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『BLACKSOULSⅡ DLC第三弾、および追加エンディングのネタバレを含みます!』
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更新は未定です。
私たちの悪夢 - 最の都
――かくして、箱庭は閉ざされる。
永久に巡り続ける歯車の音色は、白い愛と黒い虚無の共謀により停止した。
その先に待つのが地獄でしかないと知って、それでも停滞を拒んだ男が居た。
這い寄る少女たちは彼を追う。
この深くおぞましく冒涜的な狂気の渦中でさえ、心はあった。
その心たちが切り拓いた道の先を、男は駆けぬわけにはいかなかった。
這い寄る少女たちは彼を求める。
自らの箱庭にそれは不可欠であるから。
自らの箱庭はそれとともに在らねばならないから。
だから、「こんな終わり方は認めてならない」。
永久に想い合い続ける男女の愛物語は、こんな終わり方であってはならないから。
「グリム!!」
――ああ、自身を呼ぶ名が聞こえる。
宙へと発ったこの体を、その腕を、掴んでくれる人がいる。
「手を――っ!!」
だが、それでも、華奢な少女の腕ではこの体は持ちあがらない。
否、持ち上げられない。
振り返らずとも解る。そこには彼女たちがいる。
この足を、この体を、引きずり込もうと試みる、渇望する彼女たちがいる。
「グリム…………――っ!?」
すまない。だが、そっちには行けない。
発つべきは君だ。行くべきは君だ。覚めるべきは、君なんだ。
この身には地獄と、幻想と、そして狂気こそがふさわしい。
そこに君を引きずり込むわけにはいかない。
冷たい刃を、自らの腕に押し当てる。
「――何を」
これでいいんだ。
無限に続くネヴァーエンディングなんてくそくらえだ。
我が身と、彼女に与えられるべきは。
対角線上に位置する「エンド」以外にあり得ない。
滑る刃がこの腕を、この身を解放してくれる――その瞬間。
紅い頭巾の彼女のものではない、別の手がこの腕をつかんだ。
それと殆ど同時に、流星のような何かがこの身の真横を通過していった。
「――!?」
声を出すより疾く、この身がふわりと持ち上がる。
足と腰と背中に纏わりついていた彼女たちの感触は既になかった。
驚愕する紅ずきんの横に居た、自身の腕をつかむもう一方の者。
鴉羽とペストマスクの女性が、そこに居た。
記憶に当てはめるなら、彼女は――彼女の名は。
「…………ブラック……ウェル……?」
しかして彼女は、記憶にあるよりもずっとしわがれた、そして若々しい少女の声で喋った。
「そぇでいいさ」
「――その方が、都合がぃぃ」
崩壊しかける足場に膝をつき、はじかれたように背後を見る。
背後を。その奥を。その、下を。
――無数の彼女たちが、うらめしそうにこちらを睨んでいる。
睨んでいる――無数の顔。
いや。
「それはいい」。
「そこじゃない」。
見えたのは――流星だ。
遍く無貌が形作る、虚無で彩られた夜空の中へ。
滑り落ちるように飛び込んでいく。一筋の星を見た。
祈りが創る、蒼い光と。
血刃が創る、紅い閃き。
「グリム」
「行って」
――ああ、この輝きを知っている。
あのくすんだ髪を知っている。
あの小さな背中を知っている。
彼女は。
ともに篝火に身をやつし合った――。
その名を。
呼ぶより速く、ブラックウェルによく似た女性に、この身は弾き飛ばされた。
「違えんだ」
「……違えんだよ、グリム」
「あんたが呼ぶべきは――彼女なんだ」
「その手を取った、彼女の名前を呼ぶんだよ」
「俺たちは、ただの贋作と、節介の塊に過ぎねえから」
鴉羽が翻る。
紅ずきんに握られた腕は――それを握るその手は片時も離れることなく、この身を引く。
紅ずきん。
「生きましょう、グリム」
「行くの、生きるの、私たちは」
「全部、全部――」
「――ここから、始めるの!!」
そうだ……長い、永い夢だった。
それを覚ましてくれた者がいた。そして訪れる目覚めを共にしてくれる者がここにいる。
行かねばならない。
生かねばならない。
……ああ。本当に。
我が生涯は、そればかりだな。
この身に出来たことと言えば、殺すか犯すか以外になかった。
それでも戦い続けた果てが、この幕引きだと言うのなら。
「ねばならない」を連ねた果てが、この先だと言うのなら。
……ああ、行こう。紅ずきん。
そして。
「ありがとう」
「――アリス」
背後より迫りくる無数の触手たちが、その時間が静止しているのを、目をくれずとも知って。
振り返らずとも、そこに彼女がいることを、知っていた。
白に飛び込んだ、この身の対に。
黒の向こう側に立つ、彼女に向けて。
届くと信じて、そう言った。
*
「かくして物語は終幕を迎えた」
「……けれどひとつ、困ったことが残っているの」
絶えず脈動と増殖を繰り返す、少女じみた肉塊を見やりながら、その声を聴く。
「まあ……見ての通り、ね」
声の主は、自身の育ての親。
そしてこの肉塊たちは、自身の産みの親。
即ちあれらは、私が至るものでもある。
「この物語が停滞したまま、終わりさえしなければ――貴女も、ずっと静かに暮らせていたのに」
――盤上世界シャトランジの最奥に、その屋敷と、その街はあった。
最果ての都、その名を誰が呼んだが「最の都」。
世界に存在したもの、世界に生まれたものとして記録された、概念としてのアリス達。
その426名がそこに住まい、最後の一人は街の果てに建てられた屋敷に身を置いていた。
その者たち、計427名。
それらすべて、この這い寄る少女たちに連なる者である。
「原作世界が終わりを迎えたことで、贋作世界にも終わりが来る」
「――当然のことでしょう? 母さん」
その安寧と平穏は、物語が永遠に繰り返す――即ち、盤上世界の永続が前提のものであった。
果たして物語は終わりを迎え、盤上世界もまた、その役目を終えようとしている。
「あの装置はワタシを殺すもの。……ワタシのガワをこうして助け出したところで、ワタシそのものの死は定まっているわ」
「権威さえ残っていれば、たかだか女の子の427人――匿うこと、わけなかったのに」
過程にどれほど変革をもたらしたところで、結末に変わりはない。
世界は終わる。かの者たちは現実へと変える。夢は覚める。すべては、役目を終えて無に帰する。
「……話を戻そうか」
「あれらは無数の顔を持つ、無貌の神。あるもないもプラスもマイナスも、未来も過去もその内に偏在する――混沌そのもの。故に」
「ええ、故に。――『アナタが生きている限り、あれが完全に死ぬことはない』。何故ならばアナタ自身の未来に、その可能性に――あれに至るという道筋が、存在しているから」
灰の少女アシュリィとは、這い寄る者が最後に産んだ少女の形である。
その者は這い寄る者と同等ではないにしろ、やがて這い寄る者そのものへと至る可能性は、確かに存在する。
未来に依る――「逆説的な存在の立証」。
この虚無の少女もまた、自衛のためにそれによく似た業をかつて行っていた。
「――本当に……やるの?」
灰の少女は灰のブレイスを構え、一切の迷いもなく、その者へと駆けた。
それが、自身の母に対する回答だとして。
「やるよ。私は」
「私はもとより――ここに生きてちゃいけない存在だから」
「私の決着のために、最後に立ちはだかるのが、『私』なら」
「私は」
「私ごと、私を斬り伏せる――までだから」
――這い寄る少女たちの猛攻を、あの時のように、426の少女たちが受け止める。
猛攻に耐えられず死んだ者もいた。それをしのぎ切った者もいた。
そして灰の少女は突き進む。肉塊の中央を、斬り拓きながら駆け抜ける。
かの者の中枢へとたどり着き、その肉の一片を残すことなく斬り結び続けた果てに。
アッシュ=リィンが放った、横一閃の剣戟が。
その場に生存していた、アリス達までをも斬り裂いた。
殺さねばならないのは、自らと、自らの可能性と。
そして、426の自らの残滓たち――であるが、故に。
アシュリィ・リデルは迷わない。
足を止めないことこそが、自らが持つ唯一にして絶対の強さであるから。
アシュリィ・リデルは止まらない。
自らに訪れる『死』までもが、自らの往く道を照らす導きであると知っているから。
決壊した肉塊たちが、己が持つ可能性にすがって再生をする瞬間。
這い寄る者の意識は、内なる混沌を通じて未来に至る。
その瞬間。這い寄る者が自身の構築のために未来を視る瞬間。
アシュリィ・リデルは、這い寄る者が創り出す「流れ」に乗じ。
構築のための認識――その瞬間に、割り込んだ。
*
時空間を飛び抜け、這い寄る者の認識を通じてたどり着いた果ての世界。
そこは、そこ以外のあらゆる事象、あらゆる世界と概念が滅びた、最後の世界。
万物が至る最果ての世界。
灰の少女という神ならぬ神が存在する限り、至るであろう可能性の最果て。
即ち――「最の都」であった。
これより幕を開けるは、灰の少女の最後の物語。
終わりを迎えた原作世界に倣い、終わりを迎える贋作世界の物語。
『灰の暴君』クインウドル
『灰の姫君』アリミア
『灰の母君』サンリエーロ
灰の少女アシュリィが、やがて至る可能性の者達。
それらを滅するための、未来の可能性を潰えさせるための物語。
この物語は――
たったひとりの少女が、黒い意志に抗い続け。
そして、
『
自らに終わりをもたらすための、物語である。
*
『不死人ちゃんのBLACKSOULSいきなりⅡ ~Dead Line Cinders~』
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