※この作品はR-18です。

聖娼館ハルトゥム   作:Anacletus

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第三章百八節★

第三章百八節「ぽたぽた」

 

 少年がその館の門を潜り、内側から開いた扉を潜ると。

 

 人間ハーレムと称される少女達が既に待っていた。

 

 今日は外に客はいないのか。

 

 月兎亭の玄関で少年に見えるだけではないだろう。

 

 淫猥で高貴な下着姿。

 

 紅、白、黒、蒼、紫。

 

 選り取りみどりと言ったところか。

 

 外にも乳房やすじを見え隠れさせる下着姿の娼婦達が幼い者から豊満な乳房を持つ者まで勢揃いという状況。

 

 その最中を静々と進んでくるのは幼い少女達の寮監を勤め、娼婦達を取り纏める首筋に鰓持つ人魚の女。

 

 ベルン。

 

「イクス様。ようこそおいで下さいました。今日は外のお客様達もいませんので。ここでゆっくりと過ごしていって下さい。お食事はご用意しております。お荷物はどうなさいますか?」

 

「とりあえず、一緒に持って行きたいんだけど、いいかな?」

 

「はい。どうぞ。貴女達」

 

『畏まりました。お荷物をお持ちします』

 

 璃紗とそう歳も変わらないだろう少女達がイソイソと少年の両手に持たれた複数の紙袋を一つずつ受け取っていく。

 

「とりあえず。左端のもの以外は此処の子達へのお土産だから。後でみんなに配ってあげてくれるかな?」

 

「そうなのですか。大変嬉しく思います。貴女達」

 

『ありがとうございました。イクス様』

 

 年嵩の娼婦達が頭を下げ、幼い少女達も顔にパッと笑みを浮かべて感謝の言葉を揃えた。

 

 ようやく両手の荷物から開放された少年がウルを筆頭にした少女達の前に向かうと、少しだけ膨れ顔となっている。

 

 そもそも、これから少年とゴニョゴニョ致そうという時に連れ去られてしまったのだ。

 

 それは不満そうな顔もしよう。

 

 しかも、その間に街を廻ってきたらしい事は土産の数から言って言い逃れ出来ない。

 

 こうなれば、彼女達が膨れてみせるのも仕方ない事だろう。

 

 それでも少年はとりあえず其々に魅力的だろう下着姿の彼女達に困った笑みを浮かべて、ごめんと謝っただけでベルンに付いていく。

 

 それに仕方ないと溜息一つ。

 

 今までの不満はとりあえず水に流そうと少女達がワラワラ少年と共に歩き去っていく。

 

 残された少女達はさっそく年嵩の者達の許可を得て、土産の紙袋を開けると歓声を上げた。

 

 其処に入っていたのはぬいぐるみやら菓子やら髪飾りやら、年頃の少女も大人の女も関係なく喜びそうなものばかり。

 

 それを背後に聞いて、これは後で更にお礼をしなければとベルンが苦笑した。

 

 そうこうしている内に食事が用意されたテーブルと大勢が座れるソファーのある広い一室に通された彼女達の前でベルンが次々に献立を読み上げてからニコリとする。

 

「本日は給仕を皆さまがして下さるそうなので、無粋は致しません。何か足りないものがありましたら、ベルをお鳴らし下さい。すぐに参りますので」

 

「うん。ありがとう」

 

「いえ……璃紗、しっかりとね?」

 

「は、はい!!」

 

「ふふ……では、私はこれで」

 

 そう言いおいて、内装も豪奢な部屋からベルンが退いていく。

 

 扉が閉まり。

 

 少年がソファーの中央に座ると次々に声が掛かった。

 

「どうして、あなたはいつもいつも良いところでいなくなるんですの? イクス」

 

 まだ少しだけ不満そうにしながらも、拗ねたふりでウルが自らの形の良い超乳を少年の頬に押し付ける。

 

 その乳房の先端からはそれだけでポタポタととろりとした乳白色の液体が滴る。

 

 桜色の大きな乳輪と一口で頬張れば、コリコリと弾むだろう弾力のある膨れた乳首。

 

 丸見えなだけでも普通の男なら股間を濡らしてしまうだろうソレを前にして少年が僅かに困った様子で赤くなるのを見て、外の少女達はぐぬぬと圧倒的戦力を思い知らされながらも積極的にアプローチしていく。

 

「ウルのばかり見ていると料理が冷めるぞ。イクス……」

 

 スッとフォークで香気を放つ蒸し鶏と香草の和え物を掬い。

 

 エンシェンが超乳の押し付けられている方とは反対側から少年の口元へ運ぶ。

 

「い、頂きます。エンシェン」

 

「ああ」

 

 出来る女アピールに成功した彼女のフォークから一口食べる少年を見て、出遅れた外の少女達が色気だけでアピールしている場合じゃないと次々にスプーンやらパンに乗せて、口元へ料理を運び始める。

 

 それからの数十分。

 

 少年は目まぐるしく自分の口を襲う“あ~ん”攻撃に対処するので精一杯となった。

 

 程々に少女達も食事を済ませ、甘味(デザート)まで食べて人心地付いた時には夕暮れ時は過ぎ去り、本格的に宵が始まっている。

 

「ふぅ……」

 

 さすがに食べさせられ過ぎた気もする少年だったが、魔術で璃紗に口内まで綺麗に掃除された後、少しまったりとした時間を満喫するのも悪くないだろうとソファーに凭れ掛かる。

 

 すると、同じように食事後のケアを終えた少女達が少年の膝を奪取した。

 

 左には璃紗が、右にはシルメイアがちょこんと載って、自らの愛らしくも淫猥な下着を少年の摺り寄せてくる。

 

「イクス。ご飯も食べたし、さっきの続き、しよ?」

 

「パーパ。グチュグチュしよう?」

 

 二人の下着はどうやら同じ誂えらしく。

 

 紫色と薄桃色の中間くらいの艶かしい色合いのものだった。

 

 胸には何も着けていないが、腰廻りをぴったりと吸い付く刺繍で囲い。

 

 胎と太ももの部分には細緻な冬でも咲く花の柄があしらわれている。

 

 まだ幼いものの。

 

 今までの少年との交合(まぐわい)で何度も精を受け止めた肌は艶々と輝き。

 

 飾り立てられた女性の象徴は下着に触れるだけでも心地よいだろう滑らかさを少年の指に教えるだろう。

 

 今や彼女達全員が淫核(クリトリス)の包皮を持たない。

 

 少年と交わり、少年に愛されるようにと己の体を変えて来た彼女達にとって、少年に見られる事は既に犯されるのを変わらない高ぶりを与えてくれる行為となっているからだ。

 

 璃紗にしても、シルメイアにしても、その剥き出しの小さな欲望の中心を少年の視線に疼かせて膨らませ、指を自分の手で誘うだけで恍惚と背筋を震わせていた。

 

 すじの上にはもう既に蜜の珠が溢れ、流れ始めている。

 

 しかし、今日はいつもとは違い。

 

 その慎ましやかなすじに左右の太ももから二本のショッキングピンクな色彩の線(コード)が入り込んでいた。

 

 よく見てみれば、すじの中から振動で僅かに震えている事が分かる。

 

「それお揃いなんですよ。私が璃紗さんとシルメイアさんに貸してあげたんです。イクスさんの魔力が揺れるとおまんこの中で一杯震えて、イクスさんを感じられて凄く気持ちいいんですよ♪」

 

 ソファーの後ろから少年の首筋にしな垂れかかったエストリアが甘い声で囁く。

 

 その姿は外の少女達に比べて控えめな桜色の下着姿だ。

 

 乳房もすじも見せていないが、その太ももに嵌る桜色の刺繍の輪にはピンク色の線が繋がった1cm四方の崩燼機関が据え付けられていた。

 

 シルメイアや璃紗と違うのはその線が下着の刺繍の中に潜り込んで、すじだけではなく。

 

 左右の乳首を振動させる四つのピンクの小石のような物体に繋がっている事だろう。

 

 すじの中に埋まっているのと同じものが乳首を左右から一つずつ直接震わせているのだ。

 

 その盛り上がりは薄い下着の中から丸見えで。

 

 乳首がしこり勃っているのが少年にも分かった。

 

「まだ小っちゃいのに二人ともイクスさんがおちんちんで種付け交尾を覚えさせちゃったから、イクスさんと繋がってない時は寂しいんです。私がする時になったら、イクスさんにもっとオモチャを付けたところ見せてあげますね……私がイクスさんの事を大好きなの一杯見せてあげます♪」

 

 クスクスと笑むエストリアの様子はいつもとは違い。

 

 微熱を帯びて情熱的ですらある。

 

 少年が薄らと汗を滴らせる少女達のすじに両手の中指を這わせるとそれだけで二人の背筋が震えて、軽く達した事が分かった。

 

 蕩けた表情で甘く媚びた視線を向けてくる幼い牝が二匹。

 

 指先の感触はとても普通ではない。

 

 ドロドロに融けたすじの内部は指を少し這わせただけで蜜を大量に吐き出し、ヌチュリと極めて粘ついた音を立てて、指が滑るのを助け。

 

 ゆっくりと一度押し引きするだけで二人の少女の性感を最高まで引き上げる。

 

「ぱーぱぁ♡」

 

「いくすぅ♡」

 

 その少年に全てを阿る甘えた鳴き声。

 

 普通の人間が聞けば、それだけで射精させられてしまうかもしれない。

 

 それは男であれば、誰もがそうだろう。

 

 少年とて、股間を猛らせるのに十分だ。

 

 膨らんだ股間に気付いて再びクスクスと笑う二人の幼い牝達が互いの片手で股間の紐を解き、小さな手でそそり勃つ幹を解放した。

 

 その途端に溢れてくる少年の蜜の匂いにうっとりした様子で二人が左右から摩ろうとしたが、それよりも早く黄金の鬣が股間の前にスイッと出てくる。

 

「イクス。もう、我慢……っ、わ、私にもして下さいッ」

 

 もう耐え切れないと眉根を寄せたライオン☆ガール。

 

 美紗が少年を股間の下から上目遣いに見て、その雄々しい幹に口付けすると立ち上がり、クルリと後ろを向いて、そのまま腰から下着を下ろした。

 

 朝からずっと待っていた少女の股間の覆いはドロドロに濡れ切っており。

 

 ヌトォーっと大量の蜜がすじと下着の合間に糸を引かせた。

 

 蠱惑的な香りを放ちながら、今もすじの合間から絶え間なく蜜を零している美紗は少年の前で腰を僅か左右に振って淫猥に演出し、そっと両手を股間から後ろに伸ばして幹を掴むとそのまま自分の中心に宛がうよう体を下ろした。

 

 グヂュプ。

 

 亀頭が濡れ照るすじに沈み込むとクプクプと泡だった蜜が繋がった牝穴から溢れ出し、快楽と共に少年に淫らな光景を見せ付ける。

 

 グプ、ヂュグ、クプププ、ドヂュン。

 

「ん、ぉおぉっ♡」

 

 自らの最も奥。

 

 子宮口まで亀頭のえらで襞を抉られた美紗が舌を出してはしたなく快楽に顔を蕩けさせた。

 

 きゅっと腰を少年の股の間に潜り込ませるように繋がった美紗はいつもよりも狭い膣内を進む少年の幹が膨らむのを感じていた。

 

 その上、一番奥がぴったりと吸い付くとそれだけで背筋がもう焼け付いたように熱く激しく戦慄き、狂おしい程の快楽が体を蹂躙していくのだ。

 

 普通の牝なら一瞬で果てて気を失っていただろう。

 

 本当ならこのまま少年に腰や尻を撫で回され、鷲掴みにされて激しく攻め立てられたい。

 

 しかし、少年の両手は今も妹とシルメイアの股間を弄っており、自分が動くしかないと彼女も分かっていた。

 

 自分から腰を揺すって、快楽を貪るなんて、はしたない事だといつもならば羞恥で動けなくなってしまうかもしれない。

 

 しかし、今はそんな事も無く。

 

「イクスっ、わ、私のおまんこで……っ、た、愉しんで下さい……ちゃんと出来るか見ていて?」

 

「うん」

 

 少年の優しい声にそれだけでジンジンと背筋が震えて。

 

 美紗の脳裏にはただ少年を悦ばせる事しかなくなっていく。

 

「んっ♡」

 

 グヂュッ。

 

 ピッタリと肌と肌が吸い付き。

 

 しっかりと繋がった幹と牝穴。

 

 それを腰を左右に揺らしながら引き抜いていく様子は男ならば、興奮しない者はないだろう。

 

 すじが大きく割り開かれ、幹を食み占めて、蜜を吐き出しながら、滑る様子。

 

 女性らしい太ももと臀部(おしり)が蜜に濡れて震え、照明の下で輝く姿。

 

 男を満足させる為に娼婦達が使う手練手管。

 

 少年の為に女性誌やら娼婦達の間で広まった技や見せ方を密かに学んでいた美紗は見られているだけでも快楽が得られるものなのだと初めて実感した。

 

 背筋がざわめき。

 

 少年の視線を感じるだけで恍惚感が押し寄せてくる。

 

 自分が気持ち良く出来ている。

 

 興奮させられている。

 

 その女としての矜持を満たしてくれる深い感慨。

 

「イクスっ♡ イクスっ♡ イクスっ♡」

 

 少年の左右の肩に凭れ掛かったウルとエンシェン。

 

 未だにすじを捏ねられて、同時に指先を軽く埋められ、少年の首筋で甘い吐息を吐く璃者とシルメイア、少年の背中にぴったりと寄り添うエストリア。

 

 ソファーの横で赤くなりながら少年の交わりを見つめているネハシム。

 

 誰もかれもが、羨ましそうに自分を見ている。

 

 それを感じ取りながら、美紗は今だけ独り占めな少年を更に射精させるべく。

 

 腰を揺すり、見せ付けながら、幹を膣内(なか)で呑み込み扱いた。

 

 ドチュ、ドチュ、グヂュヂュヂュ、グプ、ヂュグ、ヂュグ、ヂュグ。

 

 一回一回奥まで深くではなく。

 

 自分の最も感じる部分を何度も亀頭で抉らせ、浅い部分や深い部分、様々な膣内(なか)の感触を愉しめるよう腰を振る様子はまるで踊りでも踊っているかのように躍動し、淫猥でありながら、美しいと思わせるに十分な偉容。

 

(あぁ、イクスッ♡ もう出そうなのですねっ♡ い、いいですから、私なら大丈夫ですから、たくさん、私のおまんこにっ♡ 交尾用の種付け穴にっ♡ ちゃんと一番奥で打付けながら出させてあげますからっ♡)

 

 膨らむ幹からすぐに射精が迫っているのだと理解した美紗がその獣のような黄金の鬣を振り乱し、両手を床に付いて、尻を高く掲げる。

 

 丸見えだった交わる部位が更に強調され、その上で今までよりも圧迫された幹がグッと更に太くなった。

 

「イクスっ♡ 私のおまんこに種付けして? ちゃんとあ、赤子が出来るように……っ♡ わ、私のお胎(なか)……大きく、して♡」

 

「美紗ッッ、いくよ」

 

「は、はい♡ はいっ♡ イクスッ♡ イクスッ♡ 獣交尾はあ、獣人の嗜みですっ♡ からっ♡ 立派な世継ぎが出来るようっ♡ が、がんばりますからっ♡」

 

「美紗ッ」

 

 少年がグッと腰に力を入れた瞬間。

 

 ビュグルウゥウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 大量の白濁が、グヂュッと最奥にめり込んだ亀頭の先から放出され、子宮口を押し広げながら、その熱湯のように熱を保ったまま子宮を満たしていった。

 

「ンォオオオオオオ♡ ァォオオオオオオオオオオオッッ♡♡♡ ンォオオオオオオオオオッッッ♡♡♡ ア~~♡ ア~~♡ ンァッ♡ ァォッ♡ ♡♡♡」

 

 獣のように吠えながら、甘く甘く絶頂しながら、はしたなく舌を垂らしながら、自分の奥で感じられる少年の熱に身体を燃やされながら、奏美紗は牡に屈服している自分を受け入れ、それでもまだ残る人らしい理性から、その子種を一滴も無駄には出来ないと力の入らない甘美な衝撃に支配された膣内をきゅっと緊張させ、まだ完全に出切っていない精を自らの子宮と膣で呑み込んだ。

 

 そうして、ぬっぷりと幹を自分から引き抜いて、床に用意していたものを少年の前で見えるようにすじへと張る。

 

 精の玉が濡れたソレの横に残っていた分だけポタポタと絨毯に糸を引いていく。

 

「それって……」

 

「イクスの、子種……外に出してしまっては勿体ない……ですから♡ こ、子種を全部中に感じられるように……か、買ってきたんです///」

 

 それは一枚の紙札だった。

 

 東部の東匠文字(イースタン・キャラクター)が書き込まれたソレは男の子種を膣と子宮に留め、妊娠する確率を上げ、女性の性感を高める品。

 

「可愛くて、いいと思うよ。美紗……」

 

「ぁ♡ は、はぃ……」

 

 満足そうに膨れて精と蜜で濡れ照った腹部へ手をやりながら、美紗が僅か後ろを向いて微笑む。

 

「こ、今度はわ、私……私がしたい、ですっ♡ イクスさん♡」

 

 次の相手に手を上げたのは後ろから少年と獅子少女の甘い獣交尾に触発されたエストリアだった。

 

「うん。じゃあ、こっちに来て……しよっか。エストリア」

 

「は、はぃ♡」

 

 たぶん、校内では少年のハーレム上位者に違いないと噂されるくらいに積極的な少女がソファーの後ろからトテトテ走って少年の前までやってくる。

 

 美紗は起き上がるとエンシェンの横にもう座って、腹部を愛おしそうに撫でていた。

 

「イクスさんに喜んで欲しくて、い、一杯、オモチャを買っちゃったんですからね?」

 

「う、ぅん」

 

 少年のまだ乾いていない、そそり勃った幹の上に跨るようにして身を預け。

 

「これから、沢山してあげます♡ イクスさん♡」

 

 そう言って、少女は頬に口付けした。

 

 *

 

―――???

 

 昔、人に化けた魔王がいた。

 

 魔王は人に化け人々に災厄を振り巻きながら、自分を倒すことの出来る聖女を集め騙し味方につけて旅をしていた。

 

 ある時、名を知らぬものはいない希代ノ王は騙され、利用されていた聖女達を天使の声によって解き放ち魔王を共に討つ事になる。

 

 聖女達と王に打たれそうになった魔王は逃げ出し、また味方となる聖女を見つけ出し力を蓄えるために隠れてしまった。

 

 王と聖女達は魔王を見つけ出し、新たに味方を得た魔王を討とうとするが逃げられてしまう。

 

 魔王の味方になっていた新しい聖女達はその後、魔王と離れ離れになるうちにその正体に気付き。

 

 英雄や賢者達と共に魔王のもたらした災厄と戦う事を決意した。

 

 やがて、刻が満ち。

 

 魔王を滅ぼすために天使、悪魔、人間がただ一度だけ集った。

 

 そこには七人の聖女達の姿と王の姿があった。

 

 魔王を討つために全ての者が尽力し、魔王をついに追い詰め、終極へと至ったが、全ては時既に遅く。

 

 魔王の力に大地は割れ、空は何時果てるともない光に満たされた。

 

 その力を持って全ての者を地に這い蹲らせると魔王は天に赴き、神と対峙した。

 

 だが、神の力の前に魔王は滅びそうになるやいなや……地上に逃げ戻っていった。

 

 力を失った魔王は地上の何処かを今も彷徨っている。

 

 これはまだ全てが失われていなかった頃の話。

 

 終わりが始まる前のお伽噺。

 

 誰よりも、何よりも、ただ優しく、傲慢で、全てを背負った少年の話。

 

―――パタンと本が閉じられて。

 

 白い球体の中心で。

 

 失われた都市の館の中で。

 

 緑炎の寝台で微睡ながら。

 

 彼女は自分の神担者(コスタレロ)を見つめる。

 

 褐色の肌に長い耳。

 

 小さな体に勇気を宿し。

 

 我が身を省みずに抗い続ける。

 

 そう、その眠りの中で彷徨い続ける彼女を。

 

 ナーリヤ・ナーシム・エルトロイカ。

 

 全ての契約を取り持つ少女。

 

 傍の時計の時刻はそろそろ午前0時。

 

 化け物達が騒ぎ出す宴の幕開けは近い。

 

 今までの宵宮はもうお終い。

 

 ざわめき出す都市の中心で彼女が浮き上がり、天井を抜けて、遥か地表を見下ろせば。

 

 蔓延る者は道化師に非ず。

 

 それは全てが神であった。

 

 今は小さく見えているとしても、人と変わらぬ程度の大きさだとしても、それは確かに彼女と同じ。

 

 遥か大宇の果てより先に泳ぎ。

 

 悠々と無限の宇宙を覗き込む者達であった。

 

 捻子くれた身体を持つ者。

 

 瞳を無数に持つ者。

 

 手を幾多飛び出させている者。

 

 触手を揺ら揺らと蠢かせている者。

 

 カチカチと歯を慣らしている者。

 

 ギチギチと翅を燻ぶらせて嗤う者。

 

 ダラダラと唾液を垂れ流している者。

 

 見たならば、直視したならば、常人はたちまち狂人となり、砕けた正気は腐臭を放ち、真理に到達してしまうに違いない。

 

 それは人が触れてよい、視てよい、聞いてよい、嗅いでよい、味わってよい、そういうものではなかった。

 

 世に化け物は幾多もいよう。

 

 だが、彼らは神だ。

 

 有限の象形を与えられてはいても、本質は自存し、無限にして終わりなき事象そのもの。

 

 この宇宙よりも先にあり。

 

 この宇宙よりも果にあり。

 

 時間の頸城に囚われぬ永劫。

 

 ようやく始まる祭事に駆け付けた参加者。

 

 新たなる再誕を持って、降臨せし者を待つ福者。

 

【ひひひ♪ カーニバルだよ~。ナーリヤ頑張る♪】

 

 世界が、都市が、无の海に浮かぶ白い球体が、展開されていく。

 

 球面に入った罅はたちまちに全体を奔り抜け。

 

 無音の世界に波動と共に重苦しい音を、錆び付いた蝶番の付いた木箱でも開けるような音を、響かせる。

 

 それを至近で聞いた者達の半数は途中で意識を途切れさせ。

 

 ズタズタとなった精神を自らの乗る船や基地の設備によって、辛うじて保ちながら収容され。

 

 残った半数は狂気に染まっていく心の摩耗に耐え切れずに自己を封印するか。

 

 あるいは鎧に身を包んで安全の確保に努めた。

 

 そして、三人の将と一人の聖女は始まった異変を前にして、早くも半数が脱落してしまった事に溜息を吐き、まともに残っている戦力に数えられる手練れ達へ悉く命を下す。

 

 付いて来るな。

 

 味方を守れ。

 

 後はこちらでやる、と。

 

 霧が溢れ出した都市内部。

 

 無限とも思える層がガラガラと崩落しながら開かれ、その中心たる都市。

 

 “複製ではないアイウィス”を見せる。

 

 まるでテーマ―パークさながらにライトアップされた都市は異様な程に華やかな光に満ちて、その内部に人間とも内臓とも蟲とも触手とも神とも邪悪とも聖なるものとも、よく分からないソレ等を露わにした。

 

 吃驚箱。

 

 そう、球体は吃驚箱だった。

 

 現在全長120000000km。

 

 惑星を幾つ並べても足りない程に広い。

 

 底と開かれた上部。

 

 中心に浮遊するアイウィスから伸びた色取り取りの耀き。

 

 色彩の帯が无の海を貫通し、遥か地表。

 

 現実の地面を割り砕いて、大陸各地。

 

 東西南北の大地を抉り抜き宇宙空間へと突き抜け。

 

 真空の海にある無数の岩塊を斬り裂いて、星系第4惑星。

 

 火星と言われる星を貫通した。

 

 帯の一つに中心核を絶ち割られた星はその数十億年の誕生からの年月にすれば瞬く間。

 

 呆気ない程に軽く。

 

 とても軽く。

 

 帯を中心にして罅割れ、砕けながらマントルを吹き上げ、地殻を剥がされながら身を剥き出しにして。

 

 最後には左右にズレながらバラバラに散らばっていく。

 

 七教会航宙部門。

 

 新設された宇宙開発部門は全部門に第一級非常事態を勧告。

 

 現在より四日後。

 

 新年が明けると同時に。

 

 光の帯によって高速で引き寄せられる火星の46%の質量が本惑星及び衛星に致命的な影響を及ぼすと警告し、惑星規模の大質量飛翔体の事前破砕計画を推進。

 

 七教会の治安維持部門は大陸各地を貫いた四つの光の帯。

 

 その周辺において起こる大小無数の犯罪、事件の鎮圧へと乗り出した。

 

 帯周囲の地域において進行する国家瓦解級の地獄は誰にも等しく降り掛かった。

 

 明日を夢見る若者は狂乱しながら自らの家を燃やし。

 

 自らの我が子を貪る両親が目撃され。

 

 人か獣か人外か。

 

 まったく分からぬ生き物が四足で走りながら、斧や地面を齧る。

 

 涙を流しながら嗤う画家が自らの四肢と血を筆替わりに絵を書けば。

 

 図書館の司書が自らの皮で造った魔導書を読み上げる。

 

 友人同士が殺し合い、喰らい合い。

 

 違う種と交わりながら自らを殺し。

 

 狂気に取り憑かれぬ輩など一欠けら存在する事無く。

 

 全ては血潮から立つ湯気の中に消えていく。

 

 誰かが終焉だと呟いて。

 

 敬虔な神の徒達は自らの聖典に描かれる最後の日。

 

 全ての終わりの始まりへ祈りを捧げた。

 

 全ての事態の中心で。

 

 都市の館の上空で。

 

 腕を広げた彼女は。

 

 黄金の仮面を半分被った彼女は。

 

 世界を見上げて祝福する。

 

 それが始まり。

 

 終わり無き世界に終わりを齎し。

 

 嘗て、十数年前に途絶えてしまった儀式を終わらせる最後の方法だった。

 

―――これはッッッ?!!!!

 

 七教会観測部門がこの地獄を全大陸規模で報道する最中。

 

 宇宙観測を行う殆どの先端観測所の職員が一つの結果に喉を干上がらせたのは……終末が、真に終末である事を理解した為であった。

 

 その望遠鏡を通して観測される宇宙が、酷く酷く誤差を伴って観測される。

 

 一秒前よりも今見る世界が縮まっている。

 

 収縮している。

 

 十数年前にも観測された事象。

 

 それは世界が終わってしまう。

 

 たった一点に向けて落下してしまう。

 

 魔王との大戦にちなんで名付けられた終焉の言葉。

 

【|黄昏ノ落日(インター・ダウンフォール・フェノメノン)】

 

 宇宙凝集による空間圧縮、銀河団規模における物質の超高熱量の爆縮を伴った大崩壊連鎖現象。

 

 つまり、それは宇宙内部の全物質が単なるエネルギーとなって何もかもを焼き尽くしながら、他の物質を呑み込んでいく極熱地獄の別名であった。

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