第一章二十五節「介抱」
次に紅亜が意識を戻したのは瀟洒(しょうしゃ)なレンガ造りの館の前だった。
遺宋にも少ない。
大陸北部の百年近く前の様式。
玄関すら王宮風という名の下に真鍮と大理石に染められている。
巧みの技か。
レリーフには旧き神々の意匠。
時に魔術体系において使われもする超常の存在。
その中でも女神ばかりをあしらった扉は其処がどういうところかを考えれば不敬に過ぎ、また背徳を潜るものに覚えさせるには十分だった。
一人手に開いた扉の奥へと少年が足を踏み入れていく。
紅亜に分かったのは足音。
いつも自分の傍にあったソレが軽やかに何処か忙しなく。
「お姉様!!!」
未だ薬に支配された意識の中、それでもその声だけは確かに届いた。
「せい、らん?」
「はい!! はい!! 青嵐です!! 分かりますか!? わたしの事!!」
「ぶじ…で…よかった……」
「はい! はい!!」
何度も頷きながら、何度も喜びの涙に頬を濡らしながら、青嵐は弱々しい姉の身体を抱擁した。
少年に膝と背中を姫のように抱かれて。
今も与えられた薬によって快楽に肉体を支配されながら、それでも・・・妹に優しく抱かれる心地良さが紅亜の心に幾分か余裕を取り戻させる。
「後で少し」
「分かりました」
姉が無事だった事を、未だ穢されていなかった事を、誰よりも感じ、喜びに浸りながら、青嵐が少年の言葉に頷く。
玄関内部。
ロビーには幾つかのソファーとテーブル。
更に飴色のカウンターが一つ。
どれもこれも美しい風合いで嘗ての客層が身分の高い人間だった事を伺わせた。
娼館と言っても高級娼婦を扱う為の場所。
売春宿や阿片窟や路娼とは違う。
細々とした部分に金がふんだんに使われた痕跡は今も人を惹き付けるに足る魅力を持っていた。
「部屋に行くから」
「ぁ…せい…ら…ん……」
「大丈夫ですよ。お姉様。わたしはいつでも傍にいます。ですから、少し休める場所に」
コクンと素直に頷いて。
紅亜が再び少年の腕に深く納まった。
妹の顔が遠ざかり、見えなくなる事を不安に思わなかったのは少年のおかげだろう。
歩きながらも紅亜に話しかけ、努めて明るい彼の声こそが救いにもならない救いだった。
もう既に見られてしまった。
薬を打たれて。
全てを曝け出して。
女の欲求に抗えなくて。
はしたない恰好で男に嬲られて。
(わたし…は…もう…けがれてしまった……)
今も妹と話している時すらも股間を濡らしていた。
厚い外套に覆われていてもしっかりと男の幹はそそり立っていた。
何もかもを知られてしまった絶望。
その相手が少年であるというだけで、紅亜の心は再び失意へと呑まれていく。
「着いたよ」
また扉が勝手に開いて、少年は部屋の中へ入った。
「ティア!!」
「!?」
その声に紅亜は心の底から震える。
今の自分の姿。
それを見て欲しくないと思う人。
「いふぃ…みすら…さま……」
「紅亜殿!!」
駆け寄ってきた少女。
生きていて良かったと。
ご無事で何よりですと。
そう言いたいのに紅亜の唇はそれとは掛け離れた言葉を紡ぐ。
「み…ないで…ください…わたし…こんな…すがた……」
股間は未だいきり勃っていて。
それどころか。
脳裏に浮かんだのは浅ましい欲求で。
想像の中、最低の行為を紅亜の本能が要求する。
あの柔らかそうな唇で。
紅い舌で、細やかな指で、触れて、しゃぶって欲しいと。
(わたし…さいていだ…こんなに…こころまでけがれて…たいせつなひとに…っ)
ポロポロと溢れる涙が止まらず。
「ティ、ティア!!? 紅亜殿は何処か怪我をしたのか!?」
慌てる己の伴に少年は首を横に振り、抱いた紅亜の内心を察しながら、柔らかな寝台へそっと身体を横たえる。
「イフィミスラ。出来れば、紅亜に触らずに話しかけてあげて」
「触らずに?」
「うん。ちょっと青嵐さんと話してくるから。頼むよ」
「う、うむ。紅亜殿! 紅亜殿! もう大丈夫だからな。我がいる。ティアも青嵐も、他の者も。だから、怖くない。怖くないのだ。みんな紅亜殿の傍にいるからな!!」
寝台の横で必死に励ましながら、イフィミスラは手も握れないもどかしさを苦く思いながらも、笑顔で紅亜へ言葉を掛けていく。
しばらくはこれで大丈夫だろうと少年は部屋から踵を返した。
玄関で立ちながら待っていた青嵐にソファーを勧めた少年がその横に座る。
「まずは感謝を。たぶん、教えてくれなかったら間に合わなかったから……」
「そんな…わたしは…何も出来ませんでした。貴方がわたしを拾わなければ命も危なかったでしょう。結局、お姉様を守り切れなかったんです。わたしは……」
厳しい顔で青嵐が俯く。
「何となく事態は察しました。その…お姉様の容態はどうですか? ティアさん」
「簡潔に言うけど。ちょっと困ってる」
「困ってる、とは?」
「肉体の変化直後に大量の薬を投与されて、薬を抜く方法が限られるって事」
「やっぱりお姉様は薬を……そんなに簡単に抜けるものですか?」
「僕なら。ただ、近頃無茶な事ばっかりしてたから、中和用の薬剤とかが現物で揃えられなくて。一気に薬を全部抜く方法もあるにはあるけど……副作用の禁断症状で廃人になる可能性もあるから……」
「そんな……」
「だから、薬を正しい手順で抜きながら、紅亜の身体の反応を制御してあげなきゃいけないんだけど。えっと……」
少年が押し黙る“正しい手順”の内容を推し量って。
青嵐が何かを決めたように顔を上げた。
「ティアさん」
その瞳にある色を見て少年が口を挟もうとしたものの。
青嵐はそれを許さなかった。
「お姉様を助けてあげてください」
「僕は君が何となく察してる通り、色々と面倒な存在だよ」
やはりそれ以上を言わせず。
青嵐は真っ直ぐな視線を少年に返す。
「貴方が何処の誰で何の目的で旅をしていて、どういう力があって何に追われているか。そんなのはわたしにとってはどうでもいい事です」
「紅亜の将来が掛かっていても?」
「はい。お姉様にとっての最悪はもう過ぎました。そして、わたしの勘が確かなら貴方は女性の敵、婦女子の敵ですが、同時に味方でもあるはずです」
「買いかぶり過ぎじゃない? 僕は本質的な意味で誰かを幸せに出来るような力なんて持ってない」
そんな自嘲に青嵐はそれでも手を握って、頭を下げた。
「ティアさん。お願いです。お姉様を、どうか助けてください。わたしにはもう家も地位も金もありません。残ったのはこの身体と矜持だけ。それすら今の状況では役になんて立たない。貴方の善意を利用しているのは分かっています。貴方が断れない事も……それでもわたしは、貴方に頭を下げる事しか出来ません……」
紅亜より余程に男らしく決断も早い少女。
物事の本質を見抜く瞳。
それは少年にとっていつも敵となってきた者の視線だった。
しかし、姉の為。
己の全てを投げ打とうという青嵐の姿に少年もまた応えたいと願う。
「……顔を上げて。青嵐」
今まで向けられた事のない声。
少年の笑みも浮かべない澄んだ視線が青嵐を捉える。
言われるまま少女は顔を上げた。
「君の、命より大事な姉を僕に預ける覚悟はある?」
「さっき、お姉様の顔を見た瞬間に分かりました。きっと、貴方がいつかわたしが待っていた人なんだと。だから、わたしは貴方を信じます」
「どういう事?」
「お姉様を幸せに出来る殿方がいるとすれば、それはきっとお姉様が絶望を抱く人。女の自分を見られたくないと願う者。そういう事です」
「嫌われてるの間違いじゃない?」
「ティアさん……だから、貴方は女の敵なんです。きっと……」
その青嵐の笑みは少女ではなく強い女の笑みだった。
昔から何かと強かな女性を見てきた少年にはそれが解って。
「君が敵じゃなくて良かったよ。青嵐……」
何もかもを受け止める覚悟を決めさせた。
「誓うよ」
少年はさっきまで抱いていた紅亜の感触を思い出す。
華奢で折れてしまいそうな身体。
そして、今正に折れようとしていた心。
全てを支え切れないならば。
それ以上はきっと触れてはならないと思った少女の姿。
「紅亜を大切にする」
「当たり前です。だって、天御門紅亜はわたしの大切なお姉様なんですから」
姉の為、全てを犠牲にしてきた妹は少年にまた頭を下げた。
万感の思いを込めて。
まるで娘を送り出す母のような顔をして。
*
紅亜殿。
紅亜殿。
そう邪気の無い声が聞こえる度に身体は熱を帯びさせていった。
本当に自分が救われて良かった安堵して。
優しく微笑んでくれる自分より幼い少女。
その温かな声が、温もりを求める肌に突き刺さる度に。
きっと、自分は死んでいた方が良かったのだと。
天御門紅亜は心の底からそう思った。
穢れてしまった。
汚れてしまつた。
そして、今正に自分を慕ってくれる者に欲情する。
言い訳も出来ない体の疼きはもう限界に達しつつある。
少しでも触れられたら、きっとはしたなくおねだりをして、自分から男の象徴である幹を見せ付けて、扱きながら達してしまう。
最悪の光景。
悪夢以外の何物でもない想像。
人間はこんなにも本能には勝てないものなのかと。
己の堪え性の無い牝の部分を、紅亜は心底に嫌悪した。
(また…あんなすがたをさらす…のか。あいつに…みられたように……)
今や男の自分も女の自分も入り混じる思考。
グチャグチャに解けていく牝としての身体。
どちら自分かなんて分からない。
(あそこで…こわれていれば…よかったのに……)
その方が楽だったのではないかと。
助けてくれた少年の事を裏切るような思考すら、湧き出して。
「こ、紅亜殿!? ど、何処か痛いか? 辛いのか?」
心の底から心配してくれる声。
それが再び心を抉って。
紅亜の涙は止まらなかった。
コンコンとドアのノックの音。
そのまま入ってきた少年にイフィミスラが駆け寄っていく。
「ティア! 紅亜殿が!!」
「大丈夫だから。少なくとも身体が痛くて泣いてる訳じゃないだろうし」
「ティア!!」
咎めるような声。
「イフィミスラ。紅亜の事助けたい?」
「あ、当たり前であろう!!」
「それじゃ、少し手伝って」
「わ、分かった。何をすればいいのだ?」
「少し後ろで待ってて、ちょっと話してくるから」
少年は未だ涙を流す少女の横、椅子に腰掛ける。
「無様だね」
「?!」
思わず身体を震わせて、紅亜が目を見開く。
「ティア!!?」
背後の声には答えず。
少年は見たそのままを語る。
「男としての努力を全て君は失った」
「っ」
「天御門分家の再興は叶わず、家は取り潰され、多くを築き上げてきた学徒憲兵隊の籍も失って、身体はもう女としてしか機能しない」
「っっ!!!」
涙が溢れていく。
言われずとも誰より何より己の現状を正しく知っている。
紅亜にしてみれば、反論できるはずもない言葉。
「妹を守る事も出来ず。男としても女としても、君の血筋以外を君に求める人はいない」
「や、やめよ!!! ど、どうしてそんな!!? ティア!!!」
イフィミスラが背後から静止しようと少年の肩を掴む。
それでも少年は決して言葉を止(と)めない。
それは目の前の少女が己で受け止めなければならない事実だと知る故に。
「青嵐に聞いたよ。奴隷になると承諾したって」
「わ、たし…は!?」
「もう君は天御門ですらない。君に残ったのはその二つの性を持つ身体と紅亜の名前だけ」
「わたし……」
失望された。
目の前の少年に見捨てられた。
その衝撃が紅亜の心を焼いていく。
「それすら君は薬で変えられようとしてる」
「わたしはただ!!!」
掴み掛るように、手を伸ばして、少年を掴もうとして。
「情けない自分に嫌気が差した? 情欲に支配されてばかりの自分を殺したくなった? それとも目の前で君を助けたいと望むイフィミスラを押し倒したくなった?」
「ッッッ、私はぁあああああああああああ!!!!!」
叫びながら手が伸びて。
大きな音が鳴った。
イフィミスラの手が思い切り少年の片頬を張っていた。
「天御門紅亜!!!!」
少年は頬の痛みも無視して、目の前の存在に問う。
「君は何の為に生きてきた!!!」
「決まっているッッ!!! 私は妹をッッ!!! 天御門をッッ!!! 守りたかったッッ!!!! 守っていたかったんだッッッ!!!」
泣きじゃくりながら、涙も鼻水も垂れ流して。
一人の人間として。
少女はその問いに答える。
「なら、どうして君はこんなところでこんな顔をしてる」
「こんな、顔……」
「何もかも諦めて。自分に絶望して。早く死にたくて。悲しみに負けて。苦しいから逃げ出して。人に嫌われるのが怖くて。心の痛みに耐え切れなくて。何一つ守れないまま、朽ちる者の顔をして」
少年の手は手を取らず。
その頬を触る。
「僕は認めない。そんな事はこの世の全てが認めようと認めるつもりはない。僕が知る君は僕なんかよりずっと強い人だ。いつも誰かを支えている人だ。いつも誰かの先頭に立っている人だ。優しい顔も厳しい顔も憂いた顔も怒った顔も、全て……そう全て……僕が羨むような顔だ……」
「え……」
呆然とした少女の顔。
それに少年は心からの言葉を告げる。
「君は僕を強いと思ってるかもしれない。でも、本当の僕は今もずっと弱いまま……昔から何一つ変わってなんていない。僕は君みたいに誰かを守れなかった。諦めてばかりで絶望するしかなくて悲しい事が嫌で苦しい事から逃げ出して誰かから嫌われるのが怖くて痛みに震えてばかりで……情けない無様な自分をどうしようもなくて……」
「ティ、ア…?」
ぐしゃぐしゃな顔のまま、紅亜はその少年の頬に触れる。
「僕は君の真っ直ぐなところが好きだよ。君が料理をしていた背中も、君がイフィミスラ達に向けていた笑顔も、僕には無いものだから。僕には出来ない事だから。君みたいにしてあげられたらって思っても、それは叶わない事だから……」
「そん、な……」
少年の透明な瞳。
戦う者はその瞳に己を見る。
与えた絶望はまるで写し鏡。
人に与えられたものを返す眼光。
だから、魔王と戦う者はいつだって己に打ち勝つ者でなければ渡合う事は出来なかった。
その深淵を湛えた視線がただの人間を、もう全てを失ったはずの紅亜(おとめ)を見つめる。
「君はまだ本当に大切なものを何一つ失ってなんていない。ただ、今はそれが見えなくなってるだけで」
「わたし…は……」
「紅亜。君が迷っているなら僕が導こう。もし、悩んでいるなら知恵を貸そう。君が僕達にしてくれたように今度は僕達が君を助けよう。いや、助けさせて欲しい」
少女が見る涙に歪んだ少年の顔は更に歪み、やがて水底(みなそこ)に沈んだように朧げに融けて分からなくなっていく。
「…ぁ…わ…わたし……」
背中に手を回し、少年は少女を抱き締めた。
「イフィミスラ」
「…ん」
全てを承知して反対側からまた紅亜の身体が抱き締められる。
「泣いてもいいから、その後で笑って。紅亜は、そっちの方が可愛いよ……」
「う゛…ん…っ…ぅ…んっ…」
抱き締めるイフィミスラも薄らと涙を瞳の端に湛えながら頷いた。
闇を吹き払ったのは誰(た)が風でなく。
己が生んだ風だと紅亜は知らない。
二人の温もりに抱かれて、一人の乙女は久方ぶりに泣いた。
もう随分と流していない、それは温かな涙だった。
*
しばらくして。
渡された布で涙を顔を拭って、ようやく紅亜は落ち着きを取り戻していた。
「ぁ…ありが、とう…ティア……」
急に恥ずかしくなって。
泣いていた自分をずっと受け止めていたくれた少女が頭を下げる。
「どう? 少しは落ち着いた?」
頷いて。
紅亜は今更に感情の高ぶりで抑え込まれていた欲求が再びぶり返している事に気付いた。
「っ…く……」
「紅亜殿。大丈夫か?」
傍らのイフィミスラからの優しい気遣い。
それに心が温かくなる。
欲情してしまっている自分は情けなくとも、もう紅亜の心に壊れていればとの思いは無かった。
「だい…じょうぶ…です。イフィミスラ様」
何とかそう言うものの、時間が経てば経つ程に効能を強く示す薬が身体を欲望で埋め尽くしていく。
「イフィミスラ。紅亜は薬を打たれてて。このままだとちょっとまずい事になるんだけど」
「そ、そうなのか!? な、何で早く言わぬのだ!!? ティア!!」
「えっと、イフィミスラに手伝って欲しいって言うのは……」
再び怒り出しそうなイフィミスラの耳元に少年が耳打ちする。
「ぇ? ぁ……そ、それで…さっきあんな……」
顔を真っ赤にしたイフィミスラだったが、少年に告げられた“お手伝い”の内容も紅亜を助ける為ならばと頷いた。
「紅亜殿。辛いのか?」
「ぃぇ……」
「良いのだ。もう、ティアから聞いた。それで、な? ティアが言うには紅亜殿の症状を鎮めるには……その、えと……秘め事が一番良いと聞いた。だから、我とティアに紅亜殿を助けさせてくれまいか?」
恥ずかしそうにしながらも断固とした瞳で聞いてくるイフィミスラの顔に全てを知られてしまった事を悟り、紅亜は赤くなって否定しようとした。
しかし、イフィミスラの手が自分の手を握ったのを見て。
欲求がもう自分ですらコントロール出来なくなりつつあるのを感じて。
少年から優しく頭を撫でられて。
コクンと。
首はまるで紅亜の意思を無視するように首肯していた。
「そ、その、ティアが紅亜殿の女の部分で、我が……こ、紅亜殿の男の部分をするそうだ」
「イフィミスラ。大丈夫?」
「うむ。その…手…だけで良いのか?」
「ッッ!?」
少年とイフィミスラの会話に少年のような紅亜の若い幹が外套の中で跳ねた。
「もう紅亜が我慢出来ないみたいだから。優しくね?」
「ん、んむ。その、今度する時まで覚えておく……」
「期待して待ってるよ」
「で、では紅亜殿。脱がす、ぞ……」
ゆっくりと外套の前が外されていく。
媚薬を大量に打たれ、女の部分まで薬で弄られた身体。
もう女の秘裂も男の幹も溢れ出る蜜でドロドロに塗れていた。
「ふぁ……こ、これが、紅亜殿の…ティアとその、大きさも形が違うのだな……」
少年の形を覚えていたイフィミスラにしてみれば、紅亜のそれは少年と同じ桜色をしている以外はえらの張り方や幹の太さが違う別物に見えた。
「可愛い…のだな」
「?!」
自分の幹を見て微笑んだイフィミスラの顔にピチュルッと紅亜の鈴口から蜜が噴き出す。
「ふぁ?!」
その蜜が少し顔を寄せていたイフィミスラの顔に掛かった。
「ぁ?! すみま、せん!!」
「い、いいのだ。我の言葉で、か?」
赤面するどころではない。
本当なら土下座して謝っても足りない。
それ程に恥ずかしく申し訳ない気持ちを抱きながらも。
紅亜の本能はもう我慢出来なくなっていた。
「イフィ、ミスラ様ぁ…わ、私の…ここ…まらを…どうぞ…してください」
「ん。する、からな」
イフィミスラの細い指がゆっくり幹に触れる。
「んぁ♡ ん♡ ふ♡」
ゾクゾクと幹の感触に背筋を震わせて、紅亜が甘く理性を蕩かせた。
守りたいと思った存在に男としての部分を触らせている。
自分よりも幼い少女に触らせている。
剰(あまつさ)え、それに興奮している。
その罪悪感よりも背徳感が紅亜を素直にしていく。
「きもちいぃ♡ です♡ イフィミスラさまぁ♡」
「紅亜殿もそんな顔をするのだな。ティア。わ、我もしている時、こういう顔をしているのか?」
「うん」
「そ、即答するな馬鹿者!」
恥ずかしさに悶絶したイフィミスラの指の力が強まり。
ズルンと蜜に滑って指だけではなく手まで幹へと触れた。
「ひぁぁぁ♡♡」
ビクビクと幹が大きく震え、細い手の中で暴れる。
「紅亜殿。これが良いのか?」
蜜を溢れさせる可愛らしい大きさの幹をゆっくりと両手で優しく愛撫しながら、イフィミスラがもうだらしない顔で唾液を垂れ流している紅亜に訊ねる。
「ひ♡ きゅぅ♡ ゃぁ♡ イフィミスラさまぁ♡」
「可愛いぞ。紅亜殿…そんな顔されたら、我も、ん……」
股間をもぞもぞとさせながら、イフィミスラは擦り上げる速度を速めていく。
「っ♡ っ♡ ぁ♡ きもちいぃのぉ♡」
柔らかくて滑々とした幼い手に己の大切な場所を弄られる悦びに紅亜の腰の奥。
まだ、男の機能を完全には失っていない場所が精を吐き出そうと準備し始めた。
ジュッジュッジュッジュッジュッ。
蜜で濡れ光る幹が卑猥な音を立てて擦り上げられていく。
嘗て本家から宛がわれた女達が嘲った場所。
それを丁寧に丁寧にまるで大切なものを扱うかのようにされて。
妹にされている時よりも興奮を覚えて。
紅亜はもう我慢出来なくなる。
「いふぃみしゅらしゃまぁぁ♡♡♡ んきゅぅうううううううううううううんッッッッ♡♡♡♡」
ビュルルルルルルルル。
「ふぁ?!」
達した紅亜の幹が一瞬膨れ上がり、内部から今まで出した事もないような量の精を吐き出した。
ビチャビチャと吹き上がった精の臭いが室内に立ち込める。
紅亜に微笑みながら幹を擦り続けるイフィミスラの顔が穢れていく。
背筋に走る恐ろしい震えが紅亜の全身を弓なりにした。
もし、そのまま擦り続けられたら、狂ってしまうくらいの甘やかな衝撃。
自分から腰を振って、少女の手を道具代わりにして、紅亜はもう獣のように射精する事しか頭の中に無くなっていく。
(りゃめぇぇ♡♡ いふぃみしゅらしゃまぁ♡ おかおよごれてぇ♡ ひぁ♡ んぐ♡ くぅん♡)
何秒続いたかも分からない射精の快楽で完全に溺れた紅亜の身体がようやく射精の快楽から解放された時にはもうイフィミスラの顔も手も精に塗れていた。
「紅亜殿……満足してくれたか?」
「ふぁぃ♡ いふぃみしゅらしゃまぁ♡」
呂律も回らず。
淫らな笑みで。
息も絶え絶えに紅亜の顔は笑んだ。
「イフィミスラ。ありがとう。此処から僕がするから、隣の部屋で身体を洗って待っててくれない?」
「そ、そうか…あ、あのな。ティア」
「なに?」
「えと、その…これから、紅亜殿と…す、する、のであろう?」
「うん」
「傍にいて、見ていては……ダメか?」
「えっと、イフィミスラ?」
精に塗れた手で服の紐を解いたイフィミスラが下着を露出させる。
「紅亜殿のしていたら、我も、此処……」
薄らと絹の下着の中心が濡れていた。
少年は顔を綻ばせて、その額に口付けする。
「いいよ。それじゃ、一緒にしよう」
「う、うん……」
嬉しそうに身を寄せたイフィミスラの耳元に少年がひそひそと何事かを囁く。
「わ、分かった」
シュルシュルと服を脱ぎ捨てて寝台の端に上がった少女は今もまだ深い快楽に囚われている紅亜を見つめながら少年の行為を見守る事とした。
「紅亜」
「てぃあ?」
「薬、打たれた事覚えてる?」
己の精に身体を塗れさせた紅亜が微かに頷く。
「正しい手順で抜く場合、君の心が壊れないように、ゆっくり抜く必要があるんだけど、そうすると君の初めてを貰わないといけない」
「はじ…めて…ぁ……」
気付いた様子で紅亜の頬が今まで以上に赤く染まる。
「うん。青嵐に言われたよ。君の事を頼むって。君が嫌がっても僕は君の事を助ける。君の事を奪う。それはもう決めた事だから。これはただの確認……君は僕としたい?」
「おまえと、する?」
紅亜の脳裏には薬を打った男の言葉が残っていた。
従順になる薬とか。
一度したら、もう二度と逆らえなくなるとか。
人を支配しようとするものへの抵抗感や嫌悪しか、その言葉には感じられない。
けれど、目の前の少年にそうされるという想像をした瞬間。
(ふぁ♡ こん、な♡ どうして♡ ほとがあつくぅ♡)
紅亜のまだ誰の侵入も許していない秘部の奥。
女の器官が熱を帯びてきゅうきゅうと欲望にざわめき出した。
「……ぃ」
「?」
「おまえと…したい…てぃあ…わ、わたしのほと…おまえのまらで…して……」
「いいの?」
赤い顔が首肯した。
少年は微笑んで紅亜の耳元にそっと囁く。
「大事にするから」
「~~~~~!?」
その言葉だけで薬で蕩けていた女の部分が全て燃え上がった。
「それじゃ、行くよ」
覆い被さろうとする少年に紅亜の手が触れる。
「ぁ…その……」
「怖い?」
「はず…かしいから…うしろから…っ」
「うん。分かった」
紅亜の乙女心。
自分の男の部分を見せたくないのだろう事を察して。
少年は紅亜の身体を抱き起した。
「イフィミスラ。紅亜の下から優しくしてあげて」
少年の言葉に嬉しそうに頷いて、イフィミスラが寝台に横たわる。
その上に被せるように紅亜を俯せにさせた少年は、その腰を掴んで上げさせた。
「いふぃみすらさまぁ♡」
女としての膨らみをまだ殆ど有さない紅亜が下で自分の上半身を受け止めてくれたイフィミスラとの接触に甘い声を出す。
「紅亜殿。ちゃんと我が見守っているからな。共に気持ち良くなろうな♡」
紅亜の胸と自分の胸が互いに蕾を潰し合っている状況にイフィミスラの言葉もとても甘くなっていた。
「はぃ♡」
「紅亜…君のここ…するから、ね?」
少年の幹を尾てい骨の上に感じて紅亜の女の欲求が膨れ上がる。
薬を塗られて、今正に奪われようとしていた時以上の震えが、少年に奪われようとする悦びが、少女の胸を満たしていく。
「紅亜殿。あまり身体動かないのだろう。少し手伝うぞ」
イフィミスラの手が紅亜の尻へと延びて、左右から中央を開くように広げた。
「ひぅん♡」
くぱぁっと式神の女達に広げられた時のように紅亜の秘裂が広がる。
まだ、出来て間もない其処は中央の小さな穴から蜜を溢れさせ、男が侵入出来るとは思えない程に清らかで未成熟と少年には見えた。
「可愛いよ」
少年の細い指が穴の上を滑る。
「――――――ッッ♡♡♡」
紅亜の顔がはしたなく歪んで身体が震える。
たったそれだけの行為で達してしまったのはイフィミスラにも分かった。
「ゃぁ♡ ほとあついのぉぉ♡ ゆびぃいいのぉぉ♡♡」
「素直な子は好きだよ。紅亜」
「~~~~♡」
尻を優しく撫でられ、イフィミスラの手の感触とも相まって。
再び紅亜が達した。
全身、たぶん何処を撫でられてもそうなる。
それほどに薬はもう紅亜の理性を蕩かせ、本能を剥き出しにして、肉体を変化させていた。
「最後に確認するよ。君を僕のものにしていい?」
男のものにされる。
その今までの自分ならば悍ましいと感じていたはずの言葉を紅亜は心の底から溢れる悦びを持って、聞いていた。
最後には入れてくれと哀願して懇願して夫にするよう従順になる。
その事実を思い出して、それでも今はその相手が少年である事に喜び、震えて。
いつか男のものにされる時が来るのだろうかと。
自分の伴侶となる人に初めて言うのはどんな言葉がいいだろうかと。
他愛無い空想の中。
恥ずかしく思いながらも好きな人にだったら言ってみたいなと。
そんな風に願っていた、きっと言葉にならないはずだった思いが。
紅亜の口から紡がれる。
「わらひのぉ♡ “ほと”をつかっれほひぃれす♡ おおきな“まら”でぇ♡ つらぬいてくらひゃいまひぇぇ♡ だんなしゃまぁぁ♡♡♡」
淫らなおねだり。
自分の夫と。
自分の伴侶と。
そう認めた者にだけする交合(まぐわい)の言葉。
その宣言を紅亜の下で聞いていたイフィミスラはその淫悦に染まった顔に、自分も初めてを奪われた時、同じような顔をしていたのだろうかとすじを濡らした。
「君はこれから僕のものだよ」
ヅチュルッッ。
小さな穴に宛がわれた少年の男根、その先端から端まで全てが一撃で紅亜の奥へと突き込まれ、引き込まれ、届いて、ドチュリと紅亜の最も大切な場所、子作りする本当の穴へと埋まった。
「んぁああああああああああああああああああッッッッッ♡♡♡♡♡」
声は獣のように、甘く蕩けて、純血を失った喪失感とそれを埋めて余りある悦びに狂う。
「だんなひゃまぁぁぁぁぁぁ♡♡♡」
牝の顔で、牝の声で、牝として、夫である少年へ。
淫らに唾液を垂れ流しながら。
一人の少女は微笑んで。
自らの膣(ほと)の形を少年の幹の形に変えた。
夜の帳の中、淫らで初々しい行為が始まる。