第三章八十四節「祭忌禁交Ⅵ」
獣人(ベスティア)の男が一人。
祭りで賑わう縁日の中を揺らり流していた。
ライル・エイフォン・バーゲル。
異相に潜る境界踏破部隊の隊長。
そして、現在唯一戦闘が可能な屍蝋の化物と化して戻った存在。
異相での大異変の後。
現実で目が醒めた彼が知ったのは自分の不甲斐なさと弱さだった。
部下達を率いる立場にありながら、その部下を殺すところだった。
化物に成り下がって、国を破壊する手先と化す寸前で彼は救われたのだ。
緑炎騒動の時に出会った少女。
小さな黒髪の小獅子。
目が醒めた時、良かったと自分の五分の一も生きていない、我が子より幼い彼女に微笑まれて、思わず泣きそうになった。
いい歳の男が本気で号泣しそうだった。
自分では守れなかったものを、自分が壊すところだったと知って、打ちのめされ、震えた。
屍蝋に呼び起こされたものは過去を悔いてばかりの弱々しい人格。
全てを委ねて罪から逃れようとしたのは間違いなく己。
まったく、救い難い。
一時は自害しようかとも悩んだ。
しかし、部下や娘や伴侶にこれ以上の哀しみを背負わせる事も出来なかった。
部隊の隊長を辞退しようとしたものの。
赤鬼の当主に止められた。
化物になっていた事を自ら認識出来る戦闘員は貴重であり、今後の戦いにおいてその智識が必要になるかもしれないと現実的な慰留理由を挙げられれば、従うしかない。
生き恥とは言うまい。
多くの者に支えられた命。
それを恥等と言えば、それこそ何様のつもりだという事になる。
だが、それにしても、あまりにも不甲斐なく。
彼は……自分の矜持も技も何もかもを一時忘れる決心をした。
時間はそう残ってはいないと知りながらも、それでも初心に返って己を鍛える事にしたのだ。
今まで積み続けてきたものを見詰め直し、自分をまた新たにする行為。
それがきっと必要であると信じて。
「………」
初めて鋼の刃を握った日。
父は何と言っていたか。
師は何と自分に伝えたか。
長い安寧の中で磨耗させていた技の冴え。
新しい貴族の矢面に立とうと決心した時よりも尚高き壁を越えなければ、これからの戦いを生き延びられない。
部下達を率いても命を共に出来ない。
そして、最愛の家族すら守れない。
そう、思ったが故である。
修行。
古臭いと言われるかもしれない。
効率が良くないと現代の条理から言えば、不合理と呆れられるだろう。
しかし、昔ながらの亜人貴族として、その当主として、出来る事はそれだけだった。
我が身を追い込む。
最初から自力で化物に劣るならば、程度の低い自らを万全にしたところで意味はない。
だから、精神も肉体もギリギリのところで鍛え続けた。
この数週間、満足な食事も睡眠も取らず。
ただ只管に頭を下げて、昔ながらの荒行を行なった。
衰えたりとはいえ。
旧き貴族の彼が頭を下げるという行為に多くの亜人貴族が参列し、力を貸した。
千人業(せんにんぎょう)。
多くの流派の免許皆伝において実施される連続での断ち合い。
その体験者の殆どは千人を超える前に己の限界にぶち当たり、頓挫して終る荒行を……彼は遣り切った。
もう四十を過ぎ、肉体的にはピークを通り越した男がする事ではない。
ただ、全霊を掛けて、彼の為に集った532人もの武芸術者を刃を潰した刀で叩き切っていく様子はただ驚きと畏怖を持って見つめられた。
事前の準備こそしていたが、それでも命を掛けた戦闘時間は実に733時間。
気力、魔力、体力、人体内部に存在するほぼ全ての力を絞り尽くして一ヶ月。
最後には骨と皮、壊死する筋肉すら見えないような姿で絶命寸前に彼は荒行を終らせた。
死ぬ間際まで戦い続けたのだ。
その状態はもはや木乃伊に近かった。
精神が摩滅する寸前、腱も切れ、眼球は萎れ、傷付いた全身から血すら流れず。
乾いた血管は罅割れ、顔は骸骨そのもの。
それでも、途中から姿を見ない方がいいと言われた彼の伴侶は決して目を逸らさず、涙も浮かべず。
全てが終るのを待ってくれていた。
そうして、最後の一人を斬り伏せ、半ば落命していた肉体を救急救命の為に控えていた大魔術師達が復元し、三日以上精神を癒し続け、彼は甦った。
たった一ヶ月前の彼は既に死んでいた。
其処にいるのは紛れも無く。
祖国が生み出した最高の戦者だった。
アルヴァスの武芸術者を生む流派の殆どから来ていた参列者達はライル・エイフォン・バーゲルが大きな戦いに破れた敗者である事すらどうでもよくなっていた。
彼らはその目で見たのだ。
意思と志のみを糧として潰える事無き刃を振るう武人を。
奇蹟のような、偶然ではない必然を。
もう、陰口を叩く者は一人とていなかった。
遊び半分に馬鹿なオヤジの戯言を己の持つ【崩燼武装(ソルヴァス・アームズ)】で粉々にしてやろうとやってきた【崩燼貴族(ソルヴァス・ノーブル)】達すら、それは同じだった。
目覚めた彼へ謝罪しに来た親族と多くの者達で病院がごった返したのには誰よりもライル自身が驚いた。
娘にだけはもう心労を掛けたくないと何も伝えずにいたが、目覚めた寝台の傍らにいた伴侶だけは偉業を讃えに来た多くの来訪者達とは違い厳しい顔で。
『ちゃんと伝えましょう……』
そう、微笑んだ。
何を?
分かり切っている。
親として、父として、家族として、娘にしてやれなかった事が、面と向かって言わなければならない事があった。
最初から彼の選んだ人は全て分かっていたのだ。
己を鍛え直そうとしたのは何故か。
本当は何を望んでいたのか。
屍蝋の仮面はもう一人の自分。
無かった事にした半身。
変わろうとする者が、凝り固まった自分を手放し、受け入れずして、何を語れと言うのか。
他者を拒絶する化物は己だと認めてこそ、彼は娘に言えるのだ。
たった一言。
済まなかった、と。
「………ウル」
肉体が元通りに回復した現在、境界踏破の為の様々な訓練、装備の開発、実際に戦闘をした人間側からの声を取り入れた避難基準や行動手順の策定が進められている。
その一番前に立って仕事をこなしている彼は多忙でまだ娘に会えていない。
だが、このアルヴァスに本当の安全が戻ってくるまではそれでもいいと今は思えるようになっていた。
親らしい背中を示してやれなかった自分がハッキリとした成果を持って、アルヴァスを守ったと言い切れるようになったなら、その時にこそ彼は娘に告げたいのだ。
それが男親の見栄に過ぎずとも。
お前の父親は立派な男だと国の誰にも胸を張れるのだと。
「おじさん?」
物思いに耽っていたライルが顔を上げると其処には十数人の少年少女。
ダークエルフの子供達が不思議そうに顔を覗き込んでいた。
「済まない。どうやら、少し呆けていたようだ。それで……何か買ったかな?」
「うん!! ほら!!」
声と共に其々の手にある屋台の食べ物が掲げられた。
油の滴る骨付き肉であったり、フワフワとした口触りの雲のような飴であったり、大きな麺麭に具材を挟んだサンドイッチであったり、諸々食い気が勝る子供達の戦利品に笑みが零される。
「ならば、あちらの公園で一息つこう」
「うん!!」
【叢龍児(ユグドラシア)】
異相の大異変時にアルヴァスに亡命する形で身を寄せたダークエルフの子供達。
その特殊な生い立ちから本来は七教会の影響力の強い中央諸国へ向かわせるべきだとの意見もあった彼らだったが、数週間の休養で精気を取り戻した後、誰もがアルヴァスに残る事を希望した。
異相内部から出たはいいが、病院生活が長かった為、あまりモノを見る機会が無かった全員が祭りに行きたいと言い出したのは数日前の事。
検査も終って、外に出ても問題無しと判断されたのだから、普通は其処で自由を保障されるべきなのだろうが、如何せん、その存在自体が特殊である為、現在は赤鬼宗家の監視者が彼らの面倒を見ている。
その役に抜擢されたのが何故ライルなのかと言えば、子供達の特殊性を理解し、同時に面倒を見られ、受け入れられる施設が国内に無かった為だ。
屍蝋の仮面の事もあって、半端な警備を付けるわけにもいかず。
腕の立つ守り人と世話役が必要だった。
其処で白羽の矢が立ったのがバーゲルの家であった。
娘は現在、他の家に居候中。
時には家に十人以上の門下生を住み込ませていた事もある家は空き部屋が多く。
同時に屍蝋の仮面と相対した経験を持つライルがいるとなれば、条件は十分に満たしていたのである。
数日前、大掃除を手伝わされた彼は赤鬼宗家からの人員も使って、邸宅を手直しした。
更に今まで暇を出していた使用人達を呼び戻し、子供達を受け入れる大勢を整えたので、本日祭りの前夜祭を愉しませた後はそのまま彼らを伴って帰宅する事となっている。
(……あの子も愉しんでいるだろうか……いや、野暮な話だな。今更……独り立ちさせてしまってから、こんな事を思うようでは親失格か)
異相に潜る少年少女の団体。
その中核人物たる少年。
惚れた相手の家に同居している以上、家にいた頃より幸せなのだろう事は疑いようがなかった。
それは伴侶からの話を聞いても分かっている。
幸せそうに笑うようになっていたと聞かされて、今更のようにああしておけば良かった、こうしておけばよかったと思うようでは……親として不甲斐ない。
(何かしてやれることを探そう……あの子に胸を張れるだけでは、謝るだけでは不十分だろう……)
公園までの道を歩く傍ら、祭囃子を耳にしながら、彼は厳格であるだけだった過去の自分を反省した。
そんな思いに耽るライルはその黄金の獣毛を子供達に悪戯されているとも知らず。
毛の長い尻尾を所々三つ編みにされていて。
そういう父親の姿を見たなら、娘は驚いただろう。
別人だとすら思うかもしれない。
そう、確かにライル・エイフォン・バーゲルは変わったのだ。
前よりもずっと人に好かれる者として。
「あそこが空いているな。さぁ、行こうか」
彼が悪戯に気付くのは家に帰って伴侶に思わず噴出されてからの事だった。
*
―――大陸中央諸国七教会本部地下第三区。
薄闇の中。
小さな光(ランプ)が点灯していた。
チカ、チカ、チカ。
周囲には重機が駆動して、車輪が回る音。
重低音が大きくなってくると激音が響く。
バガンッッ。
強烈なライトが遥か頭上から全てを照らし出し、彼らは自分達が乗っている340m四方の箱(ブロック)が最下層に辿り着いた事を知った。
恐ろしい程に広大な地下施設。
否、地下世界。
見渡す限りの地平と巨大な鋼の箱の群列が虚空に敷かれた魔力の導線(ライン)に沿って動いている。
小さな街一つがすっぽり入ってしまう数百m単位の区画が前後上下左右バラバラに動きながら時に連結され、時に切り離され、時に停止している様子はただただ口を開けて呆けるしかないだろう。
秘儀文字が書かれた硬質な車輪が箱の四方に据え付けられており、どれだけの重量があるのかも分からない区画を移動させる様は只管に圧倒的だった。
周囲は遥か頭上からの明かりで満たされていて、擬似的に魔導環境学で再現された野花や草木の生える公園型の陸地が虚空に幾つも浮いている。
まるでその様子は空中都市が無数に浮いているようであった。
人類が誇る最大規模の大陸要衝。
七教会本部と言えば、元々が聖凱王都アルヴィッツの王城を中心として増改築を繰り返した宗教都市。
文化発展の中心地そのものとされる事が多い。
七聖女が教会を掌握した頃より、その地下施設が改築され、数十年にも及ぶ開発が近年終了した事を教会関係者達は勿論知っている。
無論、その情報は信者達の殆どにも開示されており、アクセスしようと思えば、簡単に分かる程度のものだ。
多くの人々が情報の欠片くらいには接する機会を得た事だろう。
しかし、それでも、人の想像力というものには限界があるようで、広報部門の担当者達があまり諸外国を刺激しないようにと上層部から言われて、ひっそりとしか喧伝しなかった本部施設の全容は数字にしてみると非常に胡散臭い代物になっている。
四方100kmの立方体状の“施設”。
その内部に数百個にも及ぶ街や都市に匹敵する区画を【魔導技術(ハイ・クラフト)】と【電子噐械学(エレクトロニクス)】の混合技術で浮遊、移動、連結させて一つの施設として運用する。
最終工事終了後、地下に顕れたのは複数の生態系を人工的に再現し、単体で自己完結、維持出来る機能を搭載した【並列型自己完結都市(アーコロジー)】の群体だ。
極限環境用の外壁は真空だろうと太陽の中だろうと変わらず内部環境を維持し続ける優れもの。
七教会の有する宙域航行艦の技術が取り入れられた箱そのものが一つの街であり、世界であり、環境であり、乗り物であり、箱舟ですらある。
未だ最終運行試験は為されていないが、地上の教会施設とアルヴィッツという国家そのものを載せて、100km四方の物体が超々距離転移を駆使し、別星系への旅行を可能にする云々。
まさか、決定的な嘘は書いていないだろうが、大分誇張されている。
もしくは諸外国へのカモフラージュが行なわれている、と。
反七教会の機運が高まる地域の人々や動向を注視している組織、機関、国家、結社の構成員達が思っても仕方ないデタラメさは七聖女の筆頭顔負けだ。
そもそも星間旅行って何?
宇宙に出て行くってどういう事?
というのが、大陸知的生命八割の至って普通な感想である。
地殻を刳り貫き、マントルへ直に接する巨大な人工物はアルヴィッツの国土の三分の一以上を占める代物であり、其処に当然あったはずの地下水脈や土砂の量からしても、“工事した”の一言で片付けるのは常識的に想像し難いだろう。
とりあえず、基本的に広報部門が控えめに発表する情報というのは大抵、巨大な計画の一部で実利的な関係にある権益者達に対し、優先してアナウンスされる。
例えば、本部の地下施設工事に付いて、周辺にいる水に関する精霊や亜人達になら、゛水脈、地脈移転のお知らせと告知”とか“擬似環境の提供と今後の課題”とか銘打った話が降りてくる。
他には教会の天領、所有地以外の地上の地権者達などに“公共工事による地下利用のお便り”とか“大深度工事による権利者への保障に関するポリシー”とか、まるで何でもなさそうな仰々しくない情報がある日、突然やってくるのだ。
こういった話に接する殆どの人々は『ああ、教会の人ね。それで何が変わるの?』と軽い気持ちで訊ねるのだが、懇切丁寧に説明されても、内容が高度過ぎて分かり辛いので十中八九途中で投げる。
『分かりました。分かりましたから、問題無ければ別にいいんです。あはは』
こんな調子で計画の一部が事細かに書かれた紙やアンケート用紙が戸棚の奥に仕舞われるか塵として棄てられてしまうのだ。
故に多くの人々は教会がまた凄い事をしている、としか事業内容を見ない。
勿論、それらの高度な内容を理解する賢い人々もいるにはいるが、教会がまた“やらかすのだな”と思いつつも、世界最高の権力と実行力を持つ組織の前に口を挟むなんて事はせず。
二つ返事で承諾するのが殆どだ。
安全保障やら環境保全やら、そういうもので教会が間違った案件は殆ど無い事を彼らは身を持って知っているので、余程に不安を覚えなければ待ったを掛けたりしない。
だから、全体的に計画が仕上がって、全てが白日の下に曝されても、大陸中央諸国の国民の殆どは『教会がまた偉大な事業を行なったらしい』という緩い認識で騒いだりする事もない。
これが諸外国の地方になると。
情報の収集と統合だけでえらく時間を食うので、全ての情報が開示されても、信憑性というものがまるで感じられずに疑念や疑惑の目しか向けられない。
結果、人々はその内実を自分の目で見た時にのみ、唖然とした反応をする事となる。
『……………』
本日、教会本部に来た巡礼者達は地上施設の荘厳さと偉大さと見事さに歓喜の涙を流して、一生に一度の巡礼に来て良かったといつ死んでも良さそうな顔をしている地方からの来客だ。
若者から老人まで幅広い年齢層の信者達は地下施設への“観光”に最初は素晴らしいものが見られるに違いないとの期待だけを胸にしていたが、100km四方の空間を囲い込む巨大外壁。
凡そ12km程の分厚い鋼の中を潜り、内部の空間に出た時点で何が何やら分からなくなったようだった。
そして、地熱を引いて動力に利用しているマントルの引き抜き用魔術方陣。
強烈な光を発する柱と、その周囲を回る円環の傍から最下層に降りること事になると顔に恐怖とも畏怖とも興奮とも付かない表情を浮かべた。
外壁が全て透明な観光用区画が遮光用の魔術で覆われ、最後に到達したのはマントルと直に接している外壁と適度に光量を調整された地球内部を見られる施設。
オドロオドロシイ灼熱の世界が真下から煌々と硝子のようにも感じられる床の下を流れる様は地獄というものを連想させるに十分だっただろう。
一歩も踏み出せずに呆然とするお上りさん達にこっちですよ~とニコニコしながら、添乗員が手招きする様は彼らにとって死へ招かれている心地かもしれない。
「ま、こうなるわよね。普通」
「オレらが普通じゃないのは分かるだろ」
「ははは、家の孫達はすげーとか、やべーとかはしゃいでおったがなぁ」
未だ踏ん切りが付かない信者達を横目に最下層の外側、マントル内部に迫り出した区画へ下りる為、三人の男女が通路の途中にある転移方陣の上に入り込んだ。
瞬間的に転移した彼らが次に見たのは灼熱の海に迫り出した巨大なキロ単位はあるだろう係留型ドッグに複数の宙域航行艦に似た船が接舷している光景。
その中でも異様な形をした一隻こそが、彼らの目的地だった。
次元への潜行と境界の突破を可能とする鯨型の戦艦。
【双鯨(ジェミニア)・改弐】である。
元々は二つある七教会の旗艦の一つを改修したソレは現在も運行される【双鯨】の姉妹艦だ。
空飛ぶ船。
宙飛ぶ船。
そして、異相を飛ぶ船として生み出された二つの艦は元々、双子の七聖女の為に建造されたものだったが、海が静かになり、空も殆どを掌握した現在、宇宙と異相の二つの領域で共に運用されている。
「【外宙碩学師団】からの連絡では異相内部で再び動きがあったそうだ。“无の海”内部でまた魔力波動が見地された。今度は前回よりもハッキリとしてるらしい」
「そうなの? ま、この間は魔王の欠片だ、外なる神だ、奇蹟を産み出す機関だ、何やかんやあって結局すぐに帰ってきちゃったわけだから、今回はまた長くなりそうね」
「そうじゃのう。ま、マディクトとメルフ様、ミュルト様が決めた事だ。我々は宮仕えらしく真面目に職務へ励めばよかろう」
男と女と老人。
それなりに歳を食った彼ら三騎将と呼ばれる【騎師(ミリス)】達の頭目達は通路を歩きがてら、【軽殻装(コート)】姿で各々イカ焼き、わたあめ、串焼きを口にしていた。
超人達を率いる彼らが“最果ての詰め所”と呼ばれる異相の駐屯地から現実に戻されて以降、再編された騎師団の纏め役として諸々雑務に追われたのは周知の事実、アルヴァス亜人国の異相から帰ってからは毎日書類仕事にも忙殺されていたので中々にして現場へ出る機会はなかった。
まぁ、その合間に生き抜きやら買い物やら家族への面会やらをこなしていたので人間らしい生活をしていたと言っていいだろうが、一度災厄が起きれば、最前線送りの哀しい性か。
平和な日常よりも慌しい戦火を前にした方が自分達は活き活きしているとの自覚が三人にはあった。
「今回は部下を十五人ずつ編制したからな。前回クラスのが来ても何とかなるだろ」
男が楽観した様子で言うと女が呆れた顔になる。
「まだ、最新の高格外套が二体残ってるのよ? 奇蹟の中核がどんな使われ方をするのか分からない以上、何人いても安心出来ないわね」
「そうじゃのう。前回はあわや世界の終わりかと思ったわい。今回もどうなる事やら」
老人が肩を竦める。
「だが、今回は【聖杖(サクラ・ヴァクラム)】だけで五千本。ついでに【神賽(デウス・アレア)】の運用許可までこっちに下りてきたんだ。更に秘密兵器まで搭載済みとなりゃ、さすがに世界は滅ばないだろうよ」
女が難しい顔をする。
「アレ、良い噂聞かないのよね」
「神の賽、か。確かに……」
老人もポリポリと頬を掻く。
「聖女様方の造ったもんじゃないから、信用度はイマイチだが、ありゃ本物……期待したっていいだろ」
男が二人に何が不満なのかと尋ねる。
「七教会が保有する【源型(アーキタイプ・モールド)】の中でも一番取り扱いが難しいのよ? 保険としてはオペレーション・ワンダリカにも匹敵するでしょうけれど、その時になって何だか面倒事になりそうな気もするのよね」
「アレがアルヴァスの緑炎騒動の時に使われたのは知っておるじゃろうが、何の確率を操作したか知っておるか?」
「そう言えば、前回使用時の詳しい話は聞かないな」
「つまり、言えない事の確率を操作したのよ」
「……死人復活の確率か?」
男の声に緩々と女が首を横へ振る。
「魔王の完全崩壊の確率よ」
「どういう事だ?」
「緑炎騒動の時、特異点と化した化物と戦ってたのが、魔王の欠片……アレだったらしいわ。それで戦いの中であちらの状況が崩壊しないようにと、保護措置的に運用されたみたいね」
「ああ、そういう事か。だが、あいつに限っては何処まで効果が出るか怪しいんじゃなかったのか? 大戦の時だってロクに効果が無かったはずだが」
「……それは完全だったから。現在は欠片に何処まで力が有効なのか分かってない。ま、お守りぐらいの感覚にしておけという事よ」
女が最終的にそう会話の総括をした。
「そうだとしても、秘密兵器の方はそれなりに期待していいんだろ? さすがにフルー様がもしもの時用にって話を通したんだから」
老人が溜息を吐く。
女が呆れた視線となった。
「月の“門”を司る彼らを秘密兵器呼ばわりして……知らないわよ。後でどうなっても」
「蜥蜴がそんなに怖いもんか? それにあっちじゃ門自体を使えるわけじゃないだろ?」
「お前は昔から短絡的と言うか。そもそも彼らが何故月にいたのか。それすら、まだ解明されておらん。ミュルト様が大海洋で聞いたところによると“門”以外にも何か理由があったらしいが、まず間違いなく世界で最も“門”に付いて詳しい種族じゃぞ? 我ら人間の数万倍、【血統種(ブラッディー)】並みの寿命を持ち、門の力に浴し続けた存在が果たして普通の異種の範囲に収まるのかのう……」
「……そう言えば、本部地上の天界との間にあるやつはどうなってんだ。さっき、保守部門の連中がてんやわんやしてたぞ。今はクラル様は上に昇って、天使達も殆ど外神の件が片付くまで凍結中のはずだが、何かあったのか?」
「ああ、アレね。どうやら、唯一神の下を離れた天使達が大挙して押し寄せてきてるとか。クラル様の制御を離れてるから、危なくてこっちに出せないと押し問答らしいわ。何だったかしら? 確か、召(よ)ばれているとか何とか」
「天使の召喚なんぞ旧教会派くらいしか出来ないはずだが……」
女が首を傾げて瞳を閉じる。
「そうなのよね。それで旧教会派にも問い合わせたらしいけど、そっちはそっちで配下に加えてた天使達に何かあったらしくて、こっちの管理してる遺跡の一つを使わせろと問い合わせが来たとか」
「遺跡?」
「七教会と旧教会派の権力争いでギリギリこっちが所有権を持ってった稀有な場所があるのよ。ま、使い方からして不明だったんだけど、今回の話から推察するに天使に関連したものらしいわね」
「……何でもかんでも動き出してやがるな。破滅は近い、か」
ボソリと愚痴る男に女が苦笑を浮かべた。
「いつ、この世界から破滅が遠ざかった事があるのよ?」
「……オレ達が未だに必要な点ではそうかもな」
「破滅は隣人じゃよ。それも毎日毎日戸を叩きに来る。我らはそれに居留守を使う門番。入ってこようとすれば、戦うしかあるまい」
既に見えてきていた登場口に総勢45人の超越者達が整列する姿。
彼らは食べ終った各々の串をボッと虚空で燃え散らせ、待っていた部下達を見やった。
「じゃあ、あいつ等は番犬か」
「そんな可愛いもんじゃないけれどね」
「ははは、我らより優秀な狩人では、な」
三人の前で同じ制服を身に纏った男女達が一糸乱れず敬礼し、最も先頭に立つ五十代程の女が三人に報告を始めた。
『再編された各【騎師団(ミリシェ)】より45名。ディミトリア廃国域より訓練を終えて戻りました。どうぞ、如何様にもお使い下さい』
三人は顔に笑みを浮かべて、三者三様に己の部下達に通達する。
「行くぞ。野郎共」
「さっさと終らせて帰って呑むわよ。貴方達」
「ふふ、家族に言って聞かせる酒の肴を増やし往くか? 皆の衆」
誰もが己の長に頷き。
そして、三人が通り過ぎるのを待って、その後ろへ靴音すら揃えて付き従っていく。
登場口を潜った先。
広い通路の中に艦橋からのアナウンスが木霊した。
『ようこそ。特務部隊の皆様。再出発する皆様には我ら【双鯨・改弐】艦橋クルー及び全乗組員から心よりのお祝いを述べさせて頂きます。では、今後の予定が押しておりますので、どうぞ歩きがてらスケジュールをお聞き下さい。1230時より抜錨。1700時までに各機能の調整を終えて出港。予定航路を新型航行システムの評価を行ないつつ進んで、2030時までにアルヴァス異相内の特殊領域へと潜行。確認された魔力波動の原因を突き止めるべく、アイウィスに向かいます』
今やアルヴァス直下の異相内部にある都市の事は七教会の一部の者には知らされる事実となっている。
『尚、現在当艦にはフルー様の御用命を受けて月よりお越しの【臥龍(ソムノ・ドラクル)】―――ソムノ・ドラクリネ・“アルヴァス”様が載っており、睡眠中です。館内での騒音はご遠慮下さい。技術陣による解析結果を申し上げると……寝起きが悪い場合、当艦の格納庫に大穴が開く可能性を否定出来ません』
「アルヴァスだと? ま~た、あのトラブルメイカー聖女様は……」
「姓にこれから行く国の名前……私達の知らない事実があるのかしら。フルー様にも困ったものね。肝心な事をもったいぶるから、下は右往左往しなきゃならなくなる」
「先日起った西部上空の流星騒ぎが直接の来訪理由らしいぞ。フルー様の勧誘はついでだったらしい。昔から何かしらの“縁”があるのだろう。我らが知らない“世界の真実”とやらが」
三騎将が直接文句を言いたい相手がいないので赤裸々に愚痴った。
それを聞いていた騎師達は苦笑気味だ。
昔から戦う理由なんて二の次三の次で争いの火中に没してきた彼らにとって、真実の有無など然して問題になるような事ではない。
そういう事を話していられる時点で自分達と同様の将達は暇を持て余し、余裕綽綽なのだ。
それが分かるからこそ、誰もまた将と同様に張り詰める事の無い心地で任務へと望める。
『では、部隊の皆様は格納庫に起こし下さい。新型の【高格外套】の試着と調整をこれより行ないます』
灼熱のマントルの最中。
登場口が閉ざされ、ハッチのロックが完了するとすぐドックの固定用アームが艦から離される。
艦内通路に入った全員がアナウンスに言われるまま、転移方陣を乗り継いで格納庫内部に入ると其処には広大な空間に臥す巨躯が蹲っていた。
その色は灰色。
よくよく見なければ、巨大な岩と見紛うだろう。
渦巻く長い胴体の周囲には手足が確かに折り畳まれている。
「……蜥蜴じゃなくて、蛇か」
ポツリと三騎将の男が呟くと、キロリと灰色の中心点。
頭部があると思われる場所に黄色い瞳孔が開き。
『……ああ、少しばかり長い時を生きる蛇だ』
倉庫内の全員に空気の振動ではない、直接脳裏に働き掛ける類の超常の力が発揮され、声が響く。
思わず女と老人が責める視線を男に向けるも、男は喋る蛇にニヤリとした。
「で、あんたはどうして今回の一件に荷担しようってんだ? コレに載るのは自分の意思だって話だったはずだが」
『約束を果たす為だ』
「約束?」
『人が産まれ、初めて他者に認められた時。十数万年前、一人の男が円卓を作った時。五千年前、一組の男女に全てが動かされた時。千年前、あの男が国を興した時。そして、数十年前、運命が消え去った時。多くの約束が、誓約が、契約が、為された。我らはその幾つかに関して“門”の導きにより、力を繰る者』
「面倒なのは分かった。で、お前はつまり何をしに行くんだ?」
男の身も蓋も無い言葉に艦橋にいた者達や周囲の騎師とは比べ物にならないくらい脆弱な乗組員達が冷や汗を掻く。
『天が七つを超えし時、大母の願いは果たされん。なれど―――』
瞳がゆっくりと閉じられていく。
続きを呟くようにして、その永い時を生きる蛇は再び眠りへと付いた。
「また、疑問だけが増えたな……」
男が岩の塊の横を抜けて用意されていた新品の全身鎧(フルプレート)をカンカンと軽く叩き、起こそうと試みるも、龍は目覚める事無く。
相手の最後の呟きが彼の口から零れる。
「―――黒の棺、目覚めし時は七つを天に還さん。か」
結局、何も分からない事だけが分かった為、彼は仕事に戻ろうと周囲の工員達へ声を掛けようとしたが、呆れた女に後ろからボカリと頭を殴り付けられたのだった。
アルヴァスの夏祭り前夜祭当日。
出港した船は異相の先で異様な光景を見る事となる。
が、それはまだ少し先の事であった。
*
―――ゼオ家二階第三寝室。
「これで、いいですか?」
フルフルと震えながら身を捩り、その眉は己の姿に羞恥と期待に八の字になっていた。
他の少女達より先に装身具を身に付け終えたエストリアは全裸で寝台のクッションに背を凭れさせている少年の視線に背筋が炎に炙られるような熱さを感じた。
腰の奥はもう耐え難い疼きに支配され、その控えめな胸も慎ましやかな尻も触れられるのを待ち望んでいる。
熱く蜜で糸を引かせるすじは何を言わずとも、既に男を受け入れる準備が出来ていた。
「エストリアさん。イクスの前に……」
「はぃ……」
その蟲惑的な声に抗えず。
エストリアが少年のいる寝台に昇り、少年の足を跨いでよく裸体が見えるよう膝立ちになる。
自らの父親の横で膝を崩して座っている真珠色の髪の幼い少女。
シルメイアが呟く。
―――して欲しいなら、おねだりしないと。
細い楕円形の眉が切なく歪み。
三つ編みが少女の背中で揺らいだ。
「イ、イクスさん……わ、私のここ……お、おまんこ見て下さい」
腰が前に迫り出し、人差し指が左右からすじの内部に入って、クチィッと割り開いた。
内部は桜色というよりは興奮の為か僅かに赤み掛かっていた。
薄らと陰唇の形は分かるものの。
肉びらと言う程ではなく。
尿道ともう剥き出しになった淫核(クリトリス)はツヤツヤと耀き。
そして、僅かに開いた膣穴からはダラダラと蜜が滴っている。
「今、イクスさんと……一つになりたくて、おちんちん欲しくて……奥が疼いて変になっちゃいそうなんですよ?」
可哀想な自分に触れて。
舐めてもしゃぶってもいいから。
そんな、おあずけに耐える表情は想い人の前で自らを曝け出す興奮に少しずつ蕩けて、笑みになっていく。
「ここに有ったイケナイ道具でわ、私の赤ちゃんのお部屋、イクスさんが交尾でグチュグチュしてしないとく、狂っちゃうんです♡ だ、だから、イクスさんの立派なおちんちんで私の、恋人の牝穴を……道具みたいに使って下さい♡」
「エストリア……来て」
そのおねだりに少年が呟く。
それにぱぁっと笑みを咲かせて。
少女は腹のすぐ前でビクビクともう待ち切れずに透明な蜜を零す少年の雄々しい幹にゆっくりと跨った。
腰を浮かせ、少年の反り返りそうになっていた亀頭がすじに宛がわれると。
「あっ、入ってッ~~~来ましたぁ♡」
グヂュリュンッッ。
一気に膣奥、子宮口までを貫いた。
それと同時にまるで本当に最初からそんな形だったかのようにピッタリと股が隙間無く重なる。
「ぁ゛っ♡ ん~~~~っっ♡」
その衝撃で淫核が押し潰され、エストリアが最初の絶頂に達した。
ビクビクビクッと艶かしい裸体が汗を滲ませて全身を震わせる。
少年の腹に付いた手が僅かに爪を立てて、膣内部がヂュルヂュルと蠢き、少年の幹を心地良く締め付けていく。
少女の腹部。
臍の部分には現在、部屋の壁に掛けてあった一つの性具。
大人の玩具。
それも純粋に魔族が使う為の代物が埋め込まれている。
それは【禁断蟲(エクソティシス)】を使った代物だ。
白い陶磁器のボタンのような部分の下にまるで赤黒い触手が細長い釘のようにある。
「パーパ。分かる? 今、エストリアさんのお腹の中に融合した【貞操蟲(コスティタティス)】が子宮や膣や背骨にまで根を張って、神経として馴染んでるんだよ……このまま、パーパが種付けしてあげたら、エストリアさんはもうパーパのおちんちん以外で絶頂出来ない身体になっちゃうんだよ? クスクス」
繋がった少女の臍は直径1cmの白磁の部分で覆われている。
釘状の部分が腹部から侵食し、分割され散らばると、使用した牝の肉体に融合・同化しながら、神経節を形成。
最終的に肉体の感度を飛躍的に高め、予め準備されていた効能を発揮するのだ。
「ほら、見て……今、パーパのおちんちんで達しちゃったから、少し浮き上がってきてる♪」
愉快そうにシルメイアがエストリアの臍の部分を基点として腹部全体に広がっていく形を指でなぞった。
「ひぁあぁ……♡」
甘い声で少女が背筋を焼く快楽に啼く。
浮き出てきたのは膣と子宮と卵巣。
そして、それを起点に描き出される魔術方陣だった。
「いくひゅひゃぁぁん♡」
唇を震わせて、エストリアが甘く甘く悶える。
「これはね。さっき説明した通り。魔族の牝を屈服させる為のものなの。本当はシルメイアに使うはずだったんだよ。きっと……」
「そう、なの?」
少年の問いにシルメイアが耳に顔を寄せて呟く。
「うん。でも、エストリアさんにも十分使えるから心配しないで……このまま、いつものように一杯犯して、種付けしてあげて? そうすれば、もうエストリアさんの身体は今後、どんなに高ぶってもパーパの身体に触れない限り、達する事も出来ない、おまんこが疼きっぱなしのはしたない交尾穴になっちゃうから」
「してぇ……してくらひゃぃ……いくひゅひゃんのぉ♡ いくひゅひゃんだけのぉ♡ いつでもおまんこできるあなにしへぇ……♡」
「エストリア――」
唾を呑み込んだ少年の幹が太くなる。
「ひぁぁあぁぁあ♡♡ おおきくぅ♡ このままジュボジュボしへぇ♡ グヂュグヂュっへぇ♡」
「うん。エストリアを僕の、僕だけのものにするから、ね? ちゅ」
「ん、ぁっ、あぁっ、いくひゅひゃぁん……ちゅ、んちゅぐ、ぢゅぐ、ぢゅるるる」
少年が優しく跨る少女の腰を掴み、身体を抱き寄せて唇を奪うと。
エストリアもまたそれに応え。
舌を絡めて恍惚とした表情で女の悦びを一心に貪った。
その淫らな唾液を絡め合う音にようやく準備が出来た様子のウルと璃紗が寝台に上がってくる。
「ずるいですわ……」
「イクス……」
跨った腰がゆっくりと前後に揺すり始められ、まるで少年へ見せ付けるようにエストリアが背筋を反らせ、繋がった場所を顕にする。
グヂュ、グヂュ、グヂュ、グヂュ、グヂュ―――。
少しずつ粘性を増していく蜜が肌と肌の間で熱くなっていく。
「ぁっ、あっ、ん、んっ、んぁっ、ぁ♡ んぁぁぁっ♡♡」
自分の中心に感じる雄々しい幹に襞を抉られる感触。
それだけで頭の芯までもジンジンと痺れ、エストリアは腰の動きを上下へと移行していった。
その間にもウルと美紗が腰を揺する少女の左右に膝立ちで少年へ全身を見せる。
「イクス。わたくしの身体見えますわよね……」
一際巨大な乳房と美しい銀の巻き髪。
フサフサとした尻尾が揺れて、裸体を晒す恥しさに太腿が僅かに震える。
ウルの肉体は正に女神のように芳醇な色香をかもし出していた。
元々、背が高い彼女にもアンバランスな胸の乳輪は出会った時よりも大きく、ふっくらとしていて桜の色合いを深め、乳首は超大な乳房に見合うように一口大のマシュマロのようにぷっくりと勃っている。
それでも重力を無視したかの如き形の良さが既にもう彼女が亜人の域から抜け出ている事を暗に示していた。
他の少女達と比べても慎ましやかな陰唇すら見えないすじ。
安産型で近頃は更に豊満さを増した臀部。
それでいて胴体や太腿、腕の肉付きは筋肉が主で弛んでいる場所は何処にも無い。
正に女ならば、誰もが羨むような身体。
その上に煌びやかな装飾が施されるとすれば、もう彼女の美しさに文句を付ける輩はこの世にいないだろう。
身に付けられた装身具は小さな黄玉(トパーズ)をあしらった銀の首輪と足輪、腕輪の六つ。
更に薄らと膨れた腹部の第三の膣には縊れた壷型の小さい白磁の栓が埋め込まれ、その中心には金鎖が付いており、大きなしこり勃った乳首に嵌まった金輪に繋がれていた。
鎖は胸部だけではなく。
腰周りや臀部、太腿にも食い込むように飾っており、尻膣の中に埋まる同じ壷型の栓と繋がって、何も隠さない下着のように身体を強調している。
「おまんこ……三つとも毎日疼いているのよ……貴方が欲しくて……お腹の子がいるのに……お腹もお尻も全部してくれないと……おかしくなりそうで……」
まるで不満というよりは哀願するように呟いて。
ウルの背中から桜色の触手が幾つか湧き出すと潤みながらも閉じたままのすじを両側から開いた。
プチュ、コポ……。
途端に蜜が溢れ出し、ダラダラと糸を引いてシーツに沁みを作っていく。
「見て……この子達で毎日毎日貴方がしてくれない時は慰めてるの……」
「ウル……」
少年がその光景にビクッと幹を震わせて。
「いくひゅひゃぁんっ♡ らめれすよぉぉっ♡♡ あ゛♡ ぁ゛♡ おおきくしたらぁぁ♡♡」
エストリアが軽く再び達しながら、腰の奥へ更に幹を引き込み、子宮口を抉る。
「でも、撫でるだけでもどかしくて……貴方以外に入れてない……わたくしの此処に……おまんこに触れて……」
言われるがまま。
少しずつせり上がってくる射精感に腰の奥を滾らせて。
少年は片手を今も蜜を零す中心。
ウルの牝穴に指を中指を宛がう。
すると、ヌルンと一瞬で呑み込まれ、チュウチュウと優しく襞に食まれた。
それだけで心地良い。
指ですらそうなのだから、幹を突き込めば、どうなろうか想像出来ようものだ。
少年の横に付いていたシルメイアがクスクスと微笑み。
耳元で囁く。
「ウルさんはシルメイアと似てるんだよ? だから、きっと凄く気持ちよくなれると思う。今はパーパの赤ちゃんを孕んでるから、シルメイアのおまんこより長く愉しめて、お腹の仲の“みんな”も悦んでくれるよ。シルメイアと同じようにきっと……」
その声にある確信は妖しく少年の脳裏に沁みこんでいく。
「イクス……貴方の指……優しくて、好きですわ。髪を撫でてくれる手も優しく呟いてお乳を食んでくれる唇も、わたくしのおまんこに種付けしてくれる……逞しいおちんちんも、何度も抱き止めてくれる胸板も……全部全部」
幹をエストリアに、指をウルに、食まれ。
少年はその自分を見つめる潤んだ視線にグッと睾丸を熱くする。
どちらも牡を高ぶらせ、伴侶に仕える牝としての姿だ。
乱れていても、悩ましげに震えていても、最後に少年を包み込む身体と心。
それは自分には過ぎた代物だと分かっていても、抗えない魔力を秘める。
「いくひゅひゃぁぁんっっ♡♡ もぉっ♡ もぉっ♡ わらひぃにぃ♡ たねちゅけひれくらひゃい♡ うるひゃんみたいにあかひゃんちゅくっれくらひゃい♡ えひゅとりあにぃ♡ いくひゅひゃんのあかひゃんはらまひぇてぇ♡♡♡」
グズグズに蕩け切った襞が少年の上から降りてくる度、何度も幹を絞り。
腰の奥深く。
子宮口を少年の亀頭で抉られ、傘で弱い場所をこそぎ取られる感覚にエストリアはもう涙を零していた。
グヂョッ、グヂョッ、グヂュッ、グプッ。
「んひぅっ♡ いくひゅひゃんっ♡ いくひゅひゃんっ♡」
「エストリアっ、そんなに激しくしたら―――」
一際大きく腰が少年の幹に振り下ろされ、グヂュィィッと最奥に牡を受け入れた。
途端、ブチャァアアアッと二人の間に潮が吹いて。
「あ゛♡ ァ゛♡ ぁ゛ぁァあぁ゛ぉぉ゛ぉォ゛オぉぉ~~~ッッッ♡♡♡」
本当の獣のように嬌声を上げながら、少年の上で背筋を逸らして大きく震わせ、エストリアが絶頂する。
同時に今まで腹部に浮き出ていた神経節による魔術方陣の上に燐光が舞い。
僅かに光ると肌へと薄紅色の紋様を刻み込んでいく。
「いくひゅひゃぁぁん……わらひぃ……いくひゅひゃんのぉ……いくひゅひゃんらけのおまんこにぃ♡ なっひゃいまひたぁ♪」
舌を垂らしながら、牝としての幸せに全身の快楽を全て享受し、何度も何度も少年の幹を膣内(なか)で締め付けて。
少女は刻まれ終った紅の方陣を嬉しそうに淫猥な笑みで撫でる。
子宮と卵巣の意匠を使った方陣は完全に定着し、生涯に渡って少女を縛る鎖となった。
その上、生殖器と周囲の神経に融合して溶け合った神経節は通常の人間とは比べ物にならない。
常人の数百倍にも及ぶ太い神経の束が腹部、子宮、膣を中心に全身へと張り巡らされたのだ。
その身体の感度は普通ならば色狂いになってしまう程のもの。
しかし、適切にシルメイアが儀式を管理したおかげか。
エストリアは未だ嘗てない官能に全身を満たされ、少年を自分の内に迎え入れた悦びで穏やかな心地となっていた。
「エストリア。ちゅ……」
「ぁ♡ ん、ちゅ、ちゅぐ、ぢゅぐ、ぢゅるる、んぁ、いくひゅひゃぁん♪ いくひゅひゃんのこだねぇ♡ いっぱいいっぱいたねちゅけひてくらひゃぃ……♡」
「うん……もぅ、すぐだから」
「はぃ♪ ん、んっ、んぅぅっ、ぁっ、いくひゅひゃんっ♡ いくひゅひゃんっ♡ いくひゅひゃぁんっ♡」
グヂュグヂュグヂュグヂュ。
蕩け切って弛緩した膣内はしかし緩々と少年を締め付け、熱り勃った幹を振るわせていく。
「っ、エストリア」
「はぃ!! だひてくらひゃい♡ あかひゃんいっぱいいっぱいはらまひぇて♡ かぞくにひてくらひゃい♡♡」
「ッッ!!?」
ドビュ、グブルルルルルルルルルルルルルルルルルルルウ!!!!?
「ぁ゛ぁああ゛ぁああああああ゛あ゛ぁ゛ぁああああああぁああッッッ♡♡♡」
もう完全に準備が出来ていた子宮口がその強張りを緩め、少年の灼熱したゼリー状の子種に入り口と子宮内を焼かれて燃えるような快楽を全身に奔らせる。
「ぁ゛~~~っ♡ ぁ゛~~~~っ♡ ぁ゛あ゛~~~っっ♡♡」
そのあまりの量と精の濃さに膨れた胎の下でゴボゴボと零れ落ちた子種は湯気を上げて、その匂いに他の少女達が今までよりも更に胸を高鳴らせた。
「イクス……つ、次はわ、わたくしに」
「イクスぅ……次は璃紗にしてぇ」
「パーパ。もう一度しよう? ねぇ? ねぇ?」
少女達にねだられながら、少年はいつの間にか完全に闇へ閉ざされていた空に大輪の花火を見た。
空に響く独特の破裂音。
そして、遠方から聞こえてくる人のどよめき。
けれども、それよりも美しい牝達の姿は蒼い天蓋の光に照らされ艶美で。
「みんなで、ね?」
そう、呟かせた。
夜は終らない。
少年と少女達の交わりはまだまだこれからだった。