敗北を喫するとき、いつも思う。
自分は果たして、取れる手段のすべてを用いることができたのだろうか?
やれることをやりつくした上での敗北ならば受け入れよう。
だが、やり残した上での敗北ならば許せまい。
何かがある筈だ。まだ何かがやれる筈だ。
敗北により死を重ねる都度に、新たな手段を模索し続け、戦い続けた時。
いつしか、自身の前から敵はいなくなっていた。
F END
eels the same way,Faceless.
――(今ならあなたを理解できる)
【灰の暴君、クインウドル】
*
大理石の床は天井を映すほど美しく、手すりにも絨毯にも埃ひとつついていない。
まるで時間が止まっているかのようだ。劣化も風化もすることもなく、ただ存在し続ける。
襲い来る無数のトランプ兵を全滅させたことがあった。
ちょうど、こんな具合のお城に行った時だ。その時は、無二の親友と二人で乗り切ったっけ。
彼女の名は…………姿は…………………。
…………。
ああ。
いや、覚悟はしていたことだ。
死なぬ存在を殺す方法は、とどのつまりそういうことだ。
気づかぬ間にぼろぼろと剥がれ落ちて、鉄クズのお菓子のように帰路を導いてくれることもなく、ただ消え去るばかりのそれを思う必要はない。
玉座には誰もいなかった。その奥の、巨大なエレベーターに乗り、最の王城の頂上を目指す。
そこにいると、確信といったものがあるわけじゃなかった。
ただ、道なりに進み続けた。道があるから進み続けた。
私の冒険は、とどのつまり、そういうものの連なりだった。
半壊し、遥かな高みから城下町を見下ろせる――恐らくは、寝室であったと思われる広い部屋。
茨で作られた王冠を被った、黒く染まった長い髪と、吹き込む風に黄衣をはためかせ。
暴君は、崩れた足場の上から世界を望んでいた。
「…………クイン……ウドル」
名を呼ばれた彼女は、ゆっくりと振り向き。
突き立てた剣の上に両手を重ねて置いた姿勢のまま、体は前に、肩越しに振り返り、私を見た。
美しい顔だった。
燦然たる碧眼と金色の鎧。高い体躯と、凛とした佇まい。
その背丈は少女であることをやめていた。
その髪色は灰であることをやめた魂の色だった。
私が私であるため、保ち続けたすべてを擲ち。
たったひとりで、支配者をねじ伏せた者の姿がそこにあった。
「よく来てくれた」
「『私』」
私は、命じられることもなく、ただ心のままに彼女の隣へ並び立った。
世界が見れるその場所へ。吹きすさぶ風を受け、灰色の髪をはためかせ。
広大な砂と瓦礫だけが広がり続ける、黄色い曇天の空と地上を一望した。
「見えるか?」
こくり。
頷いて答える。
「あれが、オレのすべてだ」
支配者を屠り。
『自ら』となって得た世界。
未来。可能性。得ることができた全て。
それが、この広大な砂の吹き溜まりだった。
「立ち塞がる、すべてを屠った。敗北をこの身に刻むたび、まだ何か手段があるはずだと立ち上がった。あらゆる手を尽くし、あらゆる成長を受け入れ、あらゆる変質を望んで――オレは、すべてに打ち勝った」
「…………」
「楽じゃなかった。そんな旅路だった。それを乗り越えて、巨大で険しい山の数々を踏破して、その先にあるものを望み続けて――そうして見えたものは」
「――終わる瞬間を失った、世界だった」
旅の終着点に、自らの安寧の地という望みを得たアリミア。彼女の姿は並ぶものがない程に美しく、儚く、そして、稀薄だった。
ならば隣に立つ彼女は? 私の知る誰よりも力に満ちた、両の足で凛と立つ彼女は。……暴君は。
しかし、それでも。
姫君と同じように、儚い輪郭をしていた。
「私は……」
舞い踊る砂だけが満ちる世界を見下ろし、呟く。
「覚悟……してた」
街と王城に辿り着き、手にした最後の迷いを。
「そこにいる私の未来。ありえた私の形。その可能性――それらと戦い……殺す、ことを」
クインウドルは、やはり世界から目を離さぬままに答える。
「もうわかってる筈だろう、私。お前の未来とは何なのか。お前がなぜその選択をしたのか。お前がなぜ、ここに居るのか」
確かに。
確かに気づいていたことだけれど。
受け入れる覚悟まではできていなかった、その事実。
「お前に与えられた唯三つの未来。有り得たお前の形。お前の姿。それらはどれを取っても――未来では有り得なかったんだ」
……。
クインウドルは、私を見る。
私もまた、その目を見つめ返す。
「殺す殺さないの話じゃない。何のことはない。お前の可能性は、お前の未来は――」
「殺すまでもなく」
「最初から、死んでいる」
何のことはない。
何も難しくない、理屈だった。
*
不死である私の未来。
考えてもみれば――すべてが停滞に帰結するのは、当然のことだ。
最の王城の、その食卓。
実に大きなテーブルの上で、暖かな紅茶が出来上がっていくのを見つめながら、私は考える。
であれば何故、私は……『這い寄るもの』に至るという『未来』を持つのだろうか、と。
「……クインウドル?」
あまりにふかふかとした椅子に落ち着かず、王たる鎧と風格を見せながら、熟達した召し使いのような手つきで紅茶を淹れる彼女に思わず声をかける。
クインウドルはそれを知っていたかのように、視線はティーカップに向けたまま答えた。
「聞きたいことは解るさ。だが、お前がここに足を運んだことは無駄足じゃない。オレ達三人、三つの未来を潰したところで、這い寄るものへ至る未来が潰えるわけじゃないが――」
「未来という選択肢、可能性を潰すことで。逆説的にお前は、あるひとつの『選択』にたどり着くことになる」
……選択?
「そう。そいつは、篝火を作るとか――不思議の国を継ぐとか、世界を創り直すとか、そういう難しいことじゃない。もっと単純でわかりやすい、お前の原点に立ち返ることになる選択だ」
クインウドルは、そこで私に紅茶を差し出した。
さわやかな柑橘系の香りが漂う。アールグレイだ。
けれど私は、それに口をつける気になれなかった。
「出来たが……飲まないのか?」
返事のかわりに、脳裏をよぎるひとつの単語を口にした。
「よもつ、へぐい」
「……。極東の島国の言葉だな。それが、どうした?」
「それと同じ。……この世界のものに口をつけたら。私は、ここから……帰れなくなる、気がして」
自分でも、いったい何を言っているのかと思う感覚。
ここは私がみる、私の未来、可能性を可視化しただけの世界であり――外の時間は止まっている。
その気になれば、すぐにでもここから出ることは可能だというのに。
クインウドルは、けれど笑うことなく。
「……だとすれば……この紅茶に口をつけたお前こそ、お前が対峙する存在ってことになるのかな」
「…………?」
「アリミアは、お前のことを何て呼んでた?」
突然、何の質問だろう。
私は素直に答える。
「『アッシュ』……そう呼んでたけど」
「なるほど。なら、リィンと呼ぶべきなのかな――」
クインウドルは、ぼうっと宙を見つめる。
何を見ているのかはわからないが、ここにない何かを見つめているようだった。
「オレはな。私」
「……」
「自由になりたかったんだ」
その姿と、アリミアの笑顔が重なった。
「オレに取り巻くあらゆる厄と苦難。オレにまとわり着くアリスという役割。オレの周回に付きまとう、支配者という存在――その何もかもを、ぶち壊したかった」
ひどく、懐かしい思い出に浸るような。
そんな言葉の紡がれ方だった。
「そしてやり遂げた。やり遂げたんだ、オレは。少女の姿も少女の心も、何もかも何もかも差し出して、消し去って。こんな見てくれになって……そうして成し遂げて、手に入れた自由、見ることが叶った景色は」
「崩壊した不思議の国。砂と、瓦礫。ただ、それだけだった」
頂上で見たあの景色を思い出す。
すべてを失い、手に入れたもの。
彼女にとって、あの景色がそうだった。
「――アリミアは、『女の子になりたかった』……だったな。サンリエーロは寝てるから、代わりに教えてやるが……あいつは、『幸せになりたかった』、だ。幸せな世界の夢を見続けて、幸せでありたかった。そう願って、眠りについた」
女の子になりたかったアリミア。
自由になりたかったクインウドル。
幸せになりたかったサンリエーロ。
ああ、それらは全て。
私が想う、夢の形なのか。
それが。
「叶った形が……これ……なの?」
「言ったろう、私。お前の未来は死んでいる。たったひとつ、お前がこれから迎えるひとつを除いてな」
そうだ……彼女がさっき、リィンと呼んだもの。
それは、いったい何のことだ?
「難しいことじゃない。オレ達三人がここに至るまで、同じように抱き続けたものだ。そして、お前自身が否定しなくてはならないもの。お前が望むものとは正反対のもの――」
それは……。
……ああ……ああ、それは。そうだ。
「『生きたい』と願う、お前自身だよ。アッシュ」
私の背中を押し続けた存在。
私が歩みを止めなかった理由。
私を私たらしめる――その、貪欲な願い。
「それがお前の最後の敵。お前が産み出す最後の遺児。……アッシュ=リィンになぞらえて呼ぶなら、こう呼ぼうか」
「最後の遺児、リィン――カーネイション」
私自身を終えるために、私が倒さねばならないもの。
私が超えねばならないもの。
「これまでお前を支えてきたその想いと。今しがた産まれたばかりのちっぽけな使命感であるお前」
「……さて、どちらが強いんだろうな?」
クインウドルは、にっこりと目を閉じて――それから、くつくつと笑った。
*
殺すだけで終わると思っていた、この最後の旅路は。
存外に、多くの語らいによって形作られていた。
「この城も長く住んだが、もうお役御免か」
「……そういえば、この城って……」
「ああ、暇だったから建てた。サンリエーロが起きれば、もろとも消え失せるけどな」
建てたんだ。
……自分の未来の姿とは到底思えない、その大きな背中を見つめ、歩き追いながら物思う。
最の王城の、最深部。玉座の向こうから昇り向かう頂上の寝室とは別の、より大切なものを護るための部屋。
中庭を通り抜け、その先へと私たちは進む。
「噴水やガーデンなんかも用意したかったが、見ての通り砂と瓦礫しかないもんでな。……見映えが悪い」
そんなことはない……と言いたかったが。
私が感じているのは退廃的なノスタルジーに近しいもので、彼女が理想としているものとは違うと感じたので、口を閉じることとした。
城内に戻り、対面するのは、最の王城の入り口によく似た巨大な扉。
アリミアを斬り殺し、それごと両断して開いたもの。
「……着いちまったなあ」
ひどく名残惜しそうに、クインウドルは肩を落とす。
「いやな、実のところ――いや、知ってたかもしれないが――オレたちと私、あんたは戦うことができねえ。オレたちは終わった未来で、私、お前はこれから続く今だ。終わったものが、続くものに干渉することは……不可能というより、無意味に近い」
無抵抗のまま斬り殺されたアリミアと同じく、クインウドルもまた、仰々しい姿とは裏腹に、私に対する対抗手段というものを持っていないのだろうか?
……それは。
確かに、惜しい。
「戦い、たかった」
「オレもだよ。私」
正直。三度、連なる戦いを覚悟していたから。
それが叶わぬことを知り、そして理解した上でも、やはり寂しかった。
「なに、心配するな。オレたち三人分掛け合わせてもお釣りが来るやつが待ってる。だろ?」
クインウドルはそう言って、歯を見せて笑った。
それから、その大きな手を私の頭に乗っけて。
わしわしと、不器用に撫でた。
「……小せえなあ、ほんとに」
「あなたが大きくなりすぎたんだよ。私」
「お前もそうなるさ。生きていりゃな」
「……これから、殺しにいくんだけどね」
それでも、覚悟は変わらない。
この先に待ち受けるものが何であれ、誰であれ。
私がこの道を選んだ以上、ただ進むだけだ。
難しいことはないと、わかっているはずなのに。
剣を握る手が震えた。
「わかるさ、私」
「……」
「そんなものより、愛しい男の手でも握りたいんだろ?」
「…………ん」
「差し出した指を、腹を痛めて産んだ我が子に握ってもらいたいんだろ」
「…………………」
「知ってるよ、全部わかる。それが叶わねえこともさ」
「ねえ、ウドル」
「うん?」
「この世界が、贋作だってこと。あなたも、知ってたの?」
クインウドルは、静かに頷いた。
「レレケとも話したことがある。……よな? なにぶん遠い昔なんで、曖昧だが。オレたちが生きたこの世界は、本来――オレたちに与えられたものじゃない。グリムの名だってそうだ。役割に当てはめられただけで、オレたちはグリムとは何の関係もない」
「――ただの『まにあわせ』だ。だろ?」
目を伏せ、頷き、答える。
「だけどな、私。……それがどうしたよ。贋作も原作も、そこにあるものに変わりはねえ。価値があるかどうかなんざ、見る奴が決めることだ。見られてる側は自分の世界の出来なんて気にしてられねえ、ただ我武者羅に生き抜くだけさ」
「……生き抜いたよ。我武者羅に」
「ああ、よく頑張った。そして、最後のもう一踏ん張りが残ってる」
「…………」
その先に。
その先に行きたくない。
すべてを終わらせるなんてしたくない。
私は、私は、まだ。
まだ――。
――――。
沸き上がる衝動を飲み込んで、ねじ伏せて。
数歩下がって、灰のブレイスを構える。
「ああ」
歯を見せて、にっこりと笑う姿は。
「いい顔だなぁ。私――」
どこまでも満足げで。
どこまでも、どこまでも。
狂おしいほど、羨ましかった。
――クインウドルの、その顔は。
真っ二つに裂けて尚、笑顔のままだった。
*
戦いの果てに、夢を見た。
そこに自分はいなくとも、自分が夢に描いた世界を見た。
幸福に暮らす人々。幸せに笑う人々。
美しく整った街並みと、そこで生きる命たち。
ああ、なんて、なんて輝かしいのだろう。
このままずうっと、こんな夢を見ていられたらよかったのに。
よかったのに。
大きな大きな望遠鏡が建てられて。
レンズの先は、宇宙の向こう、その果ての果て。
B END
LACK BORNE
――(黒より産まれ出でしもの)
【灰の母君、サンリエーロ】
*
アッシュ=リィンという女は、ずっと昔から、死にゆくものを美しいと感じていた。
消えていくもの。失せていくもの。喪うもの。
この手からこぼれ落ちていくすべてが尊く、いとおしいものだと。
それは自らが持ちえない、最後の輝きであるがために。
自らがたどり着くことのない、旅路の終着点であるがために。
だから、彼女にとって。
だから、私にとって。
死にゆくものが、朽ちていくものが、何よりも羨ましかった。
それが、生きたいという想いの裏返しであることに。
大きく膨らませたお腹を抱きながら、滾々と眠り続ける彼女を見て、ようやく知ることが出来た。
巨大な寝室。
そして、巨大なベッド。
その中央で枕を背に、ぺたんと座った体勢のまま、微動だにしない。
真っ白に染まった短い髪に、やはり茨の冠を被って。
灰の母君、サンリエーロは、静かに眠り続けていた。
ベッドの上によじ登り、そのお腹に手を当てる。
確かに息づく、何かの胎動を感じる。
眠り続ける母の胎で、今まさに生まれようとする生の鼓動を感じる。
死にゆくものが羨ましい。
だから、永久に眠り続ける彼女の姿が美しかった。
生きゆくものが美しい。
だから、そのお腹の奥で息づくなにかが羨ましかった。
そうあれたらと願ったところで、だからそうなったのだとはっとなる。
旅路を終えた私が行きつくのは、だからこれなのだと。
駄目なんだ。駄目なんだよ、私。
それじゃあ何も変わらないんだ。
終わりとはお終いじゃない。
何故私が、ここに来たのかを思い出して。
神になってしまう、その結末を変えるためじゃないのか?
「違う」
――違う?
「わたしは……」
――私は。
「わたしは、わたしになりたかったんだ」
――…………。
お腹の奥から、誰かが私と手を合わせた。
それが誰のものなのかはわかっていた。
サンリエーロという『つなぎ目』の向こうから。
私とは違う、真逆の選択をしたわたしの鼓動を感じた。
「私で在り続けたかった」
「贋作じゃない、わたしになりたかった」
「そして、どこまでも生き続ける」
「わたし で あり たか った」
ぴしり、と。
サンリエーロのお腹に、罅が入り。
それが広がっていくと同時に、光が漏れて。
そして、溢れた。
「――――~~~~~ッッ!!!」
その眩しさに、両腕で両目を覆い。
あたりに吹雪のような風音が響き始めたあたりで、光は収まり。
そして、腕を下ろしたとき。
「………………っ」
世界は。
くすんだ色の、雪景色に染まっていた。
……。
いや……違う。
澱んだ曇天から降り注ぐこれと、地につもったこれは、雪じゃない。
それは灰だった。
灰が。
深く、深く、どこまでも。
灰平線の向こうまで、続いていた。
*
――そうか。
灰の中から、誰かが現れる。
灰を押しのけて、誰かが立ち上がる。
裸であったその体に、灰がまとわりついて、エプロンドレスを形作る。
――彼女が。
その瞳は青かった。
灰色の髪の先端が、黄金色をしていた。
私とは違う選択をし、私ではない何かに成りかけていた。
――三つの未来を殺し、潰した果てに、選ぶこととなる二つの選択。
欠け落ちて、朽ちた刀身をした、二重螺旋であったであろう剣を引き抜き。
立ち上がった彼女が、私を見た。
――そのもう一方を選んだ、私……。
灰のブレイスを構え、切っ先と切っ先を向け合わせ。
降りしきる灰の中、呼吸を整えた。
自分が終わってしまう、三つの未来を殺し。
最後に残る、私/わたし。
それを――殺そうと試みる――私/わたし。
あれは。
『生きたい』と願った、私か。
【最期の意志、アッシュ】
【灰の姫君、アリミア】
自分だけの箱庭を望み、そこで暮らすことを願った少女。
彼女の箱庭は、しかして少女を求めることはなく、
舞台を保ち続ける装置としてのみ、彼女は求められていた。
魔術を得意とし、その眼光は睨んだものを石化させる力を持っていたが、
貪り続けた惰眠により、全盛の力のすべてを喪っている。
【灰の暴君、クインウドル】
自分だけの世界、自分だけの時間を望み、すべてを屠った少女。
彼女の存在を受け入れられるほど、箱庭も、そして宇宙も頑強ではなく。
その存在の重さにすべて瓦解し、あとには砂と瓦礫だけが残った。
アイテムを用いた搦め手を得意とし、松脂にまみれた蛇腹剣を振るった。
戦いから遠ざかった時間があまりに永く、全盛の力のすべてを喪っている。
【灰の母君、サンリエーロ】
世界の生まれ変わりと、幸福に満ちたそれを望んだ少女。
彼女という黒から生まれ出でた世界は、数千年をかけて栄え続けたが、
ある時、知識と望遠鏡を手にした誰かがそれを覗き、彼女を観測してしまった。
いばら姫の権能を扱う技術に長け、世界を上書きする領域を展開する力をも持っていた。
自身の目覚めが即ち自身の崩壊であるために眠り続け、故に全盛の力のすべてを喪っている。