第三章百三十二節「取り戻した日常Ω」
ある晴れた春の日の朝。
少年は隣で眠る生まれたままの姿の璃紗、エストリア、オーレムの身体を其々風呂で清めた後。
未だ眠りこけている誰もを真新しいシーツの張られた寝台へ寝かせて。
そっと制服に着替えるとその部屋を出た。
通路には朝の日差しが差し込んでおり、誰もいない。
未だ他の少女達の大半も各々がハルトゥムやゼオ家、自分の家で眠っているだろう。
通路の先。
食堂を抜けて。
靴を履いて裏口から外へ。
申し訳程度の庭に咲く草花は今や季節の到来を告げて朝露に耀きを放っている。
その先へと歩き出した少年は館から出て。
まだ、目覚めていない街へと繰り出した。
喧騒が首都を包み込むまでの僅かな時間。
小麦の焼ける匂いのする通りを抜けて、まだ学生の一人も歩いていない道を進めば。
風が身体を吹き抜けて何処かへと去っていく。
去来する日常。
白んで始まる朝。
少年は未だ人気の無い通りから世界の中心へと向かう。
王城跡地の尖塔群。
巨大な船の墓標。
今や首都の象徴となり、心機一転、新たな国旗の策定時に描き込まれた風景。
その場所に向かう足が緩やかに虚空を踏み締め。
まるで階段を昇るように少年の身体が上昇していく。
何千歩進んだか。
いつの間にか。
その姿は尖塔群の頂点にあった。
山岳部の一番上より高い場所から一望すれば、動き出す住人達の活気が伝播していく様子を見出す事が出来るだろう。
涼やかな風。
何も無い虚空。
しかし、其処には一人の竜が待っている。
「……我が国は愉しめたか。真に亜する者よ」
赤い鱗に太い手足。
都市一つを覆うかもしれない翼は翼竜というよりも巨大な骨格標本に魔力を貼り付けたようにも見える。
蜥蜴のような爬虫類よりは人型に近い。
だが、その全長で300mは下らないだろう怪獣は静かで穏やかな瞳で少年へそう訊ねた。
「ええ、国王陛下」
「ふ、ふふふ、お前にそう呼ばれる事になるとは……何と因果の面白き事よ。それと元を付けろ」
竜は笑う。
人間のように。
あるいは人間よりも人間臭く。
「【聖杯委員会(ペルスヴァル)】第4位……請来を告げし者……フヴァルガン……我が名においてお前に我が国からの退去命令を出す」
「分かりました」
「随分と素直だな」
「いつか、こういう日が来ると思ってましたから」
「この五年……実を言えば、息子に表立って何度も手を貸そうかと思っていた。だが、その必要性は無かったな……こうして国は此処にあり、こうして我が名は此処にある。破滅と救世を齎せし、最後の天よ。その働き、しかとこの目に焼き付けた……敬意を持って我が末代まで語り継ごう」
竜が次の刹那。
瞬き一つ分の内に小さな背の老人へと変貌していた。
貴族風の赤い礼服に皺枯れた肌。
その手にはジャラリと無数の紅の指輪が付いており、全てが人化の秘法の類だと少年には分かった。
「あの女が身を寄せ。お前が我が国に来るべき日を運んできた。運命とは何と皮肉だろう。嘗て、戦った間柄だというのに今は恩人なのだから」
老人の言う運命というのが人間の使う意味である事は少年にも分かった。
少なからず。
もう虚空に立つ存在は超越者ではなく。
一国の元主として話している。
「……一つ訊ねたい。あの大戦で我が名をどうして追放しなかった? それはこの今を知っていたからなのか?」
フルフルと首が横に振られる。
「未来は予測は出来ても、不確かにしか過ぎない。こんな日が来る事を僕は一つだって知りはしなかった……全てはただの偶然で……誰もが紡いできた必然……それだけです」
「ふっ、言いよる。他人(ひと)の国から最も有能な次代の血統を持っていきよってからに」
「一応、悪い魔王なもので」
「カカカカッッ!! 悪い魔族の王様か。いいだろう。何処へだろうと連れて行け。此処にいるのは単なる息子の大切なものを救ってくれた恩人。報国者に何を言う事もあるまいよ」
「……ありがとうございます」
「二つ忠告しておこう。あの銀獅子鎧の老人が動き出したぞ。お前にとって如何なる神よりも手強く。如何なる相手よりも強大で憎いであろう相手がな」
「マシア・ミクニス・アルヴィッツ……」
少年の瞳が僅かに細められる。
「それともはや【聖杯委員会(ペルスヴァル)】は奴の術中だ。これより先、あの男とお前が競り合うとすれば、未だ敵うまい。だが、お前とて今までとは違う」
「………」
「世が動き出した今。もう後戻りは出来ない。北へ向かえ。次なる分岐点、たった一つの未来(ながれ)の中へ。最善でも最良でもなく。最高を求めるがいい」
「忠告、確かに受け取りました」
「……そうか。さて、そろそろ帰るとしよう。次に会う事があれば、それは戦場かもしれんな。敵だろうと味方だろうと、容赦はしない。往け……風の如く。お前を束縛するものは何も無い」
その老人の言葉に一つだけ、そう一つだけ。
少年は訂正を加える。
「今、僕の愛する人達が僕の帰る場所です。抱き締めてくれる人がいるから、僕は何処にだって行ける……それが死や時の彼方であろうとも」
老人はそれ以上何も言わず。
本当に人間臭く。
その惚気(のろけ)話に肩を竦め。
淡い苦笑を浮かべて転移によって何処かへと去っていった。
『対象、観測不能。良かったのですか?』
虚空から紫色の影が訊ねる。
「例え、彼が敵でも、味方でも、頼もしいと思うよ」
『理解困難。対象は残存していた聖杯委員会の人材の中でも最上位に近い位置にいると推測されます。今後、敵対した場合……現在の能力では抵抗すら不可能』
「じゃあ、早めに力を取り戻さないと。推測は付いてる?」
『分離された肉体、記憶、意思の内で意思そのものから能力中核が削れています。五年前に器となった入れ物はエス・トリア嬢からの情報によれば、まだ未回収のものが残存している可能性が大きいとの事です』
「じゃあ、探しに行こっか」
『………ハルトゥムを浮上させますか?』
「みんなに話して、今日中にも……いきなりだけど、学校に休学届け出さないと」
少年の言葉に未だ何一つ。
そう何一つ主が諦めていないのだと最従者(ディアコノス)は知る。
『了解。これよりハルトゥム、ゼオ家の全員への通知を行います。内容は如何しますか?』
「ちょっと探しものに行くから、荷物を纏めてハルトゥムのラウンジに集合して欲しい、でいいかな?」
『通知しました。アルメイア・ゼオストスには?』
「せっかく腰を落ち着けられる国に来たんだから、連れて行けないよ……時々、遊びに来たりすればいいだけだろうし、待っててって……それとシルルゥの兄弟か姉妹が出来たら、しばらくこっちで暮らさないかとも……それと……」
少年が朝日を背に囁く。
「愛してる……と」
『了解しま―――』
『イ~~~ク~~~ス~~~~さ~~~んッッッ?!!?』
ゴゴゴゴゴゴッと何故か擬音が響きそうな、恨めしそうな怨嗟が少年の上に降り注ぎ。
涙目なエストリアが虚空に開いた小窓の映像の最中、ギロリと少年を睨んでいた。
「あの、どうなってるの、かな?」
少年が内心で狼狽しつつも、横の従者に訊ねれば。
『経路経由の回線が通知時に開きました』
「……そういうのは出来れば、教えて欲し―――」
『イクスさんはッ!! イクスさんはッッ!!? 面と向かって愛してるとか。そういうの割りと言わないですよね!? て言うか!? 殆ど聞いた事ありません!? なのにアルゥさんにはサラッと言っちゃうんでね!? 言っちゃうんですね!!? これは大問題ですよ!? 私にも百万回くらい言うべきです!!?』
其処に今度は別の通信が割り込んでくる。
『イクスはみんなに愛してるって言うべきだと思うの!!』
璃紗の声だ。
『イ、イクス・ゼオ!? そ、そういうのを朝からなんて!? ふ、不健全です!? も、勿論言われるべき事は言われるべきですが、まずそれは今傍にいる私達に向けられるものであって―――』
美紗が嫉妬全開で『言え!!』と圧力を掛けてくる。
『ふ、愛している、か。まったく、このエンシェンにも言うべきだな』
鬼女が寝起きの声で苦笑気味に呟き。
『イ、イクス……此処は平等に全員へ心を込めて愛していると言うべきですわよ!!』
ゼオ家でもう起き出していたのだろうウルが自分へ一番に言うべきという言外のニュアンスで期待した声を出し。
『パーパ。愛してる♡』
まだ床の中のシルルゥがムニャムニャと少年にそっと抜け駆け気味の言葉を告げた。
『さ、先を越された?! わ、私だってイクスさんの事、愛してますからね!!』
『あ、愛してるよ。イクス!!』
『愛して、います……イクス……』
『最愛の人よ。愛しているぞ。このエンシェンが』
『わ、わたくしだって愛していますわ!! 誰よりも!! イクスの事を!!!』
愛されまくりな少年はその言葉に泣きそうなくらいに顔を歪めて。
ああ、と。
思う。
『ふふ、ご主人様を愛するのは普通の事です』
いつの間にかアルヴァス側だけではなく。
ハルトゥムの方からも通信が繋がっていたらしく。
オーレムの声が笑い声と共に響く。
『だ、旦那様を愛するのは妻の務めだからな!!』
少し恥ずかしそうにしながらも紅亜が力説した。
『兄様を、烙南は愛しております』
静かに確かな声で白い少女は宣言する。
『にぃさまは』
『私達の誇りで愛しい人です』
エフィリムとエーネ。
二人の姉妹が互いに語り合い。
『ナーリヤッ。ティアの事好きッッ!! だーい好き♪』
何故か偉そうにナーリヤが大声を張り上げる。
『わ、私も主様の事をずっと愛していますから……』
ボソボソとした小声でシュレディナが囁き。
『はぁ……愛され過ぎだろう。それと朝から愛愛言っていると近所迷惑だ……ティアを愛してる事など、この場に集まる誰だとて同じであろう。我とて愛している。他の誰よりも、な』
目覚めたばかりらしいイフィミスラの声が眠そうに愚痴りつつも、最後にはしっかり捻じ込んでくる。
『遠方からの遠距離通信を傍受中。七教会の探索に掛かる恐れがあるので、文言のみをお伝えします』
何やら遠くからも声が届いているらしい。
『ティアは私にとっても……い、愛しい方です……き、君をあ、愛しています。あなたの妻であるセイリより』
無感情なディアコノスが何とも形容し難い嫉妬と牽制と羞恥に染まった伝文を伝える。
『お二人目もお伝えします。余は愛している等とは言わぬ!! 何故なら!! 余がティアに愛されている事など余の周辺では衆知の事実だからだ!! ははははは!!! さすが陛下です!! 愛するよりも愛される事を重視されるとは!!? ちょっと、朝から煩いんだけど、一体何やってんのよ。こら?! 今は余の番で―――』
「も、もういいよ?」
『はい』
ディアノコスが途中から入った雑音までも拾ったらしく。
無感情で読み上げる言葉を途中で切らせて、少年が苦笑した。
その後、何かを期待している少女達の無言の圧力に負けて。
少年は己を愛して已まぬと言ってくれる少女達に告げる。
「風みたいなんてよく言われるけど、きっと今は違う。君達が、君達がこうして僕に言ってくれるから……僕は何処にでも行ける……みんなが……君達が僕の翼だ……愛してる」
――――――。
その言葉に誰もが言葉を止めた。
息を止めた。
ディアコノスの能力は全ての映像を少女達全員、アルゥにも送っていた。
その笑みを彼女達はきっと忘れないだろう。
綻ぶような笑顔。
それが幸せなのだとすれば、眩過ぎて、朝日に涙が零れてしまうように……穏やかな一日の始まりとしては最上だろう。
それを少女達と同じく聴き、見ていた聖女達は何も言わず。
僅かに寂しげな笑みだけを浮かべて、僅かに胸の前で手を握った。
いつか失われてしまったものが戻ってきた。
しかし、それはきっともう自分達のものではない。
そう思える程度には未だ何も解決してはいない。
しかし、そうだとしてもまた、少年は愛おしく。
「(我らは我らに出来る事を。行くぞ)」
「(……うん)」
聞こえぬよう二人のみで声を共有して、聖女達はハルトゥムの館から異相に隠された神器へと出掛けて行った。
そうして、経路が閉じられる。
「帰ろっか?」
そろそろハルトゥムの館に戻ろうとした少年だったが、その上に今度は転移の燐光が降り注いだ。
「クヲン?」
「マヲ~~マゥマゥヲ~♪」
「クヲ~~クゥッククク♪」
「マヲンまでいるの?」
ズシッと子猫二匹分の体重がいきなり降って来て、少年の首を痛め付ける。
『愛しているから、寝かせて。と、お二人とも言っています』
「………首だけ魔術で固定してくれない?」
「マヲ?!」
「クヲ?!」
『お二人とも、それは揺れないから愛じゃない、との事です』
その日、少年は愛に付いて深く考えさせられる事となった。
*
―――深夜、浮遊大陸ハルトゥム魔王の館。
草木も眠る丑三つ時というにはまだまだ早い時間帯。
しかし、完全に闇へ包まれた空の下。
館の裏手に使用人数が増えたからと皇帝によって新設された露天風呂に少年はいた。
昔からそう使っていなかった館であるが、近頃は諸々の事情で少年も入り浸っている。
だから、こんなものがあったのかと驚くような設備や物品が数多く未使用の棟に眠っている事を近頃の魔王様は発掘人たる少女達から聞いて知った。
その内の幾つかが露天風呂を作る切欠となったのは珍しい話だろう。
普通の東部式のものとは違って。
ハルトゥムの露天風呂は半屋内に続いている。
そして、そのお湯の熱気と湯気の最中に一つの寝台がある。
広い湯船が開放された室内まで続き。
寝台の周囲を囲って流れているのだ。
その壁際には甘い香りのする白い花が植えられており、周囲は人を蟲惑する匂いが満ちている。
白い寝台はとある異種の身体から切り出されたもので、熱と水を吸い上げてジンワリと温かく柔らかい。
また、とても弾力に富み。
沈み込んだ身体を完全に埋まってしまいそうくらいに優しく包み込む。
その上、耐水性が抜群で腐食もせず。
水で掃除すれば、あらゆる菌の繁殖を防ぐという優れもの。
厳冬が長い北部では最高級品であろう魔術具の類。
寝台一つで家が四つ建つとも言われるソレは水生系亜人達なら羨望の的であろうし、普通に使うとしても使い心地はやはり一級品だ。
これを使う為の露天であり、新しい半開放型の屋内であった。
皇帝陛下が少年とゴニョゴニョするには調度良いからと場を整えたのである。
風呂と寝室が一繋がりの空間に置かれた場所と考えればいいだろう。
他の調度品も水気に強く腐食に強い樹木などが魔術で細工されたものばかりだ。
椅子、クローゼット、カーペットから箪笥まで。
現在、其処は一人の女の寝室となっている。
それは彼女が最もお産が近いからだ。
ウル・エイフォン・バーゲル。
銀の巻髪を垂らした超乳なる武芸術部の部長は出歩く時こそ魔術で姿を控えめにしているが、今では乳房も腹部も巨大なまでに膨れており、その高い身長も相俟って、性的に過ぎる姿態を常時発情させている獣に近しかった。
普段こそ色々と押さえられるように魔術具や薬が使われているが、ハルトゥム内ではそれもない。
同じように少年の子を孕んだ異性からすら、見ているだけで濡れてしまうと言われた彼女は深夜の待ち人の姿にパッと顔を耀かせて、まるで幼子のような無垢な笑みでナヨナヨと大きな腹部や乳房を抱えるようにして寄って来た。
「イクス……」
その姿は全裸でこそなかったが、それよりも男を誘惑するに足るものだろう。
衣服とは言えまい。
それは肌に吸い付くようにして描かれた金糸を使った絵具。
要は魔術方陣を物体に張り付かせる為の繊維質を含んだ代物を肌に塗り伸ばしたペイントだった。
衣服と同様に魔術が身体を保護しているが、その装いは性魔術の為のものであり、性器を隠すという目的は持っていない。
大きな腹部に描かれた子宮と華を組み合わせた意匠。
臀部から太ももを強調し、隠すのではなく飾りつけ、すじを蟲惑的に浮き上がらせる象形。
弾力を保ち、重力に逆らい、未だ形の良い巨大な乳房に描き出されるのは此処でも交わえると示す為に乳房に視線を吸い寄せるように描かれた曲線。
美しい。
だが、それよりも淫らに瞳を濡らし、胸の先端を乳で濡らし、すじを蕩けるような糸引く蜜で濡らし、汗で肌を濡らした牝は背骨付近から湧き出す桜色の紐。
柔らかな触手で腹部や乳房を僅かに持ち上げるようにして締め付けながら、少年に媚びた視線を向けていた。
「……来てくれて……嬉しいですわ」
銀の巻き毛が揺れて。
少年の傍まで来たウルの身体からは見る者を魅了して已まないだけの馨が立ち昇っており、白い上下の寝巻き姿の伴侶を前にして、その蟲惑的な香りは強くなっていく。
「ウル……」
「ちゅ……ふふ」
僅かばかり、少年の頬に唇を寄せて。
自分の大き過ぎる乳房を腕に押し付けつつ。
その背後から伸びた触手がゆっくりと上着も下穿きも剥いでいく。
紐解けば、もう股間からは膨れ上がった幹がそそり勃ち。
少年を先導して、ウルは己の寝台にあるこれもまた耐水性のクッションの山にそっと腰を下ろさせた。
「イクス。もうこんなにして……苦しいですわよね? は、伴侶として……慰めさせてくださいませ」
僅か口にするのも恥ずかしげに、寝台に上がった彼女が背中を凭れさせて寝台の上に足を投げ出した少年の股間へと屈み込み……やや胎を窮屈そうにさせながらも、その大き過ぎる乳房で左右から幹を挟んだ。
ムニュチュルルルルル。
その容易に形を変えて拉げながらも、幹を蕩けるような汗と肌の質感、弾力で谷間が包み込み。
大きく肥大化した乳輪と乳首が少年の手が届く所へと持ってこられる。
「っく」
ズチュズチュと始められた乳擦りの感触にさっそく幹が太くなり、まるで膣に入っているかのような感覚が全体を襲う。
先端の鈴口から蜜が零れれば、嬉しそうにウルが口を寄せて、先端を唇で啄み。
舌で愛おしそうに傘の裏をなぞり、舐め上げ。
口淫に勤しむ。
「イク、ス……ちゅ、ちゅるる、んっ♡ んく♡ ちゅず、えぅ、んっ♡ んっ♡ 凄いですわ♡ こんなに雄々しくて……わたくしの胸の中で暴れて♡ んちゅ♡ でも、可愛らしい♪ 一杯震えて♡ お漏らししていて……ふふ……」
交合(まぐわい)の中で女として磨かれたウルは今や完全に淫欲へ浸れるくらいには牝としての嫋(たおや)かさを身に付けていた。
その淫猥な行為を嬉しそうに続ける銀狐を前に両手で少年が乳輪と乳首を鷲掴みにするよう真正面から触れる。
「ぁん♡ んっ♡ わたくしの胸、お乳で濡れてぇ♡ イクス♡ いつもみたいにして? わたくしのお乳を搾りながら、乳首を弄って♡」
「うん。今してあげるから、ね?」
「ひぁぅ♡♡ ぁっ♡ ぁっ♡ ん、んぅ~~~っ♡ イクスぅ♡ わたくしのお乳一杯飲んでぇぇ♡♡」
ビュルッと少年が鷲掴みにした両手の合間から少年の身体に向けて白い母乳が勢いよく噴出す。
それが何十センチと飛んで少年の口元を濡らすようにして当たった。
手が乳輪を揉みしだくようにして乳房を捏ね上げ、指の合間が人が吸い易いくらいに肥大化した乳首を左右から摘み扱き。
その度に少年の口を胸を腹を白く甘い香りにする液体が濡らしていく。
「あぁ、わたくしのお乳ぃぃ♡ 飲んでいいのはイクスとお腹の子だけなんですのよ? ひゃぁぁぁ♡」
互いの身体を白く染めながら、何度も舌先を躍らせて、少年の亀頭を唇でしゃぶり上げ。
股間から粘着いた蜜とも潮とも付かない液体でブチュァッと糸を引かせて。
高揚するまま。
ウルは己の子宮口の絶え間ない疼きが高まり。
少年の子を孕んだ子宮すらも震えているのを感じていた。
それを象徴するようにすじの内部は粘度の高い蜜で潤み。
僅か内部に何かが侵入するだけですぐに達しそうな程、襞と襞を蠢かせていた。
膨れた淫核はもう艶々と蜜で滑り光っており、指で軽く触れられただけでも達してしまうだろう。
(イクス♡ イクス♡ わたくしのイクス♡ 早くこの子達の部屋の入り口を抉って……わたくしの牝を征服して♡ またこの子達の弟妹(きょうだい)を……っっっ♡♡)
ゾクゾクと背筋を駆け上るのは恍惚とした受胎への期待。
今までも少年と交わる毎に受精、着床を繰り返し、お腹の子は増えていたのだ。
彼女を母体として増えようとしていた水精達は魚のように卵に精子を受ける事で受精する。
だが、水中ではさすがに天敵や外界からの干渉が激しくなっていた事も相俟って、ウルの肉体は普通の人と同じく胎内で受精する仕組みだ。
しかし、個体が少なくなっていた彼らは雄の確保が難しいのみならず、妊娠中の期間も長かった。
故にウルを母体とすると決めた時。
受胎後も受精、着床出来るよう肉体の改変を施していた。
つまり、臨月であろうとも彼女は少年と交われば、その度に子を胎内に儲ける事が出来る。
要は妊娠し続ける事が可能だった。
少年とも話し合った結果。
ウルは最初の子が生まれるまでお腹の子を増やす事を決めており、今日もまた家族を受精する歓びと快楽にその背筋は震えていた。
「ぢゅるるっ♡ ん、えぁぅ♡ んっ♡ ちゅるる♡ えぅ♡ んっく、ぢゅるるるるるぅ♪」
熱心に少年へ奉仕し、己の乳を子供に与える母のように、あるいは淫猥な牝のように、乳房から搾り出される乳が先端を通過する悦びに打ち震え、ウルは早くも達し始めていた。
それは子宮から膣、淫核までも波及し、胸も尻も少年と触れ合っている場所もそうでない場所も関係なく。
過去の幾度も交わった時の記憶が反芻される事で速やかに背筋を焼いていく。
「ウル……っ」
「はぃ」
少年の僅かに苦しげな声に……奉仕する幹の震えを察しながら、先端から溢れる蜜の匂いに早くも射精を感じて、彼女はそっと己の身を引く。
少年の手が胸から引き剥がされても、未だ乳首から先は勢いを弱くしながらも白い濃密な乳が滲み出ていた。
「イクス♡ まずはこの子達にお父様の力強さが伝わるように臍(ここ)でしてあげてくださいませ♡」
うっとりとしながら、背後から湧き出した四つの触手が巨大な腹部の中心。
少年にも見えるように上向けられた臍膣を四方からゆっくりと開いて見せ付ける。
決して大きくは無い。
膣と違って入り口を開いても陰唇などは存在せず。
ただ、奥へと続く蜜が溢れる穴があるだけだ。
しかし、その奥が僅かに見え隠れすれば、膣とはまた違った形の襞が僅か翳りの中に陰影を描く。
少年はゆっくりと己のそそり勃った幹を掴んでウルへと寄り、前に差し出された腹部を左右から抱えるようにして自分の先端をそのまま臍膣(なか)に潜り込ませた。
グヂュルルルルルルルルルル!!!
「ひぁぁああぁぁぁ♡♡ 入りましたわぁ♡ やぁぁ……♡ 雄々しくてぇぇ……♡ 逞しくてぇぇ……♡ わたくしのお腹ぁ♡ 犯されるの悦んでますわぁ♡ んぁぁぁっっ、ぁんっ♡」
子を孕む毎に肉厚となってきたウルの臍膣は今や少年のふとく滾った幹が反り返ろうとするのを自分の奥へと強制する程の弾力を備え。
蜜穴の先の子宮口は雄の激しい交尾に耐え。
同時に射精を促す為に先端が食い込んだら捉えて話さない雌しべのような複数の疣状の器官が並ぶ場所へと変化していた。
一気に最奥まで達した少年の亀頭がその部分に捉えられると。
傘の部分を咥え込まれ。
「っ」
同時に裏から舐めしゃぶられるように蠢かされる。
「イクスぅ……」
「ウル。嬉しいよ」
「♡」
心の底から求められた事に対する言葉に快楽に焼ける背筋を更に歓びが駆け上がり。
銀狐は瞳を閉じて、唇を上向けていた。
少年はそのまま、自分の下にある唇に優しく吸い付き。
そのまま腰を前後に揺すり始める。
「んっ、んくぅ♡ ぁっ♡ あぁ、ちゅ、ぢゅる、んっく♡ ぇう、んく、ちゅ、れぅ、ぁっ♡ いく、ひゅぅ♡ わらくひぃのひらぁ♡ ろけひゃいまひゅわぁ♡ ひぁぁぁ♡♡」
舌と舌を絡ませ合い。
餌を求める雛のように少年の唾液を啜り飲みながら、ぼんやりとしてしまうくらいに蕩けるような心地で、ウルは犯される腹部の奥。
激しく亀頭とグチュグチュと絡み合う子宮口から奔る衝撃にブルブルと大きな腹部を波打たせていた。
幹全体を絞る襞は既に自らを貫くものと同じように熱くなっており。
少年の下半身全体が僅かに震え始めたのと同時に動きを激しくしていく。
グヂュ、グヂュ、グヂュ、ヂュグリュリュリュ。
「ウルッ、もう……っ」
「はぃ♡ はぃ♡ らひれくらひゃいまひぇ♡ ん、ぢゅりゅりゅ、っく、ぁっ、ぁっ、んぅ、ぁぁあぁぁぁあぁ♡♡」
少年の幹が前後に力強く揺すられ。
我慢出来なくなった様子でウルが甘い声で鳴き始める。
そして、一度目の精が幹を太くしながら鈴口から噴出した。
ビュグルルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ。
「ひぁあぁぁあああぁあぁぁあああああぁあぁあぁああああああぁあああっっっ!!!!」
子宮口を激しく責め苛む熱い白濁の本流が桜色に変化しながら浮かび上がる方陣の紋章の下。
胎内へと生気として還元されていく。
それはウルと少年の子達にとっては慈雨のように甘く。
ズグンズグンと僅かに拍動する子等の歓びを感じ取って、ウルが母親の顔を見せた。
ゆっくりと引き抜かれていく幹の傘に膣内を抉られていく牝の悦びに混じり、愛おしそうに腹部を撫でる様子は見るものに母というものを感じさせるに十分だろう。
ヂュポッと抜けた少年自身は未だ健在。
抜けたと同時に腹部の臍膣は白濁を僅かに零しながらも、ゆっくりと閉じられた。
「いくひゅぅ……まら、このこたちのきょうだいはらみまひたのよぉ♡」
舌を垂らしながら、蠢かせ。
嬉しそうに胎を摩るウルの様子に少年はそのまま相手の身体を優しく押し倒し。
両手で太ももを掴んで広げさせる。
「ぁ……わらくひのおまんこでまたたねちゅけひてくらひゃいまひぇぇ……」
大開となった太ももの先。
腹部に隠されていたウルの牝穴が露となる。
其処はもう既に蜜でグチャグチャに濡れており、牝の芳香を漂わせて、股を広げているにも関わらずピッタリと閉じていた。
そのすじはまるで処女の時と寸分違わない。
いや、それよりも若く幼くなっているかもしれない。
少年と交わり、生気を得て活力を得る。
淫魔の日常にも等しい日々を送ってきた者の特徴の一つだろう。
「ウル……」
期待に胸を膨らませながら、少年の声に彼女が自らの腹部で回らない指先の代わりに触手で左右からすじを割り開く。
「♡」
クチュァッと蜜を零して開かれた牝穴は陰唇が殆ど無く。
しかし、僅かに分かる程度には桜色をして、その尿道も淫核も全て曝け出していた。
他の少女達と違うのはその穴の大きさだろう。
開かれた深く蜜に沈む襞の奥まで覗けそうな親指と人差し指で作る程の大きさ。
それが一気に窄まるように収縮を繰り返して、針穴のようになる様子は内部が弾力や柔軟性と同時に伸縮性にも富む事を教える。
「するよ……」
少年が閉じた牝穴の中心にグチュリと幹の先端を押し付ける。
「~~~っっ♡♡」
それだけで心魂を融かされるような心地となったウルはゆっくりと肉を押し広げるように入ってくる少年の幹の感触に恍惚としながら、割り開かれ、征服されていく悦びに浸った。
ヂュゴ、ヂュルルルルル、ドヂュン。
「っっ」
少年が再び膣奥。
本来の子宮口へと鈴口を密着させる。
それだけで一度達していたウルは再度軽く絶頂してしまっていた。
背筋を逸らせ、喉を曝け出すようにして甘い猫のように鳴いて。
子宮口が亀頭を食み締める。
(ぁっ♡ あっ♡ わたくしぃ♡ またイクスに種付交尾されてぇ♡ ぁあ♡ またこの子達に兄弟姉妹作ってあげられるっ♡ この子達を産んだら、わたくしどうなってしまうの……っ)
少年に受精させられる度に達して牝の悦びを感じてきた。
だが、今度は産む歓びを思って、ウルの背筋がゾクゾクと震える。
もし、少年の子を孕む以上に心地良かったら、また自分から交尾をねだってしまいそうで。
グヂュッ、ドチュッ、ドチュッ、ドチュッ。
「ひう゛っ♡ あ゛っ♡ あぁ゛っ♡ あかひゃんのおへやこわれひゃ―――」
考えている合間にも少年の上から押し込むような抽挿が始まって、子宮口が何度も亀頭に押し潰される。
「いくひゅぅっ♡ ら、らめ♡ らめれひゅわっ♡ ひょんらにはげひくひたらぁぁっ♡♡」
ジュドッ、ジュゴジュゴジュゴジュゴジュゴ。
一際大きく子宮口を抉った後。
傘の部分が膣の中央より浅い場所。
ウルの腹側の壁を激しくグチュグチュと連続して擦り上げる。
「ぉ゛~~~~~っっっ♡♡♡」
それだけで脳裏を白く染め上げられて、快楽に目が眩んだまま母よりも牝としての快楽に溺れた一匹の狐は太ももを少年の腰に巻きつけるにして少年の下半身を自分の方に引き寄せる。
少年は膣の煮立つような蜜の熱さと襞と壁の絞り上げるような交尾に合わせて、たっぷりとした目の前に差し出される乳を揉みしだく。
両手の親指と人差し指が乳首を摘んで捻り絞れば、それだけで再び先程と同じように。
いや、更に粘性の高い乳蜜が噴出して、ウルの身体を染め上げる。
淫らな文様に彩られた上から更に重ねられた甘い匂いのデコレーションを少年の下が下乳からゆっくりと舐め上げて、塗り伸ばし。
最後には片方の乳首を赤子のようにコクコクと吸い上げ、飲み始めた。
「ぁあ゛~~~っっ♡♡ おちちぃぃっ♡ ぁっ♡ ひゃぁぁんっ♡ いくひゅぅっ、いくひゅぅっ♡ こうびしがらはぁっっ♡♡♡」
ヘェヘェと息を切らせながら喘ぎ。
舌を出しながら、牝の笑みで何度も軽く達して。
ウルはもう前後不覚になった様子で太ももを力なくダランとさせた。
ビクビクと震える背筋。
乳に塗れた身体。
少年が大きな腹部を引き寄せるようにして一際深く牝を服従させようと蹂躙する。
ジュドッ、ジュグリュリュリュリュリュ!!
押し込み。
そのまま、腰を左右前後に動かしながら、未だ押し潰していなかった最後の場所。
淫核をピッチリと股と股の合間に挟み潰すようにして二人の汗と蜜を刷り込み。
少年がウルの最奥でしっかりと鈴口を子宮口の入り口に押し付けた。
「ッッッ~~~~~~~~~♡♡♡」
ビュブルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!
声にならない様子で唾液を零しながら、一匹の牝として少女から女として脱皮しつつある彼女は絶頂した。
少年の全てを包み込むように抱擁して。
乳を飲まれながら、食まれながら、種付交尾されながら、膣を何度も達させられながら、子宮にドロドロに煮え滾った精を流し込まれる快楽に意識を失う。
幸せそうに緩んだ顔でビクビクと痙攣し、シャァァァァッと緩んだ股間から失禁して、同時にプシュァァッと水のように透明な潮を吹かせ。
銀の巻き毛を乱れさせているのはもう一匹の獣だった。
(なっひゃいまひたわぁぁ♡ こうびちゅうどくにぃ♡ たねちゅけこうびぃぃ♡♡ はらませこうびぃぃ♡♡ じゅせいちゅうどくなのぉ♡ ずっとぉ、いくひゅのあかひゃんおなかにいれほひぃのぉぉ……♡ ぁっ♡ あっ♡ ぁあぁぁ~~~~っっっ♡♡ まら、まらわらひのおまんこぉぉ♡ ~~~~ッッッ♡♡ まらあかひゃんれきれぇぇ♡♡ きもひいぃっっっ♡♡♡)
何度も何度も深く深く達し続けるウルの背筋からはフニフニとした触手が伸び。
少年の身体を主とくっ付けるようにして絡め合う。
「っ……そういう顔も可愛いよ。ウル……ちゅ」
「っ」
少年の胸への口付け。
あまりの嬉しさにまた膣内(なか)を蠢かせて、少年を呻かせつつ。
触手の一部が二人をそのまま持ち上げて、お湯の中へと運んでいく。
二人の蜜と精と乳が湯船に広がり、嗅いだだけで発情しそうな芳香を周囲に漂わせる。
ゆっくりと二人湯船に入って数分。
絡まり合った二人が再び共に意識を浮上させた後。
ウルは我が子を抱くように少年を抱擁して、何度も唇の雨を顔に降らせた。
ピチャピチャと舌で少年の頬を伝う汗から何から全てを舌で絡め取って。
最後には幸せそうに少年の頭部を自分の胸に埋めて枕とし、膨れた腹部で背中を僅かに摩る。
「イクス……もう少し……もう少しでこの子達とも会えますわ……」
「うん」
「……でも、貴方は行ってしまうのでしょうね。皆の子の顔を見たら、自分の為すべき事をする為に」
少年は答えず。
静かに天を見上げて、誘われる眠りに抗うように右手を空に伸ばす。
其処には天蓋蒼星(メイズ)が鎮座していた。
「そう言えば、まだ言ってなかったっけ……」
「何を?」
「みんなにいつかは教えないといけない。そう思ってたんだけどな……幸せ過ぎるって言うのも考え物かも……」
「?」
「ウル」
「はい」
「もし、僕が遠いところに行っても、この子達をよろしくね」
「貴方の伴侶にその覚悟が無いと思ってますの?」
「あはは、うん……ありがとう」
「ちなみに何処?」
「……この宇宙の果ての先よりも彼方。自分のやった事の後始末くらいはしないと」
「そう、なら……ちゃんと帰ってくると約束して」
その言葉に少年は『ああ……』と優しい相手の心遣いが胸に痛かった。
「必ず」
「約束ですわよ?」
「うん。誓って」
「いいえ、貴方を慕う全ての子らに誓って」
「え?」
少年が周囲を見やれば。
何やら全員大集合な有様で巨大な風呂場が埋まっていた。
エンシェンはやれやれと肩を竦めているし。
美紗は自分だって伴侶だと頬を膨らませているし。
エストリアはそれはまず自分に言うべきという怒り顔だし。
璃紗はちゃんと見つけると言わんばかりに魔眼でウィンクしたし。
シルメイアはパーパと一緒に行くと言わんばかりに翼を出しているし
アルメイアは仕方ない人と全てを受け入れて微笑んでいるし。
紅亜がそんな話は聞いてないと問い質したそうに睨んでいるし。
烙南はどうやって付いていきましょうかと悩んでいるし。
オーレムはいつまでもお待ちしておりますと微笑んでいるし。
エフィリムは妹にどうやって付いていこうかと相談しているし。
エーネは片手に魔導を発現させて発信機を付けようと計画しているし。
ナーリヤは行っちゃダメと涙目だし。
エトはどうせ皆で追い掛けるのだから良いであろうと何やらほくそ笑んでいるし。
エーレインは陛下が行くなら宇宙の果ての先にも付いていくとやる気満々だし。
エリザは皇帝とこの馬鹿を放っておけないあたしって……と溜息を吐いているし。
セイリは久しぶりにやってきて疲れを癒していたのに心労でプクプクと風呂に沈みそうだし。
シュレディナはお湯を溢れさせないか心配ばかりしていたせいで聞き逃しているし。
イフィミスラはそんな誰もを見てから……全部、お前が悪いというジト目で少年を見ていた。
「とりあえず、覗きはいけないと思う」
そんな彼女達を前にして正論ぶった事を言った少年がハーレムのほぼ全員に突っ込みを入れられるのは正に自業自得としか言い様が無かった。
ガヤガヤと喧しい風呂場をチラリと覗いた黒猫と白猫が二人揃って尻尾を揺ら揺ら。
館本館の屋根の上で欠伸をしつつ、喧騒が近付きつつあるハルトゥムと実家のある藩落の未来を思って、一声鳴いた。
「マ~~ヲ~~~」
「ク~~ヲ~~~」
少年の頭部が空くのは“まだかな~~”という点で内容は完全に一致する。
世界の未来は魔王の頭上に。
終焉の中心で期待を叫ぶ獣が二匹。
キラリと空を翔る星屑に願いを掛けた。
どうか隣のより早く自分に至福の時間が訪れますように。
「マヲ!?」
「クヲ?!」
その日、均衡していた月と天蓋蒼星と外なる神々の窓と本星の間で働く重力均衡が崩れ。
あわや大陸規模の大惨事が引き起こされそうになるが、それがとある姉妹の願掛け合戦に流星が大量に必要となったからであるとは誰も知らない。
深夜。
必ず願いを掛け終わるだろう長い長い星の川が空を埋め尽くし。
人々は天に言葉もなく祈りを捧げた。
今という平和な日常がいつまでも続きますように、と。
きっと、叶わない……小さな小さな大願を………。