※この作品はR-18です。

聖娼館ハルトゥム   作:Anacletus

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第一章七節★

第一章七節「煌々」

 

 月明かりが照らし出す森の中。

 

 木々に遮られながらも漏れてくる光が差し込む馬車の荷台。

 

 パチパチと薪の爆ぜる音を聞きながらダークエルフの少女は自分を包み込んでくれる「ご主人様」の温かさを感じていた。

 

 起きた時から、ぼんやりと感じていた熱。

 

 それは少女が蟲によって完全な性の道具にされてしまった事に起因する。

 

 例え、媚薬を抜かれても。

 

 例え、刻印を取り去られても。

 

 意識の底、肉体の最奥にまで刷り込まれた娼婦(どれい)としての性はすぐ消えるものではない。

 

 ただ、自分に優しくしてくれる人。

 

 ただ、自分の頭を撫でてくれる人。

 

 それだけだろうと、僅かな感触は十分な刺激となってナーリャを襲っていた。

 

 少年の笑顔は少女の胎の奥を熱で満たし、撫でる手は媚薬より尚高く少女の心を舞い上げる。

 

 気持ちいい事をしてくれるという前日の言葉を少女はおぼろげにでも覚えていたし、早くそうしてくれないかなとも期待していた。

 

 だから、服を買われ街の片隅で着せられてからもずっと…少女は少年に接触を繰り返したのだ。

 

 名前を教えてもらって。

 

 名前を呼びながら、する、為に。

 

 蟲の調整で包皮が失われた其処、股間の最も敏感な陰核(クリトリス)を疼(うず)かせて。

 

(このひとは…なーりゃの…ごしゅじんさま…なーりゃのこと…気持ちよくしてくれる…ひと…)

 

 少年は気付いていたが、少女の秘部はただ下着を付けただけで反応し、その胎の奥を熱くし、ただ歩くだけでも下着で擦れた突起が常に軽い発情状態を維持させていた。

 

 何事も無く見えていたのは少女の基礎的な状態がずっと発情という状態で固定されていたからだ

 

 イフィミスラは気付かなかったが、ナーリャの股間は少年に触られるまでもなく、その内側を常に濡らして、その内側に入り込むものあらば、チュウチュウ吸い付いて快楽をしゃぶる蜜壺となっていた。

 

「ナ、ナーリャ……」

 

 少年の腕の中で淫らな顔をするダークエルフの少女を見て、イフィミスラがゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「くぅぅん♡」

 

 少年の手が僅かな膨らみを服の上から優しく触る。

 

 揉むのではなく何度も何度も触れて滑らせる。

 

「やぁ…んひゃぅ!? ぁ♡ ぁ♡ きゅぅんっっ!!!」

 

 まだ直にも触っていないのにナーリャの乳房の頂点は固くなって自己主張を始めていた。

 

 ブラジャーなんて下着が出回っているのは大陸中央付近だけで。

 

 庶民の女は見られたくないなら何かを重ね着するくらい。

 

 故にナーリャの乳首は汗に濡れていく薄い木綿の生地越しに透けて見える。

 

 水浴びで同年代の少女の姿態は見たはずのイフィミスラですら、その少女の透けて見える乳房の形に息を呑んだ。

 

(あ、あんなに尖らせて。い、痛くない、のか? ナーリャは……)

 

 己の乳房の先が少し尖ってしまっている事にイフィミスラは気付かない。

 

「ひぅ!! んぅ♡♡ てぃぁぁ♡ あかひゃんのあにゃもぉ♡♡」

 

「気持ち良くして欲しいの?」

 

「うん♡ うん♡ してぇぇ!!!」

 

 腕の中で甘える少女の期待通り。

 

 乳房を滑る手とは反対側の手がそっとナーリャのスカートを捲り上げ。

 

 股間の横にある下着の紐を解いた。

 

 ゆっくりと落ちていく下着がペロンと捲れた瞬間、その光景を真直に見ていたイフィミスラは自分の腰の奥が一瞬で熱くなるのを感じた。

 

 ナーリャの其処は完全にグチャグチャの状態だった。

 

 一筋の割れ目は慎ましやかに閉じているのに。

 

 その周辺は咽るような雌の蠱惑的な薫りを立ち昇らせている。

 

 下着と筋の間にまるで水飴のような粘度の蜜が糸を幾つも引いて、その淫靡な情景はまだ幼いイフィミスラにとって刺激的過ぎた。

 

(んぅ。ぁ…わ、我は…こ、こんな…ゃ…ゃぁ…下着…気持ち…悪い……)

 

 クチュンと又を間から少しだけ溢れた蜜がイフィミスラの下着に沁みて、ゆっくりと粒になり荷台の床に一滴糸を引いて落ちた。

 

「てぃぁぁ♪ してぇ♡」

 

「いいよ」

 

 二人の少女が着ている服は基本的にそう違わない。

 

 木綿を使って、女性らしい艶やかな朱の色で仕立てられたワンピース。

 

 遠目には仲の良い姉妹のようにも見える二人の少女は同じ色の服を着ている。

 

 だからこそ、イフィミスラはその少年の指がゆっくりとナーリャの割れ目へと触れてなぞり始めた時、自分の大切な場所に触れられているように錯覚した。

 

「んにゃぁぁああああああああ!!?」

 

 盛った猫のようにナーリャが啼く。

 

 クチュン。

 

 ほんの僅か割れ目に少年の指の先が沈み込んで擦られただけで達した。

 

 ビクビクと体を震わせて、だらしなく唾液が零れて喉を伝ってゆく。

 

(ぁあ、わ、我…我は今…こんなぁ…恥ずかしいのだ。我もこんなにぃ…あふれぇ…くぅん!?)

 

 ただ見ているだけのイフィミスラは自分の下着の沁みからまた一筋蜜が溢れて糸を引いて落ちたのを感じてもぞもぞと股間を擦り合わせた。

 

 王宮では密事に関して喋る事は固く禁じられていた。

 

 無論、女達の園ではその限りではなかったが、イフィミスラは今よりもっと幼い頃から博学の方が噂話やお喋りより好きだった。

 

 そんな王宮では異端な少女が年頃の恋や密事の話題に関して感心を示すようになったのは近頃になってからで、同年代の貴族の子女達が話している色事の十分の一も実際に聞いて理解出来なかった。

 

 そんな純真を絵に描いたような幼いイフィミスラは勿論こんな濃密な情事を見たことは無く。

 

(こんなぁ……濡れて……どうして我も……ぅぅ、きもちぃぃのだぁっ!!?)

 

 自分の股間にどうして同じ蜜が溢れてきたのか理解出来ていなかった。

 

「―――!!」

 

 なぞられ続ける筋の奥から溢れたナーリャの蜜が少年の指の間でニチャニチャと音を立てて、それを少年はこね回すように他で少女の秘部全体を触っていく。

 

「♡♡♡」

 

 もう完全に声も出なくなった少女は少年の腕の中で体を跳ねさせながら、達している自分を感じる事すらなく、ただ与えられる快楽を貪り、呑み込み、甘く歪んだ顔をイフィミスラに曝け出すだけだった。

 

 気持ちよさそうな、だらしなくて、淫らで、どうしようもなく雌の顔をした、ナーリャの幸せそうな笑みに、イフィミスラは既に朦朧としながら無意識に自分の股間へと手を伸ばしていた。

 

(ぁぁ、ここ…ふれたら…気持ち良い…のか? なーりゃ…われ…われも…ここ…わらわの大切なここ…母上も言っていたのだ。ふれて欲しい人のまえなら、さわってもよいと……)

 

 今は亡き母。

 

 湯女(ゆな)が体を清める王宮にあって、己の子を自分で洗い清めたイフィミスラの大切な人。

 

 その人は湯の中で自分の体に興味を持ち始めた娘が自分のそこを触ろうとした時、そっと笑顔で止めて、言っていた。

 

 ここに触れて欲しい人が出来たら、触っても良い。

 

 そう言っていた。

 

 今も脳裏の奥に仕舞われている思い出が少女の瞳の先を少年へと変えさせる。

 

「気持ち良い? ナーリャ」

 

「あ゛っ、あ゛っっ?!! ティ、アァァ♡♡♡」

 

 辛うじて。

 

 何度も達する意識の中でナーリャは少年の名を呼んで答える。

 

「それじゃあ、今日は“此処”を触ってお終いにしよっか?」

 

 優しい笑みで少女の首筋にそっと唇を一度付けて、耳元に悪魔の如き、いや、少女にとって神の福音にも等しき声が響く。

 

「――――――ッッ!!!?」

 

 蕩けた意識の最中、ナーリャは自分の其処を見た。

 

 ゆっくりと少年の指が包皮の無い真珠を、自分の一番気持ちいい場所を、押し潰して捏ねり潰す様を。

 

 ガクンと一度大きく身体を強張らせて、ブルブルと背筋を逸らせながら、ナーリャは十七度目の絶頂、最大の衝撃に仰け反って、プシャァアアと股間から大量に潮を噴出した。

 

「ふぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッッッッッ♡♡♡」

 

 遅れてやってきた叫びは濁って、雌というより、ただの獣の声で。

 

「――――――!!!!」

 

 ついに自分の指で下着の上から股間を触ってしまったイフィミスラは、運悪く、女の最大の弱点である突起を包皮と下着の上からとはいえ、押し潰してしまい。

 

 プチュァッとその股間から流れ出る黄金色の水を漏らした。

 

(われ!? われ、は!? ひぅきゅぅぅぅぅん♡)

 

 訳も分からず。

 

 自分の指が生き狂いそうになっているナーリャの頬へ優しく口付けした少年のものならと、そう妄想して、初めての自慰の心地よさと快楽、達した際の背筋を焼く甘い衝撃をまともに受けて、イフィミスラは意識を落とした。

 

「あ、イフィミ……」

 

 今までナーリャにばかり気を取られていた少年は反対側で己の股間に指を這わせてチョロチョロと失禁してしまっているイフィミスラの姿を発見し、ちょっと困った風に笑った。

 

「刺激、強過ぎたかな。ごめん」

 

 股間を下着をドロドロにした乙女が二人。

 

 片や愛液で。

 片や小水で。

 

 達して意識の無い少女達の匂いに満たされた荷馬車の中。

 

 床をどうやって掃除しようかと考えながら、少年はそっと幌の外。

 

 明るい空を見上げる。

 

「サヤトネ。もう少し頑張って…」

 

 追い掛けている少女。

 

 先行しながら少年の為に偽装を行い続ける少女。

 

 離れながらも七教会からの追跡を受けているだろう従者の名を少年は口にした。

 

 聖女の力に偽装を破られた事。

 

 騎士の前に重症を負った事。

 

 そのどれもを感じながら。

 

 それでも少年は冷静にただ己の従者に声なき声を送る。

 

 声届かずとも。

 

 必ずそうするだろう従者に向けて。

 

『あーはん? 魔王様ともあろうものが、何ともセンチメンタルねぇ』

 

 野太い声は突如として少年の背に向けて放たれた。

 

 何も言わず後ろを振り向いた少年は馬車の御者台に座る巨大な男を見つける。

 

 圧倒的な筋肉。

 

 大木程もあるだろう四肢。

 

 聖衣と呼ばれる教会のものが常用する制服だった。

 

 袖はなく腰から足元にまで及ぶ前掛けのような白い布には七つの剣が金糸で刺繍されている。

 

『んもぅ!? そんなに見つめちゃ、い・や・よ?』

 

 男はその体躯に似合わず女のようにシナを作った。

 

 岩石を彫り込んだと思しき顔には赤い口紅(ルージュ)が引かれている。

 

 その姿をもしも常人が見たならば、一も二も無く逃げ出すだろう。

 

 男は世に言う女男(オカマ)だった。

 

「いつも通り、悪趣味なのは別にもう慣れたけど……いつも何も着てない君が、どうして教会の制服なんて着てるのか教えてくれない?」

 

『んふふぅ~~教えてあげませぇ~ん~~』

 

「……」

 

『あら、やだ。怒らないでよぉ~~。こっちは耳よりな情報を持ってきてあげたってのに』

 

「あっち側の【血統種(ブラッディ)】で最高官位に付いてる君がこっちに来る時は大体戦争が起こるか、小物がこの大陸に何も知らず顕現する時だけじゃなかった?」

 

『盟約も守らない小物がこっち側に来る時はお知らせするわよぉ~~。それがこちら側とあなたとの契約なんだから♪ でもぉ、あなたが怒り出すのが目に見えてる“昔からの状況”とかも引っかかるじゃない? だから、今日はお知らせに来たってわけ』

 

「【天の軍勢】(ツェバオート)の対応に忙しい君がお知らせする程の事なんてあるのか。凄く疑問なんだけど……」

 

『んふふぅ♪ あっち側はあんたに頭(トップ)をぶち抜かれてから、もうこっちに来る理由とか失くしちゃってるし、こっちとのやり取りもぶっちゃけ惰性なのよね。だ・せ・い♪ 分かるでしょ?』

 

「それで? 前置きが長いのは好かれないよ」

 

『んもぉう。せっかちさん♪ じゃ、はい。地図』

 

 男が何処から出したのか一枚の地図を少年に手渡した。

 

 世界に唯一の大陸。

 

 その詳細な一般には出回っていない類のソレを見て、少年が目を細めた。

 

『近頃、七教会が幅を利かせてるじゃない? それでねぇ。一回あなたを倒す為に団結した異種族に横の繋がりが出来たらしくて。これから人間様の駆逐大パーティーらしいのよ』

 

 少年の地図には普通なら地図に存在しない記号や文字が複数書き込まれていた。

 

 それを特定の権威が見たならば震え上がったかもしれない。

 

 地図に書き込まれているそれらは全てが異界のものだった。

 

 それも酷く物騒な文字と記号ばかり。

 

「何処まで調べたのか聞いていい?」

 

『いいわよぉ♪ 調べさせたのだと、何だかエルフ、それもダークエルフとか、あそこら辺が計画をブチ上げたみたいねぇ』

 

「確かにまだ異種族狩りで黒い肌の人型亜人を奴隷にしてる国はあるけど、七教会が治める地域では禁止され始めてる。この時期に旗を揚げる理由なんて…」

 

『知らな~~い。あたしはこっち側から昔に供与された力があるから、あなたが怒らないようって上に言われて来ただけだしねぇ』

 

「……無責任って言葉は君達の為にあるとつくづく思う」

 

『まぁ、魔族だもの。んふ♪』

 

 魅惑と即死の魔眼を併せ持つ稀有な瞳がパチリとウィンクした。

 

 勿論、それを受ければ人間ならば即死。

 

 男なら精子を吹き上げ絶頂しながら死ぬだろうし、女なら潮を吹きながら雌の顔になって死ぬだろう。

 

 無様で愚かで矮小な人間ならば。

 

「戦略級が三つに準大陸級が一つ……よくこんなのを残しておけたと感心するけど、今の時代には物騒過ぎない?」

 

 少年が顔を顰めて地図を男に返した。

 

『使用するかはあちら側の話。あたし達には一切関係ないって一応言っておくわよ。あ、それとあんたの内側にいる我らが主達も大体関わってたみたい。まぁ、頑張って。優しい魔王様♪』

 

 バサリと音がした。

 

 男の背後に翼なんてない。

 

 しかし、周辺には羽ばたきが響いていく。

 

 もしも、気を失っている少女達がその時空を見上げたならば、きっと驚き震えたに違いない。

 

 空に掛かる月が何か黒いものに遮られ、星々が失せていく光景を見て。

 

『愚かしい人類に愛想を尽かせたら、いつでも呼んでね♪ その時は今の“上”を葬り去って、いつでも我らが世界の王として忠誠を誓うわ。全ての御霊を持つ者に栄光あれ。あーはん?』

 

 ふざけた物言いはいつもの通り。

 

 御者台に今まで寄りかかっていた男はその重量を感じさせる事もなく、失せた。

 

 今まで誰かがいたという痕跡を何一つ残さずに。

 

「……」

 

 少年は溜息を吐いて。

 

 未だ眠っている少女達を見つめる。

 

 起きていなくてよかったと思いながら。

 

 ダークエルフの少女に申し訳なさそうな顔をしながら。

 

「早く拭いてあげないと」

 

 少年はいそいそと買い込んでいた布を取り出して少女達の体を拭き始めた。

 

 その夜、大陸北東部全域で大量の鳥類が死滅する謎の事態が進行。

 

 干乾びた鳥の死骸の数は数百万とも数千万とも言われ、大いに人々の関心を引く事となる。

 

 少年の旅には新たな暗雲が立ち込めようとしていた。

 

 *

 

――――――ファサルトス皇国連合東端ディシグニア皇国領国境地帯緩衝領域より。

 

 皇国連合は基本的に旗頭とした血筋の残る国に小国を寄せ集めた集合住宅の構造を模した国と言える。

 

 七教会という外敵から身を守る為、今までお隣さんでしかなかった者達が声を掛け合い、町内会を形作るような、そんな関係だ。

 

 だが、町内会が家の内部事情にまで足を踏み入れてくる事が無いように、各皇国領も己の問題を領内に留めおく事になる。

 

 その一つが連合の東端ディシグニア皇国領の緩衝領域だった。

 

 それより東は極東に位置する【乂羅(がいら)】と呼ばれる大国の地。

 

 常に東からの侵略に脅えていたディシグニアの苦肉の策は“この領域においては如何なる者も責任を負わず又咎めないものとする”というものだった。

 

 そうして極東と北東部の境界は修羅の巷と化した。

 

 犯罪者、流れ者、ならず者、傭兵、不法な商品、奴隷、人肉、阿片、土地を奪う者、土地を奪い返す者、国家、商会、乞食、魔術の生贄、人間の臓器、誰かの性器、殺し、殺され、法は無く、罰も無く、強者すら栄華を誇るは短く、無数のバラックも、巨大な娼館も、技術も、夢も、希望も、絶望も、孤独も、詐欺も、強姦も、武勇も、後悔も、あらゆるモノが、あらゆる混沌が、許された。

 

 皇国領に編入されてからもその地をディシグニアは治めることもなく。

 

 国境地帯周辺に強固な砦を幾つも置きながら侵略の機を乂羅に失わせていた。

 

 そこへ攻め込めば、あらゆる勢力を相手に莫大な損失を出す事になる。

 

 戦争はただ軍隊で責めればいいというものではない。

 

 例え、そこを灰にしても、多くの勢力は全てを置いているわけではないのだ。

 

 国といえども、人の集まり。

 

 多くの人間が国を非難する事になれば、国力は下がっていく。

 

 更地にするのは簡単だが、その更地にした後の処理がどれだけ国を傾けさせるのかを理解した乂羅はその地域が出来て以降、ディシニグニアへの侵攻をほぼ諦めた。

 

 そんな地域の一角。

 

 ファサルトスの内地へと進む数人の一段があった。

 

 全員が灰色の外套に身を包み、頭までスッポリと覆って顔を俯けて歩いている。

 

 大通り。

 

 今正に大量の阿片が買われ、露地で女の嬌声と血の沁みが広がっていく其処で誰も彼らを注目する事はなかった。

 

 怪しい者なんて幾らでもいる。

 

 いや、怪しい者しかいない緩衝地帯で一々他者に構うのは金銭か欲望が絡んだ時だけである。

 

 掟というよりは人々の無意識。

 

 沈黙の了解は他者への関心の多くをその地で暮らす人々に失わせていた。

 

「宿を取る」

 

 外套達の一人がポツリと呟き。

 

 比較的大きな宿屋。

 

 少なくとも宿ぐるみで止まった客を食い物にしない場所へと全員が入っていく。

 

 一室を金貨三枚で借りて全員がその部屋の内へと入った。

 

「ふぅ。やはり人のこの汚臭には慣れませんね」

 

 そう言って二つしかない寝台の一つに腰掛けて、一人がフードを取った。

 

 その耳を見る者があれば、エルフだと分かっただろう。

 

 しかも、女だった。

 

 高値で売れると女を鹵獲しようする輩がこの地では殆どだろう。

 

 エルフの美貌と金髪はとにかく高い。

 

 堕ちた者でも露地に立つような者はおらず娼館に落とされる者が全てだ。

 

 男なら男娼として。

 女なら娼婦として。

 

 時に豪商や時の権力者達に囲われる事もある。

 

 吊り目の女エルフは瞳に下劣な人間への軽蔑を込めて、木戸の外から聞こえる多種多様な雑音を努めて耳に入れないよう目の前の同胞達に視線を注いだ。

 

「だとしても、我々は進まねばならん」

 

 外套の一人が顔を出した。

 

 こちらも同じ耳を持ったエルフだったが、美貌はともかく男だった。

 

 しかも、その肌は褐色で砂漠の民を思わせるような力のある瞳をしていた。

 

 本来、ダークエルフとエルフには天と地程ではないにしろ確執がある。

 

 エルフの中にはダークエルフに対して呪われていると囁く者もある。

 

 しかし、エルフの女はそのダークエルフの男にそのような感情一つ無く。

 

 それどころか好意的、もしくは本当に好意としての感情を込めて頷いた。

 

「はい。貴方の妹さん。きっと、助けましょう」

 

「ああ、助けてみせるさ。君のようにわたしに付いてきてくれる者がいた。それだけでも森の長には感謝してもし足りないんだ。きっと、この礼は妹を助けた後。必ず」

 

「いえ、そんな貴方の想い。その美しい兄妹愛に誰もが思っただけです。この下劣な人間の満ちた地に一人でも乗り出していこうと、そう決めた貴方の顔にこそ我々は付いてきたのですから」

 

「済まない。本来ならば、オレのような身分の者の下に付くのは不名誉だろうに……」

 

「そう言わないでください。貴方の矢は万里を奔り、魔を払う。その力は真正で神聖なるもの。その力の持ち主と共に旅が出来るのです。誰も貴方を格下になんて見ていませんよ。アーフル」

 

 微笑んで女が言うとアーフルと呼ばれた男は僅かに頭を下げた。

 

「オーレム。君はこの中で唯一の女だ。寝台の一つは……臭いはきついだろうが、君が使ってくれ。後の者で疲れた者から優先して休憩をこちらの寝台で」

 

 外套の中の男達が頷いて僅かに囁きを交わすと一人以外が全員床に座って壁に背を預けた。

 

「その貴方に一つ聞きたい事があったのですが……」

 

 オーレムと呼ばれた女がそう壁を背にしたアーフルに尋ねる。

 

「何だろうか?」

 

「妹さんは本当にあの巫女としての力を?」

 

「ああ、長老達はひた隠しにしていたが、間違いない。昔から矢はオレ以上に上手かった。飛び跳ねる魚を一矢で三匹貫いたのは五歳の時。それ以来、あの子は不思議と運が良いというか勘が良かった」

 

 懐かしそうな顔。

 

 男がそんな表情をしている事が素直に嬉しくて、オーレムが笑顔で「そうですか」と頷いた。

 

「長老達は厳としてアレを使い人間を滅ぼす事に同意しなかったが、あの子はそれでエルフの住む場所と尊厳が、兄様が戦わなくてよいのならと……そんな優しい子だった」

 

「……今、族長会議では使用権限の委譲が行われています。長老の方々は拒まれているようですが、それも時間の問題でしょう。貴方の街が襲われたのは本当に痛ましい事でしたが、あれで長老の方々も我々の声に耳を傾けざるを得なくなった。まだ我々は人間に滅ぼされていはいない。いえ、きっと再び己の力で森を繁栄させる時代が来る。貴方の妹さんを助け……人を滅ぼし、これからの未来を紡いでいきましょう」

 

「ああ、そんな未来の為にわたしは戦っている」

 

 アーフルが頷いた。

 

「我々なら出来るはずです。貴方の妹さんはその未来を歩む子。エルフもダークエルフもなく我々の希望となる。あの巫女の力が宿ったのが貴方の妹さんであった事は星々の運命だったのかもしれませんね」

 

「……」

 

 懐から小さなペンダントが取り出された。

 

 人間が使う篆刻写真とは異なる魔術によって描き出された笑顔。

 

 未だ齢二桁を超えた頃の少女。

 

 そのいつまでも脳裏に残っている笑みを思い浮かべて、兄は幾度となく誓ってきた決意を再度誓う。

 

(必ず。必ず、助けてみせる!!! あの時、人間達に連れ去られていくお前をオレは救えなかった。一度として反撃すら出来ず、周囲の者に言われるがまま、逃げ延びた。あの屈辱、あの絶望、オレはお前を見捨てて逃げ延びた!! 生き延びた!! だから、この命はお前のものだ。お前の命だ。お前はエルフという種を導く星となる。我々が担ってきたアレを起動させれば、世界はきっと人が滅びた平和な世界となる。全てはお前次第……お前の願い次第。だから、だから、どうか生きていてくれ。どんな姿となっていようとオレはお前を必ず見つけ出してみせる。ナーリヤ……我が最愛の妹よ……)

 

 エルフ達は眠る。

 

 新たな争いを巻き起こす為に。

 

 一人の男の想いを成就させる為に。

 

 自分達の生存を掛けて。

 

 一人の無辜の少女。

 

 その姿を求めながら。

 

 チクタクチクタク。

 チクタクチクタク。

 

 時計の音が響く。

 

 鋼鉄の格子に覆われた針が時刻を刻む。

 

 その時計の針がやがて明朝の時間帯を差し始めた頃。

 

 チクタ―――と音を止めた。

 

 それと同時に目を開けたアーフルがフードを被り直して他の者に声を掛けた。

 

「アーフル? 少し早いんじゃ……」

 

 オーレムが目をショボショボとさせて。

 

 首を横に振って眠気を振り払いつつ訊いた。

 

「いや、オレ達は遅過ぎたらしい」

 

「え?」

 

「総員。戦闘準備。第一矢は火の要素。第二矢は風の要素。第三矢は光の要素。既に囲まれている。全員いつでも抜剣出来るよう備えよ。転移は封じられている可能性が高い。脚部への移動用魔術強化に全魔力の八割を用いなければ、逃げられないかもしれない。気を引き締めろ!!!」

 

 言われながら、慌てて装備を点検し、意識を浮上させたオーレムが緊急事態に耳を疑いつつも戦闘態勢に入る。

 

「アーフル!? まさか人間達が嗅ぎ付けたの!?」

 

「いや、それならば七教会の騎士達が大勢押し寄せてくるはずだ。しかし、この気配……」

 

 コンコン。

 

 そう部屋の扉にノックの音がして。

 

 全員が緊張した面持ちで外套の中の弓に手を掛けた。

 

「どなたかな」

 

 アーフルの緊張を僅かにも感じさせない声が響く。

 

 彼らエルフの神速の撃ち方はこの大陸に轟く特技の一つ。

 

 僅か一秒で相手の脳天をぶち抜く矢は相手がどんな生物だろうと【要素(エレメント)】によって駆逐される運命。

 

 故に彼らはまったく油断もなく。

 

 その瞬間を待った。

 

「あ、はい。宿屋の者ですが、朝食が出来ましたので」

 

(朝食だと? そんな事は昨日言っていなかった…どうする…)

 

 アーフルが扉を開けるか迷いつつも、その気配が膨れ上がるのを察知して声もなく指先のサインのみで仲間達に扉を撃たせた。

 

 第一矢。

 火の要素。

 

 魔力を単純に熱エネルギーに変換するのとは違う。

 

 世界に存在する【要素(エレメント)】と呼ばれる複数の技術体系の根本である【本質(イデア)】を扱う彼らの能力は超常の力の中でも高位に位置する。

 

 概念上の火を魔力によって【再顕(エフィンゲレ)】させるのだ。

 

 ただの火の矢ではない。

 

 火というものの本質が魔力によって発現しているだけの為、魔力が消えなければ燃え盛りはしても鎮火しない。

 

 それどころか。

 

 燃えたものが魔力によって維持されているわけではなく、現象は本質が拡大再生産されているだけの為、極少量の魔力だろうと核が消えない限り、消えない大火として燃え広がる。

 

 対象物に撃ち込まれた矢に彼らが込めた魔力自体を消滅させる以外にその火は消せないのだ。

 

 ヒュンと矢が空気を裂いた。

 

 恐ろしき火の矢は木の戸を貫通し、戸を叩いていた者に確かに当たった。

 

「逃げるぞ!!」

 

 戸を蹴破り、アーフルが下敷きになった人間など気にせず走り出す。

 

 それにオーレムが、仲間達が続いた。

 

 階段を下りた一向は一階のカウンターには誰も居ない事を確認しつつ昨日の時点で確認していた宿屋の裏口に回った。

 

 一斉に飛び出して路地を走り出す彼らは奇妙な気配と違和感を感じていた。

 

「アーフル!! これってどういう事なのでしょうか!? 街が、街が何か静か過ぎるような!?」

 

「ああ、この気配…人間ではない。だが、生き物とも思えない」

 

 大通りへと続く道へ先頭を切って走っていくアーフルに油断は一切無かった。

 

 しかし、彼は大通りに出た瞬間、あまりの違和感に立ち止まってしまう。

 

「ア、アーフル!? ど、どうしたのですか!!?」

 

 後ろから追突する手前で止まったオーレムが大通りの光景を見て、絶句した。

 

「な、何なんだこれは!!?」

 

 仲間達も次々とその光景に追いついて、目を見開く。

 

 男達が女達が買われている奴隷が娼婦が商人が傭兵が、あるいは街往く雑踏の主役たる人々が、止まっていた。

 

 いや、それは正確ではないかもしれない。

 

 彼らは一人残らず体を動かす事もなく、息もしていなかったが、心臓は動いて生きていたのだから。

 

 彼らの衣服は揺れている。

 

 しかし、彼らだけが静止している。

 

 そして、更にエルフ達は己の背後。

 

 自分達の火の要素によって大火が起こっていない事にも気付く。

 

『んぅむぅ。あーはん? 人間てのは便利よねぇ。文化を生み出すし、勝手に増えるし、遊び相手にもなってくれるし、あたし達と命がけで戦う事すら出来る。ホント。マッシィブだと思わない?】

 

「だ、誰だ!?」

 

 声だけが静止した人々の上に、エルフ達の上に降り注いだ。

 

『んもぉ!? 可愛いわ!!? うろたちゃって!!? 食べちゃいたいぐらいチャーミング!? でも、ぶっちゃけエルフは好き者ならまだしも、あたしのアンテナにはこれっぽっちも掛からないのよねぇ。何でかしら?』

 

 正体不明の声の主がどういう類のものか知らないエルフ達にしてみれば、目の前の光景を生み出す存在は正に脅威。

 

 見えなければ要素によって相手を滅ぼす事すら出来はしないのだから。

 

『んふふ♡ あたし? 此処で名乗ったら盟約破りになっちゃうから教えてあげられないのよ。だって、あたしの名前聞いたりしたら大体の生物ってあっという間に死んじゃうんだもの。エルフも基本的には人間と同じで脆いじゃない?』

 

「く……魔族の類か!? 何用だ!!!」

 

 声の言いようにアーフルが危機感を覚えて叫んだ。

 

『面白い事があるの。だから、面白くしようと思うの。いいじゃない? そっちの方が面白いんだから。今の魔王閣下はこの地に争いを望むようなお方じゃないんだけど、あたしベッタベタの恋物語とか、グッダグダの泥沼な戦争とか大好きなのよぉ♪ もう人間が無様に絶望しながらも希望を見て、結局それがただの幻想に過ぎないと気付いて廃人になる時くらいに♡』

 

 要領を得ない言葉。

 

 エルフの誰もが弓を引き絞りながら相手を探す。

 

『あ、雑魚は要らないのよ。死んで♪』

 

 それだけで。

 

 本当にそれだけで仲間のエルフ達が倒れ、永遠に意識が途絶していく光景に二人残ったエルフとダークエルフが絶句する。

 

『んんぅ♪ いいわぁ♡ その顔、プリチー過ぎて今にも連れ帰ってペットにしたいくらい♡ でも、今日はちょぉっとそういうのは我慢するあ・た・し。さ、絶望する時間は終わったかしら? ガクガク震えながら脱糞して放尿して涙と唾液を垂れ流す準備は? 永遠に失われた唯一神に願うなら、今の内よ。あ、いないんだっけ。あはははははははっ♪』

 

 姿の見えない脅威にアーフルはオーレムを背後に庇って剣を抜いた。

 

 その姿は悲壮ですらあったかもしれない。

 

「アーフル!! だ、だめ、あ、貴方は妹さんを!!?」

 

 何が起こっているのか分からないまま、それでも目の前の人が死を覚悟していると気付いて、オーレムが叫ぶ。

 

『じゃ、まずは下拵えしましょ♪』

 

 バクンと何もない背後から何かに捕まれて、オーレムの体が浮いた。

 

「やぁ!? な、何コレ!!? アーフル!!!? アーフル!!!!」

 

「オーレム?!!!」

 

 背後を振り返ったアーフルが見たのは凡そ肉と内臓の塊。

 

 触手と繊毛だけが生えたソレ。

 

 名状し難きモノ。

 

「今、たす―――」

 

『けられないの♪ 残念♡ 貴方はこっちよ』

 

 ハッと気付いた時にはアーフルの体は棺に納められていた。

 

 黒い黒い棺。

 

 その内部に凝る悍ましい気配にエルフの本能がアーフルの全身を硬直させた。

 

『此処でこれから起こる事に絶望しつつ、これから戦乱を生み出せるよう頑張ってお勉強してね♡ あぁ、それと基本的に絶望と後悔みたいな感情以外は全部消すわ。だから、これからは希望も持たず、ただただ、あの子が壊れて可愛いペットになるのを見ていてね♪ ちなみにあの子は早めに魔王様が救ってくださるでしょうけど、貴方はただただ使い潰されて、最期に死ぬって事は予言しておいてあげるわ』

 

「ま、おう……」

 

『そう。魔王様♪ 世界の敵なのに世界を司り、世界を不幸にして世界を救う。全能を持ちながら、結局人間なんて面白いものから離れられない可哀相な我らが主よ♪』

 

 ガコンと呆気なく棺桶の蓋が閉められる。

 

 そして、涙を零しながら男の名を呼び始めたエルフの女は肉の塊に埋もれていく。

 

 四肢を髪を繋がれて、服は全てを剥がされて、当然のように、当然の如く、体に人間達が使うような媚薬を秘薬を快楽を白濁を性技を少しずつ少しずつ溢れぬように押し込められていく。

 

 その光景をただ涙すら出ない黒い棺桶の中、アーフルは見つめていた。

 

 身動き一つ出来ず。

 

 自分の中から何かが消え去っていくのを感じながら。

 

「やぁ…ゃ…め…ひぅ…あ、あ゛…くぅん!!!? そんなのゃぁ…あーふる…たすけりぇぇ…」

 

 乳房を弄られ、突起を扱かれ、それでも痛みもなく。

 

 ただただ衝撃を快楽に変換され、脳裏に概念魔術に等しい悦楽に奉仕し、喘ぐだけの存在に成り果てる人格を融合されながら、涙に歪んだ表情でオーレムは啼く。

 

 棺桶の中、知らず勃起していた男は希望なんて抱けるはずもなく。

 

 静止した街の中で続く惨劇にガクガクと内心の興奮、吹き上がる情欲を溢れさせていく。

 

 それは声が示した通り。

 

 全ての希望を、そんなものを抱く人格を、削られていくから。

 

 善とする意識を理性を消されていくから。

 

 他に詰め込まれるのは声が用意した脚本(シナリオ)と技と力。

 

『じゃ、後は全部自動で行われるから。あたし帰るわね♪ 結果が出たら報告して頂戴な。んふふ。まぁ、魔王って言ったら可愛い女の子に溺れるように出来ているものよぉ大概は。ずっと見続けてきたあたしが言うんだから間違いないわ♪ そろそろ我らが魔王様にも女の味を本格的に知ってもらわないとねぇ。この子も助けてあげないといけないなんてああ大変な魔王様♪ サービス精神旺盛なあたしってまるで魔族の鏡よねぇ。あーはん?』

 

 誰も聞いていない。

 

 いや、街の誰もがその全てを見ていたが、何一つとして記憶しない。

 

 やがて、黒い棺は何処かへ消え失せて。

 

 人々が動き出す。

 

 未だ消えていない路地裏の巨魁。

 

 肉の壁に埋もれて喘ぐエルフの女には見向きもせず。

 

 見えてはいても路地裏の石ころのように無視しながら。

 

 人々は、街は、動き出した。

 

 衆人環視の中。

 

「ひぅん♡ ひぁあああああああああ♪ ひぅくぅんんん!!!? いゃぁ…もっろしなきゃらめぇ♡ じゅっとしれぇ♡ 赤ちゃんできひゃぅのぉ♡♡♡ じゅぼじゅぼきもひぃぃよぉ…おまんこぉ…しぇぇぇ♡ びゅっびゅっひぇぇ♡♡ もっとのみらぃぃぃ♪ みらぇてぇるぅのしゅきぃぃ!!!」

 

 オーレムはただただ快楽に溺れ、見られ続けるだけのオブジェと化した。

 

 誰も、そう誰も、聖女すら、超常の力を持つ者達すら、その声に、その姿に気付かない。

 

 ただ一人。

 

 それを知ることが出来る者が来るまでオーレムの嬌声は昼夜なく続く。

 

 死ぬ事すら許されない快楽の中で、己を救う者すら待たず、女はただの雌肉と化した。

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