※この作品はR-18です。

聖娼館ハルトゥム   作:Anacletus

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元旦の連続投稿第二弾。エロ回だよ!! みんなが待ってた聖女エロが開幕だヒャッハー……無理やり気分を出しても頭が痛いorz


~ユアン・クオ編~
第三章インタールード3★


第三章インタールード3「月下姫譚」

 

 夜闇に炎が揺らめく。

 

 風の凪いだ岩肌を崖下に加速した鋼の刃が通り抜けて。

 

 火の粉すらも映し出す鏡と化した。

 

 祭壇に掲げられた火皿の上で赤々と燃え滾るのは胎児にも似た何か。

 

 その瞳が僅かに開けば、谷の壁面は赤熱し、視線の先にある全てが灰となって崩れ落ちる。

 

 魔族の再臨。

 

 捧げられた生贄の数は影となった祭壇の周囲に無数。

 

 白い骨の山を築く。

 

「火の神様が蘇るぞ!! おお、我らに常しえの繁栄を!! 我らに新たな時代の幕開けを!! お告げをッ!! お告げをッ!!」

 

 この後に及んで数十人の男女が崖が灼熱した理由も知らず。

 

 叫んでソレの注意を引いた。

 

 瞳がキロリと彼らを睨めば、間違いも容赦も無く。

 

 その襤褸麻の服に紅の化粧をした人々は一人残らず灰となった。

 

―――ルゥゥウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

 

 叫びは獣の遠吠えにも似て。

 

 しかし、それよりも春かに鮮やかな炎を谷底から吹き上げる。

 

 黄、紫、白、橙、赤銅。

 

 乱舞するのは捧げられた鉱物に比例した光。

 

 それは一塊にされた火皿の上の御神体から吹き上がり、色合いだけで魔術方陣と化した。

 

 形も文字も用いない。

 

 原初の色のみで築かれるソレは神殿の絵画さながらに蘇るモノの物語を映し出す。

 

 黒が白に駆逐され、緑の下に埋もれて土くれとなり、再び炎の中から蘇る。

 

 人型魔族。

 

 それも貴族と呼ばれる者の生を準えて、今正に物語は新たな始まりを迎える。

 

 だが、その栄光に蔭りを落すのは一振りの刃。

 

 何の変哲も無い鉄刀。

 

「!!!」

 

 刃ならば熱で溶かせる。

 

 そのはずだと視線が鋭き刃面を見つめれば。

 

 反射した魔術中核が鱗の浮き出始めた胎児の後方に着弾し、岩肌を融解させた。

 

 発火の魔眼。

 

 魔族ならばそれなりにいるだろう特殊な瞳に起因する能力は光の速さで熱量を操作する魔術の核となる微細な色の情報を物体に転写する。

 

 だが、光ならば反射出来ぬはずもないというのか。

 

 発火よりも早く。

 

 刃に込められた魔力の鏡が式を打ち返したのだ。

 

 谷底は既に火口さながらの光と熱に満ちている。

 

 侵入者には身を隠す術など無い。

 

 が、状況を逆手に取ればいいと。

 

 落ちてくる人影の周囲は熱と光を周囲から吸収し、燃え盛る壁となっていた。

 

 唯一見えるのは刃のみ。

 

 だが、それすらどうにも出来ない。

 

 これが自分にとって致命的だとようやく魂から蘇りを果たしたソレは理解し、絶望とも諦観とも分からぬ声を上げた。

 

 幾度となく落ちてくる人型の炎光の壁に極大の術式中核が打ち込まれ、爆裂する勢いで熱量を供給する。

 

 しかし、その壁は全てのエネルギーを吸収し、飽和しない。

 

 炎は燃やせない。

 

 水は切れない。

 

 それと同じく。

 

 熱量に熱量を足しても熱量以外にはならない。

 

 対象に大規模な熱量を光の速さで発生させる事は出来ても、熱量事態を取り除く事は不可能。

 

 空気を爆裂させ、衝撃で吹き飛ばそうとしたところで既に供給された圧倒的なエネルギーの前では無力もいいところだ。

 

 たった十二秒の攻防。

 

 自らの周囲の地表を見つめ、超高温の灼熱と化して、一瞬にして粒子線が飛び交う程に全てを燃やした魔族が逃げようと背後へ退いた瞬間。

 

「閃剣が奥義の一つ」

 

 その熱量の壁を付き抜ける刃の切っ先が真横から迫り出し、辛うじて瞳がその瞬間を捉えて―――。

 

「届け【穿斬(せんざん)】」

 

 フッと最後の灯が消えるように少しずつ谷底の光は失せていった。

 

 それから数分後。

 

 左右に切り立った崖が聳える荒野の入り口に人影が戻ってくる。

 

「終わったぞ。合流予定の村に急ごう」

 

「うん。大丈夫だった?」

 

「当たり前だ。ハティアのお守りに守りを任せているとはいえ、あの程度に苦戦はしない」

 

「良かった……あ」

 

「?」

 

 そっと崖の奥から出てきた人影の手が月明かりの下で持ち上げられた。

 

「火傷してる。えっと、薬は……」

 

「心配性だな。この程度なら唾を付けておけば、明後日までには―――」

 

「ユアン……」

 

 瞳を下から覗き込まれて。

 

 それ以上、彼女ユアン・クオは何も言えなくなった。

 

「任せる。これも弟子の仕事だ。ふ……」

 

 苦笑しながら、少しだけ顔を逸らして。

 

 長い黒髪を荒野の風で靡かせながら、月下美人と謳われる女は自分よりも小さな手が懐から出した貝殻から指先で掬った薬を塗る様子を視線だけで眺めていた。

 

 今日も冷える夜の四十万に木霊するのは獣の遠吠えか。

 

 あるいは怨嗟の残響にも似た風音だけ。

 

「私の心配もいいが、自分の事が第一だ。お前の方は大丈夫だったのか?」

 

「誰も来なかったから、戦うような事は無かったけど」

 

「そうか。連れて行けば良かったかもな」

 

「えっと、その……僕が倒せそうな相手だった、とか?」

 

「いいや、一秒で消し炭だ」

 

「………それはちょっと」

 

「ふふ、冗談だ。さ、行こう。合流予定は三日後。此処からだと少し遠いからな」

 

「うん」

 

「もっと、胸を張れ。お前は私のたった一人の弟子なのだから……シンア」

 

 背の高い痩身。

 

 しかし、肉付きも女らしさも兼ね備えた姿態。

 

 東部らしい武人の心得が立ち姿を絵と見せれば、歩く姿は人目を引くに十分。

 

 大陸の東において刀を使う者は剣士ではなく。

 

 刀師等と呼ばれる。

 

 風の噂に載った蒼月の無頼。

 

 女は世直しに歩く若き武人だと言う。

 

 誰が呟いたか。

 

 その刃の技の冴えに神は感嘆の声を零すとか。

 

 人の守護者。

 

 世の直し人。

 

 無頼の武人。

 

 その名は真円たる月を暗示しているとも……。

 

 彼女の名はユアン・クオ。

 

 又の名を月下美人。

 

 しかし、今はただ自分よりも年下の少年の、中肉中背の男とも女とも付かない華奢な子の、お守兼師匠という立場にある、一介の流浪であった。

 

 これは昔々の物語。

 

 彼女と弟子の些細な忘却の彼方にある蜜月。

 

 まだ、世は暗く、人は熱く、全ての天下に理知と糧足らぬ頃の記憶……。

 

 *

 

 動機というものを追求していけば、それは生まれであるかもしれない。

 

 道行に賞賛が付いて回るようになったのは成行きであった。

 

 彼女が世界を歩く理由は然してご立派なものではない。

 

 東部の大国。

 

 その首都において生まれたのは十数年前。

 

 彼女の両親が我が子を世において旅立ったのが十年前。

 

 その流浪の孤児がとある人食いが住むと言われた森に迷い込んだ事に全ては始まる。

 

 生まれも育ちも良いところ。

 

 花よ蝶よと育てられ。

 

 身売りする事すら思いも付かず。

 

 小さな花を口にして。

 

 糊口を凌いで襤褸を着て。

 

 辿り着いたのは―――化け物の巣などではなく。

 

 彼女が師と崇める事となる一人の……否、一匹の住処だった。

 

 影と形の朧なる奇奇怪怪な言葉を話す何か。

 

 便宜上は彼と呼ぶ事になるだろう相手は旧い旧い世から生きる異種であると己を名乗った。

 

 世捨て人ならぬ世捨て異種。

 

 まるで冗談のように人との会話に飢えていた彼は彼女の世話を焼き、自らの弟子として糧を与え、様々な叡智と技を学ばせた。

 

 森の賢人と自らをお茶目に称する彼が与えた何ら変哲の無い鉄刀。

 

 それが彼女の剣の始まり。

 

 一人で生きられるようになって師に別れを告げ、旅に出たのはそれから数年後。

 

 何も世直しがしたかったからというわけではない。

 

 ただ、己の生家を確認したかったからに過ぎない。

 

 だが、我が家は既に更地となり。

 

 彼女を覚えている者もいなかった。

 

 都会とはそういうものである。

 

 ならばと。

 

 彼女は全てを捨て去って、師に言われたようにやりたい事をやろうと国を出た。

 

 旅は困難を極め。

 

 その大きな旅先の壁を打ち崩そうとする度に明晰なる彼女は刀技を産んだ。

 

 才能というものがあったらしい。

 

 刃一つで身を立てて、如何なる権力にも下らず。

 

 時折、人の世の理不尽に異議を申し立て続けた女の技が百を超えた頃から、彼女は噂の徒として生きる事になった。

 

 行く先行く先で彼女の身に降り掛かる無理難題。

 

 荒神に生贄を出さないと村が滅びるとか。

 

 近くの山に化け物が出て、人を喰らうとか。

 

 川の中には異形の人呑みが住み着いているとか。

 

 理由は様々だが、最終的には彼女の刀が斬って捨てた悪と異形と天災は無数。

 

 明日には山が雪崩れて来て皆が死ぬと聞けば、山を削り落す技を編み。

 

 今日にも雷が降り注いで街が無くなると助けを求められれば、天然自然すらも征し。

 

 この現在(いま)にも天空から岩が降ってくると知れば、腕試しに命掛けで挑戦した。

 

 数年を生き延びて彼女が得たものは名誉ではない。

 

 救われた人々の笑顔だ。

 

 だが、それも世の理不尽の前には消えていく。

 

 救った村々は天災や戦乱に沈み。

 

 もう一度尋ねようとした素晴らしい景色は荒れ果てた荒野と化す。

 

 このような日々が彼女を荒ませたのは無理からぬ事だろう。

 

 別にユアン・クオとは刀を持つ以外では特別な人ではない。

 

 普通に飲み食いし、普通に笑い、普通に傷付く。

 

 刃を振れば鬼人の如き心も命の危険が無い場所では普通に痛みを感じるのだ。

 

 世を歩く事に膿み始めていた彼女が仲間というものと出会ったのは一年程前の話だ。

 

 滅んだ故郷の慰霊の為、各地を渡り歩き、聖地で祈っているという少女を守った事に全ては始まる。

 

 そのあまりにも世間離れした善意と善行を積まずにはいられないようなお人よしさ加減は度を越しており、成行きで一緒になった彼女は毎日のように事件に巻き込まれた。

 

 その内に故郷に仕送りをする為に荒事を探している闘師と呼ばれる賞金稼ぎ兼何でも屋に出会ったり、一人諸国を回って己の技術を磨いている鍛冶師に出会ったり。

 

 いつの間にか。

 

 彼女の周囲には仲間と言える者達が集っていた。

 

 そんな時だっただろうか。

 

 彼女達が一人の少年を川岸で見つけたのは。

 

 その死に掛けた男とも女とも付かない少年を彼女達は己の仲間とした。

 

 他人に教えた事など無かった技を教えたのはどうしてだったか。

 

 何か手伝いたいと。

 

 手伝わせて欲しいとお願いしてくる相手に折れてから、毎日のように彼女達は……特に彼女はその子へ全てを注いだ。

 

 今はまだ小さな灯火に過ぎないとしても、その熱意と何処までも慕ってくれる、信じてくれる姿に、自分には無かった未来というものを感じたからなのかもしれない。

 

「………」

 

 スゥスゥと岩に背を預けて寝息を立てる童顔を見つめながら、彼女は、ユアン・クオは少年が起きないよう。

 

 そっと、焚き火に枯れ枝を少し足した。

 

(まったく、可愛い寝顔だ……これで技の冴えもまぁまぁなのだから、才能とやらはあるのだろうな)

 

 彼女は自分が普通よりも見目麗しい事くらいは知っているつもりだったが、男という生物に付いて少年に出会うまで可愛いなんて感想を持つ事はまるで無かった。

 

 言い寄ってくる無頼漢達はいたが、何も心に漣一つ立たない。

 

 それは彼女が元は貴人の出であったからなのか。

 

 それとも刀を振るう世界に生きてきて感情の起伏が小さくなったからなのか。

 

 分からなかったが、それでも男個人に興味というものを持つのは極めて稀な話だ。

 

 パチパチと火の底が爆ぜて。

 

 いつの間にか。

 

 ずっと見つめていた瞳が薄っすらと開いていく。

 

「起こしてしまったな。悪い……ゆっくり眠れ」

 

「ぅん……ユアン」

 

 少し大きめの外套に丸まった姿。

 

 僅かに吐息を零して眠りに落ちていく様子。

 

 眺めていて飽きないのは何故なのか。

 

 彼女自身にも分からない。

 

 荒野の中にポツリと燃える焚き火越しに揺らめく寝顔は無垢で薄い唇が少しだけ血の色にも似て艶やかに思えて。

 

 何処か落ち着かない感情でコクリと彼女の喉は鳴った。

 

「………?」

 

 夜が明けるまで、そのまま見つめていられるだろうと思っていた彼女がふと空を見上げる。

 

 今日は新月。

 

 星明かりしか見えない。

 

 だが、その星が歪んだかと思えば、彼女は咄嗟に火を飛び越して少年へと覆い被さっていた。

 

「―――ッ?!」

 

 ツゥッと天空より何かが、見えない何かが振ってくる。

 

 それは無味無臭。

 

 しかし、最後の悪意を持って彼女の背筋に入り込む。

 

「ッ」

 

「ユアン!?」

 

「だいじょう、ぶだ……ッ、ぁぐ……」

 

 まるで背筋を直接焼き鏝(ごて)で押し潰されているような圧迫感と熱量。

 

 だが、熱いと感じるのにそれは泡立ちそうな程に汗が流れる肌を焼かない。

 

 しかし、ジリジリと背筋から這い回るようにしてソレは全身を巡り、彼女の吐息を燃え盛るように熱して、全身から風邪を引いた時のように大粒の汗を引き出す。

 

「ユアン!! ユアン!!」

 

 心配そうに自分の肩を抱く少年の瞳に脳髄へと到達したソレが燃え上がるように理性を、思考を、白く白く炎の中へと焼(く)べていく。

 

 そうして、ようやく彼女はその力が呪いの類なのだと知った。

 

 そうだ。

 

 心を内側から燃やし尽くしてしまうような情熱と熱量の迸り。

 

 これは先程に滅した魔族が残した傷にもならない、攻撃にすら満たない、そんな最後の最後に発動させた嫌がらせ。

 

 猛ける感情を増幅して、増幅して、増幅して、もしもそれが殺意なら、もしもそれが渇きなら、もしもそれが憎悪なら、もしもそれが行動として表れた時に致命的な感情ならば、自滅させる事が出来るだろう呪い。

 

 水を欲せば、死ぬまで飲み。

 

 何かを食せば、死ぬまで食い。

 

 何かを殺したいなら、自らを殺し尽くすまで止まらぬ。

 

 そういう類のものだった。

 

「ユアン!! 苦し―――」

 

 彼女の手が震えながら、やんわりと少年を岩肌に押し付けて、唇が重なった。

 

「ゆぁッ、んっ」

 

 柔らかな少女とも思える柔らかな感触に脳裏で僅かに理性が戻る。

 

 蕩けるような甘さが脳裏を駆けて、背筋の汗を少しだけ冷ます。

 

 でも、それでは足りない。

 

 それでは背筋を埋め尽くす熱さをどうにも出来ない。

 

 着流しの帯を解いて、その火照った体を夜気に晒すよう襦袢を肌蹴て。

 

 彼女は自分が何をしているのかを理解しながら、駄目だとも、止めろとも、体に命令出来ず。

 

 見せ付けるようにその豊満とは言えなくとも十分に大きいだろう乳房を少年の顔の前に晒した。

 

 汗ばんだ肌はしっとりと吸い付くように感触を焚き火の陰影の中で露わとし。

 

 その瑕疵も傷も無い裸体は翳る股間も全て仄かに色付いている。

 

 股の間から滴り落ちるのは汗ではなく。

 

 その体に豊かさと反比例するように慎ましやかな乳輪と少しだけ尖って色を濃くした乳首からは蜜のように甘い薫りのする雫が垂れていた。

 

「ッ、ん、ユアン?」

 

 明らかにおかしい自分の師に驚いたのも束の間。

 

 少年が頬を染めて僅かに視線を俯ける。

 

 それの初々しい様子に口角が緩んで。

 

 彼女はまだ表面だけを味わっただけに過ぎない唇に再び吸い付いた。

 

「っ」

 

 抵抗出来ない。

 

 いや、どうすればいいのかも分からない。

 

 そんな相手へ口付けを強制するなんて乱暴だ。

 

 しかし、その甘美な誘惑に抗う事など彼女には出来なかった。

 

 心の底。

 

 欠けていた何かが埋まっていくような、刀を握ってすら褪めていた心の何処かが、悦びに沸いている。

 

「ちゅ、んっ、んっ?!」

 

「♡」

 

 ズクンズクンと胎が疼き。

 

 肌寒いはずの夜気に自分の熱を逃がしてすら、彼女は治まらないまま。

 

 少年の唇を押し開き。

 

 自分の舌を口内に差し込む。

 

 それを何とか受け入れようとオドオドと拙い舌を絡め取って、グチュグチュとしゃぶり啜って、唾液を飲み干す頃にはもう彼女の乳房は触れるだけで弾けそうなくらいに高鳴っていた。

 

 指が少年の服の紐を細やかに解いて、それとは反対に毟り取るように肌蹴けさせる。

 

 ようやく自分の帰る場所が、触れる場所が出来たとその乳房がクニュゥと胸板で拉げて、僅かに少年は身震いした。

 

 それだけの様子が、熱く、熱く、狭まる視界の中で何とも言えぬ感情となって全身を巡る。

 

 己の中に焼べられていくものが少年に対する劣情だと。

 

 大切にしたい。

 

 心地よくしたい。

 

 一緒に心地よくなりたい。

 

 そんな愛欲とも情欲とも区別出来ない淫らでどうしようもない気持ちなのだと気付いて。

 

 彼女は泣きたくなった。

 

 もしも、呪いが利いていなかったら、自殺ものの衝動。

 

 自分の中でこんなにも少年は側にいて、抱締めたい相手なのだと。

 

 ついぞ数分前まで知りもしなかった。

 

「シン、ア……」

 

「ん、ユアン?」

 

 糸を引く唾液すら惜しく思いながら、二人の間にある近さが、このまま壊れてしまうのではないかと破滅の予感に戦慄きながら、それでも彼女は自分を止められない。

 

 いや、留めたくない。

 

「お前に……女で弄(あそ)ぶ悦びを……教えてやる♡」

 

 ああ、自分は一体何を言っているのか。

 

 そんなもの教えてどうする気なのか。

 

 毛先程しか持たない理性は羞恥に死ぬ事すら出来ない自分の不甲斐なさを恨めしく思い。

 

 けれども、その自分の口が吐き出す“まやかし”が真実だとも感じていた。

 

 そう、自分はそれを教えたかった。

 

 教えて欲しかった。

 

 それは少年だけに持つ思い。

 

 それを証明するようにもう股間の疼きは、まだ一度とて自分の指ですら触れた事の無い場所は滑る底無し沼のように蕩けて、熱く滾っている。

 

 股間を摺り合わせながら、少年が触れてくれるのを待ち侘びている。

 

 彼女にとって、それは確かに自分の心の底からの気持ちに違いなかった。

 

「ユアン、大丈夫?」

 

 いきなりの事に驚きながらも、それでも本当に大丈夫なのかと心配そうに自分を見つめる瞳に言い知れぬ感情が、背筋を焼く、乳房から齎される甘美さ以上の何かが、胸底から湧き上がって、彼女は淫靡に耳元へと囁き掛ける。

 

「お前にしてやれたら、きっと、この体の疼きも治まる……だから……しよう……シンア、私の愛しい子……」

 

 言ってしまった。

 

 それは絶望にも諦観にも羞恥にも絶頂にも快楽にも似た告白だった。

 

 してはならない、してはいけない、してしまいたかった気持ちの発露。

 

「ほんとうに、治る?」

 

「あぁ」

 

 少年がコクンと頷いて、炎に照らされているだけではない頬の赤さを恥ずかしそうにしながらも、どうすればいいのかと自分に視線で尋ねてくる様子に……欲情して。

 

 彼女はもう自分のいう事を利かない体の導くまま。

 

 その片手で少年の指を導いて。

 

 そっと熱く蕩けた自分の中心に、すじの中の泥濘に、先端を触れさせた。

 

 ヌリュチュ……。

 

「っ、その、ぬるぬる、してて……」

 

「してて?」

 

 訊ねているだけで、心地よい。

 

 触れられているだけで達してしまいそうな程に高揚する。

 

 まだ指先だけだというのに、もうその快楽の虜となった自分を恥じにすら思えず。

 

 心囚われたまま。

 

 彼女はジンジンと熱く熱を帯びた乳首と乳輪を胸板に刷り込むように合わせる。

 

「気持ちいい……///」

 

「ッ」

 

 ゾクゾクゾクッと背筋を込み上げてきた絶頂の波に彼女は抗えず。

 

 プチュクッと泥濘に更なる蜜を吐き出した。

 

 それが少年の指先を濡らし、淫らに姿態が微か戦慄いて。

 

「そう、か…… では、もっと触れていい、ぞ? お前の指でわたしの、ほ、ほとを」

 

「ほ、と?」

 

「そうだ……」

 

 少しだけ口にするのを躊躇って、耳元で彼女が言い直す。

 

「おまんこ……だ♡」

 

「っ」

 

 赤くなった少年の様子に溢れてくる感情を抑え切れず。

 

 彼女は胸を離して、顔の前に持っていく。

 

「乳も吸っていいからな……お、男は乳が好きなのだろう?」

 

 聞いた話だ。

 

 宿屋や留まる事になった家々で男達が酒盛りをしていれば、自然と耳に入ってくる猥談。

 

 乳房が、尻が、すじが、体のあちこちに拘っている男達。

 

 少年も男には違いなく。

 

 ならば、与えてやれば、きっとそうしたいと思うに違いない。

 

 そんな、知識にも満たない情報。

 

「それとも、尻がいいか? どちらも触れたいように触れて吸え……♡」

 

「……ぅん」

 

 恥ずかしそうに。

 

 それでも僅かに嬉しそうに。

 

「ん、そう、そうっ、だ……♡」

 

 ヌチュ、ヌチュ、クプ、チュク。

 

 指先が入り込んだすじがチュウチュウと食み締めるように締り、僅かに動く度に蜜が毀れ落ちて下に糸を引いていく。

 

「っ、尻も好き、か?」

 

「ユアンのお尻……その……柔らかくて……撫でてると……」

 

 彼女はその言葉に出来ない様子だけで胸が一杯になる。

 

「撫でる、だけでいいのか? もっと、揉んだ方が心地よい、だろう?」

 

 恥ずかしがりながらも、言われるがまま。

 

 いや、彼女の望むがまま。

 

 指の力が強まり、その汗に濡れた張りのある艶やかな臀部が焚き火に照らされながら、指の形に撓む。

 

「くぅん♡」

 

「ユ、アン? 痛い?」

 

「ち、がうぞ? とても、上手くて……驚いただけだ♡」

 

 自分では思ってもいなかった程に甘い声が出て、恥ずかしくなりながらも、恍惚とした快楽が、指先から伝わる少年の熱が、強さが嬉しく、愛おしく。

 

「乳もいいぞ……ほら……」

 

「ユアン……ちゅ、ちゅく、ちゅ……」

 

「ふくっ♡ ん、んっ、あぁ、んんっ♡」

 

 まだ唇で優しく触れて啄ばんだだけだ。

 

 それでも乳房を駆け抜けた甘い甘い衝撃に顔を呆けさせて、彼女は囁き掛ける。

 

「舌でしなくていいのか? もっと求めてもいい、んだぞ?」

 

「ぅ、ぅん。ユアンの胸凄く柔らかくて……ここは少しぷっくりしてて……」

 

「なんだ♡」

 

「その……美味しそうだなって……ぅう……」

 

「恥ずかしがるな。それ、はっ、ん、く、普通の、事、だから、な? お前は好きなようにっ、胸も乳も、お、おまんこも……すればいい。分からなかったら、教えてやるから、な♡」

 

 女の悦びを少年の指から、唇から、何度となく貪りながら、彼女は理性なんてものがこの場に必要無い事を悟る。

 

 少年の拙い指使いにすじの奥。

 

 膣は悦びながら戦慄き。

 

 尻を手の形に歪められる事に征服される快楽が背筋を駆け。

 

 胸を赤子のように吸いながら、舌で乳首を転がされて、自分が牝なのだと知る。

 

 お堅い武人というものをいつも世間で言われる程には意識していなかったとしても、そうやって自分というものを決め付けていた時とは違う。

 

 それはとても素直な自分。

 

 快楽に負けて、愛しい少年に女を教えて、その拙いながらも賢明なところに悦び、淫らな行為を貪る堕落した自分は確かに何一つとして苦しくない。

 

「シンア……っ♡ シンアっ♡」

 

「ちゅ、く、んっ、んく、んく、ユアンのお尻も、おまんこも気持ちいい、よ? 胸もずっとこうしてたい……っ」

 

「~~~ッッッ♡」

 

 その言葉だけで何もかもが救われた気がした。

 

 そうだ。

 

 口説かれた事なんて幾らでもある。

 

 良い尻してんな。

 

 オレの女になれ。

 

 そんなのばかりだ。

 

 だが、違う。

 

 同じなのに違う。

 

 少年に恥ずかしそうに言われて、微笑まれて、自分が女として認められ、求められる。

 

 安らかな心地で、淫らな思いで、側に寄り添われて。

 

 溢れた気持ちは快楽は言葉になどならない。

 

 ただ、溢れた。

 

 体が戦慄き。

 

 背筋が反り。

 

 喉を反らして。

 

 舌を喘がせて。

 

 すじからプチャァッとお漏らしのように潮を僅か吹かせて。

 

「ぁ、ンッ?! くぅぅぅぅん♡♡」

 

 カクカクと太股を震わせながら、女として、はしたない姿を全て愛し子に見せ付けて、彼女は果てた。

 

 涙が溢れる。

 

 それは後悔の涙だ。

 

 羞恥の涙だ。

 

 絶望の涙だ。

 

 愉悦の涙だ。

 

 絶頂の涙だ。

 

 しかし、何よりも幸福な涙だった。

 

「ッ、はぁはぁ……っ♡ シンアっ、しん、あっ♡」

 

 愛おしくて。

 

 愛しくて。

 

 達してしまった後の気だるさも吹き飛ぶくらいの多幸感に浸りながら、少年を見つめて、微笑んで、思わず女の絶頂に驚き手を引いていた姿に更なる劣情を抱いて。

 

 彼女は唇を押し付け、舌を絡め取り、情熱的に貪った。

 

 少年も瞳を閉じて。

 

 優しい自分の師の舌を受け入れ、拙くも動きを真似て絡め合う。

 

 それは最初の時とも、快楽を彼女が貪った時とも違う。

 

 互いに交し合う本当の口付け。

 

 それだけで快楽は数倍。

 

 それだけで充たされた気持ちが軽く軽く羽毛が舞い上がるより果てなく。

 

「シン、ア、ちゅ、くぢゅ、んく、んちゅ、シン、あ♡」

 

「ゆあ―――んっ、ゆあ、んっ、んちゅ、んく、んく、ぢゅ、ちゅる」

 

 もっと気持ち良い行為は幾らでもあるだろう。

 

 しかし、充たされた行為はそれを上回る。

 

 軽く何度も達しながら、彼女は生まれてきて今日が一番幸せな日だと思う。

 

 口元を唾液で濡らしながら、涙を零しながら、好きな男と交わす口付け。

 

 これが例え自分を害そうとする呪いの力だとしても、感謝が静かに胸に溢れる。

 

 それはきっと今までの自分ならば、知りもしなかった事。

 

 世に絶望し、諦観し、膿んでいた自分には考え付きもしなかった事。

 

 やろうとしても、足踏みして。

 

 きっと、死ぬまで我慢していたであろう行為。

 

 たぶん、今此処で死んだとしても、彼女が後悔する事は無い。

 

 少なくとも、少年が生きている限りは……。

 

「ん、ぷぁ……はぁはぁ、はぁはぁ……」

 

 ようやく息を切らし唇を離して。

 

 彼女はもう自分の膣内(なか)の準備が十分過ぎる程に出来ている事を知る。

 

 でも、それだけはたぶん話しておかなければならない事なのだと。

 

 少年の額に優しく口付けして、そっと訊ねた。

 

「シンア……ハティアが、好きか?」

 

「え……あ、ぅ、えと、その……」

 

 いきなりの質問。

 

 しかし、少年とて。

 

 今側にいる女に外の女の話をするのがどれだけ失礼な事なのかは何となく知っている。

 

 無論、それが地方の国々ではそこまで重視されもしない一夫一妻制に基く倫理観だ、なんて事は知らずとも。

 

「答えずともいい。今からする事はお前がハティアにもしてやれ……それをあの子も心の底では望んでいる。あいつは私や外の奴と違って、お堅い場所の出だろうから、今日あった事は……秘密だぞ?」

 

「秘密?」

 

「そうだ……これは私とお前の秘密……もし、バレたら私からも謝ってやる……だから、お前の今を……私にくれ……シンア……」

 

 少年は今まで彼女といて、一度とて見たことの無かった笑みを、その美しい人の願いを、何処かで想い人に罪悪感を抱きながらも、受け取る。

 

「その……」

 

「ん?」

 

「謝る時は僕も……」

 

「……ふ、ふふ、そう、だな……お前はそういう奴だったな……シンア……ああ、その時は二人で謝りに行こう。きっと、許してくれるさ……あいつはお前に心底……いや、止めておこう。それはお前達二人が話すべき事柄だ」

 

「?」

 

「もう我慢出来そうに……ない……っ♡ シンア……お前を男にしてやる……だから、私を……お前の……お前だけの女に……してくれ♡」

 

 全ての衣を脱ぎ去って。

 

 焚き火を背に自分の体の全てを晒した彼女は穏やかに艶やかに淫らに微笑み。

 

 そっと、両手で自らのすじを両側から指先で開いて、蜜を滴らせて見せると。

 

 唾を飲み込みもう下穿きを濡らしていた少年に覆い被さり。

 

 紐を解いて露わとした歳に似合わぬ大きな幹を。

 

 それでも色白で桜色の亀頭を見せ付けるように自分の牝穴へと宛がい、呑み込んだ。

 

 グプ、ヂュ、グヂュンッッ。

 

「っ……あぁ、お前と一つにっ♡ あ、ぁ、ぁっ、くっ、ふく、んぅぅ♡♡ 大きくてぇ♡ 一番奥まで♡ やや子の部屋までぇぇっ♡ 届いた、ぞ♡」

 

 一気に貫かれた彼女の中から初めての証は流れない。

 

 既に超越者とすら囁かれる人体の限界を、人の限界を超えた刀技の数々は非力な女の部位を残らず引き千切っていた。

 

 でも、だからこそ、痛みすら知らず。

 

 ただただ、少年の固さと形と雄々しさと温もりを感じて。

 

 一度絶頂を終えていた膣内は一瞬で達する事なく蠢き。

 

 その吸い付くような弾力のある襞で少年を包み。

 

 鍛えるように強く食み締めた。

 

 グヂュッ。

 

 そんな僅かな震えから来る蜜に溜め込まれた膣内(なか)の具合は極上で。

 

 少年の幹を蜜で塗り込めるように刺激する。

 

 それは蚯蚓千本なんて言葉よりも明確に少年を追い詰め、喘がせ、我慢した唇の端から唾液を毀れさせる程に快楽を教え込む。

 

 その特別だろう牝穴の具合の良さに初めての少年は先端がグポリと子宮口に埋まった瞬間、限界に達していた。

 

 ビュグルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!

 

 常識的を遥かに超える射精。

 

 白濁は粘液状で自分で形を保つ程に濃く。

 

 それが全て蜜壺の奥。

 

 まだ初々しい。

 

 それでも牝として十分男を喜ばせるに足るだろう子宮口を焼き尽くす炎のように熱く埋め尽くしながら子宮を満たし、それでも収まり切らない量が二人の股間を濡らしていく。

 

「ッ、あ、んぉおおおおおおおおおおおぉおおおおおおおおおおお♡♡♡」

 

 初めての種付け。

 

 しかし、少年の射精は明らかに普通とは異なる。

 

 一瞬で理性も何もかも溶かし崩されて、獣のように彼女は鳴いた。

 

 これが男の射精かなんて脳裏には一欠片もない。

 

 少年の、愛しい子の種が自分を焼き、ただの牝に戻していく。

 

 その感覚が、子宮に溜まっていく熱湯のような熱さが、食み締めた幹が脈打ち、自分を押し広げて、抉じ開けて、女にしていくという事実が、嬉しく。

 

 雄として自分を征服した少年を祝福するように、媚びた牝のように、征服された女として、彼女は淫らな蕩けた顔で、唾液も舌も垂らした顔で、少年をキュッと抱締めた。

 

「シン、ア……良く種付け出来た、な 偉いぞ? 私はもう……お前の女で……お前だけの牝だ……ちゅ、したい時にさせてやるから、催したらちゃんと言うんだぞ♡」

 

 ふっくらと赤子を孕んだように胎を膨らませながら。

 

 キュンキュンと精によって洗われた子宮口と膣を疼かせ、痙攣させながら、乳の間に少年を抱締めて、彼女は顔に口付けを降らせる。

 

 少年はハァハァと息を切らしながらも、淫らに胎を膨らませた彼女の姿にまた幹を大きくして、コクリと恥ずかしそうに頷いた。

 

「んっ、くっ、あくぅんっ♡♡ まだ、大きい♡ もっと、したい、のか?」

 

「ユアンの、なか……熱くて凄く気持ちよくて、その……」

 

「いい、ぞ♡ 今度は、二人でな?」

 

「ぅん」

 

 甘く甘く精に充たされた膣内(なか)に感じる少年を感じながら、腰が抜けてしまいそうな心地良さに抗いながら、彼女がゆっくりと腰を揺する。

 

 少年がそっとそれに合わせるようにして腰から下の臀部を両手で掴み。

 

 動き易いよう力を込めると淫靡に尻が震えて踊り。

 

 彼女は自分の中心から精が溢れながらも泡立ち今までにない淫猥な音を立てて、膣内(なか)が熱く滾っていくのを蕩けた顔で受け入れた。

 

 グヂュ、グプ、ドチュ、ドチュ、グヂュ、ズヂュ、グポ、グポ、ドポ。

 

 濃い彼女の蜜と少年の精が交じり合い。

 

 泡立ちながら、股間を濡らしていく。

 

 尻が振るえ、腰が揺すられ、亀頭が再び子宮口を抉れば、もう互いに言葉もなく。

 

 その熱く心地良い行為を互いに行うだけだった。

 

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ んぁっ♡ おっ♡ あっ♡ ぁ~~っっ♡♡」

 

 グチュグチュと淫猥な音色の中で獣のように彼女は喘ぎを零し。

 

 少年は次々に熱く高ぶりながら、自分の幹を嬲ってくる、呑み込もうとしてくる牝穴の中にもっと自分を刻み付けたいと。

 

 その尻に指を食い込ませて跡を付ける。

 

 柔らかな胸に吸い付き。

 

 甘噛みし。

 

 自分のものにしたいと。

 

 彼女がもう自分のものである事もまだ分からないまま。

 

 煮え滾るような情欲に支配されたまま。

 

 本能のままに自分を受け止めてくれる牝に甘えた。

 

(わ、たしのおま、んこが♡ また♡ さっきのようにぃ♡ されたいとっ、こ、んなぁ……♡ これで、はぁ……♡ わたし、しょうふ、みたいに……♡♡)

 

 蕩けた肉体は犯される事に溺れ。

 

 少年に何度も種付けをねだる。

 

 その堕落の快楽に身を委ねながら、好きな男の子種によって征服される悦びを知ってしまった彼女の心にはもう雄々しい少年の幹に自分の子宮口で甘える事しか無くなっていた。

 

「してぇ♡ しんあぁ♡ わたしの、なか、また、ややこのへやにぃ♡ たねつけぇ♡ おんなのはらませかたもぉ♡ おしえてやる、からぁ♡」

 

「ッッッ」

 

 恥ずかしさを覚えながらも、その女を孕ませるという行為に。

 

 そうしたいと思う衝動に流されるまま。

 

 少年は一際強く指を食い込ませて、腰を上下させる彼女の尻を自分の腰へと打ち付けさせた。

 

 その途端、我慢の限界を超えて、同時に二人が達した。

 

 ビュブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!

 

「んぉおおお゛おおお゛おおお゛お゛お゛おおぉぉ♡♡♡ ぁあ゛~~~~~~ッッッ♡♡♡」

 

 二度目とは思えない程大量の子種が亀頭のしっかりと抉った子宮口の奥に吐き出されていく。

 

 一度目の精がゴポゴポと膣から溢れ、何度も怒張した幹を服従する膣内の襞が受け止めながら際限なくしゃぶり始める。

 

 それは射精を最後まで続けさせる女の本能か。

 

 涙と唾液で顔をグチャグチャにしながら、それでも幸せそうに完全な妊婦のように膨れていく胎を愛おしそうに彼女が両手で包み。

 

 チュウチュウと自分の意思で膣を蠢かせて、今まで頑張った少年を癒すように優しい動きでの交尾が始まった。

 

 自分が膨らませた胎を抱えて微笑む彼女の姿に射精と同様の高揚を感じながら、少年が尻から手を離して、そっと胎を撫でる。

 

「んっ、んっ、はぁ、はぁ……ユアン、これで……赤ちゃん、出来たかな?」

 

「ふつうなら……そう、かもしれないな……」

 

 そうだとしても後悔はないが、そうだとしたら、自分は親友に一生の傷を与えてしまう事になるのかと。

 

 彼女は遠い目をして。

 

「そうだったら、嬉しい……かな」

 

 しかし、少しだけ擽ったそうに微笑む少年に思わず驚く。

 

「そうしたら、一緒に育てよう? ハティアも一緒に」

 

「………」

 

 少年は助けられた時から何処か世間には疎いところがあった。

 

 けれども、それもまたいいかと。

 

 普通ならば、修羅場でしかないのだろう幸せな未来に、少年が普通に想い人と自分の赤子をあやしている姿が想像出来て……ポロポロと何故か彼女の瞳から嬉し過ぎて涙が零れた。

 

「ユアン? 大丈夫? 何処か、痛い?」

 

「おまえは……ほんとうに……」

 

 そっと、腹部を押し付け。

 

 獣ではない。

 

 恋人の優しい口付けを頬にして。

 

 まだ、世間一般で言うところの愛も恋も然程理解していない。

 

 それでもきっと軽々と自分の理屈や心配なんて超えていくのだろう少年に。

 

 彼女は幸せな笑みを零した。

 

「大好きだぞ……お前がどんなに変わっても、お前がどんなに遠くへ行こうと……」

 

 ゆっくりと腰を上げて、少年の幹を自分の中心から引き抜けば。

 

 ぽっかりとすじから女の穴となった場所が、ボトボトと一度目の子種と蜜で蠢く襞を濡らして、ヌラヌラと光り輝き、少年の目へ光景を焼き付ける。

 

「私はもうお前の女だ……覚えておけ♡」

 

 その日、一人の少年は男となり、一人の女は幼い少女みたいに幸せな恋をした。

 

 そうして、そうして、彼女は気付かない。

 

 少年を独り占めにした欲深さも、初めての相手を奪った罪悪感も、何もかもを背負いながら、彼女の愛刀が僅かに鞘から抜けて刃を見せていた事に。

 

 その刃紋は黒く染まり、何処か薄暗い輝きを増させていたのだと。

 

―――翌日、彼女は何も覚えていなかった。

 

 しかし、少年は少しだけ寂しそうにしながらも、そんな彼女と共に仲間達の下へと帰った。

 

 やがて、待ち受ける残酷な運命も知らずに。

 

 これは“初めての女性”を少年が知った日の事。

 

 彼女の奇跡が初めて“全てを強奪した日”の記憶。

 

 そして、今は―――。

 

「イクス……シンア……そうか……私は……幸せになってはいけなかったんだな……」

 

 アルヴァス亜人国。

 

 アルヴァス・カレッジ武芸術部所属。

 

 霧の街の只中で。

 

 人気も無い劇場前の広場で。

 

 一人佇み。

 

 仮面に蝕まれた彼女。

 

 ユアル・ラオの取り戻した記憶。

 

【ひひひ? 思い出した? 思い出した? 悪い子♪ 悪い子♪】

 

 屍蝋の仮面は水底に沈められた己。

 

 それが例え、奇跡の結果だろうとも、仮面は全てを覆し、全てを白日の下に曝す。

 

 全てを奪う奇跡は返却された。

 

 “本当の彼女”……七聖女ユアン・クオの物語が、この世で初めて奇跡が開眼した日に終わった恋物語はそうして動き出す。

 

「私は……最低だ……」

 

 不幸になる人々の為に、滅びてしまう世界の為に、殺した愛しい人の名を……もう彼女は呟く事も叶わず。

 

「ひひひ♪ ひひひひひ♪ 天が七つを超えし時、全ての契約は果たされん」

 

 新たなる仮面は曰く。

 

【強欲(ボラシターテ)】

 

 全てを欲する性(さが)の名であった。

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