※この作品はR-18です。

聖娼館ハルトゥム   作:Anacletus

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第一章内部に出てきたキャラクター及び用語の設定資料です。今後、少し時期を置いてから第二章へと移り変わっていく事かと思います。分厚い感じですが、これがあれば、一章の大半の事は分かるかと思います。では、第二章で。


第一章決定稿設定資料集

第一章決定稿設定資料集

 

*ネタバレ注意。

 

*性別・その他の基礎情報(プロフィール)は章毎に追加の可能性有り。

 

【キャラクター編】

 

~主人公サイド~

 

シンア・ザ・クリティカルアンラッカー♂

 

今作の主人公にして魔王。百歳は越えないが、それに近い年齢で完全な不老不死。中庸・中性的な顔立ちをした黒髪の十四歳くらいの少年。嘗て世界全体を敵に回した大戦争を生き抜いた末、七教会の追討師団に追われる事となった稀有なる存在。複数の二つ名を持ち【不幸を呼ぶ者】【因果を歪める魔王】【有限ではあるが果ての無い者】とも言われる。様々な逸話に事欠かず、ファルティオーナの有史以来唯一討伐を免れた魔王である。その正体は世間で諸説あるが、人々の間での共通認識は嘗ての魔王達の傾向と【近代化】によって齎された大衆文化である娯楽小説によって、淫乱で浮気性で触手で女と見れば見境なく襲う淫魔王というもので固まってしまっている。【紫影の従者】【蒼穹の騎士】と呼ばれる存在に守られ旅を続けているが、途中で様々な不幸を背負う少女達と出会い、場当たり的に救済しては伴としている。過去、七教会の聖女達との間に因縁があり、過去を直接知る者達からは「シンア」と呼ばれているが現在は魔術的な防護の目的などから「ティア」の名称を使用している。常に黒い外套と【永劫不刃の大業物】と呼ばれる剣を愛用するが、二つとも七聖女謹製の【高格外套】とその鉄剣の大元であるとされる。何も大した装備をしていないようで、実は非常に高度な兵装を運用しているわけだが、本人は至って平気な顔で複製品を少女達に与えたりしている。ちなみに剣は手加減の為の武器と聖女に詰られているが、それは事実で剣の腕は超一流どころの人間には敵わない。基本的に徒手空拳の方が何かと強いが、他者を殴るのにあまり向いていない(本人談)。魔王としての能力は【どのような状態からも肉体を完全に復元する力】とされているが名称は未だ出てきていない。しかし、その使い方が【肉体の限界以上の出力を常時出し続ける】というものである為、何ら魔術的な強化はされていない五感は当然そのまま・・・つまり、使用には痛覚の限界域の痛みが常時伴う。作中で多用される転移や簡易の魔術には一切自己の魔力を使用しておらず、性魔術以外の魔術に類する力は【紫影の従者】の機能に拠る。尚、復元能力の発動の際には本体から離れた血肉・髪の毛・その構成物質の一欠けらまでも淡い輝きとなって消え失せる。これは世界がその存在を許さない、世界の恒常性を保つ能力によって消されている、という推測が関係者からはされている。性格は至って平和主義者のように見えるが、容赦なく他者の腕を斬り飛ばしたり、人生観を変えるくらい脅したり残酷ともなれる。ただ、それは趣味趣向に拠る行動ではなく、ある種の達観・諦観・実利・己の理想などを総合した最善の結果を求めているだけに過ぎない。常に笑みを浮かべていて、その時々で苦笑であったり、微笑であったり、哀しそうであったりと表情の変化は比較的簡単に読める。反面、内心を相手が読む事はほぼ不可能に近く、心の内の計算を悟らせない。趣味の人間観察によって培われた洞察力は一目で相手の事を看破する。旅に関しての知識はエキスパートで気配りには抜け目が無い。実は賭け事が異常に強く、旅の資金は時折賭場で賄われている。ちなみに女性経験は相手の数が少数であるものの豊富。元奴隷という身分と性魔術の使い手である為、性知識や奴隷智識に関しては並以上。復元能力を完全に使い切る過程で自律神経の完全制御を行っている為、アレの大きさを自力調節(最大で1.3倍くらい)出来たり、射精量の増加減が出来たり、何かと高機能。どんな些細な約束でも破らない事を旨としているが、現実的な問題で不可能な場合は臨機応変に対応している。

 

ラタウト・ヴェルガナ♀

 

くすんだ色の髪をした奴隷少女。愛称はヴェル。犯罪組織【ガランス】の人員によって仲買され、本来は路娼あるいは売春宿で働かされる運命だったが、主人公との出会いから身分を開放された。元々貧しい国の寒村で暮らしていたが、北部で続いていた騒乱によって故郷を焼き払われ、そのまま奴隷に身分を落とされた。奴隷の基本的な装いである首輪や足枷を掛けられて、粗末な服を着せられていたが、少年と共に行動するようになってからはまともな服を買い与えられ、首輪や足枷も外された。典型的な村娘で両親と共に農業に従事していたが、他国の軍の徴集に際して両親とは死別。教会に避難したが、軍は構わずに教会に避難していた村人を奴隷にして奴隷商へと売り払った。少年との旅の終着点は教会と決められていた為、エルデナンド皇国において教会へ奴隷から開放して欲しいという話で引き渡された。少年にお礼だと口淫を行っていたが、やがて肉体関係を持つに至った。少年に幸せを願われた事で自らの幸福を追求する努力を己に誓い、教会に引き渡されて以降も幸せに生きる事を目標としている。尚、余談だがヴェルの故郷の教会を巻き込んだ軍はその後、その侵攻を七教会に知られ、実働部隊に降伏させられている。

 

ルヒ・サヤトネ♀

 

赤い髪を短く纏めた蒼い瞳の少女。魔王の護衛として【蒼穹の騎士】の二つ名を持つ。数十年前から少年を守る存在として仕えているが、大戦の後は七教会の撹乱を目的に旅中少年と別れ、自らの超常の力を使った工作で影から支えていた。聖女に偽装を破られた後、マロウ・ブレステンドを自らの場所へと誘導して主である少年から引き離す事に成功するものの、戦闘では敗北。首を落とされ掛けながらもマロウの記憶を奪い去る事で厄介な存在である聖女の護衛騎士を排除した。その後はマロウの傍に付いて旅を続けながら、様々な工作を通じてマロウの対魔王戦への復帰を不可能にしようと画策。その甲斐あって旅中に助けた少女にマロウを浮気させ、子供を儲けさせる事に成功している。このような回りくどい方法でマロウを排除するのは主である少年がマロウの死を望んでいない事とマロウの妻であるハティアを今も仲間として大切に想っている事から。【因痕】と呼ばれる因果の断裂を見る事ができ、それに干渉する事で様々な結果を現実に出力する能力を持つ。剣の腕は主である少年よりも高く超一流だが、それでもマロウやユアン・クオには一歩及ばないという立ち位置。主の少年曰く、綺麗だけど厳しく、時々可愛いが、素直じゃない少女である。

 

イフィミスラ・ハージェット・テトス・エルデナンド♀

 

エルデナンド皇国領の十二番目の皇女。幼くして博学を自称する程の学問好きで将来は学者になりたいというくらいに好奇心は人一倍強い少女。【大皇】の血筋を三十二分の一引いているが本人は気にしていない。一人称は我。灰金(アッシュブロンド)の髪を肩まで伸ばしていて、華奢な身体は白いというより青白く、吊り目気味。母親が血筋のみで王に嫁いでおり、同じ血を引く王族達を褪めた目で見ていた。魔王への生贄として差し出される事になって自棄だったが、魔王の正体である少年と出会い、新しい人生を模索するようになる。智識は豊富だが、生活の細々とした事には疎く、料理などの炊事は苦手。旅の中、少年と触れ合いながら関係を深めつつあった時、乂羅で大皇の血筋を強化する烙南と接触した事により、貧弱だった体内の資質が暴走、命を落とし掛ける。その際、少年との交合による使い魔契約によって肉体と魂を変質させ生き残った。契約によって主人公との間に魔術的にも因果的にも繋がりが出来て、少年の魔力の極々一部を受け入れ使用可能となる。その際に肉体全体へ付与された刻印は常に変化する代物で、見る者が見れば、様々な情報を読み取る事が出来る為、主人である少年と愛し合った回数や使用場所や気持ちまで分かってしまう。なので、現在は刻印を隠す魔術を常時使用している。

 

ナーリャ・ナーシム♀

 

【禁断蟲】に入れて売られていたダークエルフの奴隷少女。過去の記憶を喪失しており、最初はぼんやりとした様子でイフィミスラと主人公に付いていくものの、旅の中で少しずつ生気を取り戻し、最終的には天真爛漫な性格を取り戻した。嘗て襲われたダークエルフの集落では名前が微妙に違っていたり、性格が微妙に異なっていたり、黒の棺に取り込まれたダークエルフ、アーフルの妹であったりする。巫女としての能力があり、エルフ側にとっては何らかの鍵、重要な存在であったが、兄であるアーフルがもう必要ないという事を作中で発言し、その能力が何であるかは明示されていない。ディシグニア国境地帯での騒乱の際、聖女の発動した錬金の秘奥である黄金の結界【錬金果】を喰らう影を呼び出し、こっそりと聖女の心を乱して主人公の窮地を救うものの、本人に自覚はない様子で旅を続けている。お姉さんという響きが好きで年下のエフィリムに呼ばれると喜ぶ。現在はイフィミスラとエフィリムの義理の姉妹としての任に燃えている。唯一、パーティーの中で主人公と肉体関係を結んでいない。ムラムラすると愛撫をねだるだけで済ませ、交わる機会には未だ恵まれていない。

 

オーレム♀

 

少年がディシグニアの国境地帯で見つけるまで化け物に陵辱され続けていたエルフの女。アーフルと共に妹であるナーリヤを救出する旅に随伴していた過去を持つ。アーフルが黒の棺に囚われて以降、記憶や人格を大きく損ない、少年に助けられてからも記憶や元の人格はあまり戻っていない。現在はハルトゥムの館で療養中。肉体には高位魔族による何かしらの罠が仕掛けられている。現在は超乳と呼べる程の乳房を誇り、毎夜毎夜少年の事を思って自らを慰める毎日。共に過ごす紅亜や烙南との仲は少しぎこちない。

 

エフィリム・エーネ♀

 

蒼い肌に漆喰のような黒い角、黒い眼球に赤い虹彩、縦に割れた瞳を持つ、淫魔と人間の間に生まれた少女。イフィミスラよりも幼く、半魔族の外見を有し、腹部が妊娠したように膨れている。ディシグニア皇国領の緩衝地帯で娼館の景品として少年と出会い、それ以降旅の伴となる。娼館では女達から性技を教わり、教養を身に付け、身体を開発されていたが、良好な関係だったと思われる。話し方こそ大人のようだが、発音は拙い。実は血を分けた半【自生者】の姉妹を胎内に宿しており、一種の双子である。本当の母親から大きくなるに連れ膨れ始めた胎の事を機に虐待され、売られた過去を持つ。一時期は人間不信であったが、逞しい娼館の女達の生き方を真直で学び、育てられる内に現実の厳しさを受け入れられるようになった。同じ伴であるイフィミスラやナーリャの事を「ねぇさま」と呼び、少年の事は「てぃあにぃさま」と呼ぶ。炊事が苦手だったり、食べる事が専門の姉達とは違い炊事が出来るので少年を手伝う事もしばしばである。心の底から抱かれてもいいのは少年だけと感じている。

 

天御門紅亜♀

 

遺宋学徒憲兵隊分隊長。黒髪を【二つ縛り】(ツインテール)にしていて、石楠花(しゃくなげ)を思わせる相貌と切れ長な瞳を持つ。男のような恰好をしていなければ、清廉な巫女や乙女にも見える美貌の少女である。鍛えている為、手足はしっかりとしているが、それでも線の細さは隠せていない。【天御門】分家筋の長女だったが、両親の不慮の事故で亡くしており、本家及び【土御門】の権謀術数に絡め取られた後、長男として家を背負っている。生まれながらの両性具有者(アンドロギュノス)で男根を持っていたが、幼い時から心も身体も女性として育てられた。妹である蒼嵐を政略結婚から守る為、分家に生まれなかった長男を高い家柄の女性と儲ける約束を本家との間に承諾しており、日常的に本家や決められた女性達と関係を持っていた。年々男としての機能が失われてきており、本家との約束では長男が出来なかった場合、女として【土御門】家に嫁ぐ約束をしている。本人は家と家族を守る為に男として振舞う事を自らに課していたが、唯一妹には男にならねばならない“姉”の葛藤が分かっていた様子で、姉妹中は普通以上に良い。イフィミスラと同じく【大皇】の血筋を引く一人で、土御門家から子供を儲けるよう寄越された烙南の能力によって、肉体のバランスが崩壊。ほぼ完全に女性体となり、謀略によって【土御門方春】に身柄を確保された後、奴隷として仕える事で妹を救おうとした。その時に使用された秘薬の影響で現在ハルトゥムにて療養中。少年との出会いこそ最悪であったが、共に住む時間を通して心を開き、最終的には“旦那様”と呼ぶようにまでなった。これ以上無いくらいのツンデレだが、本人には自覚がない。

 

天御門青嵐♀

 

遺宋学徒憲兵隊上級曹長。【天御門】分家の次女で少年曰く紅亜を頭一つ分背を低くして、髪を短くし、垂れ目にすれば大体同じ。姉と違って、笑顔が親しみ易く、全体的な雰囲気が柔らかい。実は姉より胸のカップが二つ分程違う。筋金入りのシスコンで姉大好きっ子。姉である紅亜が自分のせいで家に囚われている事を知っていて、負担をどうにか軽くしたいとの思いから学徒憲兵隊に入隊した。戦闘に関しては姉以上の力を持つ実力者で普段デスクワークをしていて目立つ事はないが、一人で武装した軍団一千人に匹敵する。分家が崩壊して後、乂羅に帰還し、七教会の下に付いて国の建て直しを図っている。いつか天御門も土御門もなく、故郷に姉を迎える事を夢見て仕事に邁進する出来た妹である。

 

土御門烙南♀

 

妖精のように細い【白変化(アルビノ)】の少女。病的なまでに白い肌と白い髪は何度も折り返す程に長大。髪の手入れが大変な為か、魔術具である簪で管理されている。夭逝しそうな程に気配が薄く、美しい相貌も相まって常に儚い雰囲気を漂わせていた。次代【神門】の選定儀式である【奉選】の為に【土御門】が血筋に組み込んだ血統の一人で、【大皇】の血筋を持つ者の力を増幅する能力を持つ。完全な箱入りで館に半ば監禁され育てられており、一般常識をまったく教えられず、“子を産む存在”として必要最低限の教育しか施されていなかった。【神門】としての素養が在り、不完全ながらも前代【神門】によって禁山に封じられてしまった。少年に助けられた後、ハルトゥムの館で【神門】化された時の副作用を治す為、療養中。初めて出会った男性である少年の事を“兄様”と呼んで慕っている。紅亜との仲が良く、ハルトゥムでは世話をされながら、世間の常識を教授されているらしい。

 

 

 

~七教会サイド~

 

ハティア・ウェスティアリア♀(?)

 

七聖女の一人で外見は金糸のような髪に白磁の肌を持つ少女。華やかさよりも静かさを思わせる顔立ちは花開く直前の蕾と絶賛され、聖女中、最も美しいとされる。神域を凌駕すると言われる魔導聖女で、魔術研究と戦闘に関して敵う者はいないと言われている。神域を凌駕するとは、嘗て法術師として魔族や天使達や神々を一緒くたに撃滅した過去から世間一般が付けた修飾。【魔導技術】の創始者であり、大陸の魔術に彼女以上に詳しい人間は存在しない。魔王である少年とは嘗て旅をしていた仲で出会った時には命も救っている。敵対するようになってからは辛辣な言葉を投げ掛けるようになったが、少年は変わらず接してくる為、苛立ちを隠せない事が多々ある。数十年前にマロウ・ブレステンドと結婚し、現在は一児の母。孤児院を個人的に経営していて、同じ師団にいるフェルラスの事は子供時代から知っている。魔術的な功績を挙げる一方、大陸秩序の再編より前から女性の権利や福祉・人権の向上を謳って活動してきた為、人種種族問わず女性からは絶大な支持を得る存在。七教会の福祉政策や人民に対する様々なサービスの大半はハティア本人の思想が色濃く反映されており、教会の拡大と大陸全体の道徳やモラルの向上に寄与した正に聖女の名に相応しい人物。尚、七聖女中唯一結婚し子供も産んでいる為、聖女というより“聖母”として信仰される事が多く、教会関係者の中でも特に女性からは七教会の母親的存在として見られている。七聖女の中でも特にユアン・クオとの親交が厚く、親友という間柄。

 

フルー・バレッサ♀(?)

 

七聖女の一人にして世界一の技術者にして世界一の科学者にして世界一の金持ち。大陸最高の頭脳と呼ばれる【電子噐械学】の創始者。人々の生活から軍事分野に至るまで強大な技術力を盾に多くの国で【近代化】を推し進める立役者である。実は七教会の総資産、その九割以上を持っていて、教会の拡大は彼女の資本無しには無し得なかった。殆ど表舞台には出てこないものの、実質七聖女の筆頭であり、その技術は神の領域とされる。フルーの“作品”による功績が及ぶ範囲は軍事・政治・経済・民間、あるいは人類以外の亜人・異種・人外、魔族と多岐に渡っており、最も大陸統一に近い“個人”とも囁かれる。元々は大陸西部を放浪していた伝説の鍛冶師の娘だったが、その引き継いだ才能は冶金分野だけには留まらなかった。アングラな辺りでは“大陸を千度滅ぼす女”“神越者”“あたまおかしい”と絶賛?されている。少年が使っている黒い外套を造り、父親の形見である剣を与えた。ある意味最も少年の戦力を増強した存在とも言える。

 

ユアン・クオ♀(?)

 

七聖女の一人でマロウ・ブレステンドを除けば、当代最強の刃の使い手。極東の地で唯一聖女となった存在でハティアの親友。足元にまで届く黒髪を有し、流麗な姿態、麗しい鼻梁、高い背、どれも様になっている為、月下美人と讃えられている。世間的には己に厳しい剣の達人のようなイメージを持たれているが、本人は至って真面目な【善人】である。要塞や小惑星や神・人類に対する災難を斬り伏せ続けてきた為、斬れぬもの無しと言われている。技は全て我流であるが自ら“閃剣”を名乗り、嘗て少年に剣を教えた張本人でその頃は少年に師として多くの技を教えていた。七聖女中最弱という仲間内の評価であるが、ハティアと比べても万人受けする性格から実は広報活動を任せられ、様々な会合に引っ張りだこだったりする。七聖女達の殆どが会合を面倒に思っていたり、大陸にいなかったり、性格上折衝に向いていなかったり、仕事に忙殺されていたりする中で唯一大人な対応が出来る貴重な人材。出身国である乂羅での扱いは悪くなく、七教会とは別口で一定の権力も持っている。

 

マロウ・ブレステンド♂(?)

 

ハティア・ウェスティアリアと正式に結婚した元護衛騎士。現在十数歳になる娘をハティアとの間に儲けた“幸せ者”。魔王追討師団師団長。聖女達とは旧い付き合いで聖女に愛された事で高度な加護を獲得した結果、老化は止まっている。現在七十歳以上だが、外見は何処か頼りない風格の二十代。師団の兵達に比べても体格で見劣りするが、その肉体は服に隠されているだけで極限まで絞られている。普通に話す分には落ちついた金髪の好青年だが、その内実は魔王へ数十年間にも及ぶ戦いを挑んできた歴戦の兵。その剣術の腕は七聖女ユアン・クオを除けば大陸随一。魔王との戦闘時に身に付ける専用装備【終滅】は【高格外套】の試作ロットであり、あらゆる安全装置を搭載しない本来は不死者専用の兵装。運搬に専用の運搬機材【縛束鋼】を必要とし、使用時には八万気圧の圧力に肉体を晒され、四千五百度の熱量に耐え、剣の一振りで山岳が消し飛ぶ反動を受け切らなければならない。これを受けて肉体が消滅しないのは一重に七聖女ハティア・ウェスティアリアと結ばれて常時その“加護”に浴しているからだが、それで肉体への負荷や痛覚が消えるわけではない為、鎧の使用時は常人ならば一秒も持たない、地獄のような拷問に晒されている。魔王に戦闘を挑もうとする途中、少年の護衛騎士であるルヒ・サヤトネとの戦闘となり、首を半ばまで斬り裂き撃破するものの、記憶の一切を奪われて普通の青年として目覚める事になる。サヤトネと共にキリアに助けられたが、目覚める前にキリアは離脱。目覚めて後はサヤトネに嘘の経歴を教えられ保護者として動向を監視されている。旅の途中、【沸魔】と呼ばれる魔族世界からの魔力流出によって出来上がる領域で化け物に汚染された少女を救う。しかし、出会いをサヤトネに利用され、ハティアへの裏切りである交合にまで至ってしまった。半魔族になった少女は妊娠。マロウ本人は知らずに裏切りを重ねていて、正確には二児の父となった。

 

サイラー・アルゴム♂(39)

 

顔面傷だらけの筋骨隆々なマロウ・ブレステンドの副官。魔王追討師団の事務の統括者であり、常に周囲へ金属製の表面に文字が彫られた欠片を浮かべている。猛将のように見られがちだが、実際には物静かな男で趣味は園芸という好漢。並み以上の事務処理能力を持っているが、それはあくまで副官としての姿であり、剣術などの武芸にも秀でる。ただ、達人の域には辿り着けないと悟って事務職への転向を己で決断した為、余程の非常時でなければ剣は握らない。マロウが消息不明となってからは代行であるハイネシアの補佐に回っている。ハティアとは若い頃からの知り合いでマロウは剣術の指南を受けた師でもある。

 

ハイネシア・ダール♂(84)

 

マロウと旧知の老将。現在魔王追討師団工作兵連隊連隊長。聖女達へ意見する数少ない将兵の一人であり、聖女達が旧教会に所属した頃から仕える最古参でもある。若い頃からマロウと共に戦場を掛けてきた存在であり、嘗てマロウとハティアのお付きとしてどちらが付いて行くか勝負したという過去を持つ。それが実質的にハティアとの出会いの切欠であり、もしもハイネシアが勝っていたならば、マロウは聖女と知り合う事もなく一騎士として人生を終えていた可能性が高い。ハティアとマロウの仲人を務めた人間であり、ハティアとは一友人として信頼関係にある。現在もマロウの知恵袋的な位置で活躍しており、マロウが消息不明になった後、魔王追討師団を実質的に預かっていた。今でも人手が必要な時は最前線に出ており、隠居は考えていない。実はお茶を入れるのが上手かったり、ハティアとマロウの子を孫のように思っていたり、二人にとって家族のような一人。

 

アルガ・レア♀(42)

 

魔王追討師団砲兵連隊連隊長。通称は鬼のアルガ。現場や前線では正に鬼のような気迫で仕事をこなす事から付いた綽名である。七教会の中でも珍しい火器を用いた戦術に精通した一人。これはどういう事かと言えば、【高格外套】があまりにも万能過ぎる為、砲撃戦というものが殆ど発生せず、運用者そのものが少ないという事情がある。砲撃部隊の運用だけではなく航空艦船の砲撃指示や示威・威嚇行動も合わせて行う立場にある。

 

フェルラス・ディオス♂(32)

 

魔王追討師団機動歩兵連隊連隊長。軽い調子の二枚目隊長として部下達から慕われる好漢。七教会の兵となった頃から年上には可愛がられ、年下からは憧れの対象という一種のカリスマである。七聖女ハティアの経営する孤児院出で兵隊になった理由が自らの母や姉のように慕っていたハティアの笑顔を守る為という恥しくも微笑ましいエピソードを持つ。マロウとも面識が有り、幼い頃から剣術を習っていた為、師や兄や父親のように思っている。マロウとハティアの子の世話をするなど繋がりは強く、兵隊になってからもマロウの師団に入る為、血の滲むような努力をした。サイラーとは弟弟子の関係。軟派で女性関係に詳しいと思われがちだが、未だに特定の女性との付き合いはない。本人曰くハティア様くらい良い人が見付かるまでは生涯独身。

 

 

 

~その他~

 

キリア・ユエト・セマネ♀(23)

 

大陸北東部の田舎地方を根城とした犯罪組織【ガランス】の元女幹部。切れ長の瞳に赫い腰元まである長髪、肉食獣のような眼光、鍛えられた肉体から【褐色狐(フォックス)】の異名を取った女傑。幼少の頃より組織内部で頭角を現し、たちどころに幹部まで上り詰めた逸材だったが、主人公と関わって後、七教会に所属組織を根こそぎ壊滅させられ、その圧倒的力と旧来の常識を駆逐する【近代化】思想を前に絶望。逃亡者となって以降はサヤトネを行きがかり上救うなどしたものの放浪し続けている。

 

アーフル・ナーシム♂(?)

 

砂漠の民を思わせる強い瞳のダークエルフ。ダークエルフの集落が人間に襲われて以降、人間を滅ぼす事と妹を人間達から救い出す事を誓って行動を起こした歳若いリーダーだったが、旅の途中で高位魔族に黒い棺に押し込められて人格と正気を失った。その後、仲間達と妹と自分に付いてきたオーレムを置き去りにエルフの集落へと舞い戻り、内部から侵食を開始。エルフの長老達を亡き者にして親族の女性達を洗脳した後、人間を滅ぼす為の切り札を起動するべく、ハーレムを築きながら様々な謀略を画策している。

 

神門♂(推定二百歳以上)

 

あらゆる意味で【乂羅】の中心である存在。魔族世界へ、ファルティオーナ世界の構成因子が流れ込む場が存在し、その場に留まり続ける事で森羅万象の流れに同化する言わば人工の仙人。“流れ”に浴し続ける事で人間から逸脱し、森羅万象を司る神の如き存在に昇華される存在を【神門】と呼称する。【神門】に代替わりがあるのは流れに同化し続ける事で個人の人格を保てなくなる弊害が存在する為。その代わり、人格が消失する寸前の【神門】の力はあらゆる面で高位の神々を超越する。現在の【神門】は元々が寺社の小坊主という身分だった。

 

土御門邑土♂(66)

 

現在【土御門】家を率いる当主。

 

土御門片春♂(38)

 

紅亜が長男を産めず、女になってしまった場合に結婚する【土御門】家の事実上の婚約者。権力欲と権謀術数を絵に描いたような性格で【奉選】の為に入れられた血統である烙南を使って、紅亜を罠に嵌めた。紅亜を手に入れて後、少年に襲撃を受け、魔族側の世界へと館ごと送られた。

 

 

 

【用語編】

 

『ファルティオーナ』

 

意味は“欺かれた者”

誰がいつ言い始めたのか定かでは無い。ただ大陸に人間種が広がり出した頃からファルティオーナという言葉は使われており、今も人々は狭義でも広義でも世界を、大陸を“ファルティオーナ”と呼ぶ。

大陸では三千余りの人間の国々が犇めき合っているが、未踏の地や秘境、【大森林】など多くの場所で亜人や異種、人外と呼ばれる者達が共に住んでいる。

 

『七教会』

 

七聖女と呼ばれる七人の聖人によって統括される組織。嘗ては唯一神への帰依を主眼とした布教活動を行い、旧い遺跡や【魔術】【超常の力】を大陸規模で監視監督する立場だった。【魔族】への対応や【宇宙樹】の監視、エルフとの交易、異種や亜人、人外と言われる者達との交渉も合わせて行っていた事から、その規模は一国家を軽く超える。その歴史は極めて旧く五千年以上前の文献にも活動が記されている。現在は七聖女の下で布教活動よりも福祉活動と言った方がいい人々の生活を主眼とした運動を展開しており、大陸各地で多くの民から絶大な信任を得て、様々な国家に深く浸透している。数年前に起きた大戦争【大戦】の先頭に立ち、惑星上に生きる殆どの種族達と共に魔王と戦った。戦後、初めて人類規模での相互協力を行えた事を大々的に報じ、大陸秩序の再編に乗り出しており、この影響で大陸中の国々は対応に苦慮する事となった。現在は戦争仲裁及び様々な同盟、休戦条約の締結に尽力しており、その力は絶大と各国に周知されている。人類史上類を見ない強さの超常の力【奇跡】を持つ超人【七聖女】を頂点を戴き、聖女の一人が作り上げた【高格外套】を主軸とする大部隊や強大な航空戦力を持ち、その技術力や資金力や政治力は大国の王や議会を上回る超パワーと化している。大陸中央の国々に本部を持つが、支部は大陸の隅にまで広がっていて、多数の部署に数百万の人材を抱え、現在も増加中。七教会の【意匠】は“丘に突き立つ七つの剣”であり、これは聖女達を表しているとされる。

 

『七聖女』

 

七教会という名は旧教会改名時に多数の信者達から七の字を入れて欲しいという希望から出来たものである。七聖女と呼ばれる女性達の殆どはうら若き乙女であり、教会信者のみならず、七教会がある場所ならば、大陸の何処であろうと名を知らぬ者はいない。【大戦】が起きる以前から活動していた七聖女達は教会内部の頂点に君臨するまでに相当数の偉業や功績を残しており、大陸各地には聖女達の逸話が無数残っている。その半分は武勇であり、後の半分は善行とされる。聖女達が有する【超常の力】である【奇跡】は人類という種が未だ嘗て手に入れた事の無い力とされ、その一つ一つが単なる戦闘能力とは言い難い性能を秘めている。現在、大陸に存在する聖女は四人で残りの聖女達は大陸外や別異相の世界にいると公式に発表されているが、聖女個人に対する信仰は大陸外にいる者も含めて衰えるどころか盛ん。聖女達は過去に魔王と関係していた事が噂されているが、教会は沈黙を保っていて真相は定かでは無い。

 

『奇跡』

 

七聖女達の使う【超常の力】の総称。

詳しくは本作で出てきて以降、下記の【武器・道具・能力・術編】において記述する。

 

『魔王』

 

過去、魔族の中でも強大な力を有した存在が大陸に攻め込んできた場合、魔王の名を人々から受けてきた。多くの魔王達は通常の魔族達がそうであるように快楽主義者であったり、人間蔑視であったり、争いを好んだりと、悪徳の限りを尽す者ばかりであった。しかし、殆どの者が人間側に打倒され、あるいは追い払われる等している為、比較的対処できる存在として見なされていた。しかし、現在の魔王においてはその限りではなく。惑星上のあらゆる種族が参戦した【大戦】において消滅せず、今も存在が確認されている。彼の魔王は自らの軍団を作るでもなく、自らの領土を欲するでもなく、時折史実に現われては大規模な騒乱を起こして消えるという事を繰り返している。その姿は中性的な黒髪の少年で黒い外套を着込んでいるとかいないとか。ただ、淫乱な魔王であると人々は信じて疑わない。

 

『魔族』

 

通常は“あちら側”に住む闇の住人の事。その姿は千差万別だが、人型の者で最も基本的な姿は角に人とは違う色の肌、翼に尻尾というもの。三系統有り、【血族種】や【自生型】と言った分け方がある。現在は大陸で魔族を見るのは稀有になっており、殆ど純潔の魔族はいない。しかし、魔族の血を引く者や魔族の亜種が大陸に住み着いて変化した存在は複数確認されており、差別の対象になっている。それらの存在の中でも人間に紛れて暮らす者は魔術の力で姿を隠蔽したり、居住地を隠したりと苦労が耐えない。それが出来ない弱い力しか持たない魔族の血を引く人間型の存在は殺されたり売られたり実験の道具にされたりと悲惨極まる人生を送っている。

 

『大戦』

 

魔王と惑星上に存在する殆どの種族達との大戦争。大陸中央部付近で起こり、広大な砂漠を生み出すまでに至った。この大戦争を機に人類は一つに纏まる事に成功したが、大戦終結後様々な要因から戦乱を誘発させた。この事態を重く見た七教会の本格的な戦争への介入や仲裁、大陸秩序の再編の中で多くの人命が失われたが、これには大陸中央の国々は含まれていない。大戦当時の戦費は天文学的な単位であり、その半分以上を負担した中央の国々は戦乱に向うような余力はまったく残っていなかったというのが理由である。七教会の本部が置かれているというのも大きかったが、実際には戦争などしている暇が無かったと言うのが正しい。大戦後、一気に七教会の影響力が増した為、大戦を起こしたのは七教会の陰謀であるという噂も存在している。そもそも、何故魔王を倒さねばならなかったのか。大陸中の国々は人類を滅ぼす規模の“災害”を魔王が発現させようとしている、という事しか知らされていない。これを裏付ける証拠が大陸各地で天災という形で起こった事から事実として認定されたものの、明らかに大戦において失われた命より、大戦後の戦乱で失われた命が多かった為、戦乱そのものが魔王の災害ではなかったかと実しやかに囁かれている。

 

『魔王追討師団』

 

大戦後の混乱期、戦乱を治めつつあった七教会が組織した魔王の追撃と討伐を専門に行う師団。嘗て、大戦時に投入された師団程の力は無いとされ、制約はあるものの各国の国境を跨いでの活動を表向きは認可されている。追討師団の師団長はマロウ・ブレステンド。更に統括者はハティア・ウェスティアリアである。両者が婚姻している事は七教会信者ならば“世紀のラブロマンス”として知っている話であり、事実上は“夫婦師団”等と悪意なく揶揄されている。と言っても、その戦力は聖女一人に英雄と呼ばれる類の能力を持つ存在が一人、その他も七教会純正装備の兵だけで数百人、航空戦力一個艦隊である為、その気になれば数カ国を纏めて制圧出来る力がある。それでも各国が通行に口を挟み難いのは大陸中の政策に首を突っ込んで人々の生活を向上させた“厄介な功労者”ハティア・ウェスティアリアの存在が大きい。大陸秩序の再編で取り分け女性権利の向上を行ってきたハティアの影響力は大陸の隅々にまで行き渡っており、大国の王家・議会の重鎮・貴族・豪商、それらの伴侶や家族や親族の女性達から絶大な信頼を勝ち得ている。どれだけ女が軽視される世の中であっても、女という生き物がいなければ社会は回らない。聖女ハティア・ウェスティアリアを通さないと言う事はそれだけで女性という存在そのものを敵に回しかねない危険を孕んでいる。為政者達も通したくないというのが本音だろうが、多くの国で自分の伴侶や娘や叔母や祖母に【お前はそこまで無礼な存在なのか?】と言われて耐えられる者はそうそういない。実際、追討師団の通行を認めなかった国の大臣が離婚危機に陥ったり、娘から絶縁状を突きつけられるという事態が発生した事もあり、家族からの圧力に負けて通してしまったという事例は枚挙に暇が無い。

 

『魔術』

 

大陸に有史以前から存在する魔力を加工、変質、顕現、発露、置換、収束させて行われる自然法則とは別の法則や真理を使用した技術の総称。世界に存在する魔力には四百七十四種類という膨大な数が確認されており、これを“魔力形質”と呼んでいる。魔力形質によって発動する魔術は千差万別であり、同じ魔術でも別の魔力形質を使って引き起こしたり、その魔術のみでしか使えない魔力形質もある。大陸で人類が体系化した魔術の数は数万とも数百万とも言われるが、その殆どは個人の発現させる魔力資質や血統や魔術に関する資質に拠るところが大きかった為、多くが廃れるか別系統に組み入れられて消滅した。それでも無数に大陸中に跋扈していた魔術が統合されたのは七教会の【魔導技術】が確立されてからの話であり、それまでは大小の魔術体系を治める魔術師達の連合などが犇き合いながら、術や秘儀を受け継いできた。嘗て魔術師達から馬鹿にされていた【魔導】が大陸有数の大魔術系統となった事で状況は一変。多くの魔術師の連合が廃業へと追い込まれ、秘儀や秘術の公開(バーゲンセール)を行わなければ、衰滅していくしかないという事態に陥っている。この為、古くから専業・家業として魔術師を行ってきた旧家や名家には七教会に対する悪意や反感感情が燻っており、七教会の大陸秩序の再編が進まない一因になっている。これはそういった家が国家の中枢や軍事・祭事に深く関わっていたからであり、これら勢力が貴族や王族・皇族等の反七教会の機運と結び付く事で容易には打倒出来ない存在となっているからである。

 

『法術』

 

魔術の一種とされているが、こちらの場合は主に天使や聖なる存在の魔力を使用したり、神聖な場所や儀式に拠って行われる術全般を指す。主に防御や回復といった人間を守護する方向に特化していて、嘗ては教会の扱う魔術や各国家に存在する神聖な象徴やそれに近しい者達が使う術の総称だった。

 

『魔導』

 

七聖女ハティア・ウェスティアリアの【魔導技術】の一般的俗称。これらの下位の技術は多くの場合七教会が無償で開放しているので魔術師よりも魔導師と名乗る術者が大陸中央では増えている。高度に体系化された術を無償で学べるとあって、七教会に入信する信者は後を立たない。

 

『意匠』

 

魔術全般に使われる特殊な図や形。意味だけがあるものと、意味合いと同時に力を持つ者がある。魔術に使われる【意匠】の殆どは人を守護する神々のものであり、これらの神との接触媒介ともなる。大きな魔術の意味合いや方向性の制御や特殊な能力の付与には欠かせない。術式の中核にされる事も多い為、視覚的には相手に隠している事もあり、視認は聊か困難。この【意匠】にも幾つかのグレードが存在し、七教会が指定する秘匿級のものの中にはそれ単体で人類を滅ぼすクラスの代物も存在する。現存する魔術に使用可能な【意匠】の殆どは【魔導技術】の進展と開放によって増加しており、魔導習得の為に七教会へ向う者達にとって目的の一つともなっている。本作であまり使われていないのは出てくるキャラクター達が基本【意匠】を組み込む手間も必要ない程に魔術が強いか。【意匠】を使った魔術そのものを知らないか。超常の力を使っているかのどれかが当て嵌まる。【意匠】の図形は厳密には特定の原理や真理を内包しているか、神々やそれに類する存在が気に入る形や図である事が発動の条件になっており、大雑把に描いて発動するものもあれば、絶対に発動しないものもある。この曖昧さが酷いものになると色の乗せ方が一筆違うだけで、魔力で形成された時の色合いを神が気に入らないだけで、暴発や不発、暴走の原因にも成り得る。このような事を逆に捉えて、より良い【意匠】の創造や改良も行われており、その方面の研究では魔術に精通した芸術家等が活躍している。

 

『超常の力』

 

何も無いところから魔力も無しに炎を出したり水を出したりと魔術の法則とも別の法則の下に存在する超能力。公にはあまり知られていないが、これらの能力は嘗て黄金期と呼ばれる時期に存在した旧い種族達の特殊能力が一部人間との混血で流れ、遺伝によって受け継がれてきたものである。長い年月を経て消えた能力もあれば、逆に隔世遺伝で強い能力を得る事もある。これらの能力は人類だけではなく、様々な生物にも確認されており、基本的に脳の容量が大きい知能の高い生物程、発現する可能性も高い。これらの資質は魔力形質や魔術師の血筋等とは別物だが、魔術師達は好んで強い能力、強い魔力形質を受け継ぐ超常の力の血統を受け入れてきた為、魔術師でありながら特殊能力も持つ者は多い。魔術に能力を組み入れる事も当然のように行われ、練磨されてきた経緯から魔術と能力の合成による大規模儀式術等は通常の魔術とは比べ物にならない強度・確度・正確性を有する場合もある。基本が遺伝なので同時に幾つもの能力が発現したり、まったく別の能力に変質したり、そもそも能力が発現していても、何の能力か分からなかったりする場合も多々ある。故に超常の力の所有者の大半は自身が能力者である事を自覚せずに一生を終えるとも言われ、七教会が判定方法や確認方法を大陸規模で確立するまで、その数は大陸魔術師の総数よりもかなり少なかった。現在では七教会信者やその他のサービスを利用する一般人が赤ん坊の時に検査を行う事で能力の発現確率や発現能力の種類、他にも能力強度や成長速度に至るまである程度分かるようになった。大陸人口の百分の一程度が能力の遺伝を受け継いでいるとされ、人類以外の亜人や異種、人外と呼ばれる者達は人類よりも発現確率が比較的高い。

 

『要素(エレメント)』

 

単純に言うと世界を構成する因子の中でも特に生物が身近に観測する存在や法則・概念の事。これによって幾つかの技術体系が成り立ち、超常の力もこれらの観測によって成り立つ。

 

『本質(イデア)』

 

此処で言う本質は【要素】におけるもの。【要素】を扱う上で【本質】を理解するとは、世界の成り立ちを理解する事に等しく、魔術の根本原理にも同じような工程が存在する。世界の構成因子の振る舞い、即ち【本質】を理解して使用される技術や能力はそれだけで通常のものとは精度・確度・効率性が格段に違う。

 

『ガランス』

 

大陸北部の田舎に居を構えていた犯罪組織。キリアにとっての家であり、心の拠り所であったが、【七教会】による【近代化】の荒波には抗えず、部隊に砦を蹂躙され、構成員の殆どが捕縛。大陸中央にある矯正施設へと送られてしまった。

 

『近代化(レボリュション)』

 

【七教会】が魔王との【大戦】後進めている大陸秩序の再編における人々の生活や技術、思想、道徳の向上等の総合的な俗称。【ファルティオーナ】は【大戦】以前、現実で言えば中世欧羅巴並みの生活が普通であった。しかし、七教会が支配的な影響力を持つ大陸中央の国々では文化的にも技術的にも現代の先進国と変わらない程の生活を送れるようになっていた。これにあらゆる面で遅れた大陸の各国は七教会を畏れると同時に追いつくべく技術や生活の向上を進めた。だが、七聖女フルー・バレッサを中核とした大陸中央の技術革新はそれ以上の速度だった為、最終的に王政や貴族制を廃した議会制民主主義の台頭と共に人々は七教会に多くを阿るようになった。これは嘗て大陸を支配した弱肉強食、暴力による支配構造の大転換であり、端的に言えば人々の意識改革、常識の刷新でもあった。第一章一節においてキリアが感じた恐怖はこの“常識が違う”という価値観のズレに根ざしている。同じような危惧や恐怖を抱く者が実は人類以外の種にもおり、急激な人間の価値観の変化を警戒する者も多い。

 

『旧暦』

 

魔王との【大戦】以前の年号。年号は大陸各国で違うが、国際的な年号は以前から七教会が策定しているものの一つで外交文書や条約の締結にはこちらが使用される。

 

『新教会暦』

 

七教会が【大戦】直後に定めた年号。魔王との戦いで一度は大陸が一丸となって協力した事を謳い、旗頭となった教会の自画自賛年号だと内部から批判も出たが、最終的に国際年号を定める教会の権威を示す目的で採用された。

 

『自治州』

 

魔王との大戦以降、大陸中央の国々に端を発した国家の再統合論においての小規模国家の呼び方。自治州に再編された小規模の国家を統合して新たな大国を生み、その力で大陸を治めようとした七教会のやり方は大陸中の国々から危険視され、協会主導での国家統合よりも前に自ら大国化する方策で各地の国々は一致した。これによって無数あった国々は幾つかの連合国家を樹立、大国化する事にも成功したが、内部はまったく一昔前の王政貴族制であった為、利害関係の不一致や不合理を是正出来ず、未だ統制の取れた国家とは言い難いところばかりになっている。

 

『ファサルトス皇国連合』

 

魔王との大戦以後進められた戦後処理で教会主導の大国化を嫌った北東部の小国の幾つかが集って出来た中規模の国家連合。嘗て大陸を半分支配したと言われる血統【大皇】の血筋を持つ皇国を軸に集合している。

 

『アルカスの丘』

 

【ファサルトス皇国連合】領内にある自治州の外部協定によって七教会に供された辺境区域にある丘。

 

『ディシグニア皇国領』

 

【ファサルトス連合】の東端の国家。極東の【乂羅】と接している為、戦乱に突入した当時、国境地帯の緩衝領域に非合法な一帯と砦を幾つも設けて、侵略の機を失わせる方策に出た。この作戦は功を奏するものの、緩衝地帯には多くの問題が山積し、ディシグニア一国では制御出来ないまでになってしまった。

 

『エルデナンド皇国領』

 

基本的に【七教会】と縁薄い【ファサルトス皇国連合】だが、唯一の例外がエルデナンド皇国領とされている。元々、穀物自給が低く、軍事も弱い国であったエルデナンドは皇国連合に加盟する際に皇国の血筋の一人を受け入れたものの、教会との繋がりも維持したいとの思惑から、その皇家の血筋の者を優遇しなかった。この時に輿入れしたのがイフィミスラの母である。

 

『乂羅(がいら)』

 

【神門】を頂に有し、【天御門】と【土御門】という【神門】から分かれた二つの家を政治の中心として極東を支配する大国。基本的に政治の実権は二つの家に握られているが、その実務は【御政体】と呼ばれる官僚機構が代行している。大陸各地で古くから広がる“洋服”とは異なった“着物”が衣装の主流で異国情緒溢れる国として大陸各地から観光客が絶えない。大陸で唯一七教会の権威や影響力が及ばない大国で、これは一千年以上にも及ぶ【神門】による統治の優秀さと国の豊かさを示している。教会勢力が拡大する下地がない為、七教会にとって最も厄介な大国ともされる。【大戦】以後の戦乱期を機会に改革が進められていて、文化、軍事、教育などの分野で特に目覚しい変革が起きている。

 

『天御門』

 

【神門】から別れた二つの家の一つ。競争関係にある【土御門】とは互いに次代の【神門】を生み出す間柄で、時の【神門】を輩出した家柄がその時代の権力を有する。主に外交や軍事に関して大きな影響力を持つ左派が多い家柄。

 

『土御門』

 

【神門】から別れた二つの家の一つ。主に内政や民事に関して大きな影響力を持つ右派が多い家柄で【乂羅】の権謀術数の殆どはこの家が仕掛けている。現在は【天御門】の血筋を取り込もうとする勢力が内部では優性で幾つかある【天御門】分家筋にちょっかいを出している。

 

『遺宋(いそう)』

 

ディシグニア国境地帯に隣接する中規模の都。学徒憲兵隊の本校が置かれる場所で【天御門】の意向から比較的大陸中央様式の建造物や文化が流入する珍しい地域でもある。

 

『学徒憲兵隊』

 

【乂羅】における改革の一つとして軍のエリートを育てるという計画が存在する。【学徒憲兵隊】は将来、次世代の軍事関係者や高官を育てる養成機関であり、入る為には数百倍とも言われる難関を突破する必要がある。通常部隊と同等以上の力を誇り、軍の代わりに【沸魔】の掃討を行う等、実戦経験も豊富。【天御門】の影響力が強い組織で資金や資材の供給はそちらから行われている。しかし、規律こそ重んじるものの、所属する学徒達は年頃の男女でもある為、色恋の話くらいは普通にする。制服には刀と菊の紋が左肩に金糸で刺繍されている。

 

『幽国の士』

 

【乂羅】における貧困層や様々な理由から社会的な地位を失い棄民のようになってしまった人々が立ち上げた反政府組織。本来は七教会による国家への介入によって、現状を打破する目的で旗揚げされたが、中枢であった教会の人員が行方不明になってから、組織は自然消滅した。

 

『奉選(ほうせん)』

 

【乂羅】の中枢である【神門】が限界を向えた時に行われる新たな次代【神門】を選び出す儀式。この時の為に百年以上掛けて【天御門】と【土御門】は膨大な準備を行う。血統の洗練や能力者の受け入れ、政略結婚を用いて【神門】に成り得る存在を生み出す作業は正に国家規模の権力が無ければ出来ない芸当で、それが千年以上続いている事を思えば、【神門】のシステムが如何に優れているかが分かる。

 

『乂廊殿(がいろうでん)』

 

【乂羅】の中央本国に存在する実質的な政府中枢区域。統治機構である【御政体】に所属する者の殆どがその一帯の出身者である。【天御門】と【土御門】の本家は此処に置かれていて、どちらも鎬を削っている。実は七聖女ユアン・クオの出身地でもあり、現在“聖女”に用意する形で政治中枢である庁舎内部に専用の個室や一角が与えられている。

 

『御政体(ごせいたい)』

 

【乂羅】を実質的に治める統治機構。政府高官で構成され、【土御門】と【天御門】の手足と言っても過言では無い。【神門】の維持という途方も無い事業を千年以上に渡って二つの家が続けられる理由。それは【御政体】の役人達のバックアップを受けているからである。彼らは国の統治方法として【神門】を優れたシステムと認めて今も二つの家の派閥争いに加わっている。だが、しかし【神門】が存在しなくなれば、一気に潮が引くような速度で二つの家から遠ざかるのは間違いない。その合理主義は一種、七教会にも似る。国家の繁栄の為だけに邁進する鏡のような存在と言える。

 

『東象文字(イースタン・キャラクター)』

 

大陸東部において一般的な独自文字。大陸共通言語とは違って象形文字に近い。【武帝】【藩落】等の国家が何故この文字で表されているかと言えば、【武帝】は独自の言語体系があるものの、大陸共通言語に訳すのが難しく、自ら国名を名乗っても大陸共通言語で発音出来なかったという経緯がある。【藩落】も同じように特殊な言語で発音する本来の呼び方が存在したが、東部一般での呼び名が定着して以降、利便性の観点から自国の人間ですらそう呼び慣わしている。

 

『白変化(アルビノ)』

 

生物の色素異常で紫外線を遮断する“色”を失った個体の症状を本来はアルビノと呼ぶが、ファルティオーナにおいては多少異なる。確かに白い個体という事で特別視される存在である【白変化】だが、これらの色素異常が実は特異な隔世遺伝によって引き起こされている事もある。その為、症状が現われた個体は時に特殊な超常の力や魔力資質を秘めているとされ、稀少な容姿である以上に魔術的な意味で珍重される事が珍しくない。

 

『魔匝窟(ルドゥム・ラクム)』

 

魔族世界と大陸が繋がった場所。魔族世界側の魔力が溢れ出る事で動植物や土地自体が変質する。変質した動植物や土地はほぼ例外なく危険で特に動物などは化け物と化してしまう為、各国は軍が使って掃討している。乂羅ではこの現象を【沸魔】と呼んでいて、学徒憲兵隊などが化け物の掃討を代行する。この現象は基本的に魔族の魔力による強力な変質であり、高位の魔族やそれに類する存在の生態の一つである。これを恣意的に使う事で自らの下位の眷属を作り出したりする者もおり、これには人間などの知能の高い生物も含まれる。これらの高位魔族達の力によって変質した生物や種族が大陸でも数多くくらしており、その代表としてダークエルフが上げられる。知能も高いエルフが魔族の加護を受けて変質して後、主の消滅や己の世界への帰還で呪縛が解け、現在では大陸の固有種として生存しているのである。

 

『紀元の泉』(テムポリヴゥス)

 

エルフの集落近くに存在する水源で【宇宙樹】が生み出しているとも、【宇宙樹】がこの泉の傍に出来るのだとも言われている。

 

『大源(マナ)』

 

魔力形質の一つであり、【要素】と呼ばれるものの一つ。生物が持つ魔力が複雑で高純度な代物ならば、この世界に薄く普遍的に充溢する魔力は膨大で低純度である。エントロピーの法則に“比較的縛られる”魔力形質である【大源】は集める魔力より、魔力を集める過程で使った魔力の方が多くなる為、魔術に使用するには魔力収束の自動化や効率化が必須となる。だが、それでも普通は大気や大地に存在する媒質としての魔力は濃度が低く上手くいかない。これらの問題を解決し、動力炉として稼動する【大源高炉(グラン・フォルナシス)】という例外もあるが、これは基本的に超高度な【魔導技術】と【電子噐械学】を持つ七教会の反則スレスレの技術と言える。“天脈”や“地脈”と呼ばれる【大源】の本質は空気と同じで容易に高度な運用は出来ない。

 

『魔力負け』

 

強い魔力を持つ種や強い魔力形質を受け継ぐ生物が患う症状。主に自身の魔力に肉体が適応し切れずに起こる一種の拒絶反応。発症すると長時間肉体を強い魔力で汚染され、飽和魔力の暴走で極小の魔術が体内で暴発し続けるような状態となってしまう。これを防ぐには魔力を体内から抜くか、根本的に魔力を封じるかの二択だが、肉体の強度が足りないと体内魔力の循環バランスが崩れて“弾ける”可能性があり、非常に危険。

 

『電子噐械学(エレクトロニクス)』

 

七聖女フルー・バレッサが生み出した自然科学の法則に拠る独自技術。現在に至るまで体系化されてきた魔術系統とは異なり、個人の血筋や資質にはまったく依らない技術で、全てが現実の科学技術や工学と同等。魔力に依らない演算回路の構築によってあらゆる情報を集積・保存・蓄積・編纂する。この技術で本来ならば魔力無しでは出来なかった事を魔力皆無の状況からでも行う事が出来る。高度な回路の設計等は高度な魔術と同じく技術者としての腕が必要だが、その回路の維持に特別な資質は要らない為、魔力形質が悪かったり、超常の力を持たない技術者達に福音を齎した。この学問の特徴はその再現性の高さと技術の簡便化や利便性の向上というところにあり、誰でも魔術より手軽に使えるという点で大陸中央では学ぶ者が多い。大陸各国にはこの学問の技術者が少なく魔術よりも信が置けないと特権階級から思われているが、奇跡とは別格の技術として日々、研究が行われている。尚、フルー本人が起こす奇跡的な行為の殆どは“保存された魔力や超常の力を自分の技術で加工した”末に発現するものが殆どで自らの【奇跡】を公の場で使用した公式記録はない。

 

『魔導技術(ハイ・クラフト)』

 

七聖女ハティア・ウェスティアリアが生み出した総合魔術理論。大陸では原始の時代から現代に至るまで【魔術】と呼ばれる技術や【超常の力】と呼ばわれる特殊能力を発現する生物が数多く存在する。その研究の多くをハティアが独自に編纂し、一本に体系化した学問を俗に【魔導】と呼ぶ。あらゆる魔力形質とそれに伴う魔術の検証・比較・最適化が行われ、非効率的なものは淘汰し、大陸中に乱立していた魔術様式の殆どがこの学問に吸収された。大陸魔術のほぼ全てを類型的に分けた事で、魔術の分業化、高度化、作動原理を駆動する工程の簡便化や簡易化が大きく進展した。現在の七教会の魔術や超常の力が他国の戦力に対して大きなアドバンテージを有するのはこの学問による総合的強化支援を受けており、尚且つ魔術の作動に【電子噐械学】謹製の物品の使用、触媒や演算回路による魔術駆動工程の代替を行っているからである。

 

『悦楽乙女(ニンファ・ディレクタティオ)』

 

性奴隷の中でも高級品である【禁断蟲】によって調整された女性体の事。この場合は人間種だけではなく亜人や人間の形をした人外や異種と呼ばれる種族まで幅広い女性体を指す。大陸の男ならば一度くらいは抱いてみたいという高級娼婦の意味でも使われ、女遊びをする男達にとっては垂涎の“品”である。幅はあるものの一個体で金貨数枚から数十枚以上と高額で取引されているが、七教会の影響が強い地域では値段が更に上がるようになった。一般良識的には酒の席や男同士の会話で出てくる用語だが、女性が使うと非常識やはしたない扱いされるような単語。

 

『血統種(ブラッディ)』

 

魔族の中でも人間や他の生物達と同じく生殖によって個体を増やす勢力の俗称。魔族と呼ばれる種族にも人型とそうでない化け物のような容姿を持つ者達がいる。しかし、細かい種族は魔族勢力の中ではあまり重視されず、発生の経緯によって分けられる類型が重要視される。

 

『天の軍勢』(ツェバオート)

 

教会の奉じる唯一神の下僕である天使達の軍団をこのように呼ぶ。熾天使・智天使・座天使の上位三隊を将とし、残りの下位天使達が兵となって行動する様式を持つ。魔族世界と唯一神のいた世界はファルティオーナと同様に隣り合っている間柄で永い戦争が続いている。その力は一夜で“一星系”を滅ぼす程のものと言われているが、実際のところ魔族世界と魔王にしか向けられた事がない。という事実もあり、人々の間では神の軍団として、教会の遠征が行われる際のパレードで賛美されるような対象になっている。

 

『久竜(ドラッツェル)』

 

攻城にも使われる極めて古い種族で大昔から姿が変わっていないとされる翼竜。特徴的な長い首と巨大な胴体と翼を持つ。火こそ吐かないが全身を覆う鱗は鋼より硬く、大型の銃でも砕くにはそれなりの弾数がいる。少年が相対した久竜は人間に飼われ、ろくなものを食べていなかったせいで弱っていたところを少年の“説得”で命を終える事とした。この例の通り、竜の知能は比較的高く“自らの死”すら恣意的に可能な種である事が分かる。

 

『紫影(しえい)の従者』

 

普段は十七種類以上の認識阻害術式によって正体を隠し、空間潜行して別異相に潜み通常空間を観測している魔王の創造した従者。主に少年のサポートへ徹していて、詳細な名前は未だ出てきていない。現行では十三機が存在しているが、その大半が半壊から全壊という有様で機能を停止。能力資源(リソース)の大半を復元に費やしている。その為、現在はハルトゥムの館でオーレムや紅亜、烙南の世話をし、その姿は紫髪の小さなメイドである。本来、認識阻害されていない彼女は外見上、少年と同じくらいの年齢の少女だが、外見の改変などはお手の物。高度な空間転移能力を備えていて、少年の転移や簡易魔術の発動、その他にも様々な魔術洋触媒の確保や作成、情報収集まで行う多機能性を有する。紫影とは彼女が通常空間に現われた際に紫色の影のような存在としてしか認識出来ないという事実に拠る。

 

『蒼穹(そうきゅう)の騎士』

 

魔王の護衛騎士ルヒ・サヤトネの二つ名。七教会の部隊で彼女と出会った事のある者が畏怖を込めて呼び出したのが始まり。蒼穹とは彼女の目の色の事を現しており、倒された者はよく夢にその瞳を見るという。【紫影の従者】が実質的な魔王の諜報活動役であるならば、彼女は少年の最終防衛ラインと言える。聖女と未だ戦闘は行っていないが、それに近い実力を持っているのは確かな事実とも囁かれている。

 

 

 

【武器・道具・能力・術編】

 

『再顕(エフィンゲレ)』

 

エルフ達の使う技能。世界の構成因子【要素】の【本質】を魔力によって現す事で物理法則を無視した芸当が可能になる。例えば、火の【要素】の【本質】をこの技能で使用すれば、熱量が外部因子の作用で失われない、熱量力学、エントロピーの法則に一部反する炎が出来る。これは炎という現象を魔力で概念的世界から引き出している状態であり、火という概念そのものが熱力学に左右されない為。実在としての現象は存在するが、物理法則ではなく概念の側にその事物の形象が保存されている。要は概念の影を魔力で映し出しているようなもの。炎であれば、燃え広がる事が本質である為、何処までも消えない炎が広がっていくし、水なら幾ら熱しても水である本質が変わらない為、熱湯にはならない。

 

『禁断蟲(エクソティシス)』

 

元々は【魔匝窟】にいた他種族の雌を寿命が終わるまで搾取する性質を持った存在で魔力変質した花虫類の一種。捕らえた種族の排泄物、その他の体内で合成される様々な物質まで体内に取り込み、生命活動を保っている。その性質上、生物を貯蔵管理する道具として採取培養される事が多く。魔術師や奴隷商人など人間や魔族・亜人と幅広い種族間で需要がある。一般的に人間は性奴隷を作る際に使用し、これで仕上げられた奴隷は高値が付く嗜好品【悦楽乙女】として特権階級の人々や高級娼館で重宝された。魔術的な智識があれば、比較的簡単に採取出来るものの、取り扱いを間違うと飲み込まれる可能性もあるので通常の国では危険物指定されている。その形状は様々で魔術的な形質変化や形態変化も含めれば、堆積や容量に上限や下限はない。基本的形状として最も基本的(ポピュラー)なのは内部が様々な形の触手になっているもので、交接器と呼ばれる器官(ソレ)から分泌される液体には天然の催淫効果がある。媚薬の抽出にも使われる為、利用の幅は広い。ナーリャに使用されていたものは中型の代物で内部に雌を完全に入れるタイプのもの。これに入れられた種族は殆どの者が口、性器、尿道、尻穴を細い触手で責められ、同時に性感帯を絶え間なく愛撫される為、常人なら一日で精神をその方面に歪められる。入れる日数には制限が有り、一定期間以上入れておくと精神が完全に崩壊してしまう事もあるので扱いは難しい。烙南が使っていたのは小型の代物で主に女性自身が使う事を目的に調整されている。大陸ではこの手の商品が上流階級の女性に人気で、様々な理由から男性との接触が出来ない女性の性欲処理道具として販売されている。

 

『大源高炉(グラン・フォルナシス)』

 

七聖女フルー・バレッサが実用化した魔力収束型の動力炉。魔力の積層化技術の確立によって、地脈などから発せられる魔力を受け取る事で恒常的に大規模な動力供給を可能とする。これらの技術は七教会の秘匿技術の一つだが、現在大陸各国でも研究が進められていて、南部の帝国では既に実用化が始まっているとも囁かれている。

 

『軽殻装(コート)』

 

白と黒を基調とした七教会の制服。その名の通り、ある程度の防護や強化が出来る多機能性装備で首筋まで銀糸の刺繍で七教会の【意匠】である七つの剣が刺さった丘が描かれている。様々な魔術や魔力、超常の力との親和性を考慮された造りになっており、着ただけで並みの鋼鉄の鎧以上の防御力を誇る。様々な力の直撃にも五、六発ならば耐える程の強度を誇り、七教会の軍事関係者の愛用品。

 

『高格外套(ソーマ・パクシルム・ベルーター)』

 

聖女の【奇跡】において聖別、加護を施された汎用対魔王兵装。肌のように密着する分厚い鋼の装甲は攻撃用の魔術、超常の力の悉くを無に帰す物理的強度を誇り、着用者は超人的な身体能力を獲得する【全身鎧】。外界から干渉を防ぎ止める方術防護を持ち、並みの魔術ならば単純に五千回以上直撃弾を食らわない限り破壊する事は不可能という七教会を大陸随一の戦力保有組織とした象徴のような装備。これを着用した兵一千で他種族の頂点存在すら平らげると言われる現在大陸に存在する世界最強の鎧である。様々なマイナーチェンジ品が存在しており、その汎用性と拡張性から七教会の実働部隊は全てコレを使用している。尚、この兵装の大本は魔王の使う黒い外套。

 

『変鋼筒(コンヴァージョネム・フェロー)』

 

主に魔力形質や性質の変換・調整に使われる金属筒。本来は土地や魔術の使用時に使われる兵装の一つだったが【魔導技術】の発展と共に医療用のものが開発され、魔力に関する様々な病症を治療する目的でも使用されるようになった。少年がこれを自らに用いるのは性魔術の効果を調整・拡大する為。本来体内に使用する代物はとてもデリケートな調整が必要で、どんなに太くとも鉛筆程だが、少年は腕のような太さのものを幾つも埋め込んでいる。これは通常ならば激痛が奔るだけでは済まず、魔力変換に伴う体内環境の悪化や魂にまで達する致命的な変異を引き起こす。なので、不老不死である少年にのみ許された荒業と言える。

 

『全身鎧(フルプレート)』

 

身体全体を覆う大陸では時代遅れとなりつつある鎧の様式。これの例外は七教会の【高格外套】のみで、多くの国家は部分的に身体を覆う鎧を採用している。時代遅れの理由としてはコストの問題や魔術付与に関する技術が向上して防御力が上がった事が挙げられる。動きを制限する全身鎧より、魔術付与によって軽装の鎧を強化した方が軍事でも有用と判断された。これは兵は神速を尊ぶという格言から言っても正しく、矛と盾の開発競争が矛の圧勝であるという現実からも正当である。

 

『防刃布(パッチ)』

 

最新の対刃技術を組み込まれた布。学徒憲兵隊が着用する大陸中央式の制服、その内側に使用される。警察機構に近い働きをする学徒憲兵隊にとっては犯罪者の取り締まりも主要な任務の一つである為、負傷率の低下に効果を発揮している。

 

『縛束鋼(リガトゥス・モルフェーメ)』

 

巨大な金属製の立方体で人間が軽々と入れるコンテナ。マロウ専用装備である【終滅】を運搬運用する為に開発された代物で高度な【魔導技術】と【電子噐械学】の産物。聖女達がよく使う“加護”を機械的に鎧へ付与する能力が存在し、この加護による概念的防御や能力の補正はサヤトネに呪いと言わしめた。

 

『終滅(アド・ア・プロキシマ)』

 

マロウ専用の【高格外套】で使用時には八万気圧の圧力に肉体を晒され、四千五百度の熱量と山岳が消し飛ぶ反動を受け切らなければならない。名前の通り、着た存在を跡形もなく消し去る鎧だが、現在七教会で運用できるのはマロウ一人のみ。着用するだけなら不死者と呼ばれる存在も可能だが、そのあまりの内部環境から動く事もままならない。これを着用したマロウが全力を出した場合、物理的に大陸の十分の一を焦土に出来るだけの能力を得る。その意味でも名前通りの性能と言える。

 

『源型(アーキタイプ・モールド)』

 

最初に生み出された品という意味だが、この場合は様々な高度な兵器や兵装類の原初の品という意味で扱う。高位の魔族や神々が特定の品を呼ぶ時に使う単語であり、特にその呼び名で語られる品は伝説級を越えて名前が無かったり、所有者が不明だったりする場合が多い。第一章でこれに当て嵌まる品は二つだけ。少年の常用する黒い外套と剣のみ。

 

『宇宙樹(ユグドラシル)』

 

超巨大な大樹。聖樹や竜樹の異名も存在し、遥か太古から大陸各地に自生する。貴重な魔術の触媒であり、これで作られた防具や武具は伝説級の品となる。主にエルフ達の信仰の拠り所で若木が育つ場所には新しいエルフの集落が立つとされる。七教会は古くから樹の保護や監察を行っていて、エルフ達との間に協定を取り交わしている。大陸には複数確認されていて、基本的に“大森林”と呼ばれる広大な森林地帯の中心に立っている。それらの一帯はとても豊かな土壌を備え、食料や水には事欠かない為、多くの動植物の宝庫。南東部にある大森林の名はハルファス、そして【宇宙樹】はエイファと呼ばれる。この神聖な樹をフルーは独自に栽培、ハティアが極大魔術の触媒にしたが、これは以前の教会ならば考えられないような暴挙である。しかし、その力は絶大で複数の宇宙樹を使い捨てにした一撃は少年を消滅固定状況寸前にまで追い詰めるものとなった。

 

『因痕(キカトリクス)』

 

因果律における原因と結果の断裂。これを操り、干渉する事でサヤトネや【紫影の従者】は様々な能力を使用している。“因痕波”と呼ばれるのは因痕が発生した際に出る因果律の揺らぎで、これを観測する事で七教会は少年を追っている。因果を歪める魔王である少年は隠蔽しても幾らかの因痕波を発してしまう為、基本的には追跡を完全に逃れる事は出来ない。観測技術は既に確立されており、七教会の高格外套には観測機器が標準装備として備えられている。

 

『永劫不刃(えいごうぶじん)の大業物(おおわざもの)』

 

魔王である少年が使う【源型】の一つ。【高格外套】の鉄剣の大本であり、その能力は名前の通り“不変”である。一切の変化を受け入れず、如何なる現象下にあっても変形しない。宇宙が終わっても存在し続けるとされ、あらゆる法則や真理に優越する世界に数少ない“絶対”の一つ。普通の人間が使えば、単なる鈍らでしかないが、少年が使用した場合に限り、如何なる魔術も能力も攻撃も受け切り、断ち切る。少年はよく超高速で射出するが、使用した後はほったらかしにされる事が多い。その場合の回収は【紫影の従者】が行っており、これが実はとても大変。大気圏外に飛んでいった場合など柄の布に刻まれた魔術で場所を特定し、空間跳躍で特定の異相空間に保存するという手間が掛かる。腕を虚空に突き込んで別空間から剣を引き出しているが、これも【紫影の従者】がいなければ不可能な芸当で、かなりの能力資源(リソース)を裂いている。

 

『陰陽(おんみょう)』

 

乂羅式の魔術に近い術式体系。基本的には五行相克を軸とした術で多様性に長ける。これを極めた者は森羅万象を司る存在となり、大陸の如何なる魔術も効かぬ不死身であると囁かれる。【魔導】の発展に伴い、同じような多様性を持つ陰陽も発展した。独自の体系を今も維持する数少ない魔術様式である。

 

『排魔機構(ライン)』

 

この機構は【神門】が生まれる禁山に近年導入されたものである。本来、世界というのは容易には繋がる事はない。だが、その隔たりが弱い場所がファルティオーナには数多く存在し、これらの場所が【魔匝窟】と呼ばれている。これは標準的な魔力濃度が高い魔族側の世界から魔力濃度の低い人間世界への流れが存在する為。しかし、魔族側へ魔力の代わりに世界の構成因子【要素】が流出する珍しい場所も存在する。これを利用したのが時の【神門】である。今までは激流のように加工されていない【要素】の濁流が魔族世界に流出する際の集中を利用して生み出されていた【神門】だが、【魔導技術】の向上で更に洗練した形で【要素】の集積が行えるようなった。【排魔機構】とは次代【神門】の創出の為に整備された【要素】の調整装置と考えていい。

 

『対重力子(グラビティーノ)』

 

ファルティオーナには未だ発見されていない粒子が数多くある。七教会がその分野の先端を行っているものの、あらゆる事象を四百種以上ある魔力を媒質に行ってきた大陸技術の歩みは遅い。魔術で特定の粒子の操作を行う技術はそれなりに存在するが、少年が使う粒子は未だ七教会にも発見されていない。【対重力子】は【紫影の従者】がよく好んで使う粒子の一つで文字通りの重力に関係する粒子。と言っても“場”のようなものであり、実際には魔力によって場へ干渉を行っているに過ぎない。情報をナノレベル以下の構成原子で記述出来る為、様々な術式を最小の力で演算するのに欠かせない粒子。

 

『大写し』

 

【乂羅】において転移魔術の中でも特に異相干渉の大規模なものを一括りでそう呼ぶ。土御門方春に使用された術は少年ではなく【紫影の従者】に拠るもの。例外的に魔族側の世界への流入が起こり易い土地である【乂羅】の性質を利用して、敵に悟らせず異世界へ放逐した。こういった別空間や別次元、別世界へ相手を飛ばす術は大陸でも超高位の存在を封殺する考えとして割りと基本的(ポピュラー)。そういった事を勘案して【紫影の従者】は空間跳躍に関しては抜きん出た性能を少年に与えられている。

 

『錬金果(テオフラストゥス・ドグマ)』

 

少年との戦闘でハティアが使用した錬金の秘奥。全体が相似形(フラクタル)な蜂の巣状の形をしている黄金色の結界。これによってハティアは戦闘の余波による被害を最小にした。全ての変性を拒絶する概念にも近い“非相転移高次結界”で本来ならば聖女の【奇跡】すら防ぎ切る代物。

 

『聖絶(ヘーレム)』

 

七聖女達が共通して使用する術式の一つで自らの超常の力である【奇跡】で世界の法則を編纂し、一種の結界として起動する。七聖女それぞれが己の【奇跡】の性質を受け継ぐ“聖絶”を発動でき、様々な術を飛躍的に向上させる事が可能。何故、特殊な結界で術が強化されるのかと言えば、無数の法則が入り乱れる世界においては他の法則を廃絶した空間というのは極めて外部からの干渉が少なく、純粋な術の制御が可能だからである。

 

『秘儀(プァンクトゥム)』

 

【聖絶】より一段劣る七聖女達の共通術式の一つ。これもまた【聖絶】と同様に【奇跡】による法則の編纂による結界の一種。しかし、基本的に時間が無い時の簡易術式の為、即行性は高いが威力は劣る・・・と言っても魔術に組み込んだ際の威力はざっと十の七乗倍で小さな火を灯す魔術が一瞬で国一つを滅ぼす業火に変じる程の性能を秘めている。

 

『柄(つか)司(つかさど)る女神(メリア)の抱擁(ほうよう)』(マグナ・アメト)

 

“ARBRES”の文言で複数の【宇宙樹】を高速成長させ、対象を内部に捕獲、生命力を吸収しつつ全方位からの大火力で殲滅する極大魔術。【宇宙樹】内部は一瞬で数百万度という超絶の炎獄と化し、核融合を超える熱量とガンマ線で相手は構成物質を崩壊させる。生命力を吸収する【宇宙樹】の性質上、魂すらも分解還元される為、復活は不可能で超高位の魔族でも即死は必至。歴代の魔王と呼ばれてきた魔族達ならば、一撃で滅ぼせる程の力だが、結局・・・少年を消滅状況に固定するまでには至らなかった。

 

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