第三章九十六節「武芸術部校外活動Ⅴ」
洋光(ランプ)の光で朧げに浮かび上がる白い肌。
襦袢を脱いで胸を露わにしたエンシェンは相手に視線を合せていられず。
自ら差し出した胸の高鳴りに全身を火照らせていた。
フルリと身動ぎで揺れる胸の大きさは十二分と言えるだろう。
種族の特徴的に胸が大きい亜人というのはまぁまぁいるが、それに負けず劣らず。
引き締まった身体とツンと上向きの乳首。
まだ触れられた事も無い桜色の乳輪まで白い地に根付く桜のように見事な色合いを醸し出している。
「………」
そんな初めて男に素肌を晒して恥じる女の姿に少年は口元を緩めて。
そっと唇を片胸に這わせた。
フニリと唇へ吸い付くような肌の質感。
「んぅ?!」
その敏感に過ぎる感覚に思わず口元から出そうになる甘い声を押し殺した白い鬼女は少年の唇が更にまろみを帯びた自分の胸に這う様子で背筋をゾクゾクと高ぶらせた。
口では自分から襲ってしまいそうなくらい勢いのある言葉が吐けたのに蓋を開けてみれば、まな板の鯉。
これではいけないと自分も何かしようと思い浮かべて、彼女は……両腕で少年の身体を抱き締め、顔を自分の胸元に優しく引き寄せる事にした。
「ん、ぁ……っ」
フニュリと今度は強く少年の唇が胸を食む。
そうしてチロチロと舌先が肌を舐り。
やがて乳輪を滑ってツンと張った乳首に到達した。
「イクス……」
少年が瞳を閉じ、まるで赤子のようにチュウチュウと吸い始めると。
言い知れぬ慈愛と愛しさが込み上げてきて。
エンシェンは今まで強張っていた全身が蕩けていくのを感じた。
そして、それとは逆に期待していた肉体が沸々と熱く滾り、女の悦びを覚え、それをもっと貪りたいとの欲求に満ちていく。
最も疼くのは彼女の牝の部分。
今やドロドロに膣内は蜜溜まりと化し、襞同士がやがて来るものを待ち侘びて疼き、僅か股間を擦り合わせるだけでも感じた事もない快楽を生み出していた。
片胸には唇。
もう片方にも今や指先が置かれ、優しく乳首と乳輪を揉み解している。
「……もっと……」
「?」
少年の耳元で彼女が恥しそうに告げた。
「もっと、強くしても……いい、んだぞ?」
顔はもう快楽と羞恥で乱れ、瞳は潤んでいる。
「うん……ちゅ」
グニュリと少年の両手の指が張りのある大きな胸に食い込む。
今まで優しく吸うだけだった唇の中、下が乳首を捏ね潰し、もう一方の胸では乳首を指が捏ねながら捻り揉んでいた。
「っ……っ……っっ」
声を押し殺して。
汗を浮かべて。
目の前が真っ白になるような快楽にピクピクと全身を震わせながら、彼女が初めて背筋を駆け上るものを感じた。
一瞬の後。
グヂュッと股間の中心。
まだ、男も知らないすじの中心から蜜が大量に滴り落ちる。
何度も吸われるのにはしたなく声を上げ、自分からせがんで乳房を差し出した。
友人には及ばないとしても自分だって相当に大きいとアピールまでして。
えも言われぬ昂揚感。
それが過ぎ去った身体の脱力感。
自分が初めて絶頂してしまったのだと悟って。
彼女の頬が紅に染まる。
「気持ち良かった?」
「そ、そういうのは聞くな……」
少年の問いに少しギュッと身体を抱き締めて返し、耳元で鬼女は呟く。
まだ見られていない股間。
立ち上る細い炎のように整えられた白い恥毛の下。
糸を引く蜜がシーツに熱く湯気を上げる沼を生み出している。
少年はゆっくりと味わった乳房から唇を離して唾液塗れの胸から遠ざかると。
腰紐を解いて下着の下で大きくなっている自身を露わにした。
腕を放したエンシェンがその熱気と熱り勃つ少年の大きな象徴にゴクリと唾を飲み込んで、囁く。
「さ、触ってもいい、か?」
「うん。一緒にしよっか」
一緒にする。
それがどういう事を意味するのか。
何となく想像は出来て。
しかし、そんな事の仕方までは知らず。
そのいつも拳ばかり握ってきた白い手がそっと片方少年の股間を擦るように添えられた。
(凄く熱いものなのだな……これが私が初めて触る男の……私を奪ってくれる人の……っ)
そう思っただけで再び背筋が熱くなっていくのをエンシェンが恍惚として受け入れる。
少年もまた細い茂みの下。
ぴっちりと閉じながら、間から蜜を零し続けているすじに指を這わせて、ゆっくりと上下を開始する。
「んっくっっ、イクス……っ……こん、なぁ……っ」
自分でも擦り始めながら、初めて想い人に自分の一番大事なところを触れられる快楽に鬼女はすぐに背筋が灼熱するのを感じた。
こんなに早く。
また達してしまう事に一抹の不安を感じながらも、その少年の指が外側をなぞってくれているという事実だけで脳髄が蕩けるような恍惚に支配されて、自分よりも小さな少年の唇を彼女が奪う。
「んむっ」
我慢なんて出来なかった。
それは本能か。
いや、それだけではないと。
この愛おしい牡を味わいたいのだと。
彼女の奥で愛欲に塗れた獣が首を擡げる。
舌で舌を絡め取り、唇で貪り、優しく幹の裏筋を擦って。
唇を奪った拍子に自分の膣内(なか)に入った指の優しい動きにジュクジュクと蜜を更に噴出させ、襞を悦びに沸かせて。
エンシェン・イル・フォイルは少年に奪われ奪う行為に夢中となっていた。
「んく、イクスっ♡ イクスっ♡ んむ、ちゅ、ちゅぐ、ぢゅ、ぢゅる、ん♡」
亀頭から零れる少年の蜜で少年の股間は滑りが良くなっている。
擦るだけでは物足りなくなった鬼女が今度は全体を握るようにして擦り始める。
「んっ」
少年の甘い声。
それに自分が相手を心地良くさせられているのだと。
心躍るような心地となった彼女がもう不安も何も無く。
ゆっくりと唇を離し、擦るのを止めた。
「エンシェン?」
そっと後ろに倒れ、鬼女が両手で膝を掴んで大きく股を開く。
「もう、我慢、出来ない……イクス、わ、私を奪え……私を、このエンシェンを、お前の牝にしてくれ……」
その淫靡な願い。
いつも戦友のような間柄で関係を育んできた彼女の女としての姿に。
珠のような汗を浮かべて。
自分から足を開いて。
まだ一度も開かれた事の無いすじをドロドロに潤ませ。
期待と悦楽に染まった牝の顔をした姿に。
思わず少年は唾を飲み込んでいた。
「エンシェン……」
「来て、くれ……お前でなければ、嫌だ……私の女としての初めては……全部、お前でなければ、嫌、なんだ……イクス……」
少年は何も言わず。
その大きく反り返った幹を掴んで、覆い被さるような体制で彼女のすじに先端を当てる。
「貰うよ。エンシェンの全部……」
「ん♡」
グヂュ、ズヂュルル、プチュ、ズルルルルルル、ドュヂュン。
「ん、いぃ、ぁっんぐ、あぉおぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉおぉぉぉっっっ♡♡♡」
ゆっくりと蜜を押し出しながら亀頭まで埋め込み、進んで、初めての証を呆気ない程簡単に突き抜け、後は一気に奥まで貫いて、子宮口までめり込ませる。
そんな挿入だった。
少年の一回り大きくなった睾丸が彼女の尻に密着する。
完全に乗られた状態で挿入されたエンシェンは子宮口で少年を受け止めた時、既に絶頂していた。
征服される悦び。
牡を受け入れる悦び。
肉欲を享受する悦び。
そして、愛する者と一つになった悦び。
全てを一度に手に入れた彼女はもう獣のように舌を出して、その自分の中から発される熱を受け止める事しか出来なくなっていた。
いつも頼もしくも凛々しい鬼女の痴態に少年の幹が太くなる。
「ん゛っ♡」
涙を零して、舌を垂れさせて、唾液を垂れ流して、恍惚に緩んだ表情で、自分を愛おしそうに媚びた視線で見る愛らしい牝に少年は何も告げず。
もっと乱れた姿で悦ばせようと抽挿を開始する。
ズヂュ、ズヂュ、グヂュ、グヂュ。
傘のはった亀頭がゆっくりと中から蜜を掻き出す。
「イク、スっっ♡ イクスっっ♡♡」
すじは今や卑猥に少年の幹を呑み込んで、小さい入り口の先。
鍛えられたしなやかな白い下腹部の中で何度も蜜と襞越しに締め上げられ、幹を引き抜く度に少年の亀頭が襞の窄みの輪で絞られた。
「っ」
一度動くだけでも射精を強要するような膣内(なか)のうねりはまるで熱く茹る肉に腰を押し込むように力がいる。
しかし、その快楽は激的で甘く甘く。
必死に愛そうという想いが伝わる程に情熱的だった。
(あぁぁぁあぁぁ♡♡ んっ、ぁくっっ、わ、私の、膣(なか)でお前のが悦んでいるのが分かるっ♡ お前の熱いのが私を牝にしてくれているのがっ♡ そ、んなところを何度も押し潰されたらぁ♡)
襞を掻き分けた先。
亀頭がグリグリと上から子宮口を押し潰し、引き抜く度に腹側の最も敏感な部分を擦り上げる。
粘着いた水音が響く度にピッタリとくっ付いた恥骨と恥骨の間で膨らんだ淫核(クリトリス)が押し潰され、三十回も抽挿する前に溜め込まれた快楽が背筋を犯し、エンシェンの脳裏を白く白く染めていく。
「イクスッ♡ わた、しの膣内(なか)にっ♡ わたしのお、まんこに……おまえだけの牝穴に……種付け、してくれぇ♡♡」
「エンシェンッ」
「んぁぁあぁぁぁっ♡♡ ちゃんと受け止めるから、このエンシェンはもうおまえのだけのものだからぁ♡ だから、好きなだけわたしの赤子の部屋満たしてくれぇぇ♡♡」
ボヂュ、ボヂュ、ゴヂュ、ドチュ。
「ぁ゛っ♡ お゛っ♡ ぉ゛っ♡ ぉ゛っ♡ ん゛っ♡」
押し込まれる度に目の前が暑く灼熱して目を眩ませながら、一匹の牝となって淫らな鬼が啼く。
浮いた腰の上に乗られ、亀頭で子宮を押し潰され、太腿は少年を受け止める椅子となって、一方的に犯される悦びで乳房は完全にしこり勃った。
それを少年が両手で鷲掴みにすれば。
「んぉお゛ぉ゛ぉお゛おぉお゛おぉおおぉぉぉっっっ♡♡♡」
絶頂してしまうのも無理からぬ事で。
親指と人差し指で乳首を押し潰された時。
一足先に達した彼女の膣内(なか)から一際濃く潮が吹いた。
それは蜜と絡まり粘着いていて、少年の股間を濡らす。
それと同時に亀頭が子宮口に大きくめり込んで、通常なら射精すら儘成らない程強く絞られた幹が大きく膨らみ、腰の奥底から常人なら一ヶ月掛けても出し切れないだろう量の子種が種付けられた。
ビュグ、ビュグルウウウウウウウウウウウルウウウウウウウウウッッッッッッ!!!!
「くぁっっ?!」
「んァあぁァアァアああァあァアアァアぁあぁあッッッ!!!?」
二度目の絶頂。
子宮口を焼いた熱く滾るゼリー状の子種が子宮を容赦なく満たしていく。
その子作りの絶頂と多幸感に少年を抱き締めて。
自分の胸の谷間に顔を埋めさせて。
まるで狗のように激しく吐息を零しながら。
エンシェンは子種を呑み干していく胎内に大きな脈動を感じた。
ズグンズグン。
まるで第二の心臓のように高鳴るものは何か。
それを知っていながら、もっと欲しいと、もっと一つになりたいと。
少年の精が自分を満たし切るまで放さぬよう両足を腰に絡める。
そうして一分もの間。
軽く何度も何度も精を流し込まれる悦びに耐えながら喘ぎ。
一つになった牡を喜ばせようと僅かに腰を揺する。
深く繋がったまま。
グヂュグヂュと襞が蠢き。
疲れもしない様子で幹が膣に絞られ。
少年は最後の最後まで子種を出し切った。
たった一回の交合(まぐわい)とは思えない程の消耗。
しかし、それを理解しても余りある力強い快楽。
今まで抱いて来た少女達ともまた違う。
相手の精魂を喰らい尽すような鬼女との一時は未だ少年も経験した事の無いような行為だった。
「エンシェン……っ」
優しく。
逃がさぬよう絡め取られた獲物のような心地で。
少年が名前を呼べば。
「ん♡」
白い肌を朱に染めながら、一匹の牝はその耳元に囁く。
「まだ……お前を感じたい。お前と……だから……」
「うん……」
それからしばらく。
二人がそのままの体勢で甘く気だるい一時を愉しむ。
だが、何も言わずに一つとなったままの男女がそれで満足するはずも無い。
ようやく腰に絡めた足を解いた鬼女は少年を放すものの。
その幹は抜かず。
今度は腰を起こして互いに膝で立ち重なるような姿勢を取った。
「その……して貰って……すごく……嬉しかったぞ? だから、今度は私がお前に……」
繋がったまま。
少年が萎えるどころか。
再び脈動を感じる程に張り詰めていくのを感じて。
艶やかな牝の笑みを零したエンシェンがその身体を傾け。
今度は自分より小さな身体に馬乗りとなった。
グヂュッと亀頭が再び子宮口にめり込む。
それだけで再び軽く達しそうになって。
彼女は僅かに膨れた胎を嬉しそうに上から撫でる。
腹筋で押さえ込まれているが、今や弾けそうに熱い精で満たされた子宮は大きく膨らんでいた。
「イクス……」
「何?」
何処か今までとは違う。
不安といじらしさが混ざる気弱そうな表情で鬼女が告げる。
「まだ、ウルやあの子達のように……お前を悦ばせられるよう馴染んでいないかもしれないが……お前の子を此処に孕むから……だから、もう一度……」
自分の胎に触れて。
おねだりするその様子に少年の幹が膨らむ。
「んぁぁ♡♡ また、私の中でぇ……♡」
「エンシェン……」
少年の手がそっと自分の腰を掴むのをゾクゾクと背筋から這い上がる劣情と切なさに身を捩りながら感じて。
薄らと微笑んだまま。
腰が揺すられ始めた。
ゴヂュ、ゴヂュ、ゴヂュ、ズヂュ、グヂュ。
「っ♡ っ♡ っ♡ イクスっ♡ イクスっ♡」
腰を浮かし、自らの体重で膣内(なか)を貫きながら、先程と負けず劣らず子宮口にめり込ませ。
溢れる子種を更に求める牝の交尾。
少年の股間では蜜と精の交じり合い。
膨らんで滑る淫核(クリトリス)が擦り付けられる度。
締まる膣と襞が少年を何度も絞り上げ、慎ましやかな穴を押し広げる膨れ上がった幹がテラテラと卑猥に洋光(ランプ)の下で輝いていた。
蜜と精が何度も糸を引く光景は二人がまるで元々一つだったかのようにすら錯覚させる。
汗ばむ肌はしっとりと濡れ。
上気する身体は朱に染まり。
乱れながら愛おしい牡に自分の最も大切な場所を犯される悦びにエンシェンは完全に蕩け切っていた。
「わ、たしの穴にっ♡ おま、んこにぃっ♡ おまえの子種ぇっ♡ また種付けしてくれぇ……♡ お前の子、孕むっ、からぁ♡ このエンシェンの牝穴はぁ……っ♡ お前だけの交尾穴だからぁっ♡♡」
舌舐め擦りして。
チロチロと躍らせながら。
熱く熱く滾るドロドロの膣内で何度も何度も少年の傘に襞を擦り上げられながら、ずっと素直になれなかった女は恥じも外聞も無く。
少年に覆い被さり、その唇と口内をしゃぶり始めた。
「んっ♡ んぅぅ、ちゅ、ぢゅるる、ぢゅず、ぢゅぐずるるるぅ、イク、ス……っ わたしのものだ……おまえはわたしの……んぐ、じゅづ、ぢゅずるるる、んくっ♡♡」
大きなしこり勃起した乳首を、汗に滑る胸を少年に押し付け、何度も擦り付け。
常人よりも長い舌が相手の舌を絡め取り、唾液を啜り上げ、流し込み、何度も嬲り上げる。
愛しい人の唇を蹂躙し、乳房を押し付け、交尾する。
言葉にしてしまえば、きっと多くの男女が経験してきただろう事。
しかし、そのあまりにも甘美な行為にもう鬼女の理性は解け落ちていた。
残っているのは快楽と愉悦と愛欲と愛しい者を求める渇望だけ。
背筋を全身を焼き。
全てを白く染めていく絶頂への期待を感じつつ。
ポロポロと涙を零して。
もう何一つ隔てる事無く。
少年に彼女は己の全てを注いでいた。
もっと、心地良くなりたい。
もっと、心地良くしたい。
それは等価の想い。
行為に高ぶり、太く熱く滾る幹と優しく細められた視線、快楽に僅か歪み、我慢する顔。
(イクスッ♡ イクスッ♡ イクスッ♡ イクスッ♡ イクスッ―――)
もうそれだけの事しか鬼女の脳裏には無かった。
「ッ、もぅ……っ」
少年の我慢出来ないという顔に自分がそうさせたのだと。
胸に今まで以上の快楽。
いや、熱さが宿って。
「いい、ぞ わたしのここにっ おまんこにっ 種付けして、くれ わたしはおまえだけの、わたしだ……♡」
「ッッ」
思わず。
グッと腰が浮き上がり、その一際大きく膨らんだ幹に歓喜して、彼女の腰の奥。
子宮口が自らの奥に続く穴を緩ませた。
ビュブルルルルルルルルルルルルルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!
「んァあああああアアあぁァあああぁぁぁぁァああアアあぁぁぁあぁァアァぁぁぁぁぁ―――」
全ての精を子宮口を通して注がれた衝撃に脳裏を白く染めたエンシェンの腹部が臨月ように膨れていった。
今まで筋肉によって押さえ込まれていた胎は確かに緩み。
牝の身体へと変わっていく。
普通の交合(まぐわい)では在り得ない。
だが、少年との交尾してきた少女達がそうであったように。
彼女もまた自分の胎が牝として出来上がってしまった事を本能的に感じ、悦びに染まっていた。
今まで戦う事ばかりが上手かった自分が愛しい男の子を孕むという事。
その予感はすぐに現実のものとなる。
本来、聞こえるはずもない自らの卵と少年の精が一つに交じり合う生命の歓喜が彼女の背筋に快楽とは別の感情を走らせた。
甘く、優しく、嬉しく、何をしても守りたいと思う者の誕生を、エンシェン・イル・フォイルは牝として受け入れた。
ズグン、ズグン、ズグン、ズグン。
膨れた胎の上に浮かび上がっていく紋章はアルヴァス亜人国が有する王家の印に似ていた。
黄金の杯とそれを包む白と黒の翼。
自分達は人でも異種でも無く。
新たな黄金の世代なのだと信じる彼らの象徴。
国中に張り巡らされた結界から注がれる力が方陣として彼女の体を染め上げる。
「ぁあぁあ……イクスっ♡ 今、わたしの胎に……おまえの子が……」
母の慶びを初めて知った笑み。
雫を何度も零しながら、その溢れんばかりの、表現し切れぬ愛しさを鬼女は己の胎内(なか)に向けた。
優しく腹を抱く相手の姿に。
少年が囁く。
「……ありがとう。そして、おめでとう。エンシェン……嬉しいよ……」
キュッと自分の手に重ねるよう腹部に触れる愛しい人の手。
「……はぃ」
今がきっと自分の人生で最も幸せな時だと彼女はまた優しく乙女のように軽やかな口付けで応えた。
*
―――翌日。
本日は晴天。
武芸術部は部活動よろしく部室の内部で空間を作り、数日後に迫った化物の駆除に向けて互いの連携を確認し合う場となって―――いなかった。
最たる理由は戦力の中核たる少年が諸々少女達の激しい視線に晒されていた為である。
前日、エンシェン・イル・フォイルと円満に関係を結んだ彼に向けられるものは主に三つ。
嫉妬。
御祝。
発情。
一つ目はまったくイクスさんはまったくイクスさんはまったくイクスさんはまったく、というエストリアと美紗の視線。
腹部がふっくらしたエンシェンが妙に親しげに少年へ接するものだから、その頬は妙に膨れている。
二つ目は璃紗、シルメイア、ウルの視線。
狐娘の超乳部長は少し複雑そうながらも朝から親友の身体を気に掛け。
黒猫と覗き見していた璃紗やシルメイアは朝から鬼女におめでとうと伝えていた。
そうして、三つ目は武芸述部に来ているユアル以外の全員が微妙に誘いたそうな気配で少年に対し、そわそわしている事から丸分かりだろう。
少年に毒されていない猫耳武道美人のみがその空気に首を傾げていたが、本人達が今から少年としっぽり決め込みたいと思っている、なんて話は分からないので、ただ集中力が希薄だ……と思ったに過ぎなかった。
「えっと、では、イクスさんが前面に出て、ユアルさんとウルさんとエンシェンさんがその後ろ。私と璃紗さんとシルルゥちゃんが更に後ろで最後尾が美紗さん。前衛四人にバックアップが三人、殿が一人。これでいいんですよね?」
エストリアの確認にウルが頷く。
「わたくし達全員で行くならば、この配置がベストでしょう。璃紗さんとシルルゥさんも偵察用に眼を提供してくれるという事ですから、相手を捕捉したらエストリアさんの崩燼機関で牽制して、イクスを筆頭にして切り込む。後ろの守りは美紗さんに任せるという事で」
空間を創造する部室内は現在、丘を形成している。
大きな樹木の木蔭でウルが隊列を実際に組んで確認していた。
「こちらは何もせずに良いのでしょうか?」
美紗は自分が前に出た方がいいのではとウルを見つめる。
「いえ、前は大丈夫ですが、後ろは万全な方に任せたいので。わたくしもエンシェンも今はあまり当てになりません。ユアルと共に前衛をこなすのに精一杯。となれば、必然と後ろを任せられるのはこの中でイクスの次に強い者となりますから」
そこまで自分が買われている事に美紗は何だか妙に背筋がこそばゆくなるのを感じて、コクリと納得するしかなかった。
前回の事件では殆ど役に立てず。
少年が危険な事をしているのに自分は……と落ち込んでいたのだ。
この際、それが殿だろうとも少年の負担を減らせるよう勤しもうと決意するのは当然の流れだった。
「頑張って。お姉ちゃん」
「?!」
近頃は特に親しく付き合うようになった実の妹からの応援に美紗の耳と尻尾がピンと張る。
「ま、任せておいて下さい」
そんな仲睦まじい姉妹の遣り取りの横で少年がユアルにイソイソと近付き。
三人で組める陣形に付いて話し合っていた。
「えっと、後ろの三人を守る為に三人で取り囲むようにして守ったり、あるいは敵の前面からの攻撃を方陣で防ぐ時は鏃型になったり、基本は他の二人から等距離で後ろを守るように立ち回ってもらうことになると思う」
「なる程。分かりました」
少年が指先に虚空に光の筋を描き。
エストリア、璃紗、シルメイアの三人を中心にして方向や形を変える四つの○を描いた。
彼らの後ろには必ず美紗が控えている為、全方位からの攻撃にも少し下がる事で対応可能。
陣形は弱い者を守る形で敷かれている。
ユアルが陣の動かし方に付いて質問し、少年と応答している間にも女性陣の瞳が少年を捕らえる。
その色は言っている。
また、ですか?
と。
「ん、んぅ!! こほんこほん」
「エストリア?」
「え、え~イクスさん。ユアルさんと陣の確認をするのはとっても良い事ですが、私達も色々と確認したい事があるのでちょっとこっちに来て下さい」
「あ、うん。じゃあ、また後で」
少年が言われるまま他の少女達の下まで行くと。
半眼の視線やら何処か艶かしい視線やらが突き刺さって。
何やらヒソヒソと少年と関係を持った少女達の間で意見が交わされる。
その後、璃紗、シルメイア、エストリアが少年を引っ張るようにして空間から退出していく。
「あの、ゼオは何処に?」
ユアルの問いにウルが顔を赤くしつつ、少し三人と買いものに……と答えた。
それに納得した猫耳武道少女が自首練習でもしようと自前の木刀を降り始めてすぐ。
「ひぁう!?」
「ぁ……ぅっ♡」
少し大きな声が上がった。
彼女が思わず後ろを見ると。
美紗が黄金の耳と尻尾をヘタらせて膝を付いて震えており、ウルが同じように地面にペタリと座り込んで頬を上気させ、瞳を潤ませていた。
「どうかしたのですか? 部長?」
「い、いえ、何でも―――っ ありませんわ」
「……そうですか。何か体調が悪かったら言ってください」
「え、ええ……っ……っ」
ウルが何とか体を震わせながらも頷いた。
エンシェンが僅かに顔を赤くしたが、何も見ていないと言いたげにわざとらしく正拳突きや回し蹴りなど。
一人で型の鍛錬を始める。
その間にも美紗とウルは声を押し殺しつつ、ビクビクと身体を震わせていた。
これが魔術で互いの肉体の一部の状況を繋げている。
要は一人で多人数を相手にするのは負担なので一人を抱くと全員抱いた事になる、という状況だとは思わず。
出て行った少女達と共に全員を現在少年が抱いているとは知らず。
ユアルは木刀をただ振るというだけの型を何度も繰り返した。
小一時間後。
その頃には汗を掻き始めた彼女だったが、今日は軽く動く程度に控えようと。
後日、全力で動く為に備えて木刀を下した。
後ろを振り返ると戦術に付いて話し合うと言っていたウルと美紗が完全にハァハァと息を切らして自分の身体を抱き締めている。
そんなに激しく話し合っていたのだろうかと。
声を掛けようとする彼女の肩をその横で同じように鍛えていたエンシェンが止めた。
「今はそっとしておいてやってくれ。同じ女として」
「よく分かりませんが、分かりました」
そんな時、シュタッと何かが樹の上から下りてくる。
「マヲー」
「む? 黒猫……さん」
一応、少年達に習ってさん付けしたエンシェンが本日もやってきた黒猫に驚いた。
此処は現在、空間を作っている魔術具の内部。
それに即座やってくる相手は尋常では無い。
「マヲ~~? ママヲマヲ。フゥ~~」
何やらキョロキョロしていた黒猫がお目当ての人物が見当たらないのでまた今日もかと溜息を吐きつつ。
「ママ・マ・マヲ」
前日と同様に覗き見用の窓を軽い調子で開いた。
『イクスさんっ♡ イクスさんっ♡ もっと、もっと、下さいっっ♡♡』
『イクスっ♡ イクスっ♡ いいのっ♡ イクスの指優しくて気持ちいいよぉ……』
『パーパぁ♡』
思わず噴出したエンシェンがシュバッと黒猫の首根っこを引っ掴み、窓を消すようにと囁く。
「?」
無垢なる何も知らない子猫アピールで返されて、さすがの鬼女もそれ以上は何も言えなくなった。
見たいものは見たいから仕方ない。
と、言わんばかりに黒猫は木蔭で情事の覗き見に勤しみ。
現在、自分達の膣内(なか)とリンクする少女達をどんな風に犯しているのか知ってしまったウルと美紗が羞恥のあまり高まっていたまま絶頂して制服姿のまま放心する。
一人置いてけぼりにされたユアルがその虚空に映し出された三人の少女達の痴態に真っ赤な顔で倒れ込み。
エンシェンに起こされて、何か夢でも見たのかと誤魔化されたのはそれから一時間後の事。
―――あ、あれがゼオの……っ。
映像の見て。
ドキリと脈打った心臓の高鳴り。
それは確かにユアル・ラオにとって嫌悪ではなく、好意に類する感情の発露だった。