催眠アプリを手に入れたので、レイプする!! 奴等をエロスキルでテクノブレイク!! 作:Ω2
「……はあ」
無意識の内に茜はため息を漏らしていた。
食事の最中にされた衝撃的な話から後、与えられた部屋で茜はただなにもすることなく、天井を見上げていた。
こういう暇な時、いつもならスマホを適当に弄るのだが、今はフェン達に預かられている為、それも出来ない。
(また、別にいいか)
あったとしても、使う気にはならない。
『選べ』
フェンの言葉が何度も頭の中で反響している。
ずっと茜の中には先の見えない不安と、迫られた選択の迷いが渦巻いていた。
こんこんと不意に扉がノックされた音がした。
「! 誰ですか?」
びくりと身体を起こし、茜は思わず身構えてしまう。
「リルです。佐藤 茜さん、入ってもよろしいでしょうか?」
「あ、はい……」
相手が今この屋敷にいる人間の中で唯一の同性だという事を聞き、警戒を緩める。
「失礼いたします」
部屋に入ってきたリルは相変わらずの黒いベンチコート姿であったが、その手はお盆を運んできた。
「ご気分が優れないだろうと思い、ハーブティーお持ちいたしました」
「あ、ありがとうございます」
至れり尽くせりとはこの事だ。
「いかがですか?」
「美味しいです」
正直、ハーブティーの美味しさがわかるほど、茜の味覚は鍛えられているわけではないが、自分を気遣ってくれる少女の優しさに触れた気がして、不思議と美味しく感じた。
「ごちそうさまでした」
全て飲み干すと、リルにマグカップを返した。
「お粗末様です」
リルはマグカップを受け取ると、それをお盆に乗せ、そして何故か茜の座るベットの端に置いた。
「申し訳ありません。佐藤茜さん。あなたの身体のサイズを図ってもよろしいですか?」
そう言いながら、コートのポケットからメジャーを取り出すと、リルに茜は首を傾げた。
「別にいいですけど、身体のサイズを測ってどうするんですか?」
「明日のパーティーに着ていく佐藤茜さんの分のドレスを作ります」
「あ、そうなんですか……」
そうか。ドレスを作るのか……
ん?
「ちょ、ちょっと待ってください。ドレスって一日で出来るものじゃないですよね?」
あまり詳しくないが、もっと長い期間をかけて作るもののはずだ。
「徹夜すればなんとかなります」
「いや……」
その理屈はおかしい。
「で、でも悪いからいいですよ。正直、今回のパーティーでドレスが必要になるとは思えないですし」
パーティーはパーティーでもドレスが必要になる真っ当なパーティーではない。
「……だって乱交パーティーなんですよね?」
改めて口に出すと、気が重くなってきた。
自分がネクサスになった事で、頭がいっぱいいっぱいであった為忘れていたが、明日自分はその乱交パーティーに参加しなければならないのだ。
(仕方ないというのは、分かってるだけど……)
そういった行為を強要されないとはいえ、乱行パーティー自体に参加する事はやはり嫌悪感がある。
「明日のパーティーに参加するのは辛いですか?」
「それはそうですよ」
嬉々として参加する方が珍しいだろう。
リルに身体を測ってもらうために、ベットの上に横になりながら、自然と茜の口からは溜め息が出る。
「リルさんもそうなんじゃないですか?」
目の前にいる少女も明日のパーティーにフェンの補助として参加すると聞いた。
ならば同性であるリルも似たような心境であるはずだ。
「私は仕事ですので。特に何も感じません」
はっきりと言い切った少女に、茜はああ、そうだったと思った。
この少女と自分は立場がまるで違うのだ。
だがもし自分が同じ立場でもここまではっきりと言う事は出来ないだろう。
「リルさんって不思議な人ですよね」
メジャーで身体のサイズを測る少女に思わずそう言ってしまう。
「? そうですか?」
「はい。私よりも歳下そうなのに、私なんかよりもずっとしっかりしています」
しっかりしすぎていて少し怖いぐらいだ。
「実は私なんかよりも歳上だったりします?」
「いえ、申し訳ありませんが歳下です」
「はは、ですよね」
思わず笑ってしまう。そうだ、いくらなんでも流石にこんなにも見た目が幼い少女が歳下な訳がない。
「11歳くらいですか?」
「いえ。まだ下です」
「……十歳?」
「いえ」
ならば九――
「私の歳はその半分です」
「……え? じょ、冗談ですよね?」
流石にそれはおかしい。十歳の半分と言えば――
「いいえ本当です。私は今年で丁度五歳になります」
「……」
唖然とした。五歳といえば小学生どころか、幼稚園に通っている年齢ではないか。
「なので、私に対して敬語やさん付けは不要ですよ。十歳以上も歳上の人にそう言われると、なんだか変な感じがしますから」
「……あ、う、うん」
だがどう見ても、少女の容姿や言動は五歳児のそれには見えない。
「リ、リル……ちゃん?」
「ああ、それはいいですね。カラスで呼ばれなれているのでしっくりきます」
満足そうに頷くリルに茜は困惑するしかない。
「リルちゃんは一体何者なの?」
言ってからしまったと思った。これではまるで少女が異常だと言っているようなものではないか。
「ごめんなさい。私今、酷い事を――」
「いえ。謝る必要はありません。佐藤茜さんの疑問はもっともです」
特に気分を害した様子はなく、リルは茜のウエストを図りながら、言葉を続けた。
「デザインチャイルドという言葉をご存じですか?」
「えと……小説や漫画とかでなら」
遺伝子を選択して生まれて来る子供を親の望んだ身体的特徴や能力を持つ確率を上げる技術だったはずだ。
「私はその小説や漫画で出て来るデザインチャイルドの初めての成功例の
「……ちょっと待って」
大抵の事では驚かないつもりであったが、流石にこれには驚くしかない。
「デザインチャイルドって現代の技術で出来るものなの?」
茜が呼んだ小説や漫画も今よりも遥かに技術が進歩した世界で行われていたはずだ。
今の技術の最先端がどこまでいっているのかを詳しく知っているわけではないが、流石に現代で出来るとはとても思えない。
「いいえ。不可能です。日々技術が進歩しているとはいえ、現代の技術では
「……その言い方だと正攻法以外なら出来るって感じだね」
「はい。そう言いました。現代の技術でも人の遺伝子に影響を与える『裏技』を用いれば可能なんです……佐藤茜さんもご存じのはずですよね?」
「……まさか」
思わず震えてしまう。あり得ないと言いたい。だがそれしか考えられない。
「オーバードラッグ?」
「正解です」
リルは無感情に頷く。
「受精卵の時点で特定のオーバードラッグを投与し、その効果で遺伝子を操作し、人為的に優れた人間を作り上げる……その計画の成功体が私なんです」
「……そんな、ことって――」
あまりにも酷い。倫理などあったものではない。
「受精卵の時点でオーバードラッグを投与された影響で私は生まれながらにネクサスでした。そのせいか、色々と一般的な人間とちょっと違うみたいです」
物心がついたのは生まれてから最初の一週間で。その後は瞬く間に知識を学習、吸収し、一般的な成人した人間のIQに達するのに、一月もかからなかったそうだ。
「生まれて一年で私の容姿は今の姿となり、固定化されました。それ以降の四年間は一切の変化がありません」
きっとこれから先も変わらないであろうとリルは言う。
「……生活はどうだったの?」
想像以上の境遇に、思わず尋ねてしまった。
「大事にされていましたよ? なにせ貴重な成功体ですので。ただし自由は一切ありませんでしたが……」
ただ淡々と少女は自分の過去を語る。そこに感情はやはりない。
「ですがちょうど一年前にその生活も終わりました」
「……どうして?」
「あなたと同じですよ佐藤 茜さん」
「私と同じ?」
「はい。私も一年前にマスターに助けられたんです」
そう言った今度の少女の表情には確かな熱が込められていた。
「マスターはあの生活から私を救い出してくれました。そして全てを与えてくれたんです」
メジャーをポケットにしまったリルはベットの上に置いていたお盆を持つと床に立った。
「だから私の全てはマスターのものです」
そう言い切ると、リルは部屋から出ようとする。
「リルちゃん!」
「はい」
呼び止めると、少女は止まってくれた。
一瞬言うのを躊躇ったが、だが不安は茜の背中を後押した。
「私は……どうしたらいいのかな?」
我ながら情けない質問だ。だが言わずにはいられなかった。
自分と同じように彼に助けられ、彼と共に行動を共にし、運命と戦う選択をした先導者である少女に。
「……私から言える事は忠告だけです」
それに対して少女はすぐに答えてくれた。
「最初から何もなかった私とは違い、あなたにはこれまで築き上げてきた想い出や絆があるでしょう?」
「うん」
ある。自分には大切な思い出も絆も確かにあるのだ。
「ネクサスとなったあなたの運命と戦うという事は、それら全てを犠牲にし、新たな人生を歩むことです」
……きっとそうなのだろう。戦うことを選べば、自分は今までの自分の生活には二度と戻れないだろう。
「ですが、運命から逃げるという事は、あなたの本質から逃げ続けるという事でもあります。これから先の人生は人と違う自分を本当の意味で受け入れるのは難しいでしょう」
……それは分かる。運命から逃げて、平穏を選んだとしても、きっと自分は今までのように笑えない。
「断言します。あなたはどちらを選んだとしても後悔は必ずします」
……分かっているのだ。どちらも満足のいく選択ではないことは。
「だからこそ、自分で考えて決めて下さい。これからの人生を歩むために、自分が選んだと納得の出来る選択を」
そう言うと、リルは部屋から出ていってしまった。
「……私は」
答えを探す為の思案の時間はまだ続きそうだ。
茜の部屋から出たリルはしばらく歩くと、廊下の曲がり角を見つめた。
「……盗み聞きは趣味が悪いですよ」
「あはぁ」
独特な笑い声がと共に廊下の角ーー本来ならちょうどリルからは死角になる位置からカラスが顔を出した。
「いやぁ、悪いねぇ。聞くつもりはなかったんだけどさ、思わず聞き入っちゃったよ」
「そういうのは少しぐらい悪びれながら言って下さい」
ヘラヘラと笑うカラスを無表情に眺めながら、リルは溜め息を吐いた。
「しっかし、口下手だねぇ。フェン君から動揺しているであろう茜ちゃんの気を紛らわせるために、会話をしてやってくれと言われたくせに、余計に動揺させちゃってるじゃないか」
指摘され、リルさんほんの少し整った眉を不快そうに動かした。
「あなたに言われるまでもなく、自分のコミュニケーション能力の低さは理解しています。ですがあの忠告は必要な事だと判断しました」
「まあ、それはそうだよね」
ネクサスは必ずどこかで普通の人間とそうでない異質な存在である自分との『壁』にぶつかる事になる。
それはカラスも、そしてリルも例外ではなかった。あの少女も例外にはならないだろう。
「それをわざわざ言ってあげるとは、リルちゃん優しいねー」
「仕事ですから」
「うわ。可愛くない反応」
「別にあなたに可愛いと思われたくありません」
「あはぁ! ヤンデレちゃんがツンデレになったのかな? 嘘! いつから僕らそういう関係になったっけ?」
「……死にたいんですか?」
オーバーに距離を開いて見せるカラスを、リルは睨み付ける。
「下らないことを言う暇があるのなら、さっさと失せて下さい。私はこれから気を紛らわせるという命令を遂行した事をマスターに報告しに行かなければならないんです」
「……え、あの様で、本気でそう言ってるの?」
「勿論です。
問われたリルは手に持ったお盆をほんの少し上げた。
「ネクサスにも効く特注の睡眠薬をハーブティーに仕込みました。後数十分もしない内に佐藤茜さんは眠りにつくでしょう」
「やだ。僕の同僚の五歳児怖すぎ……!」
さらりと薬を混ぜた事に、カラスはほんの少し呆れを見せた。
「君、意外とゴリ押し大好きだよね」
「あの精神状態では最も効率的な方法です」
「まあ、そうなんだろうけどさ」
他にやりようもあったのではないかとカラスは思う。
「そんなことよりも、いい加減惰性で私をからかうのはやめて、本来の役目に戻って下さい。あなたもマスターに仕事を頼まれているはずです」
「あー、それを言っちゃいますかぁ……」
途端に歯切れが悪そうにカラスは頭をかく。
「正直あまりやる気がなくてさぁ。フェン君の勘から調査を頼まれた事件達は僕の目から見ると、今回の事件と全く関係なさそうに見えるんだよねー」
「あなたが調査を頼まれた事件は確か複数ありましたよね?」
確かそれらの事件はリルの目から見ても、一見オーバードラッグには関係のなさそうな事件であったはずだ。
「まあねー。唯一関係のありそうなのは、茜ちゃんの幼馴染の『自殺事件』ぐらいだ。まあ、それさえもオーバードラッグが関係しているかどうかは怪しいんだけどね……」
世間一般的には当然の反応と言える。カラス以外の人間が調査を依頼されても同じ反応をしただろう。
「……マスターの直感を疑うと言うのですか?」
だがそれがリルは許せない。
「本気で死にたいのですかカラス?」
味方という立場でありながらマスターを疑うという時点で、リルからすれば十分に『粛清』の対象だ。
「いやいやそんなつもりはないから、殺気を出すのは止めてね。君の場合冗談じゃ済ましてくれそうにない」
当たり前だ。冗談なんかで済ませてたまるか。
「ちゃんと働くから、そんなに怒らないでよ」
「怒ってません」
道具である自分に感情などない。
「はいはい。話は変わるけど、フェン君は明日のパーティーに参加する為にいつもの『化粧』に入ったよ……こりゃあ、間違いなく徹夜だね」
「存じてます」
だから自分はドレスを作るのだ。
マスターと同じ『仕事』をする為に。
「僕は帰るけど、君も休んだ方がいいんじゃないの?」
「論外です」
そんな事出来る訳がない。
「マスターが休まないのに、あの人の道具である私が休めるはずがありません」
「じゃあどうする気さ?」
「マスターにお供します」
彼が徹夜するなら、自分も徹夜するまでのこと。
「フェン君が死んだら、同じ台詞を言いそうだね君」
「当たり前です」
「……それを本気で即答するから君は怖いんだよね」
「?」
何故怯えられなければならないのだ?
「あー、はいはい。僕が馬鹿だったよ……フェン君に伝えておいて。明日のパーティーまでには調べておくからって」
「了解しました」
「じゃあねー」
手を振りながら、カラスは去って行った。
「……そういうあなたも徹夜する気じゃないですか」
主であるフェンが調査の依頼を出した事件の数を知っているリルは、どこまでも不真面目を装う仕事仲間に呆れ交じりのため息を吐くのであった。