第三章百二十三節「取り戻した日常Ⅲ」
優しい音色が流れていた。
煌く銀の流砂を奏でるような、物悲しい響き。
穏やかな黄昏時を思わせる穏やかな響き。
過ぎていく時間を感じさせるような旋律が終えられると。
ゆっくり、その薄暗い店内に喧騒が戻ってくる。
食事する者の笑い声。
話が尽きる事の無いカウンターではバーテンがカクテルを注いでいる。
こんな店が出来たのはつい最近。
亜人と言えば、気性が荒い事も多く、騒がしいイメージがあるものだが、今現在のアルヴァスには幾つもの困難と苦難を乗り越えた先に安らぎや穏やかなさを求める機運もまた存在する。
次の曲が奏で始められる最中。
コース料理を平らげた少年は対面に座る少女がグラスから水を飲み干す様子を眺めていた。
今日はお祝い。
二人切り静かな場所でゆっくりしたいと言われ、少年がエンシェンに予約してもらった場所こそがその真新しいダイニングバーだった。
新規開店とはいえ。
使われた木材は亜人貴族の館の廃材を利用しているらしく。
飴色の落ち着いた代物で店内の雰囲気は少し気だるげで心地良い。
今も復興が続く亜人の国は娯楽に浸っている場合ではないという状況ではあったが、だからと言って娯楽が無くては人々の活気も出ない。
亜人貴族は楽器も嗜むのが普通な為、館や資産を粗方無くした者達は今日の食い扶持と家の再建の為、各地で演奏家として働いているとか。
「……イクスさん。今日はありがとうございました」
薄く紅の引かれた唇を笑ませて。
ハイダル・エス・トリアがいつもとは違う。
何処か大人びた雰囲気で少年を見つめる。
その薄化粧の細面。
耳に飾る小さな菱形水晶のイヤリング。
制服を女の子らしく何処か愛嬌のあるバッジや飾りで改造している姿からは想像出来ない薄桃色のワンピース姿。
袖は無く。
大胆に首筋から背中を見せる代物は何処で設えてきたのか。
一年前からは想像も付かない美しい“女性”へと変貌した彼女に少年は首を横へ降る。
「今日が終わるまではその感謝、受け取れない……かな」
「そうなんですか?」
「だって、エストリアを連れて行きたい場所がまだあるから」
「分かりました。じゃあ、連れて行って下さい」
「うん。じゃあ、出ようか?」
「はい♪」
今日は制服ではなく。
若い貴族風の着崩したタキシード。
席を立ち。
背後からストールを羽織らせて。
少年はエストリアの手を引いて店を出た。
傾斜の大通りは元々が首都南部の赤線街に近い場所だ。
周囲には大衆向けのレストランが軒を連ねており、今日も土木工事を終わらせた亜人達で賑わっている。
街路は明るく。
ゆっくりと歩いていけば、道を見失う事も無い。
「………」
腕を組んで、寄り掛かるようにして少女が歩く。
履き慣れない真珠色のヒールなのだから、しょうがないだろう。
傍目から見れば、幸せそうな亜人貴族の恋人。
ただ、それが目撃されたのも少しの時間の間だけだった。
店から少し行った路地裏に自動馬車が止められており、その前にはもう店を出たのを確認したのだろう人間の栗色の長髪をしたメイドが一人待っていた。
「お帰りなさいませ。では、当初の予定通り、月兎亭へと向かいます」
「ありがとう。フェルミ」
「いえ、これが仕事ですから」
雀斑を浮かべた十代程の少女。
フェルミとエストリアに呼ばれたのは彼女の周辺を世話する事となったお付だ。
数ヶ月前。
少年が別人格となった際。
月兎亭に預けられた数人の女性達。
人間奴隷として買われてきた彼女達はアルヴァスの一連の事件に関与した少女達が身重となった今、諸々の家事や炊事を手伝ってくれるメイドとして働いている。
恋人のように寄り添った二人が後部の座席に納まったのを確認して、フェルミが馬車を出す。
一人手に動くソレが道を走り始めて数分後。
遠目にも分かる大きな屋敷が近付いてくる。
月兎亭。
アンサルの家が保有する娼館。
その正門が開いて内部に馬車が引き入れられ、玄関先で止まる。
既に待っていた女給姿の少女達は二人が降りてくるのと同時に頭を下げた。
「ありがとう」
少年の声に僅かな笑みが零される。
扉を潜った先。
女達のまとめ役である人魚の亜人。
ベルンが待っていた。
「数日ぶりですね。イクス様」
「あ、はい。今日はよろしくお願いします」
「全て抜かりなく取り揃えてあります。案内致しますので。璃紗」
「はい……」
嘗ての上司の後ろからオズオズと出てきたのは本日、少年の傍から離れて夜の準備をしていた奏璃紗だった。
「イクス。エストリアさん。今日は愉しんでいってね」
「あ、はい。ありがとうございます。璃紗ちゃん」
エストリアが少年の世話係りの頭を撫でる。
すると、僅かに嬉しそうな表情で少女が擽ったそうな顔をして、視線をその自分の頭を撫でる相手の腹部に注いだ。
「もうすぐ、なんだよね」
「はい。お医者さんとアルゥさんの見立ててでは二週間後にはって」
エストリアの腹部は大きく膨れている。
マタニティー用のドレスは臨月に近付いた彼女の魅力を大人びたものとして際立たせていた。
「……璃紗もその頃にはって言われてるから……もしかしたら、誕生日同じになっちゃうかも……」
悪戯っぽい笑み。
少年がそうしたら誕生日はみんなで祝おうと言い出して、辺りには和やかな空気が広がった。
「璃紗」
「あ、いけない。はい……今、ご案内致します」
ベルンに促された少女はいつもの女給姿。
けれども、小さな彼女もまた膨れた腹部を抱えて二人を先導する。
歩いて二分もした頃。
館の奥。
桃色の扉を少年とエストリアは潜る。
「じゃあ、また明日……」
扉を閉める自分の女給の祝福するような笑みに少年は頬を掻いた。
少し気恥ずかしかったのだ。
靴を脱いで入る室内にはキングサイズくらいもあるだろう天蓋付きの寝台。
シルクのシーツが掛けられた其処こそが二人の逢瀬の場所だ。
横には大きなカートが置かれており、白布が被せられている。
「イクスさん……」
寝台へ先に上がったのはエストリアだった。
いつもよりも潤んだ瞳。
少しだけ上気した頬と僅かに汗ばんだ手が少女の期待を少年に教えている。
二人で寝台に腰掛ければ、そっと柔らかな身体が寄せられ。
瞳が閉じられる。
それだけでも十分に幸せだと。
まるで何を語らずとも肩は雄弁に少女の幸せな様子を伝えていた。
「知ってますか……」
呟いたエストリアが少年を見上げる。
「?」
「……アルヴァスの平均出産年齢って十代後半なんですよ」
「そう、なんだ……」
「はい。だから、これで私もアルヴァスの普通の女の子です」
いつも学校では一人だった少女のそれは少しだけ寂しい告白。
自分の家が普通ではない事を知っていて、自分もまた普通には見られないと分かっていた。
だから、洒落っ気だけは出して制服を改造し、これは自分の個性だと主張しようとした。
その呟きはそんな少女のようやく手に入れた“普通の幸せ”なのかもしれず。
「イクスさんと出会ってから、まだ一年とちょっとだなんて……信じられませんよね」
「そう?」
「そうですよ。大陸中央じゃ、出会って数ヶ月で結婚する人もいるそうですけれど、何年も付き合って婚姻を結んでから出産するのが通例ですから」
「そっちの方が良かった?」
少年の問いに少しだけエストリアが頬を膨らませた。
「手を出したイクスさんがそれを言うんですか?」
「ごめん……」
「ふふ、許しません。イクスさんが悪いんですよ? 私をこんなに幸せにして……イクスさんと出会ってから沢山の事が変わりました。お昼を食べる友人や仲間が出来た事。兄さんや母さんと分かり合えた事。お父さんが残してくれた今を生きている事。何もかも……イクスさんとの出会いがくれた宝物です」
「それを言うなら、僕もエストリアと出会ってから沢山のものを得たと思うけど」
「そうですね。璃紗さんを侍らせて、ウルさんに惚れられて、シルルゥさんが実の娘で、エンシェンさんに恋されて、アルゥさんと実は子供が出来てて……その上、ハルトゥムであんなに綺麗な子達に囲まれて……酷い人ですよね。イクスさんは」
「ぅ……何も言い返せない、です」
少年が弱った様子で困った笑みを浮かべる。
「その上、アルヴァスのみんなを全員孕ませて……実の娘だっているのに……本当に魔王は世間で言われてる淫魔王でした」
「一応、反論していい?」
「駄目です。イクスさんが反論したら、許しちゃいますから」
「そうなの?」
少女はそっと組んでいた腕を解いて、僅かに呪を紡ぐ。
軽い魔術が発動し、シュルシュルとドレスを留めていた紐が解かれ。
上半身が露となる。
僅かに膨れた乳房は色や形こそ殆ど変わらなかったが、薄っすらと先端をしこり勃たせて、薄い白色の液体を滲ませていた。
その上、乳首は仄かに室内の明かりを照り返す魔力の針が貫いており、肉体こそ傷付けていなかったが、U字型の金色の乳飾(ちちかざり)を留めている。
下腹部の曲線はしっかりと妊娠している様子で僅かに臍の盛り上がった場所に同じものが付けられていた。
少女は眉の八の字にして甘く歪んだ顔を切なそうにしながら少年へ己の痴態を曝す。
「イクスさんの魔力でずっとずっと乳首もお臍もクイクイって引っ張られて、何度も何度も嬉しかったのに軽く達して……私、いけない子になっちゃいました。イクスさんが悪いんです。私の玩具は全部イクスさんが動く度に何処でも関係なく動くんですよ? 学校でも、ご飯を食べてる時も……誰かと遊んでる時も……片時もイクスさんの事を忘れられない身体にされちゃったんですよ?」
少年の指を取って、自分の乳房にフニュリと押し当てて、少女は背筋を震わせながら、甘い吐息を零した。
「下着も付けないで、魔術で誤魔化して、こんなドレスを着てても、イクスさんがナイフやフォークを動かす度に……蕩けるくらい気持ちよくて……膣内(なか)もお乳もグチュグチュに濡れて……」
少年の指が優しく乳首の先の飾りを引いて、少しだけ捻る。
すると少女はビクビクと甘い嬌声を室内で零し、少し離れて向き直り、股が見えるように背筋を寝台に預けて、片手でドレスの前を摘んで持ち上げた。
開かれた先にはすじに溜まった蜜がドロドロとドレスを濡らしながら滴っている。
小さな真珠色の淫核(クリトリス)は包皮も無く。
やはり、乳や臍と同じ飾りで貫かれていて、僅かに蜜で塗れて室内の明かりを照り返していた。
「おまんこが歩くだけで疼いて……気持ち良くて……女の子が一番気持ちよくなれるところをずっと捏ねられて……これじゃ、いけない本にある魔王の娼婦そのものです……っ♡」
コクリと唾を飲み込んだ少年を誘うように妖しく。
牝の笑みで少女は少年におねだりをする。
「イクスさん……この子と一緒に……孕んで大きくなったお腹……お乳もお臍もおまんこもみんな……イクスさんのおちんちんで犯していいんですよ? 全部、イクスさんのものです……イクスさんだけの……だから、一杯……私をいけない玩具にして、遊んで下さい♡」
淫欲に染まり切った少女のはしたなく淫らな誘いに否が在ろうはずも無い。
少年が少女の唇に優しく口付けする。
それにようやくしてもらえたと背筋を震わせて、ハイダル・エス・トリアは満足の吐息を零した。
それと同時に寝台横にあった白布を被せられていたカートが二人の横までやってくる。
ファサリと床に覆いが落ちれば、そこにあるのは大人の玩具ばかりだ。
種類は沢山のものが揃えられている。
しかし、一貫して分かるのは男根の形をしたものは一つも無いという事だろう。
「璃紗さんに用意してもらったんです♪」
行く場所を秘密にしてはいたが、それでも実はバレバレだったらしい。
それでも楽しみにしていてくれたのだろうと少年は僅かに頬を掻いた。
「イクスさん……私と玩具遊び……夜のオママゴトしてくれますよ、ね?」
「ッ」
まだ全体的に年齢よりも幾分幼く見えるエストリアの娼婦よりも妖艶な孕んだ様子。
それに衣服を脱いだ少年は何も言わずに応える。
そっと手に取られたのはとろみのある透明な人肌くらいの温度がある薬液に付けられていた砂時計型の白磁製プラグだった。
中央が括れており、滑らかな質感で片方の底には指で引ける程の大きさの金の輪が付けられている。
「ぁぅ……どうぞ……♡」
恥ずかしげにそれを見つめながら広げた股の下、尻穴を突き出すようにして腰を浮かせた少女が期待にフルフルとその二つの桃色の果実を震わせていた。
「うん」
少年がまず片方の少し丸みを帯びた円錐のような先端を少女の穴に押し付ける。
「ひぁぁ、んっ、くぅんっ♡」
それだけで背筋を奔った快楽に甘い声が上がる。
「ぁ、ぁ、ん、入ってぇ……♡ 私のお尻広がっちゃいますよぉ♡ イクスさぁん♡」
尻穴は快楽に緩み。
その少年の幹よりも太いだろうソレを飲み込んだ。
グヂュ、ドゥルン。
「っっ♡♡ 入りましたぁ♡」
少女が嬉しそうに汗ばんで塗れる身体を震わせ、何度も自分の尻穴を広げるプラグの感触に軽く達していた。
その証拠にもう膣内(なか)はグチュグチュと蜜溜りとなって、少年を待ち侘びている。
桃尻の中央に埋め込まれ、穴を完全に覆い隠した白磁と金の輪は妖しくすじから零れた蜜で照り輝き、本来の目的の通り、使用者の快楽を高め。
その内部に書き込まれた性魔術の方陣を起動させて、穴の内部に這う快楽神経を活性化し、より太くしながら、少女の腸内部の形を変えていく。
本来排便と栄養の吸収の為に使われるべき器官だが、少女が自分の身体を少年の為に玩具を使い出した頃から、特に下腹部は快楽に関連して変化している。
先日までは臍の中央に白磁と魔術で出来た肉の槍。
快楽神経を子宮から膣から下半身全体に行き渡らせ、少年との行為の度に牝として最適化される魔術具が埋まっていたが、終に限界まで快楽神経を拡張したおかげで、白磁の部分がいらなくなったのだ。
妊娠したまま淫らな身体になっていく度。
少年との交尾は淫猥な快楽を少女に与えてきたが、今や少年に玩具で遊んでもらうのが、彼女にとっては何よりも夜の愉しみとなっている。
乳房、臍、淫核、全て少年に飾りを付けてもらったのだ。
そして、尻穴も少年の手によって塞がれ、完全に飾り付けられたエストリアは淫欲の赴くまま。
少年に呟く。
「もう我慢出来ません♡ イクスさん♡ 私のおまんこにぃ♡ イクスさんの形を覚えちゃったいけない牝穴で交尾して下さい♡ イクスさんの太くて大きいおちんちんでこの子と一緒に可愛がって下さい♡ お願いします♡♡」
何も言わずにコクリと頷いて。
張り詰めた幹の先端が蜜を零しながら、少年が亀頭をもうドロドロに蕩けたすじの中央に当て、一気にその内部へと押し込んだ。
ズニュグルウゥゥゥゥゥゥゥ―――。
「ぁ、ぁ、んぁぁぁ♡♡ こ、んなぁぁ……♡」
カクカクと腰を震わせて、エストリアが蕩けた顔で背筋を焼く快楽にペタンと寝台に尻を落とした。
「もぉ、もぉ気持ちよくなっちゃいましたぁ♡♡ ぁ、ぁっ♡ んぅぅうう♡♡ イクスさんのおちんちんが私のおまんこ広げてぇ♡ ひだひだが押し潰されちゃってますよぉ♡ お尻のおもちゃもぐちゅぐちゅってぇぇ……♡♡」
少年の太い幹が肉の壁を抉るようにプラグと戯れ。
少女の膣内(なか)は張り巡らされた神経の網を圧迫されて、一際甘美な衝撃を背筋へ駆け上らせる。
「ぁ~~~♡ ひぅ♡ くぅん……♡ どうしてぇ……どうしていつもみたいに一番奥に押し込んでくれないんですかぁ♡♡ イクスさぁん♡ いつもみたいにぃ♡ わらひのあかちゃんのおへやにぃ♡ こんこんてしてくらひゃぃ♡」
孕んでからも少年とピッタリとくっ付くようにして、子宮口で繋がるのが普通で……今もそれを待ち侘びていた少女が一歩手前で止まった亀頭の感触に内部を蠢かせる。
すぐにでも一番奥に押し込めば、それだけで少年は征服感と快楽を得る事が出来て、少女は達しながら何度も膣を絞り上げて、射精をねだるだろう。
しかし、少年がそっとエストリアの耳元で囁く。
「せっかくだし、まずこれで遊ぼう?」
ゆっくりと少年の右手の指が動く。
すると、クニィっと乳房の輪が上に引っ張られ、僅か左右に捻られる。
「ひぁぁっ、そんなぁぁ♡」
お預けされた犬のように少年を一番奥に焦がれる少女が身悶えする。
「沢山してから、最後にいつもみたいに……ね?」
「~~~はぃ。イクスさんのおもちゃにして……ください♡」
少年の両手がエストリアの両胸を揉みしだく。
しかし、同時に乳首の輪が上向きで見えない糸にでも操られているかのようにクニクニと左右に優しく捻られた。
一人の男が与えるには難しい快楽。
それだけではない。
臍、淫核の飾りもまた同じように引っ張られたり、捻られたりしている。
その上、少年の幹は一番奥へと押し込まない代わりに少女の腹側の壁際の襞をそそり勃ちながらコリコリと傘の縁で押し潰しながら前後に掻いた。
「―――?!!」
性感帯を幾つも同時に攻め立てられて、エストリアが声にならない様子で全身を硬直させる。
プチュアァアッと大きく幹に押し広げられたすじからは潮が吹き。
唾液を零しながら、身体が強張りの解けた瞬間に震え出す。
「こ、んなぁ……♡ おかひくぅ♡ おかひくなっひゃいまひゅよぉ♡ ぁ゛~~~っ♡♡ ぁ、ぁ、あっ♡ ひくぅぅ……♡♡」
蕩け崩れた牝の顔で涙を零しながら上を見つめる少女はシーツに爪を立てて、少年が与えてくる快楽に身体が燃えるような感覚を味わう。
(こんなの知ったらぁ♡ また、あかちゃん欲しくなっちゃいます……イクスさんのあかちゃん……もうお腹にいるのにぃ♡ この子を産んだらお母さんみたいな学者になる勉強始めようと思ってたのにぃ♡ ふっ、んくぅ♡♡)
人生設計も狂う少年の優しい蹂躙に歓喜する身体と心を押さえられず。
明滅する視界の中で少女は少年の横で二人の赤子を子育てしながら、勉強する自分の姿を幻視した。
その腹もまた大きくなっている。
それもいいかと。
それでもいいかと。
大変かもしれないが、大丈夫な気もして。
ハイダル・エス・トリアは恍惚と何度も達しても尚高まっていく快楽に浸りながら、少年を甘く甘く見つめて呟く。
「だいすきれすからね♡ いくすさん♡ これからもいっぱい……あかちゃんはらませて……わたしのこと、かわいがってくらさいね♡」
「っ、エストリアっ」
「ぁ♡ ひぅぅぅ♡♡」
そう快楽に蕩けた顔で、自分の子種で孕んだ胎を揺らして、言われて……嬉しくない男などいない。
また熱心に少年は胸を揉みしだきながら、少女の唾液と涙に塗れた顔に口付けした。
「いくすさぁん♡ いくすさぁん♡ っっっ♡♡」
達し続けていたエストリアがそろそろ限界だと少年が悟るように。
エストリアもまた自分の奥で膨らみ、熱い杭のようになった幹の震えから少年が限界だと理解する。
ゴヂュ、ゴヂュ、ゴヂュ、ゴヂュ、グヂュ、ヂュグ、ヂュゴ、ヂュゴ―――。
高まるまま。
胎には気遣いながらも腰を速めた少年が終に少女の一番奥、子宮口へ亀頭を押し込めば、それをもう準備が出来て待ち構えていた肉の扉は周囲の襞を全体的に吸い付かせて、根元から先端に搾り出すように蠢いた。
ビュグルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ。
今まで溜め込まれていた熱を吐き出すようにゼリー状の子種が子宮口と周囲を焼き、内部の襞の隅々まで満たしていく。
「ぁ゛~~~~~~~っ♡♡♡」
達して言葉も儘ならず。
声を上げて、少年に幸せそうにしがみ付いたエストリアの耳に少年のゆっくりと熱を吐き出すような呟きが零される。
「可愛いよ……ハイダル……この子を産んでもまた僕の赤ちゃん孕んで……一緒に育てよう、ね?」
「ッ~~~~」
胸に込み上げるもの。
それが幸せなのだと少女は腹部にそっと両手を当て、コクリとただ頷いた。
そのまま体力の限界に達した少年は一つになりながら甘く少女と身体を触り合い。
幹が自然に抜けるまで少女の身体に口付けの雨を降らせた。
その後、まだ試していない玩具がエストリアの身体に優しく使われる事となる。
そして、声は扉の前で全てが終わった後の後始末をする為に控えていた璃紗の耳に届いた。
廊下まで掃除させるなんて、と思いながらも……少年の幼い侍従は羨ましいくらい仲の良い二人の声にそっと股間へと手を伸ばし始めたのだった。
*
コツコツと音がする。
廊下の先。
庭へと出た常時寝巻き姿な聖女。
気だるい雰囲気を漂わせる自堕落なる彼女。
メルフ・グラネッタはイソイソと夜の涼やかな風に当たり、近くのベンチで横になった。
「………」
監視はされているのだろうが、基本的には館内部でなら出歩き自由。
部屋に長時間戻らないという事が無ければ、七教会に発見もされない。
そんな状態でもう数ヶ月。
変わらず眠たそうな瞳で館内をウロウロする彼女の活動時間は日に四時間くらいだ。
猫より寝ていると評判だった聖女様は本日もその例に漏れず。
夜の睡眠本番に向けて、軽いお|夜寝(よるね)に来ていた。
そのあまりの眠り姫ぶりに館内の殆どの少女達は呆れていたが、相手の内情が何となく理解出来た者は監視こそすれ、文句の一つも言ってはいない。
「……何か用?」
瞳を閉じたまま言われたのはベンチの横にやってきた褐色の肌に菫色の片目を耀かせる皇帝陛下。
エト・エイラル・エイム・イグニシアクルシスその人。
「ほう? 何故、余が貴女に用があると思うのか。メルフ・グラネッタ」
「メルフの傍に態々やってくる理由。他に無いだろうし」
「この数ヶ月、殆ど活動もせず。あの刃の使い手のように己を封じるでもなく。何をしているのかと思えば、夢を見てばかり……それが奇跡の副作用か?」
「………」
「同化する奇跡。使い方によっては最強の矛にして盾。不意打ちならば、他の聖女すら圧倒出来るだろう汎用性と応用性、効果範囲の広さ。だが、随分と危険な代償を伴うようだ」
「そうだとしたら、何か関係ある?」
「他の事象と自己の現象から来る精神の混濁と崩壊……眠るのは自我の補強と自己同一性の確認の為であろう? 魔術でやろうにも精神に対する外部からの術式的なアプローチは防衛本能なのか全て干渉を同化して消滅させる。残った手段は自分で夢を見て記憶を整理し、自己存在の再確認を行い続ける事。憐れとは言うまいが、休みたくならないのか?」
「別に……昔からずっとだから……もう慣れた……」
メルフが静かに溜息を吐く。
「……魔王の双子……お前はあいつによく似ている」
瞳が開かれて、自分の視線の入るよう移動した外套姿の皇帝を睨む。
「どういう事?」
「あいつも同じだ。今は眠れているようだが、出会った頃は本当の意味で眠ってはいなかった」
「………そう」
しかし、すぐ視線が気まずそうに反らされた。
「何故、あいつに眠っている姿しか見せない。余の魔王様はそれで毎日のように時間を無駄にしている。お前が起きて来ないとそれだけ他の者達との時間が削られる。何かを話したり、共に笑い合っているのならまだしも。お前の傍でただ幸せそうに時間を過ごしているだけのあいつを見ているとな……何かしてやりたいと思うのだ」
「……メルフは……」
その先の言葉を何一つ用意出来なかった聖女は沈黙する以外なかった。
「起きていろとは言わない。ただ、あいつともう少しでいい。話をしてやれ……これはあいつに惚れた一人の女としての忠告だ。これからも穏やかな時間が続かないのはお前とて分かっているだろう?」
「……忠告、受け取っておくね……」
「話はこれだけだ。余は忙しいのでな。失礼する」
「……ありがとう」
その感謝に振り向きもせず。
エトが庭から屋内へと戻っていく。
「………はぁ」
メルフは溜息がちに空を見上げた。
その苦労人のソレが少年と瓜二つだとも知らずに。
「どうしてるかな……みんな……」
今も蒼き天蓋の星は耀き続けている。
しかし、その周囲にはまるで輪のようなものが見えており、その周囲から赤い筋が流れ星のように空へと流れていた。
数ヶ月前の外なる神々との戦いで火星が崩壊し、本星と月の周囲にあるラグランジュポイントで浮遊しているのだ。
現在、それを七教会があの手この手で焼却処分したり、誘導して星系外に飛ばして対処中。
普段は大陸の空一面に掛けられたフィルターで映像が改変されているが、実際には巨大な星の残骸が空のあちこちに浮遊しているという大変危険な状態が数か月前から続いていた。
月と本星の中間にある天蓋蒼星(メイズ)が大規模な重力場を形成しており、周囲に大部分の大きな破片を引きつけていたが、それとて絶対ではない。
残骸が地表に落ちれば、即座に人類消滅というレベルの岩塊を頭上にして、今も大陸は安穏とした空気の中で一時の平和を謳歌しているのである。
「………はぁ」
もしも、彼女が七教会に協力していれば、火星の残骸程度、三日も絶たずに片付けているだろう。
何もせず。
何も伝えず。
裏切りにも等しく活動を停止した聖女は思い煩う事だけは己に許して、今も懸命に自分の戦争を戦い続けているだろう七教会の職員達の事を思った。
殆どの聖女の不在。
または行動不能は超越者達にならば、薄っすらと知られている程度の情報だ。
七教会が瓦解していないのは残ったミュルトと今は奇跡も使えず……殆ど活動不能になっているフルーが残した超技術の遺産が的確に運用されいてるからに他ならない。
「シンア……」
少年の声が聞きたくなって、微かに奇跡が発動する。
今も感じられる相手の近くの空間と自分の周囲の空間を同調させれば、声くらいは拾えるだろうとそうした瞬間。
「―――ぁぅ……///」
聞いてはいけない声が聞こえて、赤くなった少女はフードで目元を隠した。
夜はまだ長く。
彼女は久方ぶりに夜更かしをしたのだった。