第三章七十節「あやはとり」
年頃の男女が少女の部屋で二人切り。
それは言うまでも無いくらい明確で仄温かい場所。
「……柔らかいんだ」
「ぁ……当たり前です。ちゃんと手入れをしています、から……///」
少年は相手の黄金の鬣。
手入れの行き届いた髪を梳きながら、頭を撫でていた。
人間の耳は隠れて見えないが、今はペタリと恥しそうに伏せられている獣耳が撫でられる度、小さく震える。
その下にある顔は今まで彼女がした事も無いものに違いない。
恥しくて。
しかし、嬉しくもあって。
奏美紗は夢心地だった。
少年の細い腕に抱かれて。
薄い桃色の壁紙の自室で明るい夜の輝きだけを浴びる。
後ろから伸びてくる手に頭を触れられるだけで幸福感が押し寄せてくる。
膝に間に座っていると言うだけで尻尾はムズムズと微熱を持って左右に揺れてしまう。
既に外された眼鏡が寝台横にはあった。
もうたった一人を見るのに必要ない距離となったから。
ちょっとでも少年に好く見て欲しいから。
「ん……」
少女は自分の手足がもう少し人間に近ければと思った。
長い睫、二重瞼の下。
縦に割れた水晶の如き瞳が後ろから抱き留めてくれている少年の手に向いて。
そっと指が触れる。
「まだ、しないの……ですか……?」
頬を染めながら、美紗は訊ねる。
抱いて欲しいと自分から言ったのだ。
その覚悟は出来ていた。
準備はもう少年を向かえに行く時、そうなるかもしれないと済ませてあった。
予感は当って。
拒絶もされなくて。
なのに、今にも眠ってしまいそうなくらい穏やかな時間と全てを任せてしまえるような恍惚に溺れているだけ。
疼いた身体がもう限界だと訴えていた。
背筋は密着した時からもう甘美な快楽に染められている。
喉は猫撫で声しか出なくなった。
力の抜けた五体は糸の切れた人形のようだ。
何処か自分のものではない気すらした。
(イクスも緊張……しているのでしょうか……)
今来ているのは制服で脱がし方が分からないという事はないだろう。
エストリアもウルも少年との蜜月を過ごして来た。
その中にはきっと制服を身に纏ったまま“した”事だってあるはずだ。
仮に無かったとしても、女性徒用の衣服にそこまで複雑さは無い。
だから、触れてくれるだけなのは何か問題があるのだろうかと。
不安になってしまうのは初めてを捧げようという場面ではおかしくない、はずだ。
余計なことを考えていると思いながらも、そんな思考を美紗は止められなかった。
「美紗……」
「ッ、な、なん、ですか?」
ドキリと。
脈打つものが身体の奥底から熱さを汲み上げていく。
「もう少し強く抱き締めていいかな」
「は、はぃ……ど、どうぞ」
「ありがとう……」
「?!」
首筋に軽い口付け。
そうして、少年の腕が少女の身体を抱き締めた。
胸がハッキリと焦がれていく。
幸せな時間に焦れていく
「ふ……ぁ……ん♡」
スルスルと指が這った。
制服の上着はもう脱がされている。
白いブラウスのボタンがプチプチとは外されていく。
その窮屈にすら感じられていた衣服が開放されていく事を悦ぶ彼女が羞恥する彼女と交じり合って顔は歪む。
これからされてしまうのだと。
自分からしてしまうのだと。
どうすればいいのか混乱してしまいそうな彼女の耳朶に響くのはたった一人の声だけで。
「恥しい?」
「ぁ……あたり、前です……」
「そう言えば、美紗ってどんな水着持ってるのか聞いていい?」
「な、何の話ですか?」
「天使に成り掛けてた時、お祭りだったから」
「……すいません」
シュンと申し訳なさそうな表情になった少女の服を脱がしながら、少年は微笑んで、そんな顔しなくてもと告げる。
「この間は結局、お流れになっちゃったから、今度皆でまた水遊びしに行きたいねって。そんな話を璃紗としてて。それで美紗が普段どんな水着を着てるのか気になったから訊いてみたんだけど」
「水着、ですか……学校指定のものを、その……ずっと……」
「じゃあ、今度二人で買いに行かない?」
「あ、え、そ、そんな、水着をだ、男性と買いに行くなんて……?!」
「嫌?」
「そんな事ありません! で、でも、その……恥しい、です」
俯いて。
悩みに覆われそうだった顔がまた年頃の少女らしい羞恥に歪んだ。
「じゃあ、璃紗も連れて行く?」
「そ、それはダメです!?」
思わず上げた顔でハッキリと口にしてしまって。
「―――ッ」
ハッと我に返ったらしい。
また恥しさに顔が伏せられた。
「………思ってもみませんでした………こんなに自分が独占欲の強い女だったなんて……」
「そう? 美紗が気持ちの強い子なのは戦った時から僕にとっては言うまでも無い事だったんだけど」
「ぅ……」
ある意味、美紗は今まで知らなかった妹である璃紗の独占の為に屍蝋の仮面を受け入れてしまった部分がある。
戦って、少年へ自分が何と独白したのか。
今も少女の脳裏に記憶は残っていた。
「でも、僕はそういう風に思ってくれてるなら、嬉しいよ?」
「~~~」
ファサリと床に上半身を覆っていたモノは全て落ちた。
下着一つ付けていない素肌を隠すのは髪の毛のみだ。
それも束ねていた三つ編みは解かれてしまっている。
薄らと浮かび上がった裸体は均整が取れていた。
己を鍛える。
それは警察機構に自ら入る以前から彼女が自身に課してきた事だ。
亜人貴族らしく在れ。
正義を尊び、人の上に立てる人間と為れ。
そう言われて、そうしてきた。
その中にはちゃんと貞淑な妻となる為の花嫁としての修養も含まれる。
仕事柄、生傷は耐えなかったが、自分の身体を大事に使ってきた、将来の相手の為に慈しんで来た美紗に瑕疵が残っているはずも無かった。
「良かった……」
「え?」
少年の呟きに思わず聞き返した彼女の耳に少しだけ安堵した声が続ける。
「戦った時、色々無茶な事をしたのは覚えてるから……痕になってたりしてなくて……」
「イクス……」
小さな声。
自分の事を心の底から思ってくれている少年に少女が瞳を薄く潤ませる。
「その、大丈夫だと思うけど。あの後、後遺症は残らなかった?」
「おかげさまで。何一つ、私は……失わずに済みました」
「そっか。それならいいんだ……」
温かなものが胸底まで満たして。
美紗は言い表せない想いを吐き出したくなってと立ち上がった。
下着まで全て自分の手で脱ぎ捨てられ、ゆっくりと少年の前で生まれた姿のまま振り向く。
亜人。
獣人。
“九十対十”。
そのどれでもあり、一人の女として、牝として、彼女は自分を見上げる……もう決めてしまった“伴侶”に告げる。
恥じらいと悦びを湛えて。
自ら捧げる姿態を誇って。
「抱いて……私と交尾、して……イクス……」
股間の濃い茂みは手入れされて、少女の陰核(クリトリス)よりも上に細く湾曲した二等辺三角形を描いている。
其処からはもう床に蜜が糸を引いていた。
歳の割りにあまり膨らんでいるとは言い難い胸も均整の取れた美しい曲線を見れば、造形美と言うべきだろう。
璃紗にも似た引き締まった臀部(しり)から腰の肉付き。
薄らと桜色を晒す乳首。
いつも戦っている時には思いもよらない程に華奢な肉体は獣の形を秘めながらもやはり人として美しい、そう言ってしまえるだけの引力があった。
誰が見たって惹かれてしまうに違いない身体。
両手を恥しそうに股間の上、胎に当てて瞳を閉じた姿。
少年の目の前に居るのは発情しながらも、貞淑に自らの行為に羞恥を感じ、悶えながら身を捧げるか弱い乙女だった。
「僕も……美紗としたい……だから、一緒にしよっか?」
「ぁ」
手が掴まれ、引き寄せられて。
「……はぃ」
今すぐにでも口付け出来てしまいそうな距離で少年が微笑むともう少女に否があろうはずもなかった。
*
「脱がせます、から……っ」
いつも、いつも、いつも、性に関して彼女は両親から遠ざけられて来た。
でも、伴侶に尽す心の持ちようだけは母も教えていた。
それとなく。
父にも分からぬよう優しく。
時が来たなら、こうすればいいのだと。
まずは相手を労わる事。
気心の知れた。
いや、もう心の醜い奥の奥まで見られてしまった。
今更取り繕ってもしょうがないくらいに知られている自分だからこそ、誰よりも相手を想わなければ。
そう、彼女は申し出た。
蒼星の耀きに裸体を照らされながら、発情してしまっている事も全て曝け出しながら、それでも美紗は少年を前にして獣のようにねだりはしなかった。
もう頭は自分を優しく見つめる人の事で一杯だ。
心地良くして欲しいはしたない希望で埋まっている。
でも、自分は亜人だと。
牝でも、尽す“人”でもあると。
彼女は急がなかった。
少年だけを見て。
少年だけを焼き付けて。
香りを、感触を、感じながら、制服を一枚一枚脱がして、自分と交わってもらう為の姿にしていく。
奥底から沸き上がる興奮に胸は高鳴り、大きく膨れた股間から下穿きを抜き取る時、舌を伸ばしそうなくらいに顔を近づけて、美紗はようやく寝台に座った少年を全裸とした。
自分がそうした。
上手く出来た、そう思う。
そして、それだけではダメだと、少年の顔を両手で包んで、自分から口付けした。
最初は軽く。
ちゅ、と。
そして、次はもっと欲しくなり、はしたなく舌先を出して唇を押し付け、口内で優しく絡ませるように。
じゅる、と。
誰に言われなくても本能はすぐにどうすればいいのか教えてくれる。
ぢゅ、りゅ、ぢゅる、ん、ずじゅ、じゅぐ、ぢゅ、ぢゅりゅ、っく。
舌を触れ合わせ、唾液を混ぜ合わせ、何度も何度も啜りながら、飲み込む。
それだけの事で彼女は自分の膣(なか)がもう我慢出来ないと悲鳴を上げているのを感じた。
コクンコクンと喉が鳴る度、美紗の股間で陰核(クリトリス)は大きく膨れ、蜜の量は増えていく。
汗ばんだ肌も背筋を昇る快楽も、ゆっくりとではあるが、少しずつ高ぶっているのだ。
それが達してしまう、という事だと彼女は知っている。
友人や女子クラスメイト達はもう経験している者が大半だ。
だから、自分がまだ肌を晒して、口付けしかしていないのに感じてしまっていると美紗は認めた。
牝として、はしたなく、女として恥しく。
けれど、そうなってしまうくらい、目の前の相手が愛しくて、愛しくて、大切なのだと。
「ん…ぁ……」
ようやく唇を離したのは疼きに耐えられなくなっていたからだ。
ズクンズクンと脈打つ胎はまるで別の生き物のようにすら感じる。
「イク、ス……もぅ……私」
「じゃあ、触れるよ」
「ぁ……」
唾液で口元を汚しながら、彼女は導かれるまま寝台へ倒され、少年にされるがまま、脚を開いた。
何もかも全て晒されてしまった。
それだけではない。
もう完全に発情している事を知られてしまったのだ。
顔を両手で覆ってしまいたい衝動に駆られながら、それでも少年に見られているというだけ腰を駆け上がる甘い痺れにすじが蜜をシーツの上に滴っていく。
その中心。
まだ皮を被った陰核に指先が触れた。
「ひぁっ♡」
思わず声が出てしまった美紗がジンジンと妬き焦がされてしまったのではないかと心配になるくらいに熱くなった其処から響いた衝撃に背筋を震わせた。
「少しずつするから」
「ぁ…ま、待っ―――」
指先が優しく陰核を捏ね始める。
「ひっ、だ、めぇ♡ そん、なぁ♡ イクスぅ……そ、其処はだめぇぇ♡」
思わず目を瞑って、哀願する美紗の瞳の端には涙が浮かんでいた。
脳裏が明滅してしまう。
めくるめく快楽が頭を真っ白に染めていく。
「ここも一緒に、ね」
「ぁ、ぁあ~~~~ッ?!」
美紗は自分の陰核と共にすじをなぞり上げる指の感触にもう音を上げていた
「ひっ、ぁ゛っ、~~~~ッ」
ヌリュヌリュと蜜で満たされた割れ目の奥に指が少しずつ挿入されていく。
同時に愛撫されていた包皮が捲られ、内部が露出する。
「ッ~~~~♡」
其処に在ったのは普通に考えても大きな小豆くらいの真珠だった。
膨れ上がっている自分ですら見た事の無かった心地良くなれる場所。
それに容赦なく細い指が触れようとするのを見て、美紗は内心の期待と快楽を待ち侘びる背筋の震えをもう否定出来なくなっていた。
コリュ。
「んゃあぁぁああああぁあああっっ♡♡♡」
舌を犬のように出して、唾液も垂れ流しのまま、ピンと弓なりに背中を反らせた彼女の中にグプリと蜜を押し出しながら指が中程まで埋まる。
そのまま狭い膣中をグチュグチュと掻き混ぜられて。
「ッッッ!?!」
声も無く美紗は達した。
(わ、た、しぃ……こんなぁ♡)
「可愛いよ。美紗……ちゅ」
少年の口が片方の胸を食んだ。
舌先が乳首を転がして、唇が乳輪を啜る。
蜜を泳ぐ指がじゃれてくる襞を捏ねては何度も何度も指先の関節を曲げて、まだ広がっていない膣穴を引っ掻き腫れ上がったような陰核は蜜を塗り込めるように軽く撫で回す。
「ん~~~~~~~ッッッ」
初めての逢瀬で満遍なく愛撫された少女の性感帯は悲鳴を上げるよりも先に歓喜で全身を痺れさせていた。
足腰も立たないくらいに達しているのにそれが収まらない。
それどころか。
少年の熱い舌が、指が自分に触れる度に奔る目も眩むような快楽を美紗は唇の端から唾液を零して貪っていた。
(お、まんこぉ……♡ 屈伏してぇぇ……グヂュグヂュされてぇ♡ お乳まで吸われてぇ♡ 壊れちゃったぁ……♡ まだ繋がってもいないのにぃ……あの子みたいにされてないのにぃ♡ 太腿に……火傷しそうなくらい熱くなって脈打ってるのが当ってぇ……私欲しくなってるなんてぇ♡♡)
密着した左半身で手が少年の股間に伸びて、初めて幹に触れる。
(これが、小さいあの子の膣中(なか)に入ってッ、だ、めぇぇ♡♡ 想像したらまたぁ♡)
今も続く桜色の乳首と陰核、膣への愛撫だけで一人達して終わってしまいそうなのを感じながら、少女は小さく口にしていた。
「イクスぅ♡ わ、私にもさせてくださぃ……♡」
「美紗……いいの?」
口を離して訊ねた少年にコクンと頷いて。
少女が未だ自分の身体ではないような未だ震える身体を何とか起こした。
「はぃ」
もう止まらない様子で少年に枕を譲ると美紗がもう反り返って今にも溢れそうに桜色の濡れている鈴口にしゃぶり付いた。
ぢゅ、ぢゅずむ。
いつも規律や苦言を呈している唇が躊躇無く先端を加えた途端、トプンと後から後から精を含んだ蜜が溢れ、その味を堪能するよりも先に少女の喉が鳴る。
「ッ、美紗、そんなに吸ったら……っ」
習ったわけでもないだろうに幹の先端を咥えた口内で舌が太く肉厚な傘の裏側をなぞり、今もトクトクと蜜を溢れさせている筋を唇で圧迫する。
まるでそういう生き物のように振舞う舌先が何度も何度も獣人特有のザラついた感触で舐め上げれば、幾ら少年でも我慢の限界はすぐにやってきた。
「それ以上したら、出ちゃうよ……」
「いくふ、出して、くらはぃ♡ わらひのくひにらして、あの子にひているみらいにひへぇぇ♡♡」
舐めしゃぶりながら喋る度、鋭い犬歯が少しだけ幹に擦れて、少年が心地良さに震えた。
怪我をさせないよう無意識に口内を大きく開いている事が分かっているから、恐怖のようなものは無い。
「いいの? 美紗……」
「いいれふ、からぁ♡ わらひにも同じようにぃ、ひてくらはぃ♡」
「じゃあ、そうするから……苦しかったら、教えて……美紗」
少年が上半身を起こして、少女の耳や鬣ごと頭部を握ると。
ゆっくり、自分の方へその顔を引き始めた。
「んぐ!? んぉッ♡」
牡の幹の味と蜜の臭いに恍惚としていた美紗がゆっくりと自分の口の奥に大きな異物が侵入していくのを何とか涙を瞳の端に溜めながら許容する。
ず、ずぢゅ、ぐぉぽぉ……。
少年の幹の根元まで唇の中に納まると舌が唇から覗いていた。
喉を性器を入れる性具として扱う。
息の苦しさに本来ならすぐにでも嘔吐いて、吐き出してしまうところだろう。
「んごぉぉおおぉ……♡♡」
が、少女は何度も喉を鳴らせながら、呼吸出来る様自分の肺に魔術を掛けていた。
警察機構で習う簡易の潜水用のものだ。
息苦しさが解消されても喉をパンパンに幹で膨らませられている圧迫感は変わらない。
それでも、自分から彼女は唇を動かし始めた。
それに合せて少年が掴んだ頭を前後に揺らす。
ズヂュルゥゥ、ドヂュルゥゥ、ヂュゴォ、ヂュゴォ、ヂュゴォ。
大きく引き抜いて、深く沈めて、少女の喉の奥を自分の形にしてしまうような小刻みな抽挿。
「んぉ゛ぉお゛ぇ♡♡ んごぉぽ♡ んっ、んっ、んぐっ♡」
インマラチオに応えながら、悦びに美紗の顔は蕩けていた。
背筋を焼く達してしまいそうな興奮。
グチュグチュと指に掻き回されて、今も感触が残っている膣中(なか)。
頭を優しく前後される度、自分の奥に押し入ってくる雄々しい幹の熱い感触。
喉の奥に流れていく少年の蜜を飲み込みながら、舌で裏筋を嘗め回すだけでこれ以上ない程、少年に必要とされている事が実感出来るのだ。
「美紗っ、ん……気持ちいいよっ」
少年の荒い息と心地良さを我慢した声。
尽せている喜びを彼女は自分から牡の象徴を丁寧に丁寧に舐めしゃぶる。
「んぐぅ♪ おごぉ♡ ん、んぅ♡ んっ」
美紗の吸い付く口内はもう口淫の為にあるのではないかという具合の良さで唾液に満たされた性器の如く。
ヂュルヂュルと下品な音を立てる度に幹は震え、達するのは目前だった。
「もう……っ、出す、よ……美紗……っ」
「♪」
そうして、喉の一番奥に鈴口が届くよう腰を少しずつ振り始めた。
ジュゴ、ジュゴ、ジュゴ、ジュジュジュジュ、グヂュ、ドチュグッ。
達する寸前、一番深く挿入して、少年の射精が始まった。
美紗の出された舌が少年の睾丸にまで達して、鼻先が恥骨に触れる。
ビュ、ビュグルルルルルルルルルルルルルゥッッ!!!
「ふぅぐぉ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛お゛~~~~~♡♡♡」
子種はゼリー状になるくらいの濃さだった。
喉の奥で膨れた幹から吐き出された少年の大切なそれを受け止めた瞬間、プチュァッと美紗もまたすじから潮を吹かせて、全身を震わせ、深く達してしまう。
ビグッ、ビグッ、と震える腰、精の一滴まで喉の奥に射精した幹が唇から引き抜かれたのは一分程もしてからだった。
ズルォォオオオオオ。
抜く最中もヌチュヌチュと舌が蠢き、トプトプと鈴口から溢れる精を逃すまいと舐め上げ、舌先から先端が離れても惜しそうに精を求めて揺れていた。
精と唾液で引かれた糸がプチュンと途切れて、射精したばかりだというのに雄々しく反り返った幹に美紗は顔を横に付けて食みしゃぶり、表面を綺麗にしていく。
「んく……美紗、そこまでしなくてもいいんだよ……っ」
「ちゅ、ん、ちゅ、ちゅ……ぁむ、ちゅ……あの子がしている事、は……全部、貴方に……してあげたいんです」
鼻腔を胃から立ち上る子種の臭いで満たされながら、牝として仕える悦びに目覚めた少女は自分の唾液でこれから自分を犯す少年の半身を清め終るまでずっと口淫を止める事は無かった。
*
―――アルヴァス・カレッジ裏山境界の鳥居。
少年と少女が睦み合っている頃。
霧も出なくなった“門”を見渡す原に人影が辿り着いていた。
「………」
「こんなところにいたのね」
声を掛けたのは超乳と化したウルに負けず劣らず。
周辺の亜人貴族からも道端で出会えばゴクリと唾を呑み込まれるゼオ家の主。
アルゥ・ゼオその人だった。
黒い喪服のようなドレス姿。
薄い衣の下を想像すれば、大抵の男は前屈みにならざるを得ない。
そんな妖艶極まる彼女に振り返ったのはまるで天使のような、短い金髪の子供。
少年が鳥居前で黒い化物と遭遇した時に発見した相手だった。
「どうかしら? 記憶は戻った?」
フルフルとアルゥの言葉に首を横へ振って、彼女もしくは彼がトコトコと白いブラウスと下着姿のままで自分の今の保護者の下まで帰ってくる。
「さぁ、行きましょう。今日は帰ってこないみたいだから、貴方にゆっくり儀式を施さないといけないわね」
「………」
「大丈夫よ……悪いようにはしないから……利用はさせて貰うけれど」
まるで親子のように片手を繋いで。
2人が山から下りようとした時、不意にアルゥの視線が天蓋蒼星の光の下、影になった藪の方を向く。
『ひ?! み、見付かった!? 見付かっちゃった!!?』
気付かれた事を悟った声の主が藪の中でざわつく。
「珍しい……まだ生き残っていたのね? 兄さんが連れて行ったのは知っていたけれど、この環境で未だに変質もせずにいるなんて」
『あ、貴女……あ、貴女……何だか、懐かしい匂いがする!』
「そう、貴方達のご主人様の血縁なのだから、そう思えるのかもしれないわね」
『ご主人様!? ご、ご主人様の血縁!??! む、迎えに来た!? お爺ちゃんの言ってた通り!!』
何処か喜色を含んだ声にアルゥはゆるゆると首を横へ振る。
「残念だけれど、誰も迎えには来ないわ。誰も、ね……そもそも、貴方達の一族は口減らしの筆頭対象。故郷はもう無いのよ」
『帰る場所がもう無い?』
「ええ、無いわ。でも……貴方達一族を連れて来た責任を取る、なんて事は言えないけれど、此処に住まう者として見捨てても置けないわ。もし、あなたにその気があれば、一緒に来る?」
『……行っていいの?』
「ようやく見えてきた……やはり、その能力は危険過ぎるわね……全てを隠蔽してしまえるのは……きっと、あなた自身にとっても不幸なのでしょう」
『不幸?』
「気付いていないならいいわ。行きましょう。きっと、あなたを護り切った誰もが、こんな日が来ればいいと願っていたのでしょうから」
アルゥがそっと虚空に七望星を指で描いた。
すると、パキリと何かが罅割れる音がして。
「あぅ!?」
ボトリと二人の前に小さな白い猫のような生き物が落ちてきた。
猫のような、という形容の意味はズバリ相手が猫ではないからだ。
まず全身からして乳白色の鉱石の如き光沢を放っていた。
その四足には爪のようなものは見当たらず。
また尻尾には大陸には見かけない文字が彫られている。
「銘は……そう、これじゃあ会議の方々もさすがに置いておこうとは思えないわけだわ……」
何やら納得した様子で頷くとその尻尾を掴んでひょいとアルゥは肩にソレを乗せた。
「何処に行くの?」
普通に喋る白猫?が訊ねた。
「私の家よ。娘と人間の居候が一人、その愛人と召使が二人。あなたの事も紹介しないとね」
「人間怖い!!」
ブルブル震え始めたソレの頭を撫でながらアルゥは道を歩く。
「戦った事があるのかしら?」
フルフルと首を横に振って、恐る恐る答えが返る。
「お爺ちゃんが言ってた。人間は野蛮で何でも食べる恐ろしい奴らなんだって!!」
「……あなたが利用されないように教え込んでたのね……」
「利用?」
「あなたを見つけるなんて芸当、神様か超越者の上澄み層がいないと無理なのよ。でも、もしも見付かれば、人間達は余計な力を得る事になる。それが兄さんの願った世界じゃないとあなたの氏族達は分かってたのね。だから、最後の個体であるあなたにはそう言っていた」
「……どういう事?」
頭はあまりよろしくないのか。
首を傾げた相手の頭を撫でつつ、アルゥは街並みを進んでいく。
「……覚えておいて。私の家に住んでいる誰もあなたを苛めたりしない。だから、安心して棲みなさい」
「分かった……」
いつの間にか。
ゼオ家に辿り着いていたアルゥがドアを開ける。
すると、ビクッと二階の一室に向かおうと階段を昇っていた黒猫が思わず驚いた様子でワタワタした後、足を滑らせて転げ落ち、2人と一匹の前にバタリと倒れた。
すぐ様に逃げ出すのが本来の姿だろうが、ジットリとしたアルゥの視線に額へ汗を浮かべたクヲンは視線を合わせないままどうしようかと悩んだ。
焼かれるのは嫌だが、さりとて逃げるには近過ぎる。
転移で飛ぶ瞬間を狙い撃ちにされたら、化身とはいえ滅茶苦茶痛い。
「マ、マヲ~~~♪」
やぁ!!
元気!!
そんな爽やかな笑顔で上を振り向いてゴマ擦りモードとなったクヲンだったが、アルゥは諦めたように溜息を吐いた。
近頃、出入りする頻度が上がっていた巧妙なる結界の突破者を焼く気も失せたのである。
結局のところ、自分以上に少年の傍で危機に際し助けている黒猫を渋々認めざるを得ない。
家族とは行かないまでも隣人ぐらいの付き合いで向き合おうとの妥協だった。
「マヲ?」
様子がオカシイ魔女が攻撃してこないのを良い事に安全圏まで逃げ出そうとしたクヲンだったが、その肩に乗っている生物?を見て……微妙に目を細めた。
本来、彼女がアルゥの知覚を掻い潜って館に潜入している時は一応神経を使っている。
なのにどうして接近に気付けなかったのか。
その問いへの答えが瞳をキョロリとさせて視線が合った。
「マヲ……マヲヲ……」
彼女の言葉を人語に訳せば、どうしてそういう危なそうなものを拾って来たのか、という事になるだろう。
「あなたの言えた事じゃないわ。究極生物さん。仲良くしてあげて頂戴。その代わり、家の出入りは自由にして構わないわ……」
「マゥ……」
しばし、考え込んだものの。
少なくともフリーパスの権利と引き換えならば、頷くしかないと思ったのか。
クヲンが飛び上がると何も無い虚空に座って、テシッと白猫?の手に肉球を重ねた。
彼女的にはこれで仲良し!!というつもりだったのだが、その相手は………。
「ひ、黒猫不吉!? 不吉過ぎ!! 何言ってるのか分からないし!?」
「マ、マヲゥヲヲヲ!?!!」
ガーンと誠意の握手?を裏切られたクヲンがショックを受けた様子で固まる。
その横を口元を押さえたアルゥが笑みを零して通り過ぎ、地下の一室があるドアを開けて下っていく。
バタンと扉が閉まった後。
固まったクヲンはビキビキと額に青筋を立てて、絨毯に降り。
ジタバタと癇癪を起こして転げ回った。
そして、あの白いのだけは敵と言わんばかりに床の廊下へ魔術で白猫?の顔を描き出すと猫パンチでガシガシとタコ殴りにして、はぁはぁと荒い息を吐く。
以来、黒猫だけではなく白猫もゼオ家に住み着いたと隣人達は噂し在ったが、その猫?を実際に見た者は絶無で。
「マ~~~~~ヲ~~~~~~ッッッ(怒)」
時折、何やら怒った黒猫だけが目撃される事となる。
その日、悔しさ全開で街を走る黒い物体の鳴き声に目を覚まされた東部の貴族達は寝不足になったが、どうでもいい事実は誰に知られる事もなく、ひっそり歴史の闇の片隅へと消えていった。