第二章五節「開花」
薄明かりに解ける吐息は熱く。
瓶の中から薄く赤み掛かった液体が褐色の肌へと垂らされて。
無垢な二つの蕾の上に広がる。
「っ……」
未だ目覚めない小さな少女。
その両手で持ち上げてしまえるだろう姿態が震えた。
意識は無くとも。
快楽を身体は感じる、
未だ女ですらないとしても。
少女は確かに生物学的には牝で。
優しい口付けが蕾の一つに降った。
「っ……」
息は乱れて。
青白くなっていた少女に熱が篭り始める。
「小指から……します……」
幼い身体に薬を使って欲情しつつある青年は未だ名も知らぬ少女のすじを小指でなぞった。
ピクリと身体が震える。
汗がゆっくりと滲んでいく。
青年の怒張はえらまで浮き上がらせて。
未成熟な姿態を征する悦びに浸るのを待ち構えている。
そんな己の雄の業に暗澹たる気持ちになりながらも、青年は自分の半分も生きていないだろう身体に唇と指を這わせていく。
チュクッと唇が蕾を啄ばみ、舌がまだ尖った事もないだろう甘い乳の匂いがする乳頭を転がす。
ピクピクと軽く痙攣しながら、少女は無意識の快楽を受け入れた。
小指がすじの上を滑れば、少女の胎の奥は未熟ながらも熱を帯び、男を悦ばせる膣(なか)がしとどに濡れていく。
プクリとまだ割り開かれた事の無いすじの奥から湧き出した蜜が清廉な薫りで青年の鼻腔を擽(くすぐ)った。
蜜の玉で指を滑らせて、尖っていく乳頭を舌で味わって、まだ少女が幼いとひしひし感じながら、マロウは小さな身体に愛撫し続けた。
「っ…っ…っ……」
喉の奥から漏れる吐息は最初の頃より熱くなっている。
意識が無い身体を蹂躙する征服感が青年の良心を苛んだ。
「準備を、します……」
少女の初めて。
まだ割り開かれた事のない秘裂と蜜の感触は指で触れているだけでも青年の幹を太くする。
極上の絹を何枚にも重ねて熱い蜜を染み込ませたような触り心地。
奥へ肉体の一部を包まれれば、たぶん指ですら腰を熱くさせるだろう。
マロウの細く長い小指が何度すじを往復したかも分からない程熱くなったまま、ゆっくりと膣(なか)へと突き立てられていく。
「っ」
初めての行為。
自分の身体に自分以外の何かが入っていく違和感。
それに少女が眉を顰めるどころか悩ましげな表情になったのは指に絡められた媚薬のせいか。
(こんなにも狭く熱い……此処に…入るのか……)
思わずにはいられなかった。
青年の幹は贔屓目に見ても大きい。
狭くきゅうきゅうと締め付けてくる少女の膣(なか)は小指一本でもきつい。
だが、サヤトネに青年は言われていた。
奥まで入れて出さねばならないと。
(ならば)
青年はゆっくりと抜き差しで小指を深くしていく。
その間にも胸への口付けは忘れない。
「…っ…っっ……」
媚薬と愛撫で高められていく性感が少女の身体を完全に支配していた。
小指を締め付けるだけだった膣は早くも内部の襞で指をしゃぶり始めた。
やがて小指が一番奥まで埋まる。
指先に感じるものがあって、青年が驚く。
(これがこの子の……)
所々に微細な穴を持ち息衝く牝の象徴。
乙女の証。
処女膜もまた内部と代わらず熱を帯びていた。
ゆっくり小指を引き抜くと少女の割れ目の中央が僅か開いて。
コプンと蜜が滴る。
「少しずつ、大きくしていきます……」
未だ意識の戻らぬ少女に告げながら、マロウが小指を薬指に変えて再び蜜穴の抜き差しを始める。
「っ……!!」
片方ずつ乳房とも言えない尖った愛らしい乳首を舌で転がしながら、早く早くと急かす下半身を押さえ付けながら、指が太く変えられていく。
薬指の次は中指、中指の次は人差し指。
少女の襞を指であやしながら、マロウは動きへと変えた。
指を折り曲げ、左右にぐるりと膣(なか)を掻き回す。
「っっ?!」
それは少女に最大の快楽を齎した。
臍の下から玉の汗が恥丘を滑り落ちていく。
未熟な襞をコリコリと引っ掻く度に濃密な牝蜜の匂いが閉ざされた巣へ充満していった。
ようやく青年が少女の奥から指を抜き取った時にはもう少女の股間は蜜で濡れてホカホカと熱気を上げるまでに熱くなっていた。
小一時間が既に過ぎている事に青年は気付かない。
少女のまだ膨らんでいない胸はもう青年の唾液だけで照り輝いていた。
媚薬を刷り込まれた尖りは物欲しそうに空気の中で振るえている。
身体を下げて。
顔を少女のすじの前に持っていった青年は少女の少し開いた中央へと今度は舌を伸ばす。
両指ですじを開き、紅いぬめりを穴に差し入れた瞬間。
「―――っっ?!」
少女は今までとは違う本当の絶頂を迎えていた。
ピュッピュッと青年の舌が迸った蜜に濡れる。
その味は青年には乳のように甘く感じられた。
少女の秘裂の中央を抉りつつ、蜜を零さぬように唇で吸い付いた青年が割り開いていた両手で少女の尻を抱え込むように包んだ。
「っ! っっ!!」
コクコクと青年の喉が軽く鳴る。
神聖で未成熟な牝蜜。
芳しいそれで青年は喉を潤していく。
尻を包み込まれ、最も大切な場所を開かれ吸われながら、少女の肉体はもう完全に牝の喜びの何たるかを学び取っていた。
穴がきつさを残しつつも柔らかくなっていく。
雄を受け入れる準備を整えていく。
それからしばらく。
青年はそのままじっくりと少女の穴を己の舌で広げる事に専念した。
少女が達した回数は意識が無いにも関わらず十回を越えて、更に数を重ねる。
「……これで……」
少女の穴から蜜で糸を引く舌を引き出し、尻を再び巣の中に下ろした青年は明かりの中ですじの中央でぽっかりと開いた穴を見つめる。
人差し指ならすんなりと入りそうな穴は蜜を垂れ流して巣を染みさせていた。
「私は……」
未だ幼い未成熟な裸体。
それに欲情し、あまつさえ雄の槍で貫こうという己の悪行を青年は決して許すまいと思う。
まだ色を知らないはずだった少女は既にもうマロウによって牝としての悦びを受け入れられる身体となってしまった。
本来なら、それは少女が選んだ未来の誰かのものであるのだから、許されていいわけがないと。
「出来る限り優しくしますから……」
背中に片手を回し、もう片方の手で幹がすじの中央へ当てられる。
クチュリ。
水音だけでも幹は震えて、感触にドクドクと脈打ち始めた。
「では、いきます……」
律儀に断りを入れながら、えらの張った先端がすじにめり込んでいく。
「っ!?」
「く…此処まで広げても…きつい……」
そもそもの大きさに違いがあった。
サヤトネの術と媚薬と青年の丹念な愛撫で穴を広げられたとはいえ、それでも亀頭が埋没していく過程は青年にしても過酷だった。
すじが大きく広がって、沈み込んでいく度に蜜が接触した部分から滲んでいく。
グプン。
そんな音がして完全に亀頭が埋まった時、青年は思わず射精してしまいそうになった。
ただでさえ媚薬で獣欲を滾らせていた身体。
今にも少女の事なんて気にせず激しく幹で襞を虐め、子宮口まで貫いて完全に屈服させたいとの欲求が青年を苛んでいた。
並の男ならそうするだろう状況で超人的な理性を働かせながら、極力少女の身体へ負担を掛けないよう青年が先端部分だけで行為を始める。
「ぐ……」
最初は腰を揺する程度。
本当に僅かずつ動きを大きくしていく。
蜜が絡んだ先端は襞の初々しい洗礼を受けながら、射精の圧力を高めていく。
腰の奥に今まで溜めに溜め込んだ精の塊が青年の奥で鈍痛を伴う程に大きく膨れ上がっていた。
チュポチュポチュポチュポ。
「っ…っ…っ…っ」
えらで襞が擦られるだけで肉体に走る衝撃。
少女が今までの人生で得てきたあらゆる快楽を越えている。
小さな穴を蹂躙するという悦びがマロウの獣欲を満たし。
更に先の行為を要求する。
それは少女の身体にとっても望んだ事なのか。
青年の大きさに慣れ始めた穴が青年の幹も深く咥え始めて。
やがて、亀頭が薄くツルツルとした感触のものに触れた。
まだ亀頭から数えて指の関節が一つ分程進んだかどうか。
しかし、厳然と存在する処女膜と亀頭が接触してミチミチと音を立てていく。
「貰います……」
プチンと少女の中で乙女の証が弾けた。
ズリュン。
正にそう表すのが正しい。
少女の狭くきつく先端を埋める事すら苦労する膣(なか)へ。
幹が大きく飲み込まれた。
「くぁ!!?」
思わず青年は射精していた。
ビュリュリュリュリュリュリュリュ。
「っっっ?!!!」
少女の膜を越えた場所は青年の予想に反して広く深い蜜溜まりと化していた。
熱い蜜の泉は入り口とは違い、十分に青年の幹を受け止められる場所で。
一番奥の子宮口へと亀頭が接触した瞬間。
射精してしまったのは必然ですらあった。
汗の浮いた薄い腹。
ぽっこりと雄の槍の形が浮き出てしまった其処が急速に形を変えていく。、
ビュル、ビュル、ビュル。
まだ“初めて”も来ていない清らかな子宮がプリプリとした青年の濃過ぎる精で満たされ、膨れ、蹂躙され、同時に精を生気として少女の体内へと還元していく。
「こんな……」
青年にしてみれば、少女を壊してしまうのではないかと心配になる射精だった。
まるで犬のように終わる気配の無い放精。
猛烈な悦楽と征服感が青年を満たしていく。
世間一般で言うところの種付け。
幼い少女を孕ませる鬼畜の所業。
その開放感に背筋は震えて。
青年はイーステルと交わった時以上に自己嫌悪を抱いた。
己の子種で少女の誰も使った事の無い子宮を穢す行為。
卵巣まで達する精は旺盛に卵子を求め。
生物の根源欲求である種族の保存へとひた奔る。
本来なら、まだ子を孕むような年齢ではない。
その能力もない。
そんな少女の身体の奥。
卵巣が今までの熱の全てに応えるよう活動を始めた。
そう。
今正に少女の命を救ったサヤトネの仕掛けていた罠が少女の牝としての能力を花開かせる。
初めての排卵。
牝として雄の子を孕む為の自然な現象。
だが、今は入ってきているはずのない精子が卵管の奥まで犯していた。
容易く。
本当に容易く。
精が卵子へと殺到する。
そして、一番槍を果たした最初の精が命の卵へと潜り込んだ。
ドクン。
「―――――――」
受精。
受胎の事実が意識を揺り動かしたのか。
「?」
大きくこそならないものの小さくもならない胎の中央を膨らませた姿のまま。
少女は意識を取り戻した。
未だ生気に還元されていく精は青年の幹から注がれている。
ゆっくりと開けられていく瞼。
それに射精しながらも緊張した青年が脳裏で刹那に思考を走らせた。
ぼんやりと薄く開いた瞳が自分を抱く者を見つめる。
言葉は通じない。
穢されている事に泣き叫ばれたら、マロウは首を括りたくなるに違いなかった。
だが、しかし。
「…っ…っ…っっ♡」
少女の中が急激に幹を絞った。
「ッッ!?」
終わっていなかった射精の勢いが激しくなる。
意識を取り戻した少女は遅れてやってきた壮絶な快楽で絶頂していた。
その間、掠れる意識の中。
自分に覆い被さっている青年を直に感じながら、様々なものを感じ取った。
性魔術の影響か。
交合(まぐわい)の果てに同一の生き物のような一体感を得て。
青年の心を少女は知る。
暗澹たる内心。
少女への気遣い。
傷付けまいとする理性。
ボロボロになった自尊心。
それでも少女に対して、まだ出会って間もない見知らぬ他人に対して。
守らなければと決断し苦悩する心。
「 」
少女は急速に回復していく身体を感じながら、“まろう”へと言葉を紡ぐ。
「な、んと……」
言葉は通じない。
意味は理解されない。
でも、たった一つだけ青年は繋がっている少女と共有出来たものがあった。
それは感情。
「どう、して……」
嬉しいとか、ありがとうとか、そんなとても単純な思い。
射精の最中。
罪悪感に苛まれていた青年にとって、少女の感情は予想外過ぎた。
呆然としながらの射精がようやく治まった頃。
少女はもう完全に生気で満たされ、身体の機能は回復していた。
「 」
微笑みながら、何処か恥ずかしそうに目を伏せて、自分とマロウが繋がっている場所の淫靡さに頬を染めながら、少女は何事かを呟く。
そうして、その両手で未だ膨れている胎に触れた。
「っ♡」
ゾクリと背筋を駆け上がる衝撃に身体を震わせて、とろんと甘い表情になった少女はマロウの手を自分の膨れた胎の上に誘導した。
「~~~♡」
触れられた途端に少女は自分の内側にある青年の化身を絞っていた。
襞の一つ一つが青年の精と蜜をグチュグチュと幹の表面で泡立てる。
その動かしていないのに再び達してもおかしくない快楽に蕩けた顔をして。
「 」
少女は青年に呟いていた。
気持ちいいと。
「……君は……」
言葉は理解出来ずとも想いは伝わる。
マロウは少女が自分を許した事も穏やかに受け入れてくれた事も感じ取って、泣きそうになった。
少女の身体が抱き締められる。
「っ」
驚きながらも、その細くも逞しい腕に抱かれる心地に女の悦びを感じ取って、少女は母に言われていた事を思いだした。
逞しく優しい腕を離してはいけない。
それはお前を何処までも抱いてくれる腕になると。
「 」
父と母がしていた行為ならば、少女は知っている。
動物のソレも時折見た事はある。
だから、今の自分が何をしているかは少女も理解していた。
「 」
母がもう少し大きくなって、傍にいたい人がいたら、呟きなさいと言った言葉がその唇から洩れた。
青年は深く少女と繋がりながら、言葉の中にある意思を読み解く。
それは部族の者ならば、男にとってそれ以上の喜びはないだろう言葉。
大陸の共通言語よりも意味は曖昧で。
けれど、確かにたった一つの行為を導く言葉。
翻訳すれば、含有される意味は三つ。
結婚してください。
好きです。
子作りしましょう。
「……はい」
決断は早かった。
けれど、瞬間、何故か。
マロウの瞳からは涙が零れて。
どうしてか分からず。
誠実過ぎた男はそれが自分の罪深さを許されて喜びが湧き上がったからなのだろうと誤解した。
自分が記憶にない誰かを裏切ってしまった事に露程も気付かなかった。
だから、青年は涙を拭い笑顔を浮かべて、穏やかな顔で少女の顔に手をやる。
「♡」
恥ずかしさを覚えながらも青年の手を受け入れた少女は燃える情欲と温かい心地を同時に味わいながら、無意識にまた膣(なか)の幹を甘く絞った。
「今日は…このまま……朝までしなければならないのですが、いいですか?」
心通わせた為か。
少女はもうマロウの言いたい事が何となく理解出来るようになっていた。
コクンと愛らしく首肯したのを確認して。
青年はゆっくりと少女を抱き起し、自分の身体に密着させるよう抱いた。
「~~~ッッ♡♡」
グジュッと全体的に幹の半分までしか届かない少女の膣(なか)が擦られ、子宮口が亀頭で圧迫される。
「すみません。でも、これから…精が出なくなるまでしなければならないので…あまり背中を痛めないよう。この体勢で…く……」
青年の汗に濡れた肌と密着し、青年の匂いに包まれ、青年の化身に自分の一番奥を貫かれ、少女は陶然となって、もうただ青年の事ばかりを考えるようになっていた。
ちゅっと胸板に口付けがなされる。
青年はそのこそばゆい感覚に笑んで少女の頭を撫でる。
淫らに繋がっていながら、穏やかな快楽の中でいつまでもそうしていたい。
マロウもそう素直に状況を受け入れられるようになってきていた。
「…ま…ろ…ぉ♡」
「名前を…はい。私は…マロウです」
「ま…お…ぅ?」
クスクスと笑みが零れた。
少女は牝の顔をしながら愛らしく青年に名を呟く。
「魔王ではなく。マロウです……」
他愛ないやり取りで少女との行為に浸りながら、今度は少女に青年が訪ねた。
「貴女の名前を教えてくれますか?」
「な…ぁえ?」
「マロウ…貴女は?」
自分を指差し、今度は自分を指差した青年の言いたい事を理解して少女が顔を綻ばせて頷く。
「あいれん~~~~~~~~ろこ~~~~~」
大陸標準言語には無い発音で聞き取れたのは二つの単語だけ。
【アイレンの泉に住まうロコに連なる家の七番目の子】
それが正式な少女の名前だったが、マロウは通常の思考でアイレンと少女の名前を勘違いした。
「アイレン?」
「……?」
少女は少し考え込んだものの、自分が泉に住まう部族の最後である事を思い出して、頷く。
「では、アイレン…その、言い難いのですが、さっきから少し……」
マロウが罰が悪そうに頬を掻く。
途端に少女は自分の中で幹がゆっくりとまた膨れていく事を感じて、そうなのだ、と気付いた。
少女もまたモジモジとした後、頬を真っ赤にしてコクンと頷く。
「では、少しずつ」
「♡」
尖る二つの蕾に伸ばされた手がクニッと潰された。
ピュチュッと繋がっていた場所に再び蜜が滴っていく。
穏やかだった情欲の熾火(おきび)が燃え上がり、少女は知らず吐息の熱さに舌を出した。
チュグ、チュグ、チュグ、チュグ、チュグ。
穏やかな抽送。
少女の始めはきつく締め付ける膣(なか)は深くなる程緩やかになる。
まるで男性用の性具の如く。
雄を悦ばせる為にあるような具合にマロウは高まる射精感を抑えながら、少女へと奉仕する。
「っ♡ っ♡ っっ♡♡」
乳首と膣(なか)と子宮口を同時にされる快楽に少女は唾液を垂らして喘いだ。
その腕はせがむように青年の腰に添えられている。
気持ち良くて。
心地良くて。
動物のしているのを見ても理解出来なかった事が少女にはようやく分かる。
自分は目の前の人にそうされる為に生まれてきたのだと。
優しくて、温かくて、嬉しい。
もう全てを失っている少女にとって、青年との行為は奇跡のように思えた。
だから、その大切なもの逃がしてしまわぬよう、狩りで獲物を捕らえる時のように、少女はキュウッと青年の化身を掴んだ。
「……そんなに締め付けたらっ」
グヂュン。
子宮口に青年は鈴口をぴったりと押し当てた。
行為が激しくなくともやってくる射精は一度目とは比べものにならない。
ただの快楽ではない。
心を通わせた先にある行為の到達点。
「~~~~~~~~~ッッッ♡♡♡」
ドポポポポポポポポポポポポポポポポ。
勢いよく精が少女の子宮を満たした。
既に男を知り、穢れる悦びを知り、受精していた胎内が、少女にこの上ない淫らな心地良さを教える。
強い雄に征服されて、所有される悦び。
何ものにも勝る牝としての本能の充足。
襞が再びの射精に子宮から逆流した精で染められて戦慄く。
「く、可愛いですよ…アイレン……」
淫らに歪んだ顔はだらしなく舌を垂らして唾液を滴らせた。
身長差から唇が届かない青年は口付けの代わりに指を少女の舌に乗せる。
「っ♡」
チュ、チュ、チュ、チュ。
アイレンは嬉しそうに笑みを浮かべて、指に舌を這わせた。
まるで青年の幹を愛撫するような口付け。
その愛らしい様子に射精を続けながら、子作りの快楽を覚え込ませてしまった少女を愛そうとマロウは内心で固く誓った。
全てはサヤトネが準備した以上の成果だった。
大陸最強の刃の使い手はゆっくりと罠へと絡め取られていく。
愛という楔こそ、この世で最も強固なものであると自覚せぬまま。
*
―――大陸中央七教会本部大聖廊最奥禁忌書庫。
「ふふふんふふ~~~ん♪」
パラパラと本が捲られては長いテーブルの上に平積みにされていた。
立派な装丁のものもあれば、装丁どころか白い紙であったり、黄色く変質した紐閉じの日誌みたいなものもある。
その種類は多種多様。
七教会の書庫係、主に秘技や秘奥を秘匿する部署の長老達が見れば、腰を抜かして魂が口から出るか。
あるいは烈火の如く怒って大陸中に指名手配するかという所業。
そんな行為を平然と行いながら、鼻歌混じりに値段の付けられない古文書の類を無造作に扱っているのは七聖女フルー・バレッサだった。
七人の聖女達はそれぞれが大陸の各地に本拠地となる教会を持って活動しているが、彼女だけは例外。
その枠に囚われず神出鬼没とされている。
大規模な法術やら魔術やら大陸有数の超常の能力を持つ者達が恒常的に閉ざしている場所を我が物顔で誰にも気付かれず歩く姿はのほほんとした空気とは裏腹にかなり際どい。
教会の旧勢力から弾劾されても文句は言えない悪行である。
それなのに少女は持ち込んだ近頃話題のお茶菓子をパクつきながら何処から取り出したかも定かではないティーセットで紅茶を嗜んでいたりする。
「はぁ~~しあわせ~~~世の中よくなったもんだよぅ~~」
甘い香りに満たされ周囲に花でも咲き乱れそうなくらい和んだ様子でフルーは本を左端から右端へと移動させていく。
何をしているのか普通ならば理解不能。
何をしているのか知る者ならば顔を強張らせただろう。
本の内容を触って全て頭の中にいれているのだ。
しかも、禁呪とか見ただけで強大な化け物になるとか永遠の牢獄に閉じ込められるとか大陸を滅ぼす竜が封じられているとか魔王の魔力を封じ込めて使用できるとか。
そういう教会が数千年の月日を掛けて蓄積してきた叡智と邪悪の結晶である書籍を。
「ん~~~この香り!! 生き返るぅ~~~♪」
もしも他の人間、いや、あらゆる存在が同じように本の内容を頭に詰め込んだなら、狂い化け物となるか、ただの砂と化して崩れるか、または大陸に禍齎す何かとなって天と地を覆うだろう。
その点で彼女の頭脳は何者をも超えている。
無限と讃えられる神ですら、その情報に変質を余儀なくされる可能性は高いからだ。
「それにしてもだーれも納めるばかりで整理してないから年代もばらっばらとか。そろそろ此処も改装の時期? 三千年も溜め込みっぱなしは良くないよねぇ~~~」
禁忌書庫内部は膨大とは言い難い幾つかの棚で構成された図書室のような場所である。
それもそのはず、納められる本の全ては教会が永遠に秘匿すべきと判断した情報が記されたものばかりで並みの危機を齎すものとは随分と訳が違う。
本の情報一節、あるいは一行が流出しただけで七教会が全力で情報の抹消と回収を行わなければならないような曰く付の代物ばかりが其処には置かれているのだ。
「それにしても見つからないよぅ~~誰が【総主教(パトリアルヒス)】の日記隠したのか調べないと」
今日最後の一冊を読み終えた聖女は眼鏡の位置を直してから指を弾いた。
転移で一斉に元の書棚へと戻った本は跡形も無くテーブルから消え去る。
「疲れたぁ~~お仕事終わり! 今日は頭使ったから近頃話題のお店めぐりでスイーツ食べ放題ツアーかなぁ♪」
気ままな自由人とか歩く大書庫とか武器庫とか何でもありとか、そんな風に本人の性格を知る者達から称賛される彼女は基本的にお菓子と紅茶があれば世界が滅んでも生きていられる人種だ。
甘味をこよなく愛する聖女が贔屓にする店は開店した瞬間に全ての品が売り切れる大繁盛店となる。
ただ繁盛し過ぎた末の過労で職人が倒れるのでよく閉っていたりもする。
何にしろお騒がせなフルーは部屋の正規の出入り口である大仰な封印が施された扉とは反対側にある木製の扉で外へと出た。
こっそり自分用に設置した出入り口。
従来、正規の入り口以外から部屋に入れば内部はあらゆる存在を抹消する魔術のオンパレード状態となるのだが、技術のみで大陸を変革している聖女にはちょろいものらしい。
正規の手順で入ったと誤認させつつ、あらゆる監視の目を片手間に誤魔化す手腕は正に神業。
この数十年、本を一冊納めただけで使用されていないはずの部屋。
それが変化していると教会が気付くのはまだまだ先の話に違いない。
扉は転移の魔導でフルーの私室へと直結している。
正に自分の書庫替わりに禁忌書庫を使っている聖女は鼻歌混じりに散らかった部屋の奥へと帰還した。
部屋というよりは超巨大な倉庫と言った方がいいかもしれない。
雑多なものが置かれている室内は上からぶら下がった洋光(ランプ)の明かりに照らされて、食べ終わった菓子の箱やら何か幾何学模様が書き込まれた紙の山を晒している。
地面へ無造作に打ち捨てられている剣や盾やどう見ても次世代の兵器と思しき鋼鉄の塊や小さな玩具や某国の王宮の見取り図や大陸経済の予測値が書かれた紙など諸々は、特定の人間にしてみれば宝の山だが、普通の人間にしてみれば塵(ガラクタ)だろう。
「これで完璧」
敵である魔王(しょうねん)が使う黒い外套と瓜二つの品を身に纏い、顔にマスクをして、変質者と疑われる恰好となったフルーは早速スイーツ食い倒れの旅に出る為、その場を後にしようとして。
「あ、そうそう。忘れるところだったよぅ」
倉庫の奥に視線を向けて手を伸ばした。
聖女へと遥か遠方からフワフワ浮いて巨大な鋼鉄の塊が引き寄せられてくる。
【縛束鋼(リガトゥス・モルフェーメ)】
大陸最強の男の装備を運ぶ為に創られた匚(はこ)だった。
「マロウもそろそろ返って来てくれないと困るしねぇ。主にハティアの精神安定剤的な意味で。探しておいで【終滅(アド・ア・プロキシマ)】」
軽く聖女が言うと浮いた匚の周囲に膨大な魔術方陣が浮かび上がり、三次元的に展開された。
通常転移とは異なる。
別空間を通り抜ける事で転移する術式。
匚の下に漆黒の闇が口を開き、超高密度の【秘義文字(アルカナ)】が匚を覆い尽くした。
「じゃ、行ってらっしゃい。見つけたら、そのままハティアのところに転移でいいから」
ズブズブと闇の底へ捻じれながら巨大な鉄塊が消えていく。
十秒もすると完全に闇へと沈み込んだ。
方陣が弾けて消える。
後には何も残らず。
これで心置きなく旅立てるとフルーは外へ続く扉へと踵を返した。
青年の物語が動き出す。
誰にも結果が予測できぬままに。
一つだけ言えるのは騎士マロウ・ブレステンドはもはや存在していないという事だけだった。