※この作品はR-18です。

その女勇者(魔王)、勇者に溺愛されています。   作:白千ロク(玄川ロク)

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(10)その女勇者(魔王)、勇者は優しいと認識します。

 すぐに噛みつくように唇を塞いだのは、キーエルが「離せ」と胸を押したからだ。もう一度手首を一纏めにし、レガルドは離さないとでも言いたげに舌を絡め始める。

 「嫌だ」と押し返そうとすればするだけ深く重なり、横に立つイルガの「もうその辺でいいでしょう?」という注意もガン無視だ。要はレガルドが満足するまでずっと攻められ、最後はとろんとしたキーエルの顔中にキスの雨を降らす。

 

「やだ……も、ふざけ……なっ、バカぁ」

 

 深い口づけに躯の力が抜けたキーエルは抱き上げられ、レガルドの自室の寝台へと下ろされる。「歩けるから」と言っても下ろしてくれず、行き交う人々の視線が痛かった。

 

「なにもしないって言っただろ。勇者の変態っ」

「キスをしたくなる唇を持つのが悪い」

「オレはそんな唇持ってないからな!」

 

 べしりと胸を叩かれるが、痛くも痒くもなかった。それよりも、口を聞いてくれないことの方がダメージが大きい。今回はキーエルの所存ですぐに終わったが、長引けばなにをするか自分でも解らなかった。もしかしたら、酷く傷つける結果になっていたかもしれない。

 未だべしべし叩くその手を掴んで甲に唇を落とせば、「なにすんだよ」と唇を尖らせた。レガルドの手を叩き落として裾で拭えば、キーエルは部屋を見渡す。

 

「そういや、勇者はひとりで使ってるんだよな、この部屋」

「俺がどう使おうが俺の勝手だ」

「いやまぁ、勇者は騎士団長だからなにをしても自由だとは思うけどさ……。見取り図には二人部屋って書かれてたからどうなのかなって思って」

 

 相部屋の相手はいないのかと問えば、「そのことか」とレガルドは裾を握るキーエルの手に触れた。

 

「これからは二人部屋だろ。俺とお前の」

「オレとかよ!?」

「俺以外の相部屋は却下だ。そもそも、お前は俺のものだろう?」

「オレはものじゃありませんがね! けど、まあ……、勇者と相部屋で我慢してやるよ」

 

 したり顔で放つキーエルに虚を衝(つ)かれるレガルドは、「どうしたんだ?」とまじまじ見る。

 

「どうって、なにが?」

「俺としては、暴れるか、『誰が一緒になるか!』と言われるのを覚悟していたんだよ」

「そ、そこまでじゃねーしっ。複製だけど配置図とかダメにしたしさ、なによりオレは勇者に従うって決めたんだからな」

 

 そして、レガルドは少しは優しいんじゃないかと思ったわけだ。――口には出さないが、最後の思いが一番強い。無理矢理キスはしてくるが、その先には進まないという優しさ。レガルドなら本能で先に進みそうだが、まだ未遂だ。そこは見直してやると、キーエルはレガルドの手を握りしめた。びくりと躯が跳ね、頬が赤くなったのを見逃さない。

 

「……なんの真似だ」

「なんとなく、だ!」

 

 「そうか」と返したレガルドは手を払い、奥のドア向こうへと消える。内開きのようで、部屋の中が少し見えた。どうやら綺麗にはしているらしい。

 

「逃げるなバカー! おわぁあぁっ!」

 

 あとを追うように寝台から降りるが、勢いに飲まれて足が縺(もつ)れてしまい素っ転ぶ。なんとか顔は守ったが、打ちつけた膝や肘がじんと痺れた。

 視線の端に見えた開かれたドアはすぐに閉まり、ふわりと躯が浮く。なんだと目を丸めれば、鼻先にレガルドの怒りに満ちた顔があった。

 

「お前は……っ! 無理をするなと言っただろうが!」

「そ、そんなの聞いてないぃ」

 

 青くなりながら怯んだキーエルは寝台に投げられ、「スカートを押さえて膝を立てろ」とレガルドが放つ。

 

「な、なんででしょうか……?」

「早くしろ」

 

 覆い被さるレガルドの顔は厳しいままだ。「逆らうのか?」との声に、キーエルは頭を振った。

 

「なら、早くする」

「は、はいぃっ」

 

 言われた通りに膝を立ててスカートを押さえれば腕が伸び、「赤いな」と撫でられて躯が跳ねてしまう。「くすぐったい」と顔を逸らした瞬間、生温(なまぬる)いものが這った。

 

「ひっ……!?」

 

 思わず顔を戻せば、そこには舌が這っている。がしりと膝を掴みながら。

 

「っ……ぁ……」

 

 ちゅくりと水音を出しながら満遍なく膝を舐め、口づけを繰り返していく。ときおり柔く歯を立てられれば、キーエルの薄く開いた唇から熱い息が漏れていた。

 

「あ……ん、ん……! や、だ……っ」

「嫌じゃない。治療だからな」

「こ、こんなのっ、治療じゃ――」

 

 「ないだろ」と言いたげな顔を逸らし、唇を噛む。膝の痛みが消えているのに気がついたのだ。

 ふと上半身を起こしたレガルドはふたたびキーエルに覆い被さる。顔を戻されたキーエルは、乱れた息のまま「勇者ぁ?」と首を傾げた。

 

「脱げ」

「な……に?」

「捲ってもいいが、やりづらい」

 

 言いながらシャツのボタンを外していき、肌着姿へと変える。上下に揺れる胸に視線がいきがちになるが、それでもなんとか開(はだ)けていく。スカートを押さえながらではそれしかできないが、捲るよりはやりやすいだろう。

 腕を持ち上げて肘に唇を押しつけてやれば、キーエルは「んぁ……」と甘い声を上げる。

 

「あ……や、いや、だぁ……! 舌、ダメ、だって、ば」

 

 「嫌だ」「ダメだ」と拒絶の言葉を出していても、全身をびくびく震えさせながらぎゅっと目を閉じるその仕草に、顔が熱くなっていく。可愛いとしか浮かばない。

 

「もうすぐ終わる」

「ふぁ……ぁ、ゆう、しゃあぁ……! やだぁ」

 

 治療と称してキーエルに触れれば、最後はボロボロと泣き出してしまった。一応、回復魔法を使用しているので治療の一環ではあるだろうが、己の欲望の方が強く出てしまったのだ。触れたいという思いが。

 「泣くな」と頭を撫でれば「バカ」と鼻を啜る。「変態」とも罵るキーエルに「そうだな」と返せば、唇を噛んで顔を背けられた。しかしそれでも頭を撫で続ければ、なんとか落ち着いたようである。

 

「痛くはないか?」

「だいじょぶ……」

 

 レガルドは小さく頷くキーエルの瞼に口づけ、乱れた服を直していく。

 「もうなにもしない」と囁くレガルドは、実はかなり優しいのかもしれないと思い直したキーエルである。

 

 

 

 

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