98 訊問のための破壊拷問
湧いて出たというのが印象だ。
衣類や食料などを買い込むために、ひとりで城郭に入っていた沙那は、目的を果たして、城郭を出ようと、大通りを城門に向かって進んでいたところだった。
そこで、いきなり大勢の兵に囲まれたのだ。
その数は数百人くらいだろうか。
前後はもちろん、両脇の建物も含めて、隙間なく兵が沙那を取り囲んでいる。
いつの間にそうなったのか気がつかなかった。
沙那は腰の細剣を抜いた。
だが、大勢の兵の中には弓兵もいる。
すでに包囲されてしまった以上、逃げるのは難しいかもしれない。
「逃げられやしないよ、沙那だろう、あんた?」
正面の隊列から、片目に黒い眼帯をした黒い肌をした女将校が出てきた。
この隊の指揮官だろう。
「人違いよ」
沙那は細剣を握る手に力を込めた。
宝玄仙とともに西域に向かう旅も、このところ厳しさを増し、諸王国の軍に追いかけ回されるということがずっと続いていた。
だから、こういう城郭に入ることは、なるべく避けていたのだが、どうしても旅のために必要な衣類や保存食などを手に入れなければならない。
それで、こうやって調達にやってきたのだ。
東帝国の宮廷を通じて、諸王国の王宮に、天教教団の回した宝玄仙の手配書が出回っていることは知っている。
だから、どこであろうと城郭に入るのは危険というのは承知していた。
だが、この衝陽国は、国とはいっても、城郭がひとつの城郭国家だから、大した警備はないだろうと高をくくっていたのだ。
いずれにしても、宝玄仙とともに、孫空女と朱姫のふたりは、この城郭の郊外の山中に隠れさせている。
そして、沙那がひとりで買い出しにやってきたのだ。
手配されている宝玄仙はもちろん城郭には入れない。
それで、誰かがこっそりと行くということになったが、背の高い孫空女はどうしても目立つ。
武芸のできない朱姫は、ひとりでは危険だ。
それで、沙那ということになった。
だが、こうなってしまっては、沙那でも逃げるのはつらい。
「あんたらには、東帝国と天教教団から多額の賞金がかけられているわ。もの凄いわねえ……。あんたら四人の身柄を差し出すだけで、あの帝国と教団から、この衝陽国の一年分の国費に匹敵する財が支払われるのよ」
「人違いと言ってるでしょう。わたしは、
沙那は叫んだ。
だが、女将校は、沙那の言い分を聞く様子もない。
手配書を見て、にやにやしている。
「……手配書には、無辜の女子供を数百人も殺したということになっているわ……。あたしは、そんな人間が嫌いなのよ。容赦しないからね」
そんなことになっているのかと思った。
もちろん、出鱈目だ。
宝玄仙がやったのは、宝玄仙を罠に陥れ、二年もの間、言語を絶するような恥獄を味あわせ続けた闘勝仙、呂洞仙、漢離仙を復讐のために殺したことだ。
宝玄仙は、八仙という天教教団の最高幹部だが、三人もまた八仙だった。
それで教団は、西方巡礼にかこつけて帝都を逃亡した宝玄仙を殺すことを決めた。
そして、東帝国を使い、その権威を通じて、現在の宝玄仙の行き先である諸王国に、宝玄仙の捕縛依頼を出している。
捕縛の目的が、帝都に護送する途中で、宝玄仙を殺すことにあるのは間違いない。
それで、こんな風に軍に追われることが日常になってしまっていた。
この衝陽国でも同じだ。
「知らないわ。人違いよ――。あっ、そうだ。
沙那は、荷物から烏鶏国から貰った身分証明書と旅行証明書の書類を出して、女隊長に向かって歩き出した。
あわよくば、彼女を人質にして逃げることを考えた。
考えられる逃亡の機会はそれしかないだろう。
だが、数歩進んだところで、眼の前が黒いもので覆われた。
一斉に放たれた矢の束だと気がついたのは一瞬後だ。
「うわっ」
避けようはない。
「きゃああああ」
沙那の全身に矢が突き刺さった。
全身を串刺しにして倒れ落ちる。
だが、はっとした。
倒れたあと、そんな矢はどこにもないことに気がついたのだ。
幻術――?
あっという間に、全身をそのまま押さえ込まれる。
地面に倒れた沙那の身体が両側から起こされて、膝立ちにされて抑え込まれた。
両腕は背中だ。
十数人の男たちに、寄ってたかって捕まれている。
ちょっと逃げられそうにない。
女将校が眼の前にいる。
呆気にとられている沙那の口を上から手で押さえられる。
すると、瞬時に口の中に液体が溢れた――。
なに?
道術――?
そのまま、液体を吐き出せないように、強く口が手で塞がれる。
「んんっ」
咄嗟に危険を感じたが、自由を封じられている。
沙那は抵抗しようとするが、沙那を掴んでいるのは、屈強の数名の兵だ。
しかも、両側と背後から身体を押さえられているので逃げられない。
「全部、飲むのよ、沙那」
女将校が沙那の鼻をつむ。
口の中の液体を身体に入れまいとしている沙那は、それで、ついに、液体を飲み干してしまった。
すると、一気に身体の力が抜けた。
動けないということはないが、手足がまるで重しでもつけられたようになった。
沙那は小さく舌打ちした。
どうやら、逃亡を防ぐための薬液だ。
「えほっ、ごほっ……、えっ?」
しかし、気がつくと、あれほどにいた兵がいない。
周りにいるのは、女将校のほかには、五、六人の兵だけだ。
矢に貫かれたはずの身体には、傷ひとつない。
地面にも矢はない。
沙那は困惑した。
「あたしは、
「幻術……?」
鼻と口から手を離された沙那は、咳込みながら言った。
囲まれていた人数は、黒夜叉を含めて、数名の兵だ。
それだけなら、対応のしようは幾らでもあった。
どうやら、黒夜叉というこの女が幻術遣いなのだろう。
この女の幻術に惑わされたらしい。
兵に囲まれたと思っていたのも、一斉に矢を放たれたのも、すべてが、幻だったようだ。
黒夜叉は、沙那が手に持っていた烏鶏国の書類を取りあげると、その場でびりびりに破った。
「な、なにするのよっ」
沙那は怒鳴った。
偽物とはいえ、烏鶏国の現在の国王が父親の暴王の追放に加担したお礼に作ってもらった正式の証明書だ。
大切なものなのだ。
「元気がいいわね。いずれにしても、沙那よね、あなた?」
黒夜叉が沙那の顎を掴む。
「……わ、わたしは、烏鶏国の国軍の将校の
それはさっき破られた証明書に書かれていた偽の身分だ。
あの国王には恩を売っている。
話を合わせてくれるくらいのことはしてくれるだろう。
「でも、証明書はないわね。いまとなっては問い合わせようもないわ。逮捕するよ」
黒夜叉は笑った。
沙那は歯噛みした。
これは、もう宝玄仙の供である沙那とばれている。
誤魔化しは通用しない。
だが、せいぜい黒夜叉を含めて、七人程度なら、沙那なら逃げられる。
この衝陽の城郭は、城壁はあるが、河も通っているし、城壁の低い場所も多くある。
それはあらかじめ調べてあるし、城郭の外にさえ出れれば、いくらでも逃げ切れる自信があった。
とにかく、沙那は両腕を掴んでいる兵の振りほどこうとして力を入れた。
だが、ほとんど力が入らない。
沙那の腕は掴まれて背中に捻じ曲げられたままだ。
やはり、さっき飲まされた液体のせいだ。
おそらく、筋肉を軽く弛緩させる薬が入っていたのだろう。
ほとんど身体に力が入らない。
「あら、逃げようとしたわ――。仕方がないわね。逃走防止の処置をさせてもらうわ。お前たち、こいつの服を脱がしなさい。逃走防止よ――」
黒夜叉が沙那を掴んでいる兵に声をかけた。
「なにするのよ。ちょっと――」
兵たちが、一斉に沙那の身体を押さえて、服を脱がし始める。
抵抗しようにも、身体は薬で弛緩されて力が入らない。
沙那は悲鳴をあげた。
「だ、誰か――、誰か、助けて」
藁にもすがる思いで叫んだ。
「馬鹿だねえ、軍に逆らう人間が、この城郭にいるわけないだろう」
黒夜叉は、城郭の大通りの真ん中で素っ裸にされそうになっている沙那をにやにやしながら見下ろしている。
沙那は力を振り絞って、腰を掴んでいた兵を突き飛ばして、よろめくように逃げた。
すでに、
上衣は前側が完全にはだけている。
「まだ、逃げようとしてるよ。すっぽんぽんにしてやんな」
黒夜叉が沙那の前に来て、悪いながら肩を蹴った。
全身が遅緩してるので、避けることもできず、そのまま、仰向けにひっくり返される。
再び、身体を捕まれて、膝立ちにされた。
上衣が後ろから掴まれて脱がされる。
それに腕をとられて、また、沙那は道に倒れ込んだ。
「あぐっ」
地面に肌が削られて、痛みが走る。
「逃げるなよ。悪党――」
「結構、身体してるぜ」
「胸もいいぜ」
あっという間に兵に群がられて、下着をすべて剥ぎ取られた。
履き物まで剥ぎ劣られて一糸まとわぬ素っ裸にされた沙那は、身体を隠してうずくまった。
「ひっ」
往来の大通りだ。
黒夜叉と兵を避けて、周りには人通りはないが、まったくいないというわけではない。
すると、その沙那の身体に向かって、黒夜叉がなにかの液体をかけた。
いつの間にか、小さな壺のようなものを黒夜叉が持っていて、その中の液体を沙那の裸身に注ぎ落としているのだ。
壺を見た瞬間、霊具だとわかった。
「ただの水よ……。でも、熱湯に感じるわよね。肌が溶けていくわよ」
「あぎゃああああ、ひがああああ」
次の瞬間、全身の皮膚が焼きただれるような痛みが発生して、沙那は絶叫して、のたうち回った。
すぐに、幻術だと悟ったが、熱で肌が溶けていくわよ痛みは本物だ。
沙那は地面で暴れまわった。
「ほら、そんなに暴れるんじゃないよ。大事なところが丸見えよ、沙那」
黒夜叉が笑っている。
しかし、それどころじゃない。
全身が焼けただれるような熱さだ。
壺の液体は尽きることなく、沙那に注がれ続ける。
沙那は狂ったように、地面で苦しみもがいた。
「ぎぎゃがあああ――。ひぎゃああ、ががあああ――」
羞恥心など吹き飛ぶような激痛だ。
沙那は、ひたすらに地面を転がり回った。
実際にはなにも起きていないのはわかっているが、沙那の頭の中では、全身の皮膚が焼きただれている。
それが続いている。
「沙那、膣と肛門に指を差し込むのよ。そうすると、痛みは止まるわよ」
黒夜叉が笑いながら言った。
沙那は、なにも考えることができず、前の穴と後ろの穴に指を差し入れた。
しかし、痛みは、終わらない。
「深さが足りないのよ、沙那。もっと深く入れなさい」
沙那は力一杯、指を差し込む。
痛みがぴたりととまった。
それで気がついたが、熱湯どころか、沙那の身体はあれほどに液体を注がれたのに、全く濡れてない。
よく見れば、地面もにも、水やお湯が落ちた痕はない。
液体そのものが幻術?
沙那は困惑した。
「いい格好よ、沙那。そんなところに、指を入れたら、痛みがとまるなんて、嘘に決まっているでしょう」
黒夜叉は、まだ笑っている。
とにかく痛みは収まったが、どうやら、からかわれたようだ。沙那は歯噛みした。
「さあ、立つのよ」
沙那の首に黒夜叉は縄をかけさせて、強引に沙那を立ちあがらせた。
だが、はっとした。
指が股間とお尻の穴から抜けないのだ――。
沙那は、自分の膣と肛門に深々と差し入れている指を抜こうとした。
しかし、なぜか、貼りついたように指が抜けない。
沙那は焦った。
「こ、これ、な、なんで……」
沙那は懸命に指を抜こうとした。
やっぱり、だめだ。
「下手な拘束具よりも、余程、逃亡防止になるでしょう? さあ、行くよ、沙那」
首に巻かれた縄が引かれた。
「こ、こんな姿で歩けというの? あ、あんたも、女でしょう」
沙那は、全裸で股間の前後に指を入れたまま、城郭を引き回されそうになっていることに気がつき、その想像もしたこともない羞恥に凍りついた。
「さっき言ったでしょう。あんたらみたいな悪党には容赦なんてするつもりなんてないのよ。さあ、歩くんだよ、沙那。また、さっきの痛みを味あわすよ」
首の縄が引かれる。
抵抗のしようのない沙那は、その姿のまま、黒夜叉たちとともに歩き始めた。
「んふうっ」
しかし、自分の指によって湧きあがった官能の刺激で、溜まらずその場にうずくまってしまった。沙那の股間には、あの『女淫輪』が嵌まっている。普段は気で抑えているが、刺激を加えてしまうと、それがとんでもない暴流を起こすのだ。
「ほら、どうした、沙那。さっさと、立ちなさい。お前が詮議を受ける軍府の建物は遠いんだよ」
沙那は、あまりの屈辱感に力一杯歯を食いしばった。
噛み過ぎた口の中に血の味がした。
すぐに無理矢理に立たされて、首の縄で歩かされる。
歩くと感じやすい沙那の身体は、稲妻のような快感を挿入している指で拾ってしまう。
「うっ、ま、待って――」
沙那は膝を折りかけた。
だが、首縄を引っ張られて前に進まされる。
しかし、泣きたくなるような、強い疼きが全身を貫き、数歩歩いては、また、立ちどまりそうになる。
「ほらほら」
「歩くんだ、悪党め」
「いちいち、よがるんじゃねえ」
しかし、よろめいたり、悶えたりするたびに、男の兵たちに、指を挿し込んでいる尻を棒で突かれたり、あるいは、乳首を捩じられる。
それで発生する官能の刺激に嬌声を出してしまい、また、快感で痙攣し、満足に歩くことさえできない。
やっぱり、数歩歩いては腰を落としてしまう。
そもそも、もともと痺れ薬のせいで、足元がふらつくのだ。
そのうえに、指を膣と肛門に深く入れたままなど歩けるわけがない。
とにかく、歩くたびに自分の指に前後の敏感な部分を翻弄される。
しかも、場所は、往来の道路だ。
遠巻きだが大勢の見物人の視線も感じる。
沙那は息もできないような恥辱に、眼の前が真っ暗になりそうだった。
「いい加減にしないか。ちょっと歩いては止まり、また、少し歩いては止まり……」
「だ、だって……」
「だってじゃないよ」
黒夜叉が沙那の両方の腕を掴んで、激しく揺さぶった。
「は、はああっ、あああっ、あはあっ」
沙那は膝をがくがくと震わせて、ついに大通りの真ん中で気をやった。
また、うずくまった沙那を、黒夜叉が髪の毛を掴んで引っ張りあげた。
「ほら、気をやってすっきりしただろう、沙那。ほら、行くよ」
黒夜叉が絶頂したばかりで脱力している沙那の身体を強引に立ちあがらせた。
「ひっ、ひいい」
沙那は悲鳴をあげた。
*
「あぎゃああああ、ああああ……」
六枚目の爪が剥がされたとき、沙那は自分の股間から尿が流れ落ちるのを感じた。
軍の詰所で始まった訊問だ。
訊問といっても、質問はない。
ただ、爪を剥がされる……。
それが続いている。
自分の指に翻弄されながら、城郭の大通りを歩かされるという恥辱を味あわされた沙那が、やっと軍の詰所に到着したときには、もう官能にどっぷりと浸かったような身体になっていた。
そして、詰所に着いたところで、やっと暗示を解いてもらい、股間から指を外してもらえた。
だが、その身体を休ませることも許されずに、沙那は軍の取調小屋の床に跪かされて、両手を台に乗せられて、手首と指の関節を全部革紐で固定された。
両足首には重い足枷が付けられる。
すると、すぐに数名の兵が交替で、沙那の指の爪を巨大な金具で一枚一枚、びりびりと爪を剥がしだしたのだ。
沙那は絶叫した。
しかし、黒夜叉は、なにも言わない。
ただ、沙那の前に立ち、にやにやしながら見ているだけだ。
その黒夜叉の指示で、次々に爪が金具で剥がされる。
「わ、わたし……は……う、烏鶏……国の将校で……」
「まだ、言うのかい、、沙那?」
黒夜叉が爪を剥がされて、血の流れている指の一本をぐりぐりと掴む。
「はがあぁぁぁああ――。ひぎいぃぃ――」
沙那は咆哮した。
「お前の名は?」
黒夜叉が、沙那の指を掴んだまま言った。
「ち、
沙那は、使っていた偽名を呻き声とともに口にした。
「しぶといわねえ。もういいわ。どうせ、残り四本剥がしたくらいじゃあ、白状しないだろう。油を持っておいで――」
黒夜叉は、煮えたぎる液体の入った鍋を沙那の両手の上に運ばせた。
沙那は顔をあげた。
汗と涙で濁る視界に、まだ音を立てて沸騰している鍋が映った。
「湯じゃないわよ……。煮えたぎった油よ。二度と剣は持てなくなるわよ、沙那……。宝玄仙はどこに隠れているの?」
「し、知らない……。わ、わたしは……千春……」
「かけな」
黒夜叉の声が取調小屋に響いた。
沸騰した油が沙那の手に注がれる。
沙那は限界まで口を開いて叫んでいた。
肌は溶け、一気に骨まで露出した。
「あがががか――、うぎゃあああ――」
沙那は奇声をあげ続けた。
「おかわりを持っておいで」
黒夜叉の冷酷な声が沙那に聞こえた。
二つ目の鍋が、また沙那の前に運ばれる。
「次は足よ、沙那。もう一度、聞くわよ。宝玄仙はどこ?」
「わ、わたしは……違う……」
「かけなさい」
大量の煮えた油が足枷を嵌めた脚の膝から下にかけられた。
沙那は咆哮した。
もう、恥も外聞もなく泣き叫んでいた。
「信じて……。わ、わたしは、沙那じゃないの……」
黒夜叉に哀訴した。
だが、三杯目の大鍋を黒夜叉が沙那の前に運ばせたとき、沙那は恐怖で気を失いそうになった。
「次は顔よ、沙那。顔の半分を焼くわ。流石に二目と見られない醜い顔になるわね。さあ、さっさと言いなさい。宝玄仙はどこ?」
沙那は震えた。
そして、絶叫した。
「わたしは、千春です。烏鶏国の将校です――。し、信じて、信じて、信じて――」
「きれいな顔が、二目と見られないくらいに醜くなるのよ。言いなさい。宝玄仙はどこ?」
鍋から金属の柄杓で油が注がれる。
それが頭の上に持ってこられる。
「そ、そんな人……、知りません――」
沙那は叫んだ。
「かけなさい」
黒夜叉は言った。
「し、しかし、黒夜叉様……」
初めて黒夜叉以外の兵が口を開いた。
「命令よ、かけなさい」
沙那の頭の上から油が被された。
「ひがあああああ――」
沙那は意識を失った。
「ほら、起きるのよ、沙那」
気がつくと、床の上に転がされていた。
まだ、取調小屋の中だ。
拘束は解かれている。
だが、それは必要ないからだ。
沙那は、皮膚がただれて肉が剝き出しになった手を見た。
おそらく足も同じ状態だろう。
手も足も、まったく動かない。
「んぐうっ」
横腹を力一杯蹴られた。
沙那は呻き声をあげて、顔を痛みの方向に向けた。
黒夜叉が立っていた。
「いいものを見せてやるわ、沙那」
仰向けになった沙那の上に鏡が向けられた。
そこに映っているのは、顔の半分が火傷でただれてしまい頭の半分の毛がほとんど抜け落ちている世にも恐ろしい顔だった。
それが自分の顔だと気がつくのに、かなりの時間が必要だった。
沙那は咆哮した。
「さっさと、言うのよ、沙那。宝玄仙はどこ?」
黒夜叉の後には、大きな鉄の槌を持っている兵がふたりいる。
「わたしは……沙那……じゃない」
黒夜叉が兵に頷いた。
ふたりの兵が沙那の両脇に立った。
「や、やめて……」
沙那は言った。
もはや、大きな声を出す力はない。
大槌が振り下ろされた。
「ぎゃああぁあああ――」
両膝が大槌により砕かれたのがわかった。
「次は脛よ。宝玄仙はどこ?」
沙那は黙っていた。
口を開かないのがわかると、黒夜叉は沙那の脛を砕かせた。
沙那はまた気を失った。
黒夜叉の指が追い込みをかける。
「は、は、はぁ……い、いい……いいっ……あああ……いやああああ……」
壮絶な声を出して沙那は喘いだ。
そして、傷だらけの裸身を震わせた。
快楽の波がまた沙那を襲う。
だが、またもぎりぎりのところで、黒夜叉の指が沙那の股間から離れる。
沙那は、仰け反らせていた首からがっくりと力を抜いた。
熱湯で手足と顔の半分を火傷させられ、手足の骨を全部砕いたうえに、黒夜叉は沙那の右肘から先を炎の中に突っ込ませた。
沙那がそれでも、宝玄仙の居場所を白状しなかったことで、次は拷問のやり方をかえた。
一応、最低限の治療を受けた沙那は、翌日、牢から引きずり出され、大きな台の上に仰向けに貼りつけにされた。
そして、色責めが始まった。
まずは、無理矢理に口をこじ開けられ、大量の媚薬を飲まされて、身体を火照りきった状態にされた。
そして、その身体に、黒夜叉による攻撃が始まった。
熟れきった股間を責め、ぎりぎりまで昇りつめさせては、ぎりぎりで寸止めする。
ひたすらそれを繰り返すのだ。
沙那は、狂乱した。
「随分、頑張るわね、沙那。もう、いきたいでしょう? 宝玄仙はどこ? 言えば、いかせてあげるわよ」
黒夜叉の持つ張形が、沙那の股間を出入りする。
「みんな、見ておくのよ。こいつの膣が収縮しはじめたでしょう? これが絶頂の兆候よ」
黒夜叉は、部下らしき兵の数名に説明しながら、反対の手の指先で肉芽を撫ぜた。
沙那は動けない身体をのたうたせた。
「張形の隙間から、かなりの淫液が溢れ出ましたね、黒夜叉様」
興奮した口調の部下の声が聞こえるが、自分の獣のような嬌声で聞き取りにくい。
「ぎりぎりまであげるほど効果があるわ。焦らすだけ焦らすのよ。いかせてはなんにもならないわ」
いきそうだ。そう思った。
しかし、黒夜叉は、またしても、すっと張形を引き抜いてしまう。
「ああ、そ、そんなあ」
沙那は狼狽した泣き声をあげしてしまった。
めくるめく悦惚の中でひたすら快感の絶頂へ息をきらせていたのである。
あと一歩というところで急に夢から現実に引き戻される。
火照りきった身体には、地獄のような快楽への欲望が残る。
「ひどい、ひどい。あんまりだわ」
紗那は拘束された四肢をひきつらせた。
気も狂うような屈辱だった。
「女には色責めが、一番効果があるわ。でも、あんたらは男だから、どうしても女には欲情して犯してしまう。そうしたら、拷問にもなんにもなりゃあしない。だから、最初にこいつの顔を潰したのよ。さあ、お前、やってみなさい。焦らすだけ焦らして、質問する。それを繰り返しなさい」
黒夜叉が、部下のひとりに張形を渡した。
「はい」
張形が沙那の中に挿入された。
「はああっ」
沙那は仰け反って大きく喘いだ。
しかし、挿入された張形がすっととまる。
失望した沙那は屈辱的な声をあげてしまう。
「どうした? これが欲しいのか、沙那。じゃあ、言うんだ。宝玄仙はどこだ?」
部下は再び張形を数度前後させた。
沙那が歓喜の声を出し始めると、とまる。
「お、お願い、ひと思いに……」
沙那は言った。
恥も外聞もない。いまは、ひたすらに絶頂したい。
しかし、張形はすっと抜かれた。
そして、内腿から下腹の入口に這わせはするがけっして肝心な部分には入っていこうとはしない。
激しく内腿が痙撃する。
「お願い。焦らさないで……。それで犯して……」
沙那はもはや我を忘れて言った。
部下は張形をゆっくりと沙那に挿入していき、かすかに動かした。
沙那は、快感を絞りとろうとして無意識のうちに腰を動かした。
張形が前後する。
いける――。あと、少し。
「宝玄仙は、どこだ?」
男の声……。
張形の動きがゆっくりになった。
嬌声をあげていた沙那は焦った。
それで愕然とした。
聞かれたことを言いそうになったのだ。
張形が引き抜かれた。
あとは焦らすように内腿に軽く這わせるだけだ。
「ああ、あんまりだわ」
沙那は泣きじゃくった。
女にとっては、耐えることのできない性の地獄だ。
「上手かったわ。じゃあ、次の者」
責め手を交替して、同じことを繰り返す。
黒夜叉は、沙那を使って部下の教育もやろうとしているようだ。
そのことも沙那を窒息しそうな屈辱になり、沙那を追い込む。
次の部下も何度も同じことを繰り返した。
沙那を追い上げては下げ、下げては追い上げ、決して昇りつめさせようとはしない。
沙那は反狂乱だった。
自分の全身がおぴただしい汗にまみれ、うねり、跳ね、玉のような汗が飛び散るのがわかった。
「宝玄仙は、どこだ? いかせてやるぞ」
「お願い、もう、いかせてえっ」
沙那はそう口走り、股間を張形にぶつけるように動かした。
その張形が抜かれる。
「宝玄仙はどこなの、沙那?」
黒夜叉の声だ。
もう、限界だ。
意識も混濁している。
このままでは、宝玄仙の居場所を口走ってしまう。
沙那は息をとめた。
息をとめて自殺はできない。
しかし、気を失うことはできる。
気を失えば、拷問は中断するしかない。
張形が前後しはじめる。
沙那は全身の気を集中して、呼吸を停止させた。
やがて、視界が消滅し、ついに、音も消えた。