※この作品はR-18です。

聖娼館ハルトゥム   作:Anacletus

181 / 318
本編の途中ですが、一年以上掛かったものの第二章の用語編が出来たので投稿します。第三章の資料集が出来るのはいつになるか……。これからもどうぞ聖娼館ハルトゥムをよろしくお願い致します。


第二章決定稿設定資料集【用語編】

第二章決定稿設定資料集【用語編】

 

 *ネタバレ注意。

 

『七教会』

 

 《その2》

 第二章における七教会とは凡そ非凡という概念を具現化した組織として登場する。七聖女の単体能力は比類無きものであるが、その権威を担保するのはあくまで七教会という組織の強大さであり、彼らの働き無くして七聖女もまた全力での行動は出来ない。大陸内における彼らは人類が有するあらゆる実行力の頂点に君臨する有能な技能者集団であり、思想集団でもある。その大規模な施策、政策の数々、あらゆる分野において最先端を直走る思想、概念の構築。これらは七聖女単体では為し得ない大陸の【近代化】を支える重要な要素であり、彼らの存在は人類が到達する新たな時代のテストケース、モデルケースとしての意味合いもある。今後も人類規模の偉業を為し続けるのは間違いなく彼ら七教会の構成員達であり、彼らを率いる七聖女達であるという事に如何なる国の有識者達も異論はあれど表立った反論は出来ないに違いない。

 

『魔王追討師団』

 

 《その2》

 その名の通り、主人公である魔王を追跡し討つ為に戦ってきた追討師団であるが、第二章においては途中からイグニシア・クルシス国境域において足止めされる事となった。彼らの国境での仕事は七教会の難民支援の部署が引き継ぐ事となっていたが、二章終盤における魔王の崩壊と分割によって、その役目は半ば達成されたという扱いで幕を閉じる事となる。本来の師団長であるマロウが行方不明となり、魔王単体を追い掛ける必要性が無くなった以上は解散というのは自然な流れだろう。しかし、実際には未だ魔王に動きがない為、部隊を休止し、人員を他の部署に回しているという体で事実上の解散を行なっており、魔王の再復活の際には迅速に再集結させられる事は確実である。連隊長達にしても長い休暇を取る者や他の部署に組み込まれる者などがいるものの、その誰もが魔王復活の報を心の何処かで確信している。何にせよ。魔王追討師団の仕事は未だ終っていないと隊員達は胸に思うところがあるのは確実である。

 

『天の軍勢』(ツェバオート)

 

 《その2》

 教会が奉じる唯一神の下僕として、一つの存在でありながら、手足のように多数の天使として存在している旨は第一章で記述された。第二章で『天の軍勢』を動かしているのは主に七聖女クラル・リテルである。教会の唯一神が大戦において魔王に消滅させられて後、機能停止状態で天界に遺留(ストック)されていた全軍を彼女は配下として手足の如く運用している。第二章では七教会に天使を貸与して治安維持用に待機させていたり、対象を捜索させたり、確保したナーリャを監視させたりしているが、あまり活躍している様子は描写されない。というのも、天使そのものの能力が世界に与える影響が大き過ぎて、様々な制約を課せられているからである。本来、天使の第三位クラスになれば、第二章前半の終盤において黒の座天使が行ったような事が可能である。全軍を指揮するクラルの号令一つあれば、そんな存在が数千数万数億と動くのである。実際にそんな事になれば、大陸は物理的に消滅の危機である。大陸の超越者達で組織された【聖杯委員会】にしても、聖女個人と遣り合えば一人一人ですら持て余すのが確実であり、それに天使が付いてくるとなれば、敗色は濃厚どころか確実だろう。それ程の戦力であるからこそ、大陸内部での能力は従来、天界において運用される力の数十分の一以下にまで抑えられている。超高位魔族、仮に【惑なる天】と呼ばれる筋肉の化身は常々『天の軍勢』との戦争(あそび)に出掛けるのが専らであり、一人で天使全軍と同等以上である事が示唆されているが、これは逆説的にそのような存在と渡り合っても消滅し切らない天使の強大さを物語っているとも言えるだろう。大戦時には唯一神と共に魔王である少年とも戦っていた事を考えれば、その実際の能力は大神クラスである。

 

『聖杯委員会(ペルスヴァル)』

 

 事実上の人類の最終防衛ラインとして機能する委員会は他種族に跨る頂点存在や特殊な個体が所属するごった煮な組織と言える。彼らの大半がそもそも数万年以上の年月を確実に生存する生命としては人類の先駆者に当る事を考えれば、後進に道を示すというのはそう突飛な話でも無いだろう。第二章においても存在を語られるだけの彼らであるが、それは結局のところ彼らが現実に干渉した場合にどれだけの被害や影響が出るのか分かったものではないからだ。世界の真実や謎、秘密というものの大半を手中に収める組織ではあるが、その構成員の力の強大さ故に表舞台には殆ど出てこないわけである。彼らが表立った行動を開始するとなれば、それは世界の危機、人類の破滅や惑星の消滅、宇宙の崩壊が危ぶまれる、と言った馬鹿げたレベルでの事態が想定される為、人類にとっては名前も姿も知らない方が平穏であると言える。大戦で崩壊した彼らを再編成し、束ねるのが人類であるという事実は人が新たなる階梯へ進んだ事を暗に示す証左であると一部の超越者達は考えているらしく、その動向には少なくない視線が注がれている。

 

『叙事詩機関(エピコス)』

 

 旧教会派に所属する組織の一つ。本来は旧教会派内でもかなりの権限と実態を持った情報管理を担う部署であったが、七教会の台頭で没落。その影響力や持っていた不動産、資産は激減し、現在は最重要な施設と物品、所領を管理して、人類にとっての禁忌に該当する情報の収蔵、保管、検閲及び焚書を行なっている。彼ら組織の長は総館長と呼ばれ、Nという名で呼ばれる全身黒尽くめの少年である。彼が人間でない事は機関の上層部と一部の隊員達のみが知る事項であるが、機密というわけではない。従来の教会内では他にも幾つかの機関があり、その長達は皆彼と同じように一文字で呼ばれる人ではない存在として君臨していた。現在もその構図は変わらず。時に七教会からの応援要請を受けながら、長の誰もが従来の自分達の仕事を遂行している。旧教会派の各組織は現在何処もエピコスと同じような状況にあるが、それでも七教会からの干渉はほぼ受けずに独自行動する存在であり、七教会にしてみれば、権力闘争で打ち崩せなかった本当の意味での教会の基盤そのものであるという認識に至っている。

 

『イグニシア・クルシス』

 

 南部最大の大帝国。国土は大陸の十分の一にも達し、有史以来同等の領土を保有した国家は一つもない。水分(みくまり)の女神と呼ばれる神を信奉する民間信仰が盛んであり、皇帝の始祖は女神に仕えた神官の家である。二百年近く前までは南部でも有数の大国であったが、その頃に大陸中南部に版図を広げていた【大皇】の血筋を受け入れる事で多くの奇才・天才を【皇帝】の血筋に儲け、飛躍的な領土の拡大を見せた。首都【アウテーナム・レクレス】は大陸最大の巨大都市であり、四方40kmにも及ぶ。近年、南部最貧地域にある国家アルバストレを武力併合し、前代皇帝は引退。その後に彼の孫娘である姫殿下が皇帝へと即位した。それからの2年で七教会の【近代化】を模倣したとも言われる政経改革が断行され、軍縮と経済勃興によって大陸史上類を見ない急速な発展と遂げる。だが、その平和的な政策とは裏腹に実際には軍縮は行われていない。軍事予算の大幅な兵器開発部門への移譲が行われ、諸侯の兵の削減によって人件費を圧縮。予算と兵隊の数を減らしたように見せかけているに過ぎないからだ。帝国内部の皇帝派の急進と貴族諸侯の軍事的衰退というのが本当のところであり、十代の皇帝が打ち出した大胆な政策に未だ大貴族や諸侯達は振り回されている。前代皇帝の辣腕から未だに院政を敷いているという噂もあるが、事実無根。現在、七教会を除いて唯一と言っていい現代式航空戦力として航空師団を保有し、大規模に艦船を飛ばせる技術を持つ。大陸南東部【武帝】の騒乱を機に今まで進めていた奴隷関税条約を軸とした人材確保、登用を進め、大森林と未開原野の開発へと着手。南東部に造成した奴隷都市を拠点として武帝難民の援助と辺境開発を加速させた。藩落東端における【双來】との条約を締結後、敷設していたラストーラ大山脈隧道を開放、東部南部中央の大流通路として運用を開始。皇帝の藩落遊説中に起きた七教会による都市国家【アーズトリテ】の崩壊を機に藩落援助と教会批判を展開し、藩落及び南部での地位を磐石のものとした。

 

『アウテーナム・レクレス』

 

 イグニシア・クルシス首都。半径数十kmにも及ぶ大陸最大の都市であり、水の都として有名。現皇帝が即位して後、都市機能の開発と発展が急務とされ、馬車や転移しか移動手段が無かった街中を怪物と綽名される【列車】が行き交うようになり、近代的交通網が整備された。行政が集中する都市中枢、宮殿域より下った先に【超高層建築群】と呼ばれる近代高層建築が軒を連ね、市民生活が劇的に変化、改善された首都は正に大陸経済の要衝とも言われる。その繁栄ぶりは大陸中央諸国に負けず劣らずであり、今も様々な生活習慣や因習が凄い速さで廃れ移ろう為、世界一時間の早い都とも言われている。都市住民は居住者以外を含めても二千万人近く。それらの人々の生活を支える水源は王城、皇帝が居住する一帯から供給されており、水に対する考え方だけが変わらず受け継がれていて、生活排水や工業用水の濾過、改善技術でも大陸有数を誇る。都市民達に出されたお触れから皇帝を呼ぶ時は“我が麗しの”等を筆頭にする枕詞が必須とされ、皇帝の陰口を叩くような輩は即刻拘留の憂き目に合う。

 

『聖王同盟(サクラム・フェデレイションズ)』

 

 七教会の治世に異変が起きた時期から暗躍し始める事となる魔王の側近集団。主人公の傍に侍る少女達が彼の分割を機会に立ち上げた組織はたった一つの目的。ティアを再び完全な形で復活させる為に動く共同体である。名を連ねるのは女性ばかりという事で後に魔王の娼婦とも綽名される事となる。活動資金の大半はイグニシア・クルシスを率いるエトが出す事となっているが、そもそもの活動が諜報活動やそれに付随する戦闘を含む複数の雑務である為、然程規模は大きく無い。今後、第三章にて彼らの動向は語られていく事となる。

 

『七聖女』

 

 《その2》

 彼女達の大半がようやく第二章では出揃う事となった。クラル・リテル。ソィラ・ミクラ。ハティア・ウェスティアリア。ユアン・クオ。フルー・バレッサ。ミュルト・ジオバトス。メルフ・グラネッタ。更に関係性もある程度は明らかになっている。幼馴染、旅の仲間、育てられた子供、等々。彼女達の大半が主人公と親密な関係性を過去に築いていた事は殆ど公にはなっていない。聖女達が其々に様々な分野で活躍し、何かしらの働きをしている事は分かっているが、表に出てこない聖女達の動向は明らかではない。また、組織を動かす際には大半聖女筆頭であるフルーと彼女の側近達が動いている為、七聖女達全員が七教会を動かしているというのは語弊があるだろう。今後、全員の名前と役割、その奇蹟の内実が第三章以降は明らかとなっていく。

 

『魔王』

 

 《その2》

 近代化以後、その言葉は殆どが創作物内の卑猥な存在の代名詞となりつつある。その大抵の理由は魔王そのものに関する情報が七教会を筆頭にして多くの国々で規制され、または焚書されているからである。これは情報化社会の到来を迎えつつある大陸中央諸国や地方の先進国ですらも同じであり、魔王が如何にデリケートな話題として国の中核人材達に扱われているか分かろうものだろう。黄昏の悠久戦争の記憶にしても、大半は天変地異に対するものであり、大陸中央で起こった大戦争なんてものは諸国からすれば、送った義勇軍や支援物資、支援金の額面以上の意味を持たない。戦争に参加した殆どの人員達にしても、魔王の姿を見たという人類はほぼ皆無であり、全ては超越者や神々、魔族のような人を超えた者達が見たのみである。こうした現状の為、物語内の魔王という存在は過去に実在した魔王達の情報を元にして構成された創作(フィクション)が九割以上を占める。そういった意味では魔王というのは現実と創作物の二面性を持って人々には捉えられており、一部の軍高官や政治家などの実情を知る地位に付かない限りは単なる邪悪な成人未満お断り存在と言えるだろう。

 

『大戦』

 

 《その2》

 正式名称「黄昏の悠久戦争」世界中の国々を巻き込んで行なわれた大陸史における最大の大戦の実態は多くの場合、天変地異と大陸中央からの支援要請という二つの記憶として多数の国々に覚えられている。そもそもどうして大戦が起こる事となったのか。その最たる理由は大陸規模での巨大災害が相次いで起こり、それが魔王のせいであると大陸中央諸国と七教会が公式に発表した事に始まる。これを討たなければ、大陸が沈むと非常事態宣言を発令した事により、地方も支援を強いられ、多くの国々が莫大な戦費と求められた物資の提供を約束せざるを得なかった。これに応じたのは七教会の広報がまったく嘘を言っているとは思えない状況だった事と多くの国々で超越者や占術者達が間違いないと国家重鎮達に働き掛けたからだ。これによって地方からの義勇軍も幾つか編成され、大陸史にも類を見ない戦力の集中が大陸中央北部において起こった。その当時の情報は等しく戦争に従事した国々に開陳され、当時の物々しいというよりは壮観としか言いようの無い光景が風景画や篆刻写真として有名となった。無数の異種、亜人、人類、超越者、並ぶ顔触れと七教会の全戦力は確かに惑星総戦力と言って差し支えないものだった為、今も好んでそういった大戦のモチーフを描く画家がいる程である。

 

『奇跡』

 

 《その2》

 第二章における最も活躍した奇跡は七聖女ソィラ・ミクラが有する【破壊者(ワンダリカ)】である。この奇蹟はフルー曰く破壊力のみだけであるならば、七聖女全員の能力を上回る。時間、空間、現象、概念、そういった人が認識出来る全てに対して働き掛ける事の出来る破壊能力。歴史すら変える事が可能であり、過去すら改変するという話しは事実である。だが、その強大な力故に様々な制約があるらしく。第二章においては前半のクライマックス。アーフル・ナーシムの操る巨大な神器を半分破壊する程度に威力は留まった。しかし、それにしても数億人を一撃で消し飛ばす攻撃を無力化しており、その力は計り知れない。

 

『騎師団(ミリシェ)』

 

 七教会の紛争介入部隊が元々の源流であり、人間の中に現れた本当の超人、超越者と呼べる技能者だけで構成された教会最高の部隊。その力が最大限に発揮された大戦後はあまりの力の大きさに各国とのパワーバランスが崩れると解体され、部隊の隊員達は各地に様々な名目で分散させられて通常戦力ではどうにもならない業務に当っていた。第二章では再編された事が示唆されており、現在数師団が再構築されている途中と思われる。騎師団は俗称であり、本来は其々の師団に名前がある。ちなみにマロウ・ブレステンドはその一つを率いる立場だった。

 

『総主教(パトリアルヒス)』

 

 旧教会派と呼ばれる七教会が発足する前の教義を掲げた教会組織の長。本来の教会とは旧教会派の方を表わす言葉であった。が、七聖女による新教会への再編で組織を構成する人材をかなり引き抜かれて、政治的な力を失い、組織中枢である大司教達も次々に失脚した為、宗教的権威は殆ど残っていない。しかし、旧教会派の組織は五つの組織を有しており、総主教が治め直轄する組織が衰退したのみで他は無事だった為、未だ戦力的には七教会と比肩し得るだけの余力を残している。

 

『聖征者(クルセイダー)』

 

 旧教会派を統括する総主教直轄の実働戦力。教会が旧くから有する超越者の代名詞であり、教会の敵と認定された存在を滅してきた一種の暴力装置。その実態は天使の力を有する超越者。人間であり、その能力は世代交代して受け継がれ、強化され続けている。その力は主神級の神々にも届き得ると言われ、実際に教会を弾圧した大国の軍団に壊滅的な被害を負わせて、他国に滅ぼされる引き金となった事もあった。

 

『魔王(デウス・ムンディ)』

 

 魔王の名の中でも特に魔術や学術的な専門用語においてはこの発音が使われる。世界の神という意味を内包する。しかし、実際には誰も彼も普通に魔王としか発音しないので殆ど歴史の研究職くらいしか使わない。

 

『神担者(コスタレロ)』

 

 第二章においてアーフル・ナーシムとナーリヤ・ナーシムの二人がこの血筋である事が語られる。神との契約を持ち、神そのものを担うという大きな宿命は常人には理解し得ない神秘そのものであり、血統そのものに組み込まれた遺伝を超える呪いと言う事も出来る。

 

『基幹異種(バルバロス)』

 

 まだ人間が家畜程度の存在として大陸に住んでいた頃には“人間”とは現在の異種の始祖である彼らの事であった。彼らは非常に高度な能力を有し、一体一体が完全な生物として成立した個体であり、性別や物資的な肉体を超越していた。しかし、時が経つに連れて台頭した人間を滅ぼそうとした時、他の種族や自分達の子孫である異種、神々や魔族までも敵に回してしまい、最終的には絶滅する事となった。一体で生命としては完成されていた為、雌雄の概念が無く。その為に愛という感情をどうしても理解出来なかった。

 

『人馬(ケンタウロ)』

 

 人の上半身に馬の下半身を持つ亜人。大陸でも珍しい人間の部位をそのままに受け継ぐ種族。狩猟民族であり、複数の山岳部に跨って生活する稀少種族。弓矢の扱いに長けており、万年単位の昔には亜人として繁栄していたとされる。現在最大の集落は大陸中央南部から更に下に位置する不毛山岳にある共同体。大陸各地に流浪の民や秘境の民として少数が生活しているとも噂される。異種と旧い交流が在り、特定の異種に仕えるような行動も確認されている。

 

『神馬(ペガソス)』

 

 神話の神々の一部が使う馬。魔術師などがよくそれを似せて翼を持つ馬を創造するが、神格の有する魔力をそのまま発揮出来る能力はそれらの紛い物とは別次元であり、それ自体が一種の信仰を集める神格化された存在でもある。その加護を用いる事が出来る人馬は能力と姿を借り受ける事が可能とされる。

 

『汪鯨(セティ)』

 

 大陸の遥か冗句を漂う黒き鯨の如き異種。その生態はほぼ謎に包まれているが、空を永遠に飛び続ける事が出来ると言われる飛行滞空能力を調べようと研究者達が躍起となって探していたりする。七教会の双鯨《ジェミニア》型艦船の元ネタであり、七教会にはその亡骸が実は一体だけ保存されている。

 

『彊獣(ベスティアルム)』

 

 獣の形をした巨大な珪素系生物。肉体そのものが生きた土塊のようなものであり、大量の魔力形質に対して怖ろしい耐性を持つ事から、魔術師の天敵と呼ばれた。気性が荒く、怒らせると災厄となって人間を襲う異種であった事から、土地と場所は違っても同じ天災として人々に記憶されている。近年は七教会の影響力が広がった範囲内では姿が確認されておらず。危険指定の異種でありながら、研究不足で七教会の観測部門が随時情報提供を呼び掛けている。

 

『貴龍(アウロン)』

 

 輪廻竜とも呼ばれる半神格化された人型の異種。亜人ではないが、竜型の亜人のように見られる事があり、とある秘境の集落では人々に神として崇められる存在。人語を解するが、発音出来ない為、魔力での筆談で会話する。寿命というものを持っておらず。一定の年数、同じ個体として存在してから、自らを幼い姿で産み直し、何度も生まれ変わる。その為、滅多に新しい個体が増えない。新しい個体が生まれる周期は数万年とも言われ、人類が基幹異種の家畜と同様だった頃から連綿と存在しているとされる。大陸にいる様々な竜、もしくは龍達と呼ばれる異種達の中でも最高位に近い能力と旧さを持つ。

 

『祖精(ファイリィ・マトゥリナ)』

 

 人類が殆ど見掛けた事の無い光の塊のような異種。神出鬼没で森林や密林でその存在が本当に百年に一度確認されるかどうか、くらいの存在。人間の前には殆ど姿を現さない事から幻の妖精と言われる。しかし、その魔力が超絶の力を秘めているという事は伝承で伝わっており、気紛れで人間を灰にする程度はしてしまうと記述にはある為、それらしき目撃情報はあっても近付く者は殆どいない。しかし、妖精の中でも旧い種族である事は確かであり、異種の中でも特別視されている。

 

『血統種(ブラッディ)』

 

 《その2》

 人型魔族の総称。第二章における血統種は貴族階級が登場した。人型魔族達の社会も実は人間と似たり寄ったりであり、旧くは人型魔族が現れ始めた頃から人間社会の階級そのものが酷界に社会制度として輸入されたのが垣間見える。高度な力を持つ人型個体は特異な外見を持つのが大半であり、普通に大陸標準言語を解する。また、人間と交配する事も可能であり、実は大陸にもそういった魔族と人間のハーフが複数いる。しかし、その殆どは一章で明言された通り、差別の対象として見られているので、大抵の場合ヒッソリ人間に化けて暮している。

 

『自生型(アウトゲネス)』

 

 魔族の中でも自ら生じる者の名。人型魔族に限らず、様々な種類の魔族がこの形式で生じる可能性を持っている。彼らの殆どは一般的な食物を摂る必要が無く。また、通常の交配は可能であるが、自分と同じ型の存在を自分達で産み出す事が出来ない。そして、人間のマイナス感情、想念を喰らう事で力を増す事も出来る。力は強いが固体数が少なく。その多くが性質的に孤高である為、あまり魔族社会や共同体には参加せず、単独行動する事が多い。

 

『紫影(しえい)の従者』

 

 《その2》

 魔王を常にサポートする紫の朧な影に沈む少女。【浮遊大陸ハルトゥム】の保守管理や様々な任務をこなしていた。第二章では破壊された己の機構(システム)を修復する為、多くの能力が制限された状態で運用され、ハルトゥムで暮らす少女達の身の回りの世話をするメイド少女となっていた。その正体は少年がフルー・バレッサより託された【源型】にして主機十三機及び並列機械群三千機を一体として運用する【高格外套】である。正式名称は【最従者(ディアコノス)】。第二章後半では少年に七聖女の現状を伝えようと紅亜を送り出したり、館の管理の一環である衣裳部屋の案内をする等、色々と裏方に徹して任を全うしていた。【紫影の従者】というのは七教会が付けたコードネームであり、これには二つの意味がある。一つはフルー・バレッサが生み出したという不都合な真実を七教会内部において隠蔽する事。二つ目は相手の姿が隠蔽術式と空間潜行で不定形であった為、明確に分かり易い敵としての名前が必要とされた事である。本来の姿は少年が使う外套そのものであるが、少年が常に運用しているのは正確には本体の一部と言うのが正しい。いつから人型を取るようになったかは今のところ不明だが、黄昏の悠久戦争時にはもう人の形をしていた。少年とほぼ同じような復元能力を持っているように見えるが、その方式は全損からのものではなく、別空間に存在する他の本体の力を用いたものであり、少年と同じだけの復元能力は無い。大戦での大破後、その能力を半ば封印していた少年は第二章では完全な修復を許可し、その能力をフルに使用する事を想定していた。

 

『超高層建築群(ビルディング)』

 

 大陸中央諸国において開発された高層建築技術による従来とはまったく違った高層建造物。現在のところ七教会が影響力を強く有する大陸中央諸国と大陸南部イグニシア・クルシスの首都にしか存在しない。現在、大陸西部や東部でも同様の建築技術が開発され、規模は小さいながらも高層建築の普及が進められている。

 

『ヴァルガンノース』

 

 【イグニシア・クルシス】首都【アウテーナム・レクレス】の安全を司る治安維持組織。俗称は帝都守護職。現皇帝即位後に組織改変された為、隊員は若者が大半を占め、都の倍率の高い就職先ナンバーワンでもある。その紅い制服にも人気が集っており、イケている制服と地位の為に入る者は多い。しかし、一方で都市民達からは畏れられてもおり、皇帝に対しての不敬罪で拘留される者が後を絶たない。殆どは一日で釈放される為、恐怖政治の道具等にはなっていないが、正直怖いというのが都市民達の本音である。二万人にも及ぶ組織体系を有しており、警察権を一部持っているが、実際には皇帝の直轄組織に近い。実は一人だけ都市民達に知られる有名人がおり、その女隊長の逸話には事欠かない。皇帝病(エンペラー・フリーク)とも綽名される女は時に皇帝を揶揄した大貴族を牢に繋ぎ、裏社会の総帥に喧嘩を売り、皇帝の篆刻写真一枚を“救いに”燃え盛る火事の現場に飛び込むような人間だとされる。そのせいかどうか本拠地の本部庁舎には皇帝グッズが所狭しと並べられ、常に最新の商品が陳列される皇帝御殿と化している。

 

『血統信仰(スティンマ)』

 

 二章において出てきた藩落における血統に対する考え方全般を総称してこう呼ぶ。この信仰の祖形が出来たのは藩落を統治していた大偉人の崩御後、その血統を受け継ぐ者達が内紛によって自らの正当性を主張し始めたことによる。つまり、どちらの血が濃いか。どちらがより近いか。どちらが王に相応しいかという話に決着を付ける為の宣伝だったわけだが、何時の間にかそれ自体が力を持つ共有認識となり、血統の良さを信奉するようになった都市民達は多くの事柄を血筋の良さで決めるようになった。無論、それだけでは社会の様々な面で健全性が保てないという事で成功者の血筋が持て囃される事となり、個人よりは血筋に連なる者の働きをトータルで見る風潮がある。藩落内ではこれが顕著であり、血統証明の為の印紙はどんなに身分が低いものでも持ち合わせる身分証明にして地位証明として冠婚葬祭には欠かせないものとなった。ランナはこの信仰を更に推し進めて独自の教義へと発展させていったのである。

 

『異種教義(グノーシア・ドグマ)』

 

 ランナ・クラウゼンが藩落の【血統信仰】より生み出した能力の高いものは祖に異種としての要素を持つという事実に基いた教義信仰。これを信仰する事でランナの支援を受けて、優秀な血統の配合率が示され、能力の優秀な子孫を高確率で残せるようになった為、藩落の一部の上流階級では正にランナは神の如く持て囃された。ランナが聖女との戦いに敗れた後に死亡したものの、クラウゼン公爵家にはそのノウハウが精確に膨大な量残っていた為、現在は研究棟内の被検体達が自らをそのまま用いて研究を行い、それを遺された二人の遺児、マヲンとクヲンがサポートしつつ、今も教義信仰者に対しては適切な指示を行なっている。ただ、第二章後はランナの時よりも幾分か教義が柔軟にされており、まずは交配する本人達の意思確認が徹底され、本人達にとって不本意な婚姻などが無くなるよう努力されているという。

 

『自己因果律(ネシス・フェトゥム)』

 

 この言葉はそのまま自分の因果律を指す単語である。だが、その実態は自らの因果律を紡ぐ【運命糸】のみを指す言葉であり、これを制御する事はそのまま自らの運命を制御する事に等しい。無論、その超高度な制御を行える特殊な魔術や能力は大抵の者が持っていない稀少なものである為、低位の神では容易に操る事も出来ない。だが、これを一部でも制御した場合、自己の能力の飛躍的な上昇や自己に起きる否定的な事象をキャンセルするという事すら可能になる為、神にすら勝る力の一つと言ってもいい。現在、第二章でこれを弄る事が出来るのは七聖女、そして主神クラスの神格と魔王の従者であるサヤトネくらいである。

 

『稀呪(ヴィクス・マギア)』

 

 大魔術師などを輩出する魔術血統の中でも人類の魔術が勃興する数千年前より以前から魔術の力を受け継いで来た血筋の事を示す。その稀なる血の力は強大であり、必ず数世代に一人は大魔術師を輩出し、それ以上の階梯に上がる魔術師を千年単位で複数輩出するとされる。現在は大陸でも数家しか残っておらず。その一人が七聖女ハティア・ウェスティアリアである。公に知られている血筋は大陸中央に七聖女を含めて二家、大陸北部にある北部三国と呼ばれる大国の一つに三家、大陸南部の帝国に一家、大陸東部の何処かに一家という具合に分散している。大陸西部に一つも家が無いのは西部では魔術よりも技術が発展していた事と西部に大規模な魔術的な見地から占有したい優良地が無かったからだと言われている。この数百年で残っていた三つの家が滅んでおり、確実にその血筋の希少性は上がっている為、魔導の発展による衰退で後が無い魔術師達は彼らとの婚姻を目指す者も多い。

 

『多元宇宙(マルチバース)』

 

 ファルティオーナにおける宇宙論は【魔導技術】の進展前は基本的に魔術体系を軸とした概念論的世界であった。現在も無数に存在している土着宗教の内部では宇宙の在り方は千差万別であり、惑星一個そのものしか世界が無いと説くものもあれば、宇宙とは己の内にある象形が生み出すものであると主張するものもある。世界の先には闇しかなく、星は天上に上げられた英雄の魂であると説く主張も複数在った。しかし、現代における大陸知識人の宇宙論は過去の概念論的な宇宙像を許容しながらも現実的な測量に基いた自然科学の基礎を有する物理的な魔導天文学という分野の議論に収斂される。宇宙の観測は即ち魔導においては法則の観測に等しい。宇宙を構成する原理を複数説き明かす為に日々、多くの天文学者兼魔術師、魔導師である研究者が新たな現象、事象の観測に挑んでいる。この宇宙論の中で【多元宇宙】というのは一言で“世界の非観測領域”という命題となる。何故、宇宙ではなく世界なのか? それは魔術的に世界とは“領域”のみを指し示すのみならず。通常の時空間に内包されないIF(もしも)までも含む“可能性世界”の事を表すからである。原則として高等な魔術研究の分野には“無い”事と“在る”事は同等という“有無の等価”なる結論が存在する。これは万能の域にまで高められた魔術によって行える事には限界が無いという立場に立つもので、今現在、魔術によって想定される対象が無いと証明出来ても、未来には対象が在る確率が0ではない事もまた“証明されてしまっている”事に由来する。これは時空間を歪める魔術の開発者及び魔術使用者が未来からの干渉を受けた事例が現実に存在するからである。この事例は百年近く前から現在に至るまで殆どの魔術の領域で確認されなくなっているが、それ以前は確かに稀ながらも数百年に一度は在った事実である。その魔術分野では矛盾による歴史修整や平行世界への分岐、あるいはレールの転轍の如き時間軸の変更、他多くの“時間遡行による現実の改変”が証明されてしまっていた。故に魔術師は己の師から大概は“無い”事も“在る”事も魔術の方法論として必ず考慮の内に入れる事を教授される。“世界の非観測領域”“可能性世界”とは魔術師にとっては考慮されるべきものであり、例え無い事が何かの一部の分野で証明(QED)されていても、現実がその理論を凌駕する。大魔術師クラス以上の時空間干渉魔術が使用可能な人員はそれらの実際には“在るかも無いかも分からない領域”に対する知覚が可能であると言われ、この知覚能力を自身が確定している領域に使う事は過去視や未来視、他様々な魔眼の開発に繋がる。【多元宇宙】という概念も実体として観測した大魔術師が存在していた事が確認されている為、在ると思われているが、事実上それがどういうものであるかの情報が観測者本人の削除によって消失しているので、大規模な研究は大陸でも未だ行われていない。これは“有無の等価”が証明する事の虚しさを語るからである(証明されても、証明されていない事もまた真であるという考え方が成り立つ)。フルーが使用した【時空兵装】はこの有無の曖昧な領域を彼女が観測し、その上で繋げる事にすら成功とした事を示す。だが、それを大々的に発表していない時点で、この兵装が七教会の機密に属する事が窺える。世界と世界を繋ぐ術。それは最終的に全てを可能にする万能への一歩なのである。

 

『聖硝子(イコン)』

 

 人々に神の教えを説く為、教会美術として発達した色硝子による芸術作品の総称。大半は教会建築において壁に貼り付ける形で創作される。現在では【近代化】の影響で硝子の単価が下がった事と硝子自体の強度が上がった事で硝子だけで壁を構成する様式も存在する。ステンドグラスという単語は大陸にも存在するが、信徒達は七教会の美術作品を語る時は一様にイコンの俗称で呼んでいる。それは昔、教会における色を付ける美術作品の殆どが硝子の高価さから木板や石壁に描かれていた事に由来する。一様に遺産(イコン)と呼ばれていた美術作品達は戦乱による荒廃や文化の衰退期を通して多くは失われていった。過去の大陸では硝子の美術作品自体が少なく、失われる機会もあまりなかったが、それでもやはり数は極端に低下し、殆どの創作物は百年も時代を超えなかった。信徒達は失われていく教会の作品達に一様の感謝を捧げ、安定した時代には高価であるにも関わらず、失われた分だけの硝子作品を作る事で教会美術の保全活動を行った。これが後に大陸全体の文化芸術のレベルを大きく引き上げる一要素となった。その後、信徒達の間で国家間の紛争や戦時の取り決めが決まり、多くの国家で美術の保存理念が上梓され、教会美術の破壊は禁忌として国々の間では暗黙の了解となっていった。以降、信徒だけではなく民間にも幅広く理念が普及する過程で遺産(イコン)は教会の硝子美術を指す言葉のように扱われ、現在に至っている。現代、教会美術の大半のモチーフは過去、教会がよく使っていた唯一神と天使達の構図ではなく、七聖女や七教会の意匠である七本の剣が主流。その中でもハティア・ウェスティアリア個人の物語を題材にしたものが数多い。信徒達にとって硝子美術と言えば、産んだばかりの娘を微笑みながら抱いている美しい金糸の少女(ハティア)の図であろう。尚、現在では教会の情報統制(プロパガンダ)の一つとして、教会美術に関する展覧会や品評会、コンクールが数多く開催されており、優秀者には教会美術の専門家としての道が開かれている。大陸中央諸国で子供達のなりたい職業の五位以内に必ず教会美術関係が入る程度には人々の【聖硝子】への思い入れは大きい。

 

『北部三国(ほくぶさんごく)』

 

 大陸北部には他の国と比べても別格の国が三つ存在する。その三つの国家を総称して現在は北部三国と呼ぶ。【戒霊国グラテト】【ベリアステル聖神使国】【興業国イデオストロフ】の三つである。グラテトは北部の中でも最も呪術(じゅじゅつ)が盛んな国であり、通常の魔術とは異なる技術体系を有し、それが国家の基幹技術となった稀有な国である。ベリアステルは魔術というよりは神々の力を借りる法術において大陸に比類無き力を有する神話とそれに仕える者達が生み出した軍事国家であり、その秘密に満ち、他国に閉ざされた国家統治の方法や国内の制度は大陸の様々な国と比較しても類を見ない特殊性を備えているとされる。最後にイデオストロフは穀物の取れない貧しい地域にありながら、大陸における物流を動かす商会や銀行を多数抱える山岳国家である。その最大の特徴は大陸における転移魔術の元祖にして先駆者であるという点とそれを生かした金、人、物の流通制御で多くの国家間取引の仲介役を引き受けてきたところにある。これら三つの国は現在、反七教会派の主要構成国として認識されており、北部における教会の活動はこれらの国によって抑制されている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。