第三章百二十一節★
第三章百二十一節「取り戻した日常Ⅰ」
学校というものに卒業が無ければ、学生は永遠に学び舎の住人でいられるかもしれないが、感動や新たな出会いとも無縁の日々を送る事になるだろう。
アルヴァス亜人国にも新たな季節が巡ろうとしていた。
大陸規模での騒乱。
外なる神々の侵攻による大混乱から数ヶ月。
時間すらも曖昧になった長い長い夜は実際には一週間にも及んでいた。
年明け早々に人類が突き付けられたのは大量の瓦礫と復興予算から来る財政の逼迫。
ついでに混乱した情勢下で紛争や戦争に動き出した国家間の利害調整や勢力図の変更に際しての外交問題だった。
そんな中、事態の中心とされていた亜人国家は国土全域を蹂躙され、その領地の大半が峻厳なる山岳へと化けた。
今まで築いてきたインフラは全て崩壊。
再建まで怖ろしい時間が必要になると思われた。
そう、思われた、で済んだのだ。
彼らが即座に復興へと向かい。
首都の再開発に着手、全国民と人間奴隷達を収容する住宅地域を一週間で打ち立てたのは正に他国から見れば、奇跡の類に違いなかった。
しかし、現実に今や大山と呼ばれるようになったハガスの丘陵には無数の家々が並んでいる。
それもこれも幾つもアルヴァスが積み重ねてきた努力の賜物だ。
まず何よりもエネルギー事情に何ら問題が無かった事が大きいだろう。
ハガス中央の政治の中心たる城砦跡地付近に突き出た鋼の尖塔。
彼らが国力の全てを動員して建造した艦隊の中枢機構。
【崩燼機関(ソルヴァス・エンジン)】が生きていた。
事実上の無限機関を用いて、魔術を用いた為、生活に必要なものは食料から水まで殆どが不足しなかった。
大規模魔術儀式による建造物の建設ラッシュは山岳部を三日で整地し、上下水道を生み出し、生活に必要な施設の全てを賄ったのだ。
優秀な知識層人材が一人も失われなかった事。
また、事前に国土壊滅後の都市設計が行われていた事。
このような事実があればこそ可能な芸術的なまでの復興速度だったのである。
また、首都ハガスに隣接する浮遊大陸ハルトゥムからの救援もあった。
災害後は半ばハガス北部から剥離するようにして平行を保ち。
隣接する地域以外、浮遊して地震から護られていた魔王の大地は健在。
魔術による物資の生成にも物理的な限界はあった為、薬品を筆頭に即座の精製が難しいものは殆どが【聖王同盟(サクラム・フェデレイションズ)】側から提供された。
そうして、十日目には殆どの国民が仮設ながらも住宅を得て、国土の再開発の労働力として動き始めたのだ。
また、アルヴァスの元老院はこの国難にあっても共に在ろうとした人間奴隷達を解放。
国土を護ろうと戦った魔族達を亜人として受け入れる事を国家として表明。
大陸混乱のドサクサに紛れて事実上は如何なる存在も祖国に貢献する限りは受け入れるという極めて稀有な国家として再編された事を周辺国にアピールした。
国民の大半は地元に帰るまでは首都への居住を許され。
また、あらゆる種族的な区別無く一纏めで子供達の教育環境が整備された為、今やハガスの裾野に再建されたアルヴァス・カレッジは大陸に存在する生物の見本市と化していた。
よく忌避される魔族と人間のハーフや奴隷から解放されたばかりの人間、エルフ、異種、亜人、諸々例外無く。
年齢だけでクラスを分けられた教育機関は総合教育の現場として門戸を開いている。
再建前の120倍近い敷地面積に計300棟の校舎。
体育館、グラウンド、特殊棟も含めれば500近い施設が詰め込まれた場所は教育される学生の楽園と言ったところか。
実際、仕事で大いに忙しい大人達が子供達の面倒を見れないという場合も多々有り、数日から数週間、数ヶ月単位で使う宿泊施設や寮までも完備されているのだ。
毎日、仮設の住宅から通う場合は自動馬車の乗り合い所からか。
転移方陣を周辺地域に密に敷設する事で登下校の移動は行われている。
それらを見れば、先進国の人々は殆どが七教会の影響下にある国家のようだと口を揃えるだろう。
実際、そういう面ではかなり参考にされているという噂であった。
そんな斜面に立つアルヴァス・カレッジの一角。
元々は鳥居のあった裏山のすぐ近くの体育館でアルヴァス・カレッジの元本校生徒達の卒業式が行われていた。
周囲には亜人も異種も人間も各々の体格に合った席に座っている。
まぁ、大半はまだ教育課程的には初等科も卒業出来ないような学力の生徒ばかりだったが、形から入るのも大事だと教師達に半ば見学のように連れて来られたのだ。
祝辞を読むのは赤鬼宗家の長女。
殆ど通っていなかった癖に主席な彼女は生徒からも教師からも尊敬の眼差しを浴びている。
この数ヶ月、あの事件に対して色々な流言飛語が飛び交ったものの。
最終的に元老院が発表した情報に彼女の名が燦々と金字で書かれた。
それもそうだろう。
アルヴァスの崩壊を食い止めた英雄なのだから。
そして、赤鬼宗家は今や王家と並び立つ程の権力を握る一族となった。
艦隊総司令ドゥーズ・スィール・フォイルは外なる神々を魔王の配下達と共に討った大偉人として扱われ、王家からもしも自分達の血筋が断絶した場合は王を名乗る事を許された唯一の血筋となったのである。
今や時の人であるエンシェンは次々に押し寄せてくる自称ファン(にわか)を千切っては投げ、千切っては投げの生活を強いられた。
もう無理!!
絶対卒業する!!
という硬い意思が形成された理由はそれ以外に無いだろう。
また、彼女のお供として武芸術部の部員、準部員という扱いとなった境界踏征(オーバー・フラタニティー)の面々は殆どが国家栄誉勲章と表彰状を渡された。
生涯年金とあらゆる職種への進路が開かれたのは学生には羨ましい話だろう。
まぁ、ぶっちゃけて誰もありがたがらなかった。
理由は言うまでもない。
彼らがそもそも国を救ったのは自分達の個人的理由からで公の為等ではなかった。
だから、逆に申し訳ないと奏美紗がオロオロするくらいには今一喜べなかったのだ。
実際、卒業式なんてやってられるかという理由から、事件に関わっていた面々で式に出ているのはエンシェン以外たった一人だ。
ジルムスは事件が終わった後、何やら武者修行すると言って休学届けと同時に一族の私有地に篭って鍛錬に明け暮れているし、少女達もまた少年の子供を身篭って半ば学業はお休み。
整備されていた制度で週の半分はお産に向けての準備をしており、あまり学校には出てこない。
エフィリムはもう学校に行く必要も無いと転校手続きで今度アルヴァスと共同で開校されるハルトゥムの学校へと移っていった。
つまり、現在学校に毎日通っているのは少年とお付の璃紗と精霊扱いな黒猫くらいのものである。
「―――卒業生代表エンシェン・イル・フォイル」
ようやく長い話が終わった。
偉い人の話を聞いて、うつらうつらしていた殆どの下級生達に混じって、世界を救った魔王様もまたスヤァッと頭の上の黒猫と同様に寝ている。
それを横目に苦笑した後。
鬼女は卒業生退場が告げられ、下級生の席が続く列の中程に来て止まり、ダッと跳んで、驚く生徒達を前にして、眠りこけた少年を一瞬で奪取しつつ、パチンと指を弾く。
そうすれば、もう彼女の姿は……誰の目にも妊婦と映っていた。
その制服の下の大きなお腹。
そして、隠されていた時とは違う大きな乳房。
思わず度肝を抜かれた男子生徒達が前屈みになった。
慌てた教師達を前に彼女は体育館に響く程に大きな声で告げる。
「本日を持って!! エンシェン・イル・フォイルはアルヴァス亜人国の国籍を捨て、浮遊大陸ハルトゥムの住人となる!! 親父殿!! 私は外に行くぞ!! 後、初孫の顔をもう少ししたら見せに行くからな!! だが、今日は親戚一同との飲み会はキャンセルしておいてくれ!!」
その報国というか宣言に列席していた保護者達が思わず呆けたように口をあんぐりと開けた。
来賓席からガッと立ち上がった赤鬼宗家の当主は拳を握って応える。
「いいだろう!! 勘当したとはいえ!! 初孫は見たい!! エンシェン!! 我が娘よ!! とっとと幸せな家庭を築いて、独り立ちしてしまえ!! 我輩は!! 我輩はぁああ!?!? う、うぉおおおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおお!!!?!」
感極まった様子でブアァッと滝のように涙を流した父親は立派になった娘を前にして号泣し、それを怖い笑顔で見ていたエンシェン似の優美な伴侶にド突き倒されて、静かになった。
「花嫁のブーケ代わりだ!! 受け取れ後輩達!!!」
制服の中央が腕でバッと引き千切られ、弾け飛んだボタンが体育館中に広がる。
それと同時に押さえ付けられていた超乳と腹部が迫り出し、後輩も卒業生も教師も無く前屈みが発生、ブーケ代わりにという言葉にいち早く反応した女生徒達が我先にと英雄のボタンを争奪するべく跳んだ。
周囲は阿鼻叫喚地獄絵図。
それをフフッと笑いながら、彼女は首根っこを掴んだ少年を抱き、そのまま疾風の如く式場を去っていく。
そうして、前代未聞の卒業式の話が光の速さで噂となるより先に彼女はようやく目覚めた少年の唇を奪う。
「んむ?!」
「ん……♡」
走っている最中だ。
前を見ないと危ないと言おうとした相手に何も言わせず。
高速で校舎の壁面を一蹴りで登った彼女は事前に用意していた羽毛を詰めたマットの上に少年を放る。
「エ、エンシェン。い、痛いんだけど」
「男なんだから、ちょっとくらい我慢しろ。このエンシェンがどれだけ我慢していると思う」
「な、何を?」
「女の口から言わせたいのか?」
「ええと……四日前にもし―――」
「四日“も”前だ……」
ヒョイッと黒猫が邪魔とばかりに少年の生え際から背筋を掴まれて剥がされ、ポイッと校舎下に放られた。
下から自由落下中の黒猫の『マ、マゥヲ~~~?!?!?!』という声が聞こえてきたが、その残虐行為には触れず。
またエンシェンが少年を押し倒すようにして唇を奪う。
「ん、くっ」
「んぅ……ちゅ、ちゅく、ちゅ……っはぁ♡」
「エンシェン?」
恐る恐る積極的過ぎる鬼女に尋ねる少年だったが、エンシェンはその妊娠してすぐの頃のウルにも近しい乳房を積極的に押し付け、相手の手を自分の胎の上に当てさせる事に夢中だった。
「はぁはぁ……んっ……お前が、お前が悪いんだぞ? あの【聖王同盟】の女達や他の子にばかり構うから……毎日毎日、見せ付けて……こっちは公的式典を盥回しにされて仕事漬けだったというのに……」
「あの、エンシェン。目が怖いんだけど」
「怖くもなる。お前を食べてしまいたいのに我慢して、我慢して、こうなってしまった……責任を取れ。イクス……お前とて孕んだ女の味を知ってしまっただろう? あんなに可愛い実の娘やメイドや獅子や狐や洒落っ気のある子を身篭らせて、あの女達と一緒に毎日貪っているではないか」
「えっと、その……ごめん……」
「謝っても許さない。このエンシェンの身体の火照りが消えるまで……今日は独り占めさせてもらうからな 我が伴侶殿♡」
耳を少しだけ強く食んだ後。
明らかに理性を失った様子でエンシェンが春の風に桃色の花弁が舞う最中、自らのブラウスを引き千切るようにして裸体を曝した。
それを見て、少年がようやく気付く。
鬼女は……下着を一切付けていなかった。
それどころか。
乳房からは僅かに乳白色の液体が滲み。
大きく膨らんだ胎は臍を少しこんもりとさせて、魔術方陣が幾重にも描き込まれている。
ズグンズグンと脈動する陣は妖しく紫と桜色の中間程の色合いで薄く発光し、彼女の劣情を表すかのように少年を幻惑した。
「ほら、もうお前もこんなになっているではないか♡」
笑みを零して。
エンシェンが器用に片手で制服のベルトを外し、股間の奥の下着の紐を解いて、内部を露出させた。
春風は僅かに暖かいが、それでも通り過ぎていく風が互いの裸体の火照りを冷まそうとする。
しかし、湯気を上げるように赤みを帯びて、彼女の身体は押さえ切れない劣情を溢れさせているようにも見えた。
赤鬼の身体と言っても、もう角は無い。
また、霧の影響を抑える目的で人化の秘法を常用していた為、その肌は出会った頃よりも人間に近付き、色合いは薄まっている。
それこそ桜色か。
赤ん坊の真珠のような肌にも思えるだろう。
元々、魅力的ではあった大きな乳房は今や制服の中に押し込めるには零れ落ちそうな果実となっており、それでも形が崩れる事無く。
果実から滴るような汗を浮かべて少し色濃くなった膨れた乳首を輝かせている。
その乳房の下にある臨月となった胎は僅かに震えていて、これから起こる甘美な一時を前にして期待しているようでもあった。
その翳りの下には無毛のすじがふっくりと肉付きを増させて、既に蜜を垂らしている。
この数ヶ月で少年の情報を聖王同盟側の少女達から集めていた彼女は少年の目を愉しませる為に恥毛を整えて形を工夫したり、抜いたりして来たが、今はただピッタリと何一つ隔てる事なく一つになっていたいと幼子のように眩い肌を晒していた。
「イクス♡」
優しく上から乗られて、少年の幹が引き締まりながらも張りと艶のある尻の合間に埋もれる。
「ん……」
そこはもう汗だけではなく滴る蜜でも滑り、蕩けるような肌触りの“穴”になっていた。
グヂュグヂュと粘着いた音を立てて、ピタリと恥丘を少年と合わせたエンシェンが圧し掛かるように胸を少年の胸板で拉げさせる。
「んっ♡ これでも色々と学んだんだ……気持ちいいか?」
「うん……柔らかくて、温かくて、凄く……っ」
「ふふ……なら、いい♪ 今は……このいやらしく育った胸も尻もこの子もお前のものだ♡」
母性というよりは魔性。
妖しく微笑んで。
エンシェンが少年の手を自分の胸や腹部、尻に触れさせるよう順々に導く。
胸は少年の指が沈み込むとプチュッととろみのある乳を零し、胎は撫ぜられただけで震え、尻は食い込ませた瞬間にはブルッと震えて、すじからはドロドロと粘着いた蜜を零れた。
「ふぁ♡ ん♡ ふくぅ♡ んんっ♡ すごいぞ!! こんな♪ まだ、指で触れられただけなのに……お前は本当に罪作りな男だ……イクス♡ ちゅ♡」
片手で乳を、片手で尻を緩やかに揉ませながら、少年に口付けして、腰が緩々と前後する。
ニュヂュリュ、ニュリュリュ、ヂュリュリュリュ―――。
甘く幹が尻の合間で挟み込まれ、絞り上げられる。
「ふぁ……エンシェン、そんな事したら……っ」
「どう、だ? 今度は締めてやるからな♪ んっ」
キュッと尻に力が入れられると更に左右から太くなった幹を赤み掛かった肌が絞り上げる。
尻の合間から除く桜色の亀頭は既に傘を引き締まった肉の穴の先端で蜜を零していた。
「もういいな? この子の胎教を始めよう」
「あの、それは……っ」
ゆっくりと片手で割り開かれた場所がテラテラと蜜を零して、少年が無粋な事を呟く前に先端を飲み込んだ。
グリュ、ズヂュルルルル、グヂュン。
長い幹が淡い襞の奥へと誘われて、蕩けるような感触の膣内(なか)へと導かれた。
妊娠してからというもの。
前よりもそこは少年を柔らかく受け止めるようになったが、食み締める力が弱まったわけではない。
どちらかと言えば、弾力に富み。
少年を優しく受け止めて、絞り上げる事に特化されたと言うべきだろう。
多かれ少なかれ妊娠した西部の少女達の身体は色々と変化していたが、ウルとエンシェンは今や母性すらも兼ね備えて少年を甘やかすような方向で気性も身体も穏やかさを増していた。
粘性の高い蜜はグヂュグヂュと音を立てて、子宮口に嵌って後は熱を少し増したようにも少年には感じられた。
普通の妊婦なら深く繋がるのは厳禁だろうが、アルゥ・ゼオから性魔術を習い修め、膨れた胎にしっかりと魔術の方陣を刻んだ彼女達は少女達は例外。
激しくしても大丈夫だし、内部で密着して押し合っても構わない。
男の精は子の滋養に。
行為そのものが一種の儀式であり、これから生まれてくる赤子の全てを活性化する。
胎教云々は置いておくとしても、三人でしているという事になるだろう。
する度に誰もがお胎(なか)の子が喜んでいると表現するが、それは少年にとってきっと真実最後まで分からない謎だろう。
「ん……繋がった……イクス……お前の子種を……またやや子が出来るくらい……注いでくれ♡」
少年の胸に指を這わせて。
妖しく淫らな笑みで。
大きな胎を優しく少年の腹部に擦り付けながら。
エンシェンが甘く甘く囁く。
そうして、ゆっくりと腰が上下に揺れ始めた。
太くなった幹が蜜に塗れて鬼女の割れ目を広げながら引き抜かれ、押し込まれる光景は揺れる超乳と胎のダイナミクスも相まって艶美だった。
肉が互いに一つと溶け合う様子は並の男なら見ているだけで射精ものだろう。
「ふ♡ く♡ ん♡ イクスっ、イクスっ、お前の太いのが♪ 私のおまんこに……ッ♡」
これでもエンシェンは恥ずかしがり屋だ。
淫らな言葉を口にするのはあまり得意ではない。
それでも口から甘い吐息を零しながら顔を歪めて、眉を八の字にした彼女は十分に口で囁くよりも淫靡で少年を高鳴らせた。
グヂュ、グヂュ、グヂュ、ヂュゴ、ヂュグ―――。
熱を帯びた牝穴に最愛の人を受け入れ、汗に塗れた乳房の先端。
色を僅かに濃くした乳首から白く乳が滲み出し、エンシェンの身体を染めていく。
「綺麗だよ。エンシェン……っ……っく」
「あぁ……それだけで……このエンシェンは……ッ」
赤い頬を上気させて。
嬉しそうに目を細めた彼女がはにかんだ。
「イクス♡ イクス♡ 私はお前のものだ……お前だけの伴侶で友で女だ……イクス♡」
胎と乳房を少年に押し付けながら、まるで初恋の人に初めて唇を寄せるようにとても軽い口付けが少年の顔に唇に降る。
額、頬、唇。
指と指を絡めて、密着しながら、少年も返礼すれば、行為は互いに熱を帯びて、最後には唇と舌を絡める穏やかで淫らなものに変わる。
ちゅ、ぢゅる、ぢゅるる、ぢゅちゅ、ちゅ―――。
唾液に互いの口元を濡らしながら、夢中でしゃぶり合う様子は何処からどう見ても恋人以上だろう。
しかし、互いの唇に集中していた間にもエンシェンの腰は小刻みに動いていた。
膣内(なか)で先端が子宮口から離れては浅いところや奥まった場所、胎側と先端が襞を傘で抉り、襞もまた傘をグリュグリュと絞り、結果として高まった二人は互いに舌を絡め合っていられない程に息が荒くなっていく。
「イクスっ、イクスっ、イクスっ」
何度も名前を呼んで。
少女達の中で一番少年と結ばれるのが遅かった彼女はその合間を埋めるように少年へ全霊を尽くして奉仕する。
少年もまたそんな甲斐甲斐しい相手の背中を優しく抱き締めた。
声は無く。
「ッッ~~~~~~♡♡♡」
二人が絶頂に達し。
ビュグルウウウウウウウウウウウウウッ、ビュルウウウウウウウウウウッッ。
大量の精が鈴口の先から弾けて大きく背筋を逸らしながら、少年を再び一番奥で受け止めたエンシェンの膣内(なか)を焼く。
「ぁ~~~~~~~~~♡」
長い発情した猫のように小さな声で身体を震わせ、鬼女はその自分の中で溢れるゼリー状の精を下腹部で受け止めながら、小刻みに襞を何度も少年の亀頭に這わせた。
暴れるようにして射精していた幹が膣内(なか)よりも更に熱い精と蜜の海で扱かれ、睾丸の底に残る精の一滴までも搾り出される。
「ッく、うッ」
少年が顔を快楽とも苦痛とも付かない表情で歪めて。
エンシェンはそんな顔を真直に見られる今の状況に感謝した。
腹部の方陣が僅かに燐光を発し、淫らな牝であり母たる女の子を祝福する。
その様子は射精で疲れ切ったはずの少年の幹を太くしてしまう程に神々しくも艶やかで。
「エンシェン」
「……イクス……もう少しだけ……このままお前を……」
「……うん……エン、シェ……ン……」
まだ膣内(なか)で大きくしたまま。
少年は不意に襲ってくる眠気に抗えず。
そのままゆっくりと瞳を閉じた。
僅かに緊張が緩んだ刹那。
ゴポォッと二人の合間に精と蜜の海が広がる。
しかし、それはすぐに互いの肌の間でエンシェンの下半身へ染み込むようにして消えていった。
残るのは咽返るような甘い淫らな匂いと少し塗れたマット。
そして、花びらを身体に文様のように貼り付けながら、我が子を見るように少年へ寄り添って抱き締める鬼とは思えない優しげな女だけだった。
*
卒業式から数時間後。
そろそろ夕闇に沈み始めた傾斜の最中にある街並みの一角。
嘗て首都東部と呼ばれた場所で建て増しの終わったゼオ家に少年は戻っていた。
あの後、エンシェンが後片付けをして、少年が起きるまで待っていたが、急に入った急ぎの仕事とやらがあるらしく。
途中で後片付けを手伝っていた璃紗に後を任せ、二人に快活な笑みを残して去っていった。
帰るのは深夜との事で少年に出来るのはあまり根を詰めないようにとの忠告のみ。
近頃はアルヴァスとハルトゥムの少女達が諸々の事後処理を終えたので少しゆっくり出来るだろうか。
そう少年は考えていたが、そうでもないらしい。
現在、魔王である身分を隠して学校に通っているわけだが、そんな学生ライフを満喫中の少年自身にしても、実は少し忙しない日常を送っている。
というのも、ハルトゥムの館とアルヴァスのゼオ家に交互の泊まりを繰り返しているからだ。
初めて出会った数ヶ月前から少女達はこっちで今日は寝よう今日は此処で一緒に、と……一つしかない身体を取り合った。
しかし、あの事件以降、身体が常人に近しくなって来ている少年は今までの疲労もあってか。
少し疲れ気味だ。
では、協力しようと彼女達が手を取り合ったのは言うまでも無いが、その方法は性魔術だった。
そうして関係を持った見目麗しい大から小まで正にハーレムの女傑達に活力を分けて貰いながらの生活となった。
毎日、転移方陣で寝る寸前までハルトゥムとアルヴァスを行ったり来たり。
これから生まれてくる自分の子供達の為の準備もあって、中々やる事は多い。
全員としたくても出来ない身体な以上、夜に閨を共にする人数と相手は当番制。
本日、その禁が破られてしまったわけだが、鬼女は少し多目に活力を回復させてくれたらしく。
もう一回くらいならば、少女達と夜の戦も出来るかと。
少年は璃紗に付き添われながら、玄関先でアルゥに夕食はあちらでと軽く会話してハルトゥムへと向った。
「イクス。着いたわ」
「うん。ありがとう。璃紗」
鞄を持っていた璃紗の頭を撫でて、少年が館の玄関先から内部へと向う。
するとソファーの上で寝そべっていた白い物体がクルリと振り向いて、こっちこっちと手招きする。
「あ、マヲン。今日は帰らなくていいの?」
「クヲ♪ クヲヲ♪」
白いもちのような尻尾がプラプラ揺れる。
ノースリーブの白いブラウス姿の亜人少女はテテテッと小走りで近寄ってくると少年の背後に回って、ノシッと少年の背中にしがみ付いた。
「あの……重いんだけど」
「クヲ?!!? クヲ!? クッククヲ!!?」
「え、いや、妹は良くて自分はダメなのかって? あっちは一応、化身(アバター)だから此処まで重くないし……」
ガーンとショックを受けた様子でマヲンが背中から降りるとキッと少年を睨み付け。
「クヲヲヲヲ~~~~ッ!!?」
何やら叫びながらクラウゼンと連結される方陣の中へと飛び込んでいった。
「あの……イクス。何て言ってたの?」
「えっと、妹に習って来るって……」
「今度は白猫さんが増えるの?」
「いや、二匹同時に頭の上はさすがに……」
今後、自分の頭部を占領しようとする二つの勢力が骨肉の争いを始める事となるのを予感しながら、少年は顔を僅かに引き攣らせた。
「あ、お帰りなさいませ。ご主人様」
物音を聞き付けてやってきたのはゆったりとした若草色のドレスを着た美女。
今やハルトゥムの館の管理を一手に引き受けている超乳の持ち主。
オーレムだった。
五年前、助けてから館で紫髪のメイド。
ディアコノス達によって汚染から少しずつ回復してきた彼女は過去の記憶こそ戻っていなかったが、すっかりと健やかな笑みを浮かべられるようになった。
スススッと傍まで寄ってきた柔らかな金髪美人がムニュゥッと横乳を押し付けつつ、少年の鞄を取って、ソファーに導く様子に少しムッとした璃紗だったが、此処で自分の仕事だと不機嫌になっては大人気ないと近頃成長した心根のまま気持ちを落ち着けた。
パチンとオーレムの指が弾かれると館の奥。
台所の方から紅茶のポットとお茶請けが入ったカートが一人手にやってくる。
「今、お入れしますね」
「うん。ありがとう。それでなんだけど……皆はどうしてる?」
「あ、はい。紅亜さんはアルヴァス側との折衝の為、中央行政区の方に。烙南さんはエフィリムさん、エーネちゃんと一緒に天蓋蒼星(メイズ)に出向いてます」
「そっか。イフィミスラとナーリャは?」
「あ、お二人なら―――」
オーレムが話し始めようとした時。
奥からタタタッと軽い足音が響いてきて、まるで跳ぶような勢いで黒い長耳、ダークエルフの少女が少年の胸に飛び込んでくる。
「お帰りなさい!!」
「ただいま。ナーリャ」
「♪」
ナーリヤ・ナーシム・エルトロイカ。
その姿にまだ慣れない様子で璃紗がソワソワした様子となる。
霧の一件で化け物達の親玉である外なる髪は少女の姿を取っていた。
それを思えば、それに何か咎めるような言葉を掛けられるものではない。
「あ、リーシャ。お帰りなさい」
しかし、それも杞憂か。
ナーリヤは少年から離れて横に立っている璃紗を抱き締めるとそのまま案外強い力で抱き抱え、ソファーの上に座ると撫で繰り回し始めた。
「あ、いや、ちょっと、そ、それは止め」
「ナーリヤ。おねいさんだから。ふふ♪」
事件後、色々とようやく戻ってきたナーリヤは五年間ずっと外なる神々に魂を占有されていた事から、様々な情報を得ていた。
それを安全にゆっくりと引き出すのはこの数ヶ月間での聖王同盟が抱えた課題の一つだったが、それも順調にいっている。
大陸中央で言う精神療法(カウンセリング)のような事を親身になってイフィミスラを初めとした面々が行ったおかげで今は前のように天真爛漫な様子へと戻っていた。
「じゃあ、二人は今日よろしくね?」
「あ、うん……イクス……そのあ、後で……夕食が終わったらお部屋で待ってるから」
「うん♪」
二人の頭を撫でて、紅茶を飲み干した少年はお菓子を二人の前で分けて、その足で館の奥へと向った。
その後ろ姿を見送った三人が再び紅茶に視線を戻す。
「イクス。嬉しそう……」
「少し、申しわけなさそう……」
璃紗が呟き。
ナーリヤがそう応じた。
「ですが、それも彼女達が選んだ事ですから」
オーレムが静かに紅茶を啜ってから、そっと窓際を見る。
夕暮れ時の陽光は既に紫雲へと落ち。
宵がそろそろ始まる。
「ご主人様もどうすればいいのかまだ分からないのかもしれません。あ……」
「?」
何かに気付いたオーレムの様子に璃紗が首を傾げる。
「たぶん、イフィミスラさんはあのお二人のところに……」
三人が洋光(ランプ)を灯して夕食の準備を始めたのはそれから数分後。
今日は少し遅めになりそうだと彼女達は時間の掛かる煮込み料理に挑戦する事とした。