2月中旬。
未だに外は寒く、炬燵はしまえない。
仕事で外に出る必要がない時は大体トレーニングか、或いは小説を書いているか、神綺と一緒に時間を過ごすか。それぐらいしかこの田舎でやる事はない。そう、田舎という環境はかなり何もない為、やる事がなく暇なのだ。秘封倶楽部にネットゲームでも遊べば良いと誘われたりもしたが、ソシャゲも飽き性で始めて三日で飽きてしまう。今まではそうやって開いていた時間を取材とかでネタのストックに回していたが、今は神綺が居る。
必然的に、そういう暇な時間はセックスする。
「んっ、あっ」
艶めいた声を神綺が漏らす。神綺が上から腰を下ろす様に秘所に逸物が挿入され、その膣の奥にまで咥え込んだ。腰を下ろした時点で神綺の秘所は濡れており、下着をずらして挿入した状態、神綺も自分も着衣は股間部だけ露出した状態で結合している。そうやって神綺を腰の上に乗せながら、彼女の背は此方へと向けられている。所謂、背面座位という状態で神綺を抱えている。
そしてその状態のまま、炬燵に下半身を突っ込んでいる。
つまり繋がった状態のまま炬燵に入っているのだ。
神綺と結合した状態のまま、腰は動かさず、しかし手はセーターの下から腹の周りを這うように軽く撫でながら、少しずつ上を目指して滑らせて行く。
「はぁ、んっ、はぁ……」
熱い吐息を炬燵に正面から倒れながら吐いている。上半身が炬燵のテーブル部分に倒れ込み、胸がそれに圧迫されて潰れるも、全身が敏感になっているのか、服の下からさする手の動きに体を震わせながら感じ入っている。
だが気持ちよくなっているのは神綺だけじゃない。
腰を動かしている訳ではなくても、結合したままの逸物は常に神綺が刺激されるたびにきゅぅきゅぅと膣によって締め付けられ、まるで逸物の形を覚えて固定しているかのように密着し、形を合わせて来る。もはや結合というよりは、それが正しい組み合わせである様に一つになっている気分だった。神綺を刺激すれば此方が気持ちよくなり、此方が気持ちよくなれば逸物が軽く刺激され、神綺の膣内が刺激される。
動いていなくても、心地よさがあった。
だらだらと、急がないゆっくりとしたセックスを味わっていた。
「ねえ、ミコトぉ……」
「まだ、早いだろう?」
テーブルに頭を横に倒しながら、熱っぽい息を零しつつ神綺が達したいと言ってくる。だがそれをやんわりと却下しながら、触れる手を腹からセーターの中を登らせ、胸元へとやってくる。神綺が無意識的に刺激を求めて下半身を更に押し付けるように、子宮に食い込ませようとするように押し付けて来るのを後ろから覆いかぶさって抑えつつ、
這っている片手で右胸を抑えて。
「はぁあ、んっ……そこ気持ちいい」
「知ってる」
頭を降ろしてキスしながら胸を片手で抱えるよう握りながら、軽く形を歪めて楽しむ。女の方はそこまで胸では気持ちよくなれないらしいが、だがお互いに触れあっているという感触がどこまでも心地よさと、心の温かさを与えてくれる。セックスする事による気持ちよさよりもお互いに、こうやって一つになって触れ合っている事を感じ取りたい所がある。
ただ、
「んぁ、あっ……はぁ……」
神綺と繋がっているからだが、心の温かさや充足感だけではなく―――別の意味でも満たされているのを感じる。
魔力だ。
無限とも言える魔力を神綺からは感じる。その一部がセックスと共に此方に流れ込んでくる。そして失った力の居場所を満たす様に、体の中へと満ちて行く。房中術というものがある。男女の性交を通して均衡を取るという思想だ。無論、そこから発展したセックスの技法や、セックスを通して癒す事もある。神綺とのセックスは、それに近いものがある。
かつては体を満ちていた力。その大半が消え去って、今では搾りかすも良い所だった。神綺と交わっているとその傷跡を癒す様に、魔力が体内を満ちる。
「はぁふぅ……ん、お腹の奥が貴方でいっぱいね」
そう言って自分の腹を撫でる神綺の姿に、更に興奮するが、それで本気を出してしまうのももったいない。
「そうやって誘惑して来るのを止めてくれよ。本気出しそう」
「いいのよ? 貴方なら好きに使っても」
「嫌だよ。君を道具の様に扱うのは、絶対に」
「ふふふ」
魔術の乗りもその影響で良い。今までの8割増しは効果が良くなっている。或いは
ただ―――まぁ、
「神綺」
「うん?」
「愛している」
「私もよ」
キスして、軽く舌を絡め合い、口を離してから挿入したまま、体を軽くまさぐるように愛撫する。皮膚を撫でながらその性感を刺激し、高めるだけ高めて絶頂にまで登らせない。お互いに我慢に我慢を重ねて敏感になって行く感覚で、互いの存在を―――魂その物を感じて行く。
好き、好き、愛している。貴方を感じたい。一緒に居たい。貴方を心の底から愛している。ありがとう。好き。一緒に生きたい。別れたくない。
繋がる体を通して心も繋がる様な気がする。
だから―――まぁ、お互い、こうやって何度も交われば、言葉にしなくてもそれとなく、お互いが何であるかを察せる。
「んちゅ……ちゅ……やだ、もっと……」
「甘えん坊だな」
「貴方にだけよ」
だけどそれを口にする事はない。する必要もない。
俺は熱田尊で、彼女は神綺。それ以外は知らないし、興味もない。俺達はここにいるし、繋がっている。言葉を尽くさなくても理解しているし、お互いに釣り合う相手になろうと思っている。だからそれでいい。神とか、魔術とか、魔力とか、怪異とか、幻想とか、全てどうでもいい。
愛している。
それが俺達の唯一無二の真実だから。
そうしながらぐだぐだとセックスしながら過ごす2月ごろ。セックスばかりだけではなく、夢魔の話を記事にして雑誌に渡した。これが結構好評だったらしく、ライターとしてやらせてもらっている雑誌の売れ行きが伸びたらしい。その手ごたえに自分もライターとしてまた成長しているのだ、
そう言う風に感じるまだ寒いこの季節。
「ミコト君、君は正社員として働く事に興味はないかな?」
「……はい?」
会社―――記事を書いているオカルト雑誌のオフィスで、編集長にそう言われた。
呼び出しを受けたときはどういう用件かと少しだけ身構えてしまったが、その結果がこの言葉なので、困惑するのも当然の話だと思って貰えるだろう。俺も当然、言われた事に驚いている。
「俺が正社員、ですか」
「知っての通り、私が社長と編集長を担当しているからね。まぁ、一種の道楽としてこのような雑誌の掲載を続けているが……それでも人を見る目には自信があるつもりだ。先日、君が書いた夢魔の記事は実に面白かった」
「あ、ありがとうございます」
編集長のオフィスで、その賛辞に軽くペコリ、と頭を下げる。そうやって自分の文章を褒められる事は、素直に嬉しかった。何せ、モノを書くという事自体は嫌いじゃないのだから。いや、寧ろ好きだ。出来たら小説家になりたいと考えるぐらいには。
「それで、正社員という話ですけど」
「あぁ、そうだね。うん、君は面白い記事を書く。そう、まるでそれを経験したかのようなリアルな記事を、だ」
黒い髪をオールバックに纏めている、スーツ姿の中年はニカリ、と意味深な笑みを浮かべている。
「無論、
そして、と言葉を続ける。
「ミコト君、君が書く話は実にリアルで面白い。それこそ本当に存在していた、と思わせられる程文章には熱がある。ここで働いているうちに、文章力も向上しているのが見られる。君の様に向上心のある者であれば、私は社員として正式に雇って給与を与える事も考えられる」
「それは……」
願ってもない話だった。今までは不定期なライターで、採用されるか解らない記事を書いていた。それでも生活に余裕があって貯金が出来ているのも、自分の腕前―――というよりは、この編集長に気にいられていたからだろう。言葉の端に神秘と幻想が実在する事を知っているような口ぶりのこの男は、どこからかは知らないが、謎の情報網を駆使してそういう神秘の足跡を見つけては、それをネタにしている。そういう方面では、非常に優秀な男だ。
なお本名不明で、社員からは社長、編集長、所長等と呼ばれている。
「嬉しい話ですし、出来たら受けたいんですけど……いいんですか?」
「良い。この先、君は面白い記事を書いてくれそうな気もする。在野のライターとして放置するには勿体ないし、良い機会だから囲ってしまおうかと思ってね」
ちなみにここに契約更新用の書類も用意してある、と見せて来る。準備が早いなぁ、とは思いつつもそれを受け取る。
社員になれば会社に行動を制限されたり指示されたりするものの、安定した収入につながる。今でも苦しい生活をさせている訳ではないが、それでも社員になるやはり、給料が違ってくる。確認する給料はアップしているし、浮いた分を貯金に回せば、
そう、念願のマイホームを購入するのにまた一歩近づく。流石に何時までもマンション生活は二人になったのだから続けられない。あの秘封倶楽部もまだまだ遊びに来る予定のつもりらしいし。今より広い所に住みたいのは事実だ。いや、二人だけの狭い空間というのも悪くはないのだが。
それはそれとして、将来的な部分を考えたらやはり、もうちょっと広い所が良い。
「では正社員雇用という事でお願いします」
「うむ、私も歓迎するよ。こういう記事を真面目に書いてくれる人間は中々いないからね。大抵は不真面目にやるか、或いは変に話を盛ろうとするからちゃんと書いてくれる者を見つけるのは大変なんだよ」
受け取った書類を確認しつつ、契約内容を確認する。本当に普通のものだった。職務中の怪我の保険適応に関しても書いてある。
「もう知っているかもしれないが、出社する必要はない。その代わり、私が指示したものに関して出張して調べて貰ったりする必要もあるから、偶にこの街から出る必要もある」
「今はメールとかボイスチャットでやり取りできますからね」
「うむ。私もVRCで他の社員と仕事の話をしている。いいぞ、バーチャル受肉は。私でさえバーチャルでなら美少女になれるからな」
「あぁ、バ美肉とかいう奴」
「ネットワークの可能性は実に悪くないぞミコト君。君もそっち方面はどうかね?」
「いや、俺そっち方面はあんまり詳しくなくて。流行とネタ抑えている程度ですね」
苦手だから手を出さない、だとネタとか流行を逃してしまう部分がある。だから苦手な分野でもしっかりと調べて把握しておくのが物を書く時には大事になってくる。そういう事もあって自分も割とそこらへん、調べたり把握したりするのは頑張っている。だが流石に編集長の様にVRC環境を揃えるまでは行かない。アレは調べただけで無限に時間を奪われるものだと理解してしまった。それに環境を用意しているだけでもかなり金がかかるのもある。
まぁ、それにバーチャル世界じゃなくて現実世界には十分満足している。そっち方面は編集長が楽しめば良いと思う。
「という訳で改めて宜しく頼むよ、ミコト君」
「此方こそよろしくお願いします」
と、言う事で、と笑顔を浮かべたまま編集長が言葉を続ける。
「早速出張を頼むよ」
「マジすか」
「うむ。今、京都の方に自称
「え、えぇー……」
正社員雇用が決まったその瞬間に出張をぶち込んでくる編集長のスタイルには、もはや呆然とするほかなかった。しかも、しかも場所は京都だ。日本における霊的守護の最大拠点でもある。そんな場所に魔界に出没する一種の神である魔神なんて本当に出現しているのだろうか……?
「しゅ、出張……うーん……」
出張自体はいいのだが、それで神綺を長時間一人で置いて行くというのは少々、気後れする内容だった。とはいえ、仕事は仕事だ。従うしかない。
と、思っていると、
編集長がチケットを2枚取り出した。
「おや? こんな所に京都のラグジュアリーホテルのペアチケットが。ふーむ、しかし私は使う気も行く気もないし、ミコト君に渡してもいいかもしれないなぁ……」
「行きます。超行きます」
「君ならそう言ってくれると思ったよ」
編集長が渡してくれるチケットを貰い、掲げながら確認する。
本物だった。しかも高級旅館のチケットだ。これなら自分と神綺の二人で、京都旅行を数日泊まり込みで楽しむ事も出来る。
「おぉ、編集長……!」
「ふ……奥方は大事にしたまえミコト君。円満な夫婦関係のコツは特別な日にプレゼントをする事ではなく、日常的に助け合い、そしてお互いに与え合う事だよ」
「肝に銘じます!」
ひゃっほぉぅ、という言葉を口にしながら退社する。
出張と聞いて一瞬だけ落ち込んだが、神綺と二人で京都観光するだけの時間が取れるのであれば話は別だ。
早速出張の準備をする為に家に帰る事にする。
10秒後、秘封倶楽部が京都の大学にいる事を思い出して崩れ落ちる。あの連中は異次元染みた直感力でオカルトや面白い事を嗅ぎつけるのだ!
という訳で神綺と京都デート。