※この作品はR-18です。

聖娼館ハルトゥム   作:Anacletus

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第三章三十九節★

第三章三十九節「双思相愛」

 

―――娼館【月兎亭】彩宴の間。

 

 絹(シルク)のシーツが一面に敷かれた室内。

 

 扉から下りればすぐに床一面が寝台という珍しい造り。

 

 壁を飾るのは白布。

 

 天井から垂れ下がるのも白布。

 

 絡め取られるような白き間で少年は自分の頭よりも大きな胸の狭間に抱かれていた。

 

 更にその手の中では小さな頭が心地良さそうに撫でられている。

 

「……」

 

 どうしてこんな事になったのかと自問すれば、自分で望んだからだとの回答。

 

 放課後。

 

 精霊の召喚による肉体の強化を目論んだ一件は儀式の発動と終了後、破綻した。

 

 いや、結果的には破綻していないが、少年の主目的としていた精霊は呼び出せなかった。

 

 代わりに降って沸いたのはいつも学校で会っている部活の部長に何処からかやってきた浮遊するハウスメイド。

 

 店側には失敗したと誤魔化したものの。

 

 その原因と結果に付いて幾らかの推測を立てた今となっては事態の推移が思いも寄らない方向へと向かいつつあると彼は己の現状を理解する。

 

 ウルとの仲を進展させる事となった地下水道での一件。

 

 あの事件で囚われ、彼女が肉体を改造されていたのは助けた張本人として知るところだ。

 

 だが、その改造というのが実は肉体だけではなく。

 

 魂魄や存在の属性にまで影響を及ぼしていた事までは少年も見抜けていなかった。

 

 ウルを捉えたのは水精。

 

 ハガスを古から支えていた存在。

 

 それが急激な開発によって地下水道を住処とするようになった事で零落。

 

 魂魄までも汚泥に染まり切ったところを霧と外なる神の眷属に侵食されて変質。

 

 そういう存在が生贄として海神の中でウルに施していた改造とは何だったのか。

 

 今更に多少詳しく聞いて少年は知った。

 

 多産の為の肉体。

 

 つまり、施術されたのは水精として再び一族を再興する為の力だったのだ。

 

 そんな事とは露知らず。

 

 少年は精霊を召喚しようとした。

 

 肉体関係まで持ってしまった相手だ。

 

 最も深い縁を持つ精霊として申し分無い。

 

 結果として出てきたのがウルという事実は何から何まで必然だったという事になる。

 

 諸々の事情を推測混じりに話して。

 

 何処か複雑な表情をするのかと思えば。

 

 銀の巻き髪は逆立つ事も無く。

 

 ウルは少年をキュッと抱き締めた。

 

 女は強し。

 

 精霊召喚に関する制約事項が適応されてしまった事でしばらくかなり不便な事となるに違い無かったが、それよりも一番縁深い精霊として召喚された事を彼女は心の底から喜んだ。

 

 事情をアーギストに連絡すると。

 

 明日以降調査を行って必要なら制約の解除。

 

 ウルとの契約を解く運びとなった。

 

 勿論、一度契制約を魔術で課した以上、容易に解約は出来ない事は想像に難くなく。

 

 少年は彼女に謝った。

 

 が、それも杞憂。

 

 嬉々として尻尾を振りつつ、ウル・エイフォン・バーゲルは応えた。

 

『しばらく貴方の傍に居られる事の方が嬉しいですわ』

 

 恋する乙女をちょっと舐めていた少年はその答えに半笑いで、璃紗は二人に気を利かせ【崩燼機関】製の通信機を店から借りてゼオ家に事情を連絡。

 

 こうなってしまうと後はアルゥ・ゼオからの「娘が増えた気がして嬉しい」とのGOサインでしばしの同居が決定。

 

 もはや男の意見が出る幕は消えた。

 

 これがたった三時間の間に起こった出来事だと言うのだから、女性のバイタリティーに唯々(ただただ)脱帽する以外無いだろう。

 

 そうして今や何の問題無いと公私共に追い詰められた感のある無自覚なる四五六(ドンファン)イクス・ゼオの夜は少女達の芳しい薫りと砂糖菓子より甘い蜜の如き束縛で雁字搦めとなっていた。

 

「んふ。ふふふ……」

 

「えへへ……んぅ♡」

 

 もう黒猫は傍にいない。

 

 月兎亭に到着すると『ママヲ~♪』と啼きながら頭部から降り。

 

 廊下の奥へと消えてしまったからだ。

 

 それから女性陣に引き摺られるようにして部屋まで来て、今は桜色の空気に溺れている。

 

 これが所謂、両手に花というやつかと安易に喜べる性格ならば良かったのだろうが、そんなに楽観出来る話でもないのは璃紗を預かった時と同様で。

 

 少年は一人、二人の異性に挟まれて悩む。

 

 これからの事を。

 

「あの……」

 

「どうかしたのかしら? イクス」

 

「イークス。んゅぅ♪」

 

 胸を押し付けて。

 

 頭をもっと撫でてと甘えながら。

 

 ウルと璃紗に少年は現実的にまだ解決されていない問題を口にする。

 

「せめて。こういうのは“あの子”をどうにかしてからにしない?」

 

「何でしょうか? 我が創造主」

 

 三人を見下ろす位置に例の召喚で出てきたハウスメイドが浮いていた。

 

 その顔はワカメのように漂う紫の頭髪に隠れている。

 

「いいじゃありませんの。だって、その子は貴方の精霊なんでしょう?」

 

 ウルの言葉は真理だ。

 

 精霊を召喚したらハウスメイドだった=少年の精霊はハウスメイドだったという事になる。

 

 ハウスメイドの精霊がいるかどうかは置いておくとしても、出てきたのだから言い訳のしようも無い。

 

 そもそもそんなに使用人たるメイドに思い入れなんて無いはずの少年であるが、過去を失っている関係上、絶対にそんな事は無かったとは言えない。

 

 肉体を持ってる浮遊ハウスメイドが出てきてしまった以上。

 

 反論に足る情報を持ち合わせない少年はメイド好きの汚名を着るしかないのである。

 

「イクスがメイド大好きなら璃紗……その、アルゥ様に頼んで、そういう衣装とか取り寄せても……えへへ……」

 

 色ボケ全開でほんわかした回答をブチ上げた黒き小獅子は少年の胸にグリグリと顔を押し付けつつ呟いた。

 

「えっと、名前をあの場所で付けるように言われてるんだけど、君って名前とか持ってたりする?」

 

「……状況を診断。固体名は存在しませんが、ディアコノスとの名称を変更しますか?」

 

「ディアコノス?」

 

「……創造主の身体状況をスキャニング……終了。登録要件と合致せず。一部の反応を確認―――までの護送―――自己診断―――外部記憶との切断及び召喚時の制約効果による情報検閲を確認。緊急要件――外部との再接続―――失敗――【因痕(キカトリクス)】収束率0―――機能不全と診断」

 

 ブツブツと喋っていたハウスメイドが少年の顔を髪の奥からしっかりと捉えた。

 

「現在、深刻な機能障害が発生しており、システム・カーネルの応急修復を勧めます。ただし、内部機能の修繕を最優先にした当機能を使用した場合、一部の破損、欠落、検閲された記録と機能が廃棄(オミット)され、並列機械群とは異なる複雑系へと再構築される可能性があり、再接続が困難となります。創造主の不全状況が継続される場合、正規の手順を踏まない応急修復が為された後、当機の濫用を防ぐ目的で能力は封印。計測によって創造主の復元率を算出し、その割合に応じたサービスしか提供出来ません。これは精神干渉及び存在浸食等によって敵性体から命令を受けない為の緊急時マニュアルであり、最終セーフティー内の事項である為、改編出来ません」

 

 何を言っているのかさっぱりな様子でウルと璃紗は少年に夢中となり、言っている事の半分くらいを理解しつつも知らない情報が幾つかある為にまだ色々と判断しかねた少年がそっと尋ねる。

 

「ちなみに修復しないと何が出来ないか聞いていい?」

 

「創造主の半径3m以内からの離脱。空間潜行。当機能力の94%の使用。保有する特定情報の開示。機体損傷時の機密保持機能の解除。【因痕】の制御及び計測。その他、当機に使用されている全物質の組み換え等です」

 

「……機密保持機能って具体的には?」

 

「情報窃取を防止する為、窃取可能域内の因果律導線。【運命糸(リネア・フェイティ)】の破断機能です」

 

 今、素晴らしく拙い状況に置かれている事を察した少年はハウスメイド。

 

 否、ディアコノスと呼ばれているらしい固体にそっと告げる。

 

 すぐに応急修復を、と。

 

 本当ならもっと聞きたい事があった。

 

 しかし、言われた内容の半分が理解出来れば、機密保持機能の内容は大体想像が出来る。

 

 要は高度な自爆機能だ。

 

 因果律と付いたものを破断するという事が一体どんな結果を生むのか。

 

 身を持って知りたくは無い。

 

 自分の過去を詮索するより少女達を守る方が優先なのは自明。

 

 境界踏破によって自分を呼ぶものが何であるか。

 

 それを確かめようとしている身からすれば、重要そうな情報が手に入る機会を逃すのは痛かったが、過去の詮索を自分が急いでいないと少年は己を知っている。

 

(過去から逃げたいというより、疲れてるって言う方が妥当……なのかな)

 

 無闇に高度な使い魔の類を保持していたのなら、過去が明るくなかっただろう事は明白。

 

 だが、暗に示された自分の知らない自分が幾ら闇に沈んでいようが、その事実を周囲の誰かに押し付けるような事も無いというのが最終的な結論だった。

 

(………)

 

 心の何処かで予感しているのだ。

 

 結末はやがてやってくる。

 

 それは遅い事も早い事も無い、と。

 

 ならば、今は“この自分”を精一杯生きていようというのは言い訳染みてはいるが、最善に違いなかった。

 

 いつだろうと永遠に続くものは多くない。

 

(せめて、この穏やかな時間の中……僕も……)

 

「イクス?」

 

「どうかした?」

 

 訊ねられて。

 

 自分が二人の女性から迫られているのだと今更に思い出した手がそっと細やかな手と小さな手に重なる。

 

「何でも」

 

 そう少年が呟くと虚空から「作業完了」の声。

 

「ディアコノスって言ったっけ? もう大丈夫?」

 

「はい。何かあれば、新規の命令を」

 

「じゃあ、しばらく姿を消してて欲しいんだけど、いいかな?」

 

「了解しました。これより空間潜行を行います。ご命令の際はお呼び掛け下さい」

 

 ペコリと頭を下げたディアコノスが静かに姿を部屋から消した。

 

「あ、消えちゃった。イクスの精霊さんて、やっぱり凄い」

 

「僕の精霊だとどうして凄いのか良く分からないんだけど」

 

 苦笑する少年にウルは少し呆れ気味に囁く。

 

「自覚が無いというのも困り物ですわね」

 

「褒められてないのは解る、かな……」

 

 薄明かりの中で密着したままのお喋り。

 

 内容はたぶん何だっていいのだと少年は理解する。

 

 傍にいて、共に話したい事がある。

 

 聞いてくれる人がいる。

 

 それだけで大概人間というのは満たされてしまうものだ。

 

 好意に値する人が相手ならば、尚更だろう。

 

「イクス……」

 

 細やかな手が少年の白いシャツの間に侵入し始める。

 

「擽ったいよ……ウル」

 

「あ、貴方が悪いんですわ/// 昨日、あんなにしておいてじ、焦らして……今日だって、本当は朝…ぅぅ」

 

 基本的に朝早い彼女が、少年の寝顔の愛らしさに発情していた事をまだ誰も知らない。

 

 もしも、少年が疲れていなければ、朝から行為に及んでいた事は確実だ。

 

 別に繋がるだけが方法ではない。

 

 手でも口でもやりようはある。

 

 擦り付けるだけでもいい。

 

 そう思っているのに少年への奉仕衝動を我慢したのは愛欲よりも慈愛が勝った結果であって、ウルなりの感謝と自制があったからだ。

 

 本能的な衝動が強い亜人は多い。

 

 獣人型の者はそれが特に顕著だ。

 

 だからこそ、理性と規律を重んじる亜人貴族主義は高潔を常に求める。

 

 人よりもより善き姿たれ。

 

 そう己に言い聞かせて獣の本能を押さえ込んだ今朝方のウルは正に理想的なお手本だろう。

 

 理性が少年との密着で溶かされていく最中も接触するだけで我慢していたのは精霊の事もあったからだ。

 

 だが、それが一応の解決を見たらしいと知れば、抑えだって効かなくなる。

 

(あぁ、イクスの匂い……わたくしのつ、番に……なる殿方の/// これ以上我慢していたら、頭がどうにかなってしまいそうですわ……)

 

 少年の頭を挟み込んだ乳房がジンジンと熱く。

 

 それ以上に重ねられた手に胸がきゅうっと切なさに軋む。

 

 眩暈のしそうな興奮と衝動。

 

 卑猥極まる妄想は少し手を動かせば、現実になる。

 

 それでもまだ本格的な行為に及ばないのは自分からばかり求めていたのでははしたないとの乙女心と少年の心身を慮る心からの思い遣りがあるからこそ。

 

 それでも現状はご馳走を目の前に置かれて待てをされている犬と然程変わらない。

 

「ごめんね。待たせて……」

 

 少しだけ重ねられた手の力が強くなるだけで。

 

 少年の顔に浮かぶ笑みが優しくなるだけで。

 

 ウルは心音も体温も上がっていくのを止められなくなった。

 

「今日もしよっか?」

 

「~~~っ」

 

 たぶん、軽く達した。

 

 少年の微笑みで濡れた股間が焦がされ、薬ですら抑えが効かなくなっていく。

 

「イ、イクス。きょ、今日も璃紗さんと一緒に?」

 

「それでいい? 璃紗は」

 

「うん♪」

 

 もう辛抱出来なくなりつつあるウルの様子を察して、小獅子が頷いた。

 

 今にも服を着たまま行為を始めてしまいそうな表情。

 

 それは自分とて同じだったからだ。

 

 同じように発情した牝として、ただ少年に仕えるという以外の独占欲なんて些細な問題だと。

 

「……イクス。その……あまり驚かないでね」

 

 シュルシュルと衣擦れの音が二人分。

 

 少年の前で璃紗は見せ付けるように脱ぎ出し、ウルは背後で制服を剥いでいく。

 

「どういう事?」

 

 顔を僅かに赤らめて璃紗が幼い媚態を露にすると小さく何事かを呟いた。

 

 するとその一部の輪郭が丸みを帯びて本当の姿を現す。

 

「その……それって……昨日の?」

 

「ぅん……イクスの赤ちゃんの種……まだお胎(なか)に一杯になってて……」

 

 妊娠したように大きくなった腹部。

 

 愛らしいすじもそのまま、恥しそうに丸みを帯びた場所を両手で触る姿はいつもよりも艶やかだった。

 

「わ、わたくしだって……イクスの子種で……」

 

「ウル?」

 

 今まで少年を後ろで制服を脱いでいたウルが少年の背中にふっくらとしたものを押し付けた。

 

「今日、ずっとこのまま過ごしていて……誰かにバレたらと凄く恥しかったんですからね!?」

 

 その割には嬉しそうな声。

 

 少年は耳元で少しずつ荒くなる吐息を感じながら、また手を重ねた。

 

「ウルさん」

 

 璃紗の声にコクンと頷いたウルが少年の前へと移動する。

 

 すると大小揃った二人の妊婦が左右に揃い、艶やかに期待の眼差しを向けてくる図が完成した。

 

 二人が同時に頭部に手をやる。

 

 髪を纏めていた細い紐が解けた璃紗は出会った頃のまま。

 

 跳ね乱れる黒髪に裸体を彩らせ。

 

 銀の巻き毛が解けたウルは常の凛々しさよりも女性らしさを強調し。

 

 煌めくような肌が銀細工とも見紛う糸で隠された。

 

「二人とも……」

 

 コクンと少年の喉が鳴ったのも仕方ない。

 

 黒と銀。

 大と小。

 盛と動。

 

 対照的な二人の美しい牝が自分の子種で胎を満たして微笑む姿。

 

 これで興奮しない方がどうかしている。

 

「「イクス……」」

 

 打ち合わせをしたわけでもないのだろう二人の声が揃う。

 

 大きな水蜜桃も小さな蕾も等しく同じ息遣いで少年へと近付き、手を服に掛けていく。

 

「今日はわたくし達が……」

 

「気持ちよくするから、ね?」

 

 優しく下穿きまで脱がされた少年の股間から出てきた幹を覗き込んで。

 

 クスリと二匹の牝は微笑んだ。

 

 もうエラも張らせて、桜色の先端は膨れている。

 

「赤ちゃん、作ろう?」

 

 艶やかに小さな妖婦が耳朶を食みながら囁いた。

 

 *

 

 少年の左右から大きさも違う手が緩りと伸びて、幹へと絡み付いていく。

 

 刀を常に握っているとはいえ、それでも十分に柔らかな手は親指と人差し指で輪を作って竿から傘の部分を丹念に上下する。

 

 まだフニフニと年頃らしい小さな手は柔々(やわやわ)と少年の大切な双(ふた)つの睾丸(たま)を優しくコロコロと揉み解す。

 

「イクス……ん♡」

 

 巨大な谷間が少年の片腕を飲み込んでシットリと濡れ始めた肌で摩擦した。

 

 もしも、自分の幹をその間に埋められたならと妄想しない男はいないに違いない。

 

 大きさ、形、弾力、全てを兼ね備えた凶悪なまでに母性を強調する胸元。

 

 肥大化した乳輪と乳首は勃起しながらも、だらしない様子は無く。

 

 吸い付くような肌触りのまま汗を滴らせて輝いている。

 

「んく……」

 

 それだけではない。

 

 少年の腕の先には膨れた腹部がある。

 

 妊婦のように膨らんだ場所は優美な曲線を描き、男の征服欲という名の本能を刺激する。

 

 自分の子種がまだ牝を蹂躙しているのだと想像して優越感を持たない牡はいないだろう。

 

「♪」

 

 指が腹部に触れているだけで嬉しそうな笑みを浮かべるウルは既に大成した母の貫禄である。

 

「あ~ウルさんのお腹ばっかり見てる……」

 

「え? いや、その……」

 

 反対側からの声に思わず自分がウルの腹部を凝視していたのだと知って、少年が慌てた。

 

「イクスもやっぱり、自分の赤ちゃんがいる方が興奮する?」

 

 疑問というには艶やかな笑み。

 

 少年の手を自分の胎の上に置かせて璃紗が体を擦り付ける。

 

「その、イクスもって?」

 

「此処だとね。お客さんにどういう事が好まれるのかって調べたりするの。先輩の人達が男の人は自分の赤ちゃんがいるお腹でスル方が興奮してくれるって」

 

「男として答えない方がいいような……」

 

 男の征服欲を暴露されて。

 

 少年が曖昧な笑みを浮かべる。

 

「イクス。貴方もそう思うんですの?」

 

 ウルが純粋に疑問だったようで訊ねる。

 

「まぁ、その……二人のお腹を見て大きくなっちゃったのは否定出来ない、かな……」

 

「じゃあ、此処からは」

 

 璃紗がニチャニチャと鈴口から零れた蜜で塗れた幹から手を離した。

 

 ウルもそれに習うと璃紗が少年の股間へと割って入り、自分のお腹をピットリと裏筋に付けて揺すり始める。

 

「っ……」

 

「まだ赤ちゃんいないけど……璃紗の小っちゃいお部屋に一杯イクスのお種が、入ってるんだよ?」

 

 幹が跳ねた。

 

「ん♡ イクスの熱くて璃紗のお腹でビクビクしてる……可愛い♪」

 

「リ、リーシャさん///」

 

 娼婦特有の明け透けな誘い文句に頬を染めながら、ウルが少年の蜜でテラテラと光ながら上下する大きくて小さなお腹を凝視する。

 

「イクス? 璃紗のお腹気持ちいい? まだお祝いしてない璃紗の卵で赤ちゃん作りたい?」

 

 熱に浮かされながら、少年の気持ちが知りたいと。

 

 璃紗が自然に男の征服欲を満たすだろう言葉で訊ねる。

 

 ヂュグチュグヂュグチュグ。

 

 粘着くようになってきた水音の最中。

 

 少年は自然に娼婦として男を誘惑する小獅子に頷いていた。

 

「璃紗がそうしたいって思うなら、僕も……」

 

「♡」

 

 胸の奥。

 

 煮え滾るような迸りを感じながら、璃紗が心からの笑みを浮かべた。

 

「璃紗も……璃紗もしたいよ? イクスの濃くって赤ちゃんのお部屋を今もプチプチって犯してくれてるお種で……璃紗の卵を全部赤ちゃんにしてもらいたいの……♡」

 

 それは台詞などではない。

 

 少女の心からの想いだった。

 

「イクスぅ♡ お腹へこまないように……また、種付して?」

 

 その上目遣いの哀願に抗し切れる男などいまい。

 

 正しく娼婦そのままに少女は己の欲求を口にした。

 

(ぁあ、こんなにも歳の差があるのにわたくし……璃紗さんに……)

 

 二人の様子をずっと見ていて。

 

 璃紗のオネダリに女でありながら、劣情を催すだけの魅力を感じて。

 

 牝として自分が少女にまだ劣っているのだとウルは理解した。

 

 今までただ激しく求めてばかりで少年の心に迫るだけのアピールが出来ていただろうか。

 

 そう考えれば、ウルには素直に成り切れない部分が数多くある。

 

 少女くらい真っ直ぐに自分の想いを伝えられたら。

 

 そう思いつつも、彼女はまだ自分の貴族という立場も部長という地位も捨て切れずにいる。

 

 いや、体では屈服すらしているのに少年へ素直に甘えられない自分を何処かに抱えていた。

 

「璃紗……」

 

「んぁ♡ ひぅ!? お腹にそんな擦りつけたらぁ♡」

 

 今まで以上に顔を蕩けさせた少女が熱い吐息を漏らして喘ぐ。

 

 喉を伝う汗。

 

 桜色の二つの蕾が色を濃くして。

 

 小さな唇が何度も少年の名を呼ぶ。

 

(お腹熱いよぉ……ん♡)

 

 脳裏の何処かで誰かが囁く。

 

 子供が出来るかもしれないと。

 

(赤ちゃんが出来たら、こんなに気持ちよくて……幸せなのかなぁ……ずっと、イクスの傍で……)

 

 それは想像というには細やかな願いだった。

 

 好きな人の傍でその人の子供を産んで育てる。

 

 女ならば、一度は考えるかもしれない。

 

 大陸中の娼婦からすれば妄想にも等しい穏やかな時間。

 

 千億の夜を過ごしても手に入れられるとは思えない幻。

 

「イクス……イクスぅ……」

 

 自分の前で熱い吐息を漏らす貴方。

 

 まだ少ししか共にいない。

 

 娼館で過ごした時間には到底及ばない。

 

 けれど、心の奥にいる。

 

 その男に何度も何度も被る情景。

 

 剣に貫かれていた。

 

 全身を燃やされていた。

 背中から刺されていた。

 首を捻じ切られていた。

 

 苦しみも見せずに笑っていた。

 

 這い蹲る者に手を差し伸べ。

 

 歪み切った誰かを抱擁して。

 

 化物にすら温もりを与えた。

 

(きっと、ずっと、こんな風だった……こんなに傷付いても……諦めなかった……)

 

 無数の姿。

 

 無数の日々。

 

 答え無き世界に示し続けたのは優しさ。

 

 それこそが強さだと。

 

 貫き続ける背中にこそ宿る力なのだと。

 

 今の少女にならば、分かる。

 

 命の使い道を少年が変えた事など無い。

 

 いつだろう、たった一つ。

 

 他者の横にいる。

 

 愛されようと憎まれようと傍にいる。

 

 それだけで人々の前にあった偶像。

 

 名前すら無くしても変わらない。

 

 それが、少年だった。

 

(無限の旅…永劫の孤独…世界の頚城…汝の名は―――)

 

 独り立ち尽くす顔も。

 

 独り空仰ぐ顔も。

 

 地面に倒れ臥した顔も。

 

 彼女だけが見た……いつか。

 

 虹彩の破れた魔眼が欠けた部分を全て同じ色で埋めた。

 

「大好き、だよ……イクス」

 

「璃、紗……ッ」

 

 白く茹ったような子種が胎の上で弾ける。

 

 膨れた胎を胸を顔を染めていく。

 

 まだ出来る。

 

 まだ愉しませられる。

 

 そう思っていた身体がクッタリと力なく少年の胸に倒れ込んで。

 

(もっと、見せて……イクスが、ずっと笑っていられるように……ずっと、傍に……いられる……よう……に………)

 

 意識へ掛かる負荷に耐えられず。

 

 プツリと少女の意識が落ちた。

 

 *

 

「リーシャ、さん?」

 

 すぅすぅと寝息を立ててコロンと少年の横に転がった少女にウルが声を掛けた。

 

「疲れちゃったのかな……?」

 

 少年が軽く指を弾く。

 

 全身を白く彩っていた精が薄らと精魔術の導きに従い璃紗の肌に吸収、生気として還元されていった。

 

「…その……リーシャさんの番が終わったのなら……」

 

 それ以上は言えず。

 

 それでも内心の情欲と敗北感を引き摺ったまま。

 

 ウルが少年に身を寄せた。

 

「うん。次はウルの番だから、ね?」

 

「ぁ」

 

 少年の指が銀糸を梳く。

 

 それだけで今までの複雑な内心が吹き飛び。

 

 自分でも単純な女だと思ってしまうくらいの喜びが彼女の全身を満たしていく。

 

「イクス。リーシャさんにしたようにわ、わたくしのお腹も……使って?」

 

 どうにかそうオネダリして。

 

 ウルが少年の正面へと回った。

 

 真白の餅のように弾力を湛えた乳房。

 

 それと同じくらい大きくなった腹部。

 

 妊娠していると言われれば、誰もが認めざるを得ないだろう。

 

 艶やを帯びた瞳が潤み。

 

 コクンと唾を飲み込んだ。

 

「……わたくしのお腹……もう普通とは違っていて……」

 

「違ってるって?」

 

 細い指が自分の臍へと伸びて中心のプックリと少し膨れた場所を左右から割り開く。

 

 すると、ドロリと白いものが、前日少年に注がれた精が溢れていく。

 

「これって……」

 

「臍の部分が……お尻と同じように子宮に続いていると……先生が……」

 

「それって」

 

「は、はぃ……」

 

 もう一つの膣になっているのだと教えた彼女の顔は真っ赤だ。

 

 わざわざ教えているのだから、これからどうするのか。

 

 いや、したいのか白状しているに等しい。

 

「……その…気持ち悪い? イクス」

 

 少年がそんな風に思うはずないと知っていながら、心の何処かにある染みが滲んで。

 

 そんないつもとは違う年頃らしいウルの表情に少年が優しく頬へ口付けする。

 

「ぁ……」

 

 大きな臨月のように膨れた胎の上にもう固さを取り戻した幹が何よりも雄弁に押し付けられた。

 

 そっと耳元に少年が囁く。

 

 ウルのおまんこを使わせて欲しい、と。

 

「ッ~~~」

 

 背筋を駆け抜けたのはえも言われぬ甘美な痺れ。

 

 いつもこういう時、卑語なんて使わない少年が言った意味。

 

 自分を必要としてくれているという事実が今も精で満たされて期待に疼く子宮と三つの膣を濡らしていく。

 

「え、えぇ……貴方が使いたいだけ、犯したいだけ、犯して……イクス♡」

 

 もう何を悩む事も無いと両足を崩しながらウルは自分の三つ目の膣穴(おまんこ)を人差し指で開いて見せた。

 

「ウル…ん、ちゅ」

 

 乳房に軽く口付けした後。

 

 少年が少し下がると自らの幹を握り締めて先端を穴の先に向けた。

 

 ゆっくりと入っていく様子に高鳴る鼓動を感じながら、これから三つ目の穴を少年に捧げるのだとウルが既に蕩けた顔となる。

 

(ああ、これでわたくし、わたくしのおまんこ……全て貴方に捧げられて……これでようやくわたくしの全て貴方のものですわ……イクス、イクスぅ♡ ん♡ ぁ、あぁ゛~~~~ッ♡)

 

 途中、少年の亀頭がゆっくりと深い臍膣(なか)の入り口へと接触。

 

 そのまま押し込まれる感覚がウルをただの牝にした。

 

 グヂュ、ヂュル。

 

 尻膣の粘液と引き込むような襞の感触ともまた違った内部は牡の精を搾り取る器官というより、遊ばせる場所というべきものとなっていた。

 

 最も違うのは膣の柔らかさだ。

 

 まるで緩い水風船にぬるま湯を入れてへ挿入したような感触、と表現すべきか。

 

 内部は少年の反り返る形を反映してグニュリと上に向かって押し開かれていた。

 

 襞は牡槍を刺激するものではないらしく。

 

 ピットリと吸い付いて密着し内部に空気を入れさせない。

 

(こ、んなぁ わたくしのお腹がぁ♡ イクスの形にぃ……)

 

 グヂュ、ヂュ、ヂュル、ドゥルゥン。

 

「んお゛ぉ♡ いくひゅうぅ♡」

 

 二つの膣で味わって来たものとまったく違う快楽。

 

 それもそのはず。

 

 臍膣は胎に満たされた精液の中を通る半ば子宮内部への直通路なのだ。

 

 柔軟性に富み、大きく伸縮する子宮は子宮口を内部に固定化したまま膨らんでいる。

 

 つまり、精液で膨らんだ臍膣での交合は子宮姦に等しい行為だった。

 

 ドゥヂュッ。

 

「んぁ゛~~~ッ♡」

 

 臍の奥。

 

 興奮で精をトロトロと垂れ流していた子宮口へ鈴口がめり込んだ。

 

 ブルブルと乳房が太腿が震え、ピュッピュッと他の二つの膣穴から潮が軽く吹いた。

 

「ウル。全部入った、よ……こんなに膣(なか)がヌルヌルなのにすごく吸い付いてきて、ウルの中が僕の形になってるって分かるよ……ちゅ」

 

 少年が腰を少女の腹の中心にしっかりと潜り込ませながら、額に口付けする。

 

 両手がその乳房に伸びて完全に勃起した乳首を指の間に挟んで捏ね上げ始める。

 

「やぁ♡ そんなにひたらぁ……わらくしぃ……お乳ぃ♡」

 

「妊婦さんみたいだから、ミルク出ちゃうかもね?」

 

 少年が子宮口を突き上げるような仕草でゆっくりと前後させる。

 

 ドヂュ、ドチュ、ヂュド、ヂュヂグ、グヂュ、ヂュド。

 

「お゛ん♡ あ、あ゛ぐ、ひぐ!? いくひゅぅ♡ わらくしのなかであばれひゃらめぇぇ……♡」

 

「ウルの膣(なか)が気持ちいいから、腰……止めたくなくて……ん」

 

「しょんらぁ♡ ひぐ♡ ぅぐ♡ んぁ゛ぁあッ?!?」

 

 波打つ腹と少年の腰がぶつかり合う度にパンパンと音が響く。

 

 今にも胎の中の精が弾けてしまうのではないかと思うような衝撃。

 

 熱い幹と精が子宮口と膣を隔てて胎(なか)を扱く。

 

「んふぅ…くぅん♡ んはぁぁ……♡」

 

 ヂュルヂュルと少年の幹が臍膣を擦り上げる度。

 

 ブルンブルンと子宮内部の精が掻き回される。

 

 その度に牡への服従と隷属に悦びの声を上げる肉体は背筋を焼いた。

 

「んぁッ、ひぁぁ……♡ ふぅ、んぐぅ♡ いくひゅぅ♡ らめぇ♡ おがしくなりゅ♡ わらぐしぃぃ!? おがひくぅぅ♡♡♡」

 

「ん、く……」

 

 少年の両手が左右から大きな膨らみを抑えて食い込むと今まで以上にウルの内部がカッと滾っていく。

 

(ふぐ♡ いくひゅのおちんちんがぁ♡ わらくしのおなかおかひてぇ♡ もぉ♡ らめになっへぇ……♡)

 

 普通ではない交合。

 

 普通の男女では味わえない快楽。

 

 牡の子を幾多孕む為だけに改造された身体と心。

 

 その全てを使って少年の子種を受ける為にはしたない姿態を晒す事に悦びさえ覚えて。

 

 もう、彼女の中には少年への愛おしさと交尾の事しかなくなっていく。

 

 それを後押しするのはいつも自分の傍で笑って接してくれる姿。

 

 普通の亜人なら彼女が地下でされた事に目を覆って忌避の対象にするだろう。

 

 彼女自身すら昔のままならそんな女に侮蔑を投げ掛けていたかもしれない。

 

 けれど、少年は違った。

 

 出会った時から何も変わらない。

 

 それがどんなに難しくて、どんなに大変な事なのか。

 

 今の彼女には分かる。

 

(わたくひのめひぁしゃま……ずっとおそばで……)

 

 熱く幹が子宮口を抉る度に背筋を逸らして衝撃を受け止める身体が何度も震える。

 

「いくひゅぅ♡ わらくしのあかひゃんのへやでびゅーっれしれくらひゃいまへぇぇ……♡ あかちゃんちゅくっれぇ♡♡ たねちゅけこうびではらまひぇてぇぇ♡♡♡」

 

「ウルッ」

 

 少年がそのオネダリに腰を速める。

 

「んぉ゛お゛ぉお゛おおお♡♡ こわれりゅぅぅ♡ わらぐしのおまんこぉ♡ こだねあにゃになっへぇ♡♡ せいぐみらいにぃ♡ いくひゅのおひんひんしごくだけのあにゃになりゅぅぅ……♡」

 

 そうなりたいと。

 

 少年の幹を満足させて子種を孕み育てるだけの牝になって共に暮らしたいと。

 

 彼女の脳裏に幸せな日々が過ぎる。

 

 自分に似た黒い巻き毛の子。

 

 傍で笑っているお腹の大きな自分と少年。

 

 今まで似合わないからと諦めていた女らしいフリル付きの裾(スカート)を履いて。

 

 身を寄せ合って大樹の木陰に二人。

 

「♡」

 

「可愛いよ。こんなに乱れて……」

 

 精霊と宿主として深く繋がって初めての交合。

 

 ウルの求めるものを朧げながらに理解しながら、少年はグッと腰に胎を引き寄せた。

 

 もう他の二つの膣は潮を吹き、蜜をダラダラと垂れ流している。

 

 涙と唾液。

 

 悦楽に歪んだ顔ははしたなく快楽を貪る獣そのものだった。

 

「今、注いであげるから…ん、くッ!?」

 

 最後の抽挿で腰を速めれば、ブルンブルンと乳房も腹部も大きく揺れた。

 

「ぁお゛ぉおおお゛ぉおおお゛♡♡♡ お゛ん んぉ゛お゛おお゛ぉぉお゛♡♡♡」

 

 人の声なんて放棄して。

 

 もう獣にしか聞こえない喘ぎでウルが舌を垂らす。

 

「ッッ、ウル!!」

 

 グッと突き出された腰の先。

 

 ゴヂュッッッ。

 

 子宮口が蜜を零していた鈴口と直接繋がれ、射精が開始された。

 

 ビュ―――ボォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

「ッ~~~~~~~~~~!!!?」

 

 声に成らない唸り声を上げてウルが悶えた。

 

 前日と変わらぬ精量。

 

 しかし、それ以上に長い射精時間。

 

 完全に意識を焼き切るような新しい命の本流にドグンドグンドグンと子宮が脈打ち、一滴も漏らさないようにと卵巣にまで粘着いたゼリー状の白濁を溜め込んでいく。

 

 それは蹂躙だった。

 

 強烈な発情と交尾で促された排卵。

 

 改造で何粒も吐き出されるようになった玉が母の中で旅する事も無く。

 

 無数に泳ぐ子種に群がられて命を宿していく。

 

(……ぁ……い、ま……わらくしのおなかのなかで……っ……)

 

 ポロポロと涙を零しながら、本能的に受精を悟ったウルが嬉しそうに目を細める。

 

 まだ、牝以上母親未満のまま。

 

 遠くなる意識の中。

 

 少しだけ、ほんの少しだけ、自制を働かせて。

 

 何も言わず、少年に身体を預けた。

 

「ウル……おやすみ……」

 

 困らせたくなくて。

 

 これからも傍に居て欲しくて。

 

 幾度も危険を潜り抜けるのだろう背中が気掛かりに傷を負わぬよう。

 

 その時が来るまでは黙っていようと、彼女はそう決める。

 

「………」

 

 眠りへと落ちる刹那。

 

 少年の手がそっと髪を撫ぜ。

 

 ありがとうと彼女は聞いた気がした。

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