女に犯されているという気分になる。
「沙那は、“受け”だよね」
「あんただって、“受け”じゃない。責められる方がいいでしょう、孫女?」
「まあ、否定はしないよ。気持ちいいの好きだし……。一度、沙那の本気の責めを受けたいかな」
孫空女が笑った。
だが、沙那は孫空女の言葉に大きく動揺して、それ以上、言葉が続けられなくなってしまった。
いまの本気だろうか……。
かっと身体が熱くなる。
そして、寝所にしている宿棟に着いた。
宝玄仙の苦痛の混じった悲鳴は、宿棟中に響いていた。
せっぱつまった宝玄仙の声に沙那は驚いた。
宝玄仙と朱姫が寝所にすることになった部屋の戸は開け放たれている。
孫空女とともにそっと覗く。
沙那は自分の眼に映ったものを疑った。
寝台に仰向けに縛られた宝玄仙が、大きな男根を生やした朱姫に犯されている。
寝台の周りには、宝玄仙の使う淫具が散乱していて、宝玄仙は、『振動片』を身体中につけられている。
それは、小さな白い布の破片だが、それを身体につけると、つけられた身体の部分を包み込み、淫らに振動するのだ。
それが宝玄仙の美しい乳房に所狭しと貼りついている。
お尻には、張形の霊具だ。
宝玄仙の使う張形の中で一番巨大なやつが宝玄仙の肛門に挿さっている。
それが、宝玄仙のお尻の中で踊り狂っているようだ。
その状態で、宝玄仙は朱姫に、男根で犯されているのだ。
ほとんど白目を剥いたような状態だ。
その朱姫の右手には、短剣が握られている。
「やっと来たな、沙那と孫空女……。武器をこっちに投げろ。逆らえば、この宝玄仙の股をこの短剣で抉るぞ」
朱姫が残酷な笑みをこちらに向けた。
「朱姫?」
「えっ?」
沙那と孫空女はほとんど同時に叫んだ。
「朱姫ではない」
朱姫の口がそう言った。
「どういうことよ――? とにかく、ご主人様に向けている短剣を離しなさい、朱姫」
「朱姫ではないと言っておろう」
宝玄仙の膣に深々と男根を貫かせている朱姫が、短剣の刃先を宝玄仙の白い肌の腹に向けた。
「朱姫、やめなよっ。それはやり過ぎだよ」
怒鳴ったのは孫空女だ。
すでに『如意棒』を抜いている。
「こ、こいつは……ら、
息も絶え絶えの宝玄仙が、半ば白目を剥きながらそう言った。
「幽体?」
幽体というのは、肉体を持たない妖魔、あるいは人間のことだ。
話には聞いたことがあるが、接するのは初めてだ。
それが、朱姫の身体に入っているということなのか。
それで沙那ははっとした。
この僧院を朱姫と偵察したとき、井戸の水を舐めた直後、一瞬、朱姫の様子がおかしかった。
あのときに、乗っ取ったのか――。
「ひぐううっ」
宝玄仙が白目を剥いて、引き絞るような悲鳴をあげた。
そして、朱姫の股間の男根に貫かれたままの白い身体を繰り返しこわばらせ、そして脱力した。
だが、ぐったりとしている宝玄仙から、朱姫の身体に入っている幽体は、男根を抜こうとしない。
さらにひたすら激しい往復運動を続けている。
宝玄仙の口から発する声が嬌声から悲鳴に変わった。
「雷王というのが、お前の名なの?」
沙那は言った。
「口の利き方に気をつけろ。余はこの国の王だ」
「国王?」
確かに、この
だが、死んだという話は聞かない。
「道術を遣うなよ、宝玄仙。遣えば、殺すぞ」
朱姫の口がそう叫んだ。
おそらく、幽体には術が効かないのだろうと沙那は思った。
道術で抵抗できるならば、すでに朱姫は、この部屋の床に張り付いている。
ここは、宝玄仙の結界の中だ。
再び宝玄仙が大きな痙攣をしながら悲鳴をあげた。
そして、ぐったりと動かなくなった。
激しい暴力的な性交に気を失ったのだろう。
「それよりも、武器を捨てろ、沙那と孫空女」
その雷王が叫んだ。
叫びながら、軽く震え、そして、恍惚の表情を顔に浮かべた。
どうやら、宝玄仙の中に精を放ったようだ。
雷王は、やっと宝玄仙から男根を抜いた。
それと同時に、宝玄仙の膣から大量の精液が流れ出た。
いったいどのくらいの数の精を放ったのか……。
そした、沙那は、その男根の大きさに少しだけ息を呑んだ。
すごく大きい……。
「さて、じゃあ、ちょっと切り裂いてみるか。死なん程度にな」
その雷王が、宝玄仙の顔の横に胡坐をかき、宝玄仙の白く細い首に短剣を突きつけた。
「やめて。武器を捨てるわ」
沙那はそう言って、まだ腰に佩いたままだった細剣を鞘ごと放った。
孫空女も『如意棒』を床に捨てる。
「いいだろう。お前ら余の眼を見ろ」
『縛心術』だと思った。
朱姫の中の幽体の雷王は、朱姫の魔術を遣えるようだ。
朱姫の『縛心術』が沙那の頭に刻まれたのがわかった。
「沙那、これまずいよ……。朱姫の『縛心術』を受けちゃった」
横で孫空女が呻くように言った。
本来、沙那と孫空女の身体に入っている宝玄仙の霊気は、大抵の攻撃的な道術のたぐいをはね返すのだが、宝玄仙によって、朱姫の『縛心術』については受け入れられるようにされている。
それで、朱姫の『縛心術』で心を縛られてしまったのだ。
「ふたりとも、部屋に入って来い」
言われるままに部屋に入った。
朱姫に入っている雷王は、まだ、宝玄仙に短剣を向けている。
沙那と孫空女は、朱姫に向かい立つ。
宝玄仙は、ぐったりして、まだ身じろぎもしない。
「なるほど……。『縛心術』という術は、身体を自由にするのではなく、感情や感覚を自由にするのだな……。こんな感じか?」
朱姫の顔がなにかを探るような表情をしたかと思うと、さっと強い視線が孫空女に剥いた。
「ひっ」
孫空女が、いきなり跪いた。
「孫女?」
沙那はびっくりした。
「や、やめろよ――。ひいいっ――」
孫空女が真っ赤な顔をして、お尻を手で押さえている。
「なるほど、この朱姫の記憶のとおり、異常に尻が弱いのだな。尻が一番感じるというよりは、尻を悪戯されるという行為に興奮するようだ。見かけによらず、責められるのが好きなのだな、孫空女」
「なにをしたの?」
沙那は叫んだ。
「お、お尻を……舐められてる――」
跪いた孫空女が真っ赤な顔で声をあげた。
「沙那、お前は、感じやすいと朱姫の記憶にある。宝玄仙の淫具を付けられているお前は、普段は欲情を抑えている分、一線を越えてしまうと淫乱に歯止めがつけられなくなってしまう。面白い身体をしているな」
不意に、急に全身が熱くなる。
『縛心術』で身体を操られているのだというのはわかる。
身体の感度がどんどんあげられているのだ。
全身に沸き起こった淫らな疼きに、沙那は身体を抑えてしゃがみ込んでしまった。
「さて、お前たちには、少しやってもらいたいことがある……。だが、これだけの美女が揃うことは、宮廷にいた頃もなかったな。どれ、余興代わりに、乳繰り合ってみろ」
「なっ?」
沙那は身体を押さえたまま絶句した。
「ふ、ふざけるな、朱姫」
「しゅ、朱姫じゃないのよ、孫女……。朱姫は、か、身体を乗っ取られているのよ。ら、雷王よ……」
沙那は、孫空女に囁いた。
「早く、やらんか。この術遣いの女を殺すぞ」
宝玄仙は、さんざんに犯されて、死んだように倒れたままだ。意識がないのかもしれない。
「さ、沙那。ああっ、あいつ……本気だ。殺気を感じる……。う、くうっ……。嘘じゃない……。た、多分……躊躇わずに……短剣を刺す」
孫空女が、まだ、お尻を押さえながらつらそうに言った。
それは沙那にもわかる。
朱姫の身体の雷王からは、確かに殺気が漲っている。
幽体ならば、人質を失ってもどうということはない。
もともと、剣による攻撃は通用しないし、さらに宝玄仙の術が効かないのでは、対抗しようがない。
「早く、ふたりとも、服を脱げ。余を愉しますことができれば、この術遣いの女も、余が入っている半妖の娘も無事に返してやる」
「わ、わかったわ」
沙那は言った。
仕方がない。
とりあえず、言いなりになるしかないだろう。
「よし。では、『縛心術』をとめてやろう」
身体に流れていたおかしな術が去った。
もっとも、燃えあがった身体はそのままだ。
「孫女……」
沙那は、自分の衣服に手をかけながら、孫空女に視線を向けた。
孫空女も小さく頷いて、服を脱ぎ始めた。
「なるほど。この女法師ほどではないが、それに劣らず、なかなかの身体をしておるのう。しっかりと鍛えられている分、身体の線も美しい。後で抱いてやるぞ」
雷王が言った。
「うるさい。気が散るよ」
もう、素裸の孫空女が悪態をついた。
沙那も服を脱ぎ終わった。
ふたりで跪くと、沙那は、孫空女の裸身に腕を回す。
孫空女の腕も沙那を包む。
考えてみれば、霊具や道術を介さずに、孫空女と愛し合うのは初めてのような気がする。
孫空女と最初に会ったとき、宝玄仙の仕打ちにより、沙那の乳首と陰核を孫空女に舐めてもらったのを思い出した。
宝玄仙の淫具を仕掛けられている沙那は、孫空女の舌であっという間に達してしまったが、そんな沙那に孫空女は眼を白黒していた。
孫空女の唇に口を寄せる。
いつもそうだが、気の強い孫空女は、こういう性交のときにはとても受け身だ。
相手にされることを受け入れる。
沙那が孫空女の口の中に舌を入れて、孫空女の舌を舐める。
そうすると、孫空女もやっと舐め返してくる。
孫空女の舌を唾とともに吸う。
沙那の唾もまた、孫空女に吸われている。
唾液と唾液が混ざり合い、それがお互いの口の中を舌とともに往き来する。
ようやく口を離す。
蕩けるような口づけに呆然としてしまう。
孫空女もそんな表情をしている。
「なかなかに魅せるではないか。早く、続きをやれ」
雷王が言っているのだが、声は朱姫そのものだ。
そのせいか、恥ずかしさも悔しさもあまりない。
孫空女と愛し合っているという事実があるだけだ。
孫空女の乳首を吸う。
孫空女がびくりと身体を震わせた。
沙那を抱く孫空女の腕に力が入る。
そのまま孫空女の乳首を口に含む。
唾液をまとわりつかせて、口の中で転がす。
孫空女の震えが大きくなる。
そうやって、交互にふたつの乳房に口を移動させながら、片手を孫空女の股間に伸ばす。
すでにびしょびしょだ。
肉芽の皮を優しく剥いて軽く動かす。
「ああっ――。さ、沙那……す、素敵だよ――」
孫空女が情感のこもった声をあげた。
沙那は、乳首と肉芽を愛撫する舌と指の動きを激しくする。
孫空女の身体の震えが大きくなる。
それとともに、孫空女は、沙那の股間に自分の手を伸ばしてきた。
沙那がやっているのを真似て、同じように孫空女が指を沙那に使う。
「そ、そんなにしちゃあ……うわああっ」
あっという間に膨れあがった快楽が、堰を切って沙那の身体中に流れ込んできた。
こうなったら、もう、歯止めはきかない。
もう達しそうだ。
沙那は、慌てて、もう片方の手を背中から孫空女の股間の肛門に向かって動かす。
昇天するなら、孫空女も一緒に……。
舌と同時に両手で孫空女の前後の孔を刺激する。
孫空女が好きだ――。
強くて、それで優しくて……。淫らで……。沙那と同じように感じやすくて……。
好き……。
宝玄仙に騙されて、死ぬことさえ望んでいた沙那が、いま笑って、宝玄仙と旅ができるのは、孫空女のお陰だ。
孫空女を愛してる。
沙那は、孫空女を刺激する手を激しくした。
「あはあああっ」
孫空女が、ひと際大きな声を放ったかと思うと、身体を大きく仰け反らせて激しく震えた。
いったのだ。
沙那も孫空女の愛撫に身を任せた。
そのまま、一緒に絶頂しようとした。
だが、いきなり、ぐいと髪が後ろに引っ張られた。
我に返って顔をあげる。
朱姫だ――。
いや、朱姫の身体に入った雷王が、沙那の髪を掴んで床に押し倒した。
その大きな男根が沙那の股間に迫る。
だが、無防備だ。
「孫女、いまよ――」
沙那は叫んだ。
まだ、全身に汗をかいて上気した顔の孫空女が、朱姫の首に背後から掴んで引き倒す。
「この野郎。捕まえたぞ」
孫空女が叫んだ。
「や、やめんか――。余は
「わかった、わかった。雷王だろう」
孫空女が暴れる朱姫の身体をうつ伏せにひっくり返すと、両腕を背中側に捩じりあげた。
沙那も起きあがって、散らばっている宝玄仙の霊具から、『魔縄』を引っ張り出す。
あっという間に、背中で両腕を縛り上げて、ついでに両足首も背中に向けさせて手首と一緒に結ぶ。
これで、朱姫には手が出せないはずだ。
「こいつ、手間かけさせやがって」
孫空女が足で朱姫の身体を押した。
朱姫の身体は、両手両足を背中に回したまま仰向けにひっくり返る。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
沙那は寝台に縛られている宝玄仙に駆け寄った。
手首と足首の縄を解く。
宝玄仙は、すでに意識を取り戻してはいたが、まだ、荒い息だ。
なにかの道術を動かしたのがわかった。
宝玄仙の身体がやっと落ち着きを取り戻した。
「……こいつ……。さかりのついた犬猫みたいに、人の身体をほじくりまわしやがって、どうなるかわかっているだろうね、雷王?」
全裸の宝玄仙が、やはり全裸の朱姫に怒鳴った。
小柄な朱姫の股間には、不釣り合いな巨根がそそりあがっている。
「ははは、どうなるかというのは、どうするつもりなんだ、宝玄仙?」
仰向けの朱姫の中にいる雷王が笑った。
「まずは、朱姫の中から出ておいで。幽体としての姿を見せるんよ、雷王」
「それよりも、宝玄仙、さっきの続きをやろうか。このいきり立った余の棹を舐めよ」
朱姫の股間の巨根がぶるりと振られた。
「お、お前、自分の立場が分かっているのかい、雷王? お前は、沙那と孫空女に縛りあげられたんだよ――」
宝玄仙が寝台から飛び降りて、四肢を背中に捩じりあげて仰向けになっている朱姫に詰め寄った。
そのまま、蹴り飛ばすような仕草を見せたが、さすがに自重したようだ。
眼の前の身体は、雷王が乗っ取っているというものの、朱姫なのだ。
「立場を理解していないのは、お前の方だ。宝玄仙。余が入っている小娘を殺してよいのか?」
「殺す?」
宝玄仙が雷王に言った。
「どんな死に方をさせたい。息を止めて死なせようか? それとも、舌を噛み切るか? ああ、心臓を止めるということもできるぞ。こうだ」
朱姫の顔が蒼白になり、あっという間に脂汗が浮かんだ。
「な、なにしているんだい、雷王」
宝玄仙が叫んだ。
「こいつの身体の中で、じわじわと心臓を握りしめている。もうすぐ、死ぬぞ」
朱姫の口から出る言葉は、まったく平然としている。
それにも関わらず朱姫の表情はまずます青黒くなる。
朱姫の身体が痙攣し始めた。
沙那は内心で舌打ちした。
しまった。
四肢を拘束しても、こういう風に朱姫を攻撃できるなら、拘束そのものが無意味だ。
「ご主人様――」
沙那は叫んだ。
「わかっている、沙那――。いま、道術で追い出す」
宝玄仙が口の中でなにかを呟いた。
次に、身体の前で指を交差した。
そうしている間にも、どんどん朱姫の苦悶の表情は酷くなる。
「早く、舐めろ、宝玄仙」
雷王が愉快そうに言った。
「あ、あたしがやるよ――」
孫空女が叫んで、朱姫の股間の前に跪いた。
「お前はいい。近づくな。余は宝玄仙に命じておる――。ほら、宝玄仙、供を殺してもいいのか?」
「ち、畜生。術がまったく効きやしない。わかったよ、勝手に殺しな、雷王」
宝玄仙がそう言った。
「ご主人様――」
もう一度、沙那は叫んだ。
宝玄仙の舌打ちが聞こえた。
そして、宝玄仙は、朱姫の脚の間に跪くと、その大きな男根を口に含んだ。
口に男根を頬張っている宝玄仙は、その男根の大きさに苦しそうだ。
朱姫の顔が元に戻った。
呼吸も次第に静かになる。
「おお……。なかなかの技ではないか。宝玄仙……」
びくびくと男根が震える。
そして、さらにひと際太さを増した気がした。
その男根が跳ねた。
精を宝玄仙の口の中で放ったのだ。
宝玄仙が男根から口を離す。
口の中で出された精液は飲み込んだようだ。
宝玄仙は、当たり前のように、舌で朱姫から生えた男根を掃除している。
「ほほう。男を悦ばす技は、すべて持っておるのだな。ただ、見た目だけの女というわけではないようだ」
雷王が言った。
「道具はお前のものでも、吐き出した精は朱姫のものだね。味でわかるよ」
舌による奉仕の終わった宝玄仙が顔をあげて言った。
「よし、決めた、宝玄仙。余がここにいる間、お前は、余の妾にしてやる。よいな」
「め、妾だと」
宝玄仙が怒鳴った。
「よいのか? 逆らえば、この朱姫を殺すぞ。縛られようが、なにをされようが、殺すのは簡単だ。あっという間だ」
「くっ」
宝玄仙が顔を歪めた。
「おい、沙那と孫空女、この縄を解け──」
雷王が言った。
仕方なく、朱姫の身体を縛った縄を解く。
自由になった雷王がその縄を手に持った。
「宝玄仙、こっちに来て、足を開け」
雷王が言った。
「な、なんでだい?」
宝玄仙の顔に怒りの色が走る。
「いいのか? 殺すぞ?」
朱姫の顔に、また苦悶の表情が浮かぶ。
「ふん、わたしじゃなくて、こいつら使いな」
宝玄仙が沙那と孫空女を顎で指した。
「ちょ、ちょっと、ご主人様……」
孫空女が不平顔をする。
「なんだ、孫空女。文句でもあるのかい?」
宝玄仙が孫空女を睨んだ。
「お前だ――。宝玄仙、余は、お前に言っておるのだ――」
朱姫から出る雷王の言葉がひと際大きくなる。
それとともに、朱姫の顔がまた青黒くなる。
「や、やめないか、雷王――」
宝玄仙がそう言って、やっと朱姫の前に立って、肩幅に足を開いた。
「おう、宝玄仙、余の妾に相応しい姿にしてやろう。余が生身のときには、気に入った女は、こうやって服の下に縄掛けをして遊んだものだ」
そう言って魔縄を握った。
「おい、孫空女。寝台にある縄を全部持って来い。寝台に結んだままなのを解いて持ってくるんだ。肝心な部分は、道力では動かせない普通の縄を使ってやろう」
孫空女がぶつぶつ言いながら立ちあがった。
沙那は、仕方なく大人しくしていた。
「おい、宝玄仙――。髪が邪魔だ。たくし上げろ」
なにか呪いのような言葉を呟きながら、宝玄仙は自分の腰まである黒髪をたくし上げた。
朱姫の手が宝玄仙の白い首に『魔縄』をふた巻きする。
そして、胸の前で結ぶと、宝玄仙の乳房に枠を嵌めるように胸縄をした。
胸縄により、宝玄仙の乳房が大きくくびれた形になる。
そして、その豊かな両乳房を包むようにかけられている縄にさらに新たな縄を繋いで、腰を中心にひし形に結んでいく。
宝玄仙の白い身体にひし形の縄掛けによる縄化粧があっという間にできあがった。
「ほらよ」
孫空女が戻ってきて、雷王が乗っ取っている朱姫の前に、縄束を投げた。
その孫空女は、胸を隠して床に座っている沙那の横に並んで座る。
「宝玄仙、覚悟はいいな」
朱姫の手は、『魔縄』ではない普通の縄を手に取ると、しごきながら捩じり、宝玄仙の股間にあてがいながら調整し、小さな結び玉を作っていく。
「な、なにやってんだよ、お前?」
宝玄仙が真っ赤な顔をして声をあげた。
「いいから、これは“股縄”というやつだ。しばらくしていると病みつきになるぞ、宝玄仙」
沙那は、やっと雷王が結び玉を作った理由がわかって、はっとした。
そして、これから宝玄仙がされることを想像して怖ろしくなった。
最終的に宝玄仙の恥辱を晴らすために矛先は、沙那や孫空女や雷王がいなくなった後の朱姫に向かうしかないのだ。
朱姫の身体は、大小三個の結び玉のついたその縄を宝玄仙の胴縄に繋ぐと、両腿の間を潜らせて、宝玄仙の恥毛に食い込ませる。
「いいっ」
宝玄仙の口から短い悲鳴が放たれた。
「こうやって、割れ目に食い込ませるのだ。ちゃんと豆にも当たっているだろう、宝玄仙?」
「ちょ、ちょっと待て、こ、これは……」
宝玄仙が真っ赤な顔をして、腰を沈めた。
それに関わらず、宝玄仙の背後に回った朱姫は、宝玄仙の双臀に強く縄を食い込ませた。
一番大きな結び玉が、宝玄仙の肛門の場所に当たっている。
「うわっ」
宝玄仙が今度は、縄を避けるように仰け反った。
朱姫は、ぐいぐいと縄を引っ張ると、背中側の腰縄に繋いだ。
「うっ」
宝玄仙が膝を割りかける。
「終わりだ、宝玄仙。その縄を勝手に解けば、朱姫は死ぬと思え」
「うう……。んあっ」
宝玄仙がしゃがみ込んだ。
しかし、その途端、一度、びくりと身体を震わせて甘い声をあげる。
「ちょ、ちょっと、これは……」
そして、屈辱と苦痛の混じった真っ赤な顔で、朱姫を睨みつけた。
「お、お前、目的はなんだい、雷王? ただ、
宝玄仙が少し上気した表情で言った。
「おう、そうだった。お前たちに命じるのは、余の姿に化けて、いまの王座にいる偽の雷王を追い出すことだ」
雷王である朱姫がそう言った。